説明

水系エマルジョン型感圧接着剤

【課題】常温での初期接着性や、長期間放置後の接着性に加えて、低温条件下での初期接着性にも優れた、水系エマルジョン型の感圧接着剤を得ることを目的とする。
【解決手段】構成成分として、エチレン2〜35重量%、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル1〜97重量%、及び酢酸ビニル2〜96重量%(合計量を100重量%とする。)を含有するエチレン−ビニルエステル系共重合体の存在下、このエチレン−ビニルエステル系共重合体100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル1〜2000重量部を乳化重合して得られる重合体を含有してなる水系エマルジョン型感圧接着剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粘着テープ、粘着ラベル、粘着シート等の粘着シート状体に使用されるエマルジョン状の感圧接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープ、粘着ラベル、粘着シート等の粘着シート状体に用いられる感圧接着剤は、おもに天然ゴム系を中心としたゴム系のものとアクリル系のものに分類される。ゴム系のものはタックに富み、常温および低温での粘着バランスに優れているが、耐熱性や耐候性が十分でないため、アクリル系接着剤が主流になりつつある。アクリル系接着剤の利点としては、耐熱性、耐候性に優れ、また様々な要求物性に応じて、共重合モノマーを選択できることがあげられる。
【0003】
しかし、前記のアクリル系感圧接着剤は、貼り付けた後、加熱したり、長期間放置したりすることにより、接着力が増大し、これにより再剥離の際の糊残りや基材切れ等が生じるため、作業性が悪くなるという問題点を有する。
【0004】
また、アクリル系接着剤は、溶剤型とエマルジョン型に分類される。溶剤型においては、前記の問題に対して様々な試みがなされているが、その重合方法のため、凝集力のある高重合度のポリマーが得られにくいという欠点がある。さらに、凝集力のないポリマーからなる感圧接着剤を用いると、特に高温時、被着体への糊残り、汚染の問題が生じやすく、更に塗布乾燥時に揮発する溶剤の回収が困難となりやすく、作業性、設備のコスト、環境上の立場から問題を有する。
【0005】
一方、特許文献1に、エチレン−酢酸ビニル樹脂とアクリル系単量体との共重合体を有するエマルジョンからなる感圧接着剤が開示されている。この感圧接着剤は、長期間放置しても、接着力を一定範囲内に保持することができ、再剥離の際、糊残り等の問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−238926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の感圧接着剤は、常温での初期接着性や、長期間放置後の接着性に優れる。ただ、最近、低温条件下での初期接着性の向上についても求められるようになってきている。また、ポリオレフィン等の難接着性基材に対しても、接着性の向上が求められている。さらに、長期間貼付した後に剥離した際に生じやすい糊残り等の汚染を抑制することも求められている。
【0008】
そこで、この発明は、常温での初期接着性や、長期間放置後の接着性に加えて、低温条件下での初期接着性にも優れた、水系エマルジョン型の感圧接着剤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、水系エマルジョン型感圧接着剤として、エチレン2〜35重量部、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル1〜97重量部、(メタ)アクリル酸アルキルエステル1〜97重量部を含む単量体混合物(全体を100重量部とする。)を、乳化重合して得られる共重合体を含有させることにより、前記課題を解決したのである。
【0010】
また、他の水系エマルジョン型感圧接着剤として、構成成分として、エチレン2〜35重量%、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル1〜97重量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体2〜96重量%(合計量を100重量%とする。)を含有するエチレン−ビニルエステル系共重合体の存在下、このエチレン−ビニルエステル系共重合体100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル1〜2000重量部を乳化重合して得られる重合体を含有させたものを用いてもよい。
【0011】
さらに、他の水系エマルジョン型感圧接着剤として、構成成分として、エチレン2〜35重量%、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル1〜97重量%及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体0〜96重量%(合計量を100重量%とする。)を含有するエチレン−ビニルエステル系共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びこの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体とを、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対して、前記共重合可能な単量体を等量以下の割合で乳化重合して得られる共重合体を含有させたものを用いてもよい。
【0012】
さらにまた、前記の各水系エマルジョン型感圧接着剤の構成成分である炭素数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルとして、バーサチック酸ビニルを用いるのがよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかる感圧接着剤は、エチレン、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから得られる共重合体を含有するエマルジョン、所定の割合のその他の単量体成分を、エチレン−ビニルエステル系共重合体の存在下で、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを乳化重合して得られる重合体を含有するエマルジョン、又は所定の割合のその他の単量体成分を含有するエチレン−ビニルエステル系共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びこの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体との共重合体との混合樹脂を含有するエマルジョンを用いるので、常温での初期接着性や、長期間放置後の接着性に加えて、低温条件下での初期接着性にも優れた、水系エマルジョン型の感圧接着剤を得ることができる。
【0014】
また、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルとして、バーサチック酸ビニルを用いることにより、低温条件下での初期接着性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかる感圧接着剤は、構成樹脂の構成成分として、エチレン、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを少なくとも用いた重合体であり、この重合体には、前記3つの単量体を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体(A)を含む水系エマルジョン型の接着剤、前記のエチレン、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルからなる共重合体をシード樹脂とし、このシード樹脂の存在下で前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じてこの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体を乳化重合して得られる乳化重合体(B)を含む水系エマルジョン型の接着剤、及び、エチレン及び炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルからなる共重合体と、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じてこの(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体を乳化重合して得られる重合体(又は共
重合体)との樹脂混合体(C)を含む水系エマルジョン型の接着剤である。以下、それぞれについて説明する。
【0016】
[共重合体(A)]
前記共重合体(A)は、構成樹脂の構成成分として、エチレン、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体である。
【0017】
前記炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(以下、「特定の脂肪族カルボン酸ビニルエステル」と称する。)としては、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等があげられる。これらの中でも、バーサチック酸ビニルを用いると、得られる接着剤の低温初期接着性をより向上させることができるので、好ましい。
【0018】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等があげられる。なお、この発明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」のいずれかを意味する。
【0019】
前記の各単量体以外に、必要に応じて、前記のその他の単量体成分である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体(以下、単に「その他の単量体」と称する。)を用いることができる。このようなその他の単量体として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等や、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、イソ吉草酸ビニル、ピバル酸ビニル、ヒドロアンゲリカ酸ビニル、カプロン酸ビニル、2−メチルペンタン酸ビニル、3−メチルペンタン酸ビニル、4−メチルペンタン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,3−ジメチルブタン酸ビニル、3,3−ジメチルブタン酸ビニル、2−エチルブタン酸ビニルがあげられる。
【0020】
前記エチレン含有量は、前記単量体混合物全体を100重量部としたとき、2重量部以上が必要であり、5重量部以上が好ましい。2重量部未満だと、粘着剤として用いた場合に糊残り等が起こるおそれがある。一方、上限は、35重量部がよく、20重量部が好ましい。35重量部より多いと、重合反応性が低下するそれがある。
【0021】
前記特定の脂肪族カルボン酸ビニルエステルは、前記単量体混合物全体を100重量部としたとき、1重量部以上が必要であり、30重量部以上が好ましく、50重量部以上がさらに好ましい。1重量部未満だと、凝集力が不足して、耐汚染性が悪化する傾向があるという問題点を生ずる場合がある。一方、上限は、97重量部であり、80重量部が好ましい。97重量部より多いと、低温時に粘着力が低下するおそれがある。
【0022】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有量は、前記単量体混合物全体を100重量部としたとき、1重量部以上であり、5重量部以上がよく、10重量部以上が好ましい。1重量部未満だと、低温での粘着力が不足するおそれがある。一方、上限は、97重量部であり、50重量部が好ましい。97重量部より多いと、凝集力が不足して、耐汚染性が低下するおそれがある。
【0023】
前記のその他の単量体の含有量は、前記単量体混合物全体を100重量部としたとき、
0重量部以上がよく、2重量部以上が好ましい。この単量体は用いなくてもよいので、下限は0重量部となる。一方、上限は、96重量部がよく、70重量部が好ましい。96重量部より多いと、粘着力が不足するおそれがある。
【0024】
前記共重合体(A)は、エマルジョンとして用いるのが好ましい。このようなエマルジョンは、重合体(A)を構成する前記の各単量体を乳化剤の下で、水又は水を主成分とし、これに水と相溶性のあるメタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒を加えた混合溶液等の水系媒体中で乳化重合させて得ることができる。
【0025】
[乳化重合体(B)]
前記乳化重合体(B)は、エチレン、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルからなる共重合体をシード樹脂とし、このシード樹脂の存在下で前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じて、前記その他の単量体を乳化重合して得られる。
【0026】
前記の炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(特定の脂肪族カルボン酸ビニルエステル)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び前記その他の単量体は、前記した共重合体(A)で用いられるものと同様である。
【0027】
前記エチレン含有量は、前記シード樹脂を構成する構造単位全体を100重量%としたとき、2重量%以上が必要であり、5重量%以上が好ましい。2重量%未満だと、粘着剤として用いた場合に糊残り等が起こるおそれがあるという問題点を生ずる場合がある。一方、上限は、35重量%がよく、20重量%が好ましい。35重量%より多いと、重合反応性が低下するそれがあるという問題点を生ずる場合がある。
【0028】
前記特定の脂肪族カルボン酸ビニルエステルは、前記シード樹脂を構成する構造単位全体を100重量%としたとき、1重量%以上が必要であり、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。1重量%未満だと、凝集力が不足して、耐汚染性が悪化する傾向があるという問題点を生ずる場合がある。一方、上限は、97重量%であり、80重量%が好ましい。97重量%より多いと低温時に粘着力が低下するおそれがある。
【0029】
前記のその他の単量体の含有量は、前記単量体混合物全体を100重量%としたとき、0重量%以上がよく、2重量%以上が好ましい。この単量体は用いなくてもよいので、下限は0重量%となる。一方、上限は、96重量%がよく、70重量%が好ましい。96重量%より多いと、粘着力が不足するおそれがある。
【0030】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有量は、前記シード樹脂100重量部に対して、1重量部以上がよく、10重量部以上が好ましい。1重量部未満だと、粘着力が不足するおそれがある。一方、上限は、2000重量部がよく、1000重量部が好ましい。2000重量部より多いと、ポリオレフィンに対する粘着力が不十分となるおそれがある。
【0031】
前記その他の単量体含有量は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量に対し、等量以下、すなわち100重量%以下がよく、30重量%以下が好ましい。等量より多いと、粘着力が不足するという問題点を生ずる場合がある。なお、この単量体は用いなくてもよいので、下限は0重量%となる。
【0032】
前記シード樹脂は、エマルジョンとして用いるのが好ましい。このようなエマルジョンは、シード樹脂を構成する前記の各単量体を乳化剤の下で、水又は水を主成分とし、これに水と相溶性のあるメタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒を加えた混合溶液等
の水系媒体中で乳化重合させて得ることができる。
【0033】
そして、前記乳化重合体(B)は、エマルジョンとして用いられる。このようなエマルジョンは、前記シード樹脂の存在下で、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じて前記その他の単量体を、乳化剤の下で、水又は水を主成分とし、これに水と相溶性のあるメタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒を加えた混合溶液等の水系媒体中で乳化重合させることにより得られる。
【0034】
[樹脂混合体(C)]
樹脂混合体(C)は、特定のエチレン−ビニルエステルからなる共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体との混合体である。
【0035】
前記特定のエチレン−ビニルエステルからなる共重合体とは、エチレンと炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルからなる共重合体をいう。
【0036】
前記のエチレンの含有量、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステルの含有量及び種類、その他の単量体、並びに乳化重合方法は、前記の[乳化重合体(B)]の欄で示した内容と同様である。
【0037】
また、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体とは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じて前記その他の単量体を乳化重合して得られる重合体又は共重合体をいう。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び前記その他の単量体は、前記した共重合体(A)で用いられるものと同様である。
【0038】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体における前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有量は、この(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体の構成単位全体を100重量%としたとき、50重量%以上がよく、80重量%以上が好ましい。50重量%未満だと、粘着力が不足するおそれがある。なお、この重合体又は共重合体は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体でもよいので、含有量の上限は、100重量%である。
【0039】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体における前記その他の単量体の含有量は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量に対し、等量以下、すなわち100重量%以下がよく、70重量%以下が好ましい。等量より多いと、粘着力が不足するおそれがあるという問題点を生ずる場合がある。なお、この単量体は用いなくてもよいので、下限は0重量%となる。
【0040】
前記の特定のエチレン−ビニルエステルからなる共重合体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体との混合比(重量比)は、固形分で、5/95以上がよく、10/90以上が好ましい。5/95より小さいと、低温時の粘着力が不十分となることがある。一方、上限は、90/10がよく、80/20が好ましい。90/10より大きいと、粘着力が不足するおそれがある。
【0041】
前記の特定のエチレン−ビニルエステルからなる共重合体や、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主構成成分とする重合体又は共重合体は、エマルジョンとして用いるのが好ましい。このようなエマルジョンは、各樹脂を構成する前記の各単量体を乳化剤の下で、水又は水を主成分とし、これに水と相溶性のあるメタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒を加えた混合溶液等の水系媒体中で乳化重合させて得ることができる。
【0042】
[乳化重合]
前記の各乳化重合は、前記の各成分に、乳化剤、重合開始剤、重合調整剤(分子量調整剤)等を加え、重合することにより行われる。なお、この乳化重合には、必要に応じて、その他の添加剤をこの発明の目的・効果を損なわない範囲で加えることができる。
【0043】
前記乳化剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性の乳化剤があげられる。前記アニオン性乳化剤しては、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸ナトリウム等があげられる。
【0044】
前記ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒドロキシエチルセルロース等があげられる。
【0045】
前記カチオン性乳化剤としては、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等があげられる。
両イオン性のものとして、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等があげられる。
【0046】
これらの乳化剤の使用量は、使用する全単量体成分に対して5.0重量%以下であることが好ましく、3.0重量%以下であることがより好ましい。5.0重量%よりも多い場合、耐汚染性を低下させる傾向がある。
【0047】
前記重合開始剤としては、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤や過硫酸塩系開始剤があげられる。この過酸化物系開始剤としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素等があげられる。
【0048】
前記アゾ系開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノバレリアン酸、アゾビスシアノペンタン酸、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩等があげられる。
前記過硫酸塩系開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等があげられる。
【0049】
前記重合調整剤(分子量調整剤)としては、例えばチオグリコール酸、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール等があげられる。
【0050】
前記乳化重合は、好適には、乳化剤水溶液、重合開始剤、及び乳化重合体(B)の製造においては、シード樹脂の存在下、各単量体成分、乳化剤及び水からなるモノマーエマルジョンを加えることによって行なわれる。より好ましくは、前記乳化剤水溶液に重合開始剤、及び乳化重合体(B)の製造においては、シード樹脂を加え、これにモノマーエマルジョンを滴下することによって行なわれる。この際、重合温度は40〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましい。また、モノマーエマルジョンの添加終了後、熟成反応を行なわせることが好ましい。その際の反応温度は好ましくは60〜90℃、より好ましくは60〜80℃であり、反応時間は好ましくは2〜5時間、より好ましくは3〜4時間である。
【0051】
[添加剤]
前記の共重合体(A)、乳化重合体(B)、及び樹脂混合体(C)には、必要に応じて、その他の添加剤として、リン酸エステル化合物を添加してもよい。このリン酸エステル化合物の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル等があげられる。
【0052】
前記リン酸エステル化合物を使用する場合、その添加量は、樹脂成分100重量部あたり、0.05重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましい。0.05重量部より少ないと、耐汚染性が十分に得られないおそれがある。一方、上限は、20重量部が好ましく、10重量部がより好ましい。20重量部より多いと、十分な粘着力が得られないおそれがある。
【0053】
前記リン酸エステル化合物以外のその他の添加剤として、前記の乳化重合時に、必要に応じて、防腐剤、防カビ剤、増粘剤、濡れ剤、消泡剤、粘着付与樹脂、可塑剤などを配合することができる。また、pH調整剤として、アンモニア水、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどを用いることもできる。なお、これらその他の添加剤は、乳化重合時だけでなく、乳化重合終了後に添加することもできる。
【0054】
[用途]
前記の共重合体(A)、乳化重合体(B)、又は樹脂混合体(C)からなる乳化重合体を、基材の少なくとも一方の面に塗工して、水系エマルジョン型感圧接着剤から形成される層を得ることができる。そのような層を有する積層体は、粘着テープ、粘着ラベル、粘着シート等の粘着シート状体として使用することができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、下記実施例及び比較例における測定方法について説明する。
【0056】
<特性の測定又は評価>
[初期粘着力の測定]
常温(25℃)下において、被着体をステンレス(SUS)板とし、JIS Z 0237に準じて180°引き剥がし接着力の測定を行った。
【0057】
[5℃における初期粘着力の測定]
被着体をポリエチレン(PE)板(日本テストパネル(株)製:幅2cm)に変更し、かつ、試験片を5℃に冷却し、次いで、この5℃の条件下で、前記の初期粘着力の測定を行った。
【0058】
[経時促進試験]
被着体をSUS板とし、東洋精機(株)製耐候促進試験機;アトラス・ユーブンコンにおいて、60℃雰囲気、紫外線照射下で4時間、40℃雰囲気、湿度90%下で4時間の1サイクル8時間を、9サイクル、合計72時間放置した後、JIS Z 0237に準じて180°引き剥がし接着力の測定を行った。また、このときの汚染の状態を確認し、下記の基準で判断した。
○:汚染なし
△:わずかに汚染あり
×:全面に汚染あり
【0059】
<原材料>
[エチレン]
・エチレン…三菱化学(株)製、以下、「Et」と称する。
【0060】
[ビニルエステル]
・酢酸ビニル…日本合成化学(株)製、以下、「VAC」と称する。
・バーサチック酸ビニル…シェル化学(株)製、以下、「VV」と称する。
【0061】
[アクリル系単量体]
・アクリル酸2−エチルヘキシル…三菱化学(株)製、以下、「2EHA」と称する。
・アクリル酸ブチル…三菱化学(株)製、以下、「BA」と称する。
・メタクリル酸メチル…三菱レイヨン(株)製、以下、「MMA」と称する。
・メタクリル酸…三菱レイヨン(株)製、以下、「MAA」と称する。
【0062】
[エチレン−酢酸ビニル系共重合体]
・エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合体…住友化学(株)製:スミカフレックス950HQ、固形分:53重量%、以下、「S−950」と称する。
・エチレン−酢酸ビニル共重合体…住友化学(株)製:スミカフレックス401HQ、固形分:55重量%、以下、「S−401」と称する。
【0063】
[リン酸エステル化合物]
・アルキルエーテルリン酸エステル…東邦化学工業(株)製:フォスファノールRD−720、以下、「RD−720」と称する。
【0064】
[乳化剤]
・ヒドロキシエチルセルロース…ダイセル化学(株)製、以下、「HEC」と称する。
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム…(株)花王製:ネオペレックスG−65、以下、「G−65」と称する。
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル…(株)花王製:エマルゲン1118S−70、以下、「1118S−70」と称する。
【0065】
[共重合体(A)を含む水系エマルジョンの製造]
(参考例1〜2、参考比較例1〜2)
耐圧容器に、水80重量部、及び表1に示す量のビニルエステル、アクリル系単量体、及び表1に示す量の各乳化剤を添加した。また、硫酸第一鉄七水和物0.002重量部、酢酸ナトリウム0.06重量部及び酢酸0.1重量部を溶解した溶液を添加した。
次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を50℃まで昇温した後、エチレンで5.0MPaまで加圧し、2.5%過硫酸ナトリウム水溶液を1.1重量部/h、及び9%ロンガリット水溶液0.8重量部/hを耐圧容器に添加して重合を開始させた。続いて、耐圧容器内の液温が上昇したことを確認した後、表1に示す量のアクリル系単量体、表1に示す量の各乳化剤、表1に示す量のリン酸エステル化合物、及び水80重量部を混合した調整液を、3時間かけて滴下した。このとき、容器内の液温を50℃に維持した。
次いで、重合開始後5時間経過した時点で酸化剤を3%過硫酸ナトリウム及び2%tert−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液に切り替え、6重量部/hの速度で耐圧容器に添加し、残留ビニルエステルが1%未満になった時点で耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、エマルジョン組成物を得た。
次いで、得られたエマルジョン組成物を、アプリケーターを用いて紙基材に、乾燥後の塗膜の厚さが30μmになるように塗工し、乾燥したのち、10mm×150mmに切断して、試験片を作製した。
【0066】
【表1】

【0067】
[乳化重合体(B)を含む水系エマルジョンの製造]
(実施例1〜4、比較例1〜2)
温度計、還流冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えた反応容器に、表2に示す量のシード樹脂(表2には、固形分量を記載)と水20重量部を仕込み、70℃に昇温した。次に、表2に示す量のアクリル系単量体、表2に示す量の各乳化剤、表2に示す量のリン酸エステル化合物、及び水27重量部を混合した調整液を、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩(和光純薬(株)製;V−50)0.3gを反応容器に加えた後、2時間かけて滴下した。その後、80℃で2時間熟成して、感圧接着性樹脂組成物となるエマルジョン組成物を得た。
次いで、得られたエマルジョン組成物を、アプリケーターを用いて紙基材に、乾燥後の塗膜の厚さが30μmになるように塗工し、乾燥したのち、10mm×150mmに切断して、試験片を作製した。
得られた試験片を用いて、前記の方法に従って、諸特性を測定又は評価した。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
[樹脂混合体(C)を含む水系エマルジョンの製造]
(参考例3)
温度計、還流冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えた反応容器に、水40重量部を仕込み、70℃に昇温し、V−50の0.3gを反応容器に加えた。次に、表3に示す量のアクリル系単量体、表3に示す量の各乳化剤、表3に示す量のリン酸エステル化合物、及び水40重量部を混合した調整液を、2時間かけて滴下した。その後、80℃で2時間熟成して、アクリル系共重合体エマルジョン組成物を得た。
得られたアクリル系共重合体エマルジョン組成物(固形分量:100重量部)に、エチレン−酢酸ビニル共重合体50重量部(固形分)を加え、混合して樹脂混合体を得た。
次いで、得られた樹脂混合体を、アプリケーターを用いて紙基材に、乾燥後の塗膜の厚さが30μmになるように塗工し、乾燥したのち、10mm×150mmに切断して、試験片を作製した。
得られた試験片を用いて、前記の方法に従って、諸特性を測定又は評価した。その結果を表3に示す。
【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として、エチレン2〜35重量%、炭素原子数8〜15の脂肪族カルボン酸のビニルエステル1〜97重量%、及び酢酸ビニル2〜96重量%(合計量を100重量%とする。)を含有するエチレン−ビニルエステル系共重合体の存在下、このエチレン−ビニルエステル系共重合体100重量部に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル1〜2000重量部を乳化重合して得られる重合体を含有してなる水系エマルジョン型感圧接着剤。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対して、この(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なその他の単量体を等量以下共重合させる請求項1に記載の水系エマルジョン型感圧接着剤。
【請求項3】
樹脂成分100重量部あたり、0.05〜20重量部のリン酸エステル化合物を含有する請求項1又は2に記載の水系エマルジョン型感圧接着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系エマルジョン型感圧接着剤から形成される層を基材の少なくとも一方の面に有する、粘着テープ、粘着ラベル及び粘着シートから選ばれる粘着シート状体。

【公開番号】特開2013−82935(P2013−82935A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2256(P2013−2256)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2008−119678(P2008−119678)の分割
【原出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000211020)中央理化工業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】