説明

水素発生装置及び燃料電池

【課題】大掛かりな機構を要さずに水素の発生量を容易に制御することができる水素発生装置及び燃料電池を提供する。
【解決手段】金属水素化物水溶液と反応促進水溶液の混合により、水素を生成する水素発生装置において、水素発生溶液との混合により水素発生反応を促進する反応促進溶液を貯蔵する反応容器を備え、金属水素化物水溶液と反応促進水溶液の混合する反応部が、反応容器に貯蔵される反応促進溶液に浸漬するよう配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素発生装置及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、固体高分子電解質膜を挟んでアノードとカソードを有する発電部を有し、アノード側に例えば水素やメタノール等の燃料流体を供給し、カソード側に例えば酸素や空気等の酸化用流体を供給し、電気化学反応により電力を発生する。
【0003】
燃料流体として水素を低エネルギーで得る方法として、ケミカルハイドライドと呼ばれる金属水素化物(例えば、水素化ホウ素リチウムや水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムナトリウム)を加水分解する方法が知られている。
【0004】
金属水素化物を加水分解して水素を得る場合、常温に近い低温で加水分解反応が進むため、効率よく水素を得ることができる。反面、水素発生量を制御することが難しいという問題があった。
【0005】
この問題に対し、金属水素化物を含む金属水素化物水溶液のpHを調節することで、加水分解の反応速度を制御する、水素発生技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、金属水素化物水溶液のpHが低い程反応速度が増加し、pHが高い程反応速度が低下することを利用している。反応槽内の金属水素化物と金属水素化物に付加する水の量を制御することにより、金属水素化物水溶液のpHを変化させる。これにより、加水分解の反応速度を変化させ、要求量に応じた水素を生成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−128502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献1の技術によるとpHの制御を反応槽の金属水素化物への水の投入により行うので、例えば、水素を発生させている状態から水素の発生を停止させる場合など、pHを大幅に変化させるために大量の水の投入する必要がある。水を循環再利用する構成も提案されているが、循環のための流路やポンプなどの複雑な機構が必要となる。また、大量の水を導入するため、水素の発生を停止させるまでの時間がかかってしまい、余剰な水素が発生してしまうといった、水素の要求量への追従性が悪いという問題がある。このようなことから、特許文献1の技術によると、また、大型化が避けられず、小型化を必要とする機器に適用するには向かない技術である。水素の要求量の変化が大きく、頻繁に変化する機器に適用するには向かない技術である。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、水素の発生量を容易に制御することができる小型化が可能な水素発生装置及び燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の水素発生装置の第一の特徴は、水素発生溶液を貯留する水素発生溶液室と、水素発生溶液と混合することで水素を発生する反応促進溶液を貯留する反応容器と、反応容器の内部に配置され、水素発生溶液と反応促進溶液とを混合する反応部とを備え、反応部は、反応促進溶液に浸漬し、鉛直上下方向に少なくとも2箇所の開口部を有する反応流路を備えることを要旨とする。
かかる特徴によれば、鉛直上下方向に少なくとも2箇所の開口部を有する反応流路を備える反応部が、反応促進溶液に浸漬して備えられるので、水素の発生量を制御する為に大掛かりな機構を必要せず、小型化が可能な水素発生装置とすることが可能になる。
【0010】
本発明の水素発生装置の第二の特徴は、第1の特徴の水素発生装置において、反応部は、水素発生溶液を反応流路に流入する流入部を有することを要旨とする。
かかる特徴によれば、水素発生溶液を流入部を通じて反応部に流入させることができ、反応部での水素発生反応を確実に行うことができる。
【0011】
本発明の水素発生装置の第三の特徴は、第1または2の特徴の水素発生装置において、流入部の流入口は、反応流路に鉛直上下方向に配置された開口部の位置に対し、鉛直方向略中央に備えられることを要旨とする。
かかる特徴によれば、流入口が、反応流路に鉛直上下方向に配置された開口部の位置に対し、鉛直方向略中央に備えられるので、反応部での水素発生により、反応流路に鉛直方向上向きの流れを生じさせ、鉛直方向下側の開口からの反応促進溶液を流入させると共に、反応容器に貯蔵される反応促進溶液を攪拌循環することができ、簡易な構造で、安定した水素発生反応を維持することができる。
【0012】
本発明の水素発生装置の第四の特徴は、第1から3のいずれかの特徴の水素発生装置において、反応流路は、筒状であることを要旨とする。
かかる特徴によれば、反応流路を筒状とすることで、反応流路を容易に製作することができ、小型が可能である。
【0013】
本発明の水素発生装置の第五の特徴は、第3または4のいずれかの特徴の水素発生装置において、反応流路の断面積は、流入口が備えられた位置から、開口部に向い拡大することを要旨とする。
かかる特徴によれば、断面積が、流入口が備えられた位置から、開口部に向い拡大する反応流路とすることにより、より確実に反応部へ反応促進溶液を流入させると共に、反応容器に貯蔵される反応促進溶液を攪拌循環することができる。
【0014】
本発明の水素発生装置の第六の特徴は、第1から5のいずれかの特徴の水素発生装置において、反応容器は、反応部を複数備えることを要旨とする。
かかる特徴によれば、複数の反応部を有することで、繊細な制御が可能である。また、水素発生能力を増大させることが可能となる。
【0015】
本発明の水素発生装置の第七の特徴は、第1から6のいずれかの特徴の水素発生装置において、反応容器は、拡縮部を備え、容積が変化することを要旨とする。
かかる特徴によれば、反応部を確実に反応促進溶液に浸漬された状態を維持することができるので、安定した水素供給が可能となる。
【0016】
本発明の水素発生装置の第八の特徴は、第1から7のいずれかの特徴の水素発生装置において、水素発生溶液は、金属水素化物を含む強アルカリ水溶液であり、反応促進溶液は酸性溶液であることを要旨とする。
かかる特徴によれば、水素発生溶液の水素発生に使用する前の水素発生を抑制し保存性を高め、反応促進溶液との混合により速やかな水素発生を行うことができ、水素の発生量を容易に制御することができる。
【0017】
本発明の水素発生装置の第九の特徴は、第1から8のいずれかの特徴の水素発生装置において、水素発生溶液室が貯留する水素発生溶液と反応容器が貯留する反応促進溶液との量の比は、反応容器で水素発生溶液と反応促進溶液とが混合した混合溶液のpHが7以下となる比であることを特徴とする。
【0018】
本発明の水素発生装置の第九の特徴は、第1から8のいずれかの特徴の水素発生装置において、水素発生溶液の反応部への導入量を制御する制御部を有し、制御部は、反応容器で水素発生溶液と反応促進溶液とが混合した混合溶液のpHが7以下となるように、導入量を制御することを要旨とする。
かかる特徴によれば、反応容器で水素発生溶液と反応促進溶液とが混合した混合溶液のpHが7以下とすることにより、確実に水素発生反応を制御することができる。
【0019】
本発明の燃料電池の第一の特徴は、第1から10のいずれかの特徴の水素発生装置に発電部を接続することを要旨とする。
かかる特徴によれば、大掛かりな機構を要さずに水素の発生量を容易に制御することができる小型化が可能な水素発生装置を備えた燃料電池とすることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大掛かりな機構を要さずに必要量の水素を発生させることができる水素発生装置を提供することが可能になる。
【0021】
また、本発明によれば、大掛かりな機構を要さずに必要量の水素を発生させることができる水素発生装置を備え、燃料ロスの少ない燃料電池を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の水素発生装置の全体の概略構成図である。
【図2】水素発生装置の反応部を表す構成図である。
【図3】水素発生装置の反応部を表す構成図である。
【図4】水素発生装置の反応部を含む反応容器を表す構成図である。
【図5】水素発生装置の反応部を含む反応容器を表す構成図である。
【図6】水素発生装置の反応部を含む反応容器を表す構成図である。
【図7】水素発生装置の反応部を表す構成図である。
【図8】本発明の燃料電池の全体の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
図1から図2に基づいて水素発生装置の一実施例を説明する。
図1には本発明の一実施例に係る水素発生装置の全体の概略構成、図2には反応部4の構成を示している。
図1に示すように、水素発生装置1はケース7の内部に反応部4が格納される反応容器3と、水素発生溶液を貯蔵する水素発生溶液室2とを有する。反応容器3は、水素発生溶液との混合により水素発生反応を促進する反応促進溶液を貯蔵する。水素発生溶液室2と反応容器3に格納される反応部4とは、送液管5によって接続される。反応部4は、反応室3に貯蔵される反応促進溶液に浸漬するよう配置される。
【0024】
また、反応容器3は、反応部4で生成された水素を反応容器3から排出する排出流路10を備える。排出流路10は、水素を消費する機器12と、接続部11を介して接続され、水素発生装置1で生成した水素が機器12に供給される。接続部11を着脱可能な構造とすることで、水素発生装置1を交換可能なカートリッジとして構成とすることができる。
【0025】
また、反応促進溶液や反応で生じる副生成物などの反応容器3の内容物や、反応部4での反応に伴う溶液の飛沫などの反応容器3からの流出を防止する為に、排出路10に通じる反応室3内に気液分離膜13を設けてもよい。
【0026】
図1に示す水素発生装置1における水素発生溶液室2から反応部4への送液方式は、プランジャ8を介して加圧バネ9で水素発生溶液を加圧し水素発生溶液を反応部4に供給する方式である。さらに、送液管5に逆止弁6を配置することにより、反応容器3の内部の圧力が加圧バネ9の荷重による水素発生溶液室2の圧力よりも低い場合に反応部4に水素発生溶液が送られ、また、反応容器3の内部の圧力が加圧バネ9の荷重による水素発生溶液室2の圧力よりも低い場合に停止する動作が得られる。すなわち、ポンプなどの送液機器を使用しない機構によって反応容器3の内部の圧力を維持することができる。また、水素発生溶液の圧力により、反応容器3の内部の圧力が設定されるので、加圧バネ9のバネ力を変更することにより、任意に反応容器3の圧力調整すなわち、水素発生装置1から出力する水素圧力の設定が可能である。本実施例では、送液ポンプなどの送液機器を用いない方式を示したが、水素発生溶液の送液方法を限定するものではなく、送液ポンプなどの送液機器を用い、必要な水素の圧力や流量により、水素発生溶液の送液量を制御することも可能である。液送ポンプとしては、定量性があるダイヤフラム式、プランジャ式など、容積式ポンプが好ましく、液体の漏洩や薬品への耐性の高いダイヤフラム式が好ましい。
【0027】
また、ケース7の内部に反応容器3と水素発生溶液室2を配置する構成ではなく、送液管5を着脱可能な構造とし、反応容器3と水素発生溶液室2を別体の構造とすることも可能である。また、反応室4に水素発生溶液室2を配置することも可能であり、さらに、水素発生溶液室2を水素発生溶液の消費と共に縮小する可撓性の材質で形成することにより、水素発生溶液室4の容積を有効に活用することができ、水素発生装置1の体積を縮小することもできる。
【0028】
水素発生溶液には、加水分解型の金属水素化物の水溶液を用いる。金属水素化物は、例えば、水素化ホウ素塩、水素化アルミニウム塩、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム等が挙げられる。特に、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。金属水素化物の加水分解の反応速度は、pH依存性があり、pHが高い程、反応速度が低下する。水溶液として貯蔵するために、pHが高い強アルカリ溶液とすることにより、加水分解反応による水素の発生を抑制し、安全に貯蔵保管することができる。
【0029】
本実施例では、12%水素化ホウ素ナトリウム、40%水酸化ナトリウムの水溶液を用いた。また、この溶液のpHは14であり、水溶液中での金属水素化物の加水分解が抑制されているpHが高い強アルカリ溶液である。反応促進溶液は、酸性水溶液を用いる。
【0030】
例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、琥珀酸、りんご酸等の有機酸の酸性水溶液を用いることにより、強アルカリの金属水素化物水溶液のpHを変化させ反応速度を制御することができる。また、酸性水溶液は、強酸とすることが望ましい。これにより、金属水素化物水溶液のpHを速やかに変化させることができ、水素発生の制御性を高めることができる。
本実施例では、貯蔵や送液など構成部材の選択及び取り扱いが比較的容易なリン酸を用いる。
【0031】
水素を消費する機器12の水素消費流量に追従して、水素供給を行うためには、水素発生溶液と反応促進溶液の加水分解反応の反応性を高めて短時間で反応を完了させることが必要である。特に、水素の消費が急激に小さくなった際に、速やかに加水分解反応を停止することは、余剰な水素の発生を抑制できることで、反応容器などを耐圧構造とする必要がなくなり、水素発生装置やそれを使用する機器を軽量、小型にすることが出来ることから、重要である。
【0032】
本実施例の水素発生装置1は、反応容器3に貯蔵された反応促進溶液に、水素発生溶液を導入する。すなわち、過剰量の反応促進溶液である酸性水溶液に対して、少量の金属水素化物の水溶液である水素発生溶液を導入することとなる。これにより、反応容器3の反応部4に導入された水素発生溶液のpHは、速やかに低下し、水素発生溶液に含まれる金属水素化物の加水分解反応を速やかに完了することができる。
【0033】
また、反応容器3に貯蔵される反応促進溶液の量は、所望の水素発生溶液を導入後の混合溶液のpHが7以下となる様に、貯蔵される反応促進溶液と水素発生溶液の割合が設定される。また、反応容器3に貯蔵される反応促進溶液の量を特に規定せずに、所望の水素発生溶液を導入後の混合溶液のpHが7以下となる様に、水素発生溶液の導入量を調節する制御部を設けてもよい。さらに、pH6以下となる量が望ましい。水素発生溶液に水素化ホウ素ナトリウム、水酸化ナトリウムの水溶液を用い、反応促進溶液にリン酸水溶液を用いる場合、所望の水素発生溶液を導入後の水素発生溶液と反応促進溶液の割合を、水素化ホウ素ナトリウムと水酸化ナトリウムのmol数の和とリン酸のmol数を等molとしたとき、導入後(反応後)の溶液のpHはpH4程度であり、早い反応速度を維持することが可能である。この割合に基づき、水素発生溶液に12%水素化ホウ素ナトリウム、40%水酸化ナトリウムの水溶液を用い、反応促進溶液に85%リン酸水溶液を用いた場合、体積比は、1:1.26。重量比は、1:1.52となる。
【0034】
この様に、反応容器3に貯蔵される反応促進溶液に対する、導入する水素発生溶液の割合を規定することにより、所望の水素発生溶液の導入を終えるまでの間において、反応を持続することができ、さらに余剰な水素の発生を抑制し、水素を消費する機器12の水素消費流量に追従して、水素供給を行うことができる。また、上記の水素発生溶液に含まれる水は、水素化ホウ素ナトリウムに対して、8.4倍(mol)であり、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解に充分な量である。
【0035】
また、反応促進溶液にも水は含まれ、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解に充分な水の量であり、水溶液中での金属水素化物の加水分解を抑制できるpHが高い強アルカリ溶液としながら、水素発生溶液の水素化ホウ素ナトリウムの濃度をさらに増加させ重量(体積)あたりの水素発生量を増加させることも可能である。
【0036】
反応部4は、図2に示すように、反応流路14を有し、送液管5が接続され、送液管5から反応流路14に水素発生溶液を流入する流入口15が、反応流路14の開口の位置に対し、鉛直方向略中央に配置される。反応流路14は、パイプ状の端部が開口した筒形状であり反応促進溶液や発生した水素を流通する。図2には、円筒状の反応流路14を示したが、形状はこれに限らず多角形状でも良く、反応促進溶液や発生した水素を流通する筒形状のものが適用できる。
【0037】
流入口15から水素発生溶液が反応流路14に導入される。このとき、反応部4は、反応容器3内の反応促進溶液に浸漬されているため、反応流路14は、反応促進溶液で満たされているので、流入口15から反応流路14に導入された水素発生溶液は、反応促進溶液と接触し水素を発生する。
【0038】
図1に示すように、反応部4は、反応流路14の開口を鉛直方向の上下の位置になるよう反応容器3に配置される。これにより、反応流路14内で水素発生溶液と反応促進溶液の接触により発生した水素は、反応流路14の鉛直方向上向きに移動し反応流路14の鉛直方向上側の開口から反応容器3に排出される。このとき、反応流路14に鉛直方向上向きの流れが生じ、水素と共に反応後の溶液が排出され、鉛直方向下側の開口から反応促進溶液が流入する。これにより、反応流路14に反応後の溶液が滞留することがないので、反応流路14内の反応促進溶液のpHの上昇が抑制され、水素発生速度が低下することなく、水素発生反応を維持することができる。
【0039】
この動作によって、反応容器3に貯蔵される反応促進溶液が、攪拌循環される。これにより、反応容器3の溶液pHの偏りを抑制することができるので、所望の水素発生溶液の導入を終えるまでの間において、反応を持続することができ、余剰な水素の発生を抑制し、水素を消費する機器12の水素消費流量に追従して、水素供給を行うことができる。
【0040】
また、図3に示すように、反応流路14の流路断面面積を流入口15が配置される反応流路14の流路方向中央で小さく、両端部に向かって大きくすることにより、発生した水素を反応流路14から反応容器3への移動をより円滑に行うことができる。
【0041】
また、図4に示すように、反応促進溶液を貯蔵する反応容器3の一部に隔壁114を設け、反応容器3の内壁との間の空間を反応流路14とすることができる。筒状の流路部材を使用することなく、より簡易な構造で同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、ひとつの反応部4が反応容器3に配置された例について説明したが、反応部4を反応容器3に複数配置することもできる。複数の反応部4にそれぞれ送液管5を配置し、水素発生溶液を導入する。それぞれの水素発生溶液の供給を制御することにより、複数の反応部4のそれぞれの発生量を制御できるので、水素消費流量の変動への追従が容易である。また、反応部4あたりの反応量を少なくできるので、より繊細な発生量の制御が可能であり、水素を消費する機器の水素消費流量に合わせて水素を発生することができる。また、複数の反応部4を備えることにより、水素発生能力を増大させることができるので、水素消費流量の大きな機器への適用が可能となる。
以上の構成において、上述した水素発生装置1では、大掛かりな機構を要さずに必要量の水素を確実に発生させることが可能になる。
【0043】
(実施の形態1の第1変更例)
図5は、反応容器3構造の変更例を示す。
図5に示す反応容器3は、反応容器3の容積を可変とする拡縮部21を備える。また、拡縮部21の動きに追従するように、排出流路10は伸縮可能な構造を備える。また、反応部4の構造は、前述の実施の形態1の反応部4と同様の構造であり、反応容器3に貯留される反応促進溶液に浸漬され配置される。図5(a)は、反応容器3に水素発生溶液が導入される前の状態を示す。また、図5(b)は、反応容器3に水素発生溶液が導入されている状態、または導入された後の状態を示す。反応容器3の溶液体積に従い、反応容器3の容積空間が変化することで、反応容器3の溶液が少ない水素発生反応の初期においては、反応部4を確実に反応促進溶液に浸漬された状態を維持することができ、確実に水素発生反応と反応促進溶液の攪拌を行い、安定した水素供給が可能となる。また、反応容器3の溶液が多い水素発生反応の中期・後期おいては、反応容器3の容積空間を十分に確保する事ができ、持続的な水素発生反応を実現できる。
【0044】
(実施の形態1の第2変更例)
図6は、反応容器3構造の変更例を示す。
図6に示す反応容器3は、反応容器3の容積を可変とする拡縮部21を備えることは、実施の形態1の第1変更例と同様である。本実施例は、水素排出室22に反応容器3を収容する点が、実施の形態1の第1変更例と異なる。
【0045】
反応容器3内で発生した水素は、水素(気体)のみを排出する気液分離膜13を通じて水素排出室22に排出される。水素排出室22は、反応容器3から排出された水素を受容する空間を有し、排出流路10に接続される。これにより、排出流路10と反応容器3を独立した構造とすることができ、反応容器3や排出流路10の配置の自由度が向上し、水素発生装置1の接続機器の形状に合わせた水素発生装置1の形状設計が可能となる。また、反応容器3に気体である水素のみを排出する気液分離膜13を上下に配置する構造が可能となる。これにより、反応容器3の姿勢に因らず、反応容器3から水素を水素排出室22に排出し、排出流路10から排出することが可能となる。
【0046】
(実施の形態1の第3変更例)
図7は、反応部4および反応容器3の変更例を示す。
図7(a)に示す反応部4は、複数の反応流路14を有する。複数の反応流路14は、流入口15を中心に概放射状に配置されることが望ましい。図7は、3つの反応流路14を配置した例である。図7(b)この反応部4を収めた反応容器3を示す。図7(b)に示す反応容器3は、4面に水素を排出する気液分離膜13を備え、内部に反応促進溶液を貯蔵した状態において、反応容器3の姿勢に因らず反応容器3から水素を排出することが出来る。このとき、図6に示す反応容器3の構造と同様に、水素排出室22を設け、反応容器3から排出された水素を受容し排出流路10に排出する構造とすることが望ましい。これにより、反応容器3の姿勢に因らず安定して水素発生供給が可能となる。
【0047】
(実施の形態2)
図8に基づいて本発明の燃料電池を説明する。図8には本発明の水素発生措置の一実施例を燃料電池の一部として構成する場合の燃料電池全体を示している。
図8の燃料電池の全体図は、図1に示した水素発生装置1を発電部30に接続している。発電部30には燃料極室32が備えられ、燃料極室32は燃料電池セル31の燃料極35に接する空間を構成している。燃料極室32には水素発生装置1の排出流路10が接続されている。水素発生装置1で発生した水素は排出流路10から燃料極室32に送られ、燃料極35での燃料電池反応で消費される。
【0048】
上述した燃料電池は、大掛かりな機構を要さずに必要量の水素を発生させることができる水素発生装置を備え、燃料ロスの少ない燃料電池となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、水素発生装置の産業分野で利用することができる。
また、本発明は、水素発生装置を備えた燃料電池の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 水素発生装置
2 水素発生溶液室
3 反応容器
4 反応部
5 送液管
6 逆止弁
7 ケース
8 プランジャ
9 加圧バネ
10 排出流路
11 接続部
12 水素消費機器
13 気液分離膜
14 反応流路
15 流入部
21 拡縮部
22 水素排出室
30 燃料電池
31 電池セル
32 燃料極室
33 酸化剤極
34 固体高分子電解質膜
35 燃料極
114 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素発生溶液を貯留する水素発生溶液室と、
前記水素発生溶液と混合することで水素を発生する反応促進溶液を貯留する反応容器と、
前記反応容器の内部に配置され、前記水素発生溶液と前記反応促進溶液とを混合する反応部とを備え、
前記反応部は、前記反応促進溶液に浸漬し、鉛直上下方向に少なくとも2箇所の開口部を有する反応流路を備えることを特徴とする水素発生装置。
【請求項2】
前記反応部は、前記水素発生溶液を前記反応流路に流入する流入部を有することを特徴とする請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項3】
前記流入部の流入口は、前記反応流路に鉛直上下方向に配置された前記開口部の位置に対し、鉛直方向略中央に備えられることを特徴とする請求項1または2に記載の水素発生装置。
【請求項4】
前記反応流路は、筒状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項5】
前記反応流路の断面積は、前記流入口が備えられた位置から、前記開口部に向い拡大することを特徴とする請求項3または4のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項6】
前記反応容器は、前記反応部を複数備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項7】
前記反応容器は、拡縮部を備え、容積が変化することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項8】
前記水素発生溶液は、金属水素化物を含む強アルカリ水溶液であり、
前記反応促進溶液は、酸性溶液であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項9】
前記水素発生溶液室が貯留する前記水素発生溶液と前記反応容器が貯留する前記反応促進溶液との量の比は、
前記反応容器で前記水素発生溶液と前記反応促進溶液とが混合した混合溶液のpHが7以下となる比であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項10】
前記水素発生溶液の前記反応部への導入量を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記反応容器で前記水素発生溶液と前記反応促進溶液とが混合した混合溶液のpHが7以下となるように、前記導入量を制御することを特徴する請求項1から8のいずれか一項に記載の水素発生装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の水素発生装置に発電部を接続することを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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