説明

水素酸素混合ガス燃焼装置の消火装置および消火方法

【課題】混合ガス燃焼装置において、バーナの消火時に逆火が生じることを確実に防止する。
【解決手段】消火時に、不燃ガス源18からの不燃ガスを混合ガス流路12に供給し、バーナ14からミキサ22までの流路12を混合ガスから不燃ガスに置換して逆火のない消火を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素酸素混合ガスをバーナに供給して混合ガスの燃焼を行う燃焼装置において、バーナからガス源へ向かう逆火を生じさせること無く燃焼ガスの燃焼を消火する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、特願2006−187245号において、電気分解を利用した水素と酸素の混合ガス発生装置を提案している。
【0003】
このような水素酸素混合ガスは、各種の燃焼装置、例えば金属の切断加工装置、溶接装置あるいは建物、ビニールハウスなどの暖房装置としても用いられ、極めて有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような水素酸素混合ガス燃焼装置においては、バーナなどの燃焼器の炎がガス源側に伝搬するいわゆる逆火現象が生じやすく、このような逆火が燃焼ガス流路あるいはガス源に不測の爆発を引き起こすという恐れがあった。
【0005】
このような逆火現象は、特に燃焼装置の消火時に生じやすく、単に燃焼ガスの供給を絶つのみでは、バーナの燃焼が容易に燃焼ガス流路を逆走してしばしば逆火現象を引き起こす原因となっていた。
【0006】
本発明はこのような消火時における逆火の発生を防止する改良された消火装置及び方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる手段は、ガス源から水素酸素混合ガスをバーナへ供給して混合ガスの燃焼を行う燃焼装置の消火装置であって、混合ガス流路を開閉する主弁と、不燃ガス源の不燃ガスをバーナより上流の混合ガス流路に供給する不燃ガス流路と、不燃ガス流路を開閉する消火弁と、消火時に、消火弁を開いてバーナ近辺の混合ガス流路の混合ガスを不燃ガスで置換する弁制御装置と、を含む。
【0008】
また、本発明にかかる方法は、ガス源から水素酸素混合ガスをバーナへ供給して混合ガスの燃焼を行う燃焼装置の消火方法であって、消火時に、バーナに不燃ガス例えば空気を送り込み、バーナ近辺の混合ガス流路の混合ガスを不燃ガスで置換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、逆火の生じやすい消火時に不燃ガスをバーナ近辺に送り込み、バーナ近辺にある燃焼ガスを不燃ガスによって置換することによって、バーナの炎が燃焼ガス流路を通って伝搬することを確実に防止し、これによって逆火を確実に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1には本発明にかかる消火装置の好適な実施形態が示されている。
【0011】
水素酸素混合ガスは、ガス源10に蓄えられており、混合ガス流路12を通ってバーナ14に供給されている。ガス源10は、前述した本発明者の特願2006−187245号に示されるような電気分解を利用した燃焼ガス発生装置そのものでも良く、またこのような発生装置から得られた水素酸素混合ガスを蓄積するガス源でも良い。バーナ14は、各種の燃焼装置に好適な燃焼バーナであり、例えばビニールハウス内に暖められた空気を送り込む為のバーナなどが好適である。
【0012】
前記混合ガス流路12には主弁16が設けられ、ガス源10からバーナ14への水素酸素混合ガスの供給を開閉制御している。
【0013】
本発明において特徴的なことは、前記混合ガス流路12に不燃ガス源18からの不燃ガス、例えば空気、不活性ガスなどが割り込み供給されていることである。この為に、不燃ガス流路20は混合ガス流路12に対してミキサ22の部分で合流されている、
【0014】
この不燃ガス流路20には消火弁24が設けられており、不燃ガス流路20を消火弁24によって開閉することにより、ミキサ22への不燃ガスの供給を制御している。
【0015】
前記主弁16及び消火弁24はいずれも弁制御装置26からの制御信号によって制御されており、バーナ14への混合ガスあるいは不燃ガスの供給が弁制御装置26によって最適制御されている。
【0016】
本発明にかかる消火装置は以上の構成からなり、以下にその作用を説明する。
【0017】
図2にはバーナ14に対する混合ガスの供給量がAで示され、また同様にバーナ14へのミキサ22を介した不燃ガスの供給量がBにて示されている。
【0018】
時刻t0からt1までは通常燃焼状態を示し、ガス源10からは水素酸素混合ガスがバーナ14に送られ、所望の燃焼が行われる。もちろんこのとき、主弁16は開放そして消火弁24は閉止されている。
【0019】
時刻t1において燃焼の消火が指示されると、図2Bで示されるように弁制御装置26は消火弁24を開放する。これによって、不燃ガス源18からは不燃ガス流路20を通ってミキサ22に不燃ガスが供給され、このときの不燃ガスの圧力は水素酸素混合ガスの圧力の2倍から5倍に設定されているので、時刻t1からt2の短時間において、バーナ14からミキサ22までの混合ガス流路には、混合ガスに代わって不燃ガスが置換され、バーナ14の燃焼は速やかに鎮火される。そして、このときバーナ14からミキサ22までの混合ガス流路12中にはもはや混合ガスが存在しないので、バーナ14が鎮火したときにその炎がガス源10に向かって伝搬することもなく、容易に迅速な消火が行われることとなる。
【0020】
本実施形態において、時刻t2からt3までの短時間、弁制御装置26は消火弁24を閉止する。この実施形態において弁制御装置26は時刻t0からt2まで継続して主弁16を開放状態に保持しているので、この時ガス源10からは混合ガスが主弁16を通ってバーナ14に送り込まれ、バーナ14からミキサ22までに存在する不燃ガスを排出することができる。
【0021】
時刻t3において弁制御装置26は主弁16も閉止し、燃焼装置の消火処理を完了する。
【0022】
前述した時刻t2からt3までの不燃ガス排出は、次にバーナ14を点火するときに混合ガスを迅速に点火炎に近づけることができ、点火作業を迅速に行うために有用である。もっとも、時刻t2からt3までの不燃ガス排出は本発明において必須のものでは無く、単に消火処理によって不燃ガスをバーナ14からミキサ22までの混合ガス流路12に充填するのみで消火処理を終了することも可能である。
【0023】
図3には、本発明にかかる消火装置の混合ガスと不燃ガスとの合流路近辺の他の実施形態が示されている。
【0024】
この実施形態では、図1のミキサ22は存在せず、そのかわり合流地点には三方路30が設けられている。三方路30の第一入コネクタ30aには水素酸素混合ガス源10に連通する混合ガス流路12が接続され、一方、第二入コネクタ30bには、不燃ガス源18に連通する不燃ガス流路20が接続されている。
【0025】
そして、三方路30の出コネクタ30cにはバーナ14に連通する短いバーナ流路32が接続されている。
【0026】
そして、混合ガス流路12には、三方路30近傍に順次逆止弁34、前述した主弁16が設けられ、同様に不燃ガス流路22にも逆止弁36、消化弁24が設けられている。
【0027】
図3から明らかなように、三方路30は、混合ガスと不燃ガスとが相対する方向から衝突し、その後直交方向に出コネクタ30c側に向きを変えて流れる構造からなる。
【0028】
この結果、図3の実施形態によれば、消化が必要となったときに、消化弁24を開いて不燃ガスを三方路30に送り込むと、このときの不燃ガス圧力が混合ガス圧力より僅かに高く設定するのみで、合流点において不燃ガスが混合ガスを押しのけて出コネクタ30cすなわちバーナ流路32に割り込み進入し、混合ガスのそれ以降のバーナ流路32への流れ込みを容易に阻止することができる。これによって、僅かな圧力差を設けることによって、不燃ガスが混合ガスを抑制して確実な消化作用を行うことが可能となる。
【0029】
もちろん、この消化時に不燃ガスは混合ガス流路12に設けられた逆止弁34によってガス源10への流れ込みが阻止されている。同様に通常の燃焼時には、不燃ガス流路22に設けられた逆止弁36により混合ガスが不燃ガス源18に流れ込むことを確実に阻止している。図3における三方路30は混合ガス側と不燃ガス側とが直線上に相対向しているが、もちろん適当な角度をもって同一角度で対向することも可能である。
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、燃焼装置の消火を逆火を生じさせることなく容易に行うことができ、水素酸素混合ガスの燃焼に極めて有用な消火装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる消火装置の好適な実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明にかかる消火方法の実施形態を示すチャート図である。
【図3】本発明にかかる消火装置の混合ガスと不燃ガスとの混合部における他の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0032】
10 ガス源、12 混合ガス流路、14 バーナ、16 主弁、18 不燃ガス源、20 不燃ガス流路、22 ミキサ、24 消火弁、26 弁制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス源から水素酸素混合ガスをバーナへ供給して混合ガスの燃焼を行う燃焼装置の消火装置であって、
混合ガス流路を開閉する主弁と、
不燃ガス源の不燃ガスをバーナより上流の混合ガス流路に供給する不燃ガス流路と、
不燃ガス流路を開閉する消火弁と、
消火時に、消火弁を開いてバーナ近辺の混合ガス流路の混合ガスを不燃ガスで置換する弁制御装置と、
を含む水素酸素混合ガス燃焼装置の消火装置。
【請求項2】
ガス源から水素酸素混合ガスをバーナへ供給して混合ガスの燃焼を行う燃焼装置の消火方法であって、
消火時に、バーナに不燃ガスを送り込み、バーナ近辺の混合ガス流路の混合ガスを不燃ガスで置換することを特徴とする水素酸素混合ガス燃焼装置の消火方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−97827(P2009−97827A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271190(P2007−271190)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(595017621)