説明

水蒸気透過率が小さい高度に中和された酸ポリマーおよびそのゴルフボールにおける利用

【課題】ポリブタジエンを主材料とするコアが吸湿する事によりゴルフボールの特性、性能が好ましくない方向に変化するのを防止する。
【解決手段】耐湿性組成物から製造されてコアおよびカバーの間に配された低比重中間層を有する、ゴルフボールを実現する。種々の層の厚さおよび比重等をプレーヤのレベルに合わせ適切に設定し、ゴルフボールの慣性モーメントが大きくし、また小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全般的には、高度に中和された酸ポリマーを有する耐湿性組成物から製造された低比重の中間層を具備するゴルフボールに関する。これに限定されないが、中間層、コアおよびカバー層の厚さおよび比重を含む種々の要因に応じて慣性モーメントは大きくなったり、小さくなったりする。
【0002】
この発明は、2005年11月21日に出願された米国特許出願11/284,382の一部継続出願であり、これは、以下の6つの米国特許出願、すなわち、2005年7月27日出願の米国特許出願11/191,087、2004年10月27日出願の米国特許出願10/974,144、2003年5月19日出願の米国特許出願10/440,984、2005年4月7日出願の米国特許出願11/101,207、2005年2月18日出願の米国特許出願11/061,260、および2005年2月18日出願の米国特許出願11/061,338の部分継続出願であり、これらの開示は参照してここに組み入れる。
【背景技術】
【0003】
スピンレートは、熟練したゴルファーにとってもレクレーションのためのゴルファーにとってもゴルフボールの重要な特性である。スピンレートが大きいと、PGAプロやハンディキャップの少ないプレーヤーのような熟練したプレーヤーがゴルフボールのコントロールを最大限に活用することができる。例えば、グリーンへのアプローチショットにおいて、高スピンレートゴルフボールを用いると、プレーヤーはバックスピンを生成してボールをグリーンに止めることができる。高スピンボールを用いると、また、サイドスピンを生成し、また制御してボールをドローまたはフェードさせることができる。つまり、熟練したプレーヤーは、大抵、スピンレートの大きいゴルフボールを好んで用いる。
【0004】
他方、レクレーションのためのプレーヤーは、一般に、低スピンのボールを好む。レクレーションのためのプレーヤーは、典型的には、ボールのスピンを意図的にコントロールすることができず、ボールを打つときにしばしば意図せずにボールにサイドスピンが加わってしまい、意図したコースからボールがそれる。大抵、高スピンレートのゴルフボールを好まない。これらのプレーヤーにとっては、スライスやフックが一番の障害である。クラブヘッドがボールを打ったとき、スピンの少ないボールは、サイドスピンレートを減少させる。したがって、レクレーションのためのプレーヤーは、スピンレートの小さいゴルフボールを好む。
【0005】
ゴルフボールのスピンレートを制御する1つの方法は、ボール中の種々の層の密度すなわち比重を再配置することである。例えば、ボールの外側部分からの重量をボールの中心に再配分すると慣性モーメントが減少してスピンレートを増大させる。
【0006】
しかしながら、種々のゴルフボールの構造は、層を形成するために採用される材料の特性により制約を受ける。例えば、通常のゴルフボールコア材料、例えば、ポリブタジエンゴムは長期間環境密度に露出されると湿気を吸収する傾向があり、これにより、好ましくないゴルフボールの特性および性能を招来してしまう。そのため、いくつかのゴルフボール構造では、コアが環境湿度または水に露出するのを阻止するために水蒸気バリア層を必要とする。また、ウレタンは、ゴルフボールのカバー層の材料として知られているけれど、これは大きな水蒸気透過率を有する。したがって、ウレタンカバーを具備するゴルフボールは典型的には低水蒸気透過率の下側の層を必要とする。
【0007】
したがって、センタまたはコアから表面にいたる任意の場所において、層に対する環境湿度の影響と関係なしに、低水蒸気透過率の組成物から製造された層を配置可能にする、そのような低水蒸気透過率の組成物に対する要請が、ゴルフ業界において、依然として存在する。この発明は、そのような組成物および小さなスピンレートのゴルフボールへのその使用を記述する。
【発明の開示】
【0008】
1実施例において、この発明は、コア、中間層およびカバーを有するゴルフボールに向けられている。中間層の比重は1.05以下であり、この中間層が耐湿性組成物から製造され、この耐湿性組成物の水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であり、かつこの耐湿性組成物は高度に中和された酸ポリマーを有する。
【0009】
他の実施例において、この発明は、高密度フィラーを有するゴム組成物から製造されたコアと、ポリウレタンまたはポリ尿素のカバーと、コアおよびカバーの間に配される低比重の中間層とを有するゴルフボールに向けられている。中間層は、その比重が1.05以下であり、耐湿性組成物から製造され、かつ、耐湿性組成物は、その水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であり、かつ高度に中和された酸ポリマーを有する。ゴルフボールの慣性モーメントが83g・cm以下である。
【0010】
他の実施例において、この発明は、ゴムのコアと、ポリウレタンまたはポリ尿素のカバーと、コアおよびカバーの間に配される低比重の中間層と、中間層およびカバーの間に配された薄い高密度の層とを有するゴルフボールに向けられている。中間層は、その比重が1.05以下であり、耐湿性組成物から製造され、かつ、この耐湿性組成物は、その水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であり、かつ高度に中和された酸ポリマーを有する。薄い高密度の層は。その厚さが0.001インチから0.05インチで、その比重が1.2以上である。ゴルフボールの慣性モーメントは85g・cm以下である。
【発明の詳細な説明】
【0011】
ボールの重量または質量を再分配するとボールの打撃時や飛行時の特性が大幅に変化する。例えば、密度をボールのセンタに移動すなわち再分配すると、慣性モーメントが小さくなり、ゴルフボールがゴルフクラブから離れるときの初期スピンレートが、ボールの慣性モーメントからの抵抗の減少に起因して、増大する。逆に、密度を外側カバーの内部に移動すなわち再分配すると、慣性モーメントが大きくなり、ゴルフボールがゴルフクラブから離れるときの初期スピンレートが、ボールの慣性モーメントからの抵抗の増大に起因して、減少する。
【0012】
重量または質量の再配分の結果として慣性モーメントが増大から減少に切り替わる、ゴルフボール中の点を重心半径(centoroid radius)と呼び、ボールの中心または外側カバーからの径方向距離の観点で表される。重心半径の計算方法は米国特許第6,494,795号に十分に開示されており、参照してここに組み入れる。その結果によれば、46グラム(1.62オンス)で径が1.68インチのゴルフボールの場合、重心距離はゴルフボールの中心から径方向に約0.65インチの位置にあり、またはゴルフボールの表面から径方向に0.19インチの位置にある。
【0013】
ボールの質量または重量が中心から重心半径までに位置するボール部分に再移動すればするほど、慣性モーメントが減少して、この結果、高スピンレートとなる。ここでは、そのようなボールを低慣性モーメントボールという。ボールの質量または重量が重心半径から外側カバーまでに位置するボール部分に再移動すればするほど、慣性モーメントが増大して、この結果、低スピンレートとなる。ここでは、そのようなボールを高慣性モーメントボールという。
【0014】
1.62oz(オンス)で径が1.68インチで重量が径方向に等分配のゴルフボールの慣性モーメントは、0.4572oz・in(83.628g・cm)である。したがって、この開示目的では、0.4572oz・inより大きな慣性モーメントのゴルフボールは高慣性モーメントゴルフボールと考えられ、0.4572oz・inより小さな慣性モーメントのゴルフボールは低慣性モーメントゴルフボールと考えられる。例えば、ゴルフボールの外側面から約0.040インチ(中心から約0.8インチ)の位置に薄い殻を具備するゴルフボールはつぎのような慣性モーメントを有する。
【0015】
薄い殻の重量 慣性モーメント 慣性モーメント
(oz) (oz・inch) (g・cm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
0.20 0.4861 88.9
0.405 0.5157 94.3
0.81 0.5742 102
1.61 0.6898 126.2
【0016】
慣性モーメントは、コネチカット州、コリンスビルのInertia Dynamic社製造の型番MOI−005−104慣性モーメント装置により測定された。この装置はPCとCOMMポートで接続されてMOI装置ソフトウェアバージョン#1.2により駆動される。
【0017】
この発明のゴルフボールは、種々の層の厚さおよび比重、その他に応じて、小さな、または大きな慣性モーメントをとりうる。ここで用いられるように、「低慣性モーメントボール」は、83g・cm未満、好ましくは82g・cm未満の慣性モーメントを有するゴルフボールを含む。ここで用いられるように「高慣性モーメント」ボールは、84g・cmより大きい、好ましくは85g・cmより大きい、より好ましくは86g・cmより大きい慣性モーメントを有するゴルフボールを含む。ここで用いられるように、「低比重」は、1.05未満、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.95未満、さらに好ましくは0.85未満の比重を含む。ここで用いられるように、「高比重」は、1.15以上、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上の比重を含む。
【0018】
この発明のゴルフボールは、耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの低比重中間層を具備する。この開示の目的において、中間層は、外側コア層、マントル層、または内側カバー層であってよい。具体的な実施例では、耐湿性組成物は発泡される。他の具体的な実施例では、耐湿性組成物は比重減少フィラーを有する。この発明のゴルフボール層の比重を調整する方法、例えば、発泡処理およびフィラーの使用がここで詳細に説明される。
【0019】
この開示目的において、組成物の水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であれば、当該組成物は「耐湿性」である。好ましくは、この発明の耐湿性組成物のMVTRは、8.0g・mil/100in/日以下、または、6.5g・mil/100in/日以下、または、5.0g・mil/100in/日以下、または、4.0g・mil/100in/日以下、または、2.5g・mil/100in/日以下、または、2.0g・mil/100in/日以下である。ここで用いられるように、水蒸気透過率(MVTR)はg・mil/100in/日で与えられ、20°Cで測定され、ASTM F1249−99に従う。
【0020】
この発明の耐湿性組成物は高度に中和された酸ポリマー(「HNP」)とオプションの1またはそれ以上の付加材料とを有し、付加材料は、これに限定されないが、有機酸およびその塩、フィラー、添加物、および非脂肪酸メルトフロー改質剤を含む。好ましい実施例では、耐湿性組成物は、HNPと、有機酸およびその塩、フィラー、添加物、および非脂肪酸メルトフロー改質剤からなるグループから選択された1またはそれ以上のオプションの付加材料とから主に構成される。「主に構成される」は、ここでは、列挙された要素が基本的であり、他方、より少量の他の要素もこの発明の作用を阻害しない程度に存在して良いことを意味する。
【0021】
ここで用いられるように、「高度に中和された」は、その酸基の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、またさらに好ましくは100%が中和されたのちの酸ポリマーを指す。HNPは、カチオン、有機酸の塩、有機酸の適切な塩基、またはこれらの1以上の組み合わせにより中和してよい。
【0022】
適切なHNPは、α,β−エチレン系の不飽和モノまたはジカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、およびこれらの組み合わせである。用語「コポリマー」は、ここで使用されるように、2種類のモノマーを含むポリマー、3種類のモノマーを含むポリマー、4以上の種類のモノマーを含むポリマーを含む。好ましい酸は、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸である。(メタ)アクリル酸がとりわけ好ましい。ここで使用される「(メタ)アクリル酸」はメタアクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」はメタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。好ましい酸ポリマーはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸およびエチレンまたはCからCのα−オレフィンであり、オプションとして軟化用モノマーを含む。とくに好ましい酸ポリマーは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである。
【0023】
軟化用モノマーを含むときには、そのようなコポリマーはE/X/Yタイプのコポリマーと呼ばれ、ここで、Eはエチレン、XはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸、Yは軟化用モノマーである。軟化用モノマーは典型的にはアルキル(メタ)アクリレートであり、ここでアルキル基は1から8個の炭素原子を含む。好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、Xが(メタ)アクリル酸および/またはYが(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、およびエチル(メタ)アクリレートであるコポリマーである。より好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチルアクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレートである。
【0024】
酸コポリマー中のエチレンまたはCからCのα−オレフィンの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも25wt%、さらに好ましくは少なくとも40wt%、それよりさらに好ましくは少なくとも60wt%である。酸コポリマー中のCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸の量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、1wt%、または3wt%、または4wt%、または5wt%を下限とし、20wt%、または25wt%、または30wt%、または35wt%を上限とする範囲内である。酸コポリマー中のオプションの軟化コモノマーの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、0wt%、または5wt%、または10wt%、または15wt%を下限とし、20wt%、または30wt%、または35wt%、または40wt%、または50wt%を上限とする範囲内である。
【0025】
酸ポリマーは、70%以上に中和されるのに先立って部分的に中和されていてよい。適切な部分的に中和されている酸ポリマーは、これに限定されないが、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なSurlyn(商標)およびDuPont(商標)HPFアイオノマー;Honeywell International社から商業的に入手可能なAClyn(商標)アイオノマー;およびExxonMobile Chemical社から商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。
【0026】
具体的な実施例では、酸コポリマーは、E.I.DuPont社から商業的に入手できるNucrel(商標)酸コポリマー(例えばNucrel 960。エチレン/メタクリル酸コポリマー)、Dow Chemical社から商業的に入手できるPrimacor(商標)ポリマー(例えばPrimacor XUS 60758.08LおよびXUS 60751.18。それぞれ13.5%および15.0%の酸を含有するエチレン/アクリル酸コポリマー)、およびこれらの部分的に中和したアイオノマーから選択される。
【0027】
付加的な適切な酸ポリマーは例えば米国特許第6,953,820号および米国特許出願公開2005/0049367に記載されており、それらの記載は参照してここに組み入れる。
【0028】
この発明の酸ポリマーは、すべてのモノマーを同時に添加してポリマーを重合するダイレクトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許第4,351,931号に記載されており、参照してその内容をここに組み入れる。アイオノマーは、米国特許第3,264,272号に記載されるようにダイレクトコポリマーから製造でき、この特許の内容は参照してここに組み入れる。代替的には、この発明の酸ポリマーは、既存のポリマーにモノマーがグラフト化されるグラフトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許出願公開2002/0013413に記載されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0029】
この発明の酸ポリマーを中和するのに適したカチオンは、シリコーン、シランおよび珪酸塩誘導体および錯体配位子;希土類元素の金属イオンおよび化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属の金属イオンおよび化合物;およびそれらの組み合わせを含む。具体的なカチオン源は、これに限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、錫、希土類金属、およびこれらの組み合わせの金属イオンおよび化合物である。具体的な実施例では、カチオン源は、カルシウムの金属イオンおよび化合物、亜鉛の金属イオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせである。この実施例の具体的な側面では、最終的な組成物中のカルシウムおよび/または亜鉛塩の当量%は、最終的な組成物中にある塩のすべてをベースにして、50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上であり、当量%はカチオンのモル%にカチオンの価数を掛けて決定される。他の具体的な実施例では、カチオン源は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、およびこれらの組み合わせの金属イオンおよび化合物から選択される。具体的なカリウムをベースにしたカチオン源は、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なOxane(商標)である。Oxaneはモノ過硫酸塩であり、ここで、モノ過硫酸カリウムは2KHSO・KHSO・KSO[カリウム水素ペルオキシモノスルフェートスルフェート(5:3:2:2)]の化学式の三塩の要素として存在する活性成分である。他の具体的な実施例では、カチオン源はリチウムの金属イオンおよび化合物、亜鉛の金属イオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択される。適切なカチオン源はリチウムおよび/または亜鉛の他のカチオンとの混合物をも含む。リチウムおよび/または亜鉛と混合してHNPを製造するのに適した他のカチオンは、これに限定されないが、米国特許出願公開2006/0106175に開示されている「親水性がより小さい」カチオン;通常のカチオン、例えば、米国特許第6,756,436号および同第6,824,477号に開示されているもの;および米国特許出願公開2005/026740に開示されているカチオンを含む。これらの内容は参照してここに組み入れる。この実施例の具体的な側面では、組成物中のリチウムおよび/または亜鉛の塩のパーセンテージは、組成物中にある塩のすべてをベースにして、50%以上、または、55%以上、または60%以上、または65%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上であり、または95%以上、または100%である。使用するカチオン源の量は所望の中和のレベルに基づいて容易に決定できる。
【0030】
この発明の耐湿性組成物はオプションとして1またはそれ以上の有機酸および/またはその塩を有する。適切な有機酸は、脂肪族有機酸、芳香族有機酸、飽和モノ官能性有機酸、不飽和モノ官能性有機酸、マルチ不飽和モノ官能性有機酸、およびそれらのダイマー誘導体である。具体的には、脂肪族、モノ官能性(飽和、不飽和、またはマルチ不飽和)有機酸が適切であり、好ましくは36個未満の炭素原子を具備するものである。適切な有機酸の具体的な例は、これに限定されないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、安息香酸、パルミチン酸、フェニル酢酸、ナフタレノン酸、それらのダイマー誘導体を含む。具体的な適切な有機酸塩は、バリウム、リチウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス、カリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウムおよびこれらの組み合わせから選択したカチオン源により生成されたものを含む。適切な有機酸は例えば米国特許第6,756,436号により詳細に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0031】
この発明の耐湿性組成物は、オプションとして、1またはそれ以上の添加物および/または1またはそれ以上のフィラーを含む。適切な添加物は、これに限定されないが、膨張および発泡剤、光学的明色化剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収剤、光安定剤、消泡剤、処理助剤、雲母、タルク、ナノフィラー、酸化防止剤、安定化剤、軟化剤、香料成分、可塑剤、衝撃修正剤、酸コポリマーワックス、および界面活性剤を含む。適切なフィラーは、これに限定されないが、無機フィラー、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、マイカ、タルク、クレイ、シリカ、鉛シリケート、その他;高比重の金属粉末フィラー、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末、その他;リグランドすなわち粉砕しリサイクルしたコア材料;およびナノフィラーを含む。フィラー材料は、二重官能性フィラー、例えば、酸化亜鉛(これはフィラー/酸補足剤として使用できる)、および二酸化チタン(これはフィラー/明色化剤そして使用される)であってよい。さらに、適切なフィラーおよび添加剤の例は、これに限定されないが、米国特許出願公開2003/0225197に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0032】
この発明の耐湿性有組成物は、オプションとして、1または複数の非脂肪酸メルトフロー修正剤を含む。適切な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ尿素、多価アルコール、およびそれらの組み合わせを含む。この発明の組成物中に使用して好適な付加的な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、米国特許出願公開2006/0063893および米国特許出願11/216726に記載されているものを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0033】
この発明の耐湿性組成物はオプションとしてHNPに1または複数の付加的なポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーおよびエラストマーをブレンドして製造できる。この発明のHNPにブレンドするのに適した熱可塑性ポリマーの例は、これに限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテル−エステル、ポリエーテル−アミド、ポリエーテル−尿素、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリラクトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレンマレイン酸無水物、ポリイミド、芳香族ポリケトン、アイオノマーおよびアイオノマー先駆体、酸ホモポリマーおよびコポリマー、通常のHNP(例えばE.I.DuPont社から商業的に入手可能なDuPont(商標)HPF1000およびDuPont(商標)HPF2000の商標で販売されているアイオノマー材料)、樹脂修正アイオノマー、二相性(bimodal)アイオノマー、ポリウレタン、グラフト化または非グラフト化メタローセン触媒ポリマー、シングルサイト触媒重合ポリマー、高結晶性酸ポリマー、カチオン性アイオノマー、エポキシ官能化ポリマー、無水物官能化ポリマー、およびこれらの組み合わせを含む。ブレンドの適した具体的なポリオレフィンは1または複数の線形または分岐または環状のC−C40のオレフィン、具体的には、1または複数のC−C40のオレフィン、C−C20のα−オレフィン、または、C−C10のα−オレフィンで共重合したエチレンまたはプロピレンを含むポリマーである。ブレンドに適した具体的な通常のHNPは、これに限定されないが、米国特許第6,756,436号、同第6,894,098号、および同第6,953,820号に開示されている1または複数のHNPを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。この発明のポリマーにブレンドするのに適したエラストマーの例は、すべての天然および合成ゴムを含み、これに限定されないが、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、アクリロニトリル塩化イソプレンゴム、およびポリブタジエンゴム(シスおよびトランス)を含む。さらに他の適切なブレンドポリマーは米国特許第5,981,658号、例えばその第14欄、第30−56行、および米国特許出願公開2005/026740、例えばその0073段落に開示されているものを含み、参照してこれらの開示内容をここに組み入れる。ここに説明されているブレンドは、リアクターの後のブレンドにより、リアクターブレンドと直列にリアクターを結合することにより、また、同一のリアクターに複数の触媒を用いて複数種類のポリマーを製造することにより、製造できる。ポリマーは押出機に入れる前に混合してもよいし、押出機中で混合してもよい。
【0034】
この発明は、耐湿性組成物の具体的な製造方法または装置に限定されない。好ましい実施例においては、以下のプロセスで準備される。酸ポリマー、好ましくは、エチレン/(メタ)アクリル酸、少なくとも1つの有機酸またはその塩、およびオプションの付加的な材料、例えば添加物、フィラー、および非脂肪酸メルトフロー改質剤が、溶融押出機、例えば、シングルまたはツインスクリュー押出機に供給される。1のカチオン源の適切な量を、溶融した酸ポリマーに添加して、酸ポリマーの酸基およびオプションの有機酸の酸基を含む、存在するすべての酸基の少なくとも70%を中和する。存在するすべての酸基のうちの、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっと好ましくは少なくとも100%を中和する。酸ポリマーは、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の金属塩および化合物から選択されたカチオン源と接触する前に部分的に中和されていてもよい。酸ポリマー/カチオン混合物が、金型ヘッドからストランドとして押し出される前に集中的に混合される。この実施例の具体的な側面では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、E.I.DuPont社から商業的に入手できるNucrel(商標)酸コポリマー(例えばNucrel 960。エチレン/メタクリル酸コポリマー)およびDow Chemical社から商業的に入手できるPrimacor(商標)ポリマー(例えばPrimacor XUS 60758.08LおよびXUS 60751.18。それぞれ13.5%および15.0%の酸を含有するエチレン/アクリル酸コポリマー)から選択される。
【0035】
さらに、適切な耐湿性組成物は、これに限定されないが、米国特許出願公開2006/0106175に開示された、親水性がより小さいカチオンにより中和されたHNPを含有する組成物を含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0036】
加工可能にするために、この発明の耐湿性組成物は、少なくとも0.5g/10分(190°C、2、16kg)のメルトフローインデックスを有する。好ましくは、耐湿性組成物のメルトフローインデックスは少なくとも0.8g/10分であり、あるいは、0.8g/10分または1.0g/10分の下限と、4.0g/10分または5.0g/10分の上限とを有する範囲内にある。当該開示目的では、メルトフローインデックスはASTM D1238に従って測定される。
【0037】
この発明のゴルフボールは、上述した耐湿性組成物以外の組成物から製造された少なくとも1つの層を具備して良い。この発明のゴルフボールコア、中間層およびカバー層に好適な材料は、これに限定されないが、例えば低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、および高密度ポリエチレンを含むポリエチレン;ポリプロピレン;ゴム強化オレフィンポリマー;コポリエーテル−エステル;コポリエーテル−アミド;ポリカーボネート;アイオノマー性コポリマーの部分を構成しない酸コポリマー;プラストマー;フレクソマー:ビニル樹脂、例えば、ビニルクロライドをビニルセテートで共重合させて製造したもの、アクリル酸エステル、またはビニリデンクロライド;スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー;スチレン/エチレン−ブチレン/スチレンブロックコポリマー;動的に加硫したエラストマー;エチレンビニルアセテート;エチレンメタクリレートおよびエチレンエタクリレート;エチレンメタクリル酸、エチレンアクリル酸、およびプロピレンアクリル酸;ポリビニルクロライド樹脂;メタローセンまたは他のシングルサイト触媒を使用して製造したコポリマーおよびホモポリマー;ポリアミド、アミド−エステルエラストマー、および、アイオノマーとポリアミドのグラフトコポリマー(例えば、Arkema社から商業的に入手可能なPebax(商標)熱可塑性ポリエーテルブロックアミドを含む);ポリフェニレン酸化物樹脂、例えば、General Electric社から商業的に入手可能なNORYL(商標);架橋トランスポリイソプレンブレンド;ポリウレタン;ポリ尿素;ポリエステルベースの熱可塑性エラストマー、例えば、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能なHytel(商標)、およびGeneral Electric社から商業的に入手可能なLOMOD(商標);ポリウレタンベースの熱可塑性エラストマー、例えば、BASF社から商業的に入手可能なElastollan(商標);合成または天然ゴム;部分的または十分に中和されたアイオノマー;およびこれらの組み合わせを含む。適切なゴルフボール材料および構造は、これに限定されないが、米国特許第6,117,025号、同第6,767,940号および同第6,969,630号に開示されたものを含み、これらの内容は参照し得ここに組み入れる。
【0038】
エチレンおよび不飽和モノカルボン酸のアイオノマー性コポリマーが、この発明のゴルフボールの中間およびカバー層の好ましい組成物である。とくに好ましいものは、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なSurlyn(商標)およびDuPont(商標)HPFアイオノマー;Honeywell International社から商業的に入手可能なAClyn(商標)アイオノマー;およびExxonMobile Chemical社から商業的に入手可能なIotek(商標)およびEscor(商標)アイオノマーである。Surlyn(商標)、HPF、AClyn(商標)、Iotek(商標)およびEscor(商標)の各アイオノマーは、亜鉛、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、マンガン、ニッケル、その他の塩で部分的にまたは十分に中和したエチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーまたはターポリマーである。
【0039】
この発明のゴルフボールの中間およびカバー層の好ましい材料は、また、エチレン、プロピレン、ブテン−1またはヘキサン−1のホモポリマー;エチレン、プロピレン、ブテン−1またはヘキサン−1および(メタ)アクリル酸のコポリマー、およびこれらの部分的または十分に中和されたアイオノマー;メチルアクリレートおよびメチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー;イミド化した、アミノ基を含むポリマー;ポリカーボネート;強化ポリアミド;ポリフェニレンオキシド;高耐衝撃性ポリスチレン;ポリエーテルケトン;ポリスルホン;ポリフェニレンスルフィド;アクリロニトリル−ブタジエン;アクリル−スチレン−アクリロニトリル;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリビニルアルコール;ポリテトラフルオロエチレン;これらのコポリマー;およびこれらのブレンドを含む。
【0040】
ポリウレタン及びポリ尿素は、この発明のゴルフボールの中間またはカバー層としても好適である。適切なポリウレタンは、ポリイソシアネートおよび硬化剤から準備されたもの、および米国特許第5,334,673号、および同第6,506,851号、および米国特許出願公開2005/0176523に開示されたものを含み、これらの開示内容は参照してここに組み入れる。適切なポリ尿素は、ポリ尿素、例えば、米国特許第5484870号および米国特許出願公開2005/0176523に開示されたものを含み、それらの開示内容は参照してここに組み入れる。また、適切なポリウレタン−尿素ハイブリッド、すなわち、ウレタンおよび/または尿素のセグメントを有するブレンドおよびコポリマーも好適である。熱硬化性ポリウレタンおよびポリ尿素は、この発明のゴルフボールの外側カバー層としてとくに好ましい。
【0041】
飽和ポリウレタンは、この発明のゴルフボールのカバー層、より具体的には外側カバー層を形成するのにとくに好ましい材料である。適切な飽和ポリウレタンは少なくとも1つのポリウレタンプレポリマーおよび少なくとも1つの飽和硬化剤の反応生成物である。ポリウレタンプレポリマーは少なくとも1つの飽和ポリオールおよび少なくとも1つの飽和ジイソシアネートの反応生成物である。飽和ポリオール、飽和ジイソシアネート、および飽和硬化剤は米国特許出願公開2005/0176523に詳細に開示されており、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0042】
カバー層材料、具体的には内側カバー層材料としてE/X/Y型コポリマーも好適である。ここでEはエチレン、Xは(メタ)アクリル酸、かつYはアクリレートまたはメタクリレートをベースにした柔軟化コモノマーである。好ましくは、コポリマー中に存在するエチレンは量は、コポリマーの全重量をベースに、少なくとも40wt%であり、コポリマー中に存在する酸の量は、コポリマーの全重量をベースに、5wt%から35wt%であり、コポリマー中に存在する柔軟化コモノマーの量は、コポリマーの全重量をベースに、0wt%から50wt%である。低スピン用に設計された具体的な実施例では、内側カバー層がE/X/Y型コポリマーで製造され、コポリマー中に存在する酸の量は、コポリマーの全重量をベースに、10wt%から15wt%であり、柔軟化コモノマーを含む。
【0043】
架橋ゴム組成物もこの発明のゴルフボール層に適しており、とくにゴルフボールコア層に適している。適切なゴム材料は、一般に、ベースゴムおよびオプションのフィラーおよび/または添加物を含む。適切なゴム組成物は、また、シス−トランス変換化合物、例えば、ハロゲン化有機硫黄、有機ジスルフィド、または無機ジスルフィド化合物を内包して良い。ベースゴムは、一般に、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、およびこれらの2以上の組み合わせから選択される。好ましいベースゴムは1または複数のポリブタジエンである。とくに適切なポリブタジエンブレンドは、例えば、米国特許第6,774,187号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。他の好ましいベースゴムは、1または複数のポリブタジエンに、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ尿素エラストマー、メタローセン触媒エラストマー、およびプラストマーから選択された1または複数のエラストマーをオプションとして混合したものである。ゴム組成物が付加的なエラストマーを含む(すなわちベースゴムに加えて)ときには、付加的なエラストマーはベースゴム中にベースゴムの100重量部に愛して100重量部未満の量だけ含まれる。
【0044】
適切なゴム組成物の添加物は、フリーラジカル捕捉剤、スコーチ遅延剤、着色剤、蛍光剤、化学的な膨張および発泡剤、消泡剤、安定化剤、軟化剤、衝撃修正剤、その他を含む。適切なゴム組成物のフィラーは、この発明の耐湿性組成物は、オプションとして、1またはそれ以上の添加物および/または1またはそれ以上のフィラーを含む。適切な添加物は、無機フィラー、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、マイカ、タルク、クレイ、シリカ、鉛シリケート、その他;高比重の金属粉末フィラー、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末、その他;リグランドすなわち粉砕しリサイクルしたコア材料;およびナノフィラーから選択された粒子性フィラーを含む。フィラー材料は、二重官能性フィラー、例えば、酸化亜鉛(これはフィラー/酸補足剤として使用できる)、および二酸化チタン(これはフィラー/明色化剤そして使用される)であってよい。さらに、適切なフィラーおよび添加剤の例は、これに限定されないが、米国特許出願公開2003/0225197に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0045】
ゴム組成物は典型的には通常の硬化プロセスを用いて硬化される。適切な硬化プロセスは、例えば、過酸化物硬化、硫黄硬化、照射、およびこれらの組み合わせを含む。フリーラジカル開始剤として適切な有機過酸化物は、例えば、ジクミルペルオキシド;n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジ−t−ブチルペルオキシ;ジ−t−アミルペルオキシ;t−ブチルペルオキシ;t−ブチルクミルペルオキシ;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;ジ(2−t−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジラウロイルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;t−ブチルヒドロペルオキシド;およびこれらの混合物を含む。コエージェントは一般に過酸化物とともに使用され硬化状態を増大可能である。適切なコエージェントは、例えば、3から8個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸の金属塩;不飽和ビニル化合物および多価モノマー(例えばトリメチロールプロパントリメクリレート);フェニレンビスマレイミド;およびこれらの混合物を含む。とくに適切な金属塩は、例えば、アクリレート、ジアクリレート、メタクリレート、およびジメタクリレートの1または複数の金属塩を含む。ただし、金属はマグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、およびニッケルから選択される。具体的な実施例では、コエージェントは、アクリレート、ジアクリレート、メタクリレートおよびジメタクリレートの亜鉛塩から選択される。他の実施例では、コエージェントは亜鉛ジアクリレートである。
【0046】
硫黄および硫黄ベースの硬化剤を、オプションの促進剤とともに、過酸化物開始剤に組み合わせてまたはこれに代えて用いて、ベースゴムを架橋できる。適切な硬化剤および促進剤は、これに限定されないが、硫黄;N−オキシジエチレン2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N,N−ジ−オルト−トリルグアニジン;ビスマスジメチルジチオカルバメート;N−シクロヘキシル2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N,N−ジフェニルグアニジン;4−モルホリニル−2−ベンゾチアゾールジスルフィド;ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド;チウラムジスルフィド;メルカプトベンゾチアゾール;スルフェンアミド;ジチオカルバメート;チウラムスルフィド;グアニジン;チオ尿素;キサントエート;ジチオホスフェート;アルデヒド−アミン;ジベンゾチアジルジスルフィド;テトラエチルチウラムジスルフィド;テトラブチルチウラムジスルフィド;およびこれらの組み合わせを含む。
【0047】
フリーラジカルを発生可能な高エネルギ放射源をベースゴムの架橋に用いてもよい。そのような放射源の適切な例は、これに限定されないが、電子ビーム、紫外線放射、ガンマ放射、X−線放射、赤外線放射、熱、およびこれらの組み合わせを含む。
【0048】
適切なフリーラジカル開始剤、コエージェント、および硬化剤の他の適切な例は米国特許出願公開2004/0214661および同2003/0144087および米国特許第6,566,483号、同6,695,718号、および同6,939,907号に開示されており、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0049】
いくつかの実施例において、この発明は、薄く高密度な層を具備するゴルフボールを実現する。この薄く高密度な層の比重は1.2以上、または1.5以上、または1.8以上、または2以上であり、その厚さは、下限が0.001インチ、または0.005インチまたは0.01インチで、上限が0.05インチ、または0.03インチ、または0.02インチの範囲である。この発明のゴルフボールに含まれたときに、薄く高密度の層は、重心半径より外側に位置し、好ましくはボールの外側表面から0.030インチ〜0.110インチの間に位置する。この薄く高密度の層は、コアの表面に、液体溶液、分散剤、ラッカー、ペースト、ゲル、溶融液、その他、として、例えば、組み込み、または充填の天然または非天然のゴムラテックス、ポリウレタン、ポリ尿素、エポキシ、任意の反応性または非反応性コーティングまたはキャスティング成型材料として塗布され、その後、硬化、乾燥、気化させて平衡固定レベルにする。薄く高密度の層は、圧縮または射出成型、RIM、キャスティング、スプレイ、浸漬、粉末塗布、または内側のコアに材料を被着する任意の手段により製造されて良い。薄く高密度の層は、比重増加フィラー、ファイバ、フレーク、または粒子を組みこんだ熱可塑性ポリマーであってもよく、これにより、薄いコーティングとして塗布でき、上述の好ましい比重レベルを満たす。薄く高密度の層の1つの具体的な例は、タングステン粉末を伴う柔らかなポリブタジエンから圧縮成型により製造され、その厚さは0.021インチから0.025インチであり、その比重は1.31であり、ショアC高度は約72である。反応性液体系では、適切な材料は反応して固体を形成する任意の材用を含み、例えば、エポキシ、スチレン化ポリエステル、ポリウレタンまたはポリ尿素、液体PBR、シリコーン、珪酸塩ゲル、寒天ゲル等である。キャスティング、RIM、浸漬、およびスプレイが、薄く高密度の層を被着する好ましい方法である。非反応性材料は、溶融または浮動可能な形態のポリマー、揮発性溶媒中に溶解または分散させた粉末の任意の組み合わせを含む。薄く高密度の膜を形成するのに適切な熱可塑性材料は米国特許第6,149,535号、および同第6,152,834号に詳細に開示されており、その開示内容は参照してここに組み入れる。薄く高密度の層は米国特許出願公開2005/0059510により十分に開示されており、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0050】
この発明のゴルフボールは、ボールの慣性モーメントを制御するために比重が調整される少なくとも1つの層を具備する。ゴルフボール層の比重は既知の手法、例えば、発泡化および低比重フィラーの使用により減少できる。ゴルフボールの比重は既知の手法、例えば、高密度フィラーを用いることにより増大できる。ゴルフボール層の比重を調整するのに適切な手法は以下に詳細に説明される。
【0051】
物理的な発泡および化学的な発泡を含む発泡は、比重を減少させるための好ましい手法である。適切な発泡(forming)剤は、揮発性液体例えばフロン(CSC)、他のハロゲン化炭化水素、水、脂肪族炭化水素、ガス、および固体発泡(blowing)剤、すなわち、ガスの脱離の結果ガスを放出する化合物を含む。好ましくはブローイング剤は、吸着剤、例えば、活性化された炭素、炭酸カルシウム、珪藻土、および二酸化炭素で飽和された珪酸塩を含む。化学発泡(foaming/blowing)剤は、熱可塑性材料、例えばアイオノマー、高中和ポリマー、およびポリオレフィンから製造された層の比重を小さくするために、好ましい。適切な化学発泡剤は、炭酸アンモニア、およびアルカリ金属の炭酸塩のような無機剤でもよく、アゾやアゾ化合物(例えば、窒素ベースのアゾ化合物)のような有機剤でもよい。適切なアゾ化合物は、これに限定されないが、2,2’−アゾビス(2−シアノブタン)、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)、アゾジカルボンアミド、p,p’−オクシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドを含む。他の発泡剤は、Crompton Chemical社から販売されている任意のCelogens(商標)、ニトロソ化合物、スルホニルヒドラジド、有機酸のアジドおよび類似物、トリアジン、トリゾール/テトラゾール誘導体、スルホニルセミカルバジド、尿素誘導体、グアニジン誘導体、およびエステル例えばアルコキシボロキシンを含む。他の可能な発泡剤は、成分、例えば、酸と金属の混合物、有機酸と無機炭酸塩との混合物、二トリルとアンモニウム塩との混合物の化学作用によって、または尿素の加水分解によって気体を放出する薬剤を含む。
【0052】
適切な発泡剤および発泡材料は米国特許出願公開2006/0073914に開示されたもの、および、米国特許出願公開2005/0027025に開示された微小球を組みこんだクローズドセル発泡剤も含み、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0053】
化学または物理的な発泡に代替するものは、低比重フィラーの使用であり、このフィラーは、ファイバー、フレーク、球、空洞微小球、およびマイクロバルーンであり、例えば、3Mガラス(ガラスバブル)、セラミック(ゼオスフィア)、フェノール、あるいは他のポリマーベースの化合物、例えば、アクリロニトリル、PVDC、その他を含む。そのような低比重かフィラーは米国特許第6,692,380号に詳細に開示されており、この特許の内容は参照してここに組み入れる。
【0054】
拡張可能な微小球も比重を減少させるのに適している。微小球の例は、揮発性ガス、例えばイソペンタンガスを包むアクリロニトリル殻を有する。このガスが球中に発泡剤として含まれる。非拡張状態では、これらの空洞球の径は10から17μmの範囲であり、実際の密度は1000から1300kg/mである。加熱すると、殻内部のガスの圧力が増大し、また熱可塑性殻が柔らかくなり、この結果、微細球の体積が急激に増大する。十分に拡張すると、微細球の体積は40倍より大きくなり(典型的には径の増加分は10から40μmである)、実際の密度が30Kg/m(0.25lb/ガロン)を下回る。典型的な拡張時温度は80−190°C(176−374°F)の範囲である。そのような拡張可能な微細球はEXPANCEL(商標)としてスェーデンのExpancelまたはAkzo Nobelから商業的に袖手可能である。この発明の目的を実現するために、微細球は、注型プロセスの間に、注型温度を上昇させてガスを活性化させて反応させる。金型に充填する成分材料の体積を初めに減少させ、プロセスは微小球の拡大を前提にし、これにより、注型サイクルにおいて、キャビティ内の残りの空間が満たされる。微小球が金型内で急激に拡張することにより、材料が金型の体積を充填する際に、材料の密度を減少させ、微小球の能力を最大限発揮させて、低密度部品を製造するために必要な材料の量を最小化させる。
【0055】
中間層の重量を減少させる上述のプロセスの1つを用いると多くの重量を他の層に移すことが可能となりボールの慣性モーメントを調整できる。例えば、外側コア層、例えば薄く高密度の層に重量を加えて、大きな慣性モーメントを具備するボールを実現できる。薄く高密度の層は以下および米国特許出願公開2005/0059510に詳細に検討され、この開示内容は参照してここに組み入れる。代替的には、重量を最も内側のコア層に加えて低慣性モーメントのボールを実現できる。
【0056】
高比重の層を実現するのに適したフィラーは、これに限定されないが、金属粉末、金属フレーク、金属合金粉末、酸化金属、ステアリン酸金属塩粒子、炭素質材料、硫酸バリウム、および米国特許第6,692,380号に開示されているフィラーを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。適切な金属粉末は、これに限定されないが、ビスマス粉末、ホウ素粉末、黄銅粉末、青銅粉末、コバルト粉末、銅粉末、ニッケル−クロム−鉄の金属粉末、鉄金属粉末、モリブデン粉末、ニッケル粉末、ステンレス粉末、チタン金属粉末、酸化ジルコニウム粉末、タングステン金属粉末、ベリリウム金属粉末、亜鉛金属粉末、およびスズ金属粉末が含まれる。好ましい金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムおよび三酸化タングステンである。好ましい金属フレークはアルミニウムフレークである。とくに好ましい実施例では、高密度フィラーは、タングステン、酸化タングステン、またはタングステン金属粉末から選択される。米国特許第6,793,592号および同第6,919,395号に開示されたナノまたは複合材料も適切であり、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0057】
この発明のゴルフボール組成物に使用してよい他の事例的な材料は、米国特許第5,824,746号および同第6,025,442号、ならびに国際特許出願刊行物WO99/52604に説明されており、参照してここに組み入れる。
【0058】
具体的な実施例において、この発明は、コア、カバー、および、これらコアおよびカバーの間に配された低比重の中間層を具備するゴルフボールに向けられている。中間層は耐湿性組成物から製造される。この実施例の具体的な側面では、耐湿性組成物が発泡される。この実施例の他の具体的な側面では、耐湿性組成物が比重減少フィラーを有する。カバーは好ましくはポリウレタンまたはポリ尿素組成物で製造される。オプションとして、カバーの比重は、上述した比重調整方法の1つにより調整される。コアは好ましくはポリブタジエン組成物から製造される。具体的な低慣性モーメントゴルフボールの実施例では、コアの比重が大きい。高比重のコアはここでさらに検討される。具体的な高慣性モーメントゴルフボールの実施例では、ゴルフボールは付加的に薄く高密度の層を有する。この薄く高密度の層はここでされに検討される。
【0059】
この発明のゴルフボールのコアは球でも球でなくともよい。コア層に適切な非球の形状は、これに限定されないが、米国特許第6,595,874号に開示された形状を含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。コアが非球の実施例では、非球のコアおよび中間層の組み合わせが全体の直径が1.50から1.66インチの球を実現する。
【0060】
この発明の高比重のコア層の全体の直径は0.40インチから1.25インチである。高比重のコア層の比重は、好ましくは、高比重フィラーを組み入れて増大される。
【0061】
この発明の外側のカバー層の厚さは好ましくは0.03インチであり、あるいは、下限が0.01インチで上限が0.045インチまたは0.06インチまたは0.08インチの範囲である。
【0062】
この発明のゴルフボールの重量は典型的には下限が30g、または35g、または38gで、上限が46g、または48g、または50gの範囲である。
【0063】
ここで数値の下限および数値の上限が示される場合、これらの値の任意の組み合わせを採用できることに留意されたい。
【0064】
ここに引用した、先行文献を含む、すべての特許、刊行物、テスト手順および他の参照資料は、参照して、この発明と矛盾しない範囲で、ここに完全にくみいれる。
【0065】
この発明の事例的な実施例を詳細に説明したが、種々の変更や他の実施例をこの発明の趣旨を逸脱することなく当業者が容易に想到できることに留意されたい。したがって、特許請求の範囲はここに示された例や説明に制限されるのでなく、むしろ、特許請求の範囲は、この発明に宿る特許性のある新規な特徴をすべてを包囲するように理解され、それはこの発明が関連する分野の当業者により均等なものと扱われるすべての特徴を含むことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、中間層およびカバーを有するゴルフボールにおいて、上記中間層の比重が1.05以下であり、上記中間層が耐湿性組成物から製造され、上記耐湿性組成物の水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であり、かつ上記耐湿性組成物は高度に中和された酸ポリマーを有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記耐湿性組成物中に存在する酸基の少なくとも80%が中和されて塩になっている請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記ゴルフボールは上記中間層および上記カバーの間にさらに薄い高密度の層を有し、上記薄い高密度の層の厚さは0.00254cm(0.001インチ)から0.127cm(0.05インチ)であり、その比重が1.2以上である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
高密度フィラーを有するゴム組成物から製造されたコアと、
ポリウレタンまたはポリ尿素のカバーと、
上記コアおよび上記カバーの間に配される低比重の中間層とを有し、
上記中間層は、その比重が1.05以下であり、耐湿性組成物から製造され、かつ、上記耐湿性組成物は、その水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であり、かつ高度に中和された酸ポリマーを有し、
当該ゴルフボールの慣性モーメントが83g・cm以下であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項5】
上記耐湿性組成物は発泡され、上記中間層の比重が0.95以下である請求項4記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記耐湿性組成物中に存在する酸基のうち少なくとも80%が中和されて塩になっている請求項4記載のゴルフボール。
【請求項4】
ゴムのコアと、
ポリウレタンまたはポリ尿素のカバーと、
上記コアおよび上記カバーの間に配される低比重の中間層であって、当該中間層は、その比重が1.05以下であり、耐湿性組成物から製造され、かつ、上記耐湿性組成物は、その水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であり、かつ高度に中和された酸ポリマーを有する上記中間層と、
上記中間層および上記カバーの間に配された薄い高密度の層であって、その厚さが0.00254cm(0.001インチ)から0.127cm(0.05インチ)で、その比重が1.2以上である上記薄い高密度の層とを有し、
当該ゴルフボールの慣性モーメントが85g・cm以下であることを特徴とするゴルフボール。

【公開番号】特開2008−55176(P2008−55176A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−225119(P2007−225119)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY