説明

水蒸気透過率が小さく高度に中和した酸ポリマー組成物およびそのゴルフボールへの使用

【課題】水蒸気透過率を改善した高度に中和された酸ポリマーを含むポリマー組成物およびポリマー組成物を含むゴルフボールを提供する。
【解決手段】ポリマー組成物は、ポリマー組成物の全ポリマー重量を基準にして少なくとも30重量%のエチレン/アクリル酸(メタクリル酸)コポリマーを有する。酸ポリマーの酸基の少なくとも90%は中和されている。このポリマー組成物の水蒸気透過率が8g−mil/100in2/日以下である。このポリマー組成物はワンピース、ツーピース、多層および糸巻ゴルフボールのコア層、カバー層、または中間層の任意の1または複数層に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、8g−mil/100in/日以下の水蒸気透過率で、高度に中和された酸ポリマーを含むポリマー組成物に向けられている。この発明はそのような組成物のゴルフボールへの利用に向けられている。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフボールは2つの概略的なクラス、すなわちソリッドおよび糸巻に分けることができる。ソリッドゴルフボールは、ワンピース、ツーピース(すなわちソリッドコアおよびカバー)、および多層(すなわち、1または複数層からなるソリッドコア、および/または、1または複数層からなるカバー)ゴルフボールを含む。糸巻ゴルフボールは、典型的には、引っ張られた弾性材料により包囲されたソリッド、空洞、または液体充填のセンタと、カバーとを含む。
【0003】
ゴルフボールのコアおよびカバー層は典型的にはポリマー組成物から構成され、これは例えばポリブタジエンゴム、ポリウレタン、ポリアミド、アイオノマー、およびこれらのブレンドを含む。アイオノマー、とくに高度に中和されたアイオノマーは、その強靱性、耐久性、広範囲にわたる硬度値から、ゴルフボール層の好ましいポリマー群である。しかしながら、従来の高度に中和されたアイオノマーは、アイオノマーの中和に伝統的に採用されているカチオン源、例えば、マグネシウムまたは脂肪酸のマグネシウム塩の高度の親水性ゆえに、親水性である。その親水性の結果として、従来の高度に中和されたアイオノマーは著しい量、例えば、2000から10000PPM(100万分の1)の湿気を吸収し、そのため製造上の問題、例えば、射出成型処理時に部品中の泡を生成するという問題を招来し、また、ゴルフボールの性能の劣化、例えば、水分子によりイオン凝集が可塑化されて反発係数(Coefficient of Restitution。「COR」)や剛性が減少するという性能の劣化をもたらす。
【0004】
したがって、水蒸気透過率を改善させた高度に中和された酸ポリマーを含む組成物に対する要請が依然としてある。この発明はそのような組成物およびそのゴルフボールのコアおよびカバー層への利用を記述する。
【発明の開示】
【0005】
一実施例において、この発明は、8g−mil/100in/日以下の水蒸気透過率のポリマー組成ブルから製造された少なくとも1つの層を有するゴルフボールに向けられている。ポリマー組成物は高度に中和された酸ポリマーを有する。
【0006】
他の実施例において、この発明は、5g−mil/100in/日以下の水蒸気透過率のポリマー組成ブルから製造された少なくとも1つの層を有するゴルフボールに向けられている。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の全ポリマー重量を基準にして少なくとも30重量%のエチレン/アクリル酸(メタクリル酸)コポリマーを有する。酸ポリマーの酸基の少なくとも90%は中和されている。
【発明の詳細な説明】
【0007】
この発明のゴルフボールは、ワンピース、ツーピース、多層および糸巻のゴルフボールを含み、これらは種々のコア構造、中間層、カバーおよびコーティングを有する。ゴルフボールコアは、中心から外側周囲まで至るコア全体を有する唯一の単一の層であってよく、また、センターとこれを取り巻く少なくとも1つの外側カバー層を有しても良い。センター、コアの最内側の部分は好ましくはソリッドであるが、空洞でも、液体充填、ゲル充填、気体充填であってもよい。外側コア層は、ソリッドでも、引っ張られた弾性材料から生成された糸巻層であってもよい。ゴルフボールのカバーは1または複数の層、例えば、内側および外側のカバー層を具備する二重カバーを含んでよい。オプションとして、コアおよびカバーの間に付加的な層を配置しても良い。この発明のゴルフボールにおいては、少なくとも1つの層が、8g−mil/100in/日以下の水蒸気透過率で、かつ高度に中和された酸ポリマー(「HNP」)を含むポリマー組成物から製造される。好ましい実施例では、この発明のポリマー組成物は多層ゴルフボールの外側コア層に存在する。
【0008】
ここで用いられるように、「高度に中和された酸ポリマー」は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは100%の酸基が中和された後の酸ポリマーを指す。この発明によれば、酸ポリマーまたは部分的に中和されている酸ポリマーが、伝統的にHNPを生産するために使用されているマグネシウムをベースにしたカチオン源より親水性が小さなカチオン源を用いて70%以上に中和されると、その結果として得られるこの発明のHNPは水蒸気透過率が改善された組成物を実現することが見いだされた。例えば、HNPを親水性が小さいカチオン源を用いて製造した場合、HNPを有するポリマー組成物の水蒸気透過率は8g−mil/100in/日以下、または、5g−mil/100in/日以下、または、3g−mil/100in/日以下、または、2g−mil/100in/日以下、1g−mil/100in/日以下、または1g−mil/100in/日未満である。ここで用いられるように、水蒸気透過率(MVTR)はg−mil/100in/日で与えられ、20°Cで測定され、ASTM F1249−99に従う。
【0009】
「より親水性が小さい」は、ここでは、カチオン源が通常のマグネシウムをベースにしたカチオン源に対して親水性が小さいことを意味するように用いられる。この発明のHNPはそのような親水性がより小さい1または複数のカチオン源を用いて製造される。親水性のより小さな適切なカチオン源の例は、これに限定されないが、シリコーン、シラン、珪酸誘導体、および錯体配位子;希土類元素の金属イオンおよび化合物;およびアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属の親水性がより小さな金属イオンおよび化合物;およびこれらの組み合わせを含む。親水性がより小さな具体的なカチオン源は、これに限定されないが、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、錫、および希土類金属の金属イオンおよび化合物を含む。カリウムをベースにした化合物が好ましい親水性がより少ないカチオン源であり、とくに、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なOxane(商標)が好ましい。Oxaneはモノ過硫酸塩であり、ここで、モノ過硫酸カリウムは2KHSO・KHSO・KSO[カリウム水素ペルオキシモノスルフェートスルフェート(5:3:2:2)]の化学式の三塩の要素として存在する活性成分である。親水性がより小さなカチオン源の量は所望の中和のレベルに基づいて容易に決定できる。
【0010】
この発明の高度に中和された酸ポリマーはα,β−エチレン系の不飽和モノまたはジカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、およびこれらの組み合わせである。用語「コポリマー」は、ここで使用されるように、2種類のモノマーを含むポリマー、3種類のモノマーを含むポリマー、4以上の種類のモノマーを含むポリマーを含む。好ましいα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸は、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸である。(メタ)アクリル酸がとりわけ好ましい。ここで使用される「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」はメタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。好ましい酸ポリマーはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸およびエチレンまたはCからCのα−オレフィンであり、オプションとして軟化用モノマーを含む。とくに好ましい酸ポリマーは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである。
【0011】
軟化用モノマーを含むときには、そのようなコポリマーはE/X/Yタイプのコポリマーと呼ばれ、ここで、Eはエチレン、XはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸、Yは軟化用モノマーである。軟化用モノマーは典型的にはアルキル(メタ)アクリレートであり、ここでアルキル基は1から8個の炭素原子を含む。好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、Xが(メタ)アクリル酸および/またはYが(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、およびエチル(メタ)アクリレートであるコポリマーである。より好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチルアクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレートである。
【0012】
酸コポリマー中のエチレンまたはCからCのα−オレフィンの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも25wt%、さらに好ましくは少なくとも40wt%、それよりさらに好ましくは60wt%である。酸コポリマー中のCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸の量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、1wt%から35wt%、好ましくは4wt%から35wt%、さらに好ましくは6wt%から35wt%、それよりさらに好ましくは8wt%から20wt%である。酸コポリマー中のオプションの軟化コモノマーの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、0wt%から50wt%である。
【0013】
適切な酸ポリマーは、部分的に中和されている酸ポリマーも含む。適切な部分的に中和されている酸ポリマーの例は、これに限定されないが、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なSurlyn(商標)アイオノマー;Honeywell International社から商業的に入手可能なAClyn(商標)アイオノマー;およびExxonMobile Chemical社から商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。付加的な適切な酸ポリマーは例えば米国特許第6953820号および米国特許出願公開2005/0049367に記載されており、それらの出願の内容は参照してここに組み入れる。
【0014】
この発明の酸ポリマーは、すべてのモノマーを同時に添加してポリマーを重合するダイレクトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許第4351931号に記載されており、参照してその内容をここに組み入れる。アイオノマーは、米国特許第3264272号に記載されるようにダイレクトコポリマーから製造でき、この特許の内容は参照してここに組み入れる。代替的には、この発明の酸ポリマーは、既存のポリマーにモノマーがグラフト化されるグラフトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許出願公開2002/0013413に記載されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0015】
この発明の組成物は少なくとも1つの発明に係るHNP(すなわち親水性がより小さいカチオン源を用いて製造されたもの)と、オプションの1または複数の付加的なHNPを含む。付加的なHNPが含まれる場合、その付加的なHNPは1または複数の発明に係るHNPおよび/または1または複数の通常のHNP(すなわち通常のカチオン源を用いて製造されたもの)であってよい。組成物中のHNPの総量は、組成物のポリマーの総重量を基準にして好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、されに好ましくは50wt%から99.5wt%、さらに好ましくは、60wt%から98wt%である。好ましくはこの発明に係るHNPの量は組成物中で少なくとも30wt%である。
【0016】
加工可能にするために、この発明のHNP含有組成物のメルトフロー指数は少なくとも0.5g/10分である。好ましくは、HNP含有組成物のメルトフロー指数は、0.5g/10分から10.0g/10分、より好ましくは、1.0g/10分から5.0g/10分、さらに好ましくは、1.0g/10分から4.0g/10分である。
【0017】
この発明のHNP含有組成物は、オプションとして、1または複数のメルトフロー修正剤を含んでも良い。適切なメルトフロー修正剤は、有機酸およびその塩、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、熱可塑性ポリ尿素、多価アルコール、およびそれらの組み合わせを含む。適切な有機酸は、脂肪族有機酸、芳香族有機酸、飽和モノ官能性有機酸、不飽和モノ官能性有機酸、マルチ不飽和モノ官能性有機酸、およびそれらのダイマー誘導体である。適切な有機酸の具体的な例は、これに限定されないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、安息香酸、パルミチン酸、フェニル酢酸、ナフタレノン酸、それらのダイマー誘導体を含む。この発明の組成物中に1または複数の有機酸塩が含まれる場合、有機酸塩を生成するために用いたカチオン源は好ましくは親水性がより小さなカチオン源である。適切な有機酸は例えば米国特許第6756436号により詳細に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0018】
この発明の組成物中に使用して好適な付加的な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、米国特許出願11/216725および同11/216726に記載されているものを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0019】
この発明のHNP含有組成物は、組成物の全重量を基準にして、0wt%から60wt%の量の1または複数の添加物を含んで良い。適切な添加物は、これに限定されないが、化学膨張および発泡剤、光学的明色化剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収剤、光安定剤、消泡剤、処理助剤、雲母、タルク、ナノフィラー、酸化防止剤、安定化剤、軟化剤、香料成分、可塑剤、衝撃修正剤、TiO、酸コポリマーワックス、界面活性剤、およびフィラー、例えば、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、クレイ、タングステン、炭化タングステン、シリカ、亜鉛シリケート、リグランド(リサイクルした材料)、およびこれらの混合物を含む。適切な添加剤は例えば米国特許出願公開2003/0225197に十分に説明されており、参照してここに組み入れる。
【0020】
組成物はオプションとしてこの発明のHNPに1または複数の付加的なポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーおよびエラストマーをブレンドして製造できる。この発明のHNPにブレンドするのに適した熱可塑性ポリマーの例は、これに限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリラクトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレンマレイン酸無水物、ポリイミド、芳香族ポリケトン、アイオノマーおよびアイオノマー先駆体、酸コポリマー、通常のHNP、ポリウレタン、グラフト化または非グラフト化メタローセン触媒ポリマー、シングルサイト触媒重合ポリマー、高結晶性酸ポリマー、カチオン性アイオノマー、およびこれらの組み合わせを含む。ブレンドの適した具体的なポリオレフィンは1または複数の線形または分岐または環状のC−C40のオレフィン、具体的には、1または複数のC−C40のオレフィン、C−C20のα−オレフィン、または、C−C10のα−オレフィンで共重合したエチレンまたはプロピレンを含むポリマーである。ブレンドに適した具体的な従来のHNPは、これに限定されないが、米国特許第6756436号、同第6894098号、および同第6953820号に開示されている1または複数のHNPを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。この発明のポリマーにブレンドするのに適したエラストマーの例は、すべての天然および合成ゴムを含み、これに限定されないが、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、アクリロニトリル塩化イソプレンゴム、およびポリブタジエンゴム(シスおよびトランス)を含む。さらに他の適切なブレンドポリマーは米国特許第5981658号、例えばその第14欄、第30−56行に開示されているものを含み、参照してその内容をここに組み入れる。ここに説明されているブレンドは、リアクターの後のブレンドにより、リアクターブレンドと直列にリアクターを結合することにより、また、同一のリアクターに複数の触媒を用いて複数種類のポリマーを製造することにより、製造できる。ポリマーは押出機に入れる前に混合してもよいし、押出機中で混合してもよい。
【0021】
この発明の有組成物の曲げ弾性率は典型的には3000psiから200000psi、好ましくは5000psiから150000psi、より好ましくは10000psiから125000psi、さらにより好ましくは10000psiから100000psiである。組成物の材料硬度は、一般に、30ショアDから80ショアDである。当該組成物がゴルフボールのセンターにある実施例では、材料硬度は好ましくは30ショアDから50ショアDである。当該組成物がゴルフボールのカバー層、外側コア層またはコアおよびカバーの間の中間層にある実施例では、材料硬度は好ましくは30ショアDから70ショアDである。この発明の有組成物のノッチ付きアイゾッド衝撃強さは一般にASTM D256に従って23°Cで測定して少なくとも2ft・lb/inである。
【0022】
この発明は、組成物の具体的な製造方法または装置に限定されない。好ましい実施例においては、以下のプロセスで準備される。酸ポリマー、好ましくは、エチレン/(メタ)アクリル酸が、溶融押出機、例えば、シングルまたはツインスクリュー押出機に供給される。適切な量の親水性がより小さいカチオン源を、溶融した酸ポリマーに添加する。酸ポリマーは、カチオン源、好ましくはカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の金属塩および化合物から選択されたカチオン源と接触する前に部分的に中和されていてもよい。酸ポリマー/カチオン混合物が、金型ヘッドからストランドとして押し出される前に集中的に混合される。オプションとして、脂肪酸塩または非脂肪酸塩のメルトフロー修正剤をベースにした親水性がより小さいカチオン源をHNP生成時に導入される。この発明の具体的な側面では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、E.I.DuPont社から商業的に入手できるNucrel(商標)酸コポリマー(例えばNucrel 960。エチレン/メタクリル酸コポリマー)およびDow Chemical社から商業的に入手できるPrimacor(商標)ポリマー(例えばPrimacor XUS 60758.08LおよびXUS 60751.18。それぞれ13.5%および15.0%の酸を含有するエチレン/アクリル酸コポリマー)から選択される。
【0023】
この発明の組成物は種々の用途に利用できる。例えば、HMP含有組成物はゴルフ道具に使用されて好適である。ゴルフ道具は、これに限定されないが、ゴルフボール、ゴルフシューズ、およびゴルフクラブを含む。
【0024】
この発明のゴルフボールは、糸巻、ワンピース、ツーピース、または多層ゴルフボールであってよい。ただし、少なくとも1つの層が、親水性のより小さなカチオン源から製造されたHNPを含有する組成物から製造されている。この発明のHNPを有する2以上の層を具備するゴルフボールにおいては、1つの層の当該発明に係るHNPが他の層の当該発明に係るHNPと同じでも異なっても良い。当該発明に係るHNPを有する層は、コア層(例えばセンタまたは外側コア層)、中間層、またはカバー層の任意の1つまたは複数であってよい。この発明の組成物は、発泡され、または密度調整材料を充填されて所望のゴルフボール性能特性を実現してもよい。
【0025】
この発明は、ゴルフボール層を製造する具体的な方法に限定されない。射出成型、圧縮成型、成型、および反応性射出成型を含む任意の適切な手法で層を製造してよいことに留意されたい。
【0026】
この発明の好ましい実施例において、この発明は、圧縮成型されたコア、親水性がより小さなカチオン源を用いて製造されたHNPを含み射出成型または圧縮成型された少なくとも1つの中間層、および、ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層を具備する多層ボールを実現する。ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層は熱硬化性でも熱可塑性でもよい。熱可塑性材料は通常の成型または反応性射出成型技術によりゴルフボール層として形成できる。熱可塑性材料は通常の圧縮または射出成型技術によりゴルフボール層として形成できる。光安定性のポリ尿素およびポリウレタンが外側カバー層として好ましい。好ましくは、ゴムコア組成物は、ベースゴム、架橋剤、フィラー、および共架橋剤またはフィリーラジカル開始剤およびオプションにシス−トランス変換触媒を有する。典型的なゴム材料は、天然および合成ゴムであり、これに限定されないが、ポリブタジエンおよびスチレンブタジエンを含む。架橋剤は典型的には金属塩、例えば3〜8の炭素原子を有する酸、例えば、(メタ)アクリル酸の亜鉛塩またはマグネシウム塩を含む。フリーラジカル開始剤は、硬化サイクルにおいて分解する任意の既知の重合開始剤であってよく、これに限定されないが、ジクミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、a−aビス−(−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−メメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンまたはジ−t−ブチルペルオキシド、およびその混合物を含む。ゴム、架橋剤、フィラー、共架橋剤および開始剤の適切なタイプおよび量は、例えば、米国特許出願公開2003/0144087に十分に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。ゴルフボールに利用できる種々のボール構造および材料についても米国特許出願公開2003/0144087を参照できる。
【0027】
他の好ましい実施例において、この発明は、ソリッドコア、外側コア層、およびカバーを具備する多層ゴルフボールを実現する。ここで、外側コア層は、親水性がより小さなカチオン源を用いて製造されたHNPを含む組成物から製造される。この発明の具体的な側面では、組成物の水蒸気透過率は8g−mil/100in/日以下であり、これにより、湿気がコアに浸入するのを抑制する。この実施例の他の具体的な側面では、HNPは好ましくはエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーをベースにし、好ましくはそのようでない方がよいが、軟化用のコモノマーを含んでもよい。ソリッドコアは任意の適切なコア材料から製造でき、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、およびアクリロニトリル塩化イソプレンゴムから選択された通常のゴムから製造される。コアの径は好ましくは1.40インチから1.55インチである。カバーは、所望な性能特性に基づいて通常のゴルフボールカバー材料から選択した堅牢で切断耐性のある材料である。カバーは1または複数の層を有してよく、好ましくはその全体の厚さが0.020インチから0.045インチである。適切なカバー材料はアイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂のブレンド、熱可塑性および熱硬化性ウレタン、熱可塑性および熱硬化性尿素、(メタ)アクリル酸、熱可塑性ゴムポリマー、ポリウレタン、および合成または天然加硫ゴム、例えばバラタを含む。他の適切なコアおよびカバー材料は例えば米国特許出願公開2005/0164810、米国特許第5919100号、およびPCT刊行物WO00/23519および同WO00/29129に開示されており、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0028】
他の好ましい実施例において、この発明は、コアおよびカバーを具備するツーピースのゴルフボールを実現する。ここで、カバーは、親水性がより小さなカチオン源を用いて製造されたHNPを含む組成物から製造される。カバーの材料硬度は好ましくは30ショアDから70ショアDである。カバーの厚さは好ましくは0.020インチから0.350インチ、より好ましくは0.025インチから0.090インチである。コアは好ましくは適切なコア材料から製造されたソリッドコアであり、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、およびアクリロニトリル塩化イソプレンゴムから選択された通常のゴムから製造される。この実施例の好ましい側面では、コアは、ゴム、架橋剤、フィラー、フィリーラジカル開始剤、およびオプションのシス−トランス変換触媒の反応生成物から製造される。コアの径は好ましくは1.00インチから1.63インチである。コアのAtti圧縮は好ましくは100より小さい。
【0029】
他の好ましい実施例において、この発明は、親水性がより小さなカチオン源を用いて製造されたHNPを含む組成物から製造されたセンタを具備するツーピースのまたは多層のゴルフボールを実現する。HNPは好ましくはE/X/Y型のポリマーをベースにする。好ましくは、コアの材料硬度は30ショアDから50ショアDである。カバーは、所望な性能特性に基づいて通常のゴルフボールカバー材料から選択した堅牢で切断耐性のある材料である。カバーは1または複数の層を有してよく、好ましくはその全体の厚さが0.020インチから0.045インチである。適切なカバー材料は、これに限定されないが、アイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂のブレンド、熱可塑性および熱硬化性ウレタン、熱可塑性および熱硬化性尿素、(メタ)アクリル酸、熱可塑性ゴムポリマー、ポリウレタン、および合成または天然加硫ゴム、例えばバラタを含む。
【0030】
この発明のゴルフボールの反発係数(Cefficient Of Restitution。COR)は一般に少なくとも0.790、好ましくは少なくとも0.800、より好ましくは少なくとも0.805、さらにより好ましくは0.810であり、そのAtti圧縮は75から110、好ましくは90から100である。ここで用いる「COR」はボールを堅固な板に向けて発射したときの入射速度に対するリバウンド速度の比として定義される。CORを決定する場合、入射速度は125ft/sであると理解される。
【0031】
数値の下限および数値の上限がここで示されるときには、これらの値は任意に組み合わせて使用できることは容易に理解できる。
【0032】
ここで引用したすべての特許、刊行物、テスト手順および他の文献は、優先権書類も含めて、この発明と矛盾しない範囲において、参照してここに組み入れられる。
【0033】
この発明の事例的な実施例を具体的に説明したが、種々の他の変更が当業者に明らかであり、またこの発明の趣旨を逸脱することなく容易になすことができることに留意されたい。したがって、添付の特許請求の範囲のスコープは、ここに開示された例や記述に制約されることを意図されていない。特許請求の範囲は、この発明の特許可能な新規な特徴のすべてをカバーするように理解されるべきであり、それには当業者にとって均等なすべての特徴も含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物から製造された少なくとも1つの層を具備し、上記ポリマー組成物の水蒸気透過率(MVTR)は8g−mil/100in/日以下であり、かつ上記ポリマー組成物は高度に中和された酸ポリマーを有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記高度に中和された酸ポリマーの少なくとの90%の酸基が中和されている請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記ポリマー組成物のMVTRは5g−mil/100in/日以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記高度に中和された酸ポリマーは、オレフィン、コポリマーの総重量をベースにして4wt%から35wt%のα,β−エチレン系不飽和カルボン酸、およびコポリマーの総重量をベースにして0wt%から50wt%のC−Cのアルキル(メタ)アクリレートのコポリマーの塩である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記高度に中和された酸ポリマーは2またはそれ以上の独立に選択された高度に中和された酸ポリマーのブレンドである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記高度に中和された酸ポリマーは、1または複数の酸ポリマーを、十分な量の、親水性がより小さなカチオン源に、メルトフロー修正剤の存在下で接触させて上記酸ポリマーの中和レベルを少なくとも70%まで増加させることを含むプロセスにより製造される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記カチオン源は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属の金属イオンまたは化合物、またはこれらの組み合わせから選択され、上記カチオン源はマグネシウムより親水性が小さい請求項6記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記カチオン源は、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、および錫の金属イオンまたは化合物;シリコーン、シラン、および珪酸誘導体、および錯体配位子;および希土類元素の金属イオンおよび化合物から選択される請求項6記載のゴルフボール。
【請求項9】
上記ポリマー組成物は、1または複数の酸ポリマーを、有機酸または有機酸の金属塩と、上記ポリマー組成物中にあるすべての酸官能性の少なくとも70%を中和するのに十分な量の、親水性がより小さなカチオン源とに、接触させることを含むプロセスにより製造される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項10】
上記酸ポリマーは上記親水性がより小さなカチオン源と接触させる前に部分的に中和されている請求項9記載のゴルフボール。
【請求項11】
上記親水性がより小さなカチオン源は、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、および錫の金属イオンまたは化合物;シリコーン、シラン、および珪酸誘導体、および錯体配位子;および希土類元素の金属イオンおよび化合物から選択される請求項9記載のゴルフボール。
【請求項12】
上記有機酸は、脂肪族有機酸、芳香族有機酸、飽和モノ官能性有機酸、不飽和モノ官能性有機酸、およびマルチ不飽和モノ官能性有機酸、それらの塩、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項9記載のゴルフボール。
【請求項13】
上記有機酸は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、安息香酸、パルミチン酸、フェニル酢酸、ナフタレノン酸、それらのダイマー誘導体、それらの塩、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項9記載のゴルフボール。
【請求項14】
上記有機酸塩の金属は、アルカリ、アルカリ土類、および遷移元素からなるグループから選択され、上記金属イオンはマグネシウムイオンより親水性が小さい請求項9記載のゴルフボール。
【請求項15】
上記有機酸塩は、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、および錫の金属イオンまたは化合物;シリコーン、シラン、および珪酸誘導体、および錯体配位子;および希土類元素の金属イオンおよび化合物から選択されたカチオン源を用いて製造される請求項9記載のゴルフボール。
【請求項16】
上記ゴルフボールはコアおよびカバーを有し、上記カバーが、上記ポリマー組成物から形成され、上記コアはゴム、架橋剤、フィラー、フリーラジカル開始剤、およびオプションのシス−トランス変換触媒の反応生成物から形成される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項17】
上記コアのAtti圧縮は10から100であり、上記コアの表面硬度は20ショアDから70ショアDであり、上記コアの径は1.00インチから1.63インチであり、上記カバーの厚さは0.020インチから0.350インチである請求項16記載のゴルフボール。
【請求項18】
上記ゴルフボールはコアおよびカバーを有し、上記コアが上記ポリマー組成物から形成され、上記カバーが、アイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂のブレンド、高度に中和されたポリマー、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、熱可塑性ポリ尿素、熱硬化性ポリ尿素、およびこれらのブレンドからなるグループから選択された材料から形成される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項19】
上記ゴルフボールはコア、カバーおよび上記コアおよび上記カバーの間に配された中間層を有し、上記中間層が上記ポリマー組成物から形成され、上記コアがゴム、架橋剤、フィラー、フリーラジカル開始剤、およびオプションのシス−トランス変換触媒の反応生成物から形成される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項20】
水蒸気透過率が5g−mil/100in/日以下のポリマー組成物であって、上記ポリマー組成物の総重量をベースにして少なくとの30wt%のエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーを有するものから製造された少なくとも1つの層を具備し、上記ポリマー組成物の酸基の少なくとも90%が中和されていることを特徴とするゴルフボール。

【公開番号】特開2007−130473(P2007−130473A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−303485(P2006−303485)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY