説明

水蒸気透過率が小さく高度に中和した酸ポリマー組成物およびそのゴルフボールへの使用

【課題】ゴルフボールに用いる材料の親水性のため、ボール製造時に生じる気泡などの問題、使用時に生じる性能劣化を低減させたゴルフボールを提供する。
【解決手段】この発明は、水蒸気透過率が12.5g・mil/100in/日以下で、メルトフローインデックスが1.0g/10分以上で、高度に中和された酸ポリマーを有する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールに向けられている。この発明のゴルフボールはワンピース、ツーピース、多層および糸巻ゴルフボールである。この発明の組成物はコア層、カバー層、または中間層の任意の1または複数であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、その水蒸気透過率が12.5g・mil/100in/日以下で、メルトフローインデックスが1.0g/10分以上で、高度に中和された酸ポリマーを含むポリマー組成物に向けられている。この発明はそのような組成物のゴルフボールにおける使用にも向けられている。
【0002】
この出願は、2005年11月9日の出願の米国特許出願11/270,066の部分継続出願であり、当該出願は、2004年10月6日の出願の米国特許出願10/959,751の部分継続出願であり、これは2003年2月6日の出願で、現在、米国特許第6,939,907号となっている米国特許出願10/360,233の部分継続出願であり、これは2002年4月9日の出願で、現在、米国特許第6,756,436号となっている米国特許出願10/118,719の部分継続出願であり、これは、2001年6月26日に出願された米国仮出願60/301,046の優先権を主張している。これらの内容は参照してここに組み入れる。
【背景技術】
【0003】
従来のゴルフボールは2つの概略的なクラス、すなわちソリッドおよび糸巻に分けることができる。ソリッドゴルフボールは、ワンピース、ツーピース(すなわちソリッドコアおよびカバー)、および多層(すなわち、1または複数層からなるソリッドコア、および/または、1または複数層からなるカバー)ゴルフボールを含む。糸巻ゴルフボールは、典型的には、引っ張られた弾性材料により包囲されたソリッド、空洞、または液体充填のセンタと、カバーとを含む。
【0004】
ゴルフボールのコアおよびカバー層は典型的にはポリマー組成物から構成され、これは例えばポリブタジエンゴム、ポリウレタン、ポリアミド、アイオノマー、およびこれらのブレンドを含む。アイオノマー、とくに硬度に中和されたアイオノマーは、その強靱性、耐久性、広範囲にわたる硬度値から、ゴルフボール層の好ましいポリマー群である。しかしながら、従来の高度に中和されたアイオノマーは、アイオノマーの中和に伝統的に採用されているカチオン源、例えば、マグネシウムまたは脂肪酸のマグネシウム塩の高度の親水性ゆえに、親水性である。その親水性の結果として、従来の高度の中和されたアイオノマーは著しい量、例えば、2000から10000PPM(100万分の1)の湿気を吸収し、そのため製造上の問題、例えば、射出成型処理時に部品中の泡を生成するという問題を招来し、また、ゴルフボールの性能の劣化、例えば、水分子によりイオン凝集が可塑化されて反発係数(Coefficient of Restitution。「COR」)や剛性が減少するという性能の劣化をもたらす。
【0005】
したがって、高度に中和された酸ポリマーを含み、水蒸気透過率を改善させた組成物に対する要請が依然としてある。この発明はそのような組成物およびそのゴルフボールのコアおよびカバー層への利用を記述する。
【発明の開示】
【0006】
1実施例において、この発明は、コアおよびカバーを有し、コアおよびカバーのうちの少なくとも1つが耐湿性組成物から製造されているツーピースゴルフボールに向けられている。耐湿性組成物は、その水蒸気透過率は12.5g・mil/100in/日以下であり、メルトフローインデックスは1.0g/10分(190°C、2.16kg)以上であり、高度に中和された酸ポリマーを有する。
【0007】
他の実施例において、この発明は、内側コア層、外側コア層、およびカバーを有し、これら内側コア層、外側コア層、およびカバーのうちの少なくとも1つが耐湿性組成物から製造されている多層ゴルフボールに向けられている。耐湿性組成物は、その水蒸気透過率は12.5g・mil/100in/日以下であり、メルトフローインデックスは1.0g/10分(190°C、2.16kg)以上であり、高度に中和された酸ポリマーを有する。
【0008】
他の実施例において、この発明は、コア、内側カバー層、および外側カバーを有し、これらコア、内側カバー層、および外側カバーのうちの少なくとも1つが耐湿性組成物から製造されている多層ゴルフボールに向けられている。コアの直径は1.50インチであり、内側カバー層の厚さは0.025インチから0.060インチであり、外側カバー層の厚さは0.025インチから0.090インチである。耐湿性組成物は、その水蒸気透過率は12.5g・mil/100in/日以下であり、メルトフローインデックスは1.0g/10分(190°C、2.16kg)以上であり、高度に中和された酸ポリマーを有する。
【発明の詳細な説明】
【0009】
この発明のゴルフボールは、ワンピース、ツーピース、多層および糸巻のゴルフボールを含み、これらは種々のコア構造、中間層、カバーおよびコーティングを有する。ゴルフボールコアは、中心から外側周囲まで至るコア全体を有する唯一の単一の層であってよく、また、センタとこれを取り巻く少なくとも1つの外側カバー層を有しても良い。センタ、コアの最内側の部分は好ましくはソリッドであるが、空洞でも、液体充填、ゲル充填、気体充填であってもよい。外側コア層は、ソリッドでも、引っ張られた弾性材料から生成された糸巻層であってもよい。ゴルフボールのカバーは1または複数の層、例えば、内側および外側のカバー層を具備する二重カバーを含んでよい。オプションとして、コアおよびカバーの間に付加的な層を配置しても良い。
【0010】
この発明のゴルフボールは、ここに開示されるように、高度に中和されたポリマーを有する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備する。耐湿性組成物は、コア層、カバー層、または当該コアまたはカバーの間に配された中間層の任意の1つまたは複数にあってよい。
【0011】
この開示目的において、組成物の水蒸気透過率(MVTR)が12.5g・mil/100in/日以下であれば、当該組成物は「耐湿性」である。好ましくは、組成物のMVTRは、8.0g・mil/100in/日以下、または、6.5g・mil/100in/日以下、または、5.0g・mil/100in/日以下、または、4.0g・mil/100in/日以下、または、2.5g・mil/100in/日以下、または、または、2.0g・mil/100in/日以下である。ここで用いられるように、水蒸気透過率(MVTR)はg・mil/100in/日で与えられ、20°Cで測定され、ASTM F1249−99に従う。
【0012】
この発明の耐湿性組成物は高度に中和された酸ポリマー(「HNP」)を有する。ここで用いられるように、「高度に中和された」は、その酸基の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、またさらに好ましくは100%が中和されたのちの酸ポリマーを指す。HNPは、カチオン、有機酸の塩、有機酸の適切な塩基、またはこれらの2以上の組み合わせにより中和してよい
【0013】
適切なHNPはα,β−エチレン系の不飽和モノまたはジカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、およびこれらの組み合わせである。用語「コポリマー」は、ここで使用されるように、2種類のモノマーを含むポリマー、3種類のモノマーを含むポリマー、4以上の種類のモノマーを含むポリマーを含む。好ましいα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸は、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸である。(メタ)アクリル酸がとりわけ好ましい。ここで使用される「(メタ)アクリル酸」はメタアクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」はメタクリラートおよび/またはアクリレートを意味する。好ましい酸ポリマーはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸およびエチレンまたはCからCのα−オレフィンであり、オプションとして軟化用モノマーを含む。とくに好ましい酸ポリマーは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである。
【0014】
軟化用モノマーを含むときには、そのようなコポリマーはE/X/Yタイプのコポリマーと呼ばれ、ここで、Eはエチレン、XはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸、Yは軟化用モノマーである。軟化用モノマーは典型的にはアルキル(メタ)アクリレートであり、ここでアルキル基は1から8個の炭素原子を含む。好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、Xが(メタ)アクリル酸および/またはYが(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、およびエチル(メタ)アクリレートであるコポリマーである。より好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレートである。
【0015】
酸コポリマー中のエチレンまたはCからCのα−オレフィンの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも25wt%、さらに好ましくは少なくとも40wt%、それよりさらに好ましくは60wt%である。酸コポリマー中のCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸の量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、1wt%、または3wt%、または4wt%、または5wt%を下限とし、20wt%、または25wt%、または30wt%、または35wt%を上限とする範囲内である。酸コポリマー中のオプションの軟化コモノマーの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、0wt%、または5wt%、または10wt%、または15wt%を下限とし、20wt%、または30wt%、または35wt%、または40wt%、または50wt%を上限とする範囲内である。
【0016】
適切な酸ポリマーは、70%以上に中和されるのに先立って部分的に中和されていてよい。適切な部分的に中和されている酸ポリマーは、これに限定されないが、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なSurlyn(商標)アイオノマー;Honeywell International社から商業的に入手可能なAClyn(商標)アイオノマー;およびExxonMobile Chemical社から商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。
【0017】
具体的な実施例では、酸コポリマーは、E.I.DuPont社から商業的に入手できるNucrel(商標)酸コポリマー(例えばNucrel 960。エチレン/メタクリル酸コポリマー)、Dow Chemical社から商業的に入手できるPrimacor(商標)ポリマー(例えばPrimacor XUS 60758.08LおよびXUS 60751.18。それぞれ13.5%および15.0%の酸を含有するエチレン/アクリル酸コポリマー)、およびこれらの部分的に中和したアイオノマーから選択される。
【0018】
付加的な適切な酸ポリマーは例えば米国特許第6,953,820号および米国特許出願公開2005/0049367に記載されており、それらの記載は参照してここに組み入れる。
【0019】
この発明の酸ポリマーは、すべてのモノマーを同時に添加してポリマーを重合するダイレクトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許第4,351,931号に記載されており、参照してその内容をここに組み入れる。アイオノマーは、米国特許第3,264,272号に記載されるようにダイレクトコポリマーから製造でき、この特許の内容は参照してここに組み入れる。代替的には、この発明の酸ポリマーは、既存のポリマーにモノマーがグラフト化されるグラフトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許出願公開2002/0013413に記載されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0020】
この発明の酸ポリマーを中和するのに適したカチオンは、シリコーン、シランおよび珪酸塩誘導体および錯体配位子;希土類元素の金属イオンおよび化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属の金属イオンおよび化合物;およびそれらの組み合わせを含む。具体的なカチオン源は、これに限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、錫、希土類金属、およびこれらお組み合わせの金属イオンおよび化合物である。具体的な実施例では、カチオン源は、カルシウムの金属イオンおよび化合物、亜鉛の金属イオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせである。この実施例の具体的な側面では、最終的な組成物中のカルシウムおよび/または亜鉛塩の当量%は、最終的な組成物中にある塩のすべてをベースにして、50%以上、または60%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上であり、当量%はカチオンのモル%にカチオンの価数を掛けて決定される。他の具体的な実施例では、カチオン源は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、おおびこれらの組み合わせの金属イオンおよび化合物から選択される。具体的なカリウムをベースにしたカチオン源は、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なOxane(商標)である。Oxaneはモノ過硫酸塩であり、ここで、モノ過硫酸カリウムは2KHSO・KHSO・KSO[カリウム水素ペルオキシモノスルフェートスルフェート(5:3:2:2)]の化学式の三塩の要素として存在する活性成分である。他の具体的な実施例では、カチオン源はリチウムの金属イオンおよび化合物、亜鉛の金属イオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択される。適切なカチオン源はリチウムおよび/または亜鉛の他のカチオンとの混合物をも含む。リチウムおよび/または亜鉛と混合してHNPを製造するのに適した他のカチオンは、これに限定されないが、米国特許出願公開2006/0106175に開示されている「親水性がより小さい」カチオン;通常のカチオン、例えば、米国特許第6,756,436号および同第6,824,477号に開示されているもの;および米国特許出願公開2005/026740に開示されているカチオンを含む。これらの内容は参照してここに組み入れる。この実施例の具体的な側面では、組成物中のリチウムおよび/または亜鉛の塩のパーセンテージは、組成物中にある塩のすべてをベースにして、50%以上、または、55%以上、または60%以上、または65%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上であり、または95%以上、または100%である。使用するカチオン源の量は所望の中和のレベルに基づいて容易に決定できる。
【0021】
この発明の耐湿性組成物はオプションとして1またはそれ以上の有機酸および/またはその塩を有する。適切な有機酸は、脂肪族有機酸、芳香族有機酸、飽和モノ官能性有機酸、不飽和モノ官能性有機酸、マルチ不飽和モノ官能性有機酸、およびそれらのダイマー誘導体である。具体的には、脂肪族、モノ官能性有機酸が適切であり、好ましくは36個未満の炭素原子を具備するものである。適切な有機酸の具体的な例は、これに限定されないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、安息香酸、パルミチン酸、フェニル酢酸、ナフタレノン酸、それらのダイマー誘導体を含む。とくに適切な有機酸塩は、バリウム、リチウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス、カリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウムおよびこれらの組み合わせから選択したカチオン源により生成されたものを含む。具体的な実施例では、有機酸塩はステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムから選択される。適切な有機酸は例えば米国特許第6,756,436号により詳細に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0022】
この発明の耐湿性組成物は、オプションとして、1またはそれ以上の添加物および/または1またはそれ以上のフィラーを含む。適切な添加物は、これに限定されないが、膨張および発泡剤、光学的明色化剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収剤、光安定剤、消泡剤、処理助剤、雲母、タルク、ナノフィラー、酸化防止剤、安定化剤、軟化剤、香料成分、可塑剤、衝撃修正剤、酸コポリマーワックス、および界面活性剤を含む。適切なフィラーは、これに限定されないが、無機フィラー、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、マイカ、タルク、クレイ、シリカ、鉛シリケート、その他;高比重の金属粉末フィラー、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末、その他;リグランドすなわち粉砕しリサイクルしたコア材料;およびナノフィラーを含む。フィラー材料は、二重官能性フィラー、例えば、酸化亜鉛(これはフィラー/酸補足剤として使用できる)、および二酸化チタン(これはフィラー/明色化剤そして使用される)であってよい。さらに、適切なフィラーおよび添加剤の例は、これに限定されないが、米国特許出願公開2003/0225197に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0023】
この発明の耐湿性有組成物は、オプションとして、1または複数の非脂肪酸メルトフロー修正剤を含む。適切な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、熱可塑性ポリ尿素、多価アルコール、およびそれらの組み合わせを含む。この発明の組成物中に使用して好適な付加的な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、米国特許出願公開2006/0063893および米国特許出願11/216726に記載されているものを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0024】
いくつかの実施例では、この発明の耐湿性組成物はさらに衝撃修正剤を有する。適切な衝撃修正剤は、これに限定されないが、アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマーまたはコポリマー、メタローセン触媒グラフト化および非グラフト化ポリマー、およびエポキシアクリレートである。
【0025】
この発明の耐湿性組成物はオプションとしてHNPに1または複数の付加的なポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーおよびエラストマーをブレンドして製造できる。この発明のHNPにブレンドするのに適した熱可塑性ポリマーの例は、これに限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリラクトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレンマレイン酸無水物、ポリイミド、芳香族ポリケトン、アイオノマーおよびアイオノマー先駆体、酸コポリマー、通常のHNP、ポリウレタン、グラフト化または非グラフト化メタローセン触媒ポリマー、シングルサイト触媒重合ポリマー、高結晶性酸ポリマー、カチオン性アイオノマー、およびこれらの組み合わせを含む。ブレンドの適した具体的なポリオレフィンは1または複数の線形または分岐または環状のC−C40のオレフィン、具体的には、1または複数のC−C40のオレフィン、C−C20のα−オレフィン、または、C−C10のα−オレフィンで共重合したエチレンまたはプロピレンを含むポリマーである。ブレンドに適した具体的な従来のHNPは、これに限定されないが、米国特許第6,756,436号、同第6,894,098号、および同第6,953,820号に開示されている1または複数のHNPを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。この発明のポリマーにブレンドするのに適したエラストマーの例は、すべての天然および合成ゴムを含み、これに限定されないが、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、アクリロニトリル塩化イソプレンゴム、およびポリブタジエンゴム(シスおよびトランス)を含む。さらに他の適切なブレンドポリマーは米国特許第5,981,658号、例えばその第14欄、第30−56行、および米国特許出願公開2005/026740、例えばその第0073段落に開示されているものを含み、参照してこれらの開示内容をここに組み入れる。ここに説明されているブレンドは、リアクターの後のブレンドにより、リアクターブレンドと直列にリアクターを結合することにより、また、同一のリアクターに複数の触媒を用いて複数種類のポリマーを製造することにより、製造できる。ポリマーは押出機に入れる前に混合してもよいし、押出機中で混合してもよい。
【0026】
この発明は、耐湿性組成物の具体的な製造方法または装置に限定されない。好ましい実施例においては、組成物は以下のプロセスで準備される。酸ポリマーが、溶融押出機、例えば、シングルまたはツインスクリュー押出機に供給される。好ましくは、Caおよび/またはZnのイオンおよび化合物から選択された、1のカチオン源の適切な量を、溶融した酸ポリマーに添加して、酸ポリマーの酸基およびオプションの有機酸の酸基を含む、存在するすべての酸基の少なくとも70%を中和する。存在するすべての酸基のうちの、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、もっと好ましくは少なくとも100%を中和する。酸ポリマーは、好ましくは、Caおよび/またはZnの金属イオンおよび化合物から選択された、カチオン源と接触する前に部分的に中和されていてもよい。得られた混合物が、金型ヘッドからストランドとして押し出される前に集中的に混合される。付加的な材料、例えば、添加物、フィラー、メルトフロー修正剤、および衝撃修正剤がオプションとして処理中に組み込まれる。
【0027】
さらに、適切な耐湿性組成物は、これに限定されないが、米国特許出願公開2006/0106175に開示された、親水性がより小さいカチオンにより中和されたHNPを含有する組成物を含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0028】
加工可能にするために、この発明の耐湿性組成物は、少なくとも0.5g/10分(190°C、2、16kg)のメルトフローインデックスを有する。好ましくは、耐湿性組成物のメルトフローインデックスは少なくとも0.8g/10分であり、あるいは、0.8g/10分または1.0g/10分の下限と、4.0g/10分または5.0g/10分の上限とを有する範囲内にある。当該開示目的では、メルトフローインデックスはASTM D1238に従って測定される。
【0029】
この発明の耐湿性組成物は種々の用途に利用できる。例えば、HMP含有耐湿性組成物はゴルフ道具に使用されて好適である。ゴルフ道具は、これに限定されないが、ゴルフボール、ゴルフシューズ、およびゴルフクラブを含む。
【0030】
この発明のゴルフボールは、糸巻、ワンピース、ツーピース、または多層ゴルフボールであってよい。ただし、少なくとも1つの層が、上述のHNPを含有し、メルトフローインデックスが1.0g/10分以上である耐湿性組成物から製造されている。耐湿性組成物を有する2以上の層を具備するゴルフボールにおいては、1つの層の耐湿性組成物がが他の層の耐湿性組成物と同じでも異なっても良い。耐湿性組成物を有する層は、コア層(例えばセンタまたは外側コア層)、中間層、またはカバー層の任意の1つまたは複数であってよい。この発明の組成物は、発泡され、または密度調整材料を充填されて所望の修正された慣性モーメントを実現してもよい。
【0031】
この発明のゴルフボールの反発係数(Cefficient Of Restitution。COR)は0.800以上であり、好ましくは0.800から0.814である。このゴルフボールの圧縮は、全般的には、100以下であり、好ましくは80から90である。
【0032】
この発明のゴルフボールコアは、単一層、二重層、または多層コアでよく、一般に、その全体の直径は1.50インチから1.62インチであり、好ましくは、その全体の直径は1.50インチである。この発明の二重層コアは、一般的に、直径が0.50インチから1.55インチの内側コア層(すなわち「センタ」)と、厚さが0.03インチから0.25インチの外側コア層とを具備する。この発明のゴルフボールカバーは単一層、二重層、または多層カバーである。この発明の単一層カバーの厚さは一般に0.025インチから0.090インチである。この発明の二重層および多層カバーの各層の厚さは一般的に0.025インチから0.060インチである。
【0033】
この発明は、ゴルフボール層を製造する具体的な方法に限定されない。射出成型、圧縮成型、成型、および反応性射出成型を含む任意の適切な手法で層を製造してよいことに留意されたい。好ましくは、熱硬化性カバー材料が成型または反応性射出成型の手法によりゴルフボールカバーへと製造され、熱可塑性カバー材料が圧縮または射出成型の手法によりゴルフボールカバーへと製造される。
【0034】
好ましい実施例では、この発明は、圧縮成型されたゴムのコアと、上述した耐湿性組成物を有し、射出または圧縮成型されたカバー層とを具備するツーピースゴルフボールを実現する。
【0035】
他の好ましい実施例では、この発明は、コアおよびポリウレタンまたはポリ尿素のカバーを具備し、コアが上述した耐湿性組成物を有するツーピースゴルフボールを実現する。
【0036】
他の好ましい実施例では、この発明は、内側コア層、外側コア層、および1以上の層を具備するカバーを有する多層ゴルフボールを実現する。内側コア層および外側コア層の少なくとも1つが上述した耐湿性組成物を有する。
【0037】
他の好ましい実施例では、この発明は、1以上の層を具備するコア、内側カバー層、および外側カバー層を有する多層ゴルフボールを実現する。内側カバー層および外側カバー層の少なくとも1つが上述した耐湿性組成物を有する。
【0038】
この発明のゴルフボールは、上述した耐湿性組成物以外の組成物から製造された少なくとも1つの層を具備して良い。この発明のゴルフボールコア、中間層およびカバー層に好適な材料は、これに限定されないが、例えば低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、および高密度ポリエチレンを含むポリエチレン;ポリプロピレン;ゴム強化オレフィンポリマー;コポリエーテル−エステル;コポリエーテル−アミド;ポリカーボネート;アイオノマー性コポリマーの部分を構成しない酸コポリマー;プラストマー;フレクソマー:ビニル樹脂、例えば、ビニルクロライドをビニルセテートで共重合させて製造したもの、アクリル酸エステル、またはビニリデンクロライド;スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー;スチレン/エチレン−ブチレン/スチレンブロックコポリマー;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー;フルオロポリマー;動的に加硫したエラストマー;エチレンビニルアセテート;エチレンメタクリレートおよびエチレンエタクリレート;エチレンメタクリル酸、エチレンアクリル酸、およびプロピレンアクリル酸;ポリビニルクロライド樹脂;メタローセンまたは他のシングルサイト触媒を使用して製造したコポリマーおよびホモポリマー;ポリアミド、アミド−エステルエラストマー、および、アイオノマーとポリアミドのグラフトコポリマー(例えば、Arkema社から商業的に入手可能なPebax(商標)熱可塑性ポリエーテルブロックアミドを含む);ポリフェニレン酸化物樹脂、例えば、General Electric社から商業的に入手可能なNORYL(商標);架橋トランスポリイソプレンブレンド;ポリウレタン;ポリ尿素;ポリエステルベースの熱可塑性エラストマー、例えば、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能なHytel(商標)、およびGeneral Electric社から商業的に入手可能なLOMOD(商標);ポリウレタンベースの熱可塑性エラストマー、例えば、BASF社から商業的に入手可能なElastollan(商標);合成または天然ゴム;部分的または十分に中和されたアイオノマー;およびこれらの組み合わせを含む。適切なゴルフボール材料および構造は、これに限定されないが、米国特許第6,117,025号、同第6,767,940号および同第6,969,630号に開示されたものを含み、これらの内容は参照し得ここに組み入れる。
【0039】
この発明の外側カバーのためにとくに好ましい材料は、成型可能な反応性材料、好ましくは、脂肪族または芳香族の熱硬化性ポリウレタン、および脂肪族または芳香族の熱硬化性ポリウレタンを含む。
【0040】
また、適切なカバー層材料およびこれを製造する方法は、例えば、米国特許第5,484,870号および同第6,835,794号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0041】
この発明の目的において、圧縮は、既知の手順に従って、Atti圧縮試験装置を用いて測定され、ここではピストンを用いてボールをスプリングに押しつける。ピストンの移動量は固定されスプリングの偏位が測定される。スプリングの偏位の測定はボールの接触時点で開始しない。むしろ、ほぼ第1の1.25mm(0.25インチ)のスプリングの偏位のオフセットがある。非常に剛性が小さなコアはスプリングを1.25mmより多く撓まさず、ゼロの圧縮が測定される。Atti圧縮テスタは42.7mm(1.68インチ)の径の物体を測定するように設計されている。したがって、ゴルフボールコアのようなより小さな物体は隙間を埋めて42.7mmの高さとなるようにして正確な測定値を得るようにしなければならない。
【0042】
この発明の目的において、CORは既知の手順に従って決定され、ここでは、ゴルフボールまたはゴルフボールのサブアッセンブリ(例えばゴルフボールコア)を空気砲から所定の速度(この発明の目的では38.1m/s(125ft/s))で打ち出す。複数の弾道光スクリーンが空気砲およびスチール板の間に配置されてボールの速度を測定する。ボールがスチール板へ移動するときに、ボールは各光スクリーンを活性化して各光スクリーンにおける時間を測定する。これにより、ボールの入射速度に比例した入射移行時間が得られる。ボールはスチール板と衝突して複数の光スクリーンを通じてリバウンドし、これが光スクリーン間を移行するのに要する時間間隔を測定する。これにより、ボールの飛び出し速度に比例した飛び出し移行時間が得られる。CORは飛び出し移行時間間隔の入射移行時間間隔に対する比、COR=Tout/Tinとして計算される。
【0043】

以下の例は説明のみを目的とすることに留意されたい。この発明はいかなる態様でもここに示される具体的な開示に限定されない。
【0044】
例1、例2、比較例1、および比較例2
例1および2において、Clarix(商標)およびIotek(商標)から選択された酸ポリマーを混合して組成物を準備した。使用された各成分の相対量を表1に示す。各成分のメルトフローインデックス、曲げ弾性率、およびショアD硬度が測定され、これを表1に報告する。
【0045】
Clarix(商標)およびIotek(商標)は10重量%〜15重量%の酸を有する部分的に中和されたNa/Znのエチレン/アクリル酸アイオノマーであり、それぞれA.Schulman社およびXxxonMobile Chemical社から商業的に入手できる。
【0046】
メルトフローインデックスはASTM D1238に従って室温で、2.16kgを用いて測定された。曲げ弾性率はフレックスバーを用いて測定され、これはASTM D790に従って準備され測定された。硬度はASTM D2240に従って測定された。以下の表で、「pph」はポリマーの100部に対する部として定義される。
【表1】

【0047】
先の組成物の各々は射出成型されて、直径1.55インチ(3.94cm)の固体球を生成した。球に対して、圧力、硬度、および125ft/秒のCORが測定された。結果を表2に報告する。
【表2】

【0048】
ここで数値の下限および数値の上限が示される場合、これらの値の任意の組み合わせを採用できることに留意されたい。
【0049】
ここに引用した、先行文献を含む、すべての特許、刊行物、テスト手順および他の参照資料は、参照して、この発明と矛盾しない範囲で、ここに完全にくみいれる。
【0050】
この発明の事例的な実施例を詳細に説明したが、種々の変更や他の実施例をこの発明の趣旨を逸脱することなく当業者が容易に想到できることに留意されたい。したがって、特許請求の範囲はここに示された例や説明に制限されるのでなく、むしろ、特許請求の範囲は、この発明に宿る特許性のある新規な特徴をすべてを包囲するように理解され、それはこの発明が関連する分野の当業者により均等なものと扱われるすべての特徴を含むことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気透過率(MVTR)が4.0g・mil/100in/日以下で、メルトフローインデックスが1.0g/10分以上で、高度に中和された酸ポリマーを有する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備し、上記高度に中和された酸ポリマーは上記ポリマーの全重量をベースにして0重量%から19重量%の軟化モノマーを有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
カバーは、その厚さが0.0635cm(0.025インチ)から0.229cm(0.090インチ)であり、上記耐湿性組成物から製造される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記耐湿性組成物のメルトフローインデックスが1.0から4.0g/10分である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記酸ポリマーは、上記ポリマーの全重量をベースにして0重量%から19重量%のアクリルアクリレート(アクリルメタクリレート)を有するエチレン/アクリル酸(メタクリル酸)ポリマーである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記耐湿性組成物は、さらに、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムから選択した有機酸塩を有する請求項4記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2008−68080(P2008−68080A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−225115(P2007−225115)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY