説明

水蒸気透過率が小さく高度に中和した酸ポリマー組成物およびそのゴルフボールへの使用

【課題】高度に中和されたアイオノマーの吸湿性に基づくボール成形時の気泡発生、使用時の性能劣化を改善するポリマーを使用したゴルフボールの提供。
【解決手段】耐湿性があり、高度に中和された酸ポリマー組成物から生成された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールである。高度に中和された酸ポリマーはリチウムのイオンおよび化合物、および亜鉛のイオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択されたカチオン源により製造される。この発明のゴルフボールはワンピース、ツーピース、多層および糸巻ゴルフボールを含む。組成物はコア層、カバー層、または中間層の任意の1または複数の中にあってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高度に中和された酸ポリマーを含む耐湿性組成物、およびそのような組成物のゴルフボールにおける使用に向けられている。この発明の高度に中和された酸ポリマーは、リチウムのイオンおよび化合物、および亜鉛のイオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせから選択されたカチオン源により準備される。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのコアおよびカバー層は典型的にはポリマー組成物から構成され、これは例えばポリブタジエンゴム、ポリウレタン、ポリアミド、アイオノマー、およびこれらのブレンドを含む。アイオノマー、とくに硬度に中和されたアイオノマーは、その強靱性、耐久性、広範囲にわたる硬度値から、ゴルフボール層の好ましいポリマー群である。しかしながら、従来の高度に中和されたアイオノマーは、アイオノマーの中和に伝統的に採用されているカチオン源、例えば、マグネシウムまたは脂肪酸のマグネシウム塩の高度の親水性ゆえに、親水性である。その親水性の結果として、従来の高度の中和されたアイオノマーは著しい量、例えば、2000から10000PPM(100万分の1)の湿気を吸収し、そのため製造上の問題、例えば、射出成型処理時に部品中の泡を生成するという問題を招来し、また、ゴルフボールの性能の劣化、例えば、水分子によりイオン凝集が可塑化されて反発係数や剛性が減少するという性能の劣化をもたらす。
【0003】
したがって、水蒸気透過率を改善させた高度に中和された酸ポリマーを含む組成物に対する要請が依然としてある。この発明はそのような組成物およびそのゴルフボールのコアおよびカバー層への利用を記述する。
【発明の開示】
【0004】
1実施例において、この発明は、高度に中和されたポリマーを具備する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールに向けられている。組成物中の存在する酸基のうちの少なくとも55%が中和されてリチウムの対イオンを具備する塩を生成する。
【0005】
他の実施例において、この発明は、高度に中和されたポリマーを具備する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールに向けられている。高度に中和されたポリマーは、1または複数の酸ポリマーを、メルトフロー修正剤の存在下で、酸ポリマーの中和のレベルが70%以上に増加するのに十分な量の、リチウムをベースにするカチオン源に接触させる工程により生成される。
【0006】
他の実施例において、この発明は、高度に中和されたポリマーを具備する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールに向けられている。当該ポリマーは、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレートを、メルトフロー修正剤の存在下で、組成物中の酸基のうちの70%以上が中和されるのに十分な量の、亜鉛をベースにするカチオン源に接触させる工程により生成される。
【発明の詳細な説明】
【0007】
この発明のゴルフボールは、ワンピース、ツーピース、多層および糸巻のゴルフボールを含み、これらは種々のコア構造、中間層、カバーおよびコーティングを有する。ゴルフボールコアは、中心から外側周囲まで至るコア全体を有する唯一の単一の層であってよく、また、センタとこれを取り巻く少なくとも1つの外側カバー層を有しても良い。センタ、コアの最内側の部分は好ましくはソリッドであるが、空洞でも、液体充填、ゲル充填、気体充填であってもよい。外側コア層は、ソリッドでも、引っ張られた弾性材料から生成された糸巻層であってもよい。ゴルフボールのカバーは1または複数の層、例えば、内側および外側のカバー層を具備する二重カバーを含んでよい。オプションとして、コアおよびカバーの間に付加的な層を配置しても良い。
【0008】
この発明のゴルフボールは、高度に中和されたポリマーを有する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備する。好ましい実施例では、耐湿性組成物から製造された層は多層ゴルフボールの外側コア層である。
【0009】
この開示目的において、組成物の水蒸気透過率(MVTR)が8.0g・mil/100in/日以下、または、好ましくは、5.0g・mil/100in/日以下、より好ましくは、3.0g・mil/100in/日以下、さらに好ましくは、2.5g・mil/100in/日以下、最も好ましくは、1.0g・mil/100in/日以下であれば、当該組成物は「耐湿性」である。ここで用いられるように、水蒸気透過率(MVTR)はg・mil/100in/日で与えられ、20°Cで測定され、ASTM F1249−99に従う。
【0010】
この発明の耐湿性組成物は高度に中和された酸ポリマー(「HNP」)とオプションの1またはそれ以上の付加材料とを有し、付加材料は、これに限定されないが、有機酸およびその塩、フィラー、添加物、および非脂肪酸メルトフロー改質剤を含む。好ましい実施例では、耐湿性組成物は、HNPと、有機酸およびその塩、フィラー、添加物、および非脂肪酸メルトフロー改質剤からなるグループから選択された1またはそれ以上のオプションの付加材料とから主に構成される。「主に構成される」は、ここでは、列挙された要素が基本的であり、他方、より少量の他の要素もこの発明の作用を阻害しない程度に存在して良いことを意味する。
【0011】
ここで用いられるように、「高度に中和された」は、その酸基の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、またさらに好ましくは100%が中和されたのちの酸ポリマーを指す。
【0012】
この発明によれば、酸ポリマーまたは部分的に中和されている酸ポリマーが、リチウムおよび/または亜鉛を含むカチオン源を用いて70%以上に中和されると、その結果として得られるHNPは、耐久性、所望の反発係数、および許容可能なメルトフロー(例えば0.5g/10分以上のメルトフローインデックス)を維持しつつ、水蒸気透過率が改善された組成物を実現することが見いだされた。
【0013】
この発明のHNPを製造するのに適したカチオン源は、リチウムのイオンおよび化合物、亜鉛のイオンおよび化合物、ならびにこれらの組み合わせを含む。適切なカチオン源は、また、リチウムおよび/または亜鉛のカチオンと他のカチオンとの混合物である。リチウムおよび/または亜鉛のカチオンと混合してこの発明のHNPを製造するのに好適な他のカチオンは、これに限定されないが、米国特許出願公開2006/0106175に開示された「親水性がより小さい」カチオン;米国特許第6,756,436号および同第6,824,477号に開示されるような通常のHNPカチオン;および米国特許出願公開2005/026740に開示されるカチオンを含む。これらの開示内容は参照してここに組み入れる。
【0014】
組成物中に他のカチオンが存在しても良いけれども、組成物中のリチウムおよび/または亜鉛の塩のパーセンテージは、組成物中のすべての塩をベースにして、好ましくは、50%以上、または、55%以上、または、60%以上、または65%以上、または70%以上、または80%以上、または90%以上、または95%以上、または100%である。使用されるカチオンの量は中和の所望のレベルに基づいて容易に決定される。
【0015】
この発明のHNPはα,β−エチレン系の不飽和モノまたはジカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、およびこれらの組み合わせである。用語「コポリマー」は、ここで使用されるように、2種類のモノマーを含むポリマー、3種類のモノマーを含むポリマー、4以上の種類のモノマーを含むポリマーを含む。好ましいα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸は、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸である。(メタ)アクリル酸がとりわけ好ましい。ここで使用される「(メタ)アクリル酸」はメタアクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」はメタクリラートおよび/またはアクリレートを意味する。好ましい酸ポリマーはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸およびエチレンまたはCからCのα−オレフィンであり、オプションとして軟化用モノマーを含む。とくに好ましい酸ポリマーは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである。
【0016】
軟化用モノマーを含むときには、そのようなコポリマーはE/X/Yタイプのコポリマーと呼ばれ、ここで、Eはエチレン、XはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸、Yは軟化用モノマーである。軟化用モノマーは典型的にはアルキル(メタ)アクリレートであり、ここでアルキル基は1から8個の炭素原子を含む。好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、Xが(メタ)アクリル酸および/またはYが(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、およびエチル(メタ)アクリレートであるコポリマーである。より好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレートである。
【0017】
酸コポリマー中のエチレンまたはCからCのα−オレフィンの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも25wt%、さらに好ましくは少なくとも40wt%、それよりさらに好ましくは60wt%である。酸コポリマー中のCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸の量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、1wt%、または3wt%、または4wt%、または5wt%を下限とし、20wt%、または25wt%、または30wt%、または35wt%を上限とする範囲内である。酸コポリマー中のオプションの軟化コモノマーの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、0wt%、または5wt%、または10wt%、または15wt%を下限とし、20wt%、または30wt%、または35wt%、または40wt%、または50wt%を上限とする範囲内である。
【0018】
とくに好ましい酸ポリマーは、これに限定されないが、E.I.DuPont社から商業的に入手できるNucrel(商標)酸コポリマー、およびDow Chemical社から商業的に入手できるPrimacor(商標)ポリマーである。
【0019】
酸ポリマーは、70%以上に中和されるのに先立って部分的に中和されていてよい。適切な部分的に中和されている酸ポリマーは、これに限定されないが、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なSurlyn(商標)アイオノマー;Honeywell International社から商業的に入手可能なAClyn(商標)アイオノマー;およびExxonMobile Chemical社から商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。
【0020】
付加的な適切な酸ポリマーは例えば米国特許第6,953,820号および米国特許出願公開2005/0049367に記載されており、それらの記載は参照してここに組み入れる。
【0021】
この発明の酸ポリマーは、すべてのモノマーを同時に添加してポリマーを重合するダイレクトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許第4,351,931号に記載されており、参照してその内容をここに組み入れる。アイオノマーは、米国特許第3,264,272号に記載されるようにダイレクトコポリマーから製造でき、この特許の内容は参照してここに組み入れる。代替的には、この発明の酸ポリマーは、既存のポリマーにモノマーがグラフト化されるグラフトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許出願公開2002/0013413に記載されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0022】
この発明の組成物は、この発明のHNP(すなわちリチウムおよび/または亜鉛のカチオン源により製造されたもの)と、オプションの1または複数の付加的なHNPを含む。付加的なHNPが含まれる場合、その付加的なHNPは1または複数の発明に係るHNPおよび/または1または複数の通常のHNP(すなわち通常のカチオン源を用いて製造されたもの)であってよい。組成物中のHNPの総量は、組成物のポリマーの総重量を基準にして好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、されに好ましくは50wt%から99.5wt%、さらに好ましくは、60wt%から98wt%である。好ましくはこの発明に係るHNPの量は組成物中で少なくとも30wt%である。
【0023】
この発明の耐湿性組成物はオプションとして1またはそれ以上の有機酸および/またはその塩を有する。適切な有機酸は、脂肪族有機酸、芳香族有機酸、飽和モノ官能性有機酸、不飽和モノ官能性有機酸、マルチ不飽和モノ官能性有機酸、およびそれらのダイマー誘導体である。具体的には、脂肪族、モノ官能性有機酸が適切であり、好ましくは36個未満の炭素原子を具備するものである。適切な有機酸の具体的な例は、これに限定されないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、安息香酸、パルミチン酸、フェニル酢酸、ナフタレノン酸、それらのダイマー誘導体を含む。とくに適切な有機酸塩は、バリウム、リチウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス、カリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウムおよびこれらの組み合わせから選択したカチオン源により生成されたものを含む。適切な有機酸は例えば米国特許第6,756,436号により詳細に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0024】
この発明の耐湿性有組成物は、オプションとして、1または複数の非脂肪酸メルトフロー修正剤を含む。適切な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、熱可塑性ポリ尿素、多価アルコール、およびそれらの組み合わせを含む。この発明の組成物中に使用して好適な付加的な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、米国特許出願公開2006/0063893および米国特許出願11/216726に記載されているものを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0025】
この発明の耐湿性組成物は、オプションとして、1またはそれ以上の添加物および/または1またはそれ以上のフィラーを含む。適切な添加物は、これに限定されないが、膨張および発泡剤、光学的明色化剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収剤、光安定剤、消泡剤、処理助剤、雲母、タルク、ナノフィラー、酸化防止剤、安定化剤、軟化剤、香料成分、可塑剤、衝撃修正剤、酸コポリマーワックス、および界面活性剤を含む。適切なフィラーは、これに限定されないが、無機フィラー、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、マイカ、タルク、クレイ、シリカ、鉛シリケート、その他;高比重の金属粉末フィラー、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末、その他;リグランドすなわち粉砕しリサイクルしたコア材料;およびナノフィラーを含む。フィラー材料は、二重官能性フィラー、例えば、酸化亜鉛(これはフィラー/酸補足剤として使用できる)、および二酸化チタン(これはフィラー/明色化剤そして使用される)であってよい。さらに、適切なフィラーおよび添加剤の例は、これに限定されないが、米国特許出願公開2003/0225197に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0026】
この発明の耐湿性組成物はオプションとしてHNPに1または複数の付加的なポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーおよびエラストマーをブレンドして製造できる。この発明のHNPにブレンドするのに適した熱可塑性ポリマーの例は、これに限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリラクトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレンマレイン酸無水物、ポリイミド、芳香族ポリケトン、アイオノマーおよびアイオノマー先駆体、酸コポリマー、通常のHNP、ポリウレタン、グラフト化または非グラフト化メタローセン触媒ポリマー、シングルサイト触媒重合ポリマー、高結晶性酸ポリマー、カチオン性アイオノマー、およびこれらの組み合わせを含む。ブレンドの適した具体的なポリオレフィンは1または複数の線形または分岐または環状のC−C40のオレフィン、具体的には、1または複数のC−C40のオレフィン、C−C20のα−オレフィン、または、C−C10のα−オレフィンで共重合したエチレンまたはプロピレンを含むポリマーである。ブレンドに適した具体的な従来のHNPは、これに限定されないが、米国特許第6,756,436号、同第6,894,098号、および同第6,953,820号に開示されている1または複数のHNPを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。この発明のポリマーにブレンドするのに適したエラストマーの例は、すべての天然および合成ゴムを含み、これに限定されないが、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、アクリロニトリル塩化イソプレンゴム、およびポリブタジエンゴム(シスおよびトランス)を含む。さらに他の適切なブレンドポリマーは米国特許第5,981,658号、例えばその第14欄、第30−56行、および米国特許出願公開2005/026740、例えばその第0073段落に開示されているものを含み、参照してこれらの開示内容をここに組み入れる。ここに説明されているブレンドは、リアクターの後のブレンドにより、リアクターブレンドと直列にリアクターを結合することにより、また、同一のリアクターに複数の触媒を用いて複数種類のポリマーを製造することにより、製造できる。ポリマーは押出機に入れる前に混合してもよいし、押出機中で混合してもよい。
【0027】
加工可能にするために、この発明の耐湿性組成物は、少なくとも0.5g/10分(190°C、2、16kg)のメルトフローインデックスを有する。好ましくは、耐湿性組成物のメルトフローインデックスは0.5g/10分または1.0g/10分の下限と、4.0g/10分または5.0g/10分または10.0g/10分の上限とを有する範囲内にある。
【0028】
この発明の耐湿性組成物の曲げ弾性率は典型的には3000psiから200000psi、好ましくは5000psiから150000psi、より好ましくは10000psiから125000psi、さらにより好ましくは10000psiから100000psiから100000psiである。組成物の材料硬度は、一般に、30ショアDから80ショアDである。当該組成物がゴルフボールのセンタにある実施例では、材料硬度は好ましくは30ショアDから50ショアDである。当該組成物がゴルフボールのカバー層、外側コア層またはコアおよびカバーの間の中間層にある実施例では、材料硬度は好ましくは30ショアDから70ショアDである。この発明の有組成物のノッチ付きアイゾッド衝撃強さは一般にASTM D256に従って23°Cで測定して少なくとも2ft・lb/inである。
【0029】
この発明は、耐湿性組成物の具体的な製造方法または装置に限定されない。好ましい実施例においては、組成物は以下のプロセスで準備される。好ましい実施例では、組成物は以下のプロセスにより準備される。マスターバッチが、所望の中和種の少なくとも1つ、好ましくはZnO、LiOH−HO、またはMg(OH)と、オプションのメルトフロー修正剤、例えば脂肪酸またはその塩により、任意の適切なポリマー処理装置、例えば、ツーロールミル、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、または二段スクリュー押出機を用いて準備される。反応性中和種の組み込み量は15%から80%、好ましくは20%から60%、より好ましくは30%から50%である。マスターバッチはオプションとして粉砕、切断、ペレット化されて中和対称のベース樹脂のペレットサイズと類似のサイズとされる。ベース樹脂はつぎに中和の所望レベルを実現するのに必要なマスターバッチの量を乾燥ブレンドされる。HNPは、ベース樹脂、マスターバッチ、およびオプションのメルトフロー修正剤を任意のポリマー処理装置中で反応的に混合することにより、生成される。装置はマスターバッチを準備するための上述の装置を含む。ベース樹脂はマスターバッチを版の雨滴に混合する前に部分的に中和されていてよい。
【0030】
この発明の耐湿性組成物は種々の用途に利用できる。例えば、HMP含有耐湿性組成物はゴルフ道具に使用されて好適である。ゴルフ道具は、これに限定されないが、ゴルフボール、ゴルフシューズ、およびゴルフクラブを含む。
【0031】
この発明のゴルフボールは、糸巻、ワンピース、ツーピース、または多層ゴルフボールであってよい。ただし、少なくとも1つの層が、上述した耐湿性組成物から製造される。耐湿性組成物をともに有する2以上の層を具備するゴルフボールにおいては、1つの層の耐湿性組成物が他の層の耐湿性組成物と同じでも異なっても良い。耐湿性組成物を有する層は、コア層(例えばセンタまたは外側コア層)、中間層、またはカバー層の任意の1つまたは複数であってよい。この発明の組成物は、発泡され、または密度調整材料を充填されて所望のゴルフボール性能特性を実現してもよい。
【0032】
この発明は、ゴルフボール層を製造する具体的な方法に限定されない。射出成型、圧縮成型、成型、および反応性射出成型を含む任意の適切な手法で層を製造してよいことに留意されたい。好ましくは、熱硬化性カバー材料が成型または反応性射出成型の手法によりゴルフボールカバーへと製造され、熱可塑性カバー材料が圧縮または射出成型の手法によりゴルフボールカバーへと製造される。
【0033】
この発明の好ましい実施例において、この発明は、圧縮成型されたゴムのコア、耐湿性組成物から製造され射出成型または圧縮成型された少なくとも1つの中間層、および、ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層を具備する多層ボールを実現する。耐湿性組成物はリチウムおよび/または亜鉛のカチオン源を用いて生成されたHNPを有する。好ましくは組成物中に存在する酸基のうちの55%以上が中和されてリチウムの対イオンを具備する塩とされる。ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層は熱硬化性でも熱可塑性でもよい。光安定性のポリ尿素およびポリウレタンが外側カバー層として好ましい。好ましくは、ゴムコア組成物は、ゴム、架橋剤、フィラー、共架橋剤またはフィリーラジカル開始剤およびオプションのシス−トランス変換触媒を有する。典型的なゴム材料は、天然および合成ゴムであり、これに限定されないが、ポリブタジエンおよびスチレンブタジエンを含む。架橋剤は典型的には金属塩、例えば3〜8の炭素原子を有する酸、例えば、(メタ)アクリル酸の亜鉛塩またはマグネシウム塩を含む。フリーラジカル開始剤は、硬化サイクルにおいて分解する任意の既知の重合開始剤であってよく、これに限定されないが、ジクミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、a−aビス−(−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−メメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンまたはジ−t−ブチルペルオキシド、およびその混合物を含む。ゴム、架橋剤、フィラー、共架橋剤および開始剤の適切なタイプおよび量は、例えば、米国特許出願公開2003/0144087に十分に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。ゴルフボールコア、中間層、およびカバー層に利用できる種々のボール構造および材料についても米国特許出願公開2003/0144087を参照できる。
【0034】
他の好ましい実施例において、この発明は、ソリッドコア、外側コア層、およびカバーを具備する多層ゴルフボールを実現する。ここで、外側コア層は、リチウムおよび/または亜鉛のカチオン源を用いて生成されたHNPを有する耐湿性組成物から製造される。好ましくは組成物中に存在する酸基のうちの55%以上が中和されてリチウムの対イオンを具備する塩とされる。この実施例の具体的な側面では、組成物の水蒸気透過率は8g・mil/100in/日以下であり、これにより、湿気がコアに浸入するのを抑制する。この実施例の他の具体的な側面では、HNPは好ましくはエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーをベースにし、これは軟化用のコモノマーを含んでよい。ソリッドコアは任意の適切なコア材料から製造でき、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、EPR、EPDM、スチレンブロックコポリマーゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、およびアクリロニトリル塩化イソプレンゴムから選択された通常のゴムから製造される。コアの径は好ましくは1.40インチから1.55インチである。カバーは、所望な性能特性に基づいて通常のゴルフボールカバー材料から選択した堅牢で切断耐性のある材料である。カバーは1または複数の層を有してよく、好ましくはその全体の厚さが0.020インチから0.045インチである。適切なカバー材料はアイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂のブレンド、熱可塑性および熱硬化性ウレタン、熱可塑性および熱硬化性尿素、熱可塑性ゴムポリマー、ポリエチレン、および合成または天然加硫ゴム、例えばバラタを含む。他の適切なコアおよびカバー材料は例えば米国特許出願公開2005/0164810、米国特許第5,919,100号、およびPCT刊行物WO00/23519および同WO00/29129に開示されており、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0035】
他の好ましい実施例において、この発明は、コアおよびカバーを具備するツーピースのゴルフボールを実現する。ここで、カバーは、リチウムおよび/または亜鉛のカチオン源を用いて生成されたHNPを有する耐湿性組成物から製造される。好ましくは組成物中に存在する酸基のうちの55%以上が中和されてリチウムの対イオンを具備する塩とされる。カバーの材料硬度は好ましくは30ショアDから70ショアDである。カバーの厚さは好ましくは0.020インチから0.350インチ、より好ましくは0.025インチから0.090インチである。コアは好ましくは任意の適切なコア材料から製造されたソリッドコアであり、好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、EPR、EPDM、スチレンブロックコポリマーゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、およびアクリロニトリル塩化イソプレンゴムから選択された通常のゴムから製造される。この実施例の好ましい側面では、コアは、ゴム、架橋剤、フィラー、フィリーラジカル開始剤、およびオプションのシス−トランス変換触媒の反応生成物から製造される。コアの径は好ましくは1.00インチから1.63インチである。コアのAtti圧縮は好ましくは100より小さい。
【0036】
他の好ましい実施例において、この発明は、リチウムおよび/または亜鉛のカチオン源を用いて生成されたHNPを有する耐湿性組成物から生成されたHNPを含む組成物から製造されたセンタを具備するツーピースのまたは多層のゴルフボールを実現する。好ましくは組成物中に存在する酸基のうちの55%以上が中和されてリチウムの対イオンを具備する塩とされる。HNPは好ましくはE/X/Y型のポリマーをベースにし、具体的には、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレートである。好ましくは、コアの材料硬度は30ショアDから50ショアDである。カバーは、所望な性能特性に基づいて通常のゴルフボールカバー材料から選択した堅牢で切断耐性のある材料である。カバーは1または複数の層を有してよく、好ましくはその全体の厚さが0.020インチから0.045インチである。適切なカバー材料は、これに限定されないが、アイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂のブレンド、熱可塑性および熱硬化性ウレタン、熱可塑性および熱硬化性尿素、熱可塑性ゴムポリマー、ポリウレタン、および合成または天然加硫ゴム、例えばバラタを含む。
【0037】
この発明のゴルフボールの反発係数(「COR」)は少なくとも0.790、好ましくは少なくとも0.800、より好ましくは少なくとも0.805、さらに好ましくは少なくとも0.810であり、その圧縮は75から110、好ましくは90から100である。
【0038】
この発明の目的において、圧縮は、既知の手順に従って、Atti圧縮試験装置を用いて測定され、ここではピストンを用いてボールをスプリングに押しつける。ピストンの移動量は固定されスプリングの偏位が測定される。スプリングの偏位の測定はボールの接触時点で開始しない。むしろ、ほぼ第1の1.25mm(0.25インチ)のスプリングの偏位のオフセットがある。非常に剛性が小さなコアはスプリングを1.25mmより多く撓まさず、ゼロの圧縮が測定される。Atti圧縮テスタは42.7mm(1.68インチ)の径の物体を測定するように設計されている。したがって、ゴルフボールコアのようなより小さな物体は隙間を埋めて42.7mmの高さとなるようにして正確な測定値を得るようにしなければならない。
【0039】
この発明の目的において、CORは既知の手順に従って決定され、ここでは、ゴルフボールまたはゴルフボールのサブアッセンブリ(例えばゴルフボールコア)を空気砲から所定の速度(この発明の目的では38.1m/s(125ft/s))で打ち出す。複数の弾道光スクリーンが空気砲およびスチール板の間に配置されてボールの速度を測定する。ボールがスチール板へ移動するときに、ボールは各光スクリーンを活性化して各光スクリーンにおける時間を測定する。これにより、ボールの入射速度に比例した入射移行時間が得られる。ボールはスチール板と衝突して複数の光スクリーンを通じてリバウンドし、これが光スクリーン間を移行するのに要する時間間隔を測定する。これにより、ボールの飛び出し速度に比例した飛び出し移行時間が得られる。CORは飛び出し移行時間間隔の入射移行時間間隔に対する比、COR=Tout/Tinとして計算される。
【0040】

以下の例は説明のみを目的とすることに留意されたい。この発明はいかなる態様でもここに示される具体的な開示に限定されない。
【0041】
耐湿性Li/Zn HNPが以下の手順に従って準備された。エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレートの50%充填のLiOH−HOのマスターバッチがPlasticorderミキサに準備された。一旦混合されると、マスターバッチはシートにプレスされ、ペレットサイズの断片に切断された。マスターバッチおよびエチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレートのドライブレンドがツインスクリュー押出機上のホッパーに入れられ、押出機に供給され、ステアリン酸亜鉛とともに、反応的に押し出されて混合カチオンLi/ZnのHNPを生成した。
【0042】
ここで数値の下限および数値の上限が示される場合、これらの値の任意の組み合わせを採用できることに留意されたい。
【0043】
ここに引用した、先行文献を含む、すべての特許、刊行物、テスト手順および他の参照資料は、参照して、この発明と矛盾しない範囲で、ここに完全にくみいれる。
【0044】
この発明の事例的な実施例を詳細に説明したが、種々の変更や他の実施例をこの発明の趣旨を逸脱することなく当業者が容易に想到できることに留意されたい。したがって、特許請求の範囲はここに示された例や説明に制限されるのでなく、むしろ、特許請求の範囲は、この発明に宿る特許性のある新規な特徴をすべてを包囲するように理解され、それはこの発明が関連する分野の当業者により均等なものと扱われるすべての特徴を含むことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度に中和された酸ポリマーを有する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備し、上記組成物中の酸基のうちの90%以上が中和されてリチウムの対イオンを有する塩にされることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記組成物中の酸基の100%が中和される請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記組成物のMVTRが8g・mil/100in/日以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記酸ポリマーは、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレートまたはエチレン/アクリル酸/n−ブチルアクリレートである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
高度に中和された酸ポリマーを有する耐湿性組成物から製造された少なくとも1つの層を具備し、上記高度に中和された酸ポリマーは、1または複数の酸ポリマーを、メルトフロー修正剤の存在下で、酸ポリマーの中和のレベルが70%以上に増加するのに十分な量の、リチウムをベースにするカチオン源に接触させる工程により生成されることを特徴とするゴルフボール。
【請求項6】
上記メルトフロー修正剤は有機酸または有機酸塩である請求項5記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記組成物中にある酸基の65%以上が中和されてリチウムの対イオンを具備する塩にされる請求項5記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記組成物のMVTRが8g・mil/100in/日以下である請求項5記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2008−86757(P2008−86757A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−225116(P2007−225116)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】