説明

水道管渠用止水装置

【課題】水道管渠の内部での作業時に濁流によって作業員が流されるといった不慮の事故を防止すること。
【解決手段】本発明では、水道管渠(2)の内部での作業時に作業場所よりも上流側で発生した濁流を堰き止めるために用いる水道管渠用止水装置(1)において、作業場所よりも上流側に固定した固定ロープ(9)の先端に複数本に分岐した支持ロープ(10)を連結するとともに、各支持ロープ(10)の先端を止水シート(11)の縁部に連結して、パラシュート状に形成することにした。また、前記止水シート(11)に通水孔(12)を形成することにした。さらに、前記固定ロープ(9)を固定具(7)に弛緩自在に連結するとともに、固定具(7)と止水シート(11)とを補助ロープ(13)で連結することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管渠の内部での作業時に作業場所よりも上流側で発生した濁流を堰き止めるために用いる水道管渠用止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、上下水道等のインフラ整備の充実によって地中に埋設された水道管渠が広く利用されている。
【0003】
この上下水道等で使用されている水道管渠では、点検時や清掃時や修理時などの作業時に水道管渠の内部に作業員が立ち入って各種の作業を行っている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−69572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この水道管渠の内部での作業においては、水道管渠の内部を流れる水によって作業員が流されてしまうおそれがあるために、水道管渠を流れる水の量の変化に十分に注意をしながら作業を行う必要がある。
【0006】
しかしながら、作業場所よりも上流側で局地的な降雨が発生した場合には、水道管渠を流れる水の量が短時間で急激に増大して水道管渠の内部で濁流が発生してしまい、濁流によって作業員が流されてしまうといった不慮の事故が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、水道管渠の内部での作業時に作業場所よりも上流側で発生した濁流を堰き止めるために用いる水道管渠用止水装置において、作業場所よりも上流側に固定した固定ロープの先端に複数本に分岐した支持ロープを連結するとともに、各支持ロープの先端を止水シートの縁部に連結して、パラシュート状に形成することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記止水シートに通水孔を形成することにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記固定ロープを固定具に弛緩自在に連結するとともに、固定具と止水シートとを補助ロープで連結することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、水道管渠の内部での作業時に作業場所よりも上流側で発生した濁流を堰き止めるために用いる水道管渠用止水装置において、作業場所よりも上流側に固定した固定ロープの先端に複数本に分岐した支持ロープを連結するとともに、各支持ロープの先端を止水シートの縁部に連結して、パラシュート状に形成することにしているために、作業場所よりも上流側で濁流が発生してもパラシュート状の水道管渠用止水装置の止水シートが水道管渠の内部で開いて濁流を堰き止めることができるので、濁流による不慮の事故を防止することができる。
【0012】
特に、止水シートに通水孔を形成することにした場合には、水道管渠に所定量の水を流した状態を維持することができる。
【0013】
また、固定ロープを固定具に弛緩自在に連結するとともに、固定具と止水シートとを補助ロープで連結することにした場合には、固定ロープを弛緩させることによって止水シートを反転させた状態で補助ロープを引張することで水道管渠用止水装置を容易に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る水道管渠用止水装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、水道管渠用止水装置1は、地中に埋設した水道管渠2の内部での点検・清掃・修理などの各種の作業時に使用するものであり、作業場所3よりも上流側で発生した濁流を堰き止めるために用いられる。
【0016】
水道管渠2には、所定間隔をあけて縦孔状の昇降管4,5,6が連通しており、作業時には、作業場所3よりも上流側の昇降管4の開口部に水道管渠用止水装置1を固定具7を介して固定するとともに、作業場所3よりも下流側の昇降管6に脱出用スロープ8を取付け、この脱出用スロープ8の下端部を水道管渠2の内部まで突出させることによって作業員が流されてしまうのを防ぐようにしている。
【0017】
水道管渠用止水装置1は、図1〜図3に示すように、昇降管4の開口部に固定した固定具7に固定ロープ9の中途部を着脱自在に連結するとともに、固定ロープ9の先端部に複数本(ここでは、8本)に分岐した支持ロープ10の基端部を連結し、各支持ロープ10の先端部を略円形状の止水シート11の周縁部に取付けることによって、全体でパラシュート状に形成している。
【0018】
止水シート11は、水道管渠2の断面形状よりも大きな形状で柔軟性を有する素材で形成しており、複数個(ここでは、8個)の貫通孔状の通水孔12を形成するとともに、内側(上流側)の中央部に補助ロープ13の先端部を連結し、補助ロープ13の基端部を固定具7に連結している。
【0019】
また、止水シート11には、一端部にウエイト15を取付ける一方、対向する他端部にフロート16を取付け、さらに、外側(下流側)の中央部に補助パラシュート17を取付けている。
【0020】
この水道管渠用止水装置1は、作業時には、図1に示すように、作業場所3よりも上流側の昇降管4から投入し、作業場所3よりも上流側の水道管渠2の内部に止水シート11を載置するとともに、固定ロープ9及び補助ロープ13の基端部を固定具7に固定しておく。
【0021】
このときに、止水シート11に補助パラシュート17を取付けているために、補助パラシュート17が水14の流れで引っ張られ、これにより、図1に示すように、昇降管4の下流側に止水シート11を位置させることができる。
【0022】
また、止水シート11に通水孔12を形成しているために、水道管渠2の内部を流れる水14が通水孔12を通過して流れることになり、所定量の水14を流した状態で作業を行うことができるとともに、止水シート11の内側(上流側)に水14が溜まって止水シート11が不意に開いた状態となるのを防止することができる。
【0023】
そして、作業時に作業場所3よりも上流側で濁流が発生した場合には、図4に示すように、濁流によって水道管渠2の内部で止水シート11が開いた状態となり、水道管渠2を止水シート11で塞ぎ、濁流を一時的に堰き止めることができる。
【0024】
そのため、水道管渠用止水装置1の止水シート11で濁流を堰き止めている間に作業員が水道管渠2から脱出することができ、濁流によって作業員が流されてしまうといった不慮の事故を防止することができる。
【0025】
なお、固定ロープ9又は補助ロープ13の張力が所定値以上になった場合に、警報を発するようにしておけば、警報によって濁流の発生を作業員に知らせることができる。
【0026】
また、止水シート11に補助ロープ13を取付けているために、支持ロープ10だけでなく補助ロープ13でも止水シート11を支持することができるので、止水シート11をより強固に支持することができる。
【0027】
また、止水シート11に通水孔12を形成しているために、作業員の脱出の妨げとはならない通常の量の水14だけを下流側に流すことができる。
【0028】
また、止水シート11の一端部(下部)にウエイト15を取付けるとともに対向する他端部(上部)にフロート16を取付けているために、止水シート11の下部がウエイト15の重量で水14の中に沈んだ状態となる一方、止水シート11の上部がフロート16の浮力で水14の上面に浮かんだ状態となり、止水シート11の内側に水14が流れ込み、水14の抵抗によって止水シート11を確実に開いた状態にすることができる。
【0029】
さらに、止水シート11は、柔軟性を有する素材によって水道管渠2の断面形状よりも大きな形状に形成しているために、水道管渠2の様々な形状に対応して水道管渠2の断面を良好に塞ぐことができる。
【0030】
水道管渠用止水装置1は、図5に示すように、作業員が無事に脱出した後に、固定具7から固定ロープ9の中途部を外して固定ロープ9を弛緩させると、水14の流れによって止水シート11が反転し、水道管渠2の内部で止水シート11が線状に伸延した状態となる。これにより、水14の抵抗が小さくなって、補助ロープ13を引張することで水道管渠用止水装置1を容易に回収することができる。
【0031】
以上に説明したように、上記水道管渠用止水装置1は、作業場所3よりも上流側に固定した固定ロープ9の先端に複数本に分岐した支持ロープ10を連結するとともに、各支持ロープ10の先端を止水シート11の縁部に連結して、パラシュート状に形成している。
【0032】
そのため、上記水道管渠用止水装置1では、作業場所3よりも上流側で濁流が発生してもパラシュート状の水道管渠用止水装置1の止水シート11が水道管渠2の内部で開いて濁流を堰き止めることができるので、濁流による不慮の事故を防止することができる。
【0033】
また、上記水道管渠用止水装置1では、止水シート11に通水孔12を形成しているために、水道管渠2に所定量の水を流した状態を維持することができる。
【0034】
さらに、上記水道管渠用止水装置1では、固定ロープ9を固定具7に弛緩自在に連結するとともに、固定具7と止水シート11とを補助ロープ13で連結しているために、固定ロープ9を弛緩させることによって止水シート11を反転させた状態で補助ロープ13を引張することで水道管渠用止水装置1を容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】水道管渠用止水装置の使用状態(作業時)を示す説明図。
【図2】水道管渠用止水装置を示す側面図。
【図3】同正面図。
【図4】水道管渠用止水装置の使用状態(濁流発生時)を示す説明図。
【図5】水道管渠用止水装置の使用状態(回収時)を示す説明図。
【符号の説明】
【0036】
1 水道管渠用止水装置
2 水道管渠
3 作業場所
4,5,6 昇降管
7 固定具
8 脱出用スロープ
9 固定ロープ
10 支持ロープ
11 止水シート
12 通水孔
13 補助ロープ
14 水
15 ウエイト
16 フロート
17 補助パラシュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管渠の内部での作業時に作業場所よりも上流側で発生した濁流を堰き止めるために用いる水道管渠用止水装置であって、
作業場所よりも上流側に固定した固定ロープの先端に複数本に分岐した支持ロープを連結するとともに、各支持ロープの先端を止水シートの縁部に連結して、パラシュート状に形成したことを特徴とする水道管渠用止水装置。
【請求項2】
前記止水シートに通水孔を形成したことを特徴とする請求項1に記載の水道管渠用止水装置。
【請求項3】
前記固定ロープを固定具に弛緩自在に連結するとともに、固定具と止水シートとを補助ロープで連結したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水道管渠用止水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70960(P2010−70960A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238524(P2008−238524)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(506018396)株式会社ニーズ (2)
【Fターム(参考)】