説明

汗取りパッド

【課題】一度吸収した汗の逆戻りを防止して、べたつき感をなくすことにより使用感や衛生性を向上させ、また吸収した汗による臭いの発生も少なくして周囲への不快感を軽減する。
【解決手段】肌側に位置して吸水性および透水性を有する表面層と、該表面層よりも浸透性が高く保水性を有する中間層と、非透水性あるいは難透水性を有し、中間層を前記表面層との間に介在させると共に、下面に衣類への装着部を有する裏面層とからなる。中間層は表面層よりも透水性等が高いため、汗を速やかに吸収すると共に、一度吸収した汗が表面層に逆戻りすることを防止する。また表面層には消臭成分を含ませる。さらに表面層に汗との化合により加水分解して揮発する成分を含ませることで、腋下に清涼感をもたらし、毛穴を収縮させて汗等の分泌を抑えることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衣類の腋部に装着して腋下に生ずる汗を吸収するための汗取りパッドの改良に係り、詳しくは汗を速やかに吸収し、しかも吸収した汗が肌側表面に逆戻りすることを防ぎ得る構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から腋下用の汗取りパッドは広く使用されている。発汗量が増える夏場において、また体質的に多汗症の人にとっては、汗取りパッドを衣類の腋部に装着することで当該パッドが汗を吸い取り、腋下の不快感や衣類の腋部の汗染みを防止することができる。
【0003】
このような観点から、本出願人も既に種々の汗取りパッドを提案している(例えば、特許文献1〜7)。ここで基材となるパッド構造は概ね共通するもので、肌側の表面層である透水性のある保水シートと、衣類側の裏面層である難透水性の裏打ちラミネートシート(以下、「バックラミ」という。)と、両シート間に汗を拡散させる吸水部を介在させた積層構造であり、さらにバックラミには粘着層を設けてパッド全体を衣類に装着できるように構成される。
【0004】
【特許文献1】特公平4−66921号公報
【特許文献2】特公平4−44561号公報
【特許文献3】特公平4−29762号公報
【特許文献4】特公平4−54171号公報
【特許文献5】実開平3−11017号公報
【特許文献6】実公平4−49132号公報
【特許文献7】実開平4−60511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記パッド構造からなる従来の汗取りパッドは、肌側に位置する表面層として保水力が高い保水シートを設け、この保水シートで保水できなくなった汗をその透水性により中間層である吸水部に拡散させるものである。ここで表面層の保水シートは中間層の吸水部よりも浸透性が高いため、その高低差に起因して表面層と中間層では汗の保持可能量等が異なる。即ち、浸透性が高ければ、それだけ汗の吸収速度や保持可能量が高まるが、従来の汗取りパッドは、中間層である吸水部よりも浸透性が高い保水シートを表面層として構成しているため、殆どの汗は表面層である保水シートによって保持され、保水シートで保持できなかった余剰分の汗のみが吸水部に拡散されるだけである。また、汗が吸水部に拡散された後に、仮に保水シートで保水している汗が蒸発等すれば、吸水部にある汗は浸透性が高い保水シートに逆戻りしてしまう。つまり、従来の汗取りパッドにおいては、表面層である保水シートが常に汗で湿潤した状態となり、この湿った保水シートが肌に触れることで、べたつき感が生じるという問題があった。
【0006】
また、汗は時間が経てば、その成分が皮膚表面の雑菌により、酸化分解されて臭いを発するが、従来の汗取りパッドは皮膚と接する表面層(保水シート)に殆どの汗が保持されることになるため、汗と細菌の接触機会が多くなって、臭いが発生しやすいという問題もあった。
【0007】
さらに、従来の汗取りパッドは、汗を吸収するという基本機能のみを備え、使用時に腋下に対して清涼感を付与するといった付加価値は考慮されていなかった。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、従来の基本的な吸水機能を損なうことなく、装着時におけるべたつき感をなくして使用感や衛生性を向上させ、また吸収した汗による臭いの発生も少なくして周囲への不快感を軽減し、さらに使用時に清涼感を付与することで機能性を向上した汗取りパッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、衣類の腋部に装着して繊維製パッド地により腋下の汗を吸収する汗取りパッドにおいて、肌側に位置して吸水性を有する表面層と、該表面層よりも浸透性が高く保水性を有する中間層と、非透水性あるいは難透水性を有すると共に下面に衣類への装着部を設けた裏面層とから汗取りパッドを構成するという手段を用いた。
【0010】
本発明は上述のような積層構造を有し、表面層は肌と接触して、その吸水性により腋下の汗を速やかに吸い取る。ただし、ここでいう吸水性とは保水性と同義ではなく、汗等の水分を吸い取る能力はあるが、これを保水するまでの能力はなく、吸い取った水分を反対側に透水あるいは通水する機能を意味する。このような機能を有する表面層と隣接して設けられる中間層は、前記表面層よりも浸透性が高いため、表面層で吸い取った汗を速やかに吸い上げ、しかも、その保水性により保持する。ここで中間層は、上述のように表面層よりも相対的に水の浸透性が高く設定されるため、表面層よりも中間層による吸水能力が高まるから、両層を隣接させた場合、汗の吸水方向は表面層から中間層に向かう方向にほぼ定められる。つまり、表面層を通じて吸い取られた汗は表面層に逆戻りすることなく、中間層に閉じこめられた状態となる。なお、裏面層は従来と同じく、その下面に設けた粘着テープ等からなる装着部によって本パッドを衣類の腋部に装着するものであり、さらに非透水性あるいは難透水性を有するから、中間層で保持された汗が裏面層を透過等して衣類側に移動することがないことはもちろんである。ただし、裏面層に通気性を持たせれば、ムレをより軽減できて好ましい。
【0011】
上述のような吸水能力を発揮しうる構成としては、中間層の繊維目付量を表面層よりも高く設定するという手段を選択的に採用することができる。この手段によれば、仮に表面層と中間層が同じ素材からなる場合でも、繊維目付量の差によって吸水能力や保水能力に差を持たせることができる。
【0012】
ところで、本発明によれば、上述のように、汗の表面層への逆戻り防止作用によって、吸収した汗が皮膚表面の雑菌と接触する機会を大幅に低減できるから、汗の酸化分解による臭いの発生も軽減される。ただし、表面層に消臭成分を含ませるようにすれば、積極的な消臭効果を図ることができるため好ましい。
【0013】
さらに、表面層が冷感剤を含む場合は、上述した吸水機能や消臭機能に加えて、腋下に対して清涼感を付与することができて好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように本発明によれば、表面層を通じて吸い取った汗は、当該表面層よりも高い浸透性および保水性によって速やかに中間層に保持されると共に、この汗が表面層に逆戻りすることが防止されるため、サラサラ感の高い汗取りパッドとすることができる。また上述した逆戻り防止効果によって、一度吸収した汗は皮膚表面における雑菌との接触機会も少なくなり、臭いの発生も抑えられる。また本発明では、表面層に消臭成分を含ませることとしたので、発汗量が中間層の保水量を越えた場合など、仮に中間層で汗を保持しきれず表面層が汗で湿潤したとしても、また皮膚表面の雑菌が中間層に侵入したとしても、臭いの発生を積極的に抑えることができる。さらに本発明では、表面層に冷感剤を含ませることとしたので、その冷感機能によって腋下に清涼感を付与することができると共に、腋下に清涼感をもたらすことによって腋下の毛穴が収れんし、汗等の分泌を抑制することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る汗取りパッドを個別包装する工程を示した分解斜視図であって、パッド地10と剥離紙11と個包装材12とからなる。つまり、出荷段階では図2に示したように、パッド地10を剥離紙11と共に二つ折りにした状態で個別包装されるものである。
【0016】
パッド地10は表面層1・中間層2・裏面層3の三層構造からなる。表面層1は吸水性を有する一方、吸い取った水分(汗)を反対側(中間層2側)に適宜通水乃至は透水する機能を有する素材構成からなり、例えばコットンとポリエステル等のポリオレフィン系繊維との混合繊維などが該当する。中間層2は表面層1よりも浸透性が高く、且つ、保水性を有する素材構成からなり、例えばレーヨンや親水性のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維が該当する。裏面層3は非透水性あるいは難透水性(この二つの特性をここでは「疎水性」として総称する。)を有し、素材構成としては例えばポリエチレンシートからなる。なお、裏面層3は上述した疎水性を有しながらも通気性を有する素材から選択することが、汗の吸収後、腋下のムレを回避する点で好ましい。
【0017】
そして、各層を接合した上、適宜形状にカットすることでパッド地10が完成する。ここで表面層1と中間層2の接合方法としてはスパンレース方法がある。このスパンレース方法は、接着剤(バインダ)を用いずに、高圧噴射水流によって繊維を交絡させるもので、吸水性や保湿性を持たせたまま肌触りよく仕上がり、生産性も高い。他の好ましい接合方法としては、例えば、表面層1との下面と中間層2の上面、中間層2の下面と裏面層3の上面のそれぞれの全面同士をホットメルト接着剤4によって繊維接着する方法があり、当該方法によれば短時間接着が可能で、吸水機能や肌触りをパッド全体で均一とすることができる。ただし、各層の接合方法は、上記スパンレース方法やホットメルト接着に限らず、各層の周縁を熱圧着するなど、従来公知の接合方法を採用することができる。
【0018】
また、上記パッド地10において裏面層3の下面には粘着テープ5をホットメルト接着剤等により接合した装着部が設けられて汗取りパッドを構成する。そして、粘着テープ5を上記剥離紙11によって被覆して出荷状態とする一方、この剥離紙11を剥がすことによって粘着テープ5を介して本汗取りパッドを衣類の腋部に装着できるものである。なお、パッドの衣類に対する装着方法は、通常、パッドを二つ折りにして、その折目で衣類の腋部を挟持するように行われるが、ノースリーブに対しては二つ折りせずに、片面式のものも存在する。これはパッド地10のカット時に形状が選択されるもので、そのカット形状の選択如何で、本発明パッドを何れにも構成することができることはもちろんである。
【0019】
図3は、本発明パッドと従来パッドの積層構造を示したものである。同図から明らかなように、従来パッドが肌側から保水層・拡散層・バックラミ(裏面層)・粘着層の順の積層構造からなるのに対して、本発明パッドでは吸水層・保水層・バックラミ(裏面層)・粘着層(装着部)の順に積層されており、両者では肌側の上2層の構造が異なる。従って、従来パッドの場合、中間層である拡散層は表面層である保水層で保持できなかった汗を拡散させるに過ぎず、最も上層に位置する保水層によって殆どの汗が保持される結果になるため、湿った保水層が肌と接触してべたつき感を生ずる。これに対して本発明パッドは、最も上層の表面層として吸水性を有する吸水層を位置させ、これと隣接する中間層として前記吸水層よりも浸透性が高く保水性のある保水層を位置させているため、吸水層により肌から吸い取られた汗は保水層で閉じこめられ、吸水層に逆戻りすることが防止されるから、サラサラ感の高い汗取りパッドとなる。
【0020】
このような機能を発揮するパッド地10の具体的構成の一例として、本発明では表面層1として繊維目付量が5〜20g/m2程度のコットンを、また中間層2として繊維目付範囲が60〜90g/m2程度のレーヨンを使用することを想定してるが、両層の具体的構成はこれに限定されない。例えば、表面層1と中間層1が同一素材であっても、中間層2の繊維目付量を表面層1よりも高く設定することで本発明の目的を達成できる場合もある。また、中間層1は、その繊維目付量が表面層1より低い場合でも、吸水能力が表面層1に優っている場合には、本発明の目的は達成される。
【0021】
また、表面層1に公知の消臭剤を含ませることで、汗に対する積極的な消臭効果が得られる。この場合、原綿段階で消臭機能を付与した消臭コットンを表面層1の一素材として使用することが、事後的に表面層1の上面に消臭剤を定着させる場合に比して、生産性が高いため好ましいものである。
【0022】
さらに、表面層1に冷感剤を含ませることで、腋下に清涼感をもたらすと共に、この清涼感により腋下の毛穴を引き締める収れん反応が起こって制汗効果をもたらすなど、付加価値の高い汗取りパッドを提供することができる。なお、冷感剤は従来から化粧品や医薬品等に使用されている公知の組成剤を採用することができる。この点、冷感剤は冷感メカニズムの違いによって、(a)揮発性を有し気化潜熱によって冷感をもたらすものと、(b)水溶反応時に吸熱性を発揮して冷感をもたらすものと、(c)神経の冷覚受容体(温度受容体)に作用して冷感をもたらすものとに大別することができる。冷感剤(a)としてはジメチコンやアルコール類などが、冷感剤(b)としてはグリシンやタウリンなどが、また冷感剤(c)としてはα―メンソールやメンソール誘導体などが該当し、何れの冷感剤であっても肌に悪影響を与えないものであれば本発明パッドに採用することができる。ただし、冷感剤(a)・(b)は即効性が高いものの持続性に欠けるため、本発明においては高い冷感性と持続性を有する冷感剤(c)を採用することが最も好ましい。冷感剤(c)の場合、汗に含まれる水分や油分によって表面層1から肌に移行する。そして、皮膚に浸透しカルシウムイオンと結合して、当該結合によって皮膚の冷覚受容体が閉塞されることで、肌に冷感作用をもたらすものである。こうした観点から、冷感剤(c)としては、水素結合群に属し、炭化水素の骨格が小さいものであることが好ましく、肌への移行性および浸透性を考慮すれば、メントール成分を水溶性マイクロカプセルに収容したものを採用することが、より好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る汗取りパッドの分解斜視図
【図2】同パッドの個別包装状態を示した斜視図
【図3】従来パッドと本発明パッドの積層構造の違いを示した説明図
【符号の説明】
【0024】
1 表面層
2 中間層
3 裏面層
4 ホットメルト接着剤
5 粘着テープ
10 パッド地
11 剥離紙
12 個別包装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の腋部に装着して繊維製パッド地により腋下の汗を吸収する汗取りパッドにおいて、肌側に位置して吸水性を有する表面層と、該表面層よりも浸透性が高く保水性を有する中間層と、非透水性あるいは難透水性を有すると共に下面に衣類への装着部を設けた裏面層とからなることを特徴とした汗取りパッド。
【請求項2】
中間層は表面層よりも繊維目付量を高く設定した請求項1記載の汗取りパッド。
【請求項3】
表面層に消臭成分を含ませた請求項1または2記載の汗取りパッド。
【請求項4】
表面層に冷感剤を含ませた請求項1、2または3記載の汗取りパッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−119927(P2007−119927A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296545(P2005−296545)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】