説明

汚濁水拡散防止膜の係留装置

【目的】 浮力体及びカーテン基布が揺動してもその外力に逆らうことなく外力を避けるように構成することにより、連結接続部が損傷したり、破損するのを有効に防止し、また汚濁水拡散防止膜全体が損傷するのを有効に防止することが出来る汚濁水拡散防止膜の係留構造を提供することを目的とするものである。
【構成】 浮力体1の両端接続部1aは、固定金具6に所定長さの帯状連結部材10を介して連結されている。浮力体1の両端接続部1aに設けた固定金具6には、アンカー9を取り付けた係留索8(ロープ)が接続され、帯状連結部材10に外力が直接作用しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、汚濁水拡散防止膜の係留構造に係わり、更に詳しくは海洋,土木工事の際に発生する遊泥(シルト)・土砂・ヘドロを遮断し、海水等の汚染を防止する汚濁水拡散防止膜の係留構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、海上等で使用される汚濁水拡散防止膜の構造としては、例えば図7及び図8に示すように、所定の長さに形成された複数の発泡体等から成る浮力体1に所定の大きさのカーテン基布2を取付けて支持させ、浮力体1は、ナイロン製のターポリンと呼称されるフロートカバー3内に封入して、フロートカバー3の両端開口部はロープ4等で封止してベルト5等で接続すると共に、浮力体1の両端接続部は、固定金具6及び連結金具7等により一体的に連結固定し、更に連結金具7には、係留索8(ロープ)を介してアンカー9を接続しさせていた。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記のような従来の連結金具7は長さが短い上に一体的に連結固定され、更に連結金具7にアンカー9を取り付けた係留索8(ロープ)を連結させていたため、浮力体1及びカーテン基布2が揺動すると、その時の外力が二本の係留索8に均等に作用せず、連結金具7と係留索8との連結部に応力が集中して接続部が損傷したり破損すると云う問題があった。
【0004】また、この接続部分の損傷により汚濁水拡散防止膜全体をいためる原因となる問題があった。この発明は、係る従来の問題点に着目して案出されたもので、浮力体及びカーテン基布が揺動してもその外力に逆らうことなく外力を避けるように構成することにより、連結接続部が損傷したり、破損するのを有効に防止し、また汚濁水拡散防止膜全体が損傷するのを有効に防止することが出来る汚濁水拡散防止膜の係留構造を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するため、カーテン基布を支持する浮力体の両端接続部同士を、所定長さの帯状連結部材により連結し、前記浮力体の接続部近傍に、係留索を介してアンカーを接続したことを要旨とするものである。前記、帯状連結部材としては、浮力体の長さの15%〜25%に設定するのが好ましい。
【0006】
【発明の作用】この発明は、上記のように構成され、浮力体の両端接続部同士を所定長さの帯状連結部材により連結することにより、浮力体の接続部に外力が作用しても、その外力に逆らうことなく外力を逃がし、更に係留索は、帯状連結部材に直接接続せずに、浮力体の接続部近傍の固定金具に連結することで、帯状連結部材には外力による応力の集中が無くなり、連結部材が破損したり、損傷したりするのを防止出来るものである。
【0007】
【発明の実施例】以下、添附図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。なお、従来例と同一構成要素は、同一符号を付して説明は省略する。図1は、この発明を実施した汚濁水拡散防止膜の浮力体1の両端接続部1aの正面図であって、2は浮力体1に支持された所定の大きさのカーテン基布を示し、浮力体1の両端接続部1aは、固定金具6に所定長さの帯状連結部材10を介して連結されている。
【0008】前記、帯状連結部材10の長さとしては、浮力体1の長さの15%〜25%に設定するのが好ましく、この理由としては、以下の理論式及び図4〜図6から容易に考えられるものである。
1. 水平張力とスパン間距離の関係流れによる力と水平張力については (1) , (2) 式にて示す事ができる。結果を表1に示す。
【0009】


となると、表1で示す 0.5m/sec での流れによる力と比べるとF' = 78.4 kgf/m × 20m (スパン長) = 1568 kgfとなりF ≧ F'となる。よって外力をこの開き (4m) で充分軽減できる。
【0010】又、汚濁防止膜の設置海域を考えれば、 0.5m/sec の設計流速で maxと考えられる。
2. 重錘の大きさの考え方重錘の大きさは、設計条件によるが、工事を行う時の最大流速を決めればそれに対する重錘を下げればよい。
【0011】
例えば、 0.1m/sec の流速では工事を行い0.2m/sec 以上の流速では工事中止とすれば0.2m/sec では、スパン間が開いて外力を軽減させ、 0.1m/sec の時は、再びスパン間が閉じていれば良い。この場合は、水中重量を無視すれば表1の水平張力80.5kgf より重い重錘を下げれば良く、又、海上での工事においてスパン間が開けば、所定の流速より速くなった事がわかり目安となる。
【0012】図5は、流速 0.1m/sec 以内の条件に設定した場合の図であり、図6は流速 0.1m/sec 以内の条件に設定し、それ以外の外力が加わった場合の状態図であり、設置する場所におけるスパン間の広がりにより、外力(流速)が概略見当がつくのである。前記、浮力体1の両端接続部1aに設けた固定金具6には、アンカー9を取り付けた係留索8(ロープ)が接続され、帯状連結部材10に外力が直接作用しないように構成されている。
【0013】この発明の実施例では、上記のように浮力体1の両端接続部1a同士を所定長さの帯状連結部材10により連結することにより、浮力体1の接続部1aに、図2に示すように外力Fが作用しても、その外力Fに逆らうことなく図3に示すように帯状連結部材10を介して一方の浮力体1が逃げて外力Fを逃がすので、帯状連結部材10には外力Fによる応力の集中が無くなり、また係留索8は、帯状連結部材10に直接接続せずに、浮力体1の接続部近傍の固定金具6に連結することで、帯状連結部材10には外力による応力の集中が無くなり、連結部材が破損したり、損傷したりするのを防止出来るものである。
【0014】なお、浮力体1の両端接続部1aは、外力Fが作用した時のみ帯状連結部材10が外力Fに逆らうことなく移動して、外力Fを逃がすように構成すれば良く、外力Fが作用しない時まで、浮力体1間の間隔が開いていると、遊泥(シルト)・土砂・ヘドロがカーテン基布2の外部まで流出してしまうため、外力Fが作用しない時には、浮力体1の両端接続部1aが接近するように、帯状連結部材10の重量を大きくするような部材、例えば、チェーン等で構成するか、帯状連結部材10を弾性力を有する部材に構成することが好ましい。
【0015】
【発明の効果】この発明は上記のように、カーテン基布を支持する浮力体の両端接続部同士を、所定長さの帯状連結部材により連結し、前記浮力体の接続部近傍に、係留索を介してアンカーを接続したので、浮力体及びカーテン基布が揺動してもその外力に逆らうことなく外力を避けるように作用し、これにより、連結接続部が損傷したり、破損するのを有効に防止し、また汚濁水拡散防止膜全体が損傷するのを有効に防止することが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を実施した汚濁水拡散防止膜の浮力体の両端接続部の正面図である。
【図2】浮力体の接続部に外力が作用した状態を示す説明図である。
【図3】浮力体の接続部に外力が作用した時の作動状態を示す説明図である。
【図4】スパン間の開いた距離と、スパン長における流速の関係を示す説明図である。
【図5】流速 0.1m/sec 以内の条件に設定した場合の浮力体の説明図である。
【図6】流速 0.1m/sec 以内の条件に設定し、それ以外の外力が加わった場合の浮力体の状態説明図である。
【図7】従来の汚濁水拡散防止膜の接続部の斜視説明図である。
【図8】従来の汚濁水拡散防止膜の接続部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
1 浮力体 1a 浮力体の両端接続部
6 固定金具 8 係留索
9 アンカー 10 帯状連結部材
F 外力

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カーテン基布を支持する浮力体の両端接続部同士を、所定長さの帯状連結部材により連結し、前記浮力体の接続部近傍に、係留索を介してアンカーを接続したことを特徴とする汚濁水拡散防止膜の係留装置
【請求項2】 前記帯状連結部材を、浮力体の長さの15%〜25%に設定した請求項1に記載の汚濁水拡散防止膜の係留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−179635
【公開日】平成5年(1993)7月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−346444
【出願日】平成3年(1991)12月27日
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)