説明

油圧ショベル

【課題】油圧ショベルのフロントアタッチメントの重量バランスを改善し、コントロールバルブや配管の損傷を防止する。
【解決手段】車体2に対してブーム3を駆動するブーム用油圧シリンダ10と、ブーム3に対してアーム4を駆動するアーム用油圧シリンダ9と、アーム4に対してバケット5を駆動するバケット用油圧シリンダ8と、各油圧シリンダ10、9、8に給排される作動油の流量をそれぞれ調整するブーム用コントロールバルブ15、アーム用コントロールバルブ35、バケット用コントロールバルブ45とを備える油圧ショベル1であって、ブーム3を中空箱形に形成し、ブーム3の内部にバケット用油圧シリンダ8に給排される作動油の流量を調整するバケット用コントロールバルブ45を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーム、アーム、バケットからなるフロントアタッチメントを油圧シリンダによって駆動する油圧ショベルの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧ショベルとして、フロントアタッチメントに分散配置型のコントロールバルブを設け、各コントロールバルブによって各油圧シリンダに給排される作動油の流量をそれぞれ調整するものがある(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された油圧ショベルは、各コントロールバルブがフロントアタッチメントを駆動する各油圧シリンダの近傍にそれぞれ配置されている。
【0004】
特許文献2に開示された油圧ショベルは、各コントロールバルブがブームの外側にそれぞれ並んで配置されている。
【特許文献1】特開2004−293089号公報
【特許文献2】特開2005−68718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の油圧ショベルにあっては、コントロールバルブがフロントアタッチメントに設けられるため、コントロールバルブの重量によってフロントアタッチメントの重量バランスが悪くなるという問題点がある。
【0006】
また、コントロールバルブがフロントアタッチメントの外側に設けられるため、作業時にコントロールバルブやその配管等が障害物に当たって損傷する可能性がある。
【0007】
これに対処して本発明は、油圧ショベルのフロントアタッチメントの重量バランスを改善し、コントロールバルブや配管の損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車体に回動可能に連結されるブームと、このブームに回動可能に連結されるアームと、このアームに回動可能に連結されるバケットと、車体に対してブームを駆動するブーム用油圧シリンダと、ブームに対してアームを駆動するアーム用油圧シリンダと、アームに対してバケットを駆動するバケット用油圧シリンダと、各油圧シリンダに給排される作動油の流量をそれぞれ調整するブーム用コントロールバルブ、アーム用コントロールバルブ、バケット用コントロールバルブとを備える油圧ショベルであって、ブームを中空箱形に形成し、ブームの内部にバケット用油圧シリンダに給排される作動油の流量を調整するバケット用コントロールバルブを設けたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、バケット用コントロールバルブの重量がアームにかかることが避けられ、フロントアタッチメントの重量バランスを改善し、フロントアタッチメントの動作を安定させられるとともに、バケット用コントロールバルブとその配管等が障害物に当たって損傷することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示すように、油圧ショベル(建設機械)1は、走行する走行体6と、この走行体6の上部に旋回可能に設けられた車体(旋回体)2と、この車体2に対してブーム支持軸7を介して回動可能に連結されるブーム3と、このブーム3を駆動する2本の油圧シリンダ10と、ブーム3の先端にアーム支持軸38を介して回動可能に連結されるアーム4と、このアーム4を駆動する1本の油圧シリンダ9と、アーム4の先端にバケット支持軸51を介して回動可能に連結されるバケット5と、このバケット5を駆動する1本の油圧シリンダ8とを備える。
【0012】
車体2には油圧源ユニット21が搭載され、この油圧源ユニット21から導かれる作動油圧によって各油圧シリンダ8〜10が伸縮作動することによってバケット5、アーム4、ブーム3をそれぞれ動かして地面の掘削や土砂の搬送作業等を行う。
【0013】
ブーム3とアーム4とバケット5によって多間接型のフロントアタッチメントを構成している。なお、アーム4の先端に連結されるバケット5は地面の掘削や土砂の搬送作業を行うものに限らず、他の作業を行うもの(アタッチメント)でも良い。
【0014】
車体2には油圧源ユニット21が搭載され、この油圧源ユニット21から導かれる作動油圧によって各油圧シリンダ8〜10が伸縮作動することによってバケット5、アーム4、ブーム3をそれぞれ動かして地面の掘削や土砂の搬送作業を行う。
【0015】
対で設けられるブーム用油圧シリンダ(アクチュエータ)10は、ブーム3を左右から挟むように配置される。各ブーム用油圧シリンダ10は図示しないピストンに受ける油圧によってシリンダチューブ11に対してピストンロッド12が移動して伸縮作動する。各シリンダチューブ11の基端部が支持軸13を介して車体2に回動可能に連結され、各ピストンロッド12の先端部が支持軸14を介してブーム3に回動可能に連結される。2本のブーム用油圧シリンダ10はコントロールバルブ15を介して作動油が給排され、この作動油圧によって互いに同期して伸縮作動し、ブーム3を駆動する
アーム4を駆動するアーム用油圧シリンダ(アクチュエータ)9は、ブーム3の背部に配置される。アーム用油圧シリンダ9は図示しないピストンに受ける油圧によってシリンダチューブ31に対してピストンロッド32が移動して伸縮作動する。シリンダチューブ31の基端部が支持軸33を介してブーム3に回動可能に連結され、ピストンロッド32の先端部が支持軸34を介してアーム4に回動可能に連結される。アーム用油圧シリンダ9はコントロールバルブ35を介して作動油が給排され、この作動油圧によって伸縮作動し、アーム4を駆動する。
【0016】
バケット5を駆動するバケット用油圧シリンダ(アクチュエータ)8は、アーム4の背部に配置される。シリンダチューブ41の基端部が支持軸43を介してアーム4に回動可能に連結され、ピストンロッド42の先端部が支持軸44を介してバケット5に回動可能に連結される。
【0017】
図2に示すように、バケット用油圧シリンダ8のシリンダチューブ41内にはピストンロッド42が進退自在に挿入され、このピストンロッド42の基端部にはピストン46が連結される。このピストン46はシリンダチューブ41の内周に沿って摺動自在に介装され、シリンダチューブ41内に反ロッド側油室47とロッド側油室48とを画成する。この反ロッド側油室47とロッド側油室48にはコントロールバルブ45を介して作動油が給排され、バケット用油圧シリンダ8はこの作動油圧によって伸縮作動し、バケット5を駆動する。
【0018】
図2はバケット用油圧シリンダ8に設けられる油圧回路を示している。コントロールバルブ45は4つの電磁弁V1〜V4がブリッジ回路に介装され、コントローラ30からの出力によって油圧シリンダ8を伸縮作動させるように開閉作動する。
【0019】
油圧ポンプ22の吐出側には、油圧シリンダ8に供給される作動油が流通する供給通路25が接続され、供給通路25は2方向に枝分かれした分岐通路26、27に接続され、分岐通路26、27は再度合流し油圧シリンダ8から排出される作動油が流通する戻し通路23に接続され、戻し通路23は油圧ポンプ22の吸込側に接続される。
【0020】
分岐通路26、27には、油圧シリンダ8の反ロッド側油室47に供給される作動油の流量を制御するメータイン用電磁弁V1と、ロッド側油室48に供給される作動油の流量を制御するメータイン用電磁弁V3とがそれぞれ並列になるように介装される。
【0021】
また、分岐通路26、27には、油圧シリンダ8の反ロッド側油室47から排出される作動油の流量を制御するメータアウト用電磁弁V2と、ロッド側油室48から排出される作動油の流量を制御するメータアウト用電磁弁V4とがそれぞれ並列になるように介装される。
【0022】
このように、分岐通路26には、メータイン用電磁弁V1とメータアウト用電磁弁V2とが直列に介装され、分岐通路27には、メータイン用電磁弁V3とメータアウト用電磁弁V4とが直列に介装される。
【0023】
分岐通路26におけるメータイン用電磁弁V1とメータアウト用電磁弁V2との間は、第1給排通路28を介して反ロッド側油室47に連通する。分岐通路27におけるメータイン用電磁弁V3とメータアウト用電磁弁V4との間は、第2給排通路29を介してロッド側油室48に連通する。
【0024】
メータイン用電磁弁V1、メータアウト用電磁弁V2、メータイン用電磁弁V3、メータアウト用電磁弁V4は、電磁式の制御弁(流量調整弁)であり、各電磁弁V1〜V4は、コントローラ30から出力される電流によって駆動され、この電流に応じて開口面積が調整され、各電磁弁V1〜V4を通過する作動油の流量が個別に制御される。コントローラ30は第1給排通路28と第2給排通路29の圧力をそれぞれ検出する圧力センサ18、19の信号を入力される。
【0025】
ブーム用コントロールバルブ15、アーム用コントロールバルブ35も上記のバケット用コントロールバルブ45と同様の構成を持ち、コントローラ30からの出力電流によって制御されるため、各コントロールバルブ15、35、45をそれぞれ分散して配置することが可能となる。
【0026】
従来、分散配置型の各コントロールバルブを各油圧シリンダの近傍にそれぞれ設け、これらに接続する油圧配管の長さを短くするようにしていた(特許文献1参照)。
【0027】
しかし、バケット用コントロールバルブをバケット用油圧シリンダの近傍に設けると、バケット用コントロールバルブの重量によってブーム、アーム、バケットからなるフロントアタッチメントの重量バランスが悪くなるという問題点がある。また、アームと共に動くため、バケット用コントロールバルブやその配管等が障害物に当たって損傷する可能性がある。
【0028】
これに対処して本発明は、分散配置型のバケット用コントロールバルブ45をブーム3の内部に設け、フロントアタッチメントの重量バランスを改善し、バケット用コントロールバルブ45や配管の損傷を防止することを要旨とする。
【0029】
本実施の形態では、分散配置型の各コントロールバルブ15、35、45がそれぞれブーム3の内部に設けられる。
【0030】
ブーム3は鋼板によって中空箱形に形成され、その内側に各コントロールバルブ15、35、45を収容する空間が画成され、図示しない支持部材を介して各コントロールバルブ15、35、45が支持される。
【0031】
各コントロールバルブ15、35、45はブーム3を車体2に回動可能に支持するブーム支持軸7の上方に設けられる。すなわち、コントロールバルブ15、35、45はブーム3の回動位置によらずブーム支持軸7より高い位置にあり、かつコントロールバルブ15、35、45がブーム3の回動位置によってブーム支持軸7の垂直上方に位置する構成とする。
【0032】
各コントロールバルブ15、35、45はブーム3の後部に収容される。なお、ブーム3において車体2に対するブーム支持軸7からブーム3に対するアーム支持軸38へと延びる方向をブーム3の前方とし、その反対方向をブーム3の後方とする。
【0033】
各コントロールバルブ15、35、45はブーム3の前後方向に並んで配置され、バケット用コントロールバルブ45はブーム用コントロールバルブ15とアーム用コントロールバルブ35の間に配置され、ブーム用コントロールバルブ15がバケット用コントロールバルブ45の後方に配置され、アーム用コントロールバルブ35がバケット用コントロールバルブ45の前方に配置される。
【0034】
各コントロールバルブ15、35、45から各油圧シリンダ10、9、8に延びる各給排通路16、17、36、37、28、29の一部はブーム3の内部に収容される。
【0035】
以上のように構成されて、各コントロールバルブ15、35、45から各油圧シリンダ10、9、8に対する作動油の給排を切換えて各油圧シリンダ10、9、8を伸縮作動させ、ブーム3、アーム4、バケット5によって構成される多間接型のフロントアタッチメントを駆動し、アーム4の先端に連結されるバケット5を介して地面の掘削や土砂の搬送作業を行う。
【0036】
本実施の形態では、車体2に回動可能に連結されるブーム3と、このブーム3に回動可能に連結されるアーム4と、このアーム4に回動可能に連結されるバケット5と、車体2に対してブーム3を駆動するブーム用油圧シリンダ10と、ブーム3に対してアーム4を駆動するアーム用油圧シリンダ9と、アーム4に対してバケット5を駆動するバケット用油圧シリンダ8と、各油圧シリンダ10、9、8に給排される作動油の流量をそれぞれ調整するブーム用コントロールバルブ15、アーム用コントロールバルブ35、バケット用コントロールバルブ45とを備える油圧ショベル1であって、ブーム3を中空箱形に形成し、ブーム3の内部にバケット用油圧シリンダ8に給排される作動油の流量を調整するバケット用コントロールバルブ45を設けたため、バケット用コントロールバルブの重量がアーム4にかかることが避けられ、フロントアタッチメントの重量バランスが改善し、フロントアタッチメントの動作を安定させられるとともに、バケット用コントロールバルブ45とその配管等が障害物に当たって損傷することを防止できる。
【0037】
本実施の形態では、車体2に対してブーム3を回動可能に支持するブーム支持軸7を備え、バケット用コントロールバルブ45をブーム支持軸7の上方に設けたため、フロントアタッチメントの重量バランスが改善し、フロントアタッチメントの動作を安定させられる。
【0038】
本実施の形態では、ブーム3の内部にバケット用コントロールバルブ45と並んでブーム用コントロールバルブ15とアーム用コントロールバルブ35とを設けたため、フロントアタッチメントの重量バランスが改善し、フロントアタッチメントの動作を安定させられるとともに、各コントロールバルブ45、15、35とその配管等が損傷することを防止できる。
【0039】
本実施の形態では、バケット用油圧シリンダ8はピストン46によって仕切られる反ロッド側油室47とロッド側油室48とを備え、バケット用コントロールバルブ45は反ロッド側油室47に供給される作動油の流量を制御するメータイン用電磁弁V1と、反ロッド側油室47から排出される作動油の流量を制御するメータアウト用電磁弁V2と、ロッド側油室48に供給される作動油の流量を制御するメータイン用電磁弁V3と、ロッド側油室48から排出される作動油の流量を制御するメータアウト用電磁弁V4と、各電磁弁V1〜V4を通過する作動油の流量を個別に制御するコントローラ30とを備えたため、バケット用コントロールバルブ45の配置に対する制約が少なく、バケット用コントロールバルブ45をブーム3の内部に配置することが可能となる。
【0040】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態を示す油圧ショベルの側面図。
【図2】同じく油圧回路図。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル
2 車体
3 ブーム
4 アーム
5 バケット
7 ブーム支持軸
8 バケット用油圧シリンダ
9 アーム用油圧シリンダ
10 ブーム用油圧シリンダ
15 ブーム用コントロールバルブ
30 コントローラ
35 アーム用コントロールバルブ
45 バケット用コントロールバルブ
47 反ロッド側油室
48 ロッド側油室
V1 メーロッド側油室タイン用電磁弁
V2 メータアウト用電磁弁
V3 メータイン用電磁弁
V4 メータアウト用電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に回動可能に連結されるブームと、このブームに回動可能に連結されるアームと、このアームに回動可能に連結されるバケットと、前記車体に対して前記ブームを駆動するブーム用油圧シリンダと、前記ブームに対して前記アームを駆動するアーム用油圧シリンダと、前記アームに対して前記バケットを駆動するバケット用油圧シリンダと、前記各油圧シリンダに給排される作動油の流量をそれぞれ調整するブーム用コントロールバルブ、アーム用コントロールバルブ、バケット用コントロールバルブとを備える油圧ショベルであって、前記ブームを中空箱形に形成し、前記ブームの内部に前記バケット用油圧シリンダに給排される作動油の流量を調整する前記バケット用コントロールバルブを設けたことを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
前記車体に対して前記ブームを回動可能に支持するブーム支持軸を備え、前記バケット用コントロールバルブをこのブーム支持軸の上方に設けたことを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベル。
【請求項3】
前記ブームの内部に前記バケット用コントロールバルブと並んで前記ブーム用コントロールバルブと前記アーム用コントロールバルブとを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の油圧ショベル。
【請求項4】
前記バケット用油圧シリンダはピストンによって仕切られる反ロッド側油室とロッド側油室とを備え、前記バケット用コントロールバルブはこの反ロッド側油室に供給される作動油の流量を制御するメータイン用電磁弁と、前記反ロッド側油室から排出される作動油の流量を制御するメータアウト用電磁弁と、前記ロッド側油室に供給される作動油の流量を制御するメータイン用電磁弁と、前記ロッド側油室から排出される作動油の流量を制御するメータアウト用電磁弁と、前記各メータイン用電磁弁と前記各メータアウト用電磁弁を通過する作動油の流量を個別に制御するコントローラとを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の油圧ショベル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−266909(P2008−266909A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108204(P2007−108204)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】