説明

油圧ポンプ装置

【課題】 駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部、および駆動歯車と第2の従動歯車との噛合部を、ギヤハウジング内に貯溜された潤滑油によって適正に潤滑する。
【解決手段】 ギヤハウジング21の上面25に駆動歯車対向内面25Aと、第1の従動歯車対向内面25Bと、第2の従動歯車対向内面25Cとを設け、駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間に形成される隙間28を、第1の噛合部対向内面25Dと駆動歯車11との間に形成される隙間29よりも小さく設定する。これにより、駆動歯車11の回転方向に流れる潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面25Dに沿って隙間29から隙間28を通過するときに、ベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって、駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lを導出し、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に搭載され、エンジンによって駆動されることにより作動用の圧油を吐出する油圧ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械は、自走可能な車体と、この車体に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、建設機械の車体にはエンジン、油圧ポンプ装置等が搭載され、エンジンによって油圧ポンプ装置を駆動することにより、車体や作業装置に設けられた各種の油圧アクチュエータに作動用の圧油が供給される構成となっている。
【0003】
ここで、建設機械に搭載される油圧ポンプ装置は、通常、ポンプハウジングと、該ポンプハウジング内に収容された駆動ポンプおよび従動ポンプと、駆動ポンプに外部からの動力を伝える主回転軸と、主回転軸の回転を従動ポンプに伝える従動回転軸と、ポンプハウジングに取付けられ主回転軸が貫通したギヤハウジングと、主回転軸に取付けられてギヤハウジング内に収容された駆動歯車と、従動回転軸に取付けられてギヤハウジング内に収容され駆動歯車に噛合する従動歯車とにより大略構成されている。
【0004】
そして、従来技術による油圧ポンプ装置は、ポンプハウジング内の駆動ポンプと従動ポンプから生じたドレン油をギヤハウジング内に供給し、このドレン油によって駆動歯車と従動歯車とを潤滑した後、ギヤハウジングに設けたドレンポートを通じてドレン油をタンクに戻す構成となっている。
【0005】
また、従来技術による油圧ポンプ装置は、ギヤハウジングを形成する隔壁と前壁とに、駆動歯車と従動歯車との噛合部における回転方向上流側の領域と回転方向下流側の領域とを連通する連通空間を設けることにより、ドレン油をギヤハウジング内で円滑に循環させる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−220566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術による油圧ポンプ装置は、ポンプハウジング内で生じたドレン油をギヤハウジング内に供給した後、このドレン油をタンクに戻す構成であるため、ギヤハウジングとタンクとの間にドレン油が流れる戻り配管を設ける必要がある。
【0008】
また、ドレン油をギヤハウジング内で円滑に循環させるため、ギヤハウジングを形成する隔壁と前壁とに連通空間を設ける必要があり、この分、ギヤハウジングの構造が複雑化して製造コストの上昇を招くという問題がある。
【0009】
一方、他の従来技術による油圧ポンプ装置として、ギヤハウジング内に貯溜した潤滑油によって駆動歯車と従動歯車とを潤滑する油圧ポンプ装置が知られており、当該他の従来技術による油圧ポンプ装置は、駆動歯車と従動歯車とが回転するときに潤滑油をかき上げることにより、駆動歯車と従動歯車との噛合部を潤滑する構成となっている。
【0010】
しかし、他の従来技術による油圧ポンプ装置において、例えば駆動ポンプを挟んで両側に第1,第2の従動ポンプを配置した場合には、第1,第2の従動ポンプの従動回転軸にそれぞれ設けられた第1,第2の駆動歯車が、駆動ポンプの主回転軸に設けられた駆動歯車にそれぞれ噛合するようになる。このため、駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部、および駆動歯車と第2の従動歯車との噛合部に対し、それぞれ充分な潤滑油を供給するのが難しいという問題がある。
【0011】
特に、油圧ショベルが傾斜地や山岳地等において稼働する場合には、ギヤハウジング内の潤滑油が、第1,第2の従動歯車のうち一方の従動歯車側に偏ることがあり、この場合には、他方の従動歯車が潤滑油を充分にかき上げることができず、他方の従動歯車と駆動歯車との噛合部が潤滑不良を招くという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部、および駆動歯車と第2の従動歯車との噛合部を、ギヤハウジング内に貯溜された潤滑油によって適正に潤滑することができるようにした油圧ポンプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため本発明は、ポンプハウジングと、該ポンプハウジング内に収容された駆動ポンプおよび該駆動ポンプを挟んで両側に配置された第1,第2の従動ポンプと、前記駆動ポンプに外部からの動力を伝える主回転軸と、前記主回転軸と同一方向に延び前記主回転軸の回転を前記第1,第2の従動ポンプに伝える第1,第2の従動回転軸と、前記ポンプハウジングに取付けられ前記主回転軸が貫通したギヤハウジングと、前記ギヤハウジング内に位置して前記主回転軸に取付けられた駆動歯車と、前記ギヤハウジング内に位置して前記第1,第2の従動回転軸に取付けられ前記駆動歯車を挟んで当該駆動歯車にそれぞれ噛合する第1,第2の従動歯車とを備え、前記ギヤハウジング内に貯溜された潤滑油によって前記駆動歯車と前記第1,第2の従動歯車に対する潤滑を行う油圧ポンプ装置に適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記ギヤハウジングは、前記潤滑油を受ける底面と、該底面と上,下方向で対面する上面と、前記底面と上面との間を連結する左,右の側面とにより構成し、前記ギヤハウジングの上面のうち前記駆動歯車に対向する駆動歯車対向内面と前記駆動歯車との間に形成される隙間を、前記ギヤハウジングの上面のうち前記駆動歯車と前記第1の従動歯車との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面と前記駆動歯車との間に形成される隙間、および前記ギヤハウジングの上面のうち前記駆動歯車と前記第2の従動歯車との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面と前記駆動歯車との間に形成される隙間よりも小さく設定したことにある。
【0015】
請求項2の発明は、前記第1,第2の噛合部対向内面のうち少なくとも一方の噛合部対向内面は、前記駆動歯車対向内面に向けて前記駆動歯車との間の隙間が小さくなるように傾斜する傾斜面として形成したことにある。
【0016】
請求項3の発明は、前記第1の噛合部対向内面と前記第2の噛合部対向内面とは、前記駆動歯車の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線を挟んで非対称形状に形成したことにある。
【0017】
請求項4の発明は、前記第1の噛合部対向内面と前記第2の噛合部対向内面とは、前記駆動歯車の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線を挟んで対称形状に形成したことにある。
【0018】
請求項5の発明は、前記ギヤハウジングには前記第1,第2の従動ポンプのうち一方の従動ポンプに隣接して第3の従動回転軸を有する第3の従動ポンプを取付け、前記ギヤハウジング内には前記第3の従動回転軸に取付けられ前記第1,第2の従動歯車のうち一方の従動歯車に噛合する第3の従動歯車を収容する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、ギヤハウジングの底面側に貯溜された潤滑油は、駆動歯車の回転によってギヤハウジングの上面側にかき上げられた後、ギヤハウジングの上面のうち駆動歯車対向内面と駆動歯車との間に形成される隙間を通じて第1の従動歯車側、または第2の従動歯車側へと流れる。この場合、駆動歯車対向内面と駆動歯車との間の隙間は、第1の噛合部対向面と駆動歯車との間の隙間、および第2の噛合部対向面と駆動歯車との間の隙間よりも小さいため、潤滑油が駆動歯車対向内面と駆動歯車との間の隙間を通過するときにベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって駆動歯車の回転方向に多量の潤滑油を導くことができる。
【0020】
これにより、駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部、駆動歯車と第2の従動歯車との噛合部に対して充分な潤滑油を供給することができ、ギヤハウジング内の潤滑油によって各噛合部を常時適正に潤滑することができる。この結果、駆動歯車および第1,第2の従動歯車の歯面の発熱を抑え、潤滑油の温度上昇による劣化を防ぐことができ、油圧ポンプ装置の寿命を延ばすことができる。
【0021】
しかも、ギヤハウジング内に貯溜された潤滑油を、ベンチュリ効果を利用して効率良く駆動歯車および第1,第2の従動歯車に供給することができるので、ギヤハウジング内に大量の潤滑油を貯溜する必要がない。これにより、各歯車が大量の潤滑油に浸かった状態で回転することによる攪拌抵抗を抑えることができ、油圧ポンプ装置を円滑に作動させることができる。また、例えば傾斜地等において、ギヤハウジング内の潤滑油が第1,第2の従動歯車のうち一方の従動歯車側に偏った場合でも、駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部、駆動歯車と第2の従動歯車との噛合部に対して充分な潤滑油を供給することができ、油圧ポンプ装置の信頼性を高めることができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、駆動歯車の回転によってギヤハウジングの上面側にかき上げられた潤滑油は、第1,第2の噛合部対向内面のうち少なくとも一方の噛合部対向内面に付着した後、この傾斜面となった噛合部対向内面に沿って駆動歯車対向内面へと流れる。これにより、潤滑油が駆動歯車対向内面と駆動歯車との間の隙間に集められ、当該隙間を潤滑油が通過するときに確実にベンチュリ効果を得ることができるので、駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部、駆動歯車と第2の従動歯車との噛合部に対して充分な潤滑油を供給することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、ギヤハウジングの上面に設けられた第1の噛合部対向内面と第2の噛合部対向内面とを非対称形状とすることにより、ギヤハウジングを部分的に肉そぎすることができ、ギヤハウジングの軽量化を図ることができる。
【0024】
請求項4の発明によれば、ギヤハウジングの上面に設けられた第1の噛合部対向内面と第2の噛合部対向内面とを対称形状とすることにより、駆動歯車の回転方向に関わらず、潤滑油が駆動歯車対向内面と駆動歯車との間の隙間を通過するときにベンチュリ効果を得ることができる。従って、駆動歯車の回転方向を時計方向、または反時計方向のいずれの方向に設定した場合でも、駆動歯車の回転方向に多量の潤滑油を導くことができ、第1,第2の従動歯車と駆動歯車との噛合部に対して充分な潤滑油を供給することができる。
【0025】
請求項5の発明によれば、第3の従動ポンプに設けられた第3の従動歯車は、ギヤハウジング内で第1,第2の従動歯車のうち一方の従動歯車に噛合する。この場合、第1,第2の従動歯車には、駆動歯車との噛合部において充分な潤滑油が供給されるので、これら第1,第2の従動歯車のうち一方の従動歯車と第3の従動歯車との噛合部も適正に潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態による油圧ポンプ装置を示す斜視図である。
【図2】油圧ポンプ装置を上方からみた一部破断の平面図である。
【図3】第1の実施の形態によるギヤハウジングを、駆動歯車、第1,第2,第3の従動歯車等と共に示す図2中の矢示III−III方向からみた拡大断面図である。
【図4】第2の実施の形態によるギヤハウジングを、駆動歯車、第1,第2,第3の従動歯車等と共に示す図3と同様な拡大断面図である。
【図5】第3の実施の形態によるギヤハウジングを、駆動歯車、第1,第2,第3の従動歯車等と共に示す拡大断面図である。
【図6】駆動歯車を逆方向に回転させたときの潤滑油の流れを示す図5と同様な拡大断面図である。
【図7】第4の実施の形態によるギヤハウジングを、駆動歯車、第1,第2,第3の従動歯車等と共に示す拡大断面図である。
【図8】第5の実施の形態によるギヤハウジングを、駆動歯車、第1,第2,第3の従動歯車等と共に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る油圧ポンプ装置の実施の形態を、図1ないし図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0028】
まず、図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態による油圧ポンプ装置を示し、該油圧ポンプ装置1は、例えば油圧ショベル等(図示せず)に搭載され、エンジンによって駆動されることにより、各種の油圧アクチュエータ(いずれも図示せず)に向けて作動用の圧油を吐出するものである。
【0029】
そして、油圧ポンプ装置1は、後述のポンプハウジング2、駆動ポンプ3、主回転軸4、第1,第2,第3の従動ポンプ5,7,9、第1,第2,第3の従動回転軸6,8,10、駆動歯車11、第1,第2,第3の従動歯車12,13,14、ギヤハウジング21等により構成されている。
【0030】
2は油圧ポンプ装置1のポンプハウジングで、該ポンプハウジング2は、後述のギヤハウジング21と共に油圧ポンプ装置1の外殻をなすものである。そして、ポンプハウジング2内には後述の駆動ポンプ3、第1の従動ポンプ5、第2の従動ポンプ7が収容される構成となっている。
【0031】
ここで、ポンプハウジング2は単一のハウジング(ケース)として形成され、この単一のポンプハウジング2内に駆動ポンプ3、第1の従動ポンプ5、第2の従動ポンプ7を収容することにより、油圧ポンプ装置1は、3つのポンプからなるポンプ組立体として構成されている。これにより、例えば1つの駆動ポンプと2つの従動ポンプとがそれぞれ独立したポンプハウジングを備える場合に比較して、油圧ポンプ装置1は、単一のポンプハウジング2内に3つのポンプを収容することにより、必要とする流量を確保しながら装置全体としてコンパクトに構成されるものである。
【0032】
3はポンプハウジング2内に収容された駆動ポンプで、該駆動ポンプ3は、例えば可変容型の斜板式油圧ポンプからなり、ポンプハウジング2の左,右方向の中央部に配置されている。また、駆動ポンプ3を挟んで左,右方向の両側には、後述する第1,第2の従動ポンプ5,7が並列に配置される構成となっている。そして、駆動ポンプ3は後述の主回転軸4を有し、この主回転軸4の回転に応じて作動用の圧油を吐出するものである。
【0033】
4は駆動ポンプ3に設けられた主回転軸で、該主回転軸4の先端側は、ポンプハウジング2に取付けられた後述のギヤハウジング21を貫通して外部に突出している。そして、主回転軸4の先端側は、例えばエンジン等の外部の駆動源(図示せず)に接続され、この駆動源からの動力によって主回転軸4が回転することにより、駆動ポンプ3を駆動することができる構成となっている。
【0034】
ここで、ギヤハウジング21の外部に突出した主回転軸4の先端側には、駆動源に接続される雄スプライン部(軸スプライン部)4Aが形成されている。また、ギヤハウジング21内に位置する主回転軸4の長さ方向の途中部位には、後述の駆動歯車11を結合するための雄スプライン部4Bが形成されている。
【0035】
5は駆動ポンプ3の右側に隣接してポンプハウジング2内に設けられた第1の従動ポンプで、該第1の従動ポンプ5は、例えば可変容型の斜板式油圧ポンプからなり、後述する第2の従動ポンプ7との間で駆動ポンプ3を挟む位置に配置されている。そして、第1の従動ポンプ5は、後述する第1の従動回転軸6に主回転軸4の回転が伝達されることにより、この第1の従動回転軸6の回転に応じて作動用の圧油を吐出するものである。
【0036】
6は第1の従動ポンプ5に設けられた第1の従動回転軸で、該第1の従動回転軸6は、主回転軸4と平行した状態で該主回転軸4と同一方向に延びている。そして、第1の従動回転軸6の先端側は、ギヤハウジング21内に突出し、この第1の従動回転軸6の先端側には、後述する第1の従動歯車12を結合するための雄スプライン部6Aが形成されている。
【0037】
7は駆動ポンプ3の左側に隣接してポンプハウジング2内に設けられた第2の従動ポンプで、該第2の従動ポンプ7も、例えば可変容型の斜板式油圧ポンプからなり、第1の従動ポンプ5との間で駆動ポンプ3を挟む位置に配置されている。そして、第2の従動ポンプ7は、後述する第2の従動回転軸8に主回転軸4の回転が伝達されることにより、この第2の従動回転軸8の回転に応じて作動用の圧油を吐出するものである。
【0038】
8は第2の従動ポンプ7に設けられた第2の従動回転軸で、該第2の従動回転軸8は、主回転軸4と平行した状態で該主回転軸4と同一方向に延びている。そして、第2の従動回転軸8の先端側は、ギヤハウジング21内に突出し、この第2の従動回転軸8の先端側には、後述する第2の従動歯車13を結合するための雄スプライン部8Aが形成されている。
【0039】
9は第2の従動ポンプ7の左側に隣接してギヤハウジング21に取付けられた第3の従動ポンプで、該第3の従動ポンプ9は、例えば第1,第2の従動ポンプ5,7に比較して容量が小さい油圧ポンプからなっている。そして、第3の従動ポンプ9は、第3の従動回転軸10を有し、この第3の従動回転軸の回転に応じてパイロット圧油を吐出するものである。また、第3の従動回転軸10の先端側には、後述する第3の従動歯車14を結合するための雄スプライン部10Aが形成されている。
【0040】
11は主回転軸4に取付けられた駆動歯車で、該駆動歯車11は、主回転軸4の雄スプライン部4Bにスプライン結合された状態で、ギヤハウジング21内に収容されている。そして、駆動歯車11は、ギヤハウジング21内で後述する第1,第2の従動歯車12,13に噛合し、主回転軸4と一体に回転することにより、この主回転軸4の回転を第1,第2の従動歯車12,13に伝達するものである。
【0041】
12は第1の従動回転軸6に取付けられた第1の従動歯車で、該第1の従動歯車12は、第1の従動回転軸6の雄スプライン部6Aにスプライン結合された状態で、ギヤハウジング21内に収容されている。ここで、第1の従動歯車12は、駆動歯車11の歯先径よりも僅かに小さい歯先径を有する歯車からなり、駆動歯車11に噛合している。そして、駆動歯車11の回転が、第1の従動歯車12を介して第1の従動回転軸6に伝達されることにより、第1の従動ポンプ5が、駆動ポンプ3と一緒に駆動される構成となっている。
【0042】
13は第2の従動回転軸8に取付けられた第2の従動歯車で、該第2の従動歯車13は、第2の従動回転軸8の雄スプライン部8Aにスプライン結合された状態で、ギヤハウジング21内に収容されている。ここで、第2の従動歯車13は、第1の従動歯車12の歯先径と等しい歯先径を有する歯車からなり、第1の従動歯車12とは反対側で駆動歯車11に噛合している。そして、駆動歯車11の回転が、第2の従動歯車13を介して第2の従動回転軸8に伝達されることにより、第2の従動ポンプ7が、駆動ポンプ3と一緒に駆動される構成となっている。
【0043】
14は第3の従動回転軸10に取付けられた第3の従動歯車で、該第3の従動歯車14は、第3の従動回転軸10の雄スプライン部10Aにスプライン結合された状態で、ギヤハウジング21内に収容されている。ここで、第3の従動歯車14は、第2の従動歯車13の歯先径よりも僅かに小さい歯先径を有する歯車からなり、第2の従動歯車13に噛合している。そして、駆動歯車11の回転が、第2の従動歯車13および第3の従動歯車14を介して第3の従動回転軸10に伝達されることにより、第3の従動ポンプ9が、駆動ポンプ3と一緒に駆動される構成となっている。
【0044】
そして、本実施の形態においては、例えば駆動歯車11は図3中の矢示A方向(反時計方向)に回転し、この駆動歯車11の回転によって、第1の従動歯車12が矢示A1方向(時計方向)に回転し、第2の従動歯車13が矢示A2方向(時計方向)に回転し、第3の従動歯車14が矢示A3方向(反時計方向)に回転する構成となっている。
【0045】
ここで、駆動ポンプ3と第1,第2の従動ポンプ5,7とを単一のポンプハウジング2内に設けた理由は、既存のピストンやシリンダブロック等の油圧ポンプの構成部品を用いて必要とする流量を確保しながら、油圧ポンプ全体としてコンパクトな構成を実現するためである。このように、駆動ポンプ3と2つの従動ポンプ5,7とを単一のポンプハウジング2内に設けるため、図3に示すように、後述のギヤハウジング21内で駆動歯車11と従動歯車12,13を噛合させ、駆動ポンプ3の回転を2つの従動ポンプ5,7に伝達する構成が必要となる。
【0046】
次に、21は第1の実施の形態によるギヤハウジングを示している。このギヤハウジング21は、全体として左,右方向に延びる1個の箱状のケースとして形成され、駆動歯車11および第1,第2,第3の従動歯車12,13,14を収容するものである。そして、ギヤハウジング21の前,後方向(主回転軸4の軸方向)の後側は、複数のボルト22を用いてポンプハウジング2に取付けられている。
【0047】
この場合、ポンプハウジング2内には、1つの駆動ポンプ3と2つの従動ポンプ5,7とが収容されているので、ギヤハウジング21に1個のポンプハウジング2を取付けるだけで、単一のギヤハウジング21を利用して3つのポンプを同時に取付けることができる。これにより、例えば個別のポンプハウジングを備えた3つのポンプをギヤハウジング21に取付ける場合に比較して、油圧ポンプ装置1全体の構成を簡素化することができるようになっている。
【0048】
また、ギヤハウジング21内には、図3に示すように、第3の従動歯車14の下端側の歯先が充分に浸かる高さ位置まで潤滑油Lが貯留されており、回転する各歯車11,12,13,14によってかき上げられた潤滑油Lを利用して、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部、第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を潤滑する構成となっている。
【0049】
ここで、ギヤハウジング21は、図2および図3に示すように、前,後方向の前側を閉塞する前壁面23と、潤滑油Lを受ける底面24と、この底面24と上,下方向で対面する上面25と、底面24と上面25との間を連結する半円弧状の左側面26および右側面27とにより大略構成されている。
【0050】
そして、ギヤハウジング21の前壁面23には、前,後方向に貫通する軸挿通孔23Aが穿設され、主回転軸4の先端側は、軸挿通孔23Aを通じてギヤハウジング21の外部に突出している。また、前壁面23には、主回転軸4の先端側を取囲む円筒状のフランジ部23Bが設けられ、このフランジ部23Bをエンジン等の駆動源(図示せず)に取付けることができる構成となっている。
【0051】
一方、ギヤハウジング21の底面24は、駆動歯車11および第1,第2の従動歯車12,13の下側を左,右方向に延びる平坦面部24Aと、第3の従動歯車14の下側に位置して底面24と左側面26とが交わる角隅部に設けられ、平坦面部24Aから一段窪んだ凹窪部24Bとにより構成されている。この場合、ギヤハウジング21内に貯留される潤滑油L内には、各歯車11,12,13が互いに噛合することにより発生した摩耗粉等の異物が混入するため、この潤滑油L内の異物を凹窪部24B内に捕捉する構成となっている。また、凹窪部24Bには、汚れた潤滑油Lを排出するためのドレンポート(図示せず)が設けられる構成となっている。
【0052】
次に、ギヤハウジング21の上面25について説明する。この上面25は、駆動歯車11に対向する駆動歯車対向内面25Aと、第1の従動歯車12に対向する第1の従動歯車対向内面25Bと、第2の従動歯車13および第3の従動歯車14に対向する第2の従動歯車対向内面25Cと、駆動歯車対向内面25Aと第1の従動歯車対向内面25Bとの間に配置され、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面25Dと、駆動歯車対向内面25Aと第2の従動歯車対向内面25Cとの間に配置され、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面25Eとにより構成されている。
【0053】
ここで、駆動歯車対向内面25Aと、第1の従動歯車対向内面25Bと、第2の従動歯車対向内面25Cとは、底面24の平坦面部24Aと一定の間隔をもって対面する平坦面となり、互いに同一平面上に配置されている。
【0054】
一方、第1の噛合部対向内面25Dは、第1の従動歯車対向内面25B側から駆動歯車対向内面25A側に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間に形成される隙間28は、第1の噛合部対向内面25Dと駆動歯車11との間に形成される隙間29よりも小さく設定されている。即ち、第1の噛合部対向内面25Dは、第1の従動歯車対向内面25B側から駆動歯車対向内面25A側に向けて、駆動歯車11との間に形成される隙間が隙間29から隙間28へと徐々に小さくなるように傾斜した傾斜面として形成されている。
【0055】
また、第2の噛合部対向内面25Eは、駆動歯車対向内面25Aおよび第2の従動歯車対向内面25Cから上方に一段凹んだ断面矩形状の凹窪部となり、第2の噛合部対向内面25Eと駆動歯車対向内面25Aとの境界部、第2の噛合部対向内面25Eと第2の従動歯車対向内面25Cとの境界部は、それぞれ上,下方向に垂直に延びる段部25E1,25E2となっている。そして、第2の噛合部対向内面25Eと駆動歯車11との間に形成される隙間30は、駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間に形成される隙間28よりも大きく設定されている。
【0056】
そして、ギヤハウジング21内に貯溜された潤滑油Lは、矢示A方向に回転する駆動歯車11と矢示A1方向に回転する第1の従動歯車12とによって、矢示F1方向と矢示F2方向にかき上げられることにより、これら駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を潤滑する構成となっている。
【0057】
一方、駆動歯車11によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lは、駆動歯車11の回転により、第1の噛合部対向面25Dと駆動歯車11との間に形成される隙間29から、駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間に形成される隙間28へと流れる。この場合、隙間28は隙間29よりも小さく設定されているため、矢示F1方向に流れる潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面25Dに沿って隙間29から隙間28を通過するときに、ベンチュリ効果が得られ、駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lが導出される構成となっている。
【0058】
そして、駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lの一部は、駆動歯車11の回転によって矢示F3方向に飛散した後、第2の噛合部対向内面25Eと第2の従動歯車対向内面25Cとの境界部に形成された段部25E2に沿って、矢示F4方向で示すように下方へと落下する構成となっている。
【0059】
また、ギヤハウジング21内の潤滑油Lは、矢示A2方向に回転する第2の従動歯車13と、矢示A3方向に回転する第3の従動歯車14とによって、矢示F5方向と矢示F6方向にかき上げられることにより、第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を潤滑する構成となっている。
【0060】
ここで、本実施の形態によるギヤハウジング21は、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oとしたときに、第1の噛合部対向内面25Dと第2の噛合部対向内面25Eとが、中心線O−Oを挟んで非対称に形成されている。この場合、第2の噛合部対向内面25Eは、駆動歯車対向内面25Aと第2の従動歯車対向内面25Cとの間を断面矩形状に凹ませた凹窪部として形成されている。従って、第2の噛合部対向内面25Eは、第1の噛合部対向内面25Dに比較して部分的に肉そぎされており、この肉そぎした分、ギヤハウジング21を軽量化することができる構成となっている。
【0061】
本実施の形態による油圧ポンプ装置1は上述の如き構成を有するもので、エンジン等の外部の駆動源(図示せず)からの動力によって主回転軸4を回転させることにより、駆動ポンプ3が駆動され、該駆動ポンプ3から油圧アクチュエータ(図示せず)に向けて作動用の圧油が吐出する。
【0062】
そして、主回転軸4の回転は、駆動歯車11に噛合する第1の従動歯車12を介して第1の従動回転軸6に伝達されると共に、駆動歯車11に噛合する第2の従動歯車13を介して第2の従動回転軸8に伝達され、さらに、第2の従動歯車13に噛合する第3の従動歯車14を介して第3の従動回転軸10に伝達される。このように、主回転軸4の回転に同期して第1,第2,第3の回転軸6,8,10が回転することにより、第1の従動ポンプ5、第2の従動ポンプ7、第3の従動ポンプ9が、駆動ポンプ3と同時に駆動され、これら第1,第2,第3の従動ポンプ5,7,9から油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油が吐出する。
【0063】
このとき、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部、第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部は、ギヤハウジング21内に貯溜された潤滑油Lによって自然潤滑されるようになっており、以下、各歯車11,12,13,14に対する潤滑作用について説明する。
【0064】
まず、主回転軸4が回転すると、駆動歯車11は図3中の矢示A方向に回転し、該駆動歯車11に噛合する第1の従動歯車12は矢示A1方向に回転する。これにより、ギヤハウジング21内に貯溜された潤滑油Lは、駆動歯車11と第1の従動歯車12とによって矢示F1,F2方向にかき上げられることにより、これら駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を充分な油量をもって適正に潤滑することができる。
【0065】
一方、駆動歯車11によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lは、駆動歯車11の回転により、ギヤハウジング21の第1の噛合部対向面25Dと駆動歯車11との間に形成される隙間29から、駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間に形成される隙間28へと流れる。
【0066】
この場合、隙間28は隙間29よりも小さく設定されているため、矢示F1方向に流れる潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面25Dに沿って隙間29から隙間28を通過するときに、ベンチュリ効果が得られる。これにより、駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lを導出することができ、この多量の潤滑油Lによって駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0067】
しかも、第1の噛合部対向内面25Dは、第1の従動歯車対向内面25B側から駆動歯車対向内面25A側に向けて、駆動歯車11との間に形成される隙間が隙間29から隙間28へと徐々に小さくなるように傾斜した傾斜面として形成されている。これにより、駆動歯車11の回転によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lは、第1の噛合部対向内面25Dに付着した後、この傾斜面となった第1の噛合部対向内面25Dに沿って駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間の隙間28に集められる。この結果、多量の潤滑油Lが隙間28を通過するときに確実にベンチュリ効果を得ることができ、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対して充分な潤滑油Lを供給することができる。
【0068】
また、ベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lの一部は、駆動歯車11の回転によって矢示F3方向に飛散する。この場合、第2の噛合部対向内面25Eと第2の従動歯車対向内面25Cとの境界部は、垂直方向に延びる段部25E2となっているので、矢示F3方向に飛散した潤滑油Lは、矢示F4で示すように、第2の噛合部対向内面25Eから段部25E2に沿って下方へと落下する。これにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対し、潤滑油Lを無駄なく供給することができ、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0069】
さらに、ギヤハウジング21内の潤滑油Lは、矢示A2方向に回転する第2の従動歯車13と、矢示A3方向に回転する第3の従動歯車14とによって矢示F5,F6方向にかき上げられることにより、これら第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を充分な油量をもって適正に潤滑することができる。
【0070】
かくして、第1の実施の形態による油圧ポンプ装置1は、ギヤハウジング21の上面25に、駆動歯車対向内面25A、第1,第2の従動歯車対向内面25B,25C、第1,第2の噛合部対向内面25D,25Eを設け、駆動歯車対向内面25Aと駆動歯車11との間に形成される隙間28を、第1の噛合部対向内面25Dと駆動歯車11との間に形成される隙間29よりも小さく設定している。
【0071】
これにより、駆動歯車11と第1の従動歯車12とによって矢示F1,F2方向にかき上げられた潤滑油Lにより、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を適正に潤滑することができる。また、駆動歯車11の回転方向に流れる潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面25Dに沿って隙間29から隙間28を通過するときのベンチュリ効果により、駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lを導出させ、この多量の潤滑油Lによって駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。さらに、第2の従動歯車13と第3の従動歯車14とによって矢示F5,F6方向にかき上げられた潤滑油Lにより、第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0072】
この結果、ギヤハウジング21内に貯留した少量の潤滑油Lによって駆動歯車11、第1の従動歯車12、第2の従動歯車13、第3の従動歯車14を適正に潤滑することができる。また、例えば油圧ポンプ装置1を搭載した油圧ショベル(図示せず)が傾斜地で作業を行うとき、潤滑油Lがギヤハウジング21内で偏りを生じた場合でも、駆動歯車11、第1の従動歯車12、第2の従動歯車13、第3の従動歯車14を適正に潤滑することができる。従って、駆動歯車11、第1の従動歯車12、第2の従動歯車13、第3の従動歯車14の発熱を抑え、潤滑油Lの劣化を防止することができるので、油圧ポンプ装置1を長期に亘って円滑に作動させることができる。
【0073】
次に、図4は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ギヤハウジングに設けられた第1の従動歯車対向内面と第1の噛合部対向内面との境界部に、駆動歯車と第1の従動歯車との噛合部に向けて下向きに突出する突出部を設けたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0074】
図中、31は第2の実施の形態によるギヤハウジングを示し、該ギヤハウジング31は、第1の実施の形態によるギヤハウジング21と同様に、ポンプハウジング2に着脱可能に取付けられ、内部に駆動歯車11、第1の従動歯車12、第2の従動歯車13、第3の従動歯車14を収容するものである。ここで、ギヤハウジング31は、第1の実施の形態によるギヤハウジング21とほぼ同様に、前壁面23と、底面24と、後述の上面32と、左側面26および右側面27とにより大略構成されているものの、上面32の構成が、第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0075】
32は底面24と上,下方向で対面する上面で、この上面32は、駆動歯車11に対向する駆動歯車対向内面32Aと、第1の従動歯車12に対向する第1の従動歯車対向内面32Bと、第2の従動歯車13および第3の従動歯車14に対向する第2の従動歯車対向内面32Cと、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面32Dと、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面32Eとにより構成されている。
【0076】
ここで、駆動歯車対向内面32Aと、第2の従動歯車対向内面32Cとは、底面24の平坦面部24Aと一定の間隔をもって対面する平坦面となり、互いに同一平面上に配置されている。
【0077】
また、第1の従動歯車対向内面32Bと第1の噛合部対向内面32Dとの境界部には、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に向けて下向きに突出する突出部32Fが設けられている。これにより、突出部32Fと第1の従動歯車12との間の隙間を低減することができ、第1の従動歯車12が矢示A1方向に回転したときに、この第1の従動歯車12によってかき上げられた潤滑油Lが、第1の従動歯車12の回転方向に流れるのを抑える構成となっている。
【0078】
一方、第1の噛合部対向内面32Dは、第1の従動歯車対向内面32B側から駆動歯車対向内面32A側に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、駆動歯車対向内面32Aと駆動歯車11との間に形成される隙間33は、第1の噛合部対向内面32Dと駆動歯車11との間に形成される隙間34よりも小さく設定されている。
【0079】
また、第2の噛合部対向内面32Eは、駆動歯車対向内面32Aおよび第2の従動歯車対向内面32Cから上方に一段凹んだ断面矩形状の凹窪部となり、第2の噛合部対向内面32Eと駆動歯車対向内面32A、第2の従動歯車対向内面32Cとの境界部は、それぞれ上,下方向に垂直に延びる段部32E1,32E2となっている。そして、第2の噛合部対向内面32Eと駆動歯車11との間に形成される隙間35は、駆動歯車対向内面32Aと駆動歯車11との間に形成される隙間33よりも大きく設定されている。
【0080】
そして、ギヤハウジング31は、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oとしたときに、第1の噛合部対向内面32Dと第2の噛合部対向内面32Eとが、中心線O−Oを挟んで非対称に形成されている。
【0081】
第2の実施の形態による油圧ポンプ装置は、上述の如きギヤハウジング31を有するもので、駆動歯車11が矢示A方向に回転すると、ギヤハウジング31内に貯溜された潤滑油Lは、駆動歯車11と第1の従動歯車12とによって矢示F1,F2方向にかき上げられ、これら駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を潤滑する。
【0082】
この場合、第1の従動歯車対向内面32Bと第1の噛合部対向内面32Dとの境界部には突出部32Fが設けられ、突出部32Fと第1の従動歯車12との間の隙間が低減されている。これにより、第1の従動歯車12によって矢示F2方向にかき上げられた潤滑油Lの多くは、突出部32Fに衝突することにより、第1の従動歯車12の回転方向に流れることなく、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に戻される。この結果、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を常に多量な潤滑油Lによって適正に潤滑することができる。
【0083】
一方、駆動歯車11によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面32Dに沿って隙間34から隙間33を通過するときにベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lが導出されることにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0084】
また、ベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lの一部は、駆動歯車11の回転によって矢示F3方向に飛散した後、矢示F4で示すように、第2の噛合部対向内面32Eから段部32E2に沿って下方へと落下する。これにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0085】
さらに、ギヤハウジング31内の潤滑油Lは、矢示A2方向に回転する第2の従動歯車13と、矢示A3方向に回転する第3の従動歯車14とによって矢示F5,F6方向にかき上げられることにより、これら第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0086】
次に、図5および図6は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第1の噛合部対向内面と第2の噛合部対向内面とを、駆動歯車の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線を挟んで対称形状に形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0087】
図中、41は第3の実施の形態によるギヤハウジングを示し、該ギヤハウジング41は、第1の実施の形態によるギヤハウジング21とほぼ同様に、前壁面23と、底面24と、後述の上面42と、左側面26および右側面27とにより大略構成されているものの、上面42の構成が、第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0088】
42は底面24と上,下方向で対面する上面で、この上面42は、駆動歯車11に対向する駆動歯車対向内面42Aと、第1の従動歯車12に対向する第1の従動歯車対向内面42Bと、第2の従動歯車13および第3の従動歯車14に対向する第2の従動歯車対向内面42Cと、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面42Dと、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面42Eとにより構成されている。
【0089】
ここで、駆動歯車対向内面42Aと、第1の従動歯車対向内面42Bと、第2の従動歯車対向内面42Cとは、底面24の平坦面部24Aと一定の間隔をもって対面する平坦面となり、互いに同一平面上に配置されている。
【0090】
一方、第1の噛合部対向内面42Dは、第1の従動歯車対向内面42B側から駆動歯車対向内面42A側に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、駆動歯車対向内面42Aと駆動歯車11との間に形成される隙間43は、第1の噛合部対向内面42Dと駆動歯車11との間に形成される隙間44よりも小さく設定されている。即ち、第1の噛合部対向内面42Dは、第1の従動歯車対向内面42B側から駆動歯車対向内面42A側に向けて、駆動歯車11との間に形成される隙間が隙間44から隙間43へと徐々に小さくなるように傾斜した傾斜面として形成されている。また、第1の噛合部対向内面42Dと第1の従動歯車対向内面42Bとの境界部は、上,下方向に垂直に延びる段部42D1となっている。
【0091】
そして、第2の噛合部対向内面42Eは、第2の従動歯車対向内面42C側から駆動歯車対向内面42A側に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、第2の噛合部対向内面42Eと駆動歯車11との間に形成される隙間45は、駆動歯車対向内面42Aと駆動歯車11との間に形成される隙間43よりも大きく設定されている。即ち、第2の噛合部対向内面42Eは、第2の従動歯車対向内面42C側から駆動歯車対向内面42A側に向けて、駆動歯車11との間に形成される隙間が隙間45から隙間43へと徐々に小さくなるように傾斜した傾斜面として形成されている。また、第2の噛合部対向内面42Eと第2の従動歯車対向内面42Cとの境界部は、上,下方向に垂直に延びる段部42E1となっている。
【0092】
このように、ギヤハウジング41は、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oとしたときに、第1の噛合部対向内面42Dと第2の噛合部対向内面42Eとが、中心線O−Oを挟んで対称形状に形成されている。
【0093】
第3の実施の形態による油圧ポンプ装置は、上述の如きギヤハウジング41を有するもので、図5に示すように、駆動歯車11が矢示A方向(反時計方向)に回転した場合には、ギヤハウジング41内に貯溜された潤滑油Lは、駆動歯車11と第1の従動歯車12とによって矢示F1,F2方向にかき上げられ、これら駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を潤滑する。
【0094】
一方、駆動歯車11によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面42Dに沿って隙間44から隙間43を通過するときにベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向(矢示A方向)に多量の潤滑油Lが導出されることにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0095】
また、ベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lの一部は、駆動歯車11の回転によって矢示F3方向に飛散した後、矢示F4で示すように、第2の噛合部対向内面42Eから段部42E1に沿って下方へと落下する。これにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0096】
さらに、ギヤハウジング41内の潤滑油Lは、矢示A2方向に回転する第2の従動歯車13と、矢示A3方向に回転する第3の従動歯車14とによって矢示F5,F6方向にかき上げられることにより、これら第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0097】
次に、図6に示すように、駆動歯車11が矢示A′方向(時計方向)に回転した場合には、ギヤハウジング41内に貯溜された潤滑油Lは、駆動歯車11と第2の従動歯車13とによって矢示F1′,F2′方向にかき上げられ、これら駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を潤滑する。
【0098】
一方、駆動歯車11によって矢示F1′方向にかき上げられた潤滑油Lが、第2の噛合部対向内面42Eに沿って隙間45から隙間43を通過するときにベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向(矢示A′方向)に多量の潤滑油Lが導出されることにより、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0099】
また、ベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lの一部は、駆動歯車11の回転によって矢示F3′方向に飛散した後、矢示F4′で示すように、第1の噛合部対向内面42Dから段部42D1に沿って下方へと落下する。これにより、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0100】
かくして、第3の実施の形態によれば、ギヤハウジング41を、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oとしたときに、第1の噛合部対向内面42Dと第2の噛合部対向内面42Eとが中心線O−Oを挟んで対称となるように形成したので、駆動歯車11を反時計方向に回転させた場合でも、時計方向に回転させた場合でも、ギヤハウジング41内の各歯車11,12,13,14を適正に潤滑することができる。
【0101】
次に、図7は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第1,第2の従動歯車対向内面を、それぞれ第1,第2の従動歯車とほぼ同心状の円弧面としたことにある。なお、第4の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0102】
図中、51は第4の実施の形態によるギヤハウジングを示し、該ギヤハウジング51は、第1の実施の形態によるギヤハウジング21とほぼ同様に、前壁面23と、底面24と、後述の上面52と、左側面26および右側面27とにより大略構成されているものの、上面52の構成が、第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0103】
52は底面24と上,下方向で対面する上面で、この上面52は、駆動歯車11に対向する駆動歯車対向内面52Aと、第1の従動歯車12に対向する第1の従動歯車対向内面52Bと、第2の従動歯車13に対向する第2の従動歯車対向内面52Cと、第3の従動歯車14に対向する第3の従動歯車対向内面52Dと、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面52Eと、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面52Fとにより構成されている。
【0104】
ここで、駆動歯車対向内面52Aは、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線O−Oとの交点を頂点として左,右方向に傾斜する山型の傾斜面として形成されている。一方、第1の従動歯車対向内面52Bは、第1の従動歯車12と同心状の円弧面として形成され、右側面27に滑らかに連続している。また、第2の従動歯車対向内面52Cは、第2の従動歯車13と同心状の円弧面として形成されている。さらに、第3の従動歯車対向内面52Cは、第3の従動歯車14と同心状の円弧面として形成され、左側面26に滑らかに連続している。
【0105】
一方、第1の噛合部対向内面52Eは、駆動歯車対向内面52Aから連続して第1の従動歯車対向内面52Bに向けて斜め下向きに延びる傾斜面として形成されている。これにより、駆動歯車対向内面52Aと駆動歯車11との間に形成される隙間53は、第1の噛合部対向内面52Eと駆動歯車11との間に形成される隙間54よりも小さく設定されている。
【0106】
また、第2の噛合部対向内面52Fは、駆動歯車対向内面52Aから連続して第2の従動歯車対向内面52Cに向けて斜め下向きに延びる傾斜面として形成されている。これにより、第2の噛合部対向内面52Fと駆動歯車11との間に形成される隙間55は、駆動歯車対向内面52Aと駆動歯車11との間に形成される隙間53よりも大きく設定されている。
【0107】
このように、ギヤハウジング51は、第1の噛合部対向内面52Eと第2の噛合部対向内面52Fとが、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oを挟んで対称形状に形成されている。
【0108】
第4の実施の形態による油圧ポンプ装置は、上述の如きギヤハウジング51を有するもので、駆動歯車11が矢示A方向に回転すると、ギヤハウジング51内に貯溜された潤滑油Lは、駆動歯車11と第1の従動歯車12とによって矢示F1,F2方向にかき上げられ、これら駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を潤滑する。
【0109】
この場合、第1の従動歯車対向内面52Bは、第1の従動歯車12と同心状の円弧面となっているので、第1の従動歯車12との間の隙間が低減されている。これにより、第1の従動歯車12によって矢示F2方向にかき上げられた潤滑油Lのうち、第1の従動歯車12の回転方向に流れる潤滑油の油量を減らすことができ、この分、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を多量な潤滑油Lによって潤滑することができる。
【0110】
一方、駆動歯車11によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面52Eおよび駆動歯車対向内面52Aに沿って隙間54から隙間53を通過するときにベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lが導出されることにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0111】
また、第2の従動歯車対向内面52Cは、第2の従動歯車13と同心状の円弧面となり、第2の噛合部対向内面52Fは、駆動歯車対向内面52Aから連続して第2の従動歯車対向内面52Cに向けて斜め下向きに延びる傾斜面となっている。この結果、駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lは、矢示F3で示すように、第2の噛合部対向内面52Fに沿って下方へと落下する。これにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0112】
さらに、ギヤハウジング51内の潤滑油Lは、矢示A2方向に回転する第2の従動歯車13と、矢示A3方向に回転する第3の従動歯車14とによって矢示F4,F5方向にかき上げられることにより、これら第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0113】
しかも、ギヤハウジング51は、第1の噛合部対向内面52Eと第2の噛合部対向内面52Fとが、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oを挟んで対称に形成されているので、上述した第3の実施の形態と同様に、駆動歯車11を反時計方向に回転させた場合でも、時計方向に回転させた場合でも、ギヤハウジング51内の各歯車11,12,13,14を適正に潤滑することができる。
【0114】
次に、図8は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ギヤハウジングの上面に、第2の従動歯車と第3の従動歯車との噛合部に対向する第3の噛合部対向内面を設けたことにある。なお、第5の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0115】
図中、61は第5の実施の形態によるギヤハウジングを示し、該ギヤハウジング61は、第1の実施の形態によるギヤハウジング21とほぼ同様に、前壁面23と、底面24と、後述の上面62と、左側面26および右側面27とにより大略構成されているものの、上面62の構成が、第1の実施の形態によるものとは異なっている。
【0116】
62は底面24と上,下方向で対面する上面で、この上面62は、駆動歯車11に対向する駆動歯車対向内面62Aと、第1の従動歯車12に対向する第1の従動歯車対向内面62Bと、第2の従動歯車13に対向する第2の従動歯車対向内面62Cと、第3の従動歯車14に対向する第3の従動歯車対向内面62Dと、駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面62Eと、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面62Fとにより構成されている。
【0117】
ここで、駆動歯車対向内面62Aと、第1の従動歯車対向内面62Bと、第2の従動歯車対向内面62Cと、第3の従動歯車対向内面62Dとは、底面24の平坦面部24Aと一定の間隔をもって対面する平坦面となっている。
【0118】
一方、第1の噛合部対向内面62Eは、第1の従動歯車対向内面62B側から駆動歯車対向内面62A側に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、駆動歯車対向内面62Aと駆動歯車11との間に形成される隙間63は、第1の噛合部対向内面62Eと駆動歯車11との間に形成される隙間64よりも小さく設定されている。
【0119】
また、第2の噛合部対向内面62Fは、駆動歯車対向内面62Aおよび第2の従動歯車対向内面62Cから上方に一段凹んだ断面矩形状の凹窪部となり、第2の噛合部対向内面62Fと駆動歯車対向内面62A、第2の従動歯車対向内面62Cとの境界部は、それぞれ上,下方向に垂直に延びる段部62F1,62F2となっている。そして、第2の噛合部対向内面62Fと駆動歯車11との間に形成される隙間65は、駆動歯車対向内面62Aと駆動歯車11との間に形成される隙間63よりも大きく設定されている。
【0120】
さらに、第3の噛合部対向内面62Gは、第3の従動歯車対向内面62D側から第2の従動歯車対向内面62C側に向けて斜め下向きに傾斜する傾斜面となっている。これにより、第2の従動歯車対向内面62Cと第2の従動歯車13との間に形成される隙間66は、第3の噛合部対向内面62Gと第2の従動歯車13との間に形成される隙間67よりも小さく設定されている。
【0121】
そして、ギヤハウジング61は、駆動歯車11の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線をO−Oとしたときに、第1の噛合部対向内面62Eと第2の噛合部対向内面62Fとが、中心線O−Oを挟んで非対称に形成されている。
【0122】
第5の実施の形態による油圧ポンプ装置は、上述の如きギヤハウジング61を有するもので、駆動歯車11が矢示A方向に回転すると、ギヤハウジング61内に貯溜された潤滑油Lは、駆動歯車11と第1の従動歯車12とによって矢示F1,F2方向にかき上げられ、これら駆動歯車11と第1の従動歯車12との噛合部を潤滑する。
【0123】
一方、駆動歯車11によって矢示F1方向にかき上げられた潤滑油Lが、第1の噛合部対向内面62Eに沿って隙間64から隙間63を通過するときにベンチュリ効果が得られ、このベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に多量の潤滑油Lが導出されることにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0124】
また、ベンチュリ効果によって駆動歯車11の回転方向に導出された多量の潤滑油Lの一部は、駆動歯車11の回転によって矢示F3方向に飛散した後、矢示F4で示すように、第2の噛合部対向内面62Fから段部62F2に沿って下方へと落下する。これにより、駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0125】
さらに、ギヤハウジング61内の潤滑油Lは、矢示A2方向に回転する第2の従動歯車13と、矢示A3方向に回転する第3の従動歯車14とによって矢示F5,F6方向にかき上げられることにより、これら第2の従動歯車13と第3の従動歯車14との噛合部を適正に潤滑することができる。
【0126】
ここで、第2の従動歯車13によって矢示F5方向にかき上げられた潤滑油Lは、第3の噛合部対向内面62Gに沿って、第3の噛合部対向内面62Gと第2の従動歯車13との間の隙間67から、第2の従動歯車対向面62Cと第2の従動歯車13との間の隙間66へと流れる。
【0127】
この場合、隙間66は隙間67よりも小さく設定されているため、矢示F5方向に流れる潤滑油Lが、第3の噛合部対向内面62Gに沿って隙間67から隙間66を通過するときに、ベンチュリ効果が得られる。これにより、第2の従動歯車13の回転方向に多量の潤滑油Lを導出することができ、この多量の潤滑油Lによって駆動歯車11と第2の従動歯車13との噛合部を一層適正に潤滑することができる。
【0128】
なお、上述した実施の形態では、駆動ポンプ3、第1,第2の従動ポンプ5,7として可変容量型の斜板式油圧ポンプを用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば斜軸式油圧ポンプを用いてもよく、さらに容量が一定の油圧ポンプを用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 油圧ポンプ装置
2 ポンプハウジング
3 駆動ポンプ
4 主回転軸
5 第1の従動ポンプ
6 第1の従動回転軸
7 第2の従動ポンプ
8 第2の従動回転軸
9 第3の従動ポンプ
10 第3の従動回転軸
11 駆動歯車
12 第1の従動歯車
13 第2の従動歯車
14 第3の従動歯車
21,31,41,51,61 ギヤハウジング
24 底面
25,32,42,52,62 上面
25A,32A,42A,52A,62A 駆動歯車対向内面
25B,32B,42B,52B,62B 第1の従動歯車対向内面
25C,32C,42C,52C,62C 第2の従動歯車対向内面
25D,32D,42D,52E,62E 第1の噛合部対向内面
25E,32E,42E,52F,62F 第2の噛合部対向内面
26 左側面
27 右側面
28,29,30,33,34,35,43,44,45,53,54,55,63,64,65,66,67 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングと、該ポンプハウジング内に収容された駆動ポンプおよび該駆動ポンプを挟んで両側に配置された第1,第2の従動ポンプと、前記駆動ポンプに外部からの動力を伝える主回転軸と、前記主回転軸と同一方向に延び前記主回転軸の回転を前記第1,第2の従動ポンプに伝える第1,第2の従動回転軸と、前記ポンプハウジングに取付けられ前記主回転軸が貫通したギヤハウジングと、前記ギヤハウジング内に位置して前記主回転軸に取付けられた駆動歯車と、前記ギヤハウジング内に位置して前記第1,第2の従動回転軸に取付けられ前記駆動歯車を挟んで当該駆動歯車にそれぞれ噛合する第1,第2の従動歯車とを備え、前記ギヤハウジング内に貯溜された潤滑油によって前記駆動歯車と前記第1,第2の従動歯車に対する潤滑を行う油圧ポンプ装置において、
前記ギヤハウジングは、前記潤滑油を受ける底面と、該底面と上,下方向で対面する上面と、前記底面と上面との間を連結する左,右の側面とにより構成し、
前記ギヤハウジングの上面のうち前記駆動歯車に対向する駆動歯車対向内面と前記駆動歯車との間に形成される隙間を、前記ギヤハウジングの上面のうち前記駆動歯車と前記第1の従動歯車との噛合部に対向する第1の噛合部対向内面と前記駆動歯車との間に形成される隙間、および前記ギヤハウジングの上面のうち前記駆動歯車と前記第2の従動歯車との噛合部に対向する第2の噛合部対向内面と前記駆動歯車との間に形成される隙間よりも小さく設定する構成としたことを特徴とする油圧ポンプ装置。
【請求項2】
前記第1,第2の噛合部対向内面のうち少なくとも一方の噛合部対向内面は、前記駆動歯車対向内面に向けて前記駆動歯車との間の隙間が小さくなるように傾斜する傾斜面として形成してなる請求項1に記載の油圧ポンプ装置。
【請求項3】
前記第1の噛合部対向内面と前記第2の噛合部対向内面とは、前記駆動歯車の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線を挟んで非対称形状に形成してなる請求項1または2に記載の油圧ポンプ装置。
【請求項4】
前記第1の噛合部対向内面と前記第2の噛合部対向内面とは、前記駆動歯車の回転中心を通って上,下方向に延びる中心線を挟んで対称形状に形成してなる請求項1または2に記載の油圧ポンプ装置。
【請求項5】
前記ギヤハウジングには前記第1,第2の従動ポンプのうち一方の従動ポンプに隣接して第3の従動回転軸を有する第3の従動ポンプを取付け、前記ギヤハウジング内には前記第3の従動回転軸に取付けられ前記第1,第2の従動歯車のうち一方の従動歯車に噛合する第3の従動歯車を収容する構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の油圧ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−58397(P2011−58397A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207316(P2009−207316)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】