説明

波形評価装置及び波形評価方法

【課題】簡易な構成で信号波形を評価することの可能な波形評価装置及び波形評価方法並びに伝送路評価装置及び伝送路評価方法の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明の波形評価装置は、予め定められた繰返し波形を有する被測定信号Sの振幅確率分布Iを測定するAPD(Amplitude Probability Distribution)測定部31と、繰返し波形に対応した振幅確率分布情報を格納するデータベース部32と、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iから得られる測定情報とデータベース部32に格納されている振幅確率分布情報Iを比較する比較部33と、比較部33の比較結果Iを取得し、取得した比較結果Iを用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定する判定部34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形評価装置及び波形評価方法に関し、特に繰返し波形を有する信号波形の評価を行うための波形評価装置及び波形評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
信号波形を評価するための装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の装置は、アイパターン波形などの信号波形に特徴抽出などの画像処理を施すことによって、信号波形の品質評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−357050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、信号波形の画像処理を行うため、画像処理ができる程度の信号波形を取得する必要がある。一方で、信号波形を評価するための装置構成は、簡易であることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、信号波形を取得することなく簡易な構成で信号波形を評価することの可能な波形評価装置及び波形評価方法並びに伝送路評価装置及び伝送路評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
無線通信においては、妨害電磁波の測定のために、APD(Amplitude Probability Distribution)すなわち振幅確率分布の測定が行われている。発明者らは、クロック信号などの繰返し波形を有する信号波形の振幅確率分布は、信号波形によって振幅確率分布が異なることを発見した。この発見に基づき、本発明は、信号波形が異なるか否かを判定することを特徴とする。
【0007】
具体的には、本願発明の波形評価装置は、予め定められた繰返し波形を有する被測定信号の振幅確率分布を測定するAPD(Amplitude Probability Distribution)測定部(31)と、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布情報を格納するデータベース部(32)と、前記APD測定部の測定する振幅確率分布から得られる測定情報と前記データベース部に格納されている振幅確率分布情報を比較する比較部(33)と、前記比較部の比較結果を取得し、取得した比較結果を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する判定部(34)と、を備える。
【0008】
データベース部、比較部及び判定部を備えるため、被測定信号の繰返し波形が予め定められた繰返し波形に一致しているか否かを判定することができる。ここで、本願発明の波形評価装置は、APD測定部で測定した振幅確率分布を用いて判定するため、構成を簡易にすることができる。したがって、本願発明の波形評価装置は、信号波形を取得することなく簡易な構成で信号波形を評価することができる。
【0009】
本願発明の波形評価装置では、前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を、前記振幅確率分布情報として格納し、前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を前記測定情報として取得し、取得した前記時間確率と前記データベース部に格納されている前記時間確率との前記所定の振幅値での時間確率の差を算出し、前記判定部は、前記比較部の算出する差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
本発明により、比較部及び判定部は、測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定することができる。APD測定部の測定する測定値をそのまま比較することができるため、簡易な計算により演算量を少なくすることができる。
【0010】
本願発明の波形評価装置では、前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を、前記振幅確率分布情報として格納し、前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を前記測定情報として取得し、取得した前記時間確率と前記データベース部に格納されている前記時間確率との相関係数を算出し、前記判定部は、前記比較部の算出する相関係数が1又は−1に近いか否かを用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
本発明により、比較部及び判定部は、測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定することができる。APD測定部の測定する測定値をそのまま比較することができるため、簡易な計算により演算量を少なくすることができる。また、相関係数を用いて比較するため、測定情報と線形関係が強い振幅確率分布情報を一致していると判定することができる。
【0011】
本願発明の波形評価装置では、前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最小振幅値であってもよい。
繰返し波形にオーバーシュート又はアンダーシュートが発生している場合、略最小振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるオーバーシュート又はアンダーシュートの評価を行うことができる。
【0012】
本願発明の波形評価装置では、前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値であってもよい。
繰返し波形のデューティ比が異なる場合、中間振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるデューティ比の評価を行うことができる。
【0013】
本願発明の波形評価装置では、前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値であってもよい。
繰返し波形にジッタが発生している場合、中間振幅値から略最大振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なるとともに、中間振幅値から略最小振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるジッタの評価を行うことができる。
【0014】
本願発明の波形評価装置では、前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を前記振幅確率分布情報として格納し、前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を前記測定情報として取得し、取得した前記係数と前記データベース部に格納されている前記係数との各次数の差を算出し、前記判定部は、前記比較部の算出する差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
本発明により、比較部及び判定部は、測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定することができる。振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を用いるため、比較部及び判定部の比較するパラメータを少なくすることができる。
【0015】
本願発明の波形評価装置では、前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の最小振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であってもよい。
繰返し波形にオーバーシュート又はアンダーシュートが発生している場合、略最小振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるオーバーシュート又はアンダーシュートの評価を行うことができる。
【0016】
本願発明の波形評価装置では、前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であってもよい。
繰返し波形のデューティ比が異なる場合、中間振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるデューティ比の評価を行うことができる。
【0017】
本願発明の波形評価装置では、前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であってもよい。
繰返し波形にジッタが発生している場合、中間振幅値から略最大振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なるとともに、中間振幅値から略最小振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるジッタの評価を行うことができる。
【0018】
本願発明の波形評価装置では、前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を前記振幅確率分布情報として格納し、前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を前記測定情報として取得し、取得したピークツーピーク値と前記データベース部に格納されている前記ピークツーピーク値との差を算出し、前記判定部は、前記比較部の算出する差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
繰返し波形のピークツーピーク値が異なる場合、振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値が異なる。このため、本願発明の波形評価装置は、繰返し波形におけるピークツーピーク値の評価を行うことができる。
【0019】
本願発明の波形評価装置では、前記被測定信号は、クロック信号であってもよい。
本発明により、クロック信号の波形評価を行うことができる。
【0020】
具体的には、本願発明の伝送路評価装置は、前記判定部の判定結果を出力する本願発明の波形評価装置(14)と、前記被測定信号を発生する信号発生部(11)と、前記信号発生部からの前記被測定信号を被測定物に伝送させる出力端子(12)と、前記被測定物の伝送する前記被測定信号を前記APD測定部に入力させる入力端子(13)と、を備える。
【0021】
信号発生部、出力端子及び入力端子を備えるため、被測定信号を被測定物に伝送させ、被測定物を伝送後の被測定信号を波形評価装置に入力することができる。波形評価装置は、APD測定部で測定した振幅確率分布を用いて判定するため、構成を簡易にすることができる。したがって、本願発明の伝送路評価装置は、簡易な構成で信号波形を評価することができる。
【0022】
具体的には、本願発明の波形評価方法は、予め定められた繰返し波形を有する被測定信号の振幅確率分布を測定するAPD(Amplitude Probability Distribution)測定手順(S101)と、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布情報を参照し、前記APD測定手順で測定した振幅確率分布から得られる測定情報と前記振幅確率分布情報を比較し、前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する判定手順(S102)と、を順に有する。
【0023】
判定手順を有するため、被測定信号の繰返し波形が予め定められた繰返し波形に一致しているか否かを判定することができる。ここで、本願発明の波形評価方法は、APD測定手順で測定した振幅確率分布を用いて判定するため、構成を簡易にすることができる。したがって、本願発明の波形評価方法は、信号波形を取得することなく簡易な構成で信号波形を評価することができる。
【0024】
本願発明の波形評価方法では、前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を参照し、前記測定情報として前記APD測定手順で測定した振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を取得し、取得した前記時間確率と参照した前記時間確率と前記所定の振幅値での時間確率の差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
本発明により、判定手順において、測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定することができる。APD測定手順で測定した測定値をそのまま比較することができるため、簡易な計算により演算量を少なくすることができる。
【0025】
本願発明の波形評価方法では、前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を参照し、前記測定情報として前記APD測定手順で測定した振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を取得し、取得した前記時間確率と参照した前記時間確率との相関係数が1又は−1に近いか否かを用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
本発明により、判定手順において、測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定することができる。APD測定手順で測定した測定値をそのまま比較することができるため、簡易な計算により演算量を少なくすることができる。また、相関係数を用いて比較するため、測定情報と線形関係が強い振幅確率分布情報を一致していると判定することができる。
【0026】
本願発明の波形評価方法では、前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最小振幅値であってもよい。
繰返し波形にオーバーシュート又はアンダーシュートが発生している場合、略最小振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるオーバーシュート又はアンダーシュートの評価を行うことができる。
【0027】
本願発明の波形評価方法では、前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値であってもよい。
繰返し波形のデューティ比が異なる場合、中間振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるデューティ比の評価を行うことができる。
【0028】
本願発明の波形評価方法では、前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値であってもよい。
繰返し波形にジッタが発生している場合、中間振幅値から略最大振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なるとともに、中間振幅値から略最小振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるジッタの評価を行うことができる。
【0029】
本願発明の波形評価方法では、前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として変調方式に対応した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を参照し、前記測定情報と前記APD測定手順で測定した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を取得し、取得した各次数の係数と参照した各次数の係数の差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
本発明により、判定手順において、測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定することができる。振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を用いるため、判定手順において比較するパラメータを少なくすることができる。
【0030】
本願発明の波形評価方法では、前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の最小振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であってもよい。
繰返し波形にオーバーシュート又はアンダーシュートが発生している場合、略最小振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるオーバーシュート又はアンダーシュートの評価を行うことができる。
【0031】
本願発明の波形評価方法では、前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であってもよい。
繰返し波形のデューティ比が異なる場合、中間振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるデューティ比の評価を行うことができる。
【0032】
本願発明の波形評価方法では、前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であってもよい。
繰返し波形にジッタが発生している場合、中間振幅値から略最大振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なるとともに、中間振幅値から略最小振幅値までの間の振幅値における時間確率が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるジッタの評価を行うことができる。
【0033】
本願発明の波形評価方法では、前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を参照し、前記測定情報として前記APD測定手順で測定した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を取得し、取得した前記ピークツーピーク値と参照した前記ピークツーピーク値の差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定してもよい。
繰返し波形のピークツーピーク値が異なる場合、振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値が異なる。このため、本願発明の波形評価方法は、繰返し波形におけるピークツーピーク値の評価を行うことができる。
【0034】
本願発明の波形評価方法では、前記被測定信号は、クロック信号であってもよい。
本発明により、クロック信号の波形評価を行うことができる。
【0035】
具体的には、本願発明の伝送路評価方法は、前記被測定信号を発生して被測定物に出力して伝送させる被測定信号出力手順(S103)と、本願発明に係る波形評価方法と、を順に有する。
【0036】
被測定信号出力手順を実行するため、被測定信号を被測定物に伝送させることができる。本願発明に係る波形評価方法において振幅確率分布を用いて判定するため、信号波形を取得することなくかつ構成を簡易にすることができる。したがって、本願発明の伝送路評価方法は、信号波形を取得することなく簡易な構成で信号波形を評価することができる。
【0037】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、信号波形を取得することなく簡易な構成で信号波形を評価することの可能な波形評価装置及び波形評価方法並びに伝送路評価装置及び伝送路評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態1に係る波形評価装置の一例を示す。
【図2】実施形態1に係る波形評価方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】APDの一例を示す。
【図4】振幅確率分布情報I及び測定情報の第1例を示す。
【図5】振幅確率分布情報I及び測定情報の第2例を示す。
【図6】繰返し波形のデューティ比についての評価例を示す。
【図7】繰返し波形のジッタについての評価例を示す。
【図8】繰返し波形のオーバーシュート及びアンダーシュートについての評価例を示す。
【図9】繰返し波形のピークツーピーク値についての評価例を示す。
【図10】実施形態6に係る伝送路評価装置の一例を示す。
【図11】実施形態6に係る伝送路評価方法の一例を示す。
【図12】実施例1に係る繰返し波形を示す。
【図13】実施例1に係る振幅確率分布の測定結果を示す。
【図14】実施例2に係る繰返し波形を示す。
【図15】実施例2に係る振幅確率分布の測定結果を示す。
【図16】被測定信号Sと被測定信号Sの振幅確率分布の比較結果を示す。
【図17】略最小振幅値Aにおける振幅確率分布の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0041】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る波形評価装置の一例を示す。本実施形態に係る波形評価装置14は、APD測定部31と、データベース部32と、比較部33と、判定部34と、を備える。
【0042】
図2は、実施形態1に係る波形評価方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る波形評価方法は、APD測定手順S101と、判定手順S102と、を順に有する。
【0043】
APD測定手順S101では、APD測定部31が、予め定められた繰返し波形を有する被測定信号Sの振幅確率分布Iを測定する。被測定信号Sは、例えば、1周期で繰り返す繰返し波形を有するクロック信号であるが、複数周期で繰り返す繰返し波形を有するPRBS(Pseudo Random Binary Sequence)信号であってもよい。繰返し波形は矩形波であってもよいし、正弦波であってもよい。
【0044】
図3に、APDの一例を示す。横軸は時間確率(%)を示し、縦軸は振幅値(dB)を示す。時間確率は、振幅確率とも呼ばれるが、本願では時間確率と呼ぶ。繰返し波形にオーバーシュートやアンダーシュートがない場合、時間確率P以下では略最大振幅値Aとなり、時間確率P以上では略最小振幅値Aとなる。
【0045】
繰返し波形のピークツーピーク値が同じ場合、振幅確率分布のピークツーピーク値は一致する。一方、繰返し波形のピークツーピーク値が異なる場合、振幅確率分布のピークツーピーク値は異なる。そこで、繰返し波形の振幅を評価する場合には、振幅確率分布情報Iとして、略最大振幅値Aと略最小振幅値Aの差を用いる。
【0046】
繰返し波形のうちのピークツーピーク値以外の波形が異なる場合、例えば、デューティ比が異なったり、ジッタ、オーバーシュート又はアンダーシュートが生じていたりする場合は、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aまでの時間確率が異なる。そこで、繰返し波形のうちのピークツーピーク値以外の波形を評価する場合には、振幅確率分布情報Iとして、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aまでの時間確率を用いる。
【0047】
図1に示すデータベース部32は、予め定められた繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅確率分布情報Iを格納する。判定手順S102では、比較部33が、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iから得られる測定情報とデータベース部32に格納されている振幅確率分布情報Iを比較する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の比較結果Iを取得し、取得した比較結果をI用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定し、判定結果Iを出力する。
【0048】
測定情報と振幅確率分布情報Iが一致している場合は、被測定信号Sの繰返し波形が予め定められた繰返し波形に一致している。一方、測定情報と振幅確率分布情報Iが一致していない場合は、被測定信号Sの繰返し波形が予め定められた繰返し波形に一致していない。したがって、判定結果Iを用いて、被測定信号Sの繰返し波形が予め定められた繰返し波形に一致しているか否かを判定することができる。
【0049】
図4に、振幅確率分布情報I及び測定情報の第1例を示す。振幅確率分布情報Iの第1例では、繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値iでの時間確率PRを、振幅確率分布情報Iとして格納する。この場合、判定手順S102では、比較部33が、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iの所定の振幅値iでの時間確率PMを測定情報として取得し、取得した時間確率PMとデータベース部32に格納されている時間確率PRとの所定の振幅値iでの時間確率の差Dを算出する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の算出する差Dの大小を用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定し、判定結果Iを出力する。差Dの大小を用いた判定は、例えば、各振幅値iで差Dの和が一定値以内であれば一致と判定し、各振幅値iで差Dの和が一定値よりも大きければ不一致と判定する。
【0050】
所定の振幅値iでの時間確率PRを振幅確率分布情報Iとすることで、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iの時間確率をそのまま比較することができる。このため、簡易な計算により比較部33における演算量を少なくすることができる。
【0051】
なお、時間確率の差Dは、時間確率PRと時間確率PMとの距離であってもよい。この場合、比較部33は、時間確率PRと時間確率PMとの距離計算を行う。判定部34は、比較部33の算出する距離の大小を用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定する。距離計算においては、強調したい係数に重み付けを行う計算を実行してもよい。
【0052】
また、判定手順S102では、比較部33が、相関係数Rを用いて比較してもよい。例えば、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iの所定の振幅値iでの時間確率PMを測定情報として取得し、取得した時間確率PMとデータベース部32に格納されている時間確率PRとの相関係数Rを算出する。そして、判定部34が、比較部33の算出する相関係数Rが1又は−1に近いか否かを用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定し、判定結果Iを出力する。相関係数Rが1又は−1に近いか否かを用いた判定は、例えば、相関係数Rの絶対値が一定値以上1以下であれば一致と判定し、相関係数Rの絶対値が前記一定値未満であれば不一致と判定する。
【0053】
相関係数Rは、例えば、次式を用いて求めることができる。
【数1】

なお、PRは振幅値PRの相加平均であり、PMは振幅値PMの相加平均である。
【0054】
図5に、振幅確率分布情報I及び測定情報の第2例を示す。振幅確率分布情報Iの第2例では、繰返し波形に対応した振幅確率分布がA(x)=a+ax+a+・・・aで表され、振幅確率分布IがB(x)=b+bx+b+・・・bで表される場合に、繰返し波形に対応した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数jの係数aを振幅確率分布情報Iとして格納する。この場合、判定手順S102では、比較部33が、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iを多項式で表したときの各次数jの係数bを測定情報として取得し、取得した係数bとデータベース部32に格納されている係数aとの各次数の差dを算出する。そして、判定部34は、比較部33の算出する差dの大小を用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定する。差dの大小を用いた判定は、例えば、各係数jでの差dの和が一定値以内であれば一致と判定し、各係数jでの差dの和が一定値よりも大きければ不一致と判定する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る波形評価装置14は、APD測定部31と、データベース部32と、比較部33と、判定部34と、を備え、本実施形態に係る波形評価方法を実行する。これにより、被測定信号Sの繰返し波形が予め定められた繰返し波形に一致しているか否かを判定することができる。
【0056】
(実施形態2)
実施形態2では、繰返し波形のデューティ比についての評価例を説明する。図6に、繰返し波形のデューティ比についての評価例を示す。繰返し波形のデューティ比が異なる場合、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aまでの時間確率iがシフトする。そこで、比較部33は、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aまでの時間確率iを比較する。
【0057】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第1例を格納し、比較部33が時間確率PMと時間確率PRとの所定の振幅値iでの時間確率の差Dを算出する場合、所定の振幅値iは、中間振幅値Aであることが好ましい。中間振幅値Aにおける時間確率は、ジッタ、オーバーシュート及びアンダーシュートによる影響が少ない。このため、繰返し波形のデューティ比についての評価を行うことができる。
【0058】
この場合、比較部33は、振幅Aでの時間確率PR及び時間確率PMの差Dを算出する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の算出する差Dが一定値以内であれば測定情報と振幅確率分布情報Iが一致していると判定し、比較部33の算出する差Dが一定値を超えていれば測定情報と振幅確率分布情報Iが不一致と判定する。
【0059】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第1例を格納し、比較部33が時間確率PMと時間確率PRとの相関係数Rを算出する場合、所定の振幅値iは略最大振幅値Aと略最小振幅値Aまでの複数の振幅値iであることが好ましい。
【0060】
この場合、比較部33は、略最大振幅値Aでの時間確率PRから略最小振幅値Aでの時間確率PRまでの複数の振幅値iでの時間確率PMと時間確率PRとの相関係数Rを算出する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の算出する相関係数Rの絶対値が一定値以上1以下である場合は一致と判定し、比較部33の算出する相関係数Rの絶対値が前記一定値未満である場合は不一致と判定する。
【0061】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第2例を格納し、比較部33が係数bと係数aとの各次数jの差dを算出する場合、各次数jは、略最大振幅値Aと略最小振幅値Aとの中間振幅値A付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることが好ましい。この場合の比較部33及び判定部34の機能及び動作は実施形態1と同様である。
【0062】
(実施形態3)
実施形態3では、繰返し波形のジッタについての評価例を説明する。図7に、繰返し波形のジッタについての評価例を示す。繰返し波形にジッタが生じている場合、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aまでの時間確率iの傾きが異なる。そこで、比較部33は、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aまでの時間確率iの傾きを比較する。
【0063】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第1例を格納し、比較部33が時間確率PMと時間確率PRとの所定の振幅値iでの時間確率の差Dを算出する場合、所定の振幅値iは、中間振幅値Aから略最大振幅値Aまでの間の振幅値(例えば0)及び中間振幅値Aから略最小振幅値Aまでの間の振幅値(例えば−15)であることが好ましい。
【0064】
この場合、比較部33は、例えば、振幅0での時間確率PR及び時間確率PMの差D及び振幅−15での時間確率PR−15及び時間確率PM0−15の差D−15を算出する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の算出する差D及び差D−15の符号が一致していれば測定情報と振幅確率分布情報Iが一致していると判定し、差D及び差D−15の符号が異なれば不一致と判定する。
【0065】
なお、差D及び差D−15の符号に限らず、比較部33が振幅値に対する時間確率の傾きを算出し、判定部34が傾きの大小を用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定してもよい。
【0066】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第1例を格納し、時間確率PMと時間確率PRとの相関係数Rを算出する場合、所定の振幅値iは略最大振幅値Aと略最小振幅値Aまでの複数の振幅値iであることが好ましい。この場合の比較部33及び判定部34の機能及び動作は実施形態2と同様である。
【0067】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第2例を格納し、比較部33が係数bと係数aとの各次数jの差dを算出する場合、各次数jは、中間振幅値Aから略最大振幅値Aまでの間の振幅値での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることが好ましい。この場合の比較部33及び判定部34の機能及び動作は実施形態1と同様である。
【0068】
(実施形態4)
実施形態4では、繰返し波形のオーバーシュート及びアンダーシュートについての評価例を説明する。図8に、繰返し波形のオーバーシュート及びアンダーシュートについての評価例を示す。繰返し波形にオーバーシュート又はアンダーシュートが生じている場合、略最小振幅値Aにおける時間確率iの変化が緩くなり、曲率が大きくなる。そこで、比較部33は、略最小振幅値Aにおける時間確率iを比較する。
【0069】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第1例を格納し、比較部33が時間確率PMと時間確率PRとの所定の振幅値iでの時間確率の差Dを算出する場合、所定の振幅値iは、略最小振幅値Aであることが好ましい。
【0070】
この場合、比較部33は、略最小振幅値Aでの時間確率PR及び時間確率PMの差Dを算出する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の算出する差Dが一定値以内であれば測定情報と振幅確率分布情報Iが一致していると判定し、比較部33の算出する差Dが一定値を超えていれば測定情報と振幅確率分布情報Iが不一致と判定する。
【0071】
なお、所定の振幅値iの数は1つであってもよいし、複数であってもよい。また、所定の振幅値iは、略最小振幅値A以上でありかつ略最小振幅値A付近の振幅値iであればよい。これらの振幅値iを用いても、繰返し波形のオーバーシュート及びアンダーシュートについての評価を行うことができる。
【0072】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第1例を格納し、時間確率PMと時間確率PRとの相関係数Rを算出する場合、略最小振幅値A以上でありかつ略最小振幅値A付近の振幅値iであることが好ましい。
【0073】
この場合、略最小振幅値A以上でありかつ略最小振幅値A付近の複数の振幅値iでの時間確率PMと時間確率PRとの相関係数Rを算出する。そして、判定手順S102では、判定部34が、比較部33の算出する相関係数Rの絶対値が一定値以上1以下である場合は一致と判定し、比較部33の算出する相関係数Rの絶対値が一定値未満である場合は不一致と判定する。
【0074】
例えば、データベース部32が振幅確率分布情報Iの第2例を格納し、比較部33が係数bと係数aとの各次数jの差dを算出する場合、各次数の係数jは、最小振幅値A付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることが好ましい。この場合の比較部33及び判定部34の機能及び動作は実施形態1と同様である。
【0075】
(実施形態5)
実施形態5では、繰返し波形の振幅についての評価例を説明する。図9に、繰返し波形のピークツーピーク値についての評価例を示す。繰返し波形のピークツーピーク値が異なる場合、略最大振幅値Aと略最小振幅値Aの差が異なる。そこで、比較部33は、振幅確率分布情報Iとして、略最大振幅値Aと略最小振幅値Aの差Pを比較する。
【0076】
例えば、データベース部32は、繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値Pを振幅確率分布情報Iとして格納する。判定手順S102では、比較部33は、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iの振幅値のピークツーピーク値Pを測定情報として取得し、取得したピークツーピーク値Pとデータベース部32に格納されているピークツーピーク値Pとの差を算出する。
【0077】
そして、判定手順S102では、判定部34は、比較部33の算出する差の大小を用いて測定情報と振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する。例えば、比較部33の算出する差が一定値以内であれば測定情報と振幅確率分布情報Iが一致していると判定し、比較部33の算出する差が一定値を超えていれば測定情報と振幅確率分布情報Iが不一致と判定する。
【0078】
(実施形態6)
図10に、実施形態6に係る伝送路評価装置の一例を示す。本実施形態に係る伝送路評価装置101は、実施形態1〜実施形態5で説明した波形評価装置14に加え、さらに、信号発生部11と、出力端子12と、入力端子13と、を備える。
【0079】
伝送路評価装置101は、本実施形態に係る伝送路評価方法を実行する。図11に、実施形態6に係る伝送路評価方法の一例を示す。本実施形態に係る伝送路評価方法は、被測定信号出力手順S103と、APD測定手順S101と、判定手順S102と、を順に有する。
【0080】
信号発生部11は、予め定められた繰返し波形を有する被測定信号Sを発生する。データベース部32は、被測定信号Sの繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅確率分布情報Iを格納する。
【0081】
被測定信号出力手順S103では、信号発生部11が被測定信号Sを発生して被測定物100に出力して伝送させる。例えば、出力端子12は、信号発生部11からの被測定信号Sを被測定物100に出力する。被測定物100は、被測定信号Sを伝送し、伝送後の被測定信号Sを入力端子13に出力する。これにより、入力端子13が、被測定物100の伝送する被測定信号SをAPD測定部31に入力させる。
【0082】
APD測定手順S101では、APD測定部31が被測定信号Sの振幅確率分布Iを測定する。判定手順S102では、比較部33が、APD測定部31の測定する振幅確率分布Iから得られる測定情報とデータベース部32に格納されている振幅確率分布情報Iを比較する。これにより、被測定物100を伝送前の被測定信号Sの繰返し波形と、被測定物100を伝送後の被測定信号Sの繰返し波形とを比較することができる。
【0083】
判定手順S102では、さらに、判定部34が、比較部33の比較結果Iを取得し、取得した比較結果Iを用いて測定情報と振幅確率分布情報Iが一致しているか否かを判定し、判定結果Iを出力する。これにより、被測定物100を伝送前の被測定信号Sの繰返し波形と、被測定物100を伝送後の被測定信号Sの繰返し波形とが一致しているか否かを判定することができる。したがって、被測定物100の伝送特性の評価を行うことができる。
【0084】
被測定物100は、被測定信号Sを伝送することが可能な任意の媒体である。例えば、同軸ケーブルなどの電気信号を伝送することの可能な媒体であってもよいし、光ファイバなどの光信号を伝送することの可能な媒体であってもよいし、アンテナなどの無線信号を伝送することの可能な媒体であってもよい。また、被測定物100は、光信号を伝送する媒体と無線信号を伝送する媒体との組み合わせであってもよい。被測定物100に増幅器などの種々の電子機器を接続すれば、電子機器の特性試験を行うこともできる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態に係る伝送路評価装置101は、種々の被測定物100の特性の評価を行うことができる。ここで、伝送路評価装置101は被測定信号SのAPDを測定することで被測定信号Sの解析を行うことができるため、構成を簡易にすることができる。したがって、本実施形態に係る伝送路評価装置101は、簡易な構成で被測定物100の評価を行うことができる。
【実施例1】
【0086】
実施例1では、繰返し波形のデューティ比についての評価を行った。図12に、実施例1に係る繰返し波形を示す。デューティ比が40対60の被測定信号Sと、デューティ比が50対50の被測定信号Sと、デューティ比が60対40の被測定信号Sと、を用いた。被測定信号S、被測定信号S、被測定信号Sのいずれもピークツーピーク値は同じであり、ジッタ、オーバーシュート及びアンダーシュートはない。
【0087】
図13に、実施例1に係る振幅確率分布の測定結果を示す。被測定信号Sの振幅確率分布Iと、被測定信号Sの振幅確率分布Iと、被測定信号Sの振幅確率分布Iは、最大値が略最大振幅値Aで一定となっており、最小値が略最小振幅値Aで一定となっている。また、略最大振幅値Aから略最小振幅値Aの間において、振幅確率分布I、振幅確率分布I、振幅確率分布Iの順に、時間確率が大きくなるようにシフトしている。このため、所定の振幅値における時間確率を比較することで、繰返し波形のデューティ比を評価することができる。
【実施例2】
【0088】
実施例2では、繰返し波形のオーバーシュート及びアンダーシュートについての評価を行った。図14に、実施例2に係る繰返し波形を示す。被測定信号Sは実施例1の被測定信号Sに、被測定信号Sは実施例1の被測定信号Sに、被測定信号Sは実施例1の被測定信号Sに、オーバーシュート及びアンダーシュートを発生している。
【0089】
図15に、実施例2に係る振幅確率分布の測定結果を示す。振幅確率分布I、振幅確率分布I及び振幅確率分布Iは、共に、最低の時間確率において振幅値が略最大振幅値Aよりも高くなっており、時間確率が上昇するにつれて振幅値が略最小振幅値Aよりも徐々に低下している。
【0090】
図16に、被測定信号Sと被測定信号Sの振幅確率分布の比較結果を示す。最低の時間確率において振幅確率分布Iの振幅値が略最大振幅値Aよりも高くなっており、時間確率が上昇するにつれて振幅確率分布Iの振幅値が略最小振幅値Aよりも徐々に低下していることが分かる。
【0091】
図17に、略最小振幅値Aにおける振幅確率分布I及びIの拡大図を示す。略最小振幅値A付近において、振幅確率分布Iの曲率が振幅確率分布Iの曲率よりも大きくなっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
11:信号発生部
12:出力端子
13:入力端子
14:波形評価装置
31:APD測定部
32:データベース部
33:比較部
34:判定部
100:被測定物
101:伝送路評価装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた繰返し波形を有する被測定信号の振幅確率分布を測定するAPD(Amplitude Probability Distribution)測定部(31)と、
前記繰返し波形に対応した振幅確率分布情報を格納するデータベース部(32)と、
前記APD測定部の測定する振幅確率分布から得られる測定情報と前記データベース部に格納されている振幅確率分布情報を比較する比較部(33)と、
前記比較部の比較結果を取得し、取得した比較結果を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する判定部(34)と、
を備える波形評価装置。
【請求項2】
前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を、前記振幅確率分布情報として格納し、
前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を前記測定情報として取得し、取得した前記時間確率と前記データベース部に格納されている前記時間確率との前記所定の振幅値での時間確率の差を算出し、
前記判定部は、前記比較部の算出する差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の波形評価装置。
【請求項3】
前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を、前記振幅確率分布情報として格納し、
前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を前記測定情報として取得し、取得した前記時間確率と前記データベース部に格納されている前記時間確率との相関係数を算出し、
前記判定部は、前記比較部の算出する相関係数が1又は−1に近いか否かを用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の波形評価装置。
【請求項4】
前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最小振幅値であることを特徴とする請求項2又は3に記載の波形評価装置。
【請求項5】
前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値であることを特徴とする請求項2又は3に記載の波形評価装置。
【請求項6】
前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値であることを特徴とする請求項2又は3に記載の波形評価装置。
【請求項7】
前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を前記振幅確率分布情報として格納し、
前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を前記測定情報として取得し、取得した前記係数と前記データベース部に格納されている前記係数との各次数の差を算出し、
前記判定部は、前記比較部の算出する差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の波形評価装置。
【請求項8】
前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の最小振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることを特徴とする請求項7に記載の波形評価装置。
【請求項9】
前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることを特徴とする請求項7に記載の波形評価装置。
【請求項10】
前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることを特徴とする請求項7に記載の波形評価装置。
【請求項11】
前記データベース部は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を前記振幅確率分布情報として格納し、
前記比較部は、前記APD測定部の測定する振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を前記測定情報として取得し、取得したピークツーピーク値と前記データベース部に格納されている前記ピークツーピーク値との差を算出し、
前記判定部は、前記比較部の算出する差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の波形評価装置。
【請求項12】
前記被測定信号は、クロック信号であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の波形評価装置。
【請求項13】
前記判定部の判定結果を出力する請求項1から12のいずれかに記載の波形評価装置(14)と、
前記被測定信号を発生する信号発生部(11)と、
前記信号発生部からの前記被測定信号を被測定物に伝送させる出力端子(12)と、
前記被測定物の伝送する前記被測定信号を前記APD測定部に入力させる入力端子(13)と、
を備える伝送路評価装置。
【請求項14】
予め定められた繰返し波形を有する被測定信号の振幅確率分布を測定するAPD(Amplitude Probability Distribution)測定手順(S101)と、
前記繰返し波形に対応した振幅確率分布情報を参照し、前記APD測定手順で測定した振幅確率分布から得られる測定情報と前記振幅確率分布情報を比較し、前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する判定手順(S102)と、
を順に有する波形評価方法。
【請求項15】
前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を参照し、前記測定情報として前記APD測定手順で測定した振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を取得し、取得した前記時間確率と参照した前記時間確率と前記所定の振幅値での時間確率の差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項14に記載の波形評価方法。
【請求項16】
前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の所定の振幅値での時間確率を参照し、前記測定情報として前記APD測定手順で測定した振幅確率分布の前記所定の振幅値での時間確率を取得し、取得した前記時間確率と参照した前記時間確率との相関係数が1又は−1に近いか否かを用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項14に記載の波形評価方法。
【請求項17】
前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最小振幅値であることを特徴とする請求項15又は16に記載の波形評価方法。
【請求項18】
前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値であることを特徴とする請求項15又は16に記載の波形評価方法。
【請求項19】
前記所定の振幅値は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値であることを特徴とする請求項15又は16に記載の波形評価方法。
【請求項20】
前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として変調方式に対応した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を参照し、前記測定情報と前記APD測定手順で測定した振幅確率分布を多項式で表したときの各次数の係数を取得し、取得した各次数の係数と参照した各次数の係数の差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項14に記載の波形評価方法。
【請求項21】
前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の最小振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることを特徴とする請求項20に記載の波形評価方法。
【請求項22】
前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることを特徴とする請求項20に記載の波形評価方法。
【請求項23】
前記各次数の係数は、前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の略最大振幅値と略最小振幅値との中間振幅値から前記略最大振幅値及び前記略最小振幅値までの間の振幅値付近での時間確率を多項式で表したときの各次数の係数であることを特徴とする請求項20に記載の波形評価方法。
【請求項24】
前記判定手順において、前記振幅確率分布情報として前記繰返し波形に対応した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を参照し、前記測定情報として前記APD測定手順で測定した振幅確率分布の振幅値のピークツーピーク値を取得し、取得した前記ピークツーピーク値と参照した前記ピークツーピーク値の差の大小を用いて前記測定情報と前記振幅確率分布情報が一致しているか否かを判定する
ことを特徴とする請求項14に記載の波形評価方法。
【請求項25】
前記被測定信号は、クロック信号であることを特徴とする請求項14から24のいずれかに記載の波形評価方法。
【請求項26】
前記被測定信号を発生して被測定物に出力して伝送させる被測定信号出力手順(S103)と、
請求項14から25のいずれかに記載の波形評価方法と、
を順に有する伝送路評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−209065(P2011−209065A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76247(P2010−76247)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)