説明

波長変換材料、波長変換機能付き基材および太陽電池モジュール

【課題】耐熱性に優れた波長変換材料および波長変換機能付き基材、ならびに発電効率に優れた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】欠陥発光材料が、Si−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有するマトリックス中に分散してなる波長変換材料;本発明の波長変換材料からなる波長変換膜12を基材10の表面に有する波長変換機能付き基材1;本発明の波長変換機能付き基材からなる太陽電池用カバーガラスを有する太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換材料、波長変換機能付き基材および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールにおいては、可視光領域および近赤外線領域の光が発電に利用されているが、紫外線領域の光は発電に利用されない。そのため、紫外線領域の光を有効利用するために、下記の太陽電池モジュールが提案されている。
ガラス板の表面に格子欠陥を有する酸化亜鉛からなる波長変換膜を形成し、該波長変換膜を酸化ケイ素膜で保護したものを、太陽電池用カバーガラスとして用いた太陽電池モジュール(特許文献1)。
【0003】
格子欠陥を有する酸化亜鉛は、紫外線領域の光を可視光領域の光に変換する蛍光体材料として知られている。
しかし、格子欠陥を有する酸化亜鉛は、酸素によって酸化されやすい。そのため、波長変換膜を有する太陽電池用カバーガラスと封止材とを加熱下に圧着する際、波長変換膜が酸化ケイ素膜で保護されているにも関わらず、格子欠陥を有する酸化亜鉛が酸化され、紫外線領域の光を可視光領域の光に変換する波長変換機能が大幅に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−345993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性に優れた波長変換材料および波長変換機能付き基材、ならびに発電効率に優れた太陽電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波長変換材料は、欠陥発光材料が、Si−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有するマトリックス中に分散してなるものであることを特徴とする。
本発明の波長変換材料においては、赤外吸収スペクトルにおけるSi−N結合の吸収強度とSi−O結合の吸収強度との比(Si−N/Si−O)が、0.1〜5である、または、赤外吸収スペクトルにおけるSi−C結合の吸収強度とSi−H結合の吸収強度との比(Si−C/Si−H)が、0.5〜10であることが好ましい。
欠陥発光材料は、格子欠陥を有する酸化亜鉛または格子欠陥を有する硫化カドミウムであることが好ましい。
【0007】
本発明の波長変換機能付き基材は、本発明の波長変換材料からなる波長変換膜を基材の表面に有することを特徴とする。
波長変換膜は、欠陥発光材料と有機ポリシラザンとを含むコーティング液を、基材の表面に塗布し、乾燥してなる膜であることが好ましい。
有機ポリシラザンは、Siに結合する末端官能基として−CH基または−(CHNH基を有するものであることが好ましい。
【0008】
本発明の波長変換機能付き基材は、太陽電池用カバーガラスであることが好ましい。
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の波長変換機能付き基材からなる太陽電池用カバーガラスを有することを特徴とする。
本発明の太陽電池モジュールにおいては、波長変換膜が光入射面とは反対側の面となるように、太陽電池用カバーガラスが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の波長変換材料は、耐熱性に優れる。
本発明の波長変換機能付き基材は、波長変換膜の耐熱性に優れる。
本発明の太陽電池モジュールは、発電効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の波長変換機能付き基材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<波長変換材料>
本発明の波長変換材料は、欠陥発光材料が、Si−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有するマトリックス中に分散してなるものある。
波長変換材料の形状としては、膜状、塊状等が挙げられ、通常は、膜状である。
膜状の波長変換材料は、後述するように、欠陥発光材料と有機ポリシラザンとを含むコーティング液を、基材の表面に塗布し、乾燥して形成される。
【0012】
(欠陥発光材料)
欠陥発光材料とは、結晶中に欠陥格子(酸素欠陥等)を有し、紫外線領域の光を吸収し、可視光領域または近赤外線領域の光を発光する蛍光体材料である。
欠陥発光材料としては、吸収波長が300〜400nmの範囲にあり、発光波長が400〜1000nmの範囲にあるものが好ましい。
【0013】
欠陥発光材料としては、格子欠陥を有する酸化亜鉛、格子欠陥を有する硫化カドミウム、シリコン等が挙げられ、発光効率、安定性の点から、格子欠陥を有する酸化亜鉛または格子欠陥を有する硫化カドミウムが好ましく、人体への安全性の点から、格子欠陥を有する酸化亜鉛が特に好ましい。
【0014】
欠陥発光材料の形状としては、粒状、球状、扁平状、シート状、中空状、鎖状、棒状、針状、角状等が挙げられる。欠陥発光材料は、表面処理されていてもよい。
粒状の欠陥発光材料の平均一次粒子径は、0.5〜10nm以下が好ましい。欠陥発光材料の平均一次粒子径が0.5nm以上であれば、安定的に存在し得る。欠陥発光材料の平均一次粒子径が10nm以下であれば、波長変換効率が高いため好ましい。
欠陥発光材料の平均一次粒子径は、分散液の状態にて動的散乱法で測定する。
【0015】
(マトリックス)
マトリックスは、Si−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有する材料からなるものである。
Si−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有する材料としては、たとえば、後述する有機シラザンの反応生成物等が挙げられる。
【0016】
マトリックスがSi−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有することは、赤外吸収スペクトルを測定し、Si−N結合(990cm−1)、Si−C結合(1265cm−1)、Si−O結合(1140cm−1)およびSi−H結合(2162cm−1)の吸収ピークが観測されるか否かで、確認できる。
【0017】
マトリックスとしては、赤外吸収スペクトルにおけるSi−N結合の吸収強度とSi−O結合の吸収強度との比(Si−N/Si−O)が0.1〜5であるもの、または、赤外吸収スペクトルにおけるSi−C結合の吸収強度とSi−H結合の吸収強度との比(Si−C/Si−H)が0.5〜10であるものが好ましく;Si−N/Si−Oが0.1〜5であり、かつSi−C/Si−Hが0.5〜10であるものがより好ましい。
【0018】
Si−N/Si−Oが0.1以上であれば、酸素が存在した場合、加熱下にSi−N結合がまず酸素と反応するため、欠陥発光材料が酸化されにくい。Si−N/Si−Oが5.0以下であれば、空気中で安定的に存在し得る。Si−N/Si−Oは、0.13〜4.0がより好ましく、0.15〜3.0がさらに好ましい。
【0019】
Si−C/Si−Hが0.5以上であれば、欠陥発光材料に対するマトリックスの相溶性が高くなり、また、水素の発生量も抑えられるため、欠陥発光材料とマトリックスとの間に空孔が形成されにくく、欠陥発光材料がマトリックスによって隙間なく保護される。そのため、欠陥発光材料が酸化されにくい。Si−C/Si−Hが10以下であれば、欠陥発光材料とマトリックスの間で化学結合が形成されやすい。Si−C/Si−Hは、0.6〜9.5がより好ましく、0.7〜9.0がさらに好ましい。
【0020】
各結合の吸収強度は、上述した波数(cm−1)に吸収ピークを有する各結合の吸収曲線と、該吸収曲線が立ち上がる2点を結ぶ線(吸収曲線のベースライン)とに囲まれた領域の面積である。
【0021】
(作用効果)
以上説明した本発明の波長変換材料にあっては、欠陥発光材料が分散しているマトリックスがSi−N結合を有するため、酸素が存在した場合、加熱下にSi−N結合がまず酸素と反応する。そのため、欠陥発光材料が酸化されにくい。また、欠陥発光材料が分散しているマトリックスがSi−C結合を有するため、欠陥発光材料に対するマトリックスの相溶性が高くなり、欠陥発光材料とマトリックスとの間に空孔が形成されにくい。そのため、欠陥発光材料がマトリックスによって隙間なく保護され、欠陥発光材料が酸化されにくい。そして、加熱下に欠陥発光材料が酸化されにくいため、波長変換機能の低下が抑えられる、すなわち耐熱性に優れる。
【0022】
<波長変換機能付き基材>
本発明の波長変換機能付き基材は、本発明の波長変換材料からなる波長変換膜を、基材の表面に有するものである。
図1は、本発明の波長変換機能付き基材の一例を示す断面図である。波長変換機能付き基材1は、基材10と、基材10の表面に形成された波長変換材料からなる波長変換膜12とを有する。
【0023】
(基材)
基材の材料としては、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、紙等が挙げられる。
基材としては、通常、波長変換機能付き基材には光透過性が要求されることから、透明基材が好ましく、ガラス板が特に好ましい。ガラス板の材料としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。
基材の上に欠陥発光材料を含有する膜を形成することが好ましいが、欠陥発光材料が基材中に分散していてもよい。
【0024】
(波長変換膜)
波長変換膜は、欠陥発光材料がマトリックス中に分散してなる膜である。
波長変換膜としては、マトリックスのSi−N/Si−OやSi−C/Si−Hを上述の範囲内に制御しやすい点から、欠陥発光材料と有機ポリシラザンとを含むコーティング液を、基材の表面に塗布し、乾燥してなる膜であることが好ましい。
【0025】
波長変換膜の厚さは、10nm〜10μmが好ましく、50nm〜5μmがより好ましい。波長変換膜の厚さが10nm以上であれば、波長変換の効果が充分に発揮される。波長変換膜の厚さが10μm以下であれば、クラックを生じにくいため波長変換の効果が得られやすい。
波長変換膜の厚さは、基材表面に波長変換膜が形成された物品を活断して得られる断面を走査型電子顕微鏡によって観察することによって計測することが可能である。
【0026】
(コーティング液)
コーティング液は、欠陥発光材料および有機ポリシラザンを含むものであり、コーティング液の取扱性の点から、液状媒体をさらに含むものが好ましい。コーティング液は、さらに各種添加剤(硬化剤、分散剤、各種ナノ粒子等)を含んでいてもよい。
【0027】
有機ポリシラザンとは、末端に有機基を有するポリシラザンであり、末端が水素原子であるペルヒドロポリシラザン(無機ポリシラザン)とは明確に区別される。
有機ポリシラザンとしては、欠陥発光材料を酸化させにくいマトリックスを形成しやすい点から、Siに結合する末端官能基として−CH基または−(CHNH基を有するものが好ましい。
【0028】
液状媒体としては、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)、ケトン(メチルエチルケトン等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等)、芳香族化合物(トルエン、キシレン等)、水等が挙げられる。液状媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
コーティング液の固形分濃度(コーティング液中の欠陥発光材料および有機ポリシラザンの合計の濃度)は、コーティング液の取扱性の点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0030】
欠陥発光材料の割合は、コーティング液の固形分(コーティング液中の欠陥発光材料および有機ポリシラザンの合計)の100質量%のうち、1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。欠陥発光材料の割合が1質量%以上であれば、波長変換機能が充分に発揮される。欠陥発光材料の割合が90質量%以下であれば、欠陥発光材料の酸化を充分に抑えることができる。
【0031】
有機ポリシラザンの割合は、コーティング液の固形分(コーティング液中の欠陥発光材料および有機ポリシラザンの合計)の100質量%のうち、10〜99質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。有機ポリシラザンの割合が10質量%以上であれば、欠陥発光材料の酸化を充分に抑えることができる。有機ポリシラザンの割合が99質量%以下であれば、波長変換機能が充分に発揮される。
【0032】
(波長変換膜の形成)
コーティング液の塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、コンマコート法、リップコート法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スリットコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0033】
コーティング液の乾燥温度は、25〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましい。
コーティング液の乾燥時間は、0.5〜30分が好ましく、1〜10分がより好ましい。
【0034】
(用途)
波長変換機能付き基材の用途としては、太陽電池用カバーガラス、紫外線カットフィルタ、農業用フィルム、光通信用波長変換素子、各種レーザー用波長変換素子等が挙げられる。
波長変換機能付き基材は、耐熱性に優れることから、太陽電池用カバーガラスとして好適である。太陽電池用カバーガラスは、波長変換膜が形成された面もしくは反対側の基材の表面に、反射防止膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、防汚膜等を有していてもよい。
【0035】
(作用効果)
以上説明した本発明の波長変換機能付き基材にあっては、本発明の波長変換材料からなる波長変換膜を基材の表面に有するため、波長変換材機能膜の耐熱性に優れる。
特に、有機ポリシラザンを用いて波長変換材機能膜を形成することによって、以下の理由から、波長変換材機能膜の耐熱性がさらに向上する。
【0036】
無機ポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)は、末端がすべてSi−H結合であるため、反応性が高い。そのため、空気中の酸素や水によって容易に酸化される。また、表面に水酸基を有するような欠陥発光材料を混合すると、すぐに水素を発生して酸化されてしまう。水素の発生量が多いため、欠陥発光材料とマトリックスとの間に空孔が生じやすく、欠陥発光材料を保護する効果が損なわれてしまう。Si−N結合もSi−O結合に変換されやすく、空気中で加熱した場合、200℃以上で大半が酸化ケイ素となる。
一方で、有機ポリシラザンは、末端に有機基を有し、反応性が低く抑えられるため、空気中で比較的安定である。欠陥発光材料と混合しても水素の発生量が低く抑えられるため、マトリックスが欠陥発光材料に密着して保護する効果が得られる。また、空気中で加熱しても300℃以下ではすべてのSi−N結合がSi−O結合に変換されずに酸窒化物として存在する。したがって、有機ポリシラザンを用いることによって、格子欠損を有する酸化されやすい欠陥発光材料に対しても、耐熱性を付与できる。
【0037】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の波長変換機能付き基材からなる太陽電池用カバーガラスを有するものである。太陽電池モジュールの種類としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物、GaAs、CIS、CIGS、CZTS、CdTe、色素増感、有機薄膜、ハイブリッド、薄膜シリコン、球状シリコン、タンデム、多接合、量子ドット等が挙げられる。
【0038】
図2は、本発明の太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。太陽電池モジュール2は、波長変換機能付き基材1からなる太陽電池用カバーガラスと、バックシート20と、これらを貼り合わせる封止材22と、封止材22で封止、固定され、インターコネクタ(図示略)を介して電極(図示略)間が接続された複数の太陽電池素子24とを有するものである。
【0039】
太陽電池用カバーガラス(波長変換機能付き基材1)は、波長変換膜12の耐候性等の点から、波長変換膜12が光入射面とは反対側の面となるように(封止材22側となるように)設けられることが好ましい。
バックシート20、封止材22および太陽電池素子24としては、公知のものを用いればよい。
【0040】
(作用効果)
以上説明した本発明の太陽電池モジュールにあっては、波長変換膜の耐熱性に優れた本発明の波長変換機能付き基材を、太陽電池用カバーガラスとして用いているため、太陽電池用カバーガラスと封止材とを加熱下に圧着する際、波長変換膜中の欠陥発光材料が酸化されにくい。そのため、波長変換膜の波長変換機能が低下しにくく、その結果、発電効率に優れる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
例1〜4は実施例であり、例5〜7は比較例である。
【0042】
(平均一次粒子径)
欠陥発光材料の平均一次粒子径は、微粒子を透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、H−9000)にて観察し、100個の粒子を無作為に選び出し、各微粒子の粒子径を測定し、100個の微粒子の粒子径を平均して、波長変換材料および反射防止材料の平均一次粒子径を求めた。
(波長変換膜の厚さ)
波長変換膜の厚さは、塗膜付きサンプルの切断面について走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S4300)を用いて測定した。
【0043】
(吸収波長)
波長変換膜の吸収波長は、蛍光光度計(日立製作所社製、F−7000)を用いて測定した。
【0044】
(発光波長)
波長変換膜の発光波長は、分光光度計(日立製作所社製、U−4100)を用いて測定した。
【0045】
(発光ピーク強度)
発光ピーク強度は、発光スペクトルから最大ピークにおけるピーク強度を読み取った。
発光ピーク強度の変化率は、下式から求めた。
変化率(%)=(加熱試験前の発光ピーク強度−加熱試験前の発光ピーク強度)/加熱試験前の発光ピーク強度×100。
【0046】
(赤外吸収スペクトル)
波長変換膜の赤外吸収スペクトルは、近赤外分光分析計(横河電機社製、FIR−1000)を用いて測定した。
【0047】
(欠陥発光材料)
欠陥発光材料(1):
エタノールの95.0g、水酸化リチウムの1.4g、酢酸亜鉛2水和物の3.6gを混合し、マイクロ波加熱装置(マイルストーンゼネラル社製、MicroSynth)を用いて80℃にて10分間加熱することによって、格子欠陥を有する酸化亜鉛(ZnO:Zn)粒子の分散液(平均1次粒子径:3.6nm、ZnO固形分:10質量%)を得た。
【0048】
欠陥発光材料(2):
エタノールの95.0g、水酸化リチウムの1.4g、酢酸亜鉛2水和物の3.6gを混合し、マイクロ波加熱装置(マイルストーンゼネラル社製、MicroSYNTH)を用いて60℃にて10分間加熱することによって、格子欠陥を有する酸化亜鉛(ZnO:Zn)粒子の分散液(平均1次粒子径:2.6nm、ZnO固形分:10質量%)を得た。
【0049】
欠陥発光材料(3):
オクタデセンの25g、オレイン酸の2g、酸化カドミウムの0.013gを混合し、オイルバスを用いて300℃に加熱した。続いて、オクタデセンの2g、硫黄の0.0016gの混合液を添加し、250℃にて1時間保持した。得られた溶液にヘキサンとエタノールの混合溶液を添加し、遠心分離をする作業を繰り返し行うことで精製をし、格子欠陥を有する硫化カドミウム(CdS)粒子の分散液(平均1次粒子径:2.5nm、CdS固形分:1.0質量%)を得た。
【0050】
(有機ポリシラザン)
有機ポリシラザン(1):メチルポリシラザン。ジエチルエーテルの250g、ジクロロメチルシランの20gを乾燥窒素ガス雰囲気化で混合し、ドライアイスコンデンサーで冷却しながら乾燥アンモニアガスを4時間バブリングした。得られた懸濁液をろ過することでメチルポリシラザンを得た。
有機ポリシラザン(2):有機ポリシラザン(KiON社製、HTA 1500 Rapid Cure、末端官能基:−(CHNH基)。
有機ポリシラザン(3):有機ポリシラザン(KiON社製、HTA 1500 Slow Cure、末端官能基:−(CHNH基)。
有機ポリシラザン(4):有機ポリシラザン(KiON社製、HTT 1800、末端官能基:−CH=CH基)。
【0051】
(他のマトリックス前駆体)
無機ポリシラザン(5):ペルヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカ NP110−20、固形分:20質量%)。
シリケート加水分解物(6):アルコキシシラン加水分解物(コルコート社製、N−103X、固形分:2質量%)。
【0052】
〔例1〜7〕
表1に示す組成にて、欠陥発光材料、有機ポリシラザン(または他のマトリックス前駆体)、エタノールを混合し、コーティング液を得た。
ガラス板の表面に、回転数:500rpm、時間:20秒間の条件にてコーティング液をスピンコートし、室温で 時間自然乾燥させて、波長変換膜を形成した。波長変換膜の厚さ、吸収波長、発光波長、発光ピーク強度および赤外吸収スペクトルにおける各結合の吸収強度を、表1に示す。
【0053】
波長変換膜が形成されたガラス板を、熱風乾燥炉内に入れ、200℃で30分間加熱し、加熱試験を行った。加熱試験後の波長変換膜の発光波長、発光ピーク強度および発光ピーク強度の変化率を、表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
発光ピーク強度の変化率の結果から、例1〜4の波長変換膜は、耐熱性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の波長変換機能付き基材は、太陽電池用カバーガラス等として有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 波長変換機能付き基材
2 太陽電池モジュール
10 基材
12 波長変換膜
20 バックシート
22 封止材
24 太陽電池素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥発光材料が、Si−N結合、Si−C結合、Si−O結合およびSi−H結合を有するマトリックス中に分散してなる、波長変換材料。
【請求項2】
赤外吸収スペクトルにおけるSi−N結合の吸収強度とSi−O結合の吸収強度との比(Si−N/Si−O)が、0.1〜5である、または
赤外吸収スペクトルにおけるSi−C結合の吸収強度とSi−H結合の吸収強度との比(Si−C/Si−H)が、0.5〜10である、請求項1に記載の波長変換材料。
【請求項3】
欠陥発光材料が、格子欠陥を有する酸化亜鉛または格子欠陥を有する硫化カドミウムである、請求項1または2に記載の波長変換材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の波長変換材料からなる波長変換膜を基材の表面に有する、波長変換機能付き基材。
【請求項5】
波長変換膜が、欠陥発光材料と有機ポリシラザンとを含むコーティング液を、基材の表面に塗布し、乾燥してなる膜である、請求項4に記載の波長変換機能付き基材。
【請求項6】
有機ポリシラザンが、Siに結合する末端官能基として−CH基または−(CHNH基を有するものである、請求項5に記載の波長変換機能付き基材。
【請求項7】
太陽電池用カバーガラスである、請求項5または6に記載の波長変換機能付き基材。
【請求項8】
請求項5または6に記載の波長変換機能付き基材からなる太陽電池用カバーガラスを有する、太陽電池モジュール。
【請求項9】
波長変換膜が光入射面とは反対側の面となるように、太陽電池用カバーガラスが設けられている、請求項8に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−241156(P2012−241156A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114929(P2011−114929)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】