説明

注出口具

【課題】全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成した逆止弁を内部に備える注出口具において、逆止弁のフラップ部の潜り込みを規制して、開封の有無にかかわることなく外気の流入抑制効果をより確実に得ることのできる注出口具を提供する。
【解決手段】注出口具1は、流路を形成する注出部2と注出部2から突出形成される取付部3とを備える。注出部2の流路内には、筒状の基部31と、基部31の上端に接続され、基部31の弁座部に接触して開口を閉鎖する閉位置及び弁座部31aから離間して開口を開放する開位置の間で回動可能なフラップ部32とからなり、弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成された逆止弁30が配置されている。弁座部31aよりも流路の上流側には、フラップ部32の下面に当接してフラップ部32の基部31内への潜り込みを規制する規制突起43が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を形成する注出部と注出部から突出形成される取付部とを備える注出口具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋等の容器の開口部分に取り付けられる注出口具において、内域に形成される流路を通じた容器内への外気の流入を抑制するように構成された注出口具が知られている。たとえば、特許文献1には、注出部内に易破断可能な隔壁を形成し、この隔壁によって注出部内の流路を塞いだ注出口具の構成が開示されている。この特許文献1の注出口具によれば、注出部内に隔壁が存在することによって、注出部の流路を通じた容器内への外気の流入を抑制することができる。なお、この注出口具は開封時に注出部内の隔壁を破断することにより、注出部の流路が開放されて内容物を注出することが可能な状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−87786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の注出口具は、開封前の保管時においては、注出部の流路を通じた容器内への外気の流入を隔壁によって抑制することができるが、隔壁を破断して開封した後においては、容器内への外気流入を抑制することができなくなる。そこで、本発明者らは、開封の有無にかかわらず、容器内への外気流入を抑制することができる注出口具として、注出部の流路内に逆止弁を配置するとともに、注出部から内容物が外部へ注出されるときに流路が開放される構成の注出口具を開発した。ここで、製造の容易性や製造コスト等の観点から、逆止弁は、筒状の基部と、基部の上端開口を閉鎖する閉位置と上端開口を開放する開位置との間で回動可能なフラップ部とからなるスイング型の構成とし、全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成したものを用いることが好ましい。しかしながら、スイング型の逆止弁を上記合成樹脂材料により一体に形成した場合には、次のような問題が生じることがあった。
【0005】
一般的なスイング型の逆止弁においては、基部の上端開口を閉鎖可能とするために、フラップ部が基部の内径よりも大きく形成されている。そのため、基部の上端に向かってフラップ部が押し付けられたとしても、基部の上端縁(弁座部分)にフラップ部が当接するため、フラップ部が基部内へ潜り込むことはない。ところが、逆止弁全体を上記合成樹脂材料により一体に形成した場合には、開閉動を繰り返すなかで、フラップ部が圧縮変形されて上端縁を越えて基部内へ潜り込み、そのまま元に戻らなくなってしまうことがあった。この場合、圧縮変形して歪んだフラップ部と基部との間に生じる隙間から内容物の注出は可能であるものの、その隙間を通じて容器内へ外気が流入可能となるため、逆止弁に基づく外気の流入抑制効果を十分に発揮することができなくなる。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成した逆止弁を内部に備える注出口具において、逆止弁におけるフラップ部の潜り込みを規制して、開封の有無にかかわることなく外気の流入抑制効果をより確実に確保することのできる注出口具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の注出口具は、流路を形成する注出部と、該注出部から突出形成される取付部とを備える注出口具であって、筒状の基部と、該基部に接続され、前記基部の弁座部に接触して前記基部の開口を閉鎖する閉位置及び前記弁座部から離間して前記開口を開放する開位置の間で回動可能なフラップ部とからなり、弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成された逆止弁を、前記注出部の流路内に配置した注出口具において、前記フラップ部の下面に当接して前記フラップ部の潜り込みを規制する規制手段を、前記弁座部よりも前記流路の上流側に設けたことを特徴とする。
【0008】
上記発明では、注出部の流路内にスイング型の逆止弁を配置し、注出口具を取り付けた容器を傾けて逆止弁のフラップ部に内容物の注出圧が作用したときにフラップ部が閉位置から開位置に回動して逆止弁が開いた状態となり、内容物の注出時を除いてはフラップ部が閉位置にあって逆止弁が閉じた状態となるように構成されている。よって、開封の有無にかかわらず、内容物の注出時を除いて閉じた状態にある逆止弁が注出部の流路内に存在することになり、注出部の流路を通じた容器内への外気の流入を逆止弁によって好適に抑制することができる。また、逆止弁について、全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成した構成とすることにより、製造が容易になるとともに、そのコストも低く抑えることができる。
【0009】
また、何らかの力によってフラップ部が基部の弁座部側へ押し付けられて圧縮変形しつつ、弁座部を越えて基部内の流路上流側へ潜り込もうとしても、基部の弁座部よりも流路上流側に設けられた規制手段にフラップ部の下面が当接することによって、フラップ部の潜り込みが規制されるようになっている。よって、全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成した逆止弁を採用した場合にも、フラップ部の潜り込みが好適に抑制されて、閉じた状態にある逆止弁に基づく外気の流入抑制効果をより確実に得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の注出口具は、請求項1に記載の発明において、前記流路内における前記逆止弁の上流側には、前記逆止弁の脱落を防止するための脱落防止部材が配置され、前記脱落防止部材には、前記逆止弁の前記基部の内域へ延びる前記規制手段としての突出部が設けられていることを特徴とする。上記構成によれば、規制手段を逆止弁とは別の部材に設けることとなるため、逆止弁の構成が簡略化される。また、規制手段を逆止弁とは別の材料で形成しやすくもなる。突出部が逆止弁の基部の内域へ延びるように形成されているため、フラップ部の薄肉化が実現できるとともにフラップ部の潜り込みを好適に抑制することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の注出口具は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記注出部は注出上部と注出下部とに分離及び組立可能に構成され、前記逆止弁及び前記規制手段は前記注出上部に配置されていることを特徴とする。上記構成によれば、外気の流入抑制に関する構成を注出上部に集中させることで、注出口具に備えられる他機能と部材を区分することができ、部材管理が容易である。注出口具に備えられる他機能としては、たとえば、内容部が流路から流出することを防止する閉栓機能が挙げられるが、注出部を注出上部と注出下部とに分離及び組立可能とすることで、注出部の多機能化を実現しやすくする。
【0012】
請求項4に記載の注出口具は、請求項3に記載の発明において、前記注出下部には前記流路を塞ぐ閉塞壁が設けられ、前記閉塞壁の外面にガスバリア層を備え、前記閉塞壁の内面に該閉塞壁の少なくとも一部を除去するための引張部を備えていることを特徴とする。上記構成によれば、注出口具の開封前の状態、即ち注出下部における閉塞壁を除去する前の状態において、注出口具を介した容器内への外気侵入を好適に抑制することができる。また、注出口具の開封は、引張部を用いて容易に実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の注出口具によれば、全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成した逆止弁を内部に備える注出口具において、逆止弁のフラップ部の潜り込みを規制して、開封の有無にかかわることなく外気の流入抑制効果をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は注出口具の斜視図、(b)は注出口具の断面図。
【図2】注出下部の下面図。
【図3】(a)は逆止弁の斜視図、(b)は逆止弁の断面図。
【図4】(a)は脱落防止部材の斜視図、(b)は脱落防止部材の断面図。
【図5】開封処理後の注出口具の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の注出口具を図面に基づいて説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、注出口具1は、内域に流路を形成する注出部2を備えている。この注出部2は注出下部10と注出上部20の2つの部材を上下に組み合わせることによって構成されている。
【0016】
注出部2の下側部分を構成する注出下部10は、上端側が開放されるとともに、下端側が閉塞壁11によって塞がれた有底円筒状に形成されている。図1及び図2に示すように、注出下部10の外周面の下部位置には、注出口具1を容器の開口部分に取り付けるための取付部3が突設されている。取付部3は注出下部10から側方に突出する略菱形板状の取付上壁3aと同取付上壁3aの周縁に沿って垂下される取付側壁3bとから形成され、その内部が中空状となっている。そして、中空状の取付部3内には、取付部3先端から注出下部10の外周面へ延びる補強部3cが設けられている。また、注出下部10の外周面の中央位置には環状のフランジ12が設けられるとともに、同外周面の上部位置には、注出上部20との係合部位としての雄螺子13が設けられている。
【0017】
図1(b)及び図2に示すように、注出下部10の下端を塞ぐ閉塞壁11には、閉塞壁11の上面(内面)側から溝を形成することによって形成される薄肉部11aが設けられている。薄肉部11aは、一部が膨出した略円形状(水滴形状)をなす環状に形成されている。そして、薄肉部11aにおける膨出した部分の内側位置には、引張リング14aを上端に有する引張部14が接続されている。引張部14の高さ、即ち引張リング14aの高さ位置は、注出下部10の上端と略同位置又はそれよりも上方位置となるように設定されている。
【0018】
図1(b)に示すように、注出部2の上側部分を構成する注出上部20は、下端側が開放されるとともに、上端側が上壁21によって塞がれた有蓋円筒状に形成されている。注出上部20の上壁21は、その外周位置に平面部22が形成されるとともに、その中央部分に、上方に向かって膨出するドーム状の膨出部23が形成されている。そして、膨出部23の頂点となる中央位置には注出口24が設けられ、膨出部23外面側における注出口24の周囲には、液ダレを防止するための環状の周壁25が立設されている。
【0019】
注出上部20の内周面には注出下部10との係合部位としての雌螺子26が設けられている。また、上壁21の下面(内面)の外周側には、注出下部10の雄螺子13と注出上部20の雌螺子26とを係合させた際に、注出下部10の内周面に接して同内周面を支持する挟持壁27が立設されている。挟持壁27は注出下部10と同一中心の環状をなす環状壁であり、注出下部10の雄螺子13と注出上部20の雌螺子26とを係合させた際に、注出下部10の内周面と引張リング14aの外周面との間に収容されるように、その形成位置が設定されている。
【0020】
また、上壁21における膨出部23の下面(内面)には、注出口24を中心とする環状の支持壁28が立設されている。支持壁28と挟持壁27とは同一中心の環状をなし、支持壁28は挟持壁27の内側に位置している。支持壁28の内周面には二つの段部(第1段部28a、第2段部28b)が形成され、支持壁28は両段部において内周面が先端側に向かって段階的に拡径する形状となっている。そして、支持壁28の内域における第1段部28aと第2段部28bとの間に位置する領域には逆止弁30が取り付けられるとともに、第2段部28bと先端部との間に位置する領域には、逆止弁30の脱落を防止するための脱落防止部材40が取り付けられる。また、支持壁28の内周面における第2段部28bと先端部との間の部位には、脱落防止部材40と係合する係合溝が設けられている。
【0021】
図3(a)及び(b)に示すように、逆止弁30は、内域に流路を形成する筒状の基部31と基部31の上端開口を閉鎖するフラップ部32とからなるスイング型の逆止弁であって、弾性変形可能な軟質の合成樹脂材料(例えば、シリコンゴム)により一体に形成されている。基部31は断面欠円状の流路を内域に形成する円筒部材であり、基部31の外径は注出上部20の支持壁28における第1段部28aと第2段部28bとの間の部位の内径に等しくなっている。
【0022】
フラップ部32は断面欠円状をなすブロック状の蓋部材であり、その上面部分は基部31の流路断面よりも大きく、且つ下面部分は流路断面よりも小さくなるように形成され、その側面は上面側から下面側に向かって徐々に縮径するテーパ状に形成されている。そして、フラップ部32における一側面(欠円の直線部分をなす面)の上部と基部31の上端部分との間に、フラップ部32と基部31とを接続する接続部33が設けられている。
【0023】
この接続部33が基点(ヒンジ)として機能することによって、フラップ部32は基部31の上端開口を閉鎖する閉位置と上端開口を開放する開位置との間で回動動作することができるようになっている。上記閉位置は、基部31の弁座部31a(上端開口縁全体)とフラップ部32とが接触した状態となる位置であり、上記開位置は、接続部33を基点としてフラップ部32が上方に回動して、基部31の弁座部31aから離間した状態となる位置である。また、図3(b)に示すように、閉位置において、フラップ部32の下面は基部31の内域(流路内)に位置している。
【0024】
図4(a)及び(b)に示すように、脱落防止部材40は内域に流路を形成する円環状の部材である。脱落防止部材40の外径は注出上部20の支持壁28における第2段部28bと先端部との間の部位の内径に等しくなっている。脱落防止部材40の外周面には、支持壁28の内周面に設けられた係合溝に係合する係合突部41が設けられている。また、脱落防止部材40の内周部分には、対向する内周面間を接続する架橋壁42が設けられるとともに、架橋壁42の上部中央位置には上方へ向かって延びる規制手段としての規制突起43(突出部)が設けられている。
【0025】
図1(b)に示すように、逆止弁30は、支持壁28の第1段部28aに対して基部31の上端部分を当接させた状態で、支持壁28の内域における第1段部28aと第2段部28bとの間の領域に収容される。一方、脱落防止部材40は、支持壁28の第2段部28b、及び逆止弁30の基部31下端部分に対して、その上面を当接させた状態で、支持壁28の内域における第2段部28bと先端部との間の領域に収容される。このとき、脱落防止部材40の外周面に設けられた係合突部41と支持壁28の内周面に設けられた係合溝とが係合することによって、脱落防止部材40は支持壁28内に固定される。支持壁28内に逆止弁30及び脱落防止部材40が共に収容された状態において、脱落防止部材40に設けられる規制突起43は、逆止弁30の基部31の内域に位置するとともに、その先端が閉位置にあるフラップ部32の下面に当接するようになっている。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すように、注出上部20にはヒンジ51を介してキャップ部50が取り付けられている。キャップ部50はヒンジ51を基点として、上壁21の膨出部23を覆う閉位置と同膨出部23を露出させる開位置との間で回動することが可能になっている。図1(b)に示すように、キャップ部50の上部内面には、キャップ部50を閉位置に位置させたときに注出口24に挿入されて注出口24を塞ぐ挿入突起52が設けられている。なお、符号は省略するが、キャップ部50の内周面及び上壁21の膨出部23の外周面には、互いに係合してキャップ部50を閉じた状態で保持するための突起状の係合部がそれぞれ設けられている。
【0027】
ところで、キャップ部50と注出上部20とを接続するヒンジ51は、キャップ部50の開閉動が繰り返し行われることにより伸びてしまうことがある。ヒンジ51に伸びが生じると、キャップ部50を正しい閉位置に位置させることができなくなり、閉位置においてキャップ部50及び膨出部23の各係合部を係合させてキャップ部50を保持することが困難になる場合がある。そこで、本実施形態では、上壁21の平面部22上面におけるヒンジ51の近傍位置に位置決め突起29を設けている。この位置決め突起29は、キャップ部50を閉位置に位置させたときにキャップ部50の内周面に当接して、キャップ部50の位置を位置決めする。これにより、キャップ部50を正しい閉位置に位置させることができ、閉位置におけるキャップ部50と膨出部23との係合関係を好適に形成させることができる。
【0028】
なお、上述した注出口具1における逆止弁30以外の部位(取付部3、注出下部10、注出上部20、キャップ部50、及び脱落防止部材40)には、スパウト等の注出口具に一般に使用される公知の合成樹脂材料を用いることができる。公知の合成樹脂材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0029】
また、図1(b)に示すように、注出下部10の下面全体にはガスバリア層としてのガスバリアフィルム60が貼り付けられている。ガスバリアフィルム60としては、例えば、アルミニウム箔層、エチレンビニル−アルコール共重合体層、セラミック蒸着フィルム層等をガスバリア層として有する多層樹脂シートを用いることができる。また、ガスバリアフィルム60において、注出下部10の閉塞壁11に形成される薄肉部11aの下側に位置する部位には、薄肉部11aと同形状のハーフカット61が形成されている。なお、図2においてはガスバリアフィルム60の図示を省略している。
【0030】
注出下部10に対するガスバリアフィルム60の貼り付け方法の一例を以下に記載する。ガスバリアフィルム60としては、基材層と、基材層の下面側に積層されたガスバリア層と、基材層の上面側に積層された熱融着層とからなる3層構造の多層樹脂シートを用いる。上記多層樹脂シートは長尺状をなし、ロール状に巻き取られた状態で配置されている。上記ロールから繰り出された多層樹脂シートは、接着工程及び切出工程を経て注出口具1の注出下部10に備えられる。
【0031】
接着工程おいては、まず、熱融着層を下側にした状態で多層樹脂シートを製造ラインへ供給する。また、多層樹脂シートの下方位置には、複数の注出口具1を注出下部10の閉塞壁11側を上に向けた状態で保持することのできる受け治具を配置する。そして、受け治具に複数の注出口具1を保持させた状態とし、シールバー等の熱溶着手段を用いて各注出口具1の下面部分(具体的には、注出下部10の閉塞壁11の下面、及び取付部3における取付側壁3bの下縁)と多層樹脂シートとを同時に熱溶着する。
【0032】
切出工程においては、注出口具1が熱溶着された多層樹脂シートに対して、各注出口具1の取付部3の縁に沿ってレーザーを照射して、外周部分をカットする。さらに、多層樹脂シートにおける、注出下部10の閉塞壁11に設けられた薄肉部11aに対応する位置に出力の小さいレーザーを照射してハーフカット61を形成する。切出工程の後、多層樹脂シートの巻き取り処理を行うことによって、受け治具内には、ハーフカット61を有する多層樹脂シート(ガスバリアフィルム60)が貼り付けられた注出口具1が残る。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の注出口具1は、所定の容器(例えば、樹脂シートにより袋状に形成された包装袋)の開口部に取り付けて使用される。そして、次のような開封処理を行うことによって容器内から内容物を注出可能な状態となる。まず、注出上部20を回転させて注出上部20及びキャップ部50を注出下部10から取り外す。次いで、引張部14の引張リング14aを掴んで上方に引っ張ることにより、閉塞壁11の薄肉部11a及びガスバリアフィルム60のハーフカット61を引き裂いて注出下部10の下端を開口させる。その後、注出上部20及びキャップ部50を注出下部10に取り付けることにより、図5に示す状態となる。
【0034】
上記の注出口具1の開封処理をした後、キャップ部50を開けて容器を傾けると、図5に示すように、容器内の内容物は注出下部10内の流路及び脱落防止部材40内の流路を通過して逆止弁30に達する。そして、内容物の注出圧が逆止弁30のフラップ部32に作用すると、内容物に押圧されてフラップ部32が閉位置から開位置へ回動して逆止弁30は内容物の通過を許容する状態となり、注出口24から内容物が注出される。
【0035】
また、容器を傾けた状態から元の状態に戻すと、逆止弁30のフラップ部32に対する内容物による押圧状態が解消されて、逆止弁30は開位置から閉位置に戻る。このとき、逆止弁30のフラップ部32の下面は基部31の内域にて、脱落防止部材40に設けられた規制突起43の先端に当接して、それ以上の基部31内へのフラップ部32の潜り込みが規制される。そして、フラップ部32に対して内容物の注出圧が作用しない通常の載置状態においては、フラップ部32は基部31内の流路を閉鎖する閉位置に位置するようになる。これにより、開封処理後であっても、内容物の注出時を除いて閉じた状態にある逆止弁30が注出部2の流路内に存在することになり、注出部2の流路を通じた容器内への外気の流入を逆止弁30によって好適に抑制することができる。
【0036】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)注出部2の流路内にスイング型の逆止弁30を配置している。そして、注出口具1を取り付けた容器を傾けて逆止弁30のフラップ部32に内容物の注出圧が作用したときにフラップ部32が閉位置から開位置に回動して逆止弁30が開いた状態となり、内容物の注出時を除いてはフラップ部32が閉位置にあって逆止弁30が閉じた状態となる。上記構成によれば、開封の有無にかかわらず、内容物の注出時を除いて閉じた状態にある逆止弁30が注出部2の流路内に存在することになり、注出部2の流路を通じた容器内への外気の流入を逆止弁30によって好適に抑制することができる。
【0037】
(2)逆止弁30として、弾性変形可能な軟質の合成樹脂材料(例えば、シリコンゴム)により一体に形成したものを用いている。上記構成によれば、製造が容易になるとともに、その製造コストも低く抑えることができる。
【0038】
(3)注出部2(注出上部20)の流路内において、逆止弁30の基部31の弁座部31aよりも流路上流側位置に、フラップ部32の下面に当接してフラップ部32の基部31内への潜り込みを規制する規制突起43を設けている。上記構成によれば、何らかの力によってフラップ部32が基部31の弁座部31a側へ押し付けられて、圧縮変形しつつ弁座部31aを越えて基部31内の流路上流側へ潜り込もうとしても、規制突起43にフラップ部32の下面が当接することによって、フラップ部32の潜り込みが規制される。これにより、全体を弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成した逆止弁30を採用した場合にも、フラップ部32の潜り込みが好適に抑制されて、閉じた状態にある逆止弁30に基づく外気の流入抑制効果をより確実に得ることができる。
【0039】
(4)逆止弁30とは別の部材である脱落防止部材40に対して規制手段としての規制突起43を設けている。上記構成によれば、逆止弁30の構成が簡略化される。また、規制手段を逆止弁30とは別の材料(例えば、逆止弁30を形成する軟質の合成樹脂材料よりも硬い材料)により形成することが可能になる。
【0040】
(5)脱落防止部材40に設けられる規制突起43について、逆止弁30の基部31の内域へ延びるように形成している。上記構成によれば、フラップ部32が薄肉に形成されている場合であっても、フラップ部32の潜り込みを好適に抑制することできる。そのため、フラップ部32の薄肉化が容易に実現できる。
【0041】
(6)注出部2を注出上部20と注出下部10とに分離及び組立可能に構成し、逆止弁30及び規制突起43を備える脱落防止部材40を注出上部20に配置している。上記構成によれば、外気の流入抑制に関する構成である逆止弁30及び規制突起43(脱落防止部材40)を注出上部20に集中して配置することにより、外気の流入抑制に関する構成のない注出下部10側に他機能を付与して注出口具1の多機能化を図ることが容易になる。なお、上記他機能として本実施形態では、内容部が流路から流出することを防止する閉栓機能(閉塞壁11及び引張部14)を注出下部10に付与している。また、注出下部10側に他機能を付与した場合に、機能別に注出上部20と注出下部10とを区分することができ、部材管理が容易である。
【0042】
(7)注出下部10の下端に流路を塞ぐ閉塞壁11を設けるとともに、閉塞壁11の内面に閉塞壁の一部を除去するための引張部14を設けている。そして、閉塞壁11の外面にガスバリア層としてのガスバリアフィルム60を貼り付けている。上記構成によれば、注出口具1の開封前の状態、即ち注出下部10における閉塞壁11を除去する前の状態において、注出口具1を介した容器内への外気の侵入を好適に抑制することができる。また、注出口具1の開封は、引張部14を引っ張ることにより容易に実現できる。
【0043】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、次の変更例を互いに組み合わせ、その組み合わせの構成のように上記実施形態を変更することも可能である。
【0044】
・ 基部31及びフラップ部32を備えるとともに、弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成されるものであれば、逆止弁30の具体的構成は特に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、基部31の上端位置にフラップ部32が設けられていたが、基部31の流路内の中間位置に段差部分を設け、この段差部分を弁座部31aとするフラップ部32を基部31内の中間位置に設ける構成としてもよい。
【0045】
・ 規制手段を設ける位置、即ち規制手段と逆止弁30のフラップ部32の当接位置は、基部31の内域に限られるものではなく、弁座部31aよりも流路の上流側の位置であれば上記実施形態と同様の規制作用を得ることができる。
【0046】
・ 上記実施形態では、規制突起43は逆止弁30のフラップ部32の下面に当接するように配置されていたが、テーパ状に形成される側面に当接するように規制突起43を配置してもよい。なお、特許請求の範囲に記載する「フラップ部の下面」は、フラップ部の上面以外の面、たとえば、テーパ状に形成される側面を含む技術概念である。
【0047】
・ 閉位置において、逆止弁30のフラップ部32の下面に必ずしも規制突起43が当接する必要はない。たとえば、閉位置にあるフラップ部32の下面と規制突起43との間に僅かに隙間を設けておき、フラップ部32が閉位置よりもさらに内側に回動したところでフラップ部32の下面と規制突起43とが当接する構成であってもよい。
【0048】
・ 規制突起43の形状は特に限定されるものではない。逆止弁30のフラップ部32の下面に当接して潜り込みを規制可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
・ 規制手段を脱落防止部材40以外の部材に設けてもよい。たとえば、逆止弁30と脱落防止部材40との間に、規制手段を備える別部材を配置してもよいし、逆止弁30の基部31の流路内周面に規制手段としての突起部分や架橋部分を設けてもよい。逆止弁30に設ける場合は、基部31と一体形成されるようにしてもよいし、ピン等の他部材を配置させるようにしてもよい。
【0049】
・ 脱落防止部材40は、注出上部20からの逆止弁30の脱落を防止するものであるが、逆止弁30の位置ずれを抑制するものであってもよい。
・ 注出部2を三以上の複数の部材に分離及び組立可能に構成してもよいし、一の部材により一体的に形成してもよい。注出部2を一の部材により一体的に形成した場合には、閉塞壁11及び引張部14は省略される。
【0050】
・ 上記実施形態では、注出下部10の下端位置に閉塞壁11を設けていたが、注出下部10の上端位置や流路内における中間位置に閉塞壁11を設ける構成としてもよい。注出下部10の上端位置に設ける場合には、たとえば、注出下部10と注出上部20との接続長を調整することで可能となる。また、注出下部10の流路内に設ける場合には、たとえば、流路内径が小径となる部分と大径となる部分を形成し、その両部分の段差部分に閉塞壁11を設ければよい。
【0051】
・ 閉塞壁11及びガスバリアフィルム60の一方を省略してもよい。また、閉塞壁11及びガスバリアフィルム60の両方を省略してもよい。なお、閉塞壁11を省略した場合には、閉塞壁11に設けられる引張部14も省略される。また、ガスバリアフィルム60のハーフカット61については、これを省略するようにしてもよい。
【0052】
・ 注出上部20の上端開口、下端開口又は注出下部10の上端開口に対して、その開口を封鎖するガスバリアフィルム60を貼り付けた構成としてもよい。この場合、ガスバリアフィルム60は開封処理時に、開封者の手によって除去される。
【0053】
・ 本発明の注出口具1は、樹脂シートにより袋状に形成された包装袋に限らず、紙製の容器等、様々な容器に適用することができる。その場合、取付部3については、容器の形態に合わせて、たとえば、単なるフランジ状にするなど、適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【0054】
・ 上壁21の構成を適宜変更することが可能である。たとえば、支持壁28の第1段部28aよりも上方の内空間が高くなるように調整すれば、フラップ部32の閉位置から開位置へ移行する回動量を大きくすることができる。また、注出上部20の上壁21に設けられる周壁25についても、その配置、高さを変更するが可能である。
【0055】
・ 取付部3の中空状の内部について上記実施形態では、補強部3cを備えたが、この構成を変更してもよい。たとえば、補強部3cの延びる方向を取付上壁3aの短手方向に変更してもよいし、取付部3の内部を中実状にすることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…注出口具、2…注出部、3…取付部、10…注出下部、11…閉塞壁、14…引張部、20…注出上部、30…逆止弁、31…基部、31a…弁座部、32…フラップ部、40…脱落防止部材、43…規制突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を形成する注出部と、該注出部から突出形成される取付部とを備える注出口具であって、
筒状の基部と、該基部に接続され、前記基部の弁座部に接触して前記基部の開口を閉鎖する閉位置及び前記弁座部から離間して前記開口を開放する開位置の間で回動可能なフラップ部とからなり、弾性変形可能な合成樹脂材料により一体に形成された逆止弁を、前記注出部の流路内に配置した注出口具において、
前記フラップ部の下面に当接して前記フラップ部の潜り込みを規制する規制手段を、前記弁座部よりも前記流路の上流側に設けたことを特徴とする注出口具。
【請求項2】
前記流路内における前記逆止弁の上流側には、前記逆止弁の脱落を防止するための脱落防止部材が配置され、前記脱落防止部材には、前記逆止弁の前記基部の内域へ延びる前記規制手段としての突出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の注出口具。
【請求項3】
前記注出部は注出上部と注出下部とに分離及び組立可能に構成され、前記逆止弁及び前記規制手段は前記注出上部に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の注出口具。
【請求項4】
前記注出下部には前記流路を塞ぐ閉塞壁が設けられ、
前記閉塞壁の外面にガスバリア層を備え、前記閉塞壁の内面に該閉塞壁の少なくとも一部を除去するための引張部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の注出口具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−246018(P2012−246018A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119549(P2011−119549)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(391003794)押尾産業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】