説明

注出器及び包装袋の製造方法

【課題】 高い酸化防止効果を有すると共に、所望の量を的確に注出させることが可能な包装袋取付用の注出器を提供する。
【解決手段】 袋本体に取り付けられる注出器1に、前記注出器1の軸方向に沿って移動するスプール20と、外周面が前記注出器1の内周面に固定されて、前記スプール20を前記袋本体側に向けて付勢する付勢部材11とを備え、前記袋本体側から口部6側への流通のみを許可する逆止弁10を内蔵する。そして、前記付勢部材11に、この付勢部材11により付勢された前記スプール20が当接されるシート面19を形成し、前記付勢部材11で前記スプール20を前記シート面19に押圧して注出器1内の流通を遮断する一方、前記袋本体の内圧又は口部側の吸引力が所定値に達した際に、前記付勢部材11の付勢力に抗して前記スプール20を前記シート面19から離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を注出するための注出器及び注出器の取り付けられた包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から袋本体の上部に注出器が取り付けられた注出器付き包装袋が知られている。一般に、このような注出器付き包装袋は、袋本体を手で握り袋本体の内圧を上昇させたり、注出器の口部から内容物を吸引することで内容物を注出器をとおして注出させるようになっている。
【0003】
かかる注出器付き包装袋の中には、所定条件を満足する場合のみに注出器内の流通を許可する弁体を具備するものが開発されるようになってきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、注出器を介して袋本体の内部に空気が浸入することを防止するために、ゴムなどの弾性部材で形成された弁体を注出器の軸方向における袋本体側に取り付けたものが示されている。この弁体は、弾性部材を比較的薄い板状に形成し、その肉厚方向を貫通する十字状の切り込みが形成されている。
【0005】
この弁体によれば、袋本体を握りつぶして袋本体の内圧を上昇させると、切り込みの形成された部分が、内容物に押圧されて口部側に向けてめくられる。これにより流通路が確保される。握りつぶす力を弱めて内圧を降下させると、切り込みの形成された部分は、自己の弾性力で元の状態に復元され、弁体が閉鎖される。特許文献1に記載の注出器付き包装袋は、このような作用を通じて内容物を注出させると共に、袋本体に空気が浸入することを阻止している。
【0006】
一方、特許文献2には、注出器付き包装袋において、注出器の内部に注出器の口部側から袋本体側に流れる方向にのみ流通を許可する逆止弁を設けた発明が示されている。
【0007】
この注出器付き包装袋に設けられた逆止弁は、注出器の軸方向に沿って移動する弁体と、この弁体を袋本体側から口部側に向けて付勢する付勢部材と、注出器の内周面に設けられ、中心部に流通路が形成さた弁座とから構成されている。
【0008】
この逆止弁によれば、外部から注出器内に呼気を流入させると、呼気が、付勢部材の付勢力に抗して弁体を押し下げ、流通路を確保する。これにより袋本体の内部に呼気が流入する。一方、外部から呼気の流入をとめると、付勢部材により付勢された弁体が弁座に当接されて流通路が閉鎖されて注出器内の流通が遮断される。これにより、袋本体に流入した呼気が包装袋の外部に流出することが阻止される。
【0009】
【特許文献1】特開2004−59071号公報
【特許文献2】特開2000−168806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、弁体が弾性部材に切り込みを入れて構成されたものであるため、切り込み部分に関して完全に密閉状態を確保することが困難である。また、開閉を繰り返すうちに切り込みの隙間が大きくなる恐れもある。このため、低い酸化防止効果しか期待することができない。また、この弁体では、ある程度の圧力が弁体に作用しなければ、切り込み部分が開放せず、強めに袋本体を握りつぶす必要がある。そして、弁体が開放する時点では袋本体の内圧がかなり高圧となっているため、弁体が開放すると、内容物が一気に放出されてしまう。
【0011】
また、特許文献1に記載の発明のように、弁体を注出器の口部の裏側に設ける構造では、この弁体を予め注出器に取付け、次いで、この注出器を袋本体に装着させ、その後、これとは逆側の未シール部から内容物を充填するという工程も採用し得る製造工程の一つである。その一方、袋本体の底部側を予め閉鎖しておき、開口された上部から内容物を充填し、その後に、弁体の取り付けられた注出器を開口された上部に取り付けるという工程をも採用することができる。
【0012】
しかし、いずれの場合も、内容物が、これからシールしようとする部分に付着すると、シール不良の原因となってしまう。
【0013】
さらに、弁体が注出器の根元部に取り付けられる構造であるため、予め弁体を注出器に装着した後でなければ注出器を袋本体に取り付けることができない。このため、袋本体の製袋、注出器の取付、内容物の充填、キャップの取付等、工程の組み替えの自由度が小さく、業者間で分担をしてこれらの工程を実施した後に市場に流通させるものには不向きである。
【0014】
これに対し、特許文献2に記載の発明は、袋本体の内部に流体を流入させ、流入された流体が外部に漏れ出さないようにしたものであるため、袋本体の内部に充填された内容物を注出させる包装袋に適用することができない。
【0015】
そこで、本発明では、注出器における気密性を確保して、高い酸化防止効果を有すると共に、所望の量を的確に注出させることが可能な注出器及び効率的に、しかも工程の組み替えを臨機応変に行うことができる注出器付き包装袋を製造するための包装袋の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、このような課題を解決するために、次の解決手段を採用している。
【0017】
第一に、本発明では、内容物が収容される袋本体に取り付けられて、袋本体の内容物を注出させる注出器において、前記注出器には、前記袋本体側から口部側への流通のみを許可する逆止弁が内蔵され、この逆止弁は、前記注出器の軸方向に沿って移動するスプールと、外周面が前記注出器の内周面に固定されて、前記スプールを前記袋本体側に向けて付勢する付勢部材とを具備し、さらに、前記付勢部材には、この付勢部材により付勢された前記スプールが当接されるシート面が形成され、前記付勢部材で前記スプールを前記シート面に押圧し注出器内の流通を遮断する一方、前記袋本体の内圧又は前記口部からの吸引力が所定値に達した際に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記スプールを前記シート面から離間させて、注出器内の前記袋本体側から口部側への流通を許可している注出器を採用した。
【0018】
また、本発明では上記の注出器において、前記付勢部材は、注出器内にこの付勢部材を固定させる固定部と、この固定部から、軸方向に沿って延びるコイルスプリングとを具備し、前記固定部には、その内側に当該付勢部材の軸方向に延びる流通路が形成されると共に、前記シート面は、前記固定部の軸方向に関して前記コイルスプリングの設けられている側とは逆側の端部側に形成されている一方で、前記スプールは、前記固定部の流通路及び前記コイルスプリングの内部に前記シート面側から挿入された軸部と、この軸部の前記固定部側の端部に設けられ、前記シート面に当接するよう形成された弁体とを具備し、前記軸部と前記コイルスプリングとには、互いに係止し合う係止部がそれぞれ形成され、前記スプールは、前記軸部の係止部と前記弁体との間の距離が、前記コイルスプリングの自然長における、このコイルスプリングの係止部と前記シート面との距離より小さく形成され、前記軸部と前記コイルスプリングとが係止された際に、前記スプールが前記コイルスプリングにより常に前記袋本体側に付勢されるように構成した。
【0019】
なお、上記の注出器において、前記付勢部材を、その固定部を口部側に向け、前記注出器内の口部付近に固定するとよい。
【0020】
また、本発明では上記注出器において、前記固定部には、袋本体から取り出されて前記注出器の先端部に残留する内容物が垂れ落ちることを防止する液垂防止部が設けられ、この液垂防止部は、前記注出器先端から突出し、かつ、その内面が前記注出器の軸方向の外側に向かうに連れ末広がりに形成されている注出器を採用することとしている。
【0021】
かかる注出器において、本発明では、前記シート面が前記液垂防止部の内周面に形成され、前記弁体が前記シート面に当接して注出器内の流通を遮断することを特徴とする。
【0022】
更に、本発明では、この注出器の外周部に締め付けてこの注出器の口部を密閉するキャップを設け、このキャップの内面に、このキャップが前記注出器に締め付けられることに伴って、前記液垂防止部の内面に押し当てられてシールするシール部と、前記弁体を前記付勢部材に向けて押圧する押し付け部とを備えた。
【0023】
第二に、本発明では、内容物が収容される袋本体と、この袋本体に取り付けられて、袋本体の内外を連通させる注出器とを備えた包装袋を製造する包装袋の製造方法であって、前記袋本体に形成された開口部から、前記注出器の口部を残して挿入し、前記開口部を密閉して前記袋本体に前記注出器を装着する注出器装着工程と、前記注出器を通して内容物を前記袋本体に充填する内容物充填工程と、前記注出器の内部に前記袋本体の内部側から外部側にのみ前記内容物の流通を許可する逆止弁を取り付ける逆止弁取付工程とを備え、前記逆止弁として、前記注出器の軸方向に沿って移動するスプールと、前記スプールを前記袋本体側に向けて付勢する付勢部材と、を有し、前記付勢部材は外周面に前記注出器の内周面に係合せしめる係合部が形成されている一方で、その内側で前記スプールを移動させるよう構成された逆止弁を採用し、前記逆止弁取付工程では、前記逆止弁を前記注出器の口部から挿入し、前記係合部で前記注出器の内周面に係合させて取り付ける包装袋の製造方法を採用した。
【0024】
そして、本発明では、この包装袋の製造方法において、前記逆止弁は、前記付勢部材が、前記係合部の設けられた、前記注出器の内周面にこの付勢部材を固定させる固定部と、この固定部から、当該付勢部材の軸方向に延びるようにして設けられたコイルスプリングとを具備する一方、前記スプールが、前記固定部の流通路及び前記コイルスプリングの内部に挿入された軸部と、この軸部の一端側に設けられ、前記シート面に当接するよう形成された弁体とを具備する逆止弁であって、前記軸部と前記コイルスプリングとを予め相互に係止せしめて、前記付勢部材と前記スプールとを一体に組み合わせた後に、この逆止弁を前記注出器に取り付けることを特徴する。
【発明の効果】
【0025】
本発明が採用する注出器によれば、第一に、逆止弁が注出器の流通路を遮断するので、袋本体に空気が浸入することを阻止し、内容物の酸化を効果的に防止できる。第二に、逆止弁のスプールが袋本体の内圧に応じて移動するため、袋本体の内圧を握る力などを加減することで変化させれば、逆止弁の開き具合を適宜変化させることができる。これにより、内容物の注出量を容易に調節することができる。
【0026】
また、注出器に逆止弁を内蔵することで、注出器付き包装袋が倒れたとしても、逆止弁が内容物の流出を阻止し、注出器の口部から内容物が外部にこぼれ出すことを防止できる。
【0027】
なお、逆止弁を口部の近傍に設けることで、口部に内容物が残留することを効果的に防止できる。しかし、内容物の残留を完全に防止することは困難である。この点、本発明では、液垂防止部を逆止弁に設けている。この液垂防止部が注出器の口部近傍に残留する内容物の液垂れを確実に阻止する。
【0028】
なお、内容物を注出する方法としては、袋本体を握るなどして内圧を上昇させて押し出す場合と、注出器の口部から吸引するなどして内容物を吸い出す場合とがある。吸引するタイプの包装袋には液垂防止部を設けず、押し出すタイプの包装袋に液垂防止部を設けるとよい。
【0029】
また、本発明が採用する包装袋の製造方法によれば、第一に、製造の容易化を図ることができる。即ち、注出器の口部から逆止弁を挿入して逆止弁を内蔵させることができるので、誰でも容易に製造できる。この際、逆止弁の付勢部材とスプールとを予め組み付けておくことができるので、ワンタッチで逆止弁を注出器の内部に固定させることができる。
【0030】
第二に、内容物の種類に応じて工程を自在に変更させることができる。即ち、従来であれば、予め逆止弁の組み付けられた注出器を袋本体に装着させるだけであったので、注出器を組み付ける前に内容物を充填しておく必要があった。上述のように、この場合には、シールしようとする部分に内容物が付着し、シール不良の原因となっていた。
【0031】
これに対し、本発明の製造方法によれば、内容物を充填する業者に逆止弁を組み付ける前の注出器付き包装袋と、逆止弁とを納入して、この業者が内容物の充填時に、逆止弁を組み付ける等の業務形態をも採用することができる。この場合は、シール不良の発生を防止できる。
【0032】
その一方で、本発明の製造方法によれば、従来から実施されているように、既に逆止弁の組み込まれた注出器を袋本体に装着させ、注出器の装着された上縁と逆側の下縁を開口させておき、この下縁から内容物を充填させることもできる。この場合、注出器の口部をキャップで密閉しておかなくとも、逆止弁が充填された内容物の流出を確実に阻止する。
【0033】
但し、この製造方法では、内容物の充填後に袋本体をシールして密閉するため、内容物がシールしようとする部分に付着することがある。内容物が付着すると、この部分がシール不良の原因となっていた。本発明では、注出器から内容物を充填することが可能であるため、敢えて、このようなシール不良発生の原因となる製造方法を採用する必要が無くなる。
【0034】
このように、業務形態に幅を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態にかかる注出器1を示し、図2は、この注出器1の取り付けられた注出器付き包装袋の斜視図を示していている。
【0037】
図1に示すように、この実施形態では、一般に使用されている自立タイプのスタンディングパウチが使用されている。スタンディングパウチの袋本体30は、対向する一対の平面部31と、これら平面部31の底部にて平面部31に貼り合わされる底面部(不図示)とから構成されている。ただし、この注出器を適用する包装袋は、図2に示すようなスタンディングパウチの形態には限定されず、ガゼットタイプの包装袋、ガゼットタイプのフラットボム型包装袋及び平袋などにも適用できる。
【0038】
各平面部31は矩形状に形成されており、両者の側縁同士が貼り合わされている。また、底面部(不図示)はその周縁が各平面部31の内面と貼り合わされており、当該袋本体30の底部を閉鎖している。この平面部31と底面部(不図示)とを貼り合わせているシール部32は、当該注出器付き包装袋を自立させるための脚部として機能する。
【0039】
一方、袋本体30の上縁33は、注出器1を平面部31同士で挟み込み、平面部31の上端縁同士が貼り合わされて密閉されている。この注出器1は、その上部をなす口部6が袋本体30の上端から突出するようにして、袋本体30の幅方向の中央に装着されている。また、注出器1の口部6には、この口部6を開閉するためのキャップ40が着脱自在に取り付けられている。
【0040】
この注出器1は、略円筒状に形成され、その外周部には軸方向の中央部分に半径方向外側に向けて張り出す台座2が層をなして設けられている。この台座2より上側の部分が口部6であり、台座2の直下にて左右に向けて張り出す部位が、当該注出器1を袋本体30に取り付けるための装着部3である。また、装着部3の更に下方の部位には、袋本体30に充填された内容物を注出器1に導入する導入部4が設けられている。一方、注出器1の内部には、軸方向を貫く流通路5が形成されている。この流通路5は、袋本体30に充填されている内容物を流通させて注出器1の口部6から注出させている。
【0041】
台座2の直下に位置する装着部3は、左右に向けて平坦な張り出し部分3aが形成されている。注出器1は、その外周面自体及びこの張り出し部分3aが袋本体30の上端縁と密着されて、袋本体30に装着される。
【0042】
導入部4はその下端面に主導入口4aが形成されている他、側面部に補助導入口4bが形成されている。内容物は、これら主導入口4a及び補助導入口4bから効果的に注出器1の流通路5に流入される。
【0043】
一方、口部6の外周面には雄ねじ7が形成されている。キャップ40は、この雄ねじ7と螺合することで口部6に締め付けられる。なお、口部の上部6aは、雄ねじ7の形成された部分に較べて絞られて、径が小さく形成されている。
【0044】
そして、注出器1には、当該注出器1の内側に形成された流通路5の開閉を行う逆止弁10が内蔵されている。
【0045】
この逆止弁10は、注出器1の内周面に固定される付勢部材11(図3参照)と、注出器1の軸方向に沿って移動可能に設けられ、付勢部材11より口部6側から袋本体30側へ向けて付勢されるスプール20(図4参照)とから構成されている。付勢部材11は、円筒状に形成され、注出器1の内面にこの付勢部材11を固定せしめる固定部12と、この固定部12と一体に形成され、固定部12から袋本体30側に向けて延びるコイルスプリング15とから構成されている。固定部12の外周面には、周方向に延びる係合爪13が形成されている一方で、注出器1の内周面には口部6の近傍の径の小さく形成された上部6aに、周方向に延びる係合溝8が形成されている。付勢部材11は、係合爪13を係合溝8にはめ込ませることで、固定部12を注出器1の口部6の上部6aに固定される。
【0046】
なお、この図1には、係合爪13を固定部12に、係止溝22を注出器1にそれぞれ設けたものを示しているが、これに限定されるものではなく、固定部12に係止溝22を設け、注出器1に係合爪13を設けても良い。
【0047】
コイルスプリング15は、固定部12の軸方向における袋本体30側の端部から袋本体30側に延びるように設けられている。そして、コイルスプリング15の先端には円盤状のエンドプレート16が一体に形成されて設けられている。このエンドプレート16は、スプール20が係合されるように中心に穴17が形成されている。なお、このエンドプレート16は、内容物を注出させる際に、内容物の受圧部として機能する。
【0048】
さらに、この付勢部材11には、注出器1の口部6から内容物が垂れ落ちることを防止する液垂防止部18が設けられている。液垂防止部18は、コイルスプリング15とは逆側の固定部12の端部にて固定部12と一体に形成されている。この液垂防止部18は、その先端側に向かうに連れ末広がりとなるラッパ状に形成されており、注出器1の口部6から上方に向けて突出するようにして設けられている。さらに、この液垂防止部18の内面18aには、後述するスプール20の弁体24が当接されるシート面19が形成されている。
【0049】
これに対し、スプール20は、付勢部材11の内側に挿入される軸部21と、軸方向の一端に設けられた、円盤状の弁体24とから構成されている。このスプール20は、軸方向について、弁体24が液垂防止部18側に、軸部21の先端が袋本体30側にそれぞれ向けられて配されている。弁体24は、液垂防止部18の内面18aに形成されたシート面19に当接して当該注出器1の流通を遮断する一方で、液垂防止部18の内面から離間された際に内容物を袋本体30側から口部6側への流通路5を開放させている。弁体24の周縁は、裏面が面取りされて斜面25とされており、液垂防止部18の内面と密接するように構成されている。さらに、弁体24の裏面には下方に向けて延びるガイド26が形成されている。このガイド26は、弁体24が、一旦シート面19から離れた後に、再度スプール20がシート面19と当接する際に、スプール20の軸心と、付勢部材11の軸心とを一致させて、弁体24のシート面19に対するすわりを良好にする機能を果たすものである。
【0050】
一方、軸部21は、その先端が矢先のようにやや先細りとなるストッパ23が形成され、このストッパ23の根本には、軸部21の外周面を周方向に沿って延びる係止溝22が形成されている。スプール20は、先端のストッパ23からコイルスプリング15のエンドプレート16に形成された穴17に挿入され、係止溝22がエンドプレート16の穴17が係り合わされる。これにより、これらスプール20と付勢部材11とは一体化される。なお、軸部21の先端に設けられているストッパ23は、矢先のように先細り状に形成されているため、エンドプレート16の穴17に円滑に挿入される。一方、エンドプレート16の穴17が、軸部21の係止溝22にはめ込まれると、当該ストッパ23が穴17から軸部21が抜け出すことを阻止する。
【0051】
このスプール20は、弁体24の下面に形成された斜面25と、係止溝22との間の距離が、付勢部材11の液垂防止部18の内面18aに形成されたシート面19と、スプリングコイルの先端に設けられたエンドプレート16までの距離より短く形成されている。このため、スプール20と付勢部材11とを一体に組み合わされると、スプール20が、付勢部材11のコイルスプリング15を自然長より圧縮させた状態に維持させる。これにより、スプール20の弁体24は、常に液垂防止部18のシート面19に向けて付勢された状態となる。
【0052】
かかる逆止弁10を構成する付勢部材11及びスプール20はいずれも樹脂により成形されている。
【0053】
以上の構成を備えた逆止弁10の内蔵された注出器1は、図5に示すように作用する。図5(a)は、逆止弁10のスプール20が閉じた状態を、図5(b)は、逆止弁10のスプール20が開いた状態をそれぞれ示している。
【0054】
袋本体30の内圧が低い場合、図5(a)に示すように、コイルスプリング15の付勢力よりスプール20は袋本体30側に押し下げられた状態となる。弁体24がシート面19に当接し、注出器1の流通路5を遮断する。これにより、注出器1を介して袋本体30に空気が浸入することを確実に阻止し、内容物の酸化を防止する。
【0055】
一方、袋本体30を握るなどして内圧を上昇させると、図5(b)に示すように、内容物がコイルスプリング15の先端に設けられたエンドプレート16に押し付けられる。さらに内容物は、エンドプレート16を介して、コイルスプリング15の付勢力に抗してスプール20を口部6側へ押し上げる。これにより、スプール20の弁体24が液垂防止部18の内面18aに形成されたシート面19から離間され、注出器1内の流通が確保される。すると、内容物は、逆止弁10、液垂防止部18を通過して注出器1の口部6から外部へ注出される。
【0056】
この場合、袋本体30の内圧に応じてスプール20の移動するストロークが異なってくる。例えば、袋本体30を弱めに握れば、内圧は小さな上昇しかしない。この場合に、内圧の小さな上昇に応じて、スプール20は小さな移動しかせず、弁体24とシート面19との間にはスプール20の移動に応じた小さな隙間のみが形成される。一方、強く握れば、弁体24とシート面19のとの間にはスプール20の移動に応じた大きな隙間が形成される。この作用を利用して、当該注出器付き包装袋から注出させたい内容物の量を適宜調整することができる。
【0057】
なお、内容物を注出させるに当たり、袋本体30の内圧を上昇させる場合を例に説明したが、注出器1の口部から内容物を吸引してもよい。例えば、注出器の口部に口を付け、口部から内容物を吸引してもよい。かかる場合にも、吸引の際の吸引力に応じて逆止弁の開き具合が調整される。
【0058】
このような注出器1は、その口部6が既述のキャップ40により閉鎖される。図1に示すように、キャップ40の上面の内面には、リング状のシール部41と、中心に配された半球状のスプール押さえ42とが設けられている。
【0059】
シール部41は、その径が弁体24より若干大きく形成され、弁体24の周囲を囲むようにして形成されている。このシール部41は、キャップ40を口部6に対して締め付けると、締め付けに伴い液垂防止部18の内面を押圧する。これにより、液垂防止部18をシールして、たとえ内容物が液垂防止部18に残留していた場合でも、これをキャップ40の外に漏らすことを阻止している。一方、スプール押さえ42は、キャップ40の中心部にて上部の内面から下方に向けて突出するようにして設けられている。スプール押さえ42は、キャップ40を注出器1の口部6に締め付けると、締め付けに伴いスプール20の弁体24の上面を液垂防止部18側に向けて押圧する。これにより、弁体24の下面が液垂防止部18のシート面19に押圧され、確実にシールする。
【0060】
以上の注出器1を具備する注出器付き包装袋は、次の工程を経て製造される。
【0061】
第一に、フィルム材を貼り合わせて、上縁33の開口された袋本体30を形成する。袋本体30は、一対の矩形状の平坦な平面用フィルムと、1枚の平坦な底面用フィルムとを用いて形成される。
【0062】
次いで、開口された袋本体30の上縁33に注出器1を装着する。注出器1は、袋本体30の上縁33に装着部3が位置合わせされ、対向する平面部31の上縁33で装着部3が挟み込まれる。その後、平面部31の上縁33同士、並びに平面部31の上縁33と装着部3とが相互に貼り合わされる。
【0063】
注出器1が装着された後、注出器1の口部6から内容物が袋本体30に充填される。
【0064】
その後、スプール20と付勢部材11とが一体に組み合わされた状態で逆止弁10が注出器1の口部6から注出器1の内部に挿入される。この際、付勢部材11のコイルスプリング15及びスプール20の軸部21が袋本体30側に、付勢部材11の固定部12、及びスプール20の弁体24が口部6側にそれぞれ向けて挿入される。注出器1内に挿入された逆止弁10は、付勢部材11の固定部12の外周面に設けられた係合爪13が注出器1の内周面に形成された係合溝8にはめ込まれて注出器1に固定される。逆止弁10が注出器に固定されると付勢部材11を構成する液垂防止部18は注出器1の口部6の外側に突出される(図1参照)。
【0065】
その後、注出器1の口部6にキャップ40が締め付けられて、注出器1の口部6が密閉される。
【0066】
以上、付勢部材に液垂防止部を一体に形成した逆止弁を内蔵した注出器について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
図6は、別の実施形態にかかる逆止弁10を注出器1に内蔵したものを示している。なお、基本構造は、付勢部材11とスプール20とが一体に組み合わされて構成されている点で図1〜図5に示した逆止弁10と同一であり、同一部材については、同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0068】
この注出器1に適用されている逆止弁10は、液垂防止部を具備しないものである。付勢部材11は、円筒状の固定部12及びコイルスプリング15から構成され、コイルスプリング15は、固定部12の軸方向の一端から軸方向に延びるように配されている。そして、この付勢部材11では、コイルスプリング15の設けられた固定部12の端部と逆の上側の端部自体にシート面19が形成されている。即ち、固定部12の上側の端部には、上端面と内部に形成されている流通路5aの内周面との境界部分を、周方向に面取りしてなる斜面が形成されている。この斜面がシート面19である。
【0069】
一方、スプール20を構成する弁体24の下面には、外周縁に沿って面取りがなされて斜面25が形成されている。スプール20は、この斜面25の部分がシート面19と当接して、固定部12内に形成された流通路5を遮断する。
【0070】
この実施形態にかかる逆止弁10も、付勢部材11の固定部12及びスプール20の弁体24が口部側に向けられる一方で、付勢部材11のコイルスプリング15及びスプール20の軸部21が袋本体(不図示)側に向けられて注出器1の内部に隙間無く固定される。逆止弁10が注出器1に内蔵された際、スプール20を構成する弁体24の上面は注出器1の口部6の上端とほぼ面一となるように固定される。
【0071】
この実施形態にかかる注出器1についても、逆止弁10は次のように作用する。袋本体(不図示)に外力が作用せずに内圧が低い場合には、コイルスプリング15の付勢力よりスプール20は、袋本体(不図示)側に押し下げられた状態となる。この状態では、弁体24がシート面19に当接して注出器1の流通路5を遮断し、袋本体(不図示)に空気が浸入することを確実に阻止する。一方、袋本体(不図示)を握るなどして内圧を上昇させると、スプール20はコイルスプリング15の付勢力に抗して押し上げられる。これにより、スプール20の弁体24が固定部12のシート面19から離間され、注出器1内の流通が確保される。なお、この逆止弁10についても、スプール20の移動距離は袋本体(不図示)の内圧に応じて変化する。これを利用して、内容物の注出量を自在に調整することができる。
【0072】
なお、この注出器に関しても、内容物を注出させるに当たり、包装袋の内圧を上昇させる場合のみならず、口部からの吸引して内容物を注出させてもよい。
【0073】
図7〜図11は、付勢部材に液垂防止部を設けていない逆止弁を利用したものの応用例を示している。なお、これらの図に示した注出器についても、その基本構造は、上記のものと同様であるので、重複を避けるために、同一部材については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、包装袋の内圧を上昇させて内容物を注出する場合を例に説明するが、口部から内容物を吸引して注出しても良い。
【0074】
図7に示す注出器1では、逆止弁10は、付勢部材11及びスプール20から構成され、固定部12及び弁体24が口部6側に向けられ、付勢部材11のコイルスプリング15及びスプール20の軸部21が袋本体側に向けられて注出器1に内蔵されている点では、上述の実施形態に係るものと一致している。
【0075】
しかし、この注出器1では、逆止弁10が注出器1の軸方向におけるほぼ中間位置に固定されており、弁体24の上面と口部6との間にある程度のスペースが空けられている。そして、このスペースの部分には、注出ガイド50が取り付けられている。
【0076】
この注出ガイド50は、円筒状の基部51と、円錐状に形成され、軸方向の先端側が先細りに形成されたガイド部52とから構成されている。基部51は、注出器1の口部6からやや奥に入り込んだ位置にて、外周面が注出器1の内周面に密着されている。一方、ガイド部52は、注出器1の口部6から先端が突出するように配されている。この注出ガイド50は絞りとして機能し、内容物を高い圧で注出させることができるようになっている。
【0077】
このような注出ガイド50を備えた注出器1は、例えば、口部6の先端からやや距離の離れた位置にねらいを定めて内容物を注出させるような用途に用いるものに適している。
【0078】
なお、この注出器1の口部6を開閉するキャップ60は、その上面が、注出ガイド50を含めて密閉できるように構成されている。キャップ60の上面の内面は、その中央に円形の凹所61が形成されている。この凹所61は、注出ガイド50を構成するガイド部52の先端を内側に収容する部分であり、その内径がガイド部52の先端の外形より若干大きく形成されている。また、凹所61内における上面の内面は、中心が下側に向けて突出するように球面状に形成されている。
【0079】
さらに、上面の内面には、凹所61の外周縁と面一をなすようにして円環体62が下方に向けて突出するようにして形成されている。この円環体62とキャップ60の内周面との間には、一定の隙間が形成されている。そして、この隙間の部分では、上部の内面に周方向に沿って延びる断面形状が半円状の突条63が形成されている。
【0080】
かかるキャップ60を注出器1の口部6に締め込むと、この図7に示すように、注出器1の口部6が円環体62とキャップ60の内周面との間に形成された隙間に挿入された状態となる。そして、口部6の上端面がこの隙間の部分に形成された突条63と当接し、注出器1とキャップ60内面との間に隙間が形成されることを防止している。さらに、凹所61の内側に形成された球面状の部分が注出ガイド50の先端をシールして、口部6の先端部分に残留する内容物が洩れ出すことを阻止している。
【0081】
この実施形態にかかる注出器1についても、袋本体(不図示)を握りしめる力を加減することで、スプール20の移動距離を適宜変化させて、内容物の注出量を自在に調整することができる。
【0082】
図8は、さらに別の実施形態を示し、キャップ70自体が注出ガイド71の機能を備えたものを示している。
【0083】
この実施形態にかかる注出器1についても、逆止弁10は、付勢部材11の固定部12及びスプール20の弁体24が口部6側に向けられ、付勢部材11のコイルスプリング15及びスプール20の軸部21が袋本体(不図示)側に向けられて注出器1に内蔵されている。また、固定部12に形成されたシート面19と弁体24との間に形成される隙間は、スプール20の移動量に対応して拡大される。なお、スプール20は、袋本体(不図示)の内圧に応じて移動量が定まる。さらに、逆止弁10は、注出器1の軸方向におけるほぼ中間位置に固定されており、弁体24の上面と口部6の上端との間にある程度のスペースが空けられている。
【0084】
一方、キャップ70は、その上面に内容物を注出させるための注出ガイド71が形成されている。注出ガイド71は、円錐状に形成され、キャップ70の上面から更に先方に向けて突出して設けられている。さらに、このキャップ70は、注出ガイド71の先端部に形成されている注出口71aに挿入し、この注出口71aを閉鎖する詰栓75を備えている。
【0085】
詰栓75は円筒状の胴部76と、この胴部76の端面から軸方向に延びる径の小さな挿入部77とから構成されている。詰栓75は、挿入部77が注出ガイド71の注出口71aに挿入されて、注出ガイド71の注出口71aを密閉するように構成されている。この詰栓75の胴部76には、詰栓75と一体に形成された繋ぎ線78が設けられ、その先端が注出器1に結束されている。詰栓75は、この繋ぎ線78で注出器1に接続されているため、注出口71aから取り外された場合でも、当該注出器1から脱落することがない。
【0086】
これに対し、キャップ70の上面の内面には、下方に向けて突出する円環体72が形成されている。このキャップ70についても、円環体72とキャップ70の内周面との間に一定の隙間が形成されている。そして、この隙間の部分において、上面の内面には周方向に延びる突条73が形成されている。この突条73は、注出器1の口部6の上端面と当接し、逆止弁10の外側に残留している内容物がキャップ70の外部に洩れ出すことを防止している。
【0087】
この様な注出器1によれば、注出ガイド71の注出口71aから詰栓75を取り外すだけで、袋本体(不図示)に充填された内容物を注出させることができ便利である。この場合、注出器1内で逆止弁10が注出器1内の流通を遮断しているため、単に、詰栓75を取り外しただけでは内容物は注出されず、袋本体(不図示)を握るなどして袋本体(不図示)の内圧を上昇させる必要がある。即ち、この注出器1では、詰栓75が外れた状態で包装袋が倒れたとしても、これだけで内容物が洩れ出すことはない。このように、この注出器1では、洩れ出しを効果的に防止する機能を発揮する。
【0088】
その一方で、詰栓75が注出口71aから外れたままの状態で放置されていたとしても、逆止弁10が注出器1の流通路を遮断しているため、空気が袋本体(不図示)まで浸入することを防止することができる。
【0089】
この実施形態にかかる注出器1についても、袋本体(不図示)を握りしめる力を加減することで、スプール20の移動距離を適宜変化させて、内容物の注出量を自在に調整することができる。
【0090】
図9は、キャップ80に注出ガイド84を備えた別の実施形態にかかる注出器1を示している。なお、この注出器1については、キャップ80以外の構造は図8に示す注出器1と同様であるため、キャップ80についてのみ説明する。
【0091】
このキャップ80には、上面から上方に突出する円筒部83が形成され、注出ガイド84はこの円筒部83の側面から半径方向外側に向けて延びるように形成されている。円筒部83は、注出器1と同軸状に配置され、その内部が空洞となされている。注出ガイド84は、細長い管状に形成され、内部の流通路84aが円筒部83の内部と連通している。また、円筒部83の側面には、この注出ガイド84の周囲を囲むように形成された円環状の保持部85が形成されている。
【0092】
さらに、このキャップ80は、注出ガイド84の先端を開閉する第2キャップ86を備えている。第2キャップ86は、外形が円錐台に形成され、先細りの上部が閉鎖されている一方で、末広がりの底部が開口されている。そして、この第2キャップ86の上部内面には、その中心に上部から下部に向けて突出する差込部87が形成されている。
【0093】
この第2キャップ86で注出ガイド84を閉鎖する際には、第2キャップ86の裾部分を、円筒部83の側面に形成された保持部85の外周面に被せると共に、差込部87を注出ガイド84の先端に差し込んで行う。
【0094】
この図9に示す注出器1を包装袋に適用した場合、包装袋を逆さまにすることなく、全体を横たえるだけで内容物を注出させることができる。なお、この注出器1に内蔵された逆止弁10も、袋本体(不図示)の内圧に対応してスプール20の移動する距離が変化するため、多くの内容物を注出させるときは強めに袋本体(不図示)を握り、少なめに内容物を注出させるときには弱めに袋本体(不図示)を握ればよい。
【0095】
また、第2キャップ86を閉めずに放置した場合でも、逆止弁10が注出器1の流通路5を遮断しているので、袋本体(不図示)に空気が浸入することを阻止し、内容物の酸化を効果的に防止することができる。
【0096】
図10は、更に別の実施形態にかかる注出器を示している。
【0097】
なお、図6〜図10に示した注出器に内蔵された逆止弁についても、付勢部材及びスプールが樹脂で成型されている。また、逆止弁を注出器の内部に固定する手段として、固定部の外周面に係合爪を、注出器の内周面に係合溝を形成したものを示しているが、これに限定されるものではなく、注出器の内周面に係合爪を固定部の外周面に係合溝を形成しても良い。
【0098】
この図10に示す注出器1に内蔵された逆止弁10は、付勢部材11とスプール20から構成され、付勢部材11が注出器1の軸方向における中央部分で注出器1の内部に固定されて取り付けられている。
【0099】
付勢部材11は、円筒状の固定部12とこの固定部12の軸方向の一端から軸方向に延びるコイルスプリング15とから構成されている。そして、固定部12の外周面には係合爪13が設けられ、この係合爪13が注出器1の内周面に形成された係合溝8にと係合されて、当該付勢部材11が注出器1に固定される。また、固定部12の軸方向において、コイルスプリング15の逆側は、スプール20が当接されるシート面19が形成されている。このシート面19は、固定部12の端面と固定部12内の流通路との境界部分を全周に渡り斜めに面取りして形成されている。
【0100】
一方、コイルスプリング15は、固定部12の軸方向における袋本体(不図示)側の端部から袋本体(不図示)側に延びるように設けられている。そして、コイルスプリング15の先端にはエンドプレート16が一体に形成されて設けられている。また、このエンドプレート16の中心には、スプール20が係合されるように穴17が形成されている。
【0101】
これに対し、スプール20は、付勢部材11の内部に挿入される棒状の軸部21と、この軸部21の一端に形成された円盤状の弁体24とを備えている。軸部21は、その先端に係止溝22が外周面に形成され、この係止溝22がエンドプレート16に形成された穴17にはめ込まれるように構成されている。一方、弁体24の周縁には、裏面を面取りしてなる斜面25が形成されており、シート面19と密接するように構成されている。
【0102】
さらに、このスプール20は、弁体24の上面側に戻入部90が設けられている。この戻入部90は、弁体24の上面から上方に延びる支柱91と、支柱91の上部に形成され、注出器1の口部6から若干突出するように配された頭部92とから構成されている。この頭部92は、図11に示すように、外観が円錐台に形成され、その外周面には上下に延びる複数の突起93が全周に形成されている。この頭部92は、液体の表面張力を利用して、注出器1の口部6に残留する内容物を注出器1の内部へ戻し入れている。即ち、頭部92の外周面に形成された突起93同士の間の谷部が液体の誘導路として機能し、残留する内容物を注出器1の内部に戻し入れている。
【0103】
なお、この注出器1についても、注出器1に締め付けて注出器1の口部6を開閉するキャップ100が設けられている。このキャップ100には、その上部の内面に戻入部90の頭部92を内部に収納する収納部101が形成されている。収納部101は、キャップ100の上部の内面について、その中央部分を円形に窪ませて形成した部位である。このキャップ100は、当該収納部101が形成されているため、通常のキャップよりも高く形成されている。なお、収納部101の内側には、上部の内面を球面状に形成したスプール押さえ101aが設けられており、キャップ100を締め付けた際に、戻入部90の頭部92を上から押圧し、弁体24をシート面19に押し付けている。
【0104】
以上の構成を備えた注出器1を包装袋に適用すれば、袋本体(不図示)の内部に充填された内容物の注出量を適宜調整して注出させることができると共に、内容物の酸化を効果的に防止できる。即ち、この注出器1に内蔵された逆止弁10も、袋本体(不図示)の内圧に対応してスプール20の移動する距離が変化するため、多くの内容物を注出させるときは強めに袋本体(不図示)を握り、少なめに内容物を注出させるときには弱めに袋本体(不図示)を握ればよい。そして、注出後に注出器1の口部6付近に残留した内容物は、戻入部90の頭部92に形成された凹凸の影響を受けて、内容物の表面張力の作用により注出器1の内部にも戻される。
【0105】
また、キャップを閉めずに放置した場合でも、逆止弁10が注出器1の流通路5を遮断しているので、袋本体(不図示)に空気が浸入することを阻止し、内容物の酸化を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態にかかる注出器の縦断面図。
【図2】図1の注出器を適用したスタンディングパウチの斜視図。
【図3】付勢部材の斜視図。
【図4】スプールの斜視図。
【図5】逆止弁の開閉する様子を示す図。
【図6】液垂防止部を有しない弁体を備えた注出器の一実施形態を示す縦断面図。
【図7】注出ガイドを備えた注出器の一実施形態を示す縦断面図。
【図8】キャップに注出ガイドを備えた注出器の一実施形態を示す縦断面図。
【図9】図8の注出器とは別の態様で、キャップに注出ガイドを備えた注出器の縦断面図。
【図10】戻入部を設けた逆止弁を内蔵した注出器の一実施形態を示す縦断面図。
【図11】図10に示す戻入部を構成する頭部の斜視図。
【符号の説明】
【0107】
1・・・・注出器
5・・・・流通路
6・・・・口部
8・・・・係合溝
10・・・逆止弁
11・・・付勢部材
12・・・固定部
13・・・係合爪
15・・・コイルスプリング
18・・・液垂防止部
19・・・シート面
20・・・スプール
21・・・軸部
24・・・弁体
25・・・斜面
30・・・袋本体
40・・・キャップ
41・・・シール部
50・・・注出ガイド
60・・・キャップ
61・・・凹所
62・・・円環体
63・・・突条
70・・・キャップ
71・・・注出ガイド
71a・・注出口
72・・・円環体
73・・・突条
75・・・詰栓
78・・・繋ぎ線
80・・・キャップ
83・・・円筒部
84・・・注出ガイド
85・・・保持部
86・・・第2キャップ
87・・・差込部
90・・・戻入部
91・・・支柱
92・・・頭部
93・・・突起
100・・キャップ
101・・収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される袋本体に取り付けられて、袋本体の内容物を注出させる注出器において、
前記注出器には、前記袋本体側から口部側への流通のみを許可する逆止弁が内蔵され、
この逆止弁は、前記注出器の軸方向に沿って移動するスプールと、外周面が前記注出器の内周面に固定されて、前記スプールを前記袋本体側に向けて付勢する付勢部材と、を具備し、
さらに、前記付勢部材には、この付勢部材により付勢された前記スプールが当接されるシート面が形成され、
前記付勢部材で前記スプールを前記シート面に押圧し注出器内の流通を遮断する一方、前記袋本体の内圧又は前記口部からの吸引力が所定値に達した際に、前記付勢部材の付勢力に抗して前記スプールを前記シート面から離間させて、注出器内の前記袋本体側から口部側への流通を許可していることを特徴とする注出器。
【請求項2】
前記付勢部材は、注出器内にこの付勢部材を固定させる固定部と、この固定部から、軸方向に沿って延びるコイルスプリングとを具備し、
前記固定部には、その内側に当該付勢部材の軸方向に延びる流通路が形成されると共に、前記シート面は、前記固定部の軸方向に関して前記コイルスプリングの設けられている側とは逆側の端部側に形成されている一方で、
前記スプールは、前記固定部の流通路及び前記コイルスプリングの内部に前記シート面側から挿入された軸部と、この軸部の前記固定部側の端部に設けられ、前記シート面に当接するよう形成された弁体とを具備し、
前記軸部と前記コイルスプリングとには、互いに係止し合う係止部がそれぞれ形成され、前記スプールは、前記軸部の係止部と前記弁体との間の距離が、前記コイルスプリングの自然長における、このコイルスプリングの係止部と前記シート面との距離より小さく形成され、
前記軸部と前記コイルスプリングとが係止された際に、前記スプールが前記コイルスプリングにより常に前記袋本体側に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の注出器。
【請求項3】
前記付勢部材は、その固定部が口部側に向けられて、前記注出器内の口部付近に固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の注出器。
【請求項4】
前記固定部には、袋本体から取り出されて前記注出器の先端部に残留する内容物が垂れ落ちることを防止する液垂防止部が設けられ、
この液垂防止部は、前記注出器先端から突出し、かつ、その内面が前記注出器の軸方向の外側に向かうに連れ末広がりに形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の注出器。
【請求項5】
前記シート面が前記液垂防止部の内周面に形成され、前記弁体が前記シート面に当接して注出器内の流通を遮断することを特徴とする請求項4に記載の注出器。
【請求項6】
前記注出器には、この注出器の外周部に締め付けてこの注出器の口部を密閉するキャップが設けられ、
このキャップの内面には、このキャップが前記注出器に締め付けられることに伴って、前記液垂防止部の内面に押し当てられてシールするシール部と、前記弁体を前記付勢部材に向けて押圧する押し付け部とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の注出器。
【請求項7】
内容物が収容される袋本体と、この袋本体に取り付けられて、袋本体の内外を連通させる注出器とを備えた包装袋を製造する包装袋の製造方法であって、
前記袋本体に形成された開口部から、前記注出器の口部を残して挿入し、前記開口部を密閉して前記袋本体に前記注出器を装着する注出器装着工程と、
前記注出器を通して内容物を前記袋本体に充填する内容物充填工程と、
前記注出器の内部に前記袋本体の内部側から外部側にのみ前記内容物の流通を許可する逆止弁を取り付ける逆止弁取付工程とを備え、
前記逆止弁として、前記注出器の軸方向に沿って移動するスプールと、前記スプールを前記袋本体側に向けて付勢する付勢部材と、を有し、前記付勢部材は外周面に前記注出器の内周面に係合せしめる係合部が形成されている一方で、その内側で前記スプールを移動させるよう構成された逆止弁を採用し、
前記逆止弁取付工程では、前記逆止弁を前記注出器の口部から挿入し、前記係合部で前記注出器の内周面に係合させて取り付けることを特徴とする包装袋の製造方法。
【請求項8】
前記逆止弁は、前記付勢部材が、前記係合部の設けられた、前記注出器の内周面にこの付勢部材を固定させる固定部と、この固定部から、当該付勢部材の軸方向に延びるようにして設けられたコイルスプリングとを具備する一方、前記スプールが、前記固定部の流通路及び前記コイルスプリングの内部に挿入された軸部と、この軸部の一端側に設けられ、前記シート面に当接するよう形成された弁体とを具備する逆止弁であって、
前記軸部と前記コイルスプリングとを予め相互に係止せしめて、前記付勢部材と前記スプールとを一体に組み合わせた後に、この逆止弁を前記注出器に取り付けることを特徴する請求項7に記載の包装袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−76615(P2006−76615A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262873(P2004−262873)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【出願人】(000234627)シロウマサイエンス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】