説明

洗濯乾燥機

【課題】洗濯時に洗浄力を維持しつつ乾燥時に乾燥ムラが発生するのを防ぐこと。
【解決手段】洗濯兼脱水槽の内壁に複数の凹部54と凸部55を有するカバー53を設け、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって汚れを落とすことができるとともに、乾燥時においては、洗濯物がこの凹凸にひっかかりにくくなり、洗濯物どうしの絡みを抑止し、洗濯物が団子状態になるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯兼脱水槽内の洗濯物を洗濯し、乾燥まで実施する洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯機は、パルセーター(回転翼)と呼ばれる回転翼を回転させて洗濯、乾燥するものであり、この種の洗濯機の構成を図4、図5を参照しながら説明する。
【0003】
図4に示すように、洗濯兼脱水槽2は、その底面部に上面中央部が凸形状の回転翼1を回転自在に配設し、この洗濯兼脱水槽2の外側に水受け槽9を設けている。水受け槽9の底面には、洗濯兼脱水槽2と回転翼1を駆動するモータ5を取り付け、駆動部の切換を行うクラッチ装置(図示せず)を介して、洗濯兼脱水槽2または回転翼1を駆動するよう構成している。また、水受け槽9は外枠4にサスペンション3を介して防振支持している。洗濯兼脱水槽2の上部には、液体を内封した流体バランサー10を固定している。洗濯兼脱水槽2の内壁にはカバー(循環水路)13を固定している。
【0004】
制御装置14は、モータ5、排水弁8、給水弁11などを制御して、洗濯、すすぎ、脱水の一連の行程を逐次制御するものである。
【0005】
また、図5に示すように、カバー13には凹部44と凸部45が設けられている。 上記構成において動作を説明すると、洗濯兼脱水槽2に洗濯物と所定量の洗剤を投入した後、洗濯を開始すると制御装置14により給水弁11を制御して洗濯兼脱水槽2内に所定量の水を給水し、その後制御装置14により、モータ5を制御して回転翼1を駆動する。回転翼1の回転によって洗濯兼脱水槽2内の洗濯物と水とを攪拌し、洗濯物の汚れに作用することとなる。
【0006】
特に、カバー13に設けられた凹部44と凸部45により、洗濯時に回転翼1を回転すると水流により洗濯物がこれら凹凸と接触して洗濯板と同様の効果をもたらし、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって汚れを落とすことができるものである(特許文献1参照)。
【0007】
また、特許文献2のように、循環送風経路にヒータと送風ファンを設けて温風を循環させることにより、洗濯兼脱水槽内の乾燥対象物を乾燥させる洗濯乾燥機が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−59987号公報
【特許文献2】特開2001−129287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の構成の洗濯乾燥機の場合、洗濯兼脱水槽2の中に洗濯物を入れ、機械力を加えて回転翼1の回転で洗濯しようとした場合、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって汚れを落とすことができるものの、乾燥時には、洗濯物がこの凹凸にひっかかるため、洗濯物どうしが徐々に絡み合い、洗濯物どうしが固まった団子状態になることがある。この状態で洗濯兼脱水槽2を回転させて乾燥を行った場合、洗濯物に温風があたらないので乾燥しにくく乾燥ムラが発生するという問題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、洗濯時に洗浄力を維持しつつ乾燥時に乾
燥ムラが発生するのを防ぐことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯乾燥機は、水受け槽内に回転自在に配設した洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を駆動する駆動手段と、前記洗濯兼脱水槽の内底部に回転自在に配した回転翼と、温風供給路を通じて前記洗濯兼脱水槽内に供給される温風を加熱する加熱手段と、前記洗濯兼脱水槽内に温風を供給する送風手段とを備え、前記洗濯兼脱水槽の内壁に複数の凸部と凹部を有するカバーを設け、前記カバーは、前記凸部において略中央部の高さを左右両端部より高くしたことを特徴としている。
【0012】
これにより、前記洗濯兼脱水槽内に入れた洗濯物に前記回転翼などによる機械力を加えて洗濯する場合に、前記洗濯兼脱水槽内に凸部と凹部により構成されたカバーにより、洗濯物がこれら凹凸と接触して洗濯板と同様の効果をもたらし、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって汚れを落とすことができるとともに、乾燥時においては、洗濯物がこの凹凸にひっかかりにくくなり、洗濯物どうしの絡みを抑止し、洗濯物が団子状態になるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗濯機は、洗濯時に洗濯物と凸部と凹部とが擦れあって汚れを落とすことができ、乾燥時においては、洗濯物がこの凹凸にひっかかりにくくなり、洗濯物どうしの絡みを抑止し、洗濯物が団子状態になるのを防止して乾燥ムラが発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1の洗濯乾燥機の縦断面図
【図2】同洗濯乾燥機のカバーの表面図
【図3】同洗濯乾燥機のカバーの断面図
【図4】従来の洗濯機の縦断面図
【図5】従来の洗濯機のカバーの表面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、水受け槽内に回転自在に配設した洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を駆動する駆動手段と、前記洗濯兼脱水槽の内底部に回転自在に配した回転翼と、温風供給路を通じて前記洗濯兼脱水槽内に供給される温風を加熱する加熱手段と、前記洗濯兼脱水槽内に温風を供給する送風手段とを備え、前記洗濯兼脱水槽の内壁に複数の凸部と凹部を有するカバーを設け、前記カバーは、前記凸部において略中央部の高さを左右両端部より高くしたことを特徴としている。
【0016】
これにより、前記洗濯兼脱水槽内に入れた洗濯物に前記回転翼などによる機械力を加えて洗濯する場合に、前記洗濯兼脱水槽内に凸部と凹部により構成されたカバーにより、洗濯物がこれら凹凸と接触して洗濯板と同様の効果をもたらし、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって汚れを落とすことができるとともに、乾燥時においては、洗濯物がこの凹凸にひっかかりにくくなり、洗濯物どうしの絡みを抑止し、洗濯物が団子状態になるのを防止して乾燥ムラが発生するのを防ぐことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機の側断面図を示す図である。図1に示すように、内部に複数のサスペンション17によって弾性的に吊り下げた水受け槽18を設け、脱水時の振動をサスペンション17によって吸収する構成としている。水受け槽18の内部には、洗濯物および乾燥対象物を収容する洗濯兼脱水槽19を中空で2重構造とした洗濯・脱水軸(略垂直軸)を中心に回転可能に支持し、洗濯兼脱水槽19の内底部に洗濯物や乾燥対象物を撹拌する裏面に羽根部を設けたパルセータ(回転翼)21を回転自在に設けている。
【0019】
また、洗濯兼脱水槽19の内部周壁には小孔(図示せず)を多数設けるとともに、上方には流体バランサ22を設けている。パルセータ21はその形状を外周を傾斜面とした鍋型にすることにより、乾燥工程においては、乾燥対象物をパルセータ21の回転による遠心力で傾斜面に沿って上方へと舞い上がりやすくしている。
【0020】
モータ(駆動手段)23は、外槽18の底部に取り付け、洗濯または脱水時に回転力の伝達を洗濯・脱水軸20に切り換えるクラッチ24と洗濯・脱水軸を介して、洗濯兼脱水槽19またはパルセータ21に連結している。
【0021】
洗濯兼脱水槽19の内壁にカバー53を固定し、洗濯兼脱水槽19とこの内壁を上下方向に覆った部材であるところのカバー53との間に循環水路Aを設けている。これは、回パルセータ21が回転した時に、その裏面に設けた羽根部により洗濯水がこの循環水路Aを通って上から降り注ぐための通路となっており、この循環水路Aは複数あっても良く少なくとも1つ設けている。
【0022】
図1に示すように、カバー53は、循環水路Aの数に対応して洗濯兼脱水槽19内に少なくとも1つ設定される。また、図2に示すように、カバー53の表面には、複数の凸部55と凹部54を設ける。
【0023】
この凸部55は、図3に示すように、略中央部の高さを左右両端部より高くしており、中央部から左右両端部に向かっていくにつれ、曲面形状であるカバー53とほぼ同等の面とし凹凸差をなくして凸部を形成しないようにしている。
【0024】
循環ダクト25は、一端を循環路切り替え弁26、伸縮自在の下部蛇腹状ホース27を介して水受け槽18の下部に接続し、他端を乾燥用送風機(送風手段)28の一端に接続している。乾燥用送風機28の他端は、加熱手段であるヒータ29を有する温風供給路30に接続し、上部蛇腹状ホース31を通って、洗濯兼脱水槽19へ繋がり循環する経路を構成している。
【0025】
水受け槽18には、水受け槽18の上面を気密的に覆う中蓋32を設けており、この中蓋32に伸縮自在の上部蛇腹状ホース31からの温風噴出孔33を開口している。また、この中蓋32に開閉蓋34を設け、衣類を出し入れするようにしている。水受け槽18の底部に排水弁35を設けている。
【0026】
冷却用送風機(冷却手段)36は、筐体16の上面に取り付け、筐体16の内部に上方から水受け槽18、循環ダクト25などを冷却するように送風できるよう構成している。
【0027】
上記構成において動作を説明する。洗濯行程から脱水行程までは、洗濯兼脱水槽19に洗濯物を投入して通常の洗濯機の動作により進行する。
【0028】
まず、洗濯時に図示しない給水弁によって水受け槽18ならびに洗濯兼脱水槽19に所定量の水が給水され、何らかの方法で水に洗剤が溶解される。その後、モータ35を駆動
させることによりパルセータ21を回転させ、水流により衣類の汚れを落とす。
【0029】
このとき、カバー53に設けられた複数の凸部55と凹部54に洗濯物が接触して洗濯板と同様の効果をもたらし、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって汚れを落とすことができる。
【0030】
所定時間洗濯工程を行い、排水、洗濯兼脱水槽19を高速回転させて脱水を行った後、すすぎ工程においてもモータ35を駆動させることによりパルセータ21を回転させ、水流により衣類の洗剤成分を水に溶解させる。
【0031】
このとき、カバー53に設けられた複数の凸部55と凹部54に洗濯物が接触して洗濯板と同様の効果をもたらし、洗濯物とこれら凹凸とが擦れあって洗濯物の洗剤成分をより早く水に溶解させることができる。
【0032】
このすすぎ工程を1回もしくは複数回実施し、排水、洗濯兼脱水槽19を高速回転させて最終脱水を行った後、乾燥工程に移り、乾燥用送風機28による送風とヒータ29による発熱により、温風供給路30、上部蛇腹状ホース31を通して洗濯兼脱水槽19内へ温風を送り込む。この温風は、洗濯物の水分を奪った後、洗濯兼脱水槽19から水受け槽18の内側へ出た後、下部蛇腹状ホース27を通過して、循環ダクト25へ至る。この流れを図1では矢印で示している。
【0033】
洗濯物の水分を奪って湿気を含んだ温風が、水受け槽18の内壁や循環ダクト25内を通過しているとき、筐体16の上面に設置した冷却送風機36による外部空気の流入で、水受け槽18や循環ダクト25の外壁は冷却されることになり、その内部では、水分の結露が起こり、湿った温風は除湿されて乾燥用送風機28へ戻る。この循環路で温風を循環させることにより、洗濯兼脱水槽19内の乾燥対象物を乾燥させることができる。結露した水分37は、排水弁35より適宜排出される。
【0034】
この乾燥工程においては、乾燥対象物をパルセータ21の回転による遠心力で傾斜面に沿って上方へと舞い上がりやすくしているが、カバー53の表面には、複数の凸部55と凹部54を設け、この凸部55は、図3に示すように、略中央部の高さを左右両端部より高くしており、中央部から左右両端部に向かっていくにつれ、曲面形状であるカバー53とほぼ同等の面とし凹凸差をなくして凸を形成しないようにしているので、洗濯物が舞い上がったときにも、この凹凸にひっかかりにくくなり、洗濯物どうしの絡みを抑止し、洗濯物が団子状態になるのを防止して乾燥ムラが発生するのを防ぐことができる。
【0035】
なお、本実施の形態では循環水路Aを確保しているが、洗濯兼脱水槽19とカバー53とを密着させ循環水路Aを形成しなくてもよい。
【0036】
また、本実施例では、温風を循環路を通して循環させているが、排気方式としても差し支えはない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように本発明にかかる洗濯機は、洗濯時に洗濯物と凸部と凹部とが擦れあって汚れを落とすことができ、乾燥時においては、洗濯物がこの凹凸にひっかかりにくくなり、洗濯物どうしの絡みを抑止し、洗濯物が団子状態になるのを防止することができるので、洗濯機等の用途に有用である。
【符号の説明】
【0038】
18 水受け槽
19 洗濯兼脱水槽
21 パルセータ(回転翼)
23 モータ(駆動手段)
28 送風手段
29 ヒータ(加熱手段)
53 カバー
54 凹部
55 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水受け槽内に回転自在に配設した洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を駆動する駆動手段と、前記洗濯兼脱水槽の内底部に回転自在に配した回転翼と、温風供給路を通じて前記洗濯兼脱水槽内に供給される温風を加熱する加熱手段と、前記洗濯兼脱水槽内に温風を供給する送風手段とを備え、前記洗濯兼脱水槽の内壁に複数の凸部と凹部を有するカバーを設け、前記カバーは、前記凸部において略中央部の高さを左右両端部より高くしたことを特徴とする洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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