説明

洗濯機

【課題】洗濯機の使用者がメンテナンスをすることなく洗濯用水を軟水化することができる。
【解決手段】洗濯槽4に水を供給する第1給水経路9の途中に軟水化手段12を設け、軟水化手段12は、流路21を挟んで少なくとも1対が対向して設置された陽イオン交換層22と陰イオン交換層23の2層を有するバイポーラ荷電膜20と、バイポーラ荷電膜20を挟んで設置した一対の電極19とから構成されており、これによりバイポーラ荷電膜の陽イオン交換層で硬度成分を軟水化することができる。また、バイポーラ荷電膜の両側に電圧を印加することによって水の解離が行われ、水素イオンと水酸化物イオンが生成し、この水素イオンが、陽イオン交換層にイオン交換された硬度成分と置き換わりバイポーラ荷電膜を再生するので、メンテナンスフリーで洗濯用水を軟水化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯に洗剤による衣類の洗浄性能を向上させる洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類の洗浄性能を向上させるために、イオン交換樹脂を用いて洗濯用の水を軟水化させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
洗剤の洗浄力に大きな影響を及ぼすのは、硬度成分としてのカルシウム、マグネシウムという2価の陽イオンである。これらは、洗剤中の界面活性剤と反応して不溶性の金属せっけんを生成し、洗浄に寄与する界面活性剤量を減少させて洗浄力を低下させる。したがって、このような洗濯用水の硬度成分を除去することで、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。
【0004】
図4は、前記公報に記載された軟水技術を適用した洗濯機の軟水化手段の断面図を示すものである。
【0005】
図4に示すように、硬度成分を除去するための陽イオン交換樹脂31とイオン交換樹脂31を再生するための食塩62を入れる容器60が備えられている。
【0006】
この容器60は、円筒状を成し、その側周面下部に入水口29aが形成され、その側周面中部に吐出口29bが形成され、その側周面上部に塩溶解用注水管60hが形成され、その底面に塩水排出口29cが形成されている。また、この容器60の側周面上端には、凸部60jが形成されており、蓋61は、この凸部60jに嵌合するかたちで固定される。この蓋61には、その天面に空気孔61aが形成されている。この容器60は、後部収納箱17bの底面に塩水排出口29cが箱底面を貫通するよう固定される。
【0007】
この容器60内は、吐出口29bより僅かに上の位置も設けられている隔壁60dにより、上下の第1空間及び第2空間に仕切られている。隔壁60dより上の第1空間は、塩収納空間60aを形成し、隔壁60dより下の第2空間は、二つのメッシュフィルタ29d,29dにより、さらに、上空間29g、中空間29f、下空間29eの三つの空間に仕切られている。二つのメッシュフィルタ29d,29dは、いずれも入水口29aより上方で吐出口29bより下方に設けられている。中空間29fには、イオン交換樹脂31が充填されている。隔壁60dには、塩収納空間60aから上空間に貫通する貫通孔60eが形成されている。この貫通孔60eの下、上空間29g側には逆止弁60fが配され、上空間29gが水で満たされている間、貫通孔60eを塞ぎ、上空間29gから塩収納空間60aに水が流れ込むのを防ぐ。また、貫通孔60eの上、塩収納空間60a側には塩粒流出防止フィルタ60gが配され、塩投入空間60aから塩粒が上空間29gに流出するのを防止する。塩溶解用注水管60hは、その吐出口が、塩収納空間60a内の上部に位置し、斜め下方を向いている。この塩収納空間60aは、一週間分の食塩62、約200g(再生1回に必要な塩29gの7回分)を収納できる容積である。塩収納空間60aは、後部収納箱17bの上面より上に位置し、使用者が蓋61を容易に開け閉めできるようになっていると共に、周囲壁面全部あるいは一部が透明になっており、洗濯毎のイオン交換樹脂の再生で消費される食塩62が洗濯機前面から観察できるようになっている。
【0008】
塩水排出口29cには、先に述べた形態と同様に、チューブ35、ボールバルブ34a、塩水排出チューブ36が接続されている。また、ボールバルブ34aには、連結ロッド34dを介して、塩水排出ソレノイド40が設けられている。これら、ボールバルブ34
aと連結ロッド34dと塩水排出ソレノイド40とで、塩水排出電磁弁39を構成している。
【0009】
以上のような構成の軟水化手段を設けた洗濯機について、その動作を説明する。
【0010】
洗濯槽へ供給される洗濯用水は、容器60内の陽イオン交換樹脂31に通水されることによって、水中のカルシウム、マグネシウムがイオン交換して除去され軟水となって洗濯槽へ供給される。陽イオン交換樹脂31は、イオン交換できる交換容量が決まっている為、処理水量が交換容量以上になると硬度成分がリークしてしまう。このため、処理水量が交換容量を超える前に、陽イオン交換樹脂31を再生する必要がある。陽イオン交換樹脂31はナトリウム型のイオン交換樹脂であるので、再生剤として塩化ナトリウムである食塩62を溶解した食塩水を通水することで再生することができる。したがって、使用者が食塩62を投入して定期的(1週間)に陽イオン交換樹脂31を再生させることで、長期の使用に対しても洗濯用水は軟水化され洗濯機の洗浄性能を維持することができる。
【特許文献1】特開平11−244585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の構成では、陽イオン交換樹脂31はナトリウム型のイオン交換樹脂を使用しており食塩62によって再生していることから、洗濯機の使用者は定期的に洗濯機に食塩62を投入しなければならずメンテナンスが必要になるという課題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、洗濯機の使用者がメンテナンスをすることなく洗濯用水を軟水化することができ、洗濯機の洗浄性能を向上することができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の洗濯機は、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽に水を供給する第1給水経路と、前記第1給水経路途中に軟水化手段を設け、前記軟水化手段は、流路を挟んで少なくとも1対が対向して設置された陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層を有するバイポーラ荷電膜と、前記バイポーラ荷電膜を挟んで設置した一対の電極とから構成されており、前記軟水化手段によって軟水化された水を前記洗濯槽に導入することとしたことにより、バイポーラ荷電膜の陽イオン交換層で原水中の硬度成分のカルシウムイオン、マグネシウムイオンをイオン交換して軟水化することができる。また、バイポーラ荷電膜の両側に電圧を印加することによって陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面で水の解離が効率良く行われ、水素イオンと水酸化物イオンが生成する。この水素イオンが、陽イオン交換層にイオン交換されたカルシウム、マグネシウムと置き換わりバイポーラ荷電膜を再生するので、薬剤を用いずにメンテナンスフリーで洗濯用水を軟水化することができ、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗濯機は、バイポーラ荷電膜の両側に電圧を印加することによって陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面で水の解離が効率良く行ってイオン交換体を再生することができる為、使用者が洗濯機に薬剤を投入するというメンテナンスをすることなく、洗濯用水を軟水化することができ、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽に水を供給する第1給水経路と、前記第1給水経路途中に軟水化手段を設け、前記軟水化手段は、流路を挟んで少なくと
も1対が対向して設置された陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層を有するバイポーラ荷電膜と、前記バイポーラ荷電膜を挟んで設置した一対の電極とから構成されており、前記軟水化手段によって軟水化された水を前記洗濯槽に導入することとしたことにより、バイポーラ荷電膜の陽イオン交換層で原水中の硬度成分のカルシウムイオン、マグネシウムイオンをイオン交換して軟水化することができる。また、バイポーラ荷電膜の両側に電圧を印加することによって陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面で水の解離が効率良く行われ、水素イオンと水酸化物イオンが生成する。この水素イオンが、陽イオン交換層にイオン交換されたカルシウム、マグネシウムと置き換わりバイポーラ荷電膜を再生するので、薬剤を用いずにメンテナンスフリーで洗濯用水を軟水化することができ、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明のバイポーラ荷電膜は、一方の前記バイポーラ荷電膜の陽イオン交換層と他方の前記バイポーラ荷電膜の陰イオン交換層が対向して設置されたことにより、流路を流れる炭酸カルシウム等の硬度成分の陽イオンと陰イオンを電気泳動でそれぞれの極性のイオン交換層に吸着させ、効率良くイオン交換して除去することができる。また、水解離による再生を効率良く行うことができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第1の発明または第2の発明のバイポーラ荷電膜は多孔質体としたことにより、陽イオン交換層及び陰イオン交換層にイオン交換できる硬度成分の交換容量を多くすることができ、軟水化手段の小型化を図ることができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれかひとつの発明において、軟水化する時は陽イオン交換層側の電極に電圧を印加し、バイポーラ荷電膜を再生する時は、陰イオン交換層側の電極に電圧を印加することとしたことにより、軟水化時は、流路中の硬度成分の陽イオン及び陰イオンを極性の対応するイオン交換層に電気泳動して吸着しやすくする為、硬度成分の除去を向上することができる。また、再生時は、印加される電圧の極性が変わるので、陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面中のイオン成分が減少して抵抗が高くなり、ある時点で水の解離が行われる為、効率的に水の解離が行われて膜の再生を行うことができる。
【0019】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれかひとつの発明において、バイポーラ荷電膜を再生する時に生成する濃縮水を排水する排水経路を軟水化手段の出口側に第1給水経路と分岐して設け、分岐部には第1切換え弁を設けて流路を切り換えるようにしたことにより、洗濯時には軟水を洗濯槽へ供給し、再生時には硬度成分の濃縮水を給湯器外部へ排出することができる。
【0020】
第6の発明は、特に、第5の発明において、バイポーラ荷電膜を再生するときは、第1切換え弁により流水を停止して軟水化手段に水を貯留し一定時間電圧を印加して前記バイポーラ荷電膜を再生し、再生後第1切換え弁により排水経路から濃縮水を排水するようにしたことにより、バッチ処理で膜の再生を行うので、再生時に排出される水量を少なくすることができる。
【0021】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれかひとつの発明において、洗濯の洗い工程、すすぎ工程において洗濯槽へ給水していない時に、バイポーラ荷電膜の再生を行うこととしたことにより、再生よって洗濯時の洗濯槽への軟水の給水を妨げることがないので、バイポーラ荷電膜の再生による洗濯の時間的ロスが無くなる。
【0022】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれかひとつの発明において、軟水化手段の上流側に、洗濯槽に給水する第2給水経路を第1給水経路と分岐して設け、分岐部には第2切換え弁を設けて流路を切り換えるようにし、洗濯の洗い工程時に、第2切換え弁により流
路を第1給水経路へ切り換えて軟水化手段で軟水化した水を洗濯槽へ給水し、すすぎ工程時には流路を第2給水経路へ切り換えて原水を前記洗濯槽へ給水することとしたことにより、洗い工程時のみに洗濯槽へ軟水を供給するので、軟水化手段の処理水量を軽減し長期耐久性を確保することができる。
【0023】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれかひとつの発明において、洗濯用洗剤を投入する洗剤ケースを設け、前記洗剤ケースは軟水化手段の下流側に設けることとしたことにより、洗濯槽への給水時に洗剤が軟水化手段へ流入しバイポーラ荷電膜が閉塞したり、膜表面を付着して性能低下することを防止することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1において、洗濯機本体1は、外槽2と、その外槽2内に回転自在に動作する内槽3から成る洗濯槽4を有している。内槽3は、モーター5によって内槽3を回転できるように構成されている。
【0026】
外槽2の下部に排水路6の一端を接続し、排水路6には排水弁7を接続して外槽2内の洗濯水を排水するようにしている。
【0027】
洗濯槽4への洗濯用水の給水は、水道栓(図示せず)と給水弁8を介して第1給水経路9が洗濯槽4に接続されており。給水弁8の開閉によって行われる。
【0028】
内槽3は有底円筒形に形成され、その周面に外槽2内に通じる多数の通水孔が形成され、内周面の複数位置にバッフル10を設けている。内槽3の回転中心に略傾斜方向に回転軸を設け、内槽3の軸心方向を背面側から正面側に向けて上向きに傾斜させて配設している。この回転軸に、外槽2の背面側に取り付けたモータ−5を連結し、内槽3を正転および逆転方向に回転駆動するようにしている。
【0029】
洗濯用衣類の洗濯機への投入は、外槽2の正面側の上向き傾斜面に設けた開口部を蓋11により開閉自在に覆い、この蓋11を開くことにより洗濯物出入口を通して洗濯槽3内に洗濯物を出し入れすることができる。蓋11を上向き傾斜面に設けているため、洗濯物の出し入れは腰を屈めることなく行うことができ、一般には横向きにある開口部から洗濯物を出し入れする洗濯機の作業性の悪さを改善している。
【0030】
第1給水経路9の途中には、軟水化手段12が設けられている。軟水化手段12の出口側には、軟水化手段12を再生する時に生成する濃縮水を排水する排水経路13が第1給水経路9と分岐して設けられ、分岐部には第1切換え弁14を設けて流路を切り換えるように構成されている。排水経路13の終端は排水路6に接続されており、濃縮水は排水路6から洗濯機外部へ排出される。また、洗濯用洗剤を投入する洗剤ケース15は、第1給水経路9の軟水化手段12の下流側に設置されている。
【0031】
さらに、軟水化手段12の上流側には、洗濯槽4に給水する第2給水経路16を第1給水経路9と分岐して設け、分岐部には第2切換え弁17を設けて流路を切り換えるようにしている。
【0032】
次に、軟水化手段12について説明する。
【0033】
図2において、軟水化手段12は、ケーシング18内に1対の電極19が両端に設けら
れている。電極19はチタンに白金がメッキされたものであり、電極の耐消耗性を確保している。電極19の間には、1対のバイポーラ荷電膜20が流路21を挟んで設けられている。バイポーラ荷電膜20は、強酸性のイオン交換基を持つ陽イオン交換層22と強塩基性のイオン交換基を持つ陰イオン交換層23が1枚に張り合わされた2層構造となっている。そして、陽イオン交換層22と陰イオン交換層23が向き合うように設置されている。ここで、陽イオン交換層22は、−SOHを官能基とする強酸性イオン交換基を含み、陰イオン交換層23は、−NROHを官能基とする強塩基性イオン交換基を含む。
【0034】
以上のように構成された洗濯機について、以下その動作について説明する。
【0035】
洗濯機本体1の電源入れて、蓋11を開けて衣類を入れ洗剤ケース15に洗剤を投入して運転を開始すると、洗濯の洗い工程が開始する。
【0036】
始めに、給水弁8が開いて水道水が第1給水経路9を通じて軟水化手段12へ導入される。原水中には硬度成分の炭酸カルシウムがイオン化した状態で、ケーシング18の上部から流入し流路21を流れる。このとき、ケーシング18に設置された電極19には直流電圧が印加され、陽イオン交換層22側の電極19にはプラスの電圧が印加され、陰イオン交換層23側の電極にはマイナスの電圧が印加される。この結果、原水中のカルシウムイオンは陽イオン交換層22へ、炭酸イオンは陰イオン交換層23へ電気泳動して層内に入り込む。そして、カルシウムイオンは、陽イオン交換層22の強酸性イオン交換基の−SOHの水素イオンとイオン交換し、炭酸イオンは、陰イオン交換層23の強塩基性イオン交換基の−NROHの水酸化物イオンとイオン交換する。ここで、バイポーラ荷電膜20は多孔質構造に形成されているので膜表面積が大きく、イオン交換される容量を大きくすることができる。これによって、軟水化手段12の小型化を図ることができる。
【0037】
こうして、流路21中の硬度成分は除去されて軟水化される。そして、軟水化された水は、ケーシング18の下部のから処理水が流出し洗濯槽4内へ給水される。このとき、洗剤ケース15は、軟水化手段12の下流側に設けられているので、洗濯槽4への給水時に洗剤が軟水化手段12へ流入しバイポーラ荷電膜20が閉塞したり、膜表面を付着して性能低下することを防止することができる。
【0038】
洗濯槽4内へ洗剤と軟水が一定量供給された、モーター5により洗濯槽4の内槽3が回転駆動されて洗い行程が開始される。内槽3の回転により、洗濯槽4内に収容された洗濯物は内槽3の内周面に設けられたバッフル10によって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた適当な高さ位置から落下する撹拌動作が繰り返されるので、洗濯物には叩き洗いの作用が及んで洗い工程が行われる。
【0039】
ここで、洗濯槽4内に供給される洗濯用水は、軟水化手段12によって硬度成分が除去されているので、洗剤中の界面活性剤が反応して不溶性の金属せっけんを生成することを防止することができる。したがって、洗浄に寄与する界面活性剤量を減少させて洗浄力を低下させることがないので、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。そして、所要の洗い時間の後、排水弁7が開状態になり汚れた洗濯液が排水路6ら排出され、洗濯槽4の内槽3を高速回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた洗濯液を脱水し、洗い工程が終了する。
【0040】
洗い工程が終了した後、次にすすぎ工程が開始する。給水弁8が開いて給水が始まると第2切換え弁17により、給水経路が第1給水経路9から第2給水経路16に切り換えられ、洗濯槽4にすすぎ水が供給される。そして、洗い工程と同様に、洗濯物は内槽3の回転によりすすがれ洗剤を除去する。そして、内槽3を高速回転させる脱水動作により洗濯物の水分を脱水し、すすぎ工程が終了する。ここで、すすぎ工程では、軟水化手段12を
通過せずにすすぎ水を供給するので、洗濯時の軟水化手段12の処理水量を軽減し長期耐久性を確保することができる。
【0041】
このような洗濯が一定期間行われた後、軟水化手段12は再生モードとなる。
【0042】
再生モードでは、第2切り換え弁17を切り換え、第1給水経路9から軟水化手段12に水道水が給水される。このとき、第1切り換え弁14は閉状態になっており、軟水化手段12のケーシング18内に一定量の水が溜められる。
【0043】
図3に示すように、軟水化手段12において、電極19には軟水化時とは逆方向の電圧が印加される。陰イオン交換層23側にプラスの電圧が印加され、陽イオン交換層22側の電極にはマイナスの電圧が印加される。バイポーラ荷電膜20の両側に電圧を印加すると、陽イオン交換層22と陰イオン交換層23の界面中のイオン成分が減少して抵抗が高くなり、ある時点で水の解離が行われ、水素イオン及び水酸化物イオンが生成する。陽イオン交換層22では、軟水化時にイオン交換されたカルシウムイオンが、生成した水素イオンとイオン交換し再生される。そして、カルシウムイオンは流路21中に放出される。一方、陰イオン交換層23では、軟水化時にイオン交換された炭酸イオンが、生成した水酸化物イオンとイオン交換し再生される。そして、炭酸イオンは流路21中に放出される。
【0044】
このようにして、バイポーラ荷電膜20の両側に軟水化時とは逆極性の電圧を印加することによって、水解離が行われ膜の再生が行われる。ここで、バイポーラ荷電膜20は、陽イオン交換層22と陰イオン交換層23の界面の面積を大きく取ることができるので、水の解離が低電圧で効率的に行われることにより、膜の再生を低い消費電力で行うことができる。
【0045】
一定時間、バイポーラ荷電膜20に電圧を印加して再生した後、第1切換え弁14により流路を排水経路13の方へ切換える。そして、軟水化手段12の流路21中の硬度成分の濃縮水が排水経路13を通じて外部へ排水される。濃縮水が排水された後、第1切換え弁14は再度閉じた状態となる。そして、再び一定量の水が軟水化手段12に導入されて、バイポーラ荷電膜20の再生が行われる。その後、第1切換え弁14により流路が切換えられ、排水経路13を通じて再生後の濃縮水が排出される。このような工程を数回繰り返すことで、軟水化手段12の再生が行われる。
【0046】
このように、バッチ処理で膜の再生を行うので、再生時に排出される水量を少なくすることができる。また、洗濯の洗い工程、すすぎ工程において洗濯槽へ給水していない時に、バイポーラ荷電膜20の再生を行うこととしたことにより、再生よって洗濯時の洗濯槽への軟水の給水を妨げることがないので、バイポーラ荷電膜20の再生による洗濯の時間的ロスが無くなる。
【0047】
以上のように、本実施の形態においては、洗濯物を収容する洗濯槽4と、洗濯槽4に水を供給する第1給水経路9と、第1給水経路9の途中に軟水化手段12を設け、軟水化手段12は、流路21を挟んで少なくとも1対が対向して設置された陽イオン交換層22と陰イオン交換層23の2層を有するバイポーラ荷電膜20と、バイポーラ荷電膜20を挟んで設置した一対の電極19とから構成されており、軟水化手段12によって軟水化された水を前記洗濯槽に導入することとしたことにより、バイポーラ荷電膜の陽イオン交換層で原水中の硬度成分のカルシウムイオン、マグネシウムイオンをイオン交換して軟水化することができる。また、バイポーラ荷電膜の両側に電圧を印加することによって陽イオン交換層と陰イオン交換層の界面で水の解離が効率良く行われ、水素イオンと水酸化物イオンが生成する。この水素イオンが、陽イオン交換層にイオン交換されたカルシウム、マグ
ネシウムと置き換わりバイポーラ荷電膜を再生するので、薬剤を用いずにメンテナンスフリーで洗濯用水を軟水化することができ、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、使用者が洗濯機に再生剤を投入するというメンテナンスをすることなく、洗濯用水を軟水化することができ、洗濯機の洗浄性能を向上することができるため食器洗い乾燥機等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における洗濯機の軟水化手段の採水時の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における洗濯機の軟水化手段の再生時の断面図
【図4】従来の洗濯機の軟水化手段の断面図
【符号の説明】
【0050】
4 洗濯槽
9 第1給水経路
12 軟水化手段
13 排水経路
14 第1切り換え弁
15 洗剤ケース
16 第2給水経路
19 電極
21 流路
22 陽イオン交換層
23 陰イオン交換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽に水を供給する第1給水経路と、前記第1給水経路途中に軟水化手段を設け、前記軟水化手段は、流路を挟んで少なくとも1対が対向して設置された陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層を有するバイポーラ荷電膜と、前記バイポーラ荷電膜を挟んで設置した一対の電極とから構成されており、前記軟水化手段によって軟水化された水を前記洗濯槽に導入することとした洗濯機。
【請求項2】
バイポーラ荷電膜は、一方の前記バイポーラ荷電膜の陽イオン交換層と他方の前記バイポーラ荷電膜の陰イオン交換層が対向して設置された請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
バイポーラ荷電膜は多孔質体である請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
軟水化する時は陽イオン交換層側の電極に電圧を印加し、バイポーラ荷電膜を再生する時は、陰イオン交換層側の電極に電圧を印加することとした請求項1〜3いずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項5】
バイポーラ荷電膜を再生する時に生成する濃縮水を排水する排水経路を軟水化手段の出口側に第1給水経路と分岐して設け、分岐部には第1切換え弁を設けて流路を切り替えるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
バイポーラ荷電膜を再生するときは、第1切換え弁により流水を停止して軟水化手段に水を貯留し一定時間電圧を印加して前記バイポーラ荷電膜を再生し、再生後第1切換え弁により排水経路から濃縮水を排水するようにした請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
洗濯の洗い工程、すすぎ工程において洗濯槽へ給水していない時に、バイポーラ荷電膜の再生を行うこととした請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項8】
軟水化手段の上流側に、洗濯槽に給水する第2給水経路を第1給水経路と分岐して設け、分岐部には第2切換え弁を設けて流路を切り換えるようにし、洗濯の洗い工程時に、第2切換え弁により流路を第1給水経路へ切り換えて軟水化手段で軟水化した水を洗濯槽へ給水し、すすぎ工程時には流路を第2給水経路へ切り換えて原水を前記洗濯槽へ給水することとした請求項1〜7いずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項9】
洗濯用洗剤を投入する洗剤ケースを設け、前記洗剤ケースは軟水化手段の下流側に設けることとした請求項1〜8のいずれか1項に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−194026(P2010−194026A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40814(P2009−40814)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】