説明

洗面台

【課題】洗面台前面の上方に位置する幕板部に使い勝手の優れた収納機能を付加した洗面台を提供する。
【解決手段】洗面台本体1と、この洗面台本体1の上に載置される洗面ボウル2と、洗面台本体前面の上方に位置する幕板3を備え、前記幕板3の裏面側に洗面ボウル下部の空間内に配設され、幕板3とともに前方側へ引き出し可能なスライド式収納部6を設けた洗面台であって、このスライド式収納部6には、底板7と幕板3とこの幕板3と所定の間隔を隔てて立設した背板8により上向きに開放した長溝状の収納用空間部9が形成されている。また、前記背板8は収納部6を閉じた時に洗面ボウル下面の膨出部の下部に位置するように中央部の高さが両側部の高さよりも低く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台前面の上方に位置する幕板部に使い勝手の優れた収納機能を付加した洗面台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗面台として、洗面台本体の上に載置した洗面ボウルと、この洗面ボウルの前方を覆うように洗面台本体の前面の上部に設置した幕板を有し、この幕板より下部の洗面台本体前面を開閉式扉とすることで、幕板後方部を除く洗面台本体内の空間を収納用空間に利用したものが知られている。このように、一般的には幕板後方部の空間部はデッドスペースとなっており、収納用空間としては利用されていなかった。
【0003】
また、洗面台の使用に際して、例えば、化粧品、ヘアピン、ヘアゴム、毛抜き、コンタクトケース、髭剃り、カミソリ等の小物を使用する場合も多く、これらの小物の収納場所がないため不便であるという問題や、紛失しやすいという問題もあった。
一方、前記小物を洗面台本体の下部にある収納空間に片付けることも考えられるが、小物の収納機能がないため収納性が悪く、また場所的にも低位置で奥まっているため使い勝手が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、従来はデッドスペースであった幕板後方部の空間部に収納機能を持たせたものが提案されるようになってきた。
しかしながら、特許文献1のものでは幕板後方部に底板を設けた単なる台状の収納部が形成されるのみであり、奥の小物が取り出しにくい等、小物の収納・整理には適していないという問題があった。また、特許文献2のものは幕板が起立状態から下方に向けて開閉可能に設けられ、この幕板の裏面にトレイが取り付けられている構造であり、奥行きが小さく収納量が少ないという問題があった。また、特許文献1〜2は、いずれも幕板が直線状の平板であることが前提であり、デザイン上の制約を受けるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−143646号公報
【特許文献2】特開2010−115469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、従来はデッドスペースであった幕板後方部の空間部に収納機能を持たせて、化粧品、ヘアピン、ヘアゴム、毛抜き、コンタクトケース、髭剃り、カミソリ等の小物を収納・保管することが可能で、これらの紛失を防止することができ、また十分な収納量があって洗面台の上面部をスッキリと整理することができ、また収納物の視認性がよく優れた使い勝手を発揮し、更には優れたデザイン性も発揮することができる洗面台を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の洗面台は、洗面台本体と、この洗面台本体の上に載置される洗面ボウルと、洗面台本体前面の上方に位置する幕板を備え、前記幕板の裏面側に洗面ボウル下部の空間内に配設され、幕板とともに前方側へ引き出し可能なスライド式収納部を設けた洗面台であって、前記スライド式収納部には、底板と幕板とこの幕板と所定の間隔を隔てて立設した背板により上向きに開放した長溝状の収納用空間部が形成されており、また前記背板は収納部を閉じた時に洗面ボウル下面の膨出部の下部に位置するように中央部の高さが両側部の高さよりも低く形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記スライド式収納部が、幕板の巾いっぱいに形成されているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
また、前記空間部が仕切板によって複数個の小空間部に仕切られているものが好ましく、これを請求項3に係る発明とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、洗面台本体と洗面ボウルと幕板を備え、前記幕板の裏面側に洗面ボウル下部の空間内に配設され、幕板とともに前方側へ引き出し可能なスライド式収納部を設けた洗面台であって、前記スライド式収納部には、底板と幕板とこの幕板と所定の間隔を隔てて立設した背板により上向きに開放した長溝状の収納用空間部が形成されており、また前記背板は収納部を閉じた時に洗面ボウル下面の膨出部の下部に位置するように中央部の高さが両側部の高さよりも低く形成されている構造としたので、背板が幕板側から奥の方に位置する奥行きの深い構造とすることができ、この結果、収納量の大きな収納用空間部を確保することができ、内部に化粧品、ヘアピン、ヘアゴム、毛抜き、コンタクトケース、髭剃り、カミソリ等の小物を大量に収納・保管することが可能で、これらの紛失を的確に防止することが可能となる。また、スライド操作のみで簡単に収納部を引き出すことができ、優れた使い勝手を発揮する。
【0011】
請求項2に係る発明では、前記スライド式収納部が、幕板の巾いっぱいに形成されているものとしたので、より大きな容量の収納用空間部を確保できることとなる。
【0012】
請求項3に係る発明では、前記空間部が仕切板によって複数個の小空間部に仕切られているものとしたので、使い勝手がよく、また視認性にも優れて整理整頓を確実に行えることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の収納部を引き出した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の収納部を閉じた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の収納部を引き出した状態を示す平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】図4において収納部を閉じた状態を示す断面図である。
【図6】本発明の洗面ボウルを取外した状態を示す要部の斜視図である。
【図7】(a)はスライド式収納部の平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明の洗面台の一例を示すものであって、収納部を引き出した状態を示す斜視図、図2は収納部を閉じた状態を示す斜視図、図3は図1の平面図、図4は図3におけるA−A断面図である。
図中、1は洗面台本体、2はこの洗面台本体1の上に載置されるホーロー製の洗面ボウル、3は洗面台本体前面の上方に位置する幕板、4は洗面台本体1の前面にある2枚の開閉扉、5は洗面台本体内に形成された収納用の本体空間であり、以上の構成は従来の洗面台と基本的に同じである。なお、前記洗面ボウル2はホーロー製に限定されるものではなく、人工大理石製や陶器製等のホーロー製以外のものであってもよいことは勿論である。
【0015】
前記幕板3の裏面側には、洗面ボウル下部の空間内に配設され、幕板3とともに前方側へ引き出し可能なスライド式収納部6が設けられている。このスライド式収納部6は、従来はデッドスペースであった幕板3の後方部の空間部を有効利用することで収納機能を付加するものであり、例えば、化粧品、ヘアピン、ヘアゴム、毛抜き、コンタクトケース、髭剃り、カミソリ等の小物の収納場所として利用に供することができる。しかも、前記スライド式収納部6は、洗面台本体1の前面側上方に位置するため、腰をかがめる必要がなく使い勝手に優れており、また視認性にも優れたものである。
図示のものでは、前記スライド式収納部6は前方側へ水平に引き出す構造となっているが、斜め上方あるいは下方に向けて引き出す構造のものであってもよい。
【0016】
前記スライド式収納部6は、底板7と、幕板3と、この幕板3と所定の間隔を隔てて立設した背板8により上向きに開放した長溝状の収納用空間部9が形成された構造となっている。また、前記背板8は収納部6を閉じた時に洗面ボウル2と干渉することがないように中央部の高さが両側部の高さよりも低く形成されている。なお、前記所定の間隔とは、一定巾を設けた平行な間隔のものや、両端部が狭くなった三日月状のものや、巾の大きい部分と小さい部分とが混在しているもの等、任意の間隔で設定できるものである。
また、図示のものでは、前記背板8は収納用空間部9を前方側へ最大限に引き出した際、上から見て洗面ボウル2の前面部とほぼ同一位置となるように幕板3と所定の間隔を隔てて立設されており、見栄えがよい。
【0017】
前記背板8の中央部の高さが両側部の高さと同じように高い場合は、洗面ボウル2の下部膨出部と干渉しないように背板8の奥行きを浅くする必要があり、結果的に収納量が少なくなるという問題がある。これに対し、本発明では背板8の中央部高さを両側部の高さよりも低く形成して、収納部6を閉じた時に洗面ボウル2の下面の膨出部の下部に位置するようにすることで、背板が幕板側から奥の方に位置する奥行きの深い収納部とすることができ、大きな収納量を確保できる構造となっている。
【0018】
上記の点につき、図4、5に基づいて説明する。図4は収納部6を引き出した状態の断面図、図5は収納部6を閉じた状態の断面図を示している。なお、図4、5においては、奥側に位置する仕切板は省略してある(仕切板については後述する)。
図4に示すように、収納部6の奥行き長さをLとすると、本発明では、背板8の中央部の高さを両側部の高さよりも低く形成してあるので、収納部6を閉じた場合、図5に示すように、背板8は奥の方まで押し込むことが可能である。一方、背板8の中央部の高さを両側部の高さと同じにした場合は、洗面ボウル2の下部膨出部との干渉を避けるには、収納部6の奥行き長さをL以下とする必要がある。これに対し、本発明では、奥行き長さL=L+Lとすることができ、Lの長さ分だけ奥行きの深い大きな収納部とすることができることとなる。
【0019】
なお、背板8の中央部の高さを低くする形状としては、曲線状や階段状として両側部から中央部に向けて徐々に低くする形状や、両側部を高くしてそれ以外を凹部状に低くする形状など、任意のものを選択することができる。
実施例のものでは、図6に示すように、両側部の高さは幕板3とほぼ同じであり、それ以外のところは凹部状に低くなっており、しかも該凹部は中央が最も低くなるようなだらかに下がった形状となっている。なお、中央部は背の低い背板8に囲われた浅く奥行きの広い空間となっているので、厚みのない平板状の小物の収納・保管に便利である。
【0020】
また、前記スライド式収納部6は、幕板の巾いっぱいに形成されているので、従来はデッドスペースであった幕板3の後方部の空間部を最大限に有効利用することができることとなる。更には、収納用空間部9の両側部は幕板3と背の高い背板8とにより囲われた深い空間となっているので、高さのある小物の収納・保管に便利である。
【0021】
また、前記収納用空間部9は、仕切板10、10によって複数個の小空間部9a、9a
に仕切られているので、化粧品、ヘアピン、ヘアゴム、毛抜き、コンタクトケース、髭剃り、カミソリ等の小物を区分けできて使い勝手がよく、整理整頓も容易になる。また、前記仕切板10、10は、狭い間隔で設定したり広い間隔で設定したり、あるいは等間隔で設定したり異なる間隔で設定する等、種々のパターンとすることができ、小物の形状等に応じた最適な収納空間を創り出すことができる。しかも、前記仕切板10、10は補強板としての作用も発揮して、変形や割れ等も防止できることとなる。
なお、前記収納用空間部9に適当な位置に溝が設けられており、利用者が使用する小物に応じて仕切板を任意の位置に設ける構造とすることもできる。
【0022】
図7に示すように、前記スライド式収納部6には、両側部において前面から後方側に向けガイド部材11が延設されているとともに、このガイド部材11にはローラ12が装着されている。一方、洗面台本体1の側壁内面にはレール部材(図示せず)が取り付けられており、前記ガイド部材11がレール部材に案内されて前後に摺動自在な構造となっている。なお、このような摺動機構については任意のものを採用できることは勿論である。
また、底板7の後端部にはマグネットラッチ13が備えられており(図5を参照)、スライド式収納部6の開閉操作を節度感のあるものとしている。
【0023】
また本発明では、前記スライド式収納部6が、幕板3の巾いっぱいに形成されているものとしたので、より大きな容量の収納用空間部9を確保することができる。また幕板3は直線状のものでも曲線状のものでもよいので、デザインの巾を拡げることができる。
なお、図示のものでは、前記幕板3が洗面台本体1の巾と同一のものを示しているが、幕板3の巾が洗面台本体1の巾よりも小さいものでもよい。
【0024】
以上のように構成した本発明の洗面台においては、洗面台本体と洗面ボウルと幕板を備えた洗面台であって、前記幕板の裏面側に洗面ボウル下部の空間内に配設され、幕板とともに前方側へ引き出し可能なスライド式収納部を設けた構造であるので、優れた使い勝手を発揮し、また前記収納部内に化粧品、ヘアピン、ヘアゴム、毛抜き、コンタクトケース、髭剃り、カミソリ等の小物を収納・保管して、これらの紛失も確実に防止できることとなる。しかも、前記スライド式収納部を、底板と幕板とこの幕板と所定の間隔を隔てて立設した背板により上向きに開放した長溝状の収納用空間部が形成されており、また前記背板は収納部を閉じた時に洗面ボウル下面の膨出部の下部に位置するように中央部の高さが両側部の高さよりも低く形成されたものとしたので、背板を幕板側から奥深い位置に設けることが可能で、大容量の収納用空間部を確保できることとなる。
【符号の説明】
【0025】
1 洗面台本体
2 洗面ボウル
3 幕板
4 開閉扉
5 本体空間
6 スライド式収納部
7 底板
8 背板
9 収納用空間部
9a 小空間部
10 仕切板
11 ガイド部材
12 ローラ
13 マグネットラッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗面台本体と、この洗面台本体の上に載置される洗面ボウルと、洗面台本体前面の上方に位置する幕板を備え、前記幕板の裏面側に洗面ボウル下部の空間内に配設され、幕板とともに前方側へ引き出し可能なスライド式収納部を設けた洗面台であって、前記スライド式収納部には、底板と幕板とこの幕板と所定の間隔を隔てて立設した背板により上向きに開放した長溝状の収納用空間部が形成されており、また前記背板は収納部を閉じた時に洗面ボウル下面の膨出部の下部に位置するように中央部の高さが両側部の高さよりも低く形成されていることを特徴とする洗面台。
【請求項2】
スライド式収納部が、幕板の巾いっぱいに形成されている請求項1に記載の洗面台。
【請求項3】
収納用空間部が、仕切板によって複数個の小空間部に仕切られている請求項1または2に記載の洗面台。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−249780(P2012−249780A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123955(P2011−123955)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)