説明

活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物

【課題】活性エネルギー線に対して高感度でかつ短時間で硬化すると共にガラス基材への印字に際しての密着性に優れる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の提供。
【解決手段】少なくとも色材、光重合開始剤を含有すると共に、光重合性モノマーとして、窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマー、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、および多官能(メタ)アクリレートをそれぞれ所定の含有割合で含有するものであり、ガラス表面への記録用とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス表面への記録用に適した活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス表面へのインクジェット記録に際しては、ガラスの表面エネルギーが低く、インク組成物がガラス表面に密着し難いという問題があり、従来、ガラス表面にアンカー処理を施した後、その処理面にインクジェット記録することが知られているが(特許文献1)、ガラス表面への直接印字に適したインク組成物の提供が望まれている。
【0003】
特許文献2には、点字等の厚膜印字が可能なインクジェット用インキとして、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤からなる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物が記載され、また、印字基材としてガラス板が例示されているが、実施例としてはプラスチック板への記録が示されているにすぎず、後述する比較例8で示すように、このインクジェット用インキ組成物は通常のインクジェット記録に際しては硬化性に問題があり、ガラス表面への記録に適した組成を記載するものではない。
【0004】
また、特許文献3には、アミド基を有する重合性モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤からなるインク組成物が記載され、また、被印字基材としてガラス板が例示されているが、実施例としてはポリイミド板への記録が示されているにすぎず、後述する比較例6で示すように、多官能(メタ)アクリレートの含有量が多いと、ガラス基板への密着性が悪く、ガラス表面への記録に適した組成を記載するものではない。
【0005】
これまで、ガラス表面への適用に際して、硬化性とガラスへの密着性のいずれにも優れる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−34675号公報
【特許文献2】特開2000−38531号公報
【特許文献3】特開2008−156443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、活性エネルギー線に対して高感度でかつ短時間で硬化すると共に、ガラス表面への密着性に優れる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、少なくとも色材、光重合開始剤を含有すると共に、光重合性モノマーとして、窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマー(以下、ヘテロ環式モノマーという)、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、および多官能(メタ)アクリレートを少なくとも含有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、該インク組成物中に、前記窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーを25質量%〜75質量%、前記水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートを5重量%〜35重量%、多官能(メタ)アクリレートを5重量%〜15重量%の割合で含有し、ガラス表面への記録用であることを特徴とする。
【0009】
インク組成物中に、さらに、脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、芳香族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素単官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0010】
上記の窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーが、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0011】
上記の水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートが、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、水酸基含有芳香族炭化水素(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
上記のインク組成物が、光重合性モノマー以外の分散媒または溶剤を含有しないものであることを特徴とする。
【0013】
上記のインク組成物における40℃での粘度が、5mPa・s〜20mPa・sであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、活性エネルギー線に対して高感度でかつ短時間で硬化すると共にガラス表面への密着性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のインク組成物における光重合性モノマーは、窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマー(以下、ヘテロ環式モノマー)、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、および多官能(メタ)アクリレートである。なお、単官能(メタ)アクリレートとは(メタ)アクリレート基を1分子中に1個有することを意味し、多官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリレート基を2個以上有することを意味する。
【0016】
ヘテロ環式モノマーは、窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環と共にエチレン性不飽和二重結合基としてビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、ヘテロ環としてはモルホリノ環、ラクトン環、ラクタム環、ピロリドン環、フラン環等が例示され、具体的にはN−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、テトラヒドロフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、および下記式で示される環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート
【0017】
【化1】

【0018】
等単独、または組合せて使用でき、インク組成物中に25質量%〜75質量%、好ましくは25質量%〜65質量%である。本発明は、ヘテロ環を置換基として含有することにより、硬化性に優れると共に高い極性と低い収縮率を示すので、ガラス基板への密着性に優れるものとできるものである。ヘテロ環式モノマーの含有量が少ないとガラス基板への密着性が低下するので好ましくない。ただ、光重合性モノマーとしてヘテロ環式モノマー単独を使用しても、ガラス基板への密着性はえられず、後述するように、水酸基を含有する単官能(メタ)アクリレートとの組合せによりガラス表面への密着性を発現する。これは、ヘテロ環式モノマー単独を使用しても、多官能モノマーによる硬化収縮を緩和することができないため、より柔軟性に優れる水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートとの組合せによりガラス基板への密着性が得られるものと考えられる。
【0019】
このような水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、低粘度芳香族モノアクリレートオリゴマー(Sartomer社製 CN131B 、25℃での粘度100mPa・s、水酸基含有)の単独、またはその組合せであり、インク組成物中に、5重量%〜35重量%、好ましくは10重量%〜30重量%含有させるとよい。その含有量が少ないとガラス基板への密着性が低下するので好ましくない。また、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートとして芳香族炭化水素環、脂環式炭化水素環を分子中に有する(メタ)アクリレートは、これらを有しない脂肪族炭化水素基(メタ)アクリレートに比して密着性に優れる。
【0020】
次に、多官能(メタ)アクリレートは、インク組成物の硬化性、塗膜強度の向上を目的として含有させるものであり、例えばイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートの単独、またはその組合せとするとよい。多官能(メタ)アクリレートは、ヘテロ環式モノマーや芳香族単官能(メタ)アクリレートに比べると、硬化時の収縮が大きいためにガラス基材への密着性を阻害してしまうので、インク組成物中、5〜15質量%、好ましくは7〜14質量%の割合で含有させるとよい。
【0021】
本発明のインク組成物における光重合性モノマーとしては、ヘテロ環式モノマー、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートの3種類を必須成分とするが、ガラス基板との密着性を高めることを目的として、さらに脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、芳香族炭化水素環単官能(メタ)アクリレート、脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含有していてもよい。
【0022】
脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートの単独、またはその組合せである。
【0023】
また、芳香族炭化水素単官能(メタ)アクリレートは、例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレートの単独、またはその組合せである。
【0024】
また、脂環式炭化水素単官能(メタ)アクリレートは、例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートの単独、またはその組合せである。
【0025】
芳香族炭化水素環(メタ)アクリレートや脂環式炭化水素単官能(メタ)アクリレートは、脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレートに比してカラス基板への密着性に優れるものとできる。これらのモノマーを含有させる場合には、インク組成物中で0重量%〜40質量%である。
【0026】
顔料としては、従来の油性インク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料を用いることができる。顔料としてはカーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、又は金属錯体顔料等を用いることができる。
【0027】
顔料一次粒子の体積平均粒径は、レーザー散乱による測定値で平均粒径50〜200nmの微細顔料であることが好ましい。顔料の平均粒径が50nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、200nmを越える場合は、分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じやすくなる。また、顔料の含有量は、インク組成物中、0.5〜25質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
【0028】
次に、分散剤としては、高分子分散剤を使用するとよい。高分子分散剤としては、例えば、主鎖がポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系などからなり、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基などの極性基を有するもので、好ましくはポリエステル系分散剤であり、例えばルーブリゾール社製「SOLSPERSE32000」、「SOLSPERSE20000」、「SOLSPERSE24000」、「SOLSPERSE71000」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」などが例示される。分散剤は、顔料1質量部に対して0.03質量部〜5質量部、好ましくは0.05質量部〜5質量部の割合で添加されるとよく、インク中に0.1質量%〜30質量%、好ましくは0.5質量%〜20質量%含有させるとよい。
【0029】
次に、光重合開始剤について説明する。本発明における活性エネルギー線とは、電子線、紫外線、赤外線などのラジカル、カチオン、アニオンなどの重合反応の引き金と成りうるエネルギー線を示す。
【0030】
光重合開始剤としてアシルフォスフィン化合物と共にα−ヒドロキシケトンおよび/またはα−アミノアルキルフェノンを使用する。アシルフォスフィンオキサイドは、例えばビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−フォスフィンオキサイド(イルガキュア 819、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバ・スペシャルティケミカルズ社製:Lucirin TPO:BASF社製)などが例示される。
【0031】
また、α−ヒドロキシケトンとしては、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア 127、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−4′−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン(イルガキュア2959、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)が特に好ましい。
【0032】
また、α−アミノアルキルフェノンとしては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(イルガキュア369、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(EAB−SS、大同化成社製)が特に好ましい。
【0033】
Lucirin TPOやイルガキュア 127は、酸素による重合阻害を発生し難いために、インクジェットで形成された薄膜の硬化性に特に有効である。また、Lucirin TPO、イルガキュア2959およびイルガキュア 369は内部硬化性に優れているため、厚膜での硬化性に特に有効である。特に、Lucirin TPOは活性エネルギー線に高感度で反応するため、インク組成物中3〜10質量%、好ましくは4〜8質量%含有させるとよい。また、アシルフォスフィン化合物とα−ヒドロキシケトンとα−アミノアルキルフェノンを組み合わせて使用することにより、薄膜と厚膜両方の硬化性に優れ、活性エネルギー線に対して高感度かつ短時間で硬化させることができる。アシルフォスフィン化合物とα−ヒドロキシケトンとα−アミノアルキルフェノンの合計量は、インク組成物中に8〜15質量%、好ましくは8〜12質量%であり、この範囲外であると硬化性が悪化する。また、上述の作用を阻害しないならば、その他の光重合開始剤を添加してもよい。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインキは、他に可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を含有することができるが、光重合性モノマー以外の分散媒または溶剤を含有しないものである。
【0035】
本発明のインクジェットインキは、顔料をモノマー、顔料分散剤と共にサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。あらかじめ顔料高濃度の濃縮液を作成しておいてモノマーで希釈することが好ましく、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、安定性に優れたインキが調製される。インキは、孔径3μm以下、さらには1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0036】
本発明のインクジェットインキは、40℃での粘度が5〜20mPa・sとするとよい。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、20mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0037】
本発明のインクジェットインキを使用するには、まずこのインクジェットインキをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その後紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上の組成物は速やかに硬化する。
【0038】
なお、活性エネルギー線の光源としては、紫外線を照射する場合には、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、LEDランプおよび太陽光を使用することができる。電子線により硬化させる場合には、通常300eV以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0039】
本発明で用いられる印刷基材は、ガラス基材であり、例えば旭硝子(株)製「FL3」、コーニング社製「#1737」等が例示されるが、これらに対して本発明のインク組成物は、後述する密着性試験から明らかなように、優れた密着性を示すものとできる。
【0040】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「質量部」を表す。
【実施例】
【0041】
(実施例1〜10、比較例1〜8)
下記表1〜表4に記載のベンジルアクリレート等のモノマーの適宜量に高分子分散剤を溶解させ、次いでカーボンブラックを加え、ペイントシェーカーを用いて顔料平均粒子径が200nm以下となるように分散させて分散体を作製する。粒子径は、HOLIBA社製「LB−550」で測定する。
【0042】
下記の表1〜表4に記載の原料で、上記分散体作製に使用した原料以外を混合し、50℃に加温しながら1時間攪拌して溶け残りがないことを確認し、室温に戻した後、分散体を加えて攪拌する。その後、メンブランフィルターで濾過を行い、実施例、比較例の各インクをそれぞれ作製する。
【0043】
このインクを、バーコーター#3にして平均膜厚が6μmとなるように、ガラス基材(FL3 旭硝子社製)上に展色した。その後、GSユアサ社製メタルハライドランプMAL250NLにして1パス当りの積算光量140mJ/cm2 、ピーク照度170mW/cm2 となるように、紫外線照射し、塗膜を得た。結果は、下記の評価方法に従って判断した。
【0044】
(硬化性)
○ :指触によりタックがなくなるまでのパス回数が1である。
【0045】
× :指触によりタックがなくなるまでのパス回数が2以上である。
【0046】
(粘度)
インクの粘度(mPa・s)を、CBCマテリアルズ社製シールド型粘度計FVM80A−STを用いて40℃にて測定した。
【0047】
(密着性)
基材への密着性は、硬化後の塗膜を1mm間隔で100マスにクロスカットした部分にセロハンテープを貼り付け、充分に密着させた後、セロハンテープを90度で剥離させた時の塗膜の基材への密着の程度から判断した。判断基準は下記の通りである。
5B:剥がれなし
4B:5%未満の剥がれがあった。
3B:5%以上15%未満の剥がれがあった。
2B:15%以上35%未満の剥がれがあった。
1B:35%以上65%未満の剥がれがあった。
0B:65%以上の剥がれがあった。
【0048】
下記表1〜表4における 1) 17) について説明しておく。
1) : カ-ホ゛ンフ゛ラック(三菱化学社製「MA−14」)
2) : 環状トリメチロールフ゜ロハ゜ンフォルマルアクリレート(Sartomer社製 SR531)
3) : アクリロイルモルホリン (興人社製 ACMO)
4) : N-ヒ゛ニルカフ゜ロラクタム( ISP 社製 V-CAP)
5) : 2-ヒト゛ロキシ-3-フェノキシフ゜ロヒ゜ルアクリレート (新中村化学工業社製、NKエステル702A)
6) : 水酸基含有芳香族モノアクリレート(Sartomer社製 CN131B 、25℃での粘度100mPa・s、水酸基含有)
7) : 4-ヒト゛ロキシフ゛チルアクリレート( 大阪有機化学工業社製 4-HBA)
8) : ラウリルアクリレート (大阪有機化学工業社製、LA)
9) : ヘ゛ンシ゛ルアクリレート(V#160、大阪有機化学工業社製)
10) : イソホ゛ルニルアクリレート(共栄社化学社製 ライトアクリレートIB−XA)
11) : イソシアヌル酸 EO 変性トリアクリレート(東亜合成社製アロニックス社M−315)
12) : トリフ゜ロヒ゜レンク゛リコールシ゛アクリレート (東亜合成社製「アロニックスM−220」)
13) : ソルスハ゜ース 24000GR(日本ルーブリゾール社製、顔料分散剤)
14) : イルカ゛キュア 369(チバ・ジャパン社製、光重合開始剤)
15) : ルシリンTPO (BASF社製、光重合開始剤)
16) : EAB-SS(大同化成社製、光重合開始剤)
17) : TEGORAD-2300(TEGO Chemie社製 表面調整剤)
なお、 2) 4) はヘテロ環式モノマー、5)7) は水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、8)10) は脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、芳香族炭化水素環単官能(メタ)アクリレート、脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、11) 12) は多官能(メタ)アクリレートである。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、ガラス表面へ印字用として、印字の密着性、硬化性に優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも色材、光重合開始剤を含有すると共に、光重合性モノマーとして、窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマー、水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、および多官能(メタ)アクリレートを少なくとも含有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、該インク組成物中に、前記窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーを25質量%〜75質量%、前記水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートを5重量%〜35重量%、多官能(メタ)アクリレートを5重量%〜15重量%の割合で含有し、ガラス表面への記録用であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項2】
インク組成物中に、さらに、脂肪族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、芳香族炭化水素単官能(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素単官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
窒素原子、酸素原子から選ばれる少なくとも1種の異種原子により形成される5員環、または6員環のヘテロ環を有すると共にエチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーが、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドンから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項4】
水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートが、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、水酸基含有芳香族炭化水素(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項5】
インク組成物が、光重合性モノマー以外の分散媒または溶剤を含有しないものである請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項6】
40℃での粘度が、5mPa・s〜20mPa・sである請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。

【公開番号】特開2010−184996(P2010−184996A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29550(P2009−29550)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】