説明

活性エネルギー線硬化型接着剤組成物

【課題】各種基材に対する接着剤に優れる活性エネルギー線硬化型組成物の提供。さらに、プラスチックフィルム等、特に親水性プラスチックフィルム等に対する接着力が、高温及び高湿条件下において、さらに又、耐熱水試験においても接着性に優れ、剥離強度にも優れる活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の提供。
【解決手段】(A)エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物、(B)マレイミド基及びマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、並びに(C)前記(A)及び(B)成分以外の1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であって(A)成分のイソシアネート基と反応性を有しない化合物を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線又は紫外線等の活性エネルギー線の照射により、種々の基材、特にプラスチック製フィルム又はシートを接着することが可能な活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関するものであり、本発明の組成物は、プラスチック製フィルム又はシートを含む薄層被着体の接着に好適に使用され、さらに液晶表示素子等に使用される各種光学フィルム又はシートの製造に好適に使用されるものであり、これら技術分野で賞用され得るものである。
尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
又、以下において、特に明示する必要がない場合は、プラスチック製フィルム又はシートをまとめて「プラスチックフィルム等」と表し、フィルム又はシートを、まとめて「フィルム等」と表す。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルム等の薄層被着体同士、又はプラスチックフィルム等の薄層被着体とこれと他の素材からなる薄層被着体とを貼り合わせるラミネート法においては、エチレン−酢酸ビニル共重合体やポリウレタン系重合体を含む溶剤型接着剤組成物を第1の薄層被着体に塗布して乾燥させた後、これに第2の薄層被着体をニップ・ローラー等にて圧着するドライラミネート法が主に行われている。
この方法で使用される接着剤組成物は、一般に組成物の塗布量を均一にするため溶剤を多く含むものであるが、このため乾燥時に多量の溶剤蒸気が揮散してしまい、毒性、作業安全性及び環境汚染性が問題となっている。又、当該接着剤組成物は、薄層被着体を貼り合わせた直後に、得られたラミネートフィルムを接着するためのヒートシール、溝を刻設する罫線工程等の後加工工程において、薄層被着体同士が剥離してしまうという問題を有している。
これらの問題を解決する接着剤組成物として、無溶剤系の接着剤組成物が検討されている。
【0003】
無溶剤系接着剤組成物としては、2液型接着剤組成物及び紫外線又は電子線等の活性エネルギー線により硬化する接着剤組成物が広く用いられている。
2液型接着剤組成物としては、主に末端に水酸基を有するポリマーを主剤とし、末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を硬化剤とする、いわゆるポリウレタン系接着剤組成物が用いられている。しかしながら該組成物は、硬化に長時間を要するという欠点があり、このため薄層被着体の貼り合わせ直後に罫線工程等の後加工工程に入ることができない等の生産性上の問題がある。又、該組成物は2液を混合した後に水酸基とイソシアネート基のウレタン化反応が進行し、高分子量化することによって粘度が上昇するため、1液化が困難であるという欠点ある。
これに対して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、硬化速度が速く、1液化が可能であることから生産性に優れ、最近注目されている。
【0004】
一方、液晶表示装置は、薄型、軽量及び省消費電力等の特長から、自動車用のナビゲーションシステム、携帯電話及びPDA等の小型電子機器から、ワープロやパソコンの画面、さらにはテレビ受像機にも普及している。
近年、当該液晶表示素子に使用される各種光学フィルム等の貼り合わせにも、活性エネルギー線硬化型接着剤が使用されてきている。
【0005】
光学フィルム等としては、偏光板、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、レンズシート及び拡散シート等が挙げられ、これらには様々な種類のプラスチックが用いられている。
【0006】
これらプラスチックの中でも、特に重用されているものとしてポリビニルアルコール及びトリアセチルセルロースが挙げられる。これらのプラスチックは水酸基を含有しており、通常のプラスチックと比較して非常に親水性が高いという特徴を持つ。
【0007】
特許文献1には、疎水性樹脂と親水性樹脂とを接着するための(A)分子量4000以下のウレタン(メタ)アクリレート5〜30質量%、(B)ラジカル重合性化合物 60〜95質量%、(C)光重合開始剤0.1〜10質量%からなる接着剤用放射線硬化性液状樹脂組成物が開示されている。
【0008】
又、特許文献2には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムと熱可塑性ノルボルネン系樹脂フィルムとを接着するための光硬化型接着剤組成物であって、該光硬化型接着剤組成物が(a)ウレタン(メタ)アクリレート30〜50重量%、(b)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート13〜40重量%及び(c)アクリルアミド誘導体0〜30重量%を含有し、且つ(b)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと(c)アクリルアミド誘導体の合計量が20〜60重量%である光硬化型接着剤組成物が開示されている。
【0009】
又、特許文献3には、ポリイソシアネート、ポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリレートから得られるウレタン(メタ)アクリレートと、偏光板保護フィルムに対して浸透性を有する基材浸透性モノマーと光重合開始剤を含むポリビニルアルコール偏光板用接着剤が開示されている。
【0010】
又、特許文献4には、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートから得られるウレタン(メタ)アクリレートと、ポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリレート又は水酸基含有(メタ)アクリレートから得られるポリオール(メタ)アクリレートを含む偏光板用接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−169580号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2007−177169号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2008−063527号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2008−250260号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特願2009−105659号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献に記載された接着剤組成物でプラスチックフィルム等を貼り合わせた場合、接着剤が不十分なことがあった。より具体的には、積層体が高温及び高湿条件下において剥がれが生じるという問題があった。特許文献4記載の発明は、接着剤性に優れるものではあったが、より過酷な耐熱水性試験では剥がれが生じてしまうものであった。
【0013】
本発明者らは、各種基材に対する接着剤に優れる活性エネルギー線硬化型組成物、さらにプラスチックフィルム等、特に親水性プラスチックフィルム等に対する接着力が、高温及び高湿条件下において、さらに又、耐熱水試験においても接着性に優れる活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を見出すため鋭意検討を行った。
【0014】
その結果、本発明者らは、エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物からなる活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が、各種基材、特にプラスチックフィルム等、中でも親水性プラスチックフィルム等に対する接着力に優れ、かつその接着積層物が高温及び高湿条件下においても、さらには耐熱水試験においても剥がれを生じないものであることを見出している(特許文献5)。
しかしながら、特許文献5の組成物は、接着力、特に剥離強度に優れるものではあるが、より過酷な条件においては不十分となる場合があり、本発明は、さらにこの点を改良することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、種々の研究の結果、エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物に、さらにマレイミド基を有するエチレン性不飽和化合物を配合した組成物が、前記性能に加え、剥離強度がより優れるものとなることを見出し本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、各種基材に対して高い接着性を有する。さらに、本発明の組成物は、プラスチックフィルム等、特に親水性プラスチックフィルム等に対して高温及び高湿条件下、さらには耐熱水試験においても優れた接着力を維持することができ、剥離強度がより優れるものとなる。
よって、本発明の組成物は、各種プラスチックフィルム等の薄層被着体の接着に有効であり、特に液晶表示装置等に用いる、光学フィルムの製造に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、(A)エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物〔以下、「(A)成分」という〕、(B)マレイミド基及びマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物〔以下、「(B)成分」という〕、並びに(C)前記(A)及び(B)成分以外の1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であって(A)成分のイソシアネート基と反応性を有しない化合物〔以下、「(C)成分」という〕を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。
以下、必須成分の(A)成分〜(C)成分について説明する。
【0018】
1.配合成分
1-1.(A)成分
(A)成分は、エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物である。
【0019】
エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基が挙げられ、製造が容易である点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
(A)成分中のエチレン性不飽和基の数としては、1個有する化合物及び2個以上有する化合物があり、硬化物の密着性を制御しやすいという理由で、エチレン性不飽和基を1個有する化合物が好ましい。
【0020】
(A)成分中のイソシアネート基の数としては、1個有する化合物及び2個以上有する化合物があり、組成物の粘度の貯蔵安定性が優れるという理由で、イソシアネート基を1個有する化合物が好ましい。
【0021】
(A)成分において、エチレン性不飽和基とイソシアネート基を連結する骨格としては、エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を結合できるものであれば種々のものが挙げられ、例えば、ヘテロ原子を含んでいても良い飽和炭化水素骨格(アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格等)及び芳香族炭化水素骨格等が挙げられる。
(A)成分としては、低分子量化合物及び高分子量化合物のいずれも使用することができる。
【0022】
(A)成分において、低分子量化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
1個のエチレン性不飽和基と1個のイソシアネート基を有する化合物としては、これら2つの基がアルキレン骨格で連結されている化合物の例として、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート等が挙げられ、これら2つの基がオキシアルキレン骨格で連結されている化合物の例として、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアルキルイソシアネート、並びにこれら2つの基が芳香族炭化水素骨格で連結されている化合物の例として、2−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネート等が挙げられる。
2個のエチレン性不飽和基を有する1個のイソシアネート基を有する化合物としては、これら2つの基が分岐状飽和炭化水素骨格で連結されている化合物の例として、1,1−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
又、(A)成分としては、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート及びトリイソシアネート等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート及び水添キシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
トリイソシアネートとしては、例えば、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート及びビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物の場合、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートの反応割合は、反応物中に(メタ)アクリロイル基とイソシアネートが存在する割合であれば種々の割合があり、モル比で、(水酸基含有(メタ)アクリレート中の水酸基):(ポリイソシアネート中のイソシアネート基の合計)=1:1.2〜1:4.0が好ましい。
【0024】
又、(A)成分において高分子量化合物の例として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとジイソシアネートの重合体等が挙げられる。
当該化合物は市販されており、2−ヒドロキシエチルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの重合体であるBASF製LaromerLR9000等が挙げられる。
【0025】
(A)成分の分子量としては、前記した通り、低分子のものから高分子のものまで使用できるが、組成物を低粘度にすることができ、組成物の硬化性に優れる等の点で低分子の化合物が好ましい。
即ち、1個のエチレン性不飽和基と1個のイソシアネート基を有する化合物において、これら2つの基がアルキレン骨格で連結されている化合物、これら2つの基がオキシアルキレン骨格で連結されている化合物及び、これら2つの基が芳香族炭化水素骨格で連結されている化合物であり、より具体的には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート及び2−(メタ)アクリロイルオキシフェニルイソシアネートが好ましい。
【0026】
(A)成分としては、これらの化合物の中でも、組成物が結晶化することなく液状のものとなり、硬化時の発熱による基材の変形等がない等の理由で、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートが好ましい。
(A)成分は、1種のみを使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0027】
1−2.(B)成分
(B)成分は、マレイミド基及びマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(B)成分におけるマレイミド基としては、下記一般式(1)で表される基が好ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
〔但し、一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基若しくはアリール基を表すか、又はR1及びR2は、一つとなって5若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。〕
【0030】
アルキル基としては、炭素数4以下のアルキル基が好ましい。
アルケニル基としては、炭素数4以下のアルケニル基が好ましい。
アリール基としてはフェニル基等を挙げることができる。
一つとなって5員環若しくは6員環を形成する炭化水素基としては、基−CH2CH2CH2−、基−CH2CH2CH2CH2−等が挙げられ不飽和の炭化水素基としては、基−CH=CHCH2−、基−CH2CH=CHCH2−等が挙げられる。尚、不飽和の炭化水素基において、マレイミド基が2量化反応するためには、最終的に得られる5員環又は6員環が芳香族性を有しないものを選択する必要がある。当該炭化水素基としては、飽和の炭化水素基が好ましい。
【0031】
一般式(1)におけるマレイミド基の好ましい具体例を、以下の式(3)〜式(8)に示す。尚、式(7)において、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。又、式(8)におけるPhは、フェニル基を表す。
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
1及びR2としては、一方が水素原子で他方が炭素数4以下のアルキル基、R1及びR2の両方が炭素数4以下のアルキル基、並びにそれぞれが一つとなって炭素環を形成する飽和炭化水素基が好ましい。
【0036】
エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基が挙げられ、製造が容易である点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0037】
(A)成分としては、エチレン性不飽和基とマレイミド基とが、エーテル骨格、エステル骨格及びウレタン骨格等の骨格と結合した化合物が挙げられる。
(A)成分としては、その製造が容易である点で、下記一般式(2)で表されるマレイミド(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
【化5】

【0039】
〔但し、一般式(2)において、R1及びR2は、前記式(1)と同義である。R3は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【0040】
一般式(2)で表される化合物の中でも、下記一般式(9)〜(11)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(9)で表される化合物が特に好ましい。
【0041】
【化6】

【0042】
〔但し、一般式(9)において、R4及びR5は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【0043】
【化7】

【0044】
〔但し、一般式(10)において、R4及びR5は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【0045】
【化8】

【0046】
〔但し、一般式(11)において、R4及びR5は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【0047】
1−3.(C)成分
(C)成分は、前記(A)及び(B)成分以外の1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であって(A)成分のイソシアネート基と反応性を有しない化合物である。
(C)成分としては、前記(A)及び(B)成分以外の化合物で、かつ(A)成分のイソシアネート基と反応性を有しないものであれば種々の化合物が使用できる。具体的には、水酸基や酸性基を有しないもので、エチレン性不飽和基を有する化合物であれば任意である。
【0048】
(C)成分におけるエチレン性不飽和基としては、前記(A)成分で例示したものと同様の基が挙げられる。
(C)成分は、1種のみを使用することも、2種以上を併用することもできる。
(C)成分としては、モノマー、オリゴマー及びポリマーを挙げることができる。
【0049】
1−3−1.モノマー
モノマーとしては、エチレン性不飽和基としてビニル基を有する化合物の例としては、ビニル系化合物及びアリル化合物が挙げられ、エチレン性不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0050】
ビニル系化合物としては、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクトン等が挙げられる。
アリル化合物としては、アリルアルコール等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物(以下、単官能(メタ)アクリレートという)及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物(以下、多官能(メタ)アクリレートという)が挙げられる。
【0053】
単官能(メタ)アクリレートとしては、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート等の脂肪環式(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの芳香族(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド及びN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0054】
多官能(メタ)アクリレートとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、炭素数2〜5の脂肪族変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら以外にも、文献「最新UV硬化技術」[(株)印刷情報協会、1991年発行]の53〜56頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0055】
1−3−2.オリゴマー
オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0056】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物である。
【0057】
ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0058】
低分子量ポリオールとしては、例えば、分子量50〜300程度の水酸基を少なくとも2個有するポリオールが挙げられ、具体例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、オキシアルキレン単位を3個以上有するポリアルキレングリコールが挙げられ、具体例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、カーボネートとジオールとの反応生成物が挙げられる。カーボネートとして具体的には、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート、並びにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等が挙げられる。ジオールとしては、前記した低分子量ポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、これら低分子量ポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種と、酸成分との反応物が挙げられる。酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。又、ポリカーボネートジオールとカプロラクトンの開環反応物等も挙げられる。
【0059】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート及びトリイソシアネート等が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート及び水添キシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。
トリイソシアネートとしては、例えば、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート及びビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる
これらの中でも、得られる化合物が低粘度で取扱いが簡便となるため、ジイソシアネートが好ましい。
【0060】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにペンタエリスリトールトリ、ジ又はモノ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジ又はモノ(メタ)アクリレート等のポリオールと(メタ)アクリル酸の反応物等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを、常法に従い反応させて得られた化合物で良い。
具体的には、ジブチルスズジラウレート等のウレタン化の存在下、必要に応じ反応溶媒の存在下に、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを加熱・攪拌してウレタン化して製造することができる。
この場合、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで製造されたものでも、ポリオール及び有機ポリイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有プレポリマーを製造した後、水酸基含有(メタ)アクリレートを添加して製造されたものでも良い。
【0062】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量としては、2,000〜100,000が好ましく、より好ましくは20,000〜60,000である。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとして重量平均分子量が前記好ましい範囲にあるものは、得られる組成物の硬化物が、剥離強度により優れたものとなるため好ましい。
尚、本発明において重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られた重量平均分子量をポリスチレン換算した値をいう。
【0063】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
【0064】
ここで、ポリエステルポリオールオリゴマーとしては、ポリオールとのカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
カルボン酸又はその無水物としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。
これら以外のポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、前記文献「UV・EB硬化材料」の74〜76頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0065】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物であり、前記文献「UV・EB硬化材料」の74〜75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0066】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフエノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o−フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
これら以外にも、文献「エポキシ樹脂−最近の進歩−」(昭晃堂、1990年発行)2章や、文献「高分子加工」別冊9・第22巻増刊号 エポキシ樹脂[高分子刊行会、昭和48年発行]の4〜6頁、9〜16頁に記載されている様な化合物を挙げることができる。
【0067】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ーブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら以外にも、前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の3〜6頁に記載されている化合物を挙げることができる。
【0068】
これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX−310[ナガセ化成(株)]等が挙げられ、又前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の289〜296頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0069】
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリアルキレングリコール(メタ)ジアクリレートがあり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
1−3−3.ポリマー
ポリマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、前記文献「UV・EB硬化材料」の78〜79頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0071】
1−3−4.好ましい化合物
(C)成分としては、前記したものの中でも密着性、より具体的には剥離強度に優れるという理由で、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記した通り重量平均分子量が2,000〜100,000のものが好ましく、より好ましくは20,000〜60,000である。
(C)成分中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの割合としては、(C)成分中に3〜100重量%が好ましく、3〜60重量部がより好ましい。
【0072】
又、プラスチックとの接着力を向上できる点で、1個のエチレン性不飽和基と複素環を有する化合物及び1個のエチレン性不飽和基とアミド基を有する化合物が好ましい。
【0073】
1個のエチレン性不飽和基と複素環を有する化合物において、好ましい複素環としては、環状エーテル、モルホリン、ピロリドン、カプロラクタム及び環状イミド等が挙げられる。
環状エーテルを有する化合物としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、モルホリンを有する化合物としては、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられ、ピロリドンを有する化合物としてはN−ビニルピロリドン等が挙げられ、カプロラクタムを有する化合物としてはN−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0074】
1個のエチレン性不飽和基とアミド基を有する化合物としては、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0075】
これら化合物の中でも、組成物の硬化性により優れる点でアクリレートを使用することが好ましい。
さらに、アクリレートの中でも、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドが好ましい。
【0076】
又、組成物の硬化物に耐水性を付与することができる点で、長鎖アルキル(メタ)アクリレート又は/及び芳香族単官能(メタ)アクリレートを配合することが好ましい。
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数6〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族単官能(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、m−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、m−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びp−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
1-4.その他の成分
本発明の組成物には、必須成分である(A)〜(C)成分に加え、接着剤組成物で通常使用されるその他の成分を配合することができる。
【0078】
1-4-1.光重合開始剤
本発明の組成物は、可視光線又は紫外線等で硬化させる場合には、光重合開始剤〔以下(D)成分という〕を配合することが好ましい。
尚、本発明の組成物を電子線等で硬化させる場合には、(D)成分を必ずしも配合する必要はない。
【0079】
(D)成分としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(4−メチル−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、アデカオプトマーN−1414(旭電化製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;
アクリドン及び10−ブチル−2−クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等のオキシムエステル類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。
これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することもできる。
これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントンが接着力や耐熱性、保存安定性の点から好ましい。
【0080】
紫外線吸収剤を配合されている基材を接着する場合には、長波長側(400nm以上)に吸収を有する光重合開始剤を使用することが好ましい。特に、偏光子の保護フィルムは紫外線吸収剤を含むことが多いため、偏光板の製造に好ましく使用することができる。
当該化合物の具体例としては、前記した2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(4−メチル−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、アシルホスフィノキサイド化合物及びチオキサントン化合物等が挙げられる。
【0081】
これらの光重合開始剤は単独で使用することもでき、さらに反応性を高めるために、脂肪族アミンあるいはジエチルアミノフェノン、ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアシルなどの芳香族アミンを光重合開始助剤として添加することもできる。
【0082】
(D)成分の配合割合としては、組成物中に0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
(D)成分の配合割合を0.01重量%以上とすることにより、適量な紫外線光量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10重量%以下とすることで、硬化物の耐侯性や透明性に優れるものとすぐことができる。
【0083】
1-4-2.その他の成分
(D)成分以外のその他の成分としては、具体的には、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料、処理剤及び紫外線遮断剤のような不活性成分を配合することができる。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸及びロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂並びに石油樹脂等が挙げられる。
又、基材との密着性を向上させる目的でシランカップリング剤を配合することもできる。
又、組成物の硬化性が不十分な場合は、ウレタン化触媒を配合することもできる。ウレタン化触媒としては、金属系触媒及びアミン系触媒を挙げることができる。金属系触媒としては、スズ系触媒、鉄系触媒及び亜鉛系触媒等が挙げられ、スズ系触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート等が挙げられる。アミン系触媒としては、アルキルアミン、(ジアルキルアミノ)アルキルアミン等の1級アミン、ジアルキルアミン、ジアルコキシアルキルアミン及びジアリルアミン等の2級アミン、トリアルキルアミン及びDABCO等の3級アミン等が挙げられる。
これらは、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して、100重量部以下の量で配合することが好ましい。
【0084】
2.エネルギー線硬化型接着剤組成物
本発明は、前記(A)〜(C)成分を必須成分として含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。
組成物の製造方法としては、前記(A)〜(C)成分、及び必要に応じてその他の成分を常法に従い、攪拌・混合することにより製造することができる。
(A)成分は水等により分解しやすいため、得られた組成物は保存安定性が不十分である場合がある。この場合は、まず(B)及び(C)成分を含む組成物を事前に製造しておき、使用直前に(A)成分を当該組成物に添加し、攪拌・混合することにより製造する方法が好ましい。
【0085】
(A)〜(C)成分の配合割合としては、(A)〜(C)成分の合計量中、(A)成分5〜50重量%、(B)成分5〜50重量%、(C)成分20〜90重量%が好ましい。(A)成分の割合を5重量%以上とすることにより、被接着物の高温下での接着力を良好なものとすることができ、他方50重量%以下とすることにより、組成物の粘度の貯蔵安定性を良好なものとすることができる。また、(B)成分の割合を5重量%以上50重量%以下とすることにより、被接着物の耐衝撃性を良好なものとすることができる。また、(C)成分の割合を20重量%以上とすることにより、組成物の塗工時の基材浸透性を良好なものとすることができる。
【0086】
組成物の粘度としては、基材に対する塗工性に優れる点で、10〜1000mPa・sが好ましい。
【0087】
3.使用方法
本発明の組成物の使用方法としては、常法に従えば良く、基材に塗布した後、もう一方の基材と貼り合せ、活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
【0088】
本発明の組成物は、種々の基材の接着に使用することができる。
基材の例としては、プラスチック、紙及び金属等が挙げられる。
プラスチックとしては、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート、アクリル/スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。
紙としては、模造紙、上質紙、クラフト紙、アートコート紙、キャスターコート紙、純白ロール紙、パーチメント紙、耐水紙、グラシン紙及び段ボール紙等が挙げられる。
金属箔としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。
【0089】
基材に対する塗工は、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、コンマコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の方法が挙げられる。
又、本発明の組成物の塗布厚さは、使用する基材及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは1〜25μmである。
【0090】
活性エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線等が挙げられるが、安価な装置を使用することができるため、紫外線が好ましい。
紫外線により硬化させる場合の光源としては、様々のものを使用することができ、例えば加圧或いは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯及びLED等が挙げられる。
電子線により硬化させる場合には、使用できるEB照射装置としては種々の装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型及び共振変圧器型の装置等が挙げられ、電子線としては50〜1000eVのエネルギーを持つものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。
【0091】
3−1.プラスチックフィルム等の接着
本発明の組成物は、プラスチックフィルム等同士の接着、プラスチックフィルム等とこれ以外の種々の基材(以下、その他基材という)の接着に好適に使用することができ、即ち、プラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物として好適に使用することができる。
尚、これ以降の記載において、単に「基材」と表記した場合は、プラスチックフィルム等及びその他基材の総称を意味する。
その他基材としては、紙及び金属等が挙げられる。
【0092】
本発明の組成物は、基材として薄層被着体を接着する場合に好適である。
薄層被着体を接着する場合の使用方法は、ラミネートの製造において通常行われている方法に従えばよい。
例えば、組成物を第1の薄層被着体に塗工し、必要に応じて乾燥させた後、これに第2の薄層被着体を貼り合わせ、活性エネルギー線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0093】
薄層被着体としては、プラスチックフィルム等、紙又は金属箔等が挙げられる。
プラスチックフィルム等は、活性エネルギー線を透過できるものである必要があり、膜厚としては使用する薄層被着体及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは厚さが0.2mm以下である。
【0094】
本発明の組成物は、これら薄層被着体の中でも、プラスチックフィルム等同士の接着に好適に用いられ、さらに親水性プラスチックに好適に用いることができる。
本発明において親水性プラスチックとは、膜厚100μmにおける透湿度が200g/m2・24hr以上(特に、200〜2000g/m2・24hr程度)を有するプラスチックを意味する。
親水性プラスチックとしては、具体的には、水酸基やカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びアミド結合等の親水性部位を含有するポリマーを成形加工して製造されるプラスチックを挙げることができる。親水性部位を含有するポリマーの好ましい例としては、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリビニルアセタール及びポリアミド等を挙げることができる。
又、親水性部位を有しないポリマーを成形加工した後に、親水性処理をしたものも使用することができる。具体的には、親水性部位を有しないポリマーを、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理及び親水性部位含有ポリマーのプライマー処理等により親水性基を導入したプラスチック等が挙げられる。好ましい具体例としては、ポリアミドでプライマー処理されたポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
親水性プラスチックとしては、親水性部位を含有するポリマーを成形加工して製造されるプラスチックが好ましく、より好ましくは親水性部位を含有するポリマーとしてポリビニルアルコール及びトリアセチルセルロースを使用したものである。
【0095】
又、被着体を接着する前に、層間接着力を大きくするために一方又は両方の表面に活性化処理を行うことができる。表面活性化処理としてはプラズマ処理、コロナ放電処理、薬液処理、粗面化処理及びエッチング処理、火炎処理等が挙げられ、これらを併用してもよい。
【0096】
薄層被着体に対する塗工は、従来知られている方法に従えばよく、前記と同様の方法が挙げられる。
又、本発明の組成物の塗布厚さは、使用する薄層被着体及び用途に応じて選択すればよいが、前記と同様の塗布厚さが好ましい。
【0097】
プラスチックフィルム等の接着においては、平面状態に限らず、曲面状態で接着を行うこともできる。
即ち、プラスチックフィルム等を、凹状態又は凸状態に折り曲げ、この状態で本発明の組成物を塗工後、もう一方のプラスチックフィルム等を貼り合せ、活性エネルギー線を照射して接着する方法が挙げられる。
別の方法としては、プラスチックフィルム等を平面状態で本発明の組成物を塗工し、もう一方のプラスチックフィルム等を貼り合わせ、凹状態又は凸状態に折り曲げ、活性エネルギー線を照射して接着する方法が挙げられる。
平面状態で組成物を塗工する方法としては、前記した方法に従えば良い。曲面状態で組成物を塗工する方法としては、スプレーコーター、バーコーター及びマイクログラビアコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0098】
以上の方法で、プラスチックフィルム/本発明の組成物の硬化物/プラスチックフィルムから構成される積層体、プラスチックフィルム/本発明の組成物の硬化物/その他基材から構成される積層体が製造される。
本発明の組成物から得られたラミネートフィルム等の積層体は、高温及び高湿条件下における接着力に優れているため、液晶表示装置等に用いる偏光板及び保護フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムに好適に使用できる。
本発明の組成物は、特に偏光板及び位相差フィルム付偏光板の製造に好ましく使用することができる。以下、偏光板の製造方法について説明する。
【0099】
尚、本明細書においては、偏光子とは後述する偏光機能を持つフィルムまたは膜のことを表し、偏光板とは偏光子の片側あるいは両側をフィルムまたは膜で保護した、保護層付き偏光子のことを表す。また、位相差フィルム付偏光板とは、偏光子または偏光板に位相差フィルムを貼合するか、あるいはコーティングにより位相差機能を有する膜を形成したものを表す。
【0100】
3−2.偏光板の製造方法
前記した通り、本発明の組成物は、親水性プラスチックの接着に好ましく使用でき、偏光板の製造においては、偏光子として使用するポリビニルアルコール、偏光子の保護フィルムとして使用するトリアセチルセルロースが親水性プラスチックに相当する。
【0101】
本発明の組成物は、偏光子と保護フィルムの接着や偏光板と位相差フィルムの接着に使用することができる。
【0102】
偏光子とは、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するものである。
偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着、配向させたヨウ素系偏光子、ポリビニルアルコール系フィルムに二色性の染料を吸着、配向させた染料系偏光子、(リオトロピック)液晶状態の色素をコーティングし、配向、固定化した塗布型偏光子等が挙げられる。
これら、ヨウ素系偏光子、染料系偏光子、塗布型偏光子は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、他の一方向の直線偏光を吸収する機能を有するもので、吸収型偏光子と呼ばれている。
【0103】
上記ヨウ素系偏光子及び染料系偏光子では、通常、その片面又は両面に保護層を設けるが、本発明の組成物は、偏光子と保護フィルムの接着に使用することができる。
【0104】
保護層で使用する保護フィルムとして、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアリレート樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン樹脂フィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。
【0105】
次に、本発明の組成物は、偏光板と位相差フィルムの接着に使用することもできる。
この場合、偏光板としては、その片面又は両面に保護層を有するものを使用することができる。
この場合、保護層としては、前記保護フィルムを貼合したものでも、コーティングによって形成された保護膜であっても良い。
片面にのみ保護層を設けた偏光板は、位相差フィルムと接着する面が、保護層のある面であっても、保護層のない面であっても良い。
【0106】
位相差フィルムとしては、種々のものが使用でき、一軸又は二軸延伸等の加工が施された光学用フィルム、ないしは液晶性の化合物等を基材に塗布し、配向、固定化の加工をした光学用フィルム等が挙げられ、三次元屈折率の大小関係(屈折率楕円体)を使用条件に合わせて制御したものである。主に、液晶ディスプレイの液晶層の着色による補償や視野角による位相差の変化を補償するために用いられる。
【0107】
位相差フィルムの具体例を挙げると、延伸等の加工が施される光学フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのようなポリオレフィンや、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート及びポリアミド等が例示できる。
前記した環状ポリオレフィンは、ノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂の一般的な総称であり、たとえば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されているものが挙げられる。
具体的には環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、又これらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。さらには、これらの水素化物があげられる。商品としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン、TICONA社製のトーパス等が挙げられる。
【0108】
又、液晶性の化合物等を基材に塗布し、配向、固定化の加工をした光学用フィルムとしては、“WVフィルム”(富士写真フイルム株式会社製)、“LCフィルム”、“NHフィルム”(いずれも新日本石油株式会社製)等が挙げられる。
【0109】
本発明の組成物を使用して、偏光板または位相差フィルム付偏光板の製造方法について説明する。
当該製造方法としては、下記工程[1]〜[3]を含む方法が挙げられる。
[1]本発明の組成物を、被着体となる偏光子、偏光板、保護フィルム、保護膜、位相差フィルム、位相差膜のいずれかに塗工する工程
[2]前記組成物を塗工したフィルムに、もう一方の被着体となる偏光子、偏光板、保護フィルム、保護膜、位相差フィルム、位相差膜のいずれかを貼り合わせる工程
[3]フィルムを貼り合わせた後、本発明の組成物の塗布された基材越しに活性エネルギー線を照射する工程
保護フィルムまたは位相差フィルムを片側だけに貼合する場合は、上記手順により偏光板または位相差フィルム付偏光板が作製可能であるが、両側に貼合する場合は、[1][2]を2回繰り返した後に[3]を実施しても良いし、[1][2][3]を2回繰り返しても良い。
【0110】
前記工程[1]における塗工方法、前記工程[3]における活性エネルギー線照射方法は、前記と同様の方法で行えば良い。
又、この場合においても、前記した通り曲面状態で貼合することもできる。
【0111】
位相差フィルム付偏光板を円偏光板として使用する場合、広帯域に渡り円偏光状態にするためには、位相差フィルム付偏光板の位相差フィルム側に、位相差の異なる位相差フィルムをさらに貼り合せることもできる。
具体的には、偏光フィルムに対して、各波長に対して1/2波長を有する位相差フィルムを貼り合せ、さらに各波長に対して1/4波長を有する位相差フィルムを貼り合せる方法がある。この場合は、[1][2]を3回繰り返した後に[3]を実施しても良いし、[1][2][3]を3回繰り返しても良い。
【実施例】
【0112】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、以下の各例における「部」は重量部を意味する。
【0113】
○製造例1〔(C)成分の製造〕
攪拌機を備えた500mL反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)24g(0.11モル)、希釈剤としてイソボルニルアクリレートを198g、触媒としてジブチルスズジラウレート(以下、DBTDLという)を0.16g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(以下、BHTという)を0.10gを入れ、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、これらを攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
反応溶液に水酸基価が57mgKOH/gのポリエステルポリオール((株)クラレ製 P−2010、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールのエステル化物)の169g(0.086モル)を2時間かけて滴下した。内温を80℃に上げてさらに2時間反応させ、エチレングリコールを0.67g(0.011モル)加えてさらに2時間、2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAという)を4.46g(0.038モル)加えてさらに2時間反応させた。赤外線吸収スペクトル装置(Perkin Elmer製FT−IR Spectrum100)によりスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認した。
得られたウレタンアクリレートを、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:Waters製HSPgel HR MB−L)により測定した結果、ポリスチレン換算のMwは34,000であった。
【0114】
○製造例2〔(C)成分の製造〕
攪拌機を備えた500mL反応容器に、IPDIの20.5g(0.092モル)、重合禁止剤としてBHTを0.044g、触媒としてDBTDLを0.035gを入れ、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、これらを攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
反応溶液に水酸基価が55mgKOH/gのポリエーテルポリオール(旭硝子(株)製 EXCENOL2020)を150g(0.074モル)を2時間かけて滴下した。内温を80℃に上げてさらに2時間反応させ、HEAを5.14g(0.044モル)加えてさらに2時間反応させた。製造例1と同様にしてスペクトルを測定し、イソシアネート基が完全に消費されたことを確認した。
得られたウレタンアクリレートを、製造例1と同様にして測定した結果、ポリスチレン換算のMwは42,000であった。
【0115】
○実施例1〜同3、比較例1〜同4
下記表1に示す(B)〜(D)成分を、60℃で1時間加熱撹拌して溶解させ、室温まで冷却した後に(A)成分を添加し、さらに30分攪拌して活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を製造した。
得られた組成物の粘度を、25℃でE型粘度計により測定した。
【0116】
・フィルム積層体の製造(偏光板製造のモデル実験)
ポリ酢酸ビニルフィルム(ソルブロンEF#30、アイセロ社製、以下PVAフィルム)に、得られた組成物をバーコーターにより3μmの厚みに塗布し、トリアセチルセルロースフィルム(ロンザ製、厚さ100μm、以下TACフィルム)をラミネートした。この積層物のPVAフィルム側に同様に組成物を塗布し、TACフィルムをラミネートした。この積層物の両側から、160W/cm集光型のメタルハライドランプ(焦点距離から30cm)を用いて、コンベアスピ−ド5m/minの条件で紫外線を照射して組成物を硬化させ、フィルム積層体を得た。
得られた積層体について、下記の試験方法に従い浸水試験及び剥離強度測定を行った。その結果を表2に示す。
【0117】
[60℃浸水試験]
得られたフィルム積層体を幅20mm、長さ50mmに裁断し、60℃の流水に3時間浸漬してフィルムのハガレの有無を確認した。
【0118】
[剥離強度測定]
得られたフィルム積層体を幅25mm、長さ100mmに裁断し、25℃の条件下、剥離試験(剥離速度100mm/分)を行った。
【0119】
【表1】

【0120】
表1における略号は、下記を意味する。
AOI:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、昭和電工(株)製 カレンズAOI
M145:下記式(9)で表される化合物、東亞合成(株)製アロニックスM−145
【0121】
【化9】

【0122】
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製ビスコート#150
POA:2−フェノキシエチルアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレートPO−A
ACMO:アクリロイルモルホリン
IBXA:イソボルニルアクリレート
UA1:製造例1で得られたポリエステルウレタンアクリレート
UA2:製造例2で得られたポリエーテルウレタンアクリレート
M240:ポリエチレングリコールジアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−240
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、チバ・ジャパン(株)製ダロキュアTPO
【0123】
【表2】

【0124】
本発明の組成物に相当する実施例1〜同3の組成物は60℃浸水試験後に剥がれが発生せず、さらに剥離強度にも優れるものであった。
これに対して、本発明の(A)成分及び(B)成分を含まない比較例1の組成物は、60℃浸水試験後に剥がれが発生し、さらに剥離強度も不十分なものであった。
又、本発明の(B)成分を含まない比較例2の組成物は、60℃浸水試験後に端部に剥がれが発生し、さらに剥離強度も不十分なものであった。又、本発明の(B)成分を含まないがウレタンアクリレートオリゴマーを含む比較例3及び同4の組成物(特許文献5の発明に相当)は、60℃浸水試験後に端部に剥がれが発生しないものであったが、剥離強度は実施例と比較して不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の組成物は、各種基材の接着剤として、好ましくはプラスチックフィルム等の接着剤として、中でも親水性プラスチック等の接着剤として使用することができる。特に、本発明の組成物は、液晶表示装置等の光学フィルムの製造、特に偏光板の製造に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物、(B)マレイミド基及びマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、並びに(C)前記(A)及び(B)成分以外の1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であって(A)成分のイソシアネート基と反応性を有しない化合物を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が、1個のエチレン性不飽和基と1個のイソシアネート基を有する化合物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートである請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
(B)成分におけるマレイミド基が、下記一般式(1)で表される基である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【化1】

〔但し、一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基若しくはアリール基を表すか、又はR1及びR2は、一つとなって5若しくは6員環を形成する炭化水素基を表す。〕
【請求項5】
(B)成分が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【化2】

〔但し、一般式(2)において、R1及びR2は、前記式(1)と同義である。R3は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、R4は水素原子又はメチル基を表し、nは1から6の整数を表す。〕
【請求項6】
(C)成分が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む請求項1〜請求項5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが重量平気分子量20,000〜60,000である請求項6記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
(C)成分が、1個のエチレン性不飽和基と複素環を有する化合物を含む請求項1〜請求項7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
(A)〜(C)成分の合計量を基準として、(A)成分を5〜50重量%、(B)成分を5〜50重量%及び(C)成分を20〜90重量%含む請求項1〜請求項8のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
(D)光重合開始剤をさらに含有する請求項1〜請求項9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項11】
組成物中に(D)成分を0.01〜10重量%含む請求項10に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の組成物を含むプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項13】
プラスチック製フィルム又はシートのいずれか一方又は両方が親水性プラスチックである請求項12記載のプラスチック製フィルム又はシート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項14】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の組成物を含む偏光板製造用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項15】
(B)マレイミド基及びマレイミド基以外のエチレン性不飽和基を有する化合物、並びに(C)前記(A)及び(B)成分以外の1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であって(A)成分と反応性を有しない化合物の混合物を製造しておき、使用時に(A)エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を配合する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の製造方法。
【請求項16】
プラスチック製フィルム若しくはシート、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の組成物の硬化物、及びその他基材又はプラスチック製フィルム若しくはシートから構成される積層体。
【請求項17】
プラスチック製フィルム若しくはシート、請求項1〜請求項11のいずれかに記載の組成物の硬化物、及びその他基材又はプラスチック製フィルム若しくはシートから構成される偏光板。

【公開番号】特開2011−38088(P2011−38088A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156953(P2010−156953)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】