説明

流れ込み式水力発電設備の制御装置

【課題】出力制限運転から水位調整運転に戻す際のハンチングを防止し、発電機出力が許可電力値を超えない範囲内で大きくなるように制御することである。
【解決手段】水槽水位が水位下限値以上で水位上限値以下、または、発電機出力が出力目標値以下かつ水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下のときは水位調整運転を行う水位調整装置11と、水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下、かつ発電機出力が出力目標値以上で出力制限値以下のときは出力ロックし、出力ロック中に発電機出力が出力制限値以上のときは出力下げ運転を行い、出力ロック中に発電機出力が出力目標値以下のときは許可電力値を超えない範囲内で大きくなる出力上げ運転を行う出力制限装置12と、出力制限運転中に、発電機出力が出力制限値以下、かつ水槽水位が水位下限値以下となったときは、出力制限運転から水位調整運転に切り替える運転切替装置13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川からの水を一時的に貯える水槽の下方に発電機を駆動する水車が設置された流れ込み式水力発電設備の水槽水位や発電機出力を制御する流れ込み式水力発電設備の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流れ込み式水力発電設備は、河川からの水を一時的に貯える水槽からの水で水車を駆動し、水車に連結された発電機を駆動して発電するものである。このような流れ込み式水力発電では、水槽に流れ込んだ水量に合わせて水車を駆動する水位調整運転が行われる。水位調整運転は水位調整装置により、水槽に流れ込んだ水量分をそのまま水車に供給するようにガイドベーン開度が調整され、水車に供給される水の流量を調整することによって行われる。従って、水位調整運転では水槽水位が所定範囲内に維持される。
【0003】
流れ込み式水力発電設備は、許可された取水流量を超過して水を使用してはならない。そこで、取水流量管理は、水路水位を計測して使用水量に換算したり、発電機出力を計測して使用水量(取水流量)に換算して管理するようにしている。発電機出力を使用水量に換算して管理する場合には、許可使用水量に対応する発電機出力(以下、許可電力値という)を求め、発電機出力が許可電力値を超えないように発電機出力を制御することになる。
【0004】
発電機出力を決定する要素は水車に流入する流量と落差とである。このため、外的要因により水槽水位が変動すると発電機出力も変動してしまい、完全には発電機出力を制限することができない。水槽水位が変動しても発電機出力(使用水量)を許可電力値以内に抑制することが要請される。
【0005】
落差が変動した場合でも発電所の有効電力を規定値内に収められるようにしたものとして、第1段設定値が設定された有効電力リレーと、第2段設定値が設定された有効電力リレーとの2種類の有効電力リレーを設け、有効電力が第1段設定値を越えたときは、負荷制限設定器の設定値に対する増加指令をロックし、第2段設定値を越えたときは負荷制限設定器に設定値の低減指令を出力し、発電機出力を規定値(許可電力値)内になるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−227799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のものでは、落差が変動した場合でも発電機出力を規定値内に制限できるが、発電機出力を抑制した後に元の水位調整運転に戻すタイミングについての考慮がなく、もし、発電機出力が第1段設定値未満の近傍で変動しているときには、発電機出力が第1段設定値未満となっただけで元の水位調整運転に戻すと、第1段設定値が設定された有効電力リレーが再度動作して、発電機出力の出力制限運転と水位調整運転とが頻繁に切り替わりハンチングを起こすことがある。
【0008】
また、発電機出力を抑制するための増加指令のロックや低減指令の出力だけであるので、発電機出力が抑制された運転状態を継続することがある。その場合、発電機出力が規定値(許可電力値)に対して余裕があるのに、発電機出力が低下した運転状態を継続することになり、そうすると、流れ込み式水力発電設備の平均出力が低下することになる。
【0009】
本発明の目的は、出力制限運転から元の水位調整運転に戻す際のハンチングを防止でき、また、発電機出力が許可電力値を超えない範囲内で大きくなるように制御できる流れ込み式水力発電設備の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置は、流れ込み式水力発電設備の水槽水位が所定水位範囲になるようにガイドベーン開度を調整して発電機出力を制御する水位調整装置と、前記発電機出力が予め設定された所定出力範囲となるようにガイドベーン開度を調整する出力制限装置と、前記水槽水位及び前記発電機出力に基づいて前記水位調整装置による水位調整運転と前記出力制限装置による出力制限運転との運転切り替えを行う運転切替装置とを有し、前記運転切替装置は、前記水槽水位が水位下限値以上で水位上限値以下であるとき、または、前記発電機出力が出力目標値以下、かつ前記水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下であるときは、水位調整運転指令を前記水位調整装置に出力する水位調整運転判定部と、前記水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下、かつ前記発電機出力が出力目標値以上で出力制限値以下であるときは、ガイドベーン開度をロックする出力ロック指令を前記出力制限装置に出力し、前記出力ロック指令による出力ロック中に、前記発電機出力が出力制限値以上となったときはガイドベーン開度を閉方向に駆動する出力下げ運転指令を前記出力制限装置に出力する出力制限運転判定部と、前記出力制限装置による出力制限運転中に、前記発電機出力が出力制限値以下、かつ前記水槽水位が水位下限値以下となったときは、水位調整運転指令を前記水位調整装置に出力する水位調整運転復帰判定部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置は、請求項1の発明において、前記出力制限運転判定部は、前記出力ロック指令による出力ロック中に、前記発電機出力が出力目標値以下となったときはガイドベーン開度を開方向に駆動する出力上げ運転指令を前記出力制限装置に出力することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置は、請求項1または2の発明において、前記出力制限運転判定部は、前記水槽水位が水位警報値以上のとき、または、前記出力制限装置による出力制限運転継続時間が所定時間以上のときは、取水口ゲートを閉方向に調整する取水口ゲート調整指令を前記出力制限装置に出力することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置は、請求項1乃至3のいずれか1項の発明において、前記出力制限運転判定部は、水車効率を変化させる給気弁が動作中は、ガイドベーン開度をロックする出力ロック指令を前記出力制限装置に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下、かつ発電機出力が出力目標値以上で出力制限値以下であるときはガイドベーン開度をロックし、その出力ロック中に発電機出力が出力制限値以上となると、ガイドベーン開度を閉方向に駆動する出力下げ運転指令を出力するので、発電機出力が許可電力値を超えない範囲内に維持できる。また、発電機出力が出力制限値以下で水槽水位が水位下限値以下となったときに水位調整運転に戻すので、発電機出力を抑制した後に元の水位調整運転に戻す際のハンチングを防止できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、出力ロック中に発電機出力が出力目標値以下となったときはガイドベーン開度を開方向に駆動するので、発電機出力が抑制されて低減した運転状態の継続を防止でき、発電機出力が許可電力値を超えない範囲内で大きくなるように制御できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、水槽水位が水位警報値以上のとき、または、出力制限運転継続時間が所定時間以上のときは、取水口ゲートを閉方向に調整するので、発電機出力の出力制限運転中において水槽水位を水位警報値以下に維持でき、取水可能水量超過による法令違反を防ぐことができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、水車効率を変化させる給気弁が動作中は、ガイドベーン開度をロックするので、給気弁が動作することによる発電機出力の増加を抑制でき、発電機出力が許可電力値を超えることを確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置の一例のブロック構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る水位調整運転判定部の一例のブロック構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る出力制限運転判定部の一例のブロック構成図。
【図4】本発明の実施形態に係る水位調整運転復帰判定部の一例のブロック構成図。
【図5】本発明の実施形態に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置の動作の一例を示すタイムチャート。
【図6】本発明の実施形態に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置の他の一例のブロック構成図。
【図7】本発明の実施形態に係る出力制限運転判定部の他の一例のブロック構成図。
【図8】図6に示した流れ込み式水力発電設備の制御装置の動作の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置の一例のブロック構成図である。流れ込み式水力発電設備の制御装置は、流れ込み式水力発電設備の水槽水位が所定水位範囲になるように制御する水位調整装置11と、発電機出力が予め設定された所定出力範囲となるように制御する出力制限装置12と、水位調整装置11による水位調整運転と出力制限装置12による出力制限運転との運転切り替えを行う運転切替装置13とを有する。
【0020】
水位調整装置11はガイドベーン開度制御手段14を有する。ガイドベーン開度制御手段14は、運転切替装置13の水位調整運転判定部15により水位調整運転をすべき状態であると判定されたとき、または水位調整運転復帰判定部29により水位調整運転に復帰すべき状態であると判定されたときに起動される。そして、ガイドベーン開度検出器40で検出されたガイドベーン開度GV及び水槽水位検出器16で検出された水槽水位Wを入力し、水槽水位Wが所定水位範囲になるようにガイドベーン駆動装置17を駆動し、ガイドベーン開度を調整して発電機出力を制御する。
【0021】
出力制限装置12は、ガイドベーン開度をロックするガイドベーン開度ロック手段18、ガイドベーン開度を閉じる方向に駆動するガイドベーン閉方向駆動手段19、ガイドベーン開度を開く方向に駆動するガイドベーン開方向駆動手段20、河川から水槽への取水量を調整するための取水口ゲートを開閉制御する取水口ゲート開閉制御手段21を有する。
【0022】
ガイドベーン開度ロック手段18は、運転切替装置13における出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23により、出力をロックすべき状態であると判定されたときに起動され、ガイドベーン駆動装置17を介してガイドベーン開度を現在の開度にロックする。
【0023】
ガイドベーン閉方向駆動手段19は、運転切替装置13における出力制限運転判定部22の出力下げ運転判定部24により、出力を下げるべき状態であると判定されたときに起動され、ガイドベーン駆動装置17を介してガイドベーン開度を現在の開度より閉める方向に駆動する。
【0024】
ガイドベーン開方向駆動手段20は、運転切替装置13における出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定部25により、出力を上げるべき状態であると判定されたときに起動され、ガイドベーン駆動装置17を介してガイドベーン開度を現在の開度より開く方向に駆動する。
【0025】
取水口ゲート開閉制御手段21は、運転切替装置13における出力制限運転判定部22の取水口ゲート調整判定部26により、取水口ゲートを開閉制御すべき状態であると判定されたときに起動され取水口ゲート駆動装置27を介して取水口ゲートを開閉制御する。
【0026】
運転切替装置13は、水槽水位検出器16で検出された水槽水位W及び発電機出力検出器28で検出された発電機出力Pに基づいて、水位調整装置11による水位調整運転と出力制限装置12による出力制限運転との運転切り替えを行うものであり、水位調整運転をすべき状態であるか否かを判定する水位調整運転判定部15、出力制限運転をすべき状態であるか否かを判定する出力制限運転判定部22、出力制限運転から水位調整運転に復帰させるべき状態にあるか否かを判定する水位調整運転復帰判定部29を有する。
【0027】
水位調整装置11による水位調整運転から出力制限装置12による出力制限運転への切り替えは、出力制限運転判定部22により出力制限運転をすべき状態になったと判定されたときに行われる。一方、出力制限装置12による出力制限運転から水位調整装置11による水位調整運転への切り替えは、水位調整運転判定部15により水位調整運転をすべき状態になったと判定されたときではなく、水位調整運転復帰判定部29により、出力制限運転から水位調整運転に復帰させるべき状態にあると判定されたときに行われる。
【0028】
すなわち、水位調整運転中に出力制限運転判定部22により出力制限運転をすべき状態になったと判定されたときは、水位調整装置11による水位調整運転から出力制限装置12による出力制限運転に即座に切り替わるが、出力制限運転中に水位調整運転判定部15により水位調整運転をすべき状態になったと判定されたとしても、出力制限装置12による出力制限運転から水位調整装置11による水位調整運転に切り替わることなく、水位調整運転復帰判定部29により、出力制限運転から水位調整運転に復帰させるべき状態にあると判定されたときに、水位調整運転に切り替わる。これは、後述するように、出力制限運転と水位調整運転とが頻繁に切り替わるハンチングを防止するためである。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る水位調整運転判定部15の一例のブロック構成図である。水槽水位検出器16で検出された水槽水位Wは、基準水位判定部30及び高水位判定部31に入力される。また、発電機出力検出器28で検出された発電機出力Pは、目標出力判定部32に入力される。
【0030】
基準水位判定部30は、水槽水位Wが基準水位範囲内であるか否か、すなわち、水位下限値LW1以上で水位上限値LW2以下(LW1≦W≦LW2)であるか否かを判定するものである。
【0031】
高水位判定部31は、水槽水位Wが高水領域であるか否か、すなわち、水位上限値LW2以上で水位警報値W0未満(LW2≦W<W0)であるか否かを判定するものであり、水槽水位Wが基準水位範囲を超えているが水位警報値W0未満であるか否かを判定するものである。
【0032】
また、目標出力判定部32は、発電機出力Pが出力目標値Pr以下(P≦Pr)であるか否かを判定するものである。出力目標値Prは流れ込み式水力発電設備が出力を許可されている許可電力値Paよりも小さい予め定めた電力値である。このことから、目標出力判定部32は、水車に流入する流量や落差が変動して発電機出力Pが変動しても、許可電力値Paを逸脱しない出力範囲であるか否かを判定する。
【0033】
水槽水位Wが基準水位範囲内であるとき、つまり、水位下限値LW1以上で水位上限値LW2以下(LW1≦W≦LW2)であるときは、水位調整運転をすべき状態であると判定し、OR回路33を介して水位調整運転を保持し、水位調整運転指令を水位調整装置11に出力する。
【0034】
一方、水槽水位Wが基準水位範囲を超えているが、発電機出力Pが変動しても許可電力値Paを逸脱しない出力範囲であるとき、つまり、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0以下(LW2≦W≦W0)であり、かつ、発電機出力Pが出力目標値Pr以下(P≦Pr)であるときは、AND回路34を介して水位調整運転を保持し、水位調整運転指令を水位調整装置11に出力する。
【0035】
このように、水位調整運転判定部15は、水槽水位Wが基準水位範囲内であるとき、または、水槽水位Wが基準水位範囲を超えているが、発電機出力Pが変動しても許可電力値Paを逸脱しない出力範囲であるときは、水位調整運転をすべき状態であると判定し、水位調整運転指令を水位調整装置11に出力する。
【0036】
図3は、本発明の実施形態に係る出力制限運転判定部22の一例のブロック構成図である。出力ロック判定部23は高出力判定部35及び高水位判定部31を有する。高出力判定部35は、発電機出力Pが高出力領域であるか否か、すなわち、発電機出力Pが出力目標値Pr以上で出力制限値LP以下(Pr≦P<LP)であるか否かを判定するものである。出力制限値LPは許可電力値Paより小さい値である。
【0037】
一方、高水位判定部31は、前述したように、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0未満(LW2≦W<W0)であるか否かを判定するものである。発電機出力Pが出力目標値Pr以上であり、かつ、水槽水位Wが基準水位範囲を超えているときは、水位調整運転を継続すると、発電機出力Pが将来的に許可電力値Paを逸脱するおそれがあるので、出力制限運転を行う状態であると判定する。この場合、水槽水位Wは水位警報値W0未満であり、発電機出力Pは出力制限値LP以下であるので、発電機出力Pが即座に許可電力値Paを逸脱するおそれはないと判定できる。従って、出力をロックする状態であると判定する。
【0038】
すなわち、発電機出力Pが出力目標値Pr以上であり、かつ、水槽水位Wが基準水位範囲を超えているときは、AND回路34を介して水位調整運転を解除し、出力制限運転を保持するともに出力ロックを保持し、出力制限装置12のガイドベーン開度ロック手段18に出力ロック指令を出力する。これにより、ガイドベーン開度ロック手段18はガイドベーン開度を現在の開度にロックする。
【0039】
次に、出力下げ運転判定部24は制限出力判定部36を有する。制限出力判定部36は発電機出力Pが出力制限値LP以上であるか否かを判定するものである。出力ロック中に発電機出力Pが出力制限値LP以上となったときは、発電機出力Pが許可電力値Paを逸脱するおそれが生じるので、出力を下げる運転が必要となった状態であると判定する。
【0040】
すなわち、出力ロック中で、かつ、発電機出力Pが出力制限値LP以上となったときは、AND回路34を介して出力ロックを解除し、出力制限装置12のガイドベーン閉方向駆動手段19に出力運転下げ指令を出力する。これにより、ガイドベーン閉方向駆動手段19はガイドベーン開度を現在の開度より閉める方向に駆動する。
【0041】
一方、出力上げ運転判定部25は補正出力判定部41を有する。補正出力判定部41は、発電機出力Pが出力目標値Prより小さい補正出力値Pc以下(P≦Pc)であるか否かを判定するものである。出力ロック中に発電機出力Pが補正出力値Pc以下となったときは、発電機出力Pが許可電力値Paを逸脱するおそれはなく、むしろ、発電機出力Pが補正出力値Pc以下で抑制された運転状態を継続するおそれがある。そこで、出力ロック中に発電機出力Pが補正出力値Pc以下となったときはガイドベーンを開方向に駆動し、発電機出力Pを増加させる。
【0042】
すなわち、出力ロック中で、かつ、発電機出力Pが補正出力値Pc以下となったときは、AND回路34を介して出力ロックを解除し、出力制限装置12のガイドベーン開方向駆動手段20に出力運転上げ指令を出力する。これにより、ガイドベーン開方向駆動手段20はガイドベーンを現在の開度より開く方向に駆動する。これにより、発電機出力Pが抑制されて出力目標値Pr以下での低減した運転状態の継続を防止でき、発電機出力Pが許可電力値を超えない範囲内で大きくなるように制御できる。
【0043】
次に、取水口ゲート調整判定部26は警報水位判定部37及び出力制限継続時間判定部38を有する。警報水位判定部37は水槽水位Wが水位警報値W0以上(W≧W0)か否かを判定するものである。水位警報値W0は水槽の天端位置もしくは天端位置より下方の位置が予め設定される。これは、許可された取水流量を超過して水を取水しないようにするためである。
【0044】
また、出力制限継続時間判定部38は、出力制限装置12による出力制限運転継続時間Tが所定時間(出力制限運転継続設定時間Tr)以上か否かを判定するものである。出力制限装置12による出力制限運転継続時間Tが所定時間(出力制限運転継続設定時間Tr)以上継続しているときは、出力制限運転により水槽水位Wが基準水位範囲(LW1≦W≦LW2)内に回復しないときであるので、水槽水位Wを調整して水位調整運転に戻すためである。
【0045】
すなわち、取水口ゲート調整判定部26は、水槽水位Wが水位警報値W0以上のとき、または、出力制限装置12による出力制限運転継続時間Tが所定時間Tr以上のときは、取水口ゲートを閉方向に調整する取水口ゲート調整指令を出力制限装置12に出力し、取水可能水量超過による法令違反を防ぐとともに、出力制限運転により水槽水位Wが高となった状態が継続して、出力制限運転が長期に渡って継続することを防止する。
【0046】
図4は、本発明の実施形態に係る水位調整運転復帰判定部29の一例のブロック構成図である。水位調整運転復帰判定部29は低水位判定部39を有する。低水位判定部39は、水槽水位Wが水位下限値LW1以下(W≦LW1)であるか否かを判定するものであり、水槽水位Wが基準水位範囲以下であるかどうかを判定するものである。
【0047】
すなわち、水位調整運転復帰判定部29は、出力制限運転中に、水槽水位Wが基準水位範囲以下(W≦LW1)となったときに、AND回路34を介して出力制限運転を解除し水位調整運転を保持して、水位調整装置11に水位調整運転指令を出力する。水槽水位Wが基準水位範囲以下(W≦LW1)となった状態で水位調整運転に切り替えるので、出力制限運転判定部22による出力制限運転に切り替える水位条件(LW2≦W<W0)となるには、ある程度の水位幅(LW2−LW1)が保たれる。従って、出力制限運転と水位調整運転とが頻繁に切り替わるハンチングを防止できる。
【0048】
図5は、本発明の実施形態に係る流れ込み式水力発電設備の制御装置の動作の一例を示すタイムチャートである。時点t1以前においては、発電機出力Pは出力目標値Pr未満であり、水槽水位Wは水位上限値LW2未満である。従って、図2に示す水位調整運転判定部15は、水位調整運転を保持して水位調整運転指令を水位調整装置11に出力しているので、水位調整装置11による水位調整運転が行われている。
【0049】
時点t1で、発電機出力Pが出力目標値Pr以上となり、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0以下となると、図3に示す出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23は、水位調整運転を解除して出力制限運転を保持するとともに出力ロックを保持し、出力ロック指令を出力制限装置12のガイドベーン開度ロック手段18に出力する。これにより、出力制限装置12による出力制限運転での出力ロックとなり、ガイドベーン開度が現在の開度にロックされる。また、出力制限装置12による出力制限運転が開始されると、取水口ゲート調整判定部26は、出力制限運転継続時間Tをカウント開始する。
【0050】
出力制限運転での出力ロック中の時点t2において、水車に流入する流量や落差の変動により、発電機出力Pが出力制限値LP以上となったとすると、図3に示す出力制限運転判定部22の出力下げ運転判定部24は、出力ロックを解除して出力下げ運転指令を出力制限装置12のガイドベーン閉方向駆動手段19に出力する。これにより、出力制限装置12による出力制限運転での出力下げ運転となり、ガイドベーンが閉方向に駆動される。従って、発電機出力Pが時間遅れを持って徐々に減少してくる。
【0051】
そして、時点t3において、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0以下の状態で、発電機出力Pが出力制限値LP以下となると、出力ロック判定部23の判定条件が成立することになるので、出力制限運転での出力下げ運転から出力制限運転での出力ロックに切り替わる。
【0052】
次に、この出力ロック中の時点t4で、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0以下の状態で、発電機出力Pが補正出力値Pc以下となると、図3に示す出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定部25は、出力ロックを解除して出力上げ運転指令を出力制限装置12のガイドベーン開方向駆動手段20に出力する。これにより、出力制限装置12による出力制限運転での出力上げ運転となり、ガイドベーンが開方向に駆動される。従って、発電機出力Pが時間遅れを持って徐々に増加してくる。
【0053】
そして、時点t5において、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0以下の状態で、発電機出力Pが出力制限値Pr以上となると、出力ロック判定部23の判定条件が成立することになるので、出力制限運転での出力上げ運転から出力制限運転での出力ロックに切り替わる。
【0054】
図5では、時点t5以降において、図3に示す出力制限運転判定部22の出力下げ運転判定部24の判定条件や、図3に示す出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定部25の判定条件を満たさない場合を示しているので、出力制限運転での出力ロックは保持されたままである。もし、時点t5以降において、図3に示す出力制限運転判定部22の出力下げ運転判定部24の判定条件を満たす状態となると出力制限運転での出力下げ運転が行われ、図3に示す出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定部25の判定条件を満たす状態となると、出力制限運転での出力上げ運転が行われることになる。
【0055】
そして、時点t6において、図4に示す水位調整運転復帰判定部29の判定条件を満たす状態になると、すなわち、発電機出力Pが補正出力値Pc以上で、水槽水位Wが水位下限値LW1以下となると、水位調整運転復帰判定部29は、出力制限運転を解除して水位調整運転を保持し水位調整運転指令を水位調整装置11のガイドベーン開度制御手段14に出力する。これにより、水位調整装置11による水位調整運転となり、ガイドベーン開度が基準水位範囲に維持されるようにガイドベーン開度が制御される。
【0056】
このように、水槽水位Wが水位下限値LW1以下となると、出力制限運転から水位調整運転に切り替わるので、水槽水位Wは、ある程度の水位幅(LW2−LW1)が保たれた状態で、出力制限運転から水位調整運転に切り替わり、出力制限運転と水位調整運転とが頻繁に切り替わるハンチングを防止できる。
【0057】
また、取水口ゲート調整判定部26にてカウントした出力制限装置12による出力制限運転継続時間Tが予め定めた所定時間(出力制限運転継続設定時間Tr)を超えたときは、取水口ゲート調整判定部26は、取水口ゲートを閉方向に調整する取水口ゲート調整指令を出力制限装置12に出力する。これは、前述したように、出力制限運転より水槽水位の回復が行われないときは、長期間にわたって出力制限運転が継続することになり、水位調整運転に戻すことができなくなるので、早期に水槽水位を基準水位範囲内に戻すためである。
【0058】
以上の説明では、水車効率を変化させる給気弁の開閉動作を外部条件として採り入れていないが、給気弁の開閉動作を外部条件として採り入れるようにしてもよい。これは、給気弁の開閉動作中には発電機出力Pが大幅に変動するので、給気弁の開閉動作中にはガイドベーン開度をロックし、発電機出力Pが確実に許可電力値Paを超過しないようにするためである。
【0059】
図6は起動時やがぶり運転時の給気弁の開閉動作を外部条件として採り入れた流れ込み式水力発電設備の制御装置のブロック構成図である。図1に示した一例に対し、運転切替装置13の出力制限運転判定部22に、ガイドベーン開度検出器40で検出されたガイドベーン開度GV及び給気弁を駆動する給気弁駆動装置42から給気弁の駆動状態を入力し、出力制限運転判定部22は、ガイドベーン開度GVが給気弁の閉動作開始手前の第1規定開度になったときは出力制限運転を行うべき状態であると判定し、給気弁の閉動作中はガイドベーン開度をロックすべき状態であると判定するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0060】
給気弁は給気管からドラフト管への大気の給気量を調整して水車効率を変化させる弁であり、給気弁駆動装置42はガイドベーン開度GVを入力し、ガイドベーン開度GVが予め定めた第1規定開度GV1となり、さらにガイドベーン開度GVが第2規定開度GV2となると閉動作を開始する。一方、出力制限運転判定部22は、ガイドベーン開度GVが予め定めた第1規定開度GV1となると、出力運転制限運転をすべき状態であると判定する。
【0061】
給気弁駆動装置42は、ガイドベーン開度GVが予め定めた第2規定開度GV2以上となると給気弁の閉動作を開始して水車効率を向上させる。水力発電設備によっては、給気弁を数段階で閉動作させる場合がある。例えば、給気弁を一旦中間開度まで閉じ、ガイドベーン開度GVがさらに開いた後に中間開度から全閉まで閉動作させる場合があるが、以下の説明では、1段階で閉動作させる場合について説明する。
【0062】
この給気弁の開閉動作中には発電機出力Pが大幅に変動し、特に、給気弁の閉動作中には、発電機出力Pが許可電力値Paを超過することがある。そこで、給気弁の閉動作中はガイドベーン開度をロックし、発電機出力Pが確実に許可電力値Paを超過しないように、出力制限装置12により出力制限を行う。
【0063】
例えば、水力発電設備の始動時やがぶり運転出力上昇時には、ガイドベーン開度は小さい開度から大きい開度に変化していくので、ガイドベーン開度が予め定めた第2規定開度以上となると給気弁は閉動作する。給気弁の閉動作により発電機出力Pは大幅に増加するので、この給気弁の閉動作による発電機出力Pの変動を事前に抑制するために、出力制限装置12によりガイドベーン開度をロックする。
【0064】
ここで、がぶり運転とは、水車のステーベーンやガイドベーンに絡まった落ち葉を取り除くための運転であり、通常運転状態からガイドベーンを閉め、例えば無負荷開度まで急激に閉めて、その後に通常運転状態に戻す運転である。このがぶり運転を定期的に行い、乱流を発生させて水車のステーベーンやガイドベーンに絡まった落ち葉を取り除くための運転である。がぶり運転の出力上昇時には、水力発電設備の始動時と同様に、ガイドベーン開度は小さい開度から大きい開度に変化していき、ガイドベーン開度が予め定めた第2規定開度以上となると給気弁は閉動作する。
【0065】
そこで、出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定手段25は、ガイドベーン開度GVが給気弁の閉動作開始手前の第1規定開度になったときは出力制限運転を行うべき状態であると判定し、水位調整運転から出力制限運転の出力上げ運転に切り替える。また、出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23は、給気弁駆動装置42から給気弁の駆動状態を入力し、給気弁駆動装置42により給気弁が動作しているときはガイドベーン開度をロックすべき状態であると判定し、出力をロックする。また、水位調整運転復帰判定部29は、図4に示した一例と同様に、水槽水位Wが水位下限値LW1以下(W≦LW1)となると、出力制限運転から水位調整運転に切り替える。
【0066】
図7は、本発明の実施形態に係る出力制限運転判定部22の他の一例のブロック構成図である。この他の一例の出力制限運転判定部22は、図3に示した実施形態の出力制限運転判定部22に対し、出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定部25にガイドベーン開度判定部43を追加して設けるとともに、出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23に給気弁駆動装置42から給気弁の駆動状態を入力するようにしたものである。図3と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0067】
図7に示すように、出力上げ運転判定部25にはガイドベーン開度判定部43が設けられている。ガイドベーン開度判定部43は、ガイドベーン開度検出器40で検出したガイドベーン開度GVを入力し、ガイドベーン開度GVが第1規定開度GV1以上で第2規定開度GV2以下(GV1≦GV≦GV2)であるか否かを判定する。そして、ガイドベーン開度GVが第1規定開度GV1以上で第2規定開度GV2以下(GV1≦GV≦GV2)であるときは、水位調整運転を解除し、出力制限運転を保持して出力上げ運転指令を出力する。
【0068】
これにより、ガイドベーン開度GVが給気弁の閉動作開始手前の第1規定開度GV1となると、水位調整運転から出力制限運転に切り替わり、ガイドベーン開度GVが給気弁の閉動作開始となる第2規定開度GV2になるまで、出力制限運転での出力上げ運転が行われる。
【0069】
次に、出力ロック判定部23には、AND回路34で得られた高出力判定部35の出力と高水位判定部31の出力との論理積と、給気弁駆動装置42からの給気弁閉動作中との論理和を演算するOR回路33が追加して設けられている。
【0070】
従って、出力ロック判定部23は、高出力判定部35での判定により発電機出力Pが出力目標値Pr以上であり、かつ、高水位判定部31の判定により水槽水位Wが基準水位範囲を超えているとき、または、給気弁駆動装置42からの給気弁の駆動状態が給気弁閉動作中であるときは、水位調整運転を解除し、出力制限運転を保持するともに出力ロックを保持し、出力制限装置12のガイドベーン開度ロック手段18に出力ロック指令を出力する。
【0071】
これにより、給気弁駆動装置42からの給気弁駆動状態が給気弁閉動作中であるときも、ガイドベーン開度を現在の開度にロックするので、給気弁の閉動作により発電機出力Pが大幅に変動することを防止できる。
【0072】
図8は、図6に示した流れ込み式水力発電設備の制御装置の動作の一例を示すタイムチャートである。図8では、がぶり運転でのがぶり運転出力上昇指令が時点t1で出力された以降のタイムチャートを示している。前述したように、がぶり運転の出力上昇時には、水力発電設備の始動時と同様に、給気弁は開いており、ガイドベーン開度は小さい開度から大きい開度に変化していき、ガイドベーン開度が予め定めた第1規定開度GV1以上となり、さらに第2規定開度GV2となると給気弁は閉動作する。
【0073】
いま、時点t1において、がぶり運転出力上昇指令が出力されたとする。これにより、水位調整装置11が起動され、水位調整装置11は水槽水位Wが所定水位範囲(LW1≦W≦LW2)になるように制御する。時点t1では水槽水位Wは水位上限値LW2(W≦LW2)であるので、水位調整装置11はガイドベーン駆動装置17によりガイドベーンを徐々に開いていく。時点t2において、ガイドベーン開度GVが第1規定開度GV1になると、水位調整運転から出力制限運転に切り替わる。すなわち、出力制限運転判定部22の出力上げ運転判定部25は出力制限装置12のガイドベーン閉方向駆動手段20に出力上げ運転指令を出力する。これにより、出力上げ運転となり、ガイドベーンは、出力制限装置12のガイドベーン開方向駆動手段20により開いていく。
【0074】
そして、時点t3において、ガイドベーン開度が第2規定開度GV2となると、給気弁駆動装置42が給気弁を閉方向に駆動し始める。これにより、出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23は出力ロック指令を出力制限装置12のガイドベーン開度ロック手段18に出力する。従って、給気弁の閉動作中においては出力ロックすることになる。これにより、給気弁が動作することによる発電機出力の増加を抑制でき、発電機出力Pが許可電力値Paを超えることを確実に抑制できる。
【0075】
次に、時点t3において、給気弁が全閉となると給気弁は閉動作が完了し閉動作完了となる。この給気弁が閉動作完了した時点t4で、図8に示すように、発電機出力が出力目標値Pc以下であるとすると、出力制限運転判定部32の出力上げ運転判定部25は、出力ロックを解除し出力上げ運転指令をガイドベーン開方向駆動手段20に出力する。
【0076】
時点t4以降においては、図1に示した水力発電設備の制御装置と同様の動作となる。すなわち、時点t5において、発電機出力が出力目標値Pr以上となり、水槽水位Wが水位上限値LW2以上で水位警報値W0未満(LW2≦W<W0)であると、出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23が動作する。出力制限運転判定部22の出力ロック判定部23は、水位調整運転を解除して出力制限運転を保持出力制限運転を保持するとともに出力ロックを保持し、出力ロック指令を出力制限装置12のガイドベーン開度ロック手段18に出力する。これにより、出力制限装置12による出力制限運転での出力ロックとなり、ガイドベーン開度が現在の開度にロックされる。
【0077】
また、時点t6において、水位調整運転復帰判定部29の判定条件を満たす状態になると、すなわち、出力制限運転中に水槽水位Wが水位下限値LW1以下となると、水位調整運転復帰判定部29は、出力制限運転を解除して水位調整運転を保持し水位調整運転指令を水位調整装置11のガイドベーン開度制御手段14に出力する。これにより、水位調整装置11による水位調整運転となり、ガイドベーン開度が基準水位範囲に維持されるようにガイドベーンが制御される。
【0078】
ここで、水槽水位Wは、がぶり運転開始によりガイドベーンが急激に閉じられると、理論上は水槽の天端位置を超える場合があるが、水槽の天端位置を超えた水は水槽から越流するので、実際の水槽水位Wは水槽の天端位置が上限となる。図8では、天端位置以上の理論上の水槽水位Wを点線で示している。
【0079】
本発明の実施形態によれば、水槽水位Wが基準水位範囲(LW1≦W≦LW2)を超えた高水位領域(LW2≦W<W0)であり、発電機出力Pが高出力領域(Pr≦P<LP)であるときは、ガイドベーン開度をロックし、その出力ロック中に発電機出力Pが出力制限値LP以上になると、ガイドベーンを閉方向に駆動する出力下げ運転指令を出力するので、発電機出力Pを許可電力値Paを超えない範囲内に維持できる。
【0080】
また、発電機出力Pが補正出力値Pc以上で水槽水位Wが水位下限値LW1以下となったときに水位調整運転に戻すので、発電機出力Pを抑制した後に元の水位調整運転に戻す際にハンチングを発生することがない。
【0081】
また、出力ロック中に発電機出力Pが補正出力値Pc以下となったときはガイドベーンを開方向に駆動するので、発電機出力Pが抑制されて低減した運転状態の継続を防止でき、発電機出力Pが許可電力値Paを超えない範囲内で大きくなるように制御できる。
【0082】
さらに、水槽水位Wが水位警報値W0以上のとき、または、出力制限運転継続時間Tが所定時間Tr以上のときは、取水口ゲートを閉方向に調整するので、発電機出力Pの出力制限運転中において水槽水位Wを水位警報値W0以下に維持でき、取水可能水量超過による法令違反を防ぐことができる。
【0083】
また、給気弁の閉動作中にはガイドベーン開度をロックするので、発電機出力Pが大幅に変動することを防止できる。つまり、給気弁の閉動作中に発電機出力Pが許可電力値Paを超過しないようにできる。
【符号の説明】
【0084】
11…水位調整装置、12…出力制限装置、13…運転切替装置、14…ガイドベーン開度制御手段、15…水位調整運転判定部、16…水槽水位検出器、17…ガイドベーン駆動装置、18…ガイドベーン開度ロック手段、19…ガイドベーン閉方向駆動手段、20…ガイドベーン開方向駆動手段、21…取水口ゲート開閉制御手段、22…出力制限運転判定部、23…出力ロック判定部、24…出力下げ運転判定部、25…出力上げ運転判定部、26…取水口ゲート調整判定部、27…取水口ゲート駆動装置、28…発電機出力検出器、29…水位調整運転復帰判定部、30…基準水位判定部、31…高水位判定部、32…目標出力判定部、33…OR回路、34…AND回路、35…高出力判定部、36…制限出力判定部、37…警報水位判定部、38…出力制限継続時間判定部、39…低水位判定部、40…ガイドベーン開度検出器、41…補正出力判定部、42…給気弁駆動装置、43…ガイドベーン開度判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ込み式水力発電設備の水槽水位が所定水位範囲になるようにガイドベーン開度を調整して発電機出力を制御する水位調整装置と、
前記発電機出力が予め設定された所定出力範囲となるようにガイドベーン開度を調整する出力制限装置と、
前記水槽水位及び前記発電機出力に基づいて前記水位調整装置による水位調整運転と前記出力制限装置による出力制限運転との運転切り替えを行う運転切替装置とを有し、
前記運転切替装置は、
前記水槽水位が水位下限値以上で水位上限値以下であるとき、または、前記発電機出力が出力目標値以下、前記水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下であるときは、水位調整運転指令を前記水位調整装置に出力する水位調整運転判定部と、
前記水槽水位が水位上限値以上で水位警報値以下、前記発電機出力が出力目標値以上で出力制限値以下であるときは、ガイドベーン開度をロックする出力ロック指令を前記出力制限装置に出力し、前記出力ロック指令による出力ロック中に、前記発電機出力が出力制限値以上となったときはガイドベーン開度を閉方向に駆動する出力下げ運転指令を前記出力制限装置に出力する出力制限運転判定部と、
前記出力制限装置による出力制限運転中に、前記発電機出力が出力制限値以下、前記水槽水位が水位下限値以下となったときは、水位調整運転指令を前記水位調整装置に出力する水位調整運転復帰判定部とを備えたことを特徴とする流れ込み式水力発電設備の制御装置。
【請求項2】
前記出力制限運転判定部は、前記出力ロック指令による出力ロック中に、前記発電機出力が出力目標値以下となったときはガイドベーン開度を開方向に駆動する出力上げ運転指令を前記出力制限装置に出力することを特徴とする請求項1記載の流れ込み式水力発電設備の制御装置。
【請求項3】
前記出力制限運転判定部は、前記水槽水位が水位警報値以上のとき、または、前記出力制限装置による出力制限運転継続時間が所定時間以上のときは、取水口ゲートを閉方向に調整する取水口ゲート調整指令を前記出力制限装置に出力することを特徴とする請求項1または2記載の流れ込み式水力発電設備の制御装置。
【請求項4】
前記出力制限運転判定部は、水車効率を変化させる給気弁が動作中は、ガイドベーン開度をロックする出力ロック指令を前記出力制限装置に出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の流れ込み式水力発電設備の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72357(P2013−72357A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211998(P2011−211998)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】