説明

流体制御弁

【課題】流路面積を大きくすること、及び、流体の流れの妨げとなる部分をなくすこと。
【解決手段】
第1流路21と第2流路22を備える樹脂製弁本体2と、樹脂製弁本体2の上面に連結される樹脂製弁上体3と、樹脂製弁本体2と樹脂製弁上体3との間に狭持される樹脂製のダイアフラム弁体4とを備えること、第1流路21は、一端が第1ポート23に連通する円筒状の第1ポート連通流路21aと他端が弁孔16に連通する円筒状の第1弁孔連通流路21bとを備え、第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bが連通すること、第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bとの内角側の連結部にテーパ曲面21cを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流路と第2流路を備える樹脂製弁本体と、樹脂製弁本体の上面に連結される樹脂製弁上体と、樹脂製弁本体と樹脂製弁上体との間に狭持される樹脂製のダイアフラム弁体とを備える流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、図11に示す下記の特許文献1に記載された流体制御弁100がある。
図11に示すように、流体制御弁100は、弁室113が成形されており弁室113には、第1流路121及び第2流路122が連通している。第1流路121及び第2流路122は、図示しない流体を供給するチューブと連通している。弁室113と第1流路121が連通する周辺部には弁座115が形成されており、弁座115に対して当接離間可能なダイアフラム弁体104が成形されている。第1流路121は、第1ポート連通流路121a及び第1弁孔連通流路121bを有する。第1流路121及び第2流路122は、流体制御弁100内部で直角に連結している。第1ポート連通流路121a及び第1弁孔連通流路121bと連結部のうち弁座115の下部には弁座肉部125が成形されている。
チューブを介して第1流路121を流れた流体は、弁室113を流れ第2流路122へと流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−153132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下の課題があった。
すなわち、流体制御弁100に流体を流す場合と、流体制御弁100に連通するチューブに流体を流す場合とでは流路内径が同じであるにも関わらず、流体制御弁100の方が流路構造が複雑なため圧力損失が大きい。そのため、流体の流れが悪くなりCv値が低下し流量が少なくなるため問題となる。
また、流体は、圧力が高い箇所から低い箇所へ最短距離を流れる性質を有するが、第1流路121から第2流路122へ向かう途中の流路には弁座肉部125が形成されているため流路が曲がり長くなり流れの妨げとなる。それにより、流体の流れが悪くなりCv値が低下し流量が小さくなることも問題となる。
また、流体は流れの妨げとなる弁座肉部125にぶつかり流体に乱流が生じる。乱流は主流以外のその他の流体の流れの妨げとなりCv値を低下させる原因となるため問題となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は流路面積を大きくすること、及び、流体の流れの妨げとなる部分をなくして流れを直線的にすること、により流体の流れ易さを向上させた流体制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における流体制御弁は、以下の構成を有する。
(1)第1流路と第2流路を備える樹脂製弁本体と、前記樹脂製弁本体の上面に連結される樹脂製弁上体と、前記樹脂製弁本体と前記樹脂製弁上体との間に狭持される樹脂製のダイアフラム弁体とを備えること、前記第1流路は、一端が第1ポートに連通する円筒状の第1ポート連通流路と他端が弁孔に連通する円筒状の第1弁孔連通流路とを備え、前記第1ポート連通流路と前記第1弁孔連通流路が連通すること、前記第1ポート連通流路と前記第1弁孔連通流路との内角側の連結部にテーパ形状の曲面が成形されていること、が好ましい。
【0007】
(2)(1)に記載する流体制御弁において、前記テーパ形状の曲面は、回転軌跡が円錐状である切削加工工具により成形されたものであること、が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
上記流体制御弁の作用及び効果について説明する。
(1)第1流路と第2流路を備える樹脂製弁本体と、前記樹脂製弁本体の上面に連結される樹脂製弁上体と、前記樹脂製弁本体と前記樹脂製弁上体との間に狭持される樹脂製のダイアフラム弁体とを備えること、前記第1流路は、一端が第1ポートに連通する円筒状の第1ポート連通流路と他端が弁孔に連通する円筒状の第1弁孔連通流路とを備え、前記第1ポート連通流路と前記第1弁孔連通流路が連通すること、前記第1ポート連通流路と前記第1弁孔連通流路との内角側の連結部にテーパ形状の曲面が成形されていることにより、第1流路の流路面積を大きくすることができる。流路面積を大きくすることによりCv値の低下を防止でき流量を増大することができる。すなわち、連結部にテーパ形状の曲面が成形されることにより、第1ポート連通流路と第1弁孔連通流路との間に、斜め形状の流路が追加成形される。それにより、斜め形状の流路が追加成形されることによりその分だけ流路面積が大きくなるため、流量を多くすることができるのである。
また、連結部にテーパ形状の曲面が成形されることにより、第1流路内に流体の流れの妨げとなる部分がなくなる。そのため、第1流路から第2流路への流路が直線に近くなり実質的な流路長さが短くなり流体がスムーズに流れる。そのためCv値の低下を防止することができ流量を増大させることができる。また、第1流路内に流体の流れの妨げとなる部分がないことにより、流体が弁座肉部にぶつかり発生する乱流が少なくなる。乱流が少なくなることにより、Cv値を低下させることを防止することができる。
また、テーパ形状の曲面の傾斜角度を調整し、流体が第1流路から第2流路に直接流れる向きを成形して第1流路から第2流路への流路が直線に近くすることができる。そのため、第1流路から流れる流体の勢いをそのままに第2流路へ流体を流すことができCv値の低下を防止することができる。
また、流体制御弁を現状より大きくすることなく流量を増やすことができるため、省エネルギーにつながる。
【0009】
(2)(1)に記載する流体制御弁において、テーパ形状の曲面は、回転軌跡が円錐状である切削加工工具により成形されたものであることにより、連結部にテーパ形状の曲面を成形することができる。また、テーパ形状の曲面と同じ形状の切削加工工具を使用することにより容易に連結部に狙った傾斜角度のテーパ形状の曲面を成形することができる。すなわち、樹脂製の流体制御弁にテーパ形状の曲面を成形するために、複雑な追加加工等を必要としないため、容易に連結部にテーパ形状を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る流体制御弁(閉弁時)の断面図である。
【図2】本実施形態に係る流体制御弁(開弁時)の断面図である。
【図3】本実施形態に係る流体制御弁(1)の流体解析結果におけるイメージ図である。
【図4】本実施形態に係る流体制御弁(2)の流体解析結果におけるイメージ図である。
【図5】従来技術に係る流体制御弁の流体解析結果におけるイメージ図である。
【図6】本実施形態に係る樹脂製弁本体の製造工程(1)の断面斜視図である。
【図7】本実施形態に係る樹脂製弁本体の製造工程(2)の断面斜視図である。
【図8】本実施形態に係る樹脂製弁本体の製造工程(3)の断面斜視図である。
【図9】本実施形態に係る樹脂製弁本体の製造工程(4)の断面斜視図である。
【図10】本実施形態に係る切削加工工具の側面図である。
【図11】従来技術に係る流体制御弁の断面図である。
【図12】本実施形態に係る切削加工工具の変形実施形態(1)の正面図である。
【図13】本実施形態に係る図12に示す切削加工工具の変形実施形態(1)の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る流体制御弁の一実施の形態について図面を参照して説明する。
<流体制御弁の全体構成>
図1は、本実施形態に係る流体制御弁1の断面図(閉弁時)を示す。図2は、本実施形態に係る流体制御弁1の断面図(開弁時)を示す。
図1及び図2に示す流体制御弁1は、従来技術と同様、半導体製造装置に組み付けられ、薬液の供給をする。流体制御弁1は、ノーマルクローズタイプのエアオペレイト式開閉弁である。流体制御弁1は、樹脂製弁本体2の上面に樹脂製弁上体3を連結し、樹脂製弁本体2と樹脂製弁上体3との間にダイアフラム弁体4が狭持されている。流体制御弁1は、樹脂製弁上体3内のピストン35を摺動させることにより、ダイアフラム弁体4を弁座15に当接又は離間させる。流体制御弁1は、半導体製造装置に取り付けるための取付板5が樹脂製弁本体2の下面に固設されている。
【0012】
<樹脂製弁本体の構成>
樹脂製弁本体2は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等、耐腐食性や耐熱性に優れた樹脂を成形したものである。
【0013】
図1に示すように、樹脂製弁本体2の上面には、弁室13が円筒状に成形されている。弁室13は、円形状の第1ポート23と連通する第1流路21の一端と円形状の第2ポート24と連通する第2流路22の一端が連通している。第1流路21が弁室13に開口する部分には弁孔16が成形されている。弁孔16の周辺部には、弁座15が一体成形されている。
【0014】
第1流路21は、一端が第1ポート23に連通する円筒形状の第1ポート連通流路21aと他端が弁室13に連通する円筒形状の第1弁孔連通流路21bを有する。第1ポート連通流路21aは第1ポート23の中心に対して軸心方向に成形されている。他方、第1弁孔連通流路21bは、弁孔16の軸心方向に成形されている。第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bは、樹脂製弁本体2内部で直角に連結している。図1に示す、第1ポート連通流路21a及び第1弁孔連通流路21bと弁室13の間には、弁座15を支持する弁座肉部25が成形されている。
【0015】
図1に示すように、第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bの連結部のうち弁座肉部25と接する内角側の面は、断面テーパ形状であるテーパ曲面21cが成形されている。テーパ曲面21cは、弁座肉部25のうち第1連結角面25a及び第2連結角面25bを結んだ面に成形される。第1連結角面25aは、第1弁孔連通流路21bの内角側の側壁面に成形されている。第2連結角面25bは第1ポート連通流路21aの内角側の側壁面に成形されている。
【0016】
<テーパ曲面の成形方法>
図6乃至図9に樹脂製弁本体2におけるテーパ曲面21cの成形工程(1)〜(4)の断面斜視図を示す。
テーパ曲面21cの成形方法は、図6に示すテーパ曲面21cが成形されていない状態の樹脂製弁本体2に対してテーパ曲面21cを成形する工程である。図6に示すテーパ曲面21cを成形するまでの樹脂製弁本体2の成形方法は従来と変わるところがないため説明を割愛する。
【0017】
図7に示すように、切削加工工具50を弁室13の弁室開口部131から軸心T方向に対して第1弁孔連通流路21bに挿入するように垂直中心方向に下降させる。切削加工工具50のテーパ部521の中心が連結角面21dと同じ高さの位置まで下降したところで下降を止め図7の位置に位置させる。本実施形態においては、切削加工工具50を下降させる際に切削加工工具50を軸心Tに対して時計回りに回転させながら下降させている。本実施形態においては、切削加工工具50を下降させる際に回転させることにしたが、例えば、回転させずに下降させることもできる。
【0018】
図10に切削加工工具50の側面図を示す。図10に示すように、切削加工工具50は、シャフト51とシャフト51の先端部に固設された切削部52を有する。切削部52は略円錐形状をなし、テーパ部521、底面522とR面523を有する。テーパ部521には、切削加工が可能な刃物形状となっている。テーパ部521の傾斜角度は、本実施形態においては底面522に対して45度の形状である。略円錐形状である切削部52の径には、シャフト51に近い部分から径の小さい径A、径が最も大きい径C、径Aと径Cの中間にある径Bがある。径Cの大きさは、第1弁孔連通流路21bの径よりも小さい径とする。それにより、切削加工工具50を第1弁孔連通流路21bに挿入することができる。径Aの大きさはシャフト51の径と同じ径である。
【0019】
図8に示すように、切削加工工具50のテーパ部521を連結角面21d(図7に示す)に押し当てるように矢印Q方向へ切削加工工具50を例えば軸心T方向に時計回りに回転させながら移動させる。図10に示すように、連結角面21dに対して切削部52の中心である径Bに係る部分が水平に当接するように切削加工工具50を水平移動させる。テーパ部521は切削加工が可能な刃物形状となっているため、角がある連結角面21dを切削することができる。連結角面21dはテーパ部521により切削加工される。そのため、本実施形態においては、連結角面21dはテーパ部521と同じ角度である45度のテーパ曲面21cに切削加工される。
なお、本実施形態においては、連結角面21dに対して切削加工工具50の切削部52の中心である径Bに係る部分が水平に当接するように移動させているが、連結角面21dに当接する切削部52の部分は適宜変更することができる。
【0020】
図8の状態から、切削加工工具50を矢印Q方向の反対方向に移動させて元の位置に戻し、切削加工工具50を図中軸心T方向に上昇させることにより切削加工工程を終了する。図9に示すように、切削加工工具50による切削加工が終了した樹脂製弁本体2は、テーパ曲面21cが成形される。テーパ曲面21は、切削加工工具50の切削部52と同様の形状を有する。
【0021】
<樹脂製弁上体の構成>
図1に示す樹脂製弁上体3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPFA、PP、PVDF等、耐腐食性や剛性を有する樹脂を材質とする。樹脂製弁上体3は、シリンダ32とカバー33とで構成され、ピストン室34を成形する。樹脂製のピストン35は、ピストン室34に摺動可能に装填され、カバー33との間に縮設される復帰ばね31により図中弁閉方向に常時付勢されている。ピストン35は、操作ポート33aからピストン室34に供給される操作エアの圧力と復帰ばね31の反発力とのバランスに応じて、ピストン室34を図中上下方向に移動する。ピストン35には、ピストンロッド36が一体成形されている。ピストンロッド36は、ピストン35に一体的に構成されシリンダ32に摺動可能に組み込まれ、ダイアフラム弁体4に連結されている。
【0022】
<ダイアフラム弁体の構成>
ダイアフラム弁体4は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等、耐腐食性及び耐熱性に優れた樹脂を材質とし、切削により形作られている。ダイアフラム弁体4は、弁座15に当接又は離間する円柱状の弁体部4aと、弁体部4aの外周面に接続する薄膜部4bと、薄膜部4bの外縁に沿って肉厚に設けられた周縁部4cとから構成されている。ダイアフラム弁体4は、周縁部4cが樹脂製弁本体2と樹脂製弁上体3との間で挟み込まれて環状溝26の内壁にシールすることにより固定されている。弁体部4aには、弁座15と当接するシール部41が突起部として成形されている。
【0023】
<流体制御弁の作用効果>
(流体の入力出力)
図1に示すように、流体制御弁1は、第1流路21に第1ポート23と第2流路22に第2ポート24が接続される。流体制御弁1は、操作ポート33aに操作エアが供給されない場合には、復帰ばね31の付勢力によりダイアフラム弁体4を弁座15に当接させている。そのため、第1ポート23から第1流路21を介して弁孔16に流入した薬液は、弁座15においてダイアフラム弁体4に遮断され、第2流路22から第2ポート24へ出力されない。
一方、図2に示すように、流体制御弁1は、操作ポート33aに操作エアが供給されると、ピストン35が上昇してダイアフラム弁体4が弁座15から離間する。そのため、第1ポート23から第1流路21に流入した流体は、弁孔16を介して弁室13、第2流路22へ供給され第2ポート24へ出力される。
【0024】
(テーパ曲面が成形されていることによる効果)
図3に、流体制御弁(1)の流体解析結果におけるイメージ図を示す。図4に、流体制御弁(2)の流体解析結果におけるイメージ図を示す。図5に、従来技術に係る流体制御弁の流体解析結果におけるイメージ図を示す。
図3乃至図5のイメージ図は、それぞれの流体制御弁に対して流体を流した場合の流速の変化を調べたシミュレーション(模擬実験)結果である。流速の変化は、流速R1〜R11として、点描によって表す。流速の速い流速R1に近いほど点描の密度が高く、流速の遅い流速R11に近いほど点描の密度が低くなるように示す。
【0025】
(従来技術に係る流体制御弁の流体解析結果)
図5に、従来技術に係る流体制御弁100の流体解析結果における流速変化の分布図を示す。図5に示すように、流体制御弁100は、弁室113が成形されており弁室113には、第1流路121及び第2流路122が連通している。第1流路121は、第1ポート連通流路121a及び第1弁孔連通流路121bを有する。第1流路121及び第2流路122は、流体制御弁100内部で直角に連結している。図5に示す、第1ポート連通流路121a及び第1弁孔連通流路121bと連結部のうち弁座肉部125と接する内角側の面には連結曲面121dが成形されている。
【0026】
流体は、圧力が高い箇所から低い箇所へ最短距離を流れる性質を有する。そのため、図5に示す流体制御弁100では、第1流路121から第2流路122に対して流体が流れるため、第1流路121から第2流路122へと向かう最短距離を流体が流れる。第1流路121から第2流路122に流入する最短距離である弁座115とダイアフラム弁体104との間に流体が集中する。そのため、弁座115とダイアフラム弁体104の間の領域P1の流速は流速R1を含み速い流速で流れる。
【0027】
また、第1ポート連通流路121aから第1弁孔連通流路121bへ流れる際には、第2流路122へと向かう最短距離である連結曲面121d付近に流体が集中する。連結曲面121d付近で流体の流速が最も速い部分が領域P2である。領域P2の流速は流速R3を含み速い流速で流れる。領域P2から領域P3乃至P6となるに従って流速も流速R4乃至R7と遅くなる。また連結曲面121d付近で第2流路122へ向かって流れる流体のうち広い領域で流れているのが領域P5で示す流速R6である。
【0028】
(流体制御弁(1)の流体解析結果)
図3に、本実施形態に係る流体制御弁1の流体解析結果における流速変化の分布図を示す。図3に示すように、流体制御弁1は、第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bの連結部のうち弁座肉部25と接する面は、断面テーパ形状である傾斜角度45度のテーパ曲面21cが成形されている点に特徴を有する。流体制御弁1におけるその他の構成は、上記構成において詳細に説明したため説明を割愛する。
【0029】
前述したように流体は、圧力が高い箇所から低い箇所へ最短距離を流れる性質を有する。そのため、図3に示す流体制御弁1では、第1流路21から第2流路22に対して流体が流れるため、第1流路21から第2流路22へと向かう最短距離を流体が流れる。第1流路21から第2流路22に流入する最短距離である弁座15とダイアフラム弁体4との間に流体が集中する。そのため、弁座15とダイアフラム弁体4の間の領域Q1の流速は流速R1を含み速い流速で流れる。
【0030】
また、第1ポート連通流路21aから第1弁孔連通流路21bへ流れる際には、第2流路への最短距離であるテーパ曲面21c付近に流体が集中する。テーパ曲面21c付近で流体の流速が最も速い部分が領域Q2である。領域Q2の流速は流速R2を含み速い流速で流れる。図3に示す流体制御弁1においては、従来技術と比較して第1流路21内にテーパ曲面21cが成形されている。テーパ曲面21cが成形されていることにより、第1流路21の流路面積が大きくなる。したがって、流速が従来技術と比較して速くなる。また、流量が多くなるためCv値を低下させることを防止することができる。
【0031】
また、領域Q2においての流速が流速R2と速くなる理由としては、テーパ曲面21cが成形されることにより、従来技術の第1流路内において流体の流れの妨げとなる図5に示す連結曲面121dがなくなる。そのため、第1流路21から第2流路22へとつながる流路が直線に近くなり実質的な流路長さが短くなり流体がスムーズに流れる。そのためCv値の低下を防止することができ流量を増大させることができる。また、流路が直線に近くなることにより、流体の最短距離を流れる性質を利用して流量を増大させることができる。
さらに、図3に示す実施形態においてはテーパ曲面21cの傾斜角度が45度に成形されている。傾斜角度が45度であることによりテーパ曲面21c付近を流れた流体の進行方向は直接領域Q1へと向かう。流体が領域Q1に直接向かうことにより、第1流路21を流れた流体の勢いをそのままに第2流路へ流すことができるためCv値の低下を防止することができる。
したがって、流体がスムーズに流れるため流速が速くなりCv値の低下を防止することができる。
【0032】
また、テーパ曲面21cが成形され、従来技術の第1流路内において流体の流れの妨げとなる図5に示す連結曲面121dがなくなることにより、流体が連結曲面121dにぶつかることにより生じていた乱流が生じなくなる。乱流が生じなくなることにより、流体のスムーズな流れを阻害することがなくなりCv値の低下を防止できる。乱流が生じなくなり流体がスムーズに流れるため、領域Q2においての流速が流速R2と速くなる。
【0033】
また、領域Q2から領域Q3乃至Q6となるに従って流速も流速R3乃至R6と遅くなる。また連結曲面21c付近で第2流路22へ向かって流れる流体のうち広い領域で流れているのが領域Q6で示す流速R6である。したがって、領域P1以外で最も流速が速い領域である領域P2においては流速R2である。また、最も広い領域で流体が流れる領域Q6においては流速R6である。図5に示す領域P5と図3に示す領域Q6がともに流速R6を含む領域である点においては同じであるが、図3に示す流速R6を含む領域Q6は図5に示す流速R6を含む領域P5と比較して大きい面積を有する。すなわち、流速R6を含む領域Q6においては、第1ポート連通流路21aの全域にわたる部分まで広がっている。第1流路21にテーパ曲面21cが成形されることにより、流体の全体の流れが良くなり流速が速くなるためである。
【0034】
また、略円錐状の切削加工工具50によって成形されたテーパ曲面21cは、切削加工工具50と同様に底面522に近いほど切削面積が大きくシャフト51に近いほど切削面積が小さい。そのため、テーパ曲面21cは、第1ポート連通流路21aに近いほうの切削面積が大きく、第1弁孔連通流路21bに近いほうの切削面積が小さい。流体は面積が大きいところから小さいところへと流れる時、流速が上がる。
【0035】
(流体制御弁(2)の流体解析結果)
図4に、本実施形態に係る流体制御弁1のテーパ曲面21cの傾斜角度を60度としたテーパ曲面221cを有する流体制御弁200の流体解析結果における流速変化の分布図を示す。図4に示すように、流体制御弁200は流体制御弁1と比較して、テーパ曲面21cの傾斜角度が60度であること以外異なる点はないため詳細な説明を割愛する。
【0036】
流体は、圧力が高い箇所から低い箇所へ最短距離を流れる性質を有する。そのため、図4に示す流体制御弁200では、第1流路221から第2流路222に対して流体が流れることになり、第1流路221から第2流路222へと向かう最短距離を流体が流れる。第1流路221から第2流路222に流入する最短距離である弁座215とダイアフラム弁体204との間に流体が集中する。そのため、弁座215とダイアフラム弁体204の間の領域S1の流速は流速R1を含み速い流速で流れる。領域S1に流体が集中し流速R1となり流速が速いことは上記従来技術と同様である。
【0037】
また、第1ポート連通流路221aから第1弁孔連通流路221bへ流れる際には、最短距離であるテーパ曲面221c付近に流体が集中する。テーパ曲面221c付近で流体の流速が最も速い部分が領域S2である。領域S2の流速は流速R3を含み速い流速で流れる。図4に示す流体制御弁200においては、従来技術と比較して第1流路221内にテーパ曲面221cが成形されている。テーパ曲面221cが成形されていることにより、第1流路221の流路面積が大きくなる。さらに、流路面積が大きくなる部分が、従来技術における図5に示す流体が集中する第1弁孔連通流路121bと第1ポート連通流路121aの連結部にあたる第1弁孔連通流路221bと第1ポート連通流路221aの連結部であるため、流体の流れが良くなる。したがって、流速が従来技術と比較して流速R3と速い領域の面積が従来技術における図5と比較して大きい面積を有する。
【0038】
さらに、領域S2から領域S3乃至S6となるに従って流速も流速R4乃至R7と遅くなる。また連結曲面221c付近で第2流路222へ向かって流体のうち広い領域で流れているのが領域S5で示す流速R6である。したがって、領域S1以外で最も流速が速い領域である領域S2においては流速R2である。また、最も広い領域で流体が流れる領域S5においては流速R6である。最も広い領域で流体が流れる領域S5において流速R6を含む点においては、図5に示す従来技術に係る流体制御弁100の領域P5と同じであるが、図4に示す流速R6を含む領域S5は、図5に示す流速R6を含む領域P5と比較して大きい。すなわち、第1流路221にテーパ曲面221cが成形されることにより、流体の全体の流れが良くなり流速が速くなるためである。他方、図3に示すテーパ曲面の傾斜角度45度の流体制御弁1と同じであるが、流速R6を含む領域S5は図3に示す流速R6を含む領域Q6と比較して小さい。その理由は、テーパ曲面221cの傾斜角度が60度であり、傾斜角度45度の場合と比較して流路面積が狭くなっているためである。したがって、傾斜角度60度であってもテーパ曲面221cが成形されていることにより、本実施形態と同様の効果を得ることができるが、傾斜角度が45度である方が流路面積が大きくなり、Cv値の低下防止の効果は大きい。
【0039】
以上詳細に説明した本実施形態においては以下の作用効果を有する。
第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bとの連結部にテーパ形状のテーパ曲面21cが成形されていることにより、第1流路21の流路面積を大きくすることができる。流路面積を大きくすることによりCv値の低下を防止することができ流量を増大することができる。すなわち、連結部にテーパ曲面21cが成形されることにより、第1ポート連通流路21aと第1弁孔連通流路21bとの間に、斜め形状の流路が追加成形される。斜め形状の流路が追加成形されることによりその分だけ流路面積が大きくなるため、流量を多くすることができる。
また、連結部にテーパ曲面21cが成形されることにより、第1流路21内に流体の流れの妨げとなる部分がなくなる。そのため、第1流路21から第2流路22へとつながる流路が直線に近くなり実質的な流路長さが短くなるので流体がスムーズに流れ、Cv値の低下を防止することができる。また、第1流路21内に流体の流れの妨げとなる部分がないことにより、流体に乱流が生じなくなる。乱流が生じなくなることにより、流体のスムーズな流れを阻害することがないためCv値の低下を防止することができる。
また、連結部にテーパ曲面21cの傾斜角度を調整し、第2流路22に直接流れる向きを成形することにより、第1流路21から流れる流体の勢いをそのままに第2流路22へ流体を流すことができCv値の低下を防止することができる。
また、流体制御弁1を大きくすることなく小さいままで流量を増やすことができるため、省エネルギーにつながる。
【0040】
テーパ曲面21cは円錐状の切削加工工具50が有する同じ形状部分により切削加工されたことにより、連結部にテーパ曲面21cを成形することができる。また、テーパ曲面21cと同じ形状の切削加工工具50を使用することにより容易に連結部に狙った傾斜角度のテーパ曲面21cを切削加工することができる。すなわち、樹脂製の流体制御弁1にテーパ曲面21cを切削加工するために、複雑な追加加工等を必要としないため、容易に連結部にテーパ曲面21cを成形することができる。
【0041】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
【0042】
例えば、本実施形態においてはテーパ曲面の傾斜角度を45度したが、それ以外の角度でテーパ曲面が成形されていることにより傾斜角度45度よりも流体の流れは悪くなるが、従来技術のテーパ曲面が成形されていない流体制御弁と比較して流体の流れは良くなる。したがって、傾斜角度は45度以上であっても、また45度以下であってもよい。
【0043】
例えば、本実施形態においてはテーパ曲面の傾斜角度を45度とすることにより、第1ポート連通流路21bから第1弁孔連通流路21aへと流体が流れる際に流体の勢いがよくなりCv値の低下を防止することができる旨の説明をした。その他、弁座15とダイアフラム弁体4との間の図3に示す領域Q1へ直接向かう形状であれば傾斜角度は45度でなくてもよい。領域Q1へ直接向かう形状であれば流体の勢いを保持してCv値の低下を防止することができるためである。
【0044】
例えば、本実施形態においては流体制御弁1をノーマルクローズタイプのエアオペレイト式開閉弁としたが、ノーマルオープンタイプ、ノーマルクローズの複動タイプ、ノーマルオープンの複動タイプのエアオペレイト式開閉弁とすることもできる。
【0045】
例えば、図12及び図13に本実施形態にかかる切削加工工具の変形例を示す。図12に示すように、切削加工工具300は、シャフト310とシャフト310の先端部に固設された切削部320を有する。図12に示すように、切削部320は正面直角三角形状をなし、テーパ部321、底面322を有する。切削部320は下面から見ると、図13に示すように、シャフト310から遠い先端部323に切削部324が成形されている。
図示しないが、切削加工工具300のシャフト310の根元にはモータ等の回転機構が備えられ、回転機構が回転することによりシャフト310も回転する。シャフト310が回転することによりシャフト310に固設された切削部320も同様に回転する。テーパ曲面を成形する際には、切削加工工具300は、テーパ面を成形する位置にまで下降し、その後切削する方向に回転横移動をする。回転横移動をすることにより、切削加工工具300の回転軌跡が円錐状となり、テーパ面を成形することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 流体制御弁
16 弁孔
2 樹脂製弁本体
21 第1流路
21a 第1ポート連通流路
21b 第1弁孔連通流路
21c テーパ曲面
22 第2流路
23 第1ポート
24 第2ポート
25 弁座肉部
25a 第1連結角面
25b 第2連結角面
3 樹脂製弁上体
4 ダイアフラム弁体
50 切削加工工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路と第2流路を備える樹脂製弁本体と、前記樹脂製弁本体の上面に連結される樹脂製弁上体と、前記樹脂製弁本体と前記樹脂製弁上体との間に狭持される樹脂製のダイアフラム弁体とを備えること、
前記第1流路は、一端が第1ポートに連通する円筒状の第1ポート連通流路と他端が弁孔に連通する円筒状の第1弁孔連通流路とを備え、前記第1ポート連通流路と前記第1弁孔連通流路が連通すること、
前記第1ポート連通流路と前記第1弁孔連通流路との内角側の連結部にテーパ形状の曲面が成形されていること、
を特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載する流体制御弁において、
前記テーパ形状の曲面は、回転軌跡が円錐状である切削加工工具により成形されたものであること、
を特徴とする流体制御弁。




【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159122(P2012−159122A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18108(P2011−18108)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】