流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具
【課題】噴射対象物と噴射先端との接触状態に応じて流体の噴射動作を制御するのに好適な流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具を提供する。
【解決手段】流体噴射装置1を、流体室501と、流体室501の容積を変更する容積変更部405と、流体室501からの脈動をノズル211の流体噴射開口部212に伝達する接続流路管200と、流体を供給するポンプ20と、容積変更部405を駆動する駆動部30と、ノズル211に加振力を付与する圧電素子50と、振動を受振する歪みゲージ51とを含む構成とした。そして、駆動部30は、振動検出部30cによって歪みゲージ51で受振した振動の大きさを検出し、動作制御部30aにおいて、検出電圧値と閾値とを比較してノズル211が接触しているか否かを判定し、接触しているときに、容積変更部405を動作可能に制御し、非接触のときに、容積変更部405を動作しないように制御する。
【解決手段】流体噴射装置1を、流体室501と、流体室501の容積を変更する容積変更部405と、流体室501からの脈動をノズル211の流体噴射開口部212に伝達する接続流路管200と、流体を供給するポンプ20と、容積変更部405を駆動する駆動部30と、ノズル211に加振力を付与する圧電素子50と、振動を受振する歪みゲージ51とを含む構成とした。そして、駆動部30は、振動検出部30cによって歪みゲージ51で受振した振動の大きさを検出し、動作制御部30aにおいて、検出電圧値と閾値とを比較してノズル211が接触しているか否かを判定し、接触しているときに、容積変更部405を動作可能に制御し、非接触のときに、容積変更部405を動作しないように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を高速で噴射する流体噴射装置に係り、特に、噴射対象物と噴射先端との接触状態に応じて流体の噴射動作を制御するのに好適な流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織を切開または切除する流体噴射装置として、本発明者らによる流体噴射装置がある(特許文献1を参照)。
かかる流体噴射装置は、容積が変更可能な流体室と、流体室に連通する入口流路及び出口流路と、駆動信号の供給に応じて流体室の容積を変更する容積変更部とを備える脈動発生部と、出口流路に一方の端部が連通され、他方の端部が出口流路の直径よりも縮小された流体噴射開口部(ノズル)が設けられた接続流路と、接続流路が穿設され流体室から流動される流体の脈動を流体噴射開口部に伝達し得る剛性を有する接続流路管と、入口流路に流体を供給する圧力発生部とを備え、圧力発生部により一定圧力で入口流路に流体を供給すると共に、容積変更部によって流体室の容積を変更して脈動を発生し流体の吐出動作を行う。
【0003】
この流体噴射装置の流体室はその容積を変更しない場合、圧力発生部からの供給圧力と流路抵抗の釣り合った状態で流体が流れている。この状態ではノズルからの流体の吐出は連続的で、その速度が遅いために組織の切除能力はほとんどない。
一方、流体室を急激に縮小すると、流体室の圧力が上昇する。そのとき、入口流路から流体が流体室へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路に脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管内を伝播して、先端のノズルの流体噴射開口部から高速で流体が噴射される。
この動作を繰り返すことで高速のパルス・ジェットによる流体の吐出が可能となる。流体室の縮小拡大動作を圧電素子で行うことによって、数[msec]以下での起動停止が可能である。
このことは、本出願人らによる圧力発生部が不要である別の発明(特許文献2を参照)の流体噴射装置においても同様である。
【特許文献1】特開2008−82202号公報
【特許文献2】特開2005−152127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の流体噴射装置を、例えば、ウォーターメスとして手術に適用した場合に、手術は、ノズルがほとんど患部に密着した状態で行われる。そのため、流体を噴射中にノズルが患部から離れると、流体噴射による液滴の飛散が発生し、それとともに切除されたがん細胞等の組織片が辺りに飛び散ったりする恐れがあった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、噴射対象物と噴射先端との接触状態に応じて流体の噴射動作を制御するのに好適な流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の流体噴射装置は、容積が変更可能な流体室と、
前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、
前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、
前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振手段と、
前記近傍の部材の振動の大きさを検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段で検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御する動作制御手段と、を備える。
【0006】
このような構成であれば、容積変更手段で流体室の容積が変更されると、流体室内の圧力が変化し脈動流が発生する。そして、この該脈動流は出口流路を通って流体噴射開口部から噴射される。
更に、加振手段によって、流体噴射開口部の近傍の部材に加振力が付与されると、流体噴射開口部の近傍の部材が振動すると共に流体噴射開口部が振動する。
更に、振動検出手段によって、前記近傍の部材の振動の大きさが検出されると、動作制御手段によって、検出された振動の大きさに基づき、容積変更手段の動作が制御される。
ここで、流体の噴射対象物又はその近傍の物体(噴射した流体による液溜まりなど)に振動中の流体噴射開口部を接触させると、流体噴射開口部及び前記近傍の部材の振動の大きさが変化し(小さくなり)、この変化が振動検出手段によって検出される。
【0007】
このことを踏まえて、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、流体噴射開口部が何にも接触していないときの大きさのときは、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えないようにその動作を制御したり、流体の噴射力が弱まるようにその動作を制御したりするようにしておく。
更に、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、流体噴射開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触しているときの大きさのとき(接触していないときよりも小さい振動のとき)は、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えるようにその動作を制御するようにしておく。
【0008】
これにより、流体噴射開口部が噴射対象物又はその近傍の物体に接触していないときに、噴射動作をさせないようにしたり、噴射力を弱めるようにしたりできるので、流体噴射開口部が、利用者(以下、施術者とも言う)の操作ミス等によって、噴射対象物又はその近傍の物体から離れたときに、思わぬ方向への流体の噴射や、それによる切除された物質の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
ここで、上記流体噴射開口部の近傍の部材は、その部材に加振力を付与することで振動し、且つ流体噴射開口部を含む先端部分が物体(固体、液体など)に当接したときに近傍の部材の振動の大きさが変化(例えば、弱まる)ものが望ましい。
【0009】
〔形態2〕 更に、形態2の流体噴射装置は、形態1の流体噴射装置において、前記流体噴射開口部の近傍の部材が流体噴射開口部を構成する部材である。
このような構成であれば、加振手段によって、流体噴射開口部を構成する部材に加振力が付与されると、流体噴射開口部を構成する部材が振動する。
更に、振動検出手段によって、流体噴射開口部の振動の大きさが検出されると、動作制御手段によって、検出された振動の大きさに基づき、容積変更手段の動作が制御される。
【0010】
〔形態3〕 更に、形態2の流体噴射装置は、形態1の流体噴射装置において、前記流体噴射開口部の近傍に位置する吸引開口部と、前記吸引開口部を介して吸引した物体を搬送する通路とを有する吸引管と、前記吸引開口部の近傍の物体を吸引する吸引力を付与する吸引力付与手段と、を備え、
前記流体噴射開口部の近傍の部材が前記吸引開口部を構成する部材である。
このような構成であれば、吸引力付与手段によって吸引力が付与されると、吸引開口部の近傍にある物体(流体噴射開口部から噴射した流体や、流体の噴射により切除又は除去された物体(例えば、組織片など)など)が吸引され、この吸引された物体が吸引管内の通路を通って吸引物を収容する容器などに搬送される。
更に、加振手段によって、吸引開口部を構成する部材に加振力が付与されると、吸引開口部が振動する。
【0011】
更に、振動検出手段によって、吸引開口部の振動の大きさが検出されると、動作制御手段によって、検出された振動の大きさに基づき、容積変更手段の動作が制御される。
ここで、流体の噴射対象物又はその近傍の物体(噴射した流体による液溜まりなど)に振動中の吸引開口部を接触させると、吸引開口部の振動の大きさが変化し(小さくなり)、この変化が振動検出手段によって検出される。
【0012】
このことを踏まえて、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、吸引開口部が何にも接触していないときの大きさのときは、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えないようにその動作を制御したり、流体の噴射力が弱まるようにその動作を制御したりするようにしておく。
更に、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、吸引開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触しているときの大きさのとき(接触していないときよりも小さい振動のとき)は、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えるようにその動作を制御するようにしておく。
【0013】
これにより、吸引開口部が噴射対象物又はその近傍の物体に接触していないときに、噴射動作をさせないようにしたり、噴射力を弱めるようにしたりできるので、吸引開口部と共に流体噴射開口部が、施術者の操作ミス等によって、噴射対象物又はその近傍の物体から離れたときに、思わぬ方向への流体の噴射や、それによる切除された物質の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
更に、例えば、本形態の流体噴射装置をウォーターメスとして手術に用いた場合に、切除した生体組織片や吐出した流体を吸引することができるので、良好な視野を確保しながら手術を行うことができる。
【0014】
〔形態4〕 更に、形態4の流体噴射装置は、形態1又は2の流体噴射装置において、前記加振手段は、前記流体噴射開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記出口流路に設けた。
このような構成であれば、加振力発生部によって出口流路に対して加えられた加振力が流体噴射開口部又はその近傍の部材を振動させ、その振動が振動受振部において受振される。
【0015】
〔形態5〕 更に、形態5の流体噴射装置は、形態4の流体噴射装置において、前記出口流路の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けた。
このような構成であれば、加振力発生部及び振動受振部が曲げ難い部材で構成されている場合に、真っ直ぐな形状のまま、これらを出口流路に容易に取り付けることができる。
【0016】
〔形態6〕 更に、形態6の流体噴射装置は、形態3の流体噴射装置において、前記加振手段は、前記吸引開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記吸引管に設けた。
このような構成であれば、加振力発生部によって吸引管に対して加えられた加振力が吸引開口部を振動させ、その振動が振動受振部において受振される。
【0017】
〔形態7〕 更に、形態7の流体噴射装置は、形態6の流体噴射装置において、前記吸引管の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けた。
このような構成であれば、加振力発生部及び振動受振部が曲げ難い部材で構成されている場合に、真っ直ぐな形状のまま、これらを吸引管に容易に取り付けることができる。
【0018】
〔形態8〕 更に、形態8の流体噴射装置は、形態4乃至7のいずれか1の流体噴射装置において、前記振動受振部を歪みゲージを含んで構成した。
このような構成であれば、歪みゲージによって、簡易に振動の大きさを検出することができる。
〔形態9〕 更に、形態9の流体噴射装置は、形態4乃至8のいずれか1の流体噴射装置において、前記加振力発生部を圧電素子を含んで構成した。
このような構成であれば、圧電素子によって加振力を発生することができるので、印加電圧の制御によって、簡易に加振力の制御を行うことができる。
【0019】
〔形態10〕 更に、形態10の流体噴射装置は、形態8の流体噴射装置において、前記加振力発生部は、前記加振力を発生する圧電素子と同じ圧電素子によって、加振力を発生する機能と、振動を受振する、前記振動受振部としての機能とを兼ね備える。
このような構成であれば、加振力の発生と、振動の受振とを1つの圧電素子で行うことができるので、比較的低コストで加振手段及び振動検出手段を構成することができる。
【0020】
〔形態11〕 更に、形態11の流体噴射装置は、形態10の流体噴射装置において、前記加振手段は、前記圧電素子を駆動する駆動部を有し、
前記振動検出手段は、前記圧電素子に生じる起電力を検出する起電力検出部を有し、
前記駆動部による駆動信号の供給と前記起電力検出部による起電力の検出とを時分割で行うように制御する時分割制御手段を備える。
このような構成であれば、加振力の発生と、振動の受振とを1つの圧電素子で行うことができるので、比較的低コストで加振手段及び振動検出手段を構成することができる。
【0021】
〔形態12〕 更に、形態12の流体噴射装置は、形態4乃至11のいずれか1の流体噴射装置において、前記加振手段は、複数の前記加振力発生部を有し、前記複数の加振力発生部において発生する力が前記加振力を大きくするように各加振力発生部の動作を制御する。
このような構成であれば、より大きな加振力を発生することができるので、加振対象物をより大きく振動させることができ、振動の大きさの検出精度を高めることができる。
【0022】
〔形態13〕 更に、形態13の流体噴射装置は、形態1乃至12のいずれか1の流体噴射装置において、前記動作制御手段は、前記振動検出手段で検出された振動の大きさが所定の大きさよりも小さいときに前記容積変更手段が動作するように制御し、前記振動の大きさが前記所定の大きさ以上のときに前記容積変更手段が動作しないように制御する。
このような構成であれば、例えば、流体噴射開口部又は吸引開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触しているときに、流体の噴射を行わせることができ、流体噴射開口部又は吸引開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触していないときに、噴射動作をさせないようにすることができる。
【0023】
〔形態14〕 また、上記目的を達成するために、形態14の流体噴射装置の駆動方法は、容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、加振手段と、振動検出手段と、動作制御手段と、を備えた流体噴射装置の駆動方法であって、
前記加振手段に、前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振ステップと、
前記振動検出手段に、前記近傍の部材の振動の大きさを検出させる振動検出ステップと、
前記動作制御手段に、前記振動検出ステップで検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御させる動作制御ステップと、を含む。
これにより、上記形態1の流体噴射装置と同等の作用及び効果が得られる。
【0024】
〔形態15〕 また、上記目的を達成するために、形態15の手術用器具は、流体の噴射によって患部の治療的措置を支援する手術用器具であって、
形態1乃至形態13のいずれか1に記載の流体噴射装置を備える。
このような構成であれば、上記形態1乃至13のいずれか1の流体噴射装置による流体の噴射によって、腫瘍などの患部の切除などの治癒的措置の支援を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図9は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第1の実施の形態を示す図である。
なお、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、物体の切断や切除、手術用メス等様々に採用可能であるが、以下に説明する実施の形態では、生体組織を切開または切除することに好適なウォーター・パルス・メス(流体噴射装置及び手術用器具)を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水、生理食塩水、薬液等である。
【0026】
まず、本発明に係る流体噴射装置の構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。
流体噴射装置1は、図1に示すように、基本構成として、流体を収容する流体容器10と、圧力発生部としてのポンプ20と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100と、脈動発生部100を駆動する駆動部30と、振動発生用圧電素子50と、歪みゲージ51とを含んで構成されている。
更に、脈動発生部100には、細いパイプ状の接続流路管200が接続され、接続流路管200の先端部には接続流路管200の流路径よりも小さい流路径を有するノズル211が挿着されている。
【0027】
接続流路管200の外周面上には、ノズル211を振動させるための振動発生用圧電素子50(以下、単に圧電素子50と称す)と、ノズル211に発生した振動の大きさを検出するための歪みゲージ51が固着されている。
脈動発生部100の内側には、圧電素子50に駆動信号を供給するための2本の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と、歪みゲージ51のゲージ入力線及びゲージ出力線と、流体噴射用圧電素子401(後述)に駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT(−)及びJPZT(+)とを配線する通路が形成されている。
これらの通路は、脈動発生部100からの信号線の出口で合流し、4本の供給線と、ゲージ入力線及びゲージ出力線とは、1箇所の出口からまとめて外へと出る。
これらの線はケーブル45によってひとまとめにされて駆動部30に接続される。なお、ケーブル45の各線は、駆動部30のそれぞれ対応する構成部と電気的に接続される。
【0028】
次に、図1及び図2に基づき、流体噴射装置1における流体の流動を簡単に説明する。
ここで、図2は、本発明に係る脈動発生部100の構造を示す断面図である。なお、図2において、左右方向が上下方向に対応する。また、図2は、後述する図4におけるA−A'断面図である。
流体容器10に収容された流体は、接続チューブ15を介してポンプ20によって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25を介して脈動発生部100に供給される。脈動発生部100には流体室501と、この流体室501の容積を駆動部30からの駆動信号に応じて変更する容積変更部405とを備えており、この容積変更部405を駆動して脈動を発生し、接続流路管200、ノズル211を通して流体を高速で噴射する。脈動発生部100の詳しい説明については後述する。
【0029】
なお、圧力発生部としてはポンプ20に限らず、輸液バッグをスタンド等によって脈動発生部100よりも高い位置に保持するようにしてもよい。従って、ポンプ20は不要となり、構成を簡素化することができる他、消毒等が容易になる利点がある。
ポンプ20の吐出圧力は概ね3気圧(0.3MPa)以下に設定する。また、輸液バッグを用いる場合には、脈動発生部100と輸液バッグの液上面との高度差が圧力となる。輸液バックを用いるときには0.1〜0.15気圧(0.01〜0.015MPa)程度になるように高度差を設定することが望ましい。
【0030】
なお、この流体噴射装置1を用いて手術をする際には、術者が把持する部位は脈動発生部100である。従って、脈動発生部100までの接続チューブ25はできるだけ柔軟であることが好ましい。そのためには、柔軟で薄いチューブで、流体を脈動発生部100に送液可能な範囲で低圧にすることが好ましい。
また、特に、脳手術のときのように、機器の故障が重大な事故を引き起こす恐れがある場合には、接続チューブ25の切断等において高圧な流体が噴出することは避けなければならず、このことからも低圧にしておくことが要求される。
【0031】
次に、図2〜図4に基づき、脈動発生部100の構造について説明する。
ここで、図3は、流体噴射装置1の流体噴射部分の分解図であり、図4は、入口流路503の形態を示す平面図であり、上ケース500を下ケース301との接合面側から視認した状態を表している。
脈動発生部100は、図2〜図4に示すように、4隅に螺子穴500aの穿設された上ケース500と、4隅に螺子穴301a(図示は省略)の穿設された下ケース301とを備えている。そして、これら上ケース500と下ケース301とがそれぞれ対向する面において、螺子穴500a及び301aが対向するように接合され、4本の固定螺子600(図示は省略)を螺子穴500a及び301aに螺合することによって上ケース500と下ケース301とが螺着されている。
【0032】
下ケース301は、鍔部を有する中空筒状の部材であって、一方の端部は底板311で密閉されている。この下ケース301の内部空間に、容積変更部405を構成する部材の1つである圧電素子401が配設されている。
この圧電素子401は、積層型圧電素子であってアクチュエータを構成している。圧電素子401の一方の端部は上板411を介してダイアフラム400に、他方の端部は底板311の上面312に固着されている。
また、ダイアフラム400は、円盤状の金属薄板からなり、下ケース301の上面側に形成された円環状の凹部303内において周縁部が凹部303の底面に密着固着されている。ダイアフラム400の上面には、中心部に円形の開口部を有する円盤状の金属薄板からなる補強板410が積層配設される。
【0033】
この構成により、駆動部30によって、圧電素子401に駆動信号を入力(動作電圧を印加)することで、圧電素子401が伸張、収縮し、その伸長時の上方向の力及び収縮時の下方向の力が上板411を上下方向に移動させる。そして、上板411が移動することでダイアフラム400が変形し、流体室501の容積を変更する。
つまり、圧電素子401、上板411、ダイアフラム400及び補強板410から容積変更部405が構成されている。
上ケース500は、下ケース301と対向する面の中心部に円形の凹部が形成され、この凹部とダイアフラム400とから構成され、内部に流体が充填された状態の回転体形状が流体室501となる。つまり、流体室501は、上ケース500の凹部の封止面505と内周側壁501aとダイアフラム400によって囲まれた空間となる。流体室501の略中央部には出口流路511が穿設されている。
【0034】
出口流路511は、流体室501から上ケース500の一方の端面から突設された出口流路管510の端部まで貫通されている。出口流路511の流体室501の封止面505との接続部は、流体抵抗を減ずるために滑らかに丸められている。
なお、以上説明した流体室501の形状は、本実施形態では、両端が封止された略円筒形状としているが、側面視して円錐形や台形、あるいは半球形状等でもよく限定されない。例えば、出口流路511と封止面505との接続部を漏斗のような形状にすれば、後述する流体室501内の気泡を排出しやすくなる。
出口流路管510には接続流路管200が接続されている。接続流路管200には接続流路201が穿設されており、接続流路201の直径は出口流路511の直径より大きい。また、接続流路管200の管部の厚さは、流体の圧力脈動を吸収しない剛性を有する範囲に形成されている。
【0035】
接続流路管200の先端部には、ノズル211が挿着されている。このノズル211には流体噴射開口部212が穿設されている。流体噴射開口部212の直径は、接続流路201の直径より小さい。
更に、接続流路管200の脈動発生部100側における出口流路管510との接続部より先端側の外周面には、圧電素子50と歪みゲージ51とが管を隔てた対向位置にそれぞれ固着されている。
上ケース500の側面には、ポンプ20から流体を供給する接続チューブ25を挿着する入口流路管502が突設されており、入口流路管502に入口流路側の接続流路504が穿たれている。この接続流路504は入口流路503に連通されている。入口流路503は、流体室501の封止面505の周縁部に溝状に形成され、流体室501に連通している。
【0036】
上ケース500と下ケース301との接合面において、ダイアフラム400の外周方向の離間した位置には、下ケース301側にパッキンボックス304、上ケース500側にパッキンボックス506が形成されており、パッキンボックス304,506にて形成される空間にリング状のパッキン450が装着されている。
ここで、上ケース500と下ケース301とを組立てたとき、ダイアフラム400の周縁部と補強板410の周縁部とは、上ケース500の封止面505の周縁部と下ケース301の凹部303の底面によって密接されている。この際、パッキン450は上ケース500と下ケース301によって押圧されて、流体室501からの流体漏洩を防止している。
流体室501内は、流体吐出の際に例えば30気圧(3MPa)以上の高圧状態となり、ダイアフラム400、補強板410、上ケース500、下ケース301それぞれの接合部において流体が僅かに漏洩することが考えられるが、パッキン450によって漏洩を阻止している。
【0037】
図2に示すようにパッキン450を配設すると、流体室501から高圧で漏洩してくる流体の圧力によってパッキン450が圧縮され、パッキンボックス304,506内の壁にさらに強く押圧されるので、流体の漏洩を一層確実に阻止することができる。このことから、駆動時において流体室501内の高い圧力上昇を維持することができる。
続いて、上ケース500に形成される入口流路503についてさらに詳しく説明する。
入口流路503は、図4に示すように、上ケース500の封止面505の周縁部に形成された溝部と封止面505に押圧固定される補強板410によって形成される。
入口流路503は、一方の端部が流体室501に連通し、他方の端部が接続流路504に連通している。入口流路503と接続流路504との接続部には、流体溜り507が形成されている。そして、流体溜り507と入口流路503との接続部は滑らかに丸めることによって流体抵抗を減じている。
【0038】
また、入口流路503は、流体室501の内周側壁501aに対して略接線方向に向かって連通している。ポンプ20から一定の圧力で供給される流体は、内周側壁501aに沿って(図中、矢印で示す方向に)流動して流体室501に旋回流を発生する。旋回流の遠心力により、流体室501内に含まれる低密度の気泡は旋回流の中心部に集中する。
そして、中心部に集められた気泡は、出口流路511から排除される。このことから、出口流路511は旋回流の中心近傍、つまり回転形状体の軸中心部に設けられることがより好ましい。図4の例では、入口流路503は平面形状が渦巻状に湾曲されている。入口流路503は、直線で流体室501に連通させてもよいが、狭いスペースの中で所望のイナータンスを得るために、入口流路503の流路長を長くする必要性から湾曲させている。
【0039】
なお、図2に示したように、ダイアフラム400と入口流路503が形成されている封止面505の周縁部との間には、補強板410が配設されている。補強板410を設ける意味は、ダイアフラム400の耐久性を向上することである。入口流路503の流体室501との接続部には切欠き状の接続開口部509が形成されるので、ダイアフラム400が高い周波数で駆動されたときに、接続開口部509近傍において応力集中が生じて疲労破壊を発生することが考えられる。そこで、切欠き部がない連続した開口部を有している補強板410を配設することで、ダイアフラム400に応力集中が発生しないようにしている。
【0040】
また、以上説明した流体噴射装置1においては、上ケース500の外周隅部に、4箇所の螺子穴500aが開設されており、この螺子穴位置において、上ケース500と下ケース301とを螺合接合するようにしたがこの構成に限らない。例えば、図示は省略するが、補強板410とダイアフラム400とを接合し、一体に積層固着することができる。固着手段としては、接着剤を用いる貼着としても、固層拡散接合、溶接等を採用することが可能であるが、補強板410とダイアフラム400とが、接合面において密着されていることがより好ましい。
【0041】
また、以上説明した流体噴射装置1においては、出口流路511とノズル211とを接続流路管200を介して接続する構成としているが、この構成に限らず、接続流路管200を用いずに、出口流路管510の流体室501とは反対側の端部にノズル211を挿着することも可能である。この場合は、より簡素な構成が可能になる。
また、手術に用いる場合には、接続流路管200を用いてハンドピースと流体噴射開口部212までの距離が適度に長くなるように(奥まった患部に届く長さに)構成にしたほうが好適である。
【0042】
次に、本実施形態の脈動発生部100の流体吐出の原理について説明する。
本実施形態の脈動発生部100の流体吐出は、入口流路側のイナータンスL1(合成イナータンスL1と呼ぶことがある)と出口流路側のイナータンスL2(合成イナータンスL2と呼ぶことがある)との差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
【0043】
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンスは、個々の流路のイナータンスを電気回路におけるインダクタンスの並列接続、または直列接続と同様に合成して算出することができる。
なお、入口流路側のイナータンスL1は、接続流路504が入口流路503に対して直径が十分大きく設定されているので、イナータンスL1は、入口流路503のイナータンスのみ算出すればよい。また、ポンプ20と入口流路を接続する接続チューブは柔軟性を有するため、イナータンスL1の算出から除かれる。
【0044】
また、出口流路側のイナータンスL2は、接続流路201の直径が出口流路よりもはるかに大きく、接続流路管200の管部(管壁)の厚さが薄い場合イナータンスL2への影響は軽微である。従って、出口流路側のイナータンスL2は出口流路511のイナータンスに置き換えてもよい。
接続流路管200の管壁の厚さが厚い場合には、イナータンスL2は、出口流路511、接続流路201及びノズル211の合成イナータンスとなる。
そして、本実施形態では、入口流路側のイナータンスL1が出口流路側のイナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路503の流路長及び断面積、出口流路511の流路長及び断面積を設定している。
【0045】
次に、図5に基づき、駆動部30の詳細な構成を説明する。
ここで、図5は、駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30は、図5に示すように、動作制御部30aと、第1駆動信号供給部30bと、振動検出部30cと、データ記憶部30eと、第2駆動信号供給部30fと、同期信号発生部30gとを含んで構成されている。
動作制御部30aは、流体噴射装置1の入力装置(不図示)からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30bの駆動信号の供給処理、ノズル211の接触状態の判定処理、この判定結果に基づく第2駆動信号供給部30fの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
【0046】
具体的に、動作制御部30aは、ウォーター・パルス・メスの駆動スイッチ(不図示)がオフの状態からオンの状態になったときに、まず、接続流路管200に対してノズル211を振動させるための加振力を発生させるために第1駆動信号供給部30bに対して振動発生指令を出力する。
これによって、第1駆動信号供給部30bから駆動信号が圧電素子50に供給されて圧電素子50が伸縮動作を行い、その力が加振力となって接続流路管200及びノズル211に伝達され、接続流路管200及びノズル211が振動する。
【0047】
更に、動作制御部30aは、振動検出部30cからの振動の大きさの検出結果(歪みゲージ51の出力電圧値)と、データ記憶部30eに記憶された振動の大きさの閾値とに基づき、ノズル211が患部又はその近傍の物体(噴射した流体溜まりなど)と接触しているか否かを判定する。そして、接触していると判定した場合は、流体を噴射させるために第2駆動信号供給部30fに対して噴射駆動指令を出力する。
これによって、第2駆動信号供給部30fから駆動信号が圧電素子401に供給されて圧電素子401が伸張動作を行い、流体室501が縮小し室内の流体が圧縮されて脈動流となって、出口流路511及び接続流路201を介して流体噴射開口部212から噴射される。
【0048】
一方、接触していないと判定した場合は、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射駆動指令を出力しない又は流体を噴射中(圧電素子401を駆動中)であれば、噴射停止指令を出力する。
一方、ウォーター・パルス・メスの駆動スイッチがオンの状態からオフの状態になったときに、流体の噴射を停止させるために第2駆動信号供給部30fに対して噴射停止指令を出力する。更に、ノズル211の振動を停止させるために第1駆動信号供給部30bに対して振動停止指令を出力する。
これによって、流体の噴射が停止すると共に、ノズル211の振動が停止する。
【0049】
第1駆動信号供給部30bは、動作制御部30aから振動発生指令に応じて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、振動を発生させるための駆動信号を圧電素子50に供給する機能を有している。
具体的に、振動発生指令に含まれる波形指定情報に基づき、該当する振動発生用の波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30eから読み出し、該読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号を同期信号に同期させて圧電素子50に供給する。なお、波形指定情報は、振動発生用の信号波形に付された識別情報などとなる。
【0050】
更に、動作制御部30aから駆動信号の振動停止指令に応じて、駆動信号の供給を停止する機能を有している。本実施の形態では、駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときは、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子50に供給してから駆動信号の供給を停止するようになっている。
振動検出部30cは、ホイートストンブリッジ回路を含んで構成される検出回路を含み、圧電素子50によって加えられた加振力による接続流路管200の曲げ変化による歪みゲージ51の抵抗変化を、検出回路によって電圧レベルとして検知する。そして、この検知レベル(電圧値)を検出結果として、動作制御部30aに出力する。
【0051】
データ記憶部30eは、設定される噴射強さに対応する、周期や振幅の異なる複数種類の信号波形の波形情報、接触検出用の閾値、その他各構成部の処理に用いるデータなどを記憶する記憶媒体を含んで構成され、各構成部からの読み出し要求に応じて記憶媒体に記憶されたデータを読み出し、各構成部からの書き込み要求に応じて記憶媒体にデータを書き込む機能を有している。
第2駆動信号供給部30fは、動作制御部30aからの噴射駆動指令に応じて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、駆動信号を容積変更部405の圧電素子401に供給線JPZT(−)及びJPZT(+)を介して供給する機能を有している。
【0052】
具体的に、噴射駆動供給指令に含まれる噴射駆動用の波形指定情報に基づき、該当する波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30eから読み出し、該読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号を同期信号に同期させて圧電素子401に供給する。なお、波形指定情報は、噴射強さに応じた噴射駆動用の信号波形に付された識別情報などとなる。
更に、動作制御部30aからの噴射停止指令に応じて、駆動信号の供給を停止する機能を有している。本実施の形態では、駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときは、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子401に供給してから駆動信号の供給を停止するようになっている。
【0053】
同期信号発生部30gは、セラミック振動子、水晶振動子などの発振子、カウンタ(又はPLL回路)などを含み、発振子から出力される信号を基準クロック信号clkとして、該clkから同期信号を生成する機能を有している。そして、基準クロック信号及び同期信号を駆動信号供給部30fに供給する。
なお、駆動部30は、上記各構成部の機能をソフトウェアを用いて実現するため、および上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するためのコンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムのハードウェア構成は、図示しないが、プロセッサ(Processer)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを有し、これらの間を各種内外バスで接続した構成となっている。
【0054】
更に、バスには、IEEE1394、USB、パラレルポート等の入出力インターフェース(I/F)を介して、例えば、CRTまたはLCDモニター等の表示装置、操作パネル、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
そして、電源を投入すると、ROM等に記憶されたシステムプログラムが、ROMに予め記憶された上記各部の機能を実現するための各種専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従ってプロセッサが各種リソースを駆使して所定の制御および演算処理を行うことで前述したような各機能を実現するようになっている。
【0055】
次に、図6〜図7に基づき、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成について説明する。
ここで、図6は、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成を説明する説明図である。また、図7(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成の他の例を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、接続流路管200の外周面における脈動発生部100寄りの位置に配設且つ固着されている。
【0056】
更に、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、図6上図中の丸で囲った部分のB−B’断面である図6下図に示すように、断面が円環状の接続流路管200の外周面(曲面)上に固着されている。
従って、接続流路管200の外周面の曲面に沿って密着固着されるように、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分には曲げ加工が施されている。
なお、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付構成は、この構成に限らず、例えば、図7(a)に示すように、接続流路管200の少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を断面矩形状に構成して外周面に水平面を形成し、この水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
【0057】
また、図7(b)及び(c)に示すように、断面円環形状の取付部分の曲面部を押し潰すなどして、接続流路管200における圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分のみに水平面を設け、この水平面に配設且つ固着する構成としてもよい。
また、図7(d)に示すように、少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を、接続流路管200の内側の空洞部は断面円形のままに、外側の管壁部が断面矩形となるように構成して外周面に水平面を形成し、この水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
上記図7(a)〜(d)のいずれかの取付構成に示すように、管の外周面に水平面を形成し、その水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を固着することで、圧電素子50及び歪みゲージ51を曲げ加工する必要がなくなり、簡易な構成で取り付けることが可能となる。この取付構成は、特に曲げ加工の難しい圧電素子に有効な構成である。
【0058】
次に、図8に基づき、動作制御部30aにおける第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30fの動作制御処理の流れを説明する。
ここで、図8は、動作制御部30aにおける第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30fの動作制御処理を示すフローチャートである。
プロセッサによって専用のプログラムが実行され、動作制御処理が開始されると、図8に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、動作制御部30aにおいて、ウォーター・パルス・メス(以下、WPSと称す)の駆動スイッチがオンになったか否かを判定し、オンになったと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、オンになるまで判定処理を繰り返す。
【0059】
ステップS102に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して、振動発生指令を出力して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、動作制御部30aにおいて、振動検出部30cからの検出電圧と、データ記憶部30eに記憶された接触検出用の閾値とを比較して、ステップS106に移行する。
ここで、比較処理としては、検出電圧(絶対値)をそのまま使用して閾値との比較する方法、検出電圧(絶対値)の所定時間の平均値を算出して閾値との比較する方法などがある。
【0060】
本実施の形態においては、後者の平均電圧値を算出し、この平均電圧値と、予め測定しておいたノズル211が患部やその近傍の物体などに接触して振動が弱まったときの平均電圧値を示す閾値とを比較する。
ステップS106では、動作制御部30aにおいて、ステップS104の比較結果に基づき、検出電圧値の所定時間の平均値が閾値以下か否かを判定し、閾値以下であると判定された場合(Yes)は、ステップS108に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS116に移行する。
【0061】
ステップS108に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触していると判定し、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射駆動指令を出力して、ステップS110に移行する。
ステップS110では、動作制御部30aにおいて、駆動スイッチがオフになったか否かを判定し、オフになったと判定した場合(Yes)は、ステップS112に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS104に移行する。
ステップS112に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射停止指令を出力して、ステップS114に移行する。
【0062】
ステップS114に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して、振動停止指令を出力して、ステップS104に移行する。
一方、ステップS102において、検出電圧値の所定時間の平均値が閾値よりも大きくてノズル211が接触状態ではないと判定されステップS116に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、噴射停止指令を、第2駆動信号供給部30fに出力して、ステップS100に移行する。なお、噴射動作を行っていない場合は、噴射停止指令を出力せずに、ステップS100に移行するようにしてもよい。
【0063】
次に、図9に基づき、第1駆動信号供給部30bにおける圧電素子50への駆動信号供給処理の流れを説明する。
ここで、図9は、第1駆動信号供給部30bにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、圧電素子50への駆動信号供給処理が開始されると、図9に示すように、まず、ステップS200に移行する。
ステップS200では、第1駆動信号供給部30bにおいて、動作制御部30aからの振動発生指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS202に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
【0064】
ステップS202に移行した場合は、第1駆動信号供給部30bにおいて、振動発生指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子50の駆動に用いる振動発生用の波形データをデータ記憶部30eから読み出して、ステップS204に移行する。
ステップS204では、第1駆動信号供給部30bにおいて、ステップS202で読み出した波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS206に移行する。
ステップS206では、第1駆動信号供給部30bにおいて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、ステップS204でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる駆動信号を、圧電素子50に出力して、ステップS208に移行する。
【0065】
ステップS208では、第1駆動信号供給部30bにおいて、動作制御部30aから振動停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS210に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS204の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS210に移行した場合は、第1駆動信号供給部30bにおいて、1周期分の信号を全て出力後に、駆動信号の供給を停止して、ステップS200に移行する。
【0066】
次に、図10に基づき、第2駆動信号供給部30fにおける圧電素子401への駆動信号の供給処理の流れを説明する。
ここで、図10は、第2駆動信号供給部30fにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、圧電素子401への駆動信号供給処理が開始されると、図10に示すように、まず、ステップS300に移行する。
ステップS300では、第2駆動信号供給部30fにおいて、動作制御部30aからの噴射駆動指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS302に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
【0067】
ステップS302に移行した場合は、第2駆動信号供給部30fにおいて、噴射駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401の駆動に用いる噴射駆動用の波形データをデータ記憶部30eから読み出して、ステップS304に移行する。
ステップS304では、第2駆動信号供給部30fにおいて、ステップS302で読み出した波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS306に移行する。
ステップS306では、第2駆動信号供給部30fにおいて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、ステップS304でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる駆動信号を、圧電素子401に出力して、ステップS308に移行する。
【0068】
ステップS308では、第2駆動信号供給部30fにおいて、動作制御部30aから噴射停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS310に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS304の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS310に移行した場合は、第2駆動信号供給部30fにおいて、1周期分の信号を全て出力後に、駆動信号の供給を停止して、ステップS300に移行する。
【0069】
次に、図11に基づき、本実施の形態の流体噴射装置1の具体的な動作を説明する。
図11は、ノズル211が接触時及び非接触時の振動波形の一例を示す図である。
まず、流体噴射装置1の電源をオンにすると初期化動作が行われ駆動待機状態へと移行する。
この状態において、WPSの駆動スイッチがオンにされると(ステップS100の「Yes」の分岐)、動作制御部30aは、まず、第1駆動信号供給部30bに対して、振動発生指令を出力する(ステップS102)。
第1駆動信号供給部30bは、動作制御部30aからの振動発生指令を受けると(ステップS200の「Yes」の分岐)、振動発生用の波形データをデータ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出し、該読み出した波形データをDA変換してアナログの波形信号を生成する(ステップS204)。
【0070】
そして、生成した振動発生用のアナログの波形信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子50に出力する(ステップS206)。
これによって、圧電素子50が伸縮動作し、この伸縮力(加振力)が圧電素子50の取付部を介して接続流路管200に伝達され、接続流路管200を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、接続流路管200及びノズル211が振動する。このとき、接続流路管200の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子50を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
一方、この振動による接続流路管200の変形によって、歪みゲージ51のベース(取付部)を経由して内部の抵抗体(線・箔)に歪みが伝わる。そして、振動検出部30cでは、検出回路において、この発生した歪みに対応した抵抗変化が電圧値として検出され、この検出電圧値が動作制御部30aに出力される。
【0071】
ノズル211に発生した振動の大きさは、振動検出部30cにおいて、ノズル211が患部やその近傍の物体などに非接触の状態であれば、図11の左側の波形に示すように、図11の右図の接触時の波形の振幅よりも大きな振幅となる。
これは、ノズル211が患部やその近傍の物体などに接触することで振動が弱められるためである。
動作制御部30aは、所定時間の検出電圧値の絶対値の平均値を算出し、この平均値と、データ記憶部30eに記憶された閾値とを比較する(ステップS104)。
更に、動作制御部30aは、比較結果に基づき、平均値が閾値以下のときは(ステップS106の「Yes」の分岐)、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触しているとして、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射駆動指令を出力する(ステップS108)。
【0072】
また、平均値が閾値よりも大きいときは(ステップS106の「No」の分岐)、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触していないとして、駆動スイッチがオンになっても、第2駆動信号供給部30fに対して噴射駆動指令を出力しない(ステップS116)。
第2駆動信号供給部30fは、動作制御部30aから噴射駆動指令を受けると(ステップS300の「Yes」の分岐)、噴射駆動指令に含まれる波形情報の識別情報に基づき、該当の噴射駆動用の波形データをデータ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出す(ステップS302)。
次に、ワークメモリに読み出した波形データをDA変換し、アナログの駆動信号を生成する(ステップS304)。
【0073】
次に、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、生成した噴射駆動用のアナログの駆動信号を圧電素子401に出力する(ステップS306)。
ここで、駆動信号の供給前は、ポンプ20によって入口流路503には、常に一定圧力の液圧で流体が供給されている。その結果、圧電素子401が動作を行わない場合、ポンプ20の吐出力と入口流路側全体の流体抵抗値の差とによって流体は流体室501内に流動する。
ここで、圧電素子401に駆動信号が入力され、急激に圧電素子401が伸張したとすると、流体室501内の圧力は、入口流路側及び出口流路側のイナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
【0074】
この圧力は、入口流路503に加えられていたポンプ20による圧力よりはるかに大きいため、入口流路側から流体室501内への流体の流入はその圧力によって減少し、出口流路511からの流出は増加する。
しかし、入口流路503のイナータンスL1は、出口流路511のイナータンスL2よりも大きいため、入口流路503から流体が流体室501へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路201にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管200内を伝播して、先端のノズル211の流体噴射開口部212から流体が噴射される。
【0075】
ここで、ノズル211の流体噴射開口部212の直径は、出口流路511の直径よりも小さいので、流体は、高速のパルス状の液滴として噴射される。
一方、流体室501内は、入口流路503からの流体流入量の減少と出口流路511からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。
そして、伸長状態にある圧電素子401は駆動波形の立ち下がり波形形状に応じた速度で収縮していき、最終的に流体の流れは、駆動信号を供給する前の定常状態へと復帰する。
なお、流体室501が、略回転体形状を有し、入口流路503を備えていることと、出口流路511が略回転体形状の回転軸近傍に開設されていることから、流体室501内において旋回流が発生し、流体内に含まれる気泡(真空泡及びガス泡)は速やかに出口流路511から外部に排出される。
【0076】
駆動信号を連続で圧電素子401に供給することで、ノズル211からの脈動流を継続して噴射することができる。
このように、連続して駆動信号を供給し脈動流を継続して噴射しているときに、施術者が脈動発生部100を動かして、ノズル211が患部又はその近傍の物体から離れると、ノズル211の振動を阻害する要因が無くなるので、振動検出部30cにおいて検出される検出電圧値が大きくなる。
これにより、動作制御部30aにおいて、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値が閾値よりも大きくなり(ステップS106の「No」の分岐)、動作制御部30aは、ノズル211が患部又はその近傍の物体に非接触であるとして、第2駆動信号供給部30fに、噴射停止指令を出力する(ステップS116)。
【0077】
第2駆動信号供給部30fは、動作制御部30aから噴射停止指令が入力されると(ステップS308の「Yes」の分岐)、現在供給中の駆動信号を、1周期分すべて供給してから、駆動信号の供給を停止する(ステップS310)。
その後、WPSの駆動スイッチがオンの状態で、再びノズル211が患部やその近傍の物体に接触すると、ノズル211の振動が弱まって、振動検出部30cにおいて検出される検出電圧値が小さくなる。
これにより、動作制御部30aにおいて、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値が閾値以下となり(ステップS106の「Yes」の分岐)、動作制御部30aは、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触しているとして、第2駆動信号供給部30fに、噴射駆動指令を出力する(ステップS108)。これによって、圧電素子401に駆動信号が供給され、脈動流の噴射が再開される。
【0078】
この状態において、施術者によってWPSの駆動スイッチがオフにされると、動作制御部30aは、駆動スイッチがオフになったと判定して(ステップS110の「Yes」の分岐)、第2駆動信号供給部30fに噴射停止指令を出力する(ステップS112)。
これによって、第2駆動信号供給部30fは、現在供給中の駆動信号を、1周期分すべて供給してから、駆動信号の供給を停止する(ステップS310)。駆動信号の供給が停止されると、脈動流の噴射も停止する。
更に、動作制御部30aは、第1駆動信号供給部30bに振動停止指令を出力する(ステップS114)。
これによって、第1駆動信号供給部30bは、現在供給中の駆動信号を、1周期分すべて供給してから、駆動信号の供給を停止する(ステップS210)。駆動信号の供給が停止されると、振動も停止する。
【0079】
以上、本実施の形態の流体噴射装置1は、WPSの駆動スイッチがオンのときに、第1駆動信号供給部30bによって、振動発生用圧電素子50を駆動してノズル211を振動させることが可能である。更に、この振動の大きさを、振動検出部30cにおいて検出することが可能であり、動作制御部30aにおいて、この検出結果に基づき、ノズル211が患部などに接触しているか否かを判定することが可能である。更に、動作制御部30aは、ノズル211が患部などに接触していると判定したときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射駆動指令に応じて容積変更用圧電素子401に駆動信号を供給して、流体室501の容積を変更し、流体の噴射を行うことが可能である。
【0080】
一方、動作制御部30aは、ノズル211が患部などに接触していないと判定したときは、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。
更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射停止指令に応じて容積変更用圧電素子401への駆動信号の供給を停止して、流体の噴射を停止させることが可能である。
また、動作制御部30aは、WPSの駆動スイッチがオンになっており且つ流体の噴射動作が行われていないときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力しないようにすることが可能である。
【0081】
これによって、ノズル211が患部などに接触していないときに、噴射動作をさせないようにすることができるので、施術者(担当医)の操作ミスなどによって、ノズル211が、患部やその近傍の物体(噴射流体や血液による液溜まりなど)から離れたときに、思わぬ方向へ(例えば、手術室内にいる医師や看護士の眼や切除したくない部位などに向けて)の脈動流の噴射や、思わぬ方向又は位置からの噴射による切除された組織片の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
【0082】
上記第1の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態1、2、4及び14のいずれか1に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態1、13及び14のいずれか1に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態1又は14に記載の流体供給手段に対応し、圧電素子50及び第1駆動信号供給部30bは、形態1、4及び14のいずれか1に記載の加振手段に対応し、歪みゲージ51及び振動検出部30cは、形態1、4、13及び14のいずれか1に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30aは、形態1、13及び14のいずれか1に記載の動作制御手段に対応し、圧電素子50は、形態4、5及び9のいずれか1に記載の加振力発生部に対応し、歪みゲージ51は、形態4、5及び8のいずれか1に記載の振動受振部に対応する。
【0083】
〔第2の実施の形態〕
以下、本発明の第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図12〜図14は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第2の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1の実施の形態と比較して、接続流路管200を覆うように設けられた、ノズル211の近傍の物体を吸引するための吸引管及び吸引力を付与するポンプなどを備え、振動発生用圧電素子50と歪みゲージ51とが吸引管の外周面上に設けられている点が異なる。従って、他の構成部については、上記第1の実施の形態と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0084】
まず、本実施の形態に係る流体噴射装置の構成を図12に基づき説明する。図12は、本実施の形態に係る流体噴射装置3の概略構成を示す説明図である。
流体噴射装置3は、図12に示すように、基本構成として、流体を収容する流体容器10と、圧力発生部としてのポンプ20と、吸引物を収容する吸引容器70と、吸引力付与手段としての吸引ポンプ60と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100と、脈動発生部100を駆動する駆動部30と、振動発生用圧電素子50と、歪みゲージ51とを含んで構成されている。
脈動発生部100には、細いパイプ状の接続流路管200が接続され、接続流路管200の先端部には接続流路管200の流路径よりも小さい径のノズル211が挿着されている。
【0085】
更に、脈動発生部100には、接続流路管200を内包する、該接続流路管200の径よりも大きい径のパイプ状の吸引管700が接続されている。
吸引管700の内周面と接続流路管200の外周面との間には、両者の径の大きさの相違によって、吐出された液体や組織片などの吸引物の通路が形成される。
吸引管700の脈動発生部100寄りの位置には、通路中の吸引物を吸引容器70へと放出するための出口流路管702が突設されており、吸引物は、出口流路管702に接続された接続チューブ65を介して吸引ポンプ60によって吸引され、接続チューブ75を介して吸引容器70に放出される。
【0086】
脈動発生部100の内側には、圧電素子50に駆動信号を供給するための2本の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と、歪みゲージ51のゲージ入力線及びゲージ出力線と、流体噴射用圧電素子401(後述)に駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT(−)及びJPZT(+)とを配線する通路が形成されている。
これらの通路は、脈動発生部100からの信号線の出口で合流し、4本の供給線と、ゲージ入力線及びゲージ出力線とは、1箇所の出口からまとめて外へと出る。
これらの線はケーブル47によってひとまとめにされて駆動部30に接続される。なお、ケーブル47の各線は、駆動部30のそれぞれ対応する構成部と電気的に接続される。
【0087】
次に、図13〜図14に基づき、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成について説明する。
ここで、図13は、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成を説明する説明図である。また、図14(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成の他の例を示す図である。
図13に示すように、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、吸引管700の外周面における脈動発生部100寄りの位置に配設且つ固着されている。
更に、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、図13上図中の丸で囲った部分のC−C’断面である図13下図に示すように、断面が円環状の吸引管700の外周面(曲面)上に固着されている。
【0088】
従って、吸引管700の外周面の曲面に沿って密着固着されるように、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分には曲げ加工が施されている。
なお、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付構成は、この構成に限らず、例えば、図14(a)に示すように、吸引管700の少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を断面矩形状に構成して外周面に水平面を形成し、この水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
【0089】
また、図14(b)及び(c)に示すように、断面円環形状の取付部分の曲面部を押し潰すなどして、吸引管700における圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分のみに水平面を設け、この水平面に配設且つ固着する構成としてもよい。
また、図14(d)に示すように、少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を、吸引管700の内側の空洞部は断面円形のままに、外側の管壁部が断面矩形となるように構成して外周面に水平面を形成し、この水平面上に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
【0090】
上記図14(a)〜(d)のいずれかの取付構成に示すように、管の外周面に水平面を形成し、その水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を固着することで、圧電素子50及び歪みゲージ51を曲げ加工する必要がなくなり、簡易な構成で取り付けることが可能となる。この取付構成は、特に曲げ加工の難しい圧電素子に有効な構成である。
上記構成において、第1駆動信号供給部30bから振動発生用の駆動信号が供給され圧電素子50が伸縮動作をすると、この伸縮力(加振力)が圧電素子50の取付部を介して吸引管700に伝達され、吸引管700を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、吸引管700が振動する。このとき、吸引管700の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子50を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
【0091】
一方、この振動による吸引管700の変形によって、歪みゲージ51のベース(取付部)を経由して内部の抵抗体(線・箔)に歪みが伝わる。そして、振動検出部30cでは、検出回路において、この発生した歪みに対応した抵抗変化が電圧値として検出され、この検出電圧値が動作制御部30aに出力される。
吸引管700に発生した振動の大きさは、振動検出部30cにおいて、吸引管700の先端部が患部やその近傍の物体などに非接触の状態であれば、上記第1の実施の形態と同様に、図11の左側の波形に示すように、図11の右図の接触時の波形の振幅よりも大きな振幅となる。
【0092】
これは、吸引管700の開口部などの先端部分が患部やその近傍の物体などに接触することで振動が弱められるためである。
従って、吸引管700の先端部が患部やその近傍の物体などに接触している状態で、WPSの駆動スイッチがオンになると、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値は、閾値以下となるので、動作制御部30aは、接触状態を検知して、第2駆動信号供給部30fに噴射駆動指令を出力する。
これによって、容積変更部405の圧電素子401が駆動して、高圧力の流体(脈動流)の噴射が行われる。
【0093】
一方、吸引管700の先端部が、患部又はその近傍の物体から離れている場合は、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値が、閾値より大きくなるので、駆動スイッチがオンの状態であっても、動作制御部30aは、非接触状態を検知して第2駆動信号供給部30fに噴射駆動指令を出力しない。
また、噴射状態である場合は、第2駆動信号供給部30fに噴射停止指令を出力する。これによって、容積変更部405の圧電素子401の駆動が停止して、流体(脈動流)の噴射が停止する。
なお、駆動部30の動作は、上記第1の実施の形態において、振動させる対象がノズル211及び接続流路管200から、吸引管700になるだけで動作内容を同様となる。
【0094】
以上、本実施の形態の流体噴射装置3は、WPSの駆動スイッチがオンのときに、第1駆動信号供給部30bによって、振動発生用圧電素子50を駆動して吸引管700を振動させることが可能である。更に、この振動の大きさを、振動検出部30cにおいて検出することが可能であり、動作制御部30aにおいて、この検出結果に基づき、吸引管700の開口部などの先端部分が患部などに接触しているか否かを判定することが可能である。更に、動作制御部30aは、吸引管700の先端部分が患部などに接触していると判定したときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射駆動指令に応じて容積変更用圧電素子401に駆動信号を供給して、流体室501の容積を変更し、流体の噴射を行うことが可能である。
【0095】
一方、動作制御部30aは、吸引管700の先端部分が患部などに接触していないと判定したときは、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。
更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射停止指令に応じて容積変更用圧電素子401への駆動信号の供給を停止して、流体の噴射を停止させることが可能である。
また、動作制御部30aは、WPSの駆動スイッチがオンになっており且つ流体の噴射動作が行われていないときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力しないようにすることが可能である。
【0096】
これによって、吸引管700の先端部分がノズル211と共に患部などに接触していないときに、噴射動作をさせないようにすることができるので、施術者(担当医)の操作ミスなどによって、ノズル211及び吸引管700の先端部分が、患部やその近傍の物体(噴射流体や血液による液溜まりなど)から離れたときに、思わぬ方向へ(例えば、手術室内にいる医師や看護士の眼や切除したくない部位などに向けて)の脈動流の噴射や、思わぬ方向又は位置からの噴射による切除された組織片の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
【0097】
上記第2の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態3又は4に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態3又は13に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態3に記載の流体供給手段に対応し、吸引管700は、形態3、6及び7のいずれか1に記載の吸引管に対応し、吸引ポンプ60は、形態3に記載の吸引力付与手段に対応し、圧電素子50及び第1駆動信号供給部30bは、形態3又は4に記載の加振手段に対応し、歪みゲージ51及び振動検出部30cは、形態3、4及び13のいずれか1に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30aは、形態3又は13に記載の動作制御手段に対応し、圧電素子50は、形態6、7及び9のいずれか1に記載の加振力発生部に対応し、歪みゲージ51は、形態6、7及び8のいずれか1に記載の振動受振部に対応する。
【0098】
〔第3の実施の形態〕
以下、本発明の第3の実施の形態を図面に基づき説明する。図15〜図17は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第3の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1及び第2の実施の形態と比較して、接続流路管200又は吸引管700に圧電素子を1つだけ設け、この圧電素子によって、接続流路管200又は吸引管700への加振力の付与及び振動の大きさの検出を時分割で行う点が異なる。従って、駆動部30の構成も一部異なるが、他の構成部については、上記第1及び第2の実施の形態と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0099】
まず、図15に基づき、本実施の形態の加振力の付与及び振動の受振の両機能を兼ね備えた圧電素子52の取付構成について説明する。
ここで、図15(a)は、圧電素子52の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
本実施の形態においては、1つの圧電素子52によって、加振力の付与及び振動の大きさの検出を行うため、上記第1及び第2の実施の形態で説明した歪みゲージ51を不要とすることができる。
従って、吸引管を有さない流体噴射装置1の場合は、1つの圧電素子52が、図15(a)に示すように、上記第1の実施の形態の圧電素子50と同様に、接続流路管200の外周面上における出口流路管510よりもノズル211側の位置に配設且つ固着される。
【0100】
また、圧電素子52の取付構成としては、上記第1の実施の形態の図6及び図7に示す圧電素子50の取付構成のいずれも採用することができる。
一方、吸引管を有する流体噴射装置3の場合は、1つの圧電素子52が、図15(b)に示すように、上記第2の実施の形態の圧電素子50と同様に、吸引管700の外周面上における脈動発生部100寄りの位置に配設且つ固着される。
また、圧電素子52の取付構成としては、上記第2の実施の形態の図13及び図14に示す圧電素子50の取付構成のいずれも採用することができる。
【0101】
次に、図16に基づき、加振力の付与と振動の受振に1つの圧電素子52を用いる構成を適用した本実施の形態の流体噴射装置1又は3の駆動部30’の詳細な構成を説明する。
ここで、図16は、本実施の形態の駆動部である駆動部30’の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30’は、図16に示すように、動作制御部30aと、第1駆動信号供給部30bと、振動検出部30hと、接続切替部30dと、データ記憶部30eと、第2駆動信号供給部30fと、同期信号発生部30gとを含んで構成される。
【0102】
動作制御部30aは、流体噴射装置1又は3の入力装置からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30bの駆動信号の供給処理、接続切替部30dの時分割切替処理、ノズル211又は吸引管700の先端部の接触状態の判定処理、この判定結果に基づく第2駆動信号供給部30fの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
【0103】
接続切替部30dは、動作制御部30aからの制御信号に基づき、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と振動検出部30hとの電気的な接続と、供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と第1駆動信号供給部30bとの電気的な接続とを切り替える。
接続の切替は、機械的なスイッチを用いてもよいし、トランジスタなどのスイッチング素子を用いてもよい。
振動検出部30hは、接続流路管200又は吸引管700の振動による圧電効果によって圧電素子52に生じる起電力を検出し、この起電力を検出電圧として、動作制御部30aに出力する。
【0104】
次に、図17に基づき、本実施の形態の駆動部30’の動作を説明する。
ここで、図17(a)は、圧電素子52によって加振力を付与した期間の振動波形を示す図であり、(b)は、圧電素子52によって振動を受振する期間の振動波形を示す図である。
本実施の形態の駆動部30’は、1つの圧電素子52によって、加振力の付与及び付与した加振力によって発生する振動の受振(ここでは、圧電効果による振動の大きさの電圧変換)を行う。そのため、駆動部30’は、WPSの駆動スイッチがオンになると、一定時間、第1駆動信号供給部30bによって圧電素子52に駆動信号を供給する処理と、一定時間、振動検出部30hで振動の大きさを検出する処理とを時分割で交互に繰り返し行うように接続切替部30dの動作及び第1駆動信号供給部30bの動作を制御する。
【0105】
具体的に、駆動スイッチがオンになると、まず、動作制御部30aにおいて、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と第1駆動信号供給部30bとの電気的な接続と、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と振動検出部30hとの電気的な接続とを、接続切替部30dへの制御信号の供給内容を制御することで、時分割に交互に切り替える。
【0106】
これと並行に、動作制御部30aは、接続切替部30dへの制御信号の出力タイミングに応じて、第1駆動信号供給部30bに対して振動発生指令を出力する。これによって、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と、第1駆動信号供給部30bとが電気的に接続されると共に、第1駆動信号供給部30bに振動発生指令が供給される。
第1駆動信号供給部30bは、動作制御部30aから振動発生指令を受けると、振動発生用波形データを、データ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出し、該読み出した波形データをDA変換してアナログの波形信号を生成する。
【0107】
そして、生成した振動発生用の駆動信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子52に出力する。
これによって、圧電素子52が伸縮動作し、この伸縮力(加振力)が取付部を介して接続流路管200又は吸引管700に伝達され、接続流路管200又は吸引管700を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、接続流路管200又は吸引管700が振動する。このとき、接続流路管200又は吸引管700の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子52を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
【0108】
このようにして加振力が付与される期間が一定時間経過すると、動作制御部30aからの制御信号によって、接続切替部30dの接続が、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と振動検出部30hとの接続に切り替わる。これにより、切り替わり後の一定時間が振動検出部30hによる検出期間となる。
これにより、図17(a)及び(b)に示すように、振動の発生する期間と、振動を検出する期間とが一定時間毎に交互に切り替わる。
そして、振動の検出期間において、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに接触することで、図17(b)の後半の振動波形に示すように、接触していないときと比較して検出期間の振動の大きさ(起電力)が小さくなる。
【0109】
従って、振動検出部30hにおいて、このときの圧電素子52の起電力を検出し、動作制御部30aにおいて、この検出起電力(又はその所定期間の平均値)と閾値との比較を行うことで振動が小さくなったことを検出する。これにより、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに接触していることを検出することができる。
動作制御部30aは、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに接触していることが検出されると、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力する。
また、噴射駆動中に、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに対して非接触となったことが検出されると、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力する。
また、駆動スイッチがオフになると、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力し、噴射動作が停止後に、振動停止指令を第1駆動信号供給部30bに出力すると共に、接続切替部30dへの制御信号の供給を停止する。
【0110】
なお、他の動作については、上記第1の実施の形態と同様となるので説明を省略する。
以上、本実施の形態の流体噴射装置1又は3は、1つの圧電素子52によって、接続流路管200又は吸引管700に対して加振力の付与と、付与した加振力によって発生する振動の大きさの検出とを時分割で行うことが可能である。
これによって、振動の大きさを検出するための歪ゲージなどの検出素子を設ける必要がなくなるので、その分の部品コストや加工コストなどを低減することができる。
【0111】
上記第3の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態1、2、3、4及び14のいずれか1に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態1、2、3、13及び14のいずれか1に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態1、2、3及び14のいずれか1に記載の流体供給手段に対応し、吸引管700は、形態3、6及び7のいずれか1に記載の吸引管に対応し、吸引ポンプ60は、形態3に記載の吸引力付与手段に対応し、圧電素子52及び第1駆動信号供給部30bは、形態11に記載の加振手段に対応し、圧電素子52及び振動検出部30hは、形態11に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30aは、形態1、2、3、13及び14のいずれか1に記載の動作制御手段に対応し、動作制御部30a及び接続切替部30dは、形態11に記載の時分割制御手段に対応し、振動検出部30hは、形態11に記載の起電力検出部に対応し、圧電素子52は、形態10に記載の加振力発生部に対応する。
【0112】
〔第4の実施の形態〕
以下、本発明の第4の実施の形態を図面に基づき説明する。図18〜図20は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第4の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第3の実施の形態と比較して、接続流路管200又は吸引管700に圧電素子を2つ設け、この2つの圧電素子によって、接続流路管200又は吸引管700に対してより強力な加振力の付与を行う点が異なる。従って、駆動部30’の構成も一部異なるが、他の構成部については、上記第3の実施の形態と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0113】
まず、図18に基づき、本実施の形態の加振力の発生且つ振動の検出の両機能を兼ね備えた圧電素子52及び53の取付構成について説明する。
ここで、図18(a)は、圧電素子52及び53の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52及び53の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
本実施の形態においては、圧電素子52及び53の2つの圧電素子によって、加振力の付与及び振動の大きさの検出を行う。
【0114】
従って、吸引管を有さない流体噴射装置1の場合は、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を、図18(a)に示すように、上記第1の実施の形態の圧電素子50及び歪ゲージ51と同様に、接続流路管200の外周面上における出口流路管510よりもノズル211側の位置に、両者を管を隔てて対向するように配設且つ固着する。
また、圧電素子52及び53の取付構成としては、上記第1の実施の形態の図6及び図7に示す圧電素子50及び歪ゲージ51の取付構成のいずれも採用することができる。
【0115】
一方、吸引管を有する流体噴射装置3の場合は、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を、図18(b)に示すように、上記第2の実施の形態の圧電素子50及び歪ゲージ51と同様に、吸引管700の外周面上における脈動発生部100寄りの位置に、両者を管を隔てて対向するように配設且つ固着する。
また、圧電素子52及び53の取付構成としては、上記第2の実施の形態の図13及び図14に示す圧電素子50及び歪ゲージ51の取付構成のいずれも採用することができる。
【0116】
次に、図19に基づき、加振力の発生と受振に圧電素子52及び53を用いる上記構成を適用した本実施の形態の流体噴射装置1又は3の駆動部である駆動部30’’の詳細な構成を説明する。
ここで、図19は、駆動部30’’の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30’’は、図19に示すように、動作制御部30a’と、第1駆動信号供給部30b’と、振動検出部30h’と、接続切替部30d’と、データ記憶部30eと、第2駆動信号供給部30fと、同期信号発生部30gとを含んで構成される。
【0117】
動作制御部30a’は、流体噴射装置1又は3の入力装置からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30b’の駆動信号の供給処理、接続切替部30d’の時分割切替処理、ノズル211又は吸引管700の先端部の接触状態の判定処理、この判定結果に基づく第2駆動信号供給部30fの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
接続切替部30d’は、動作制御部30a’からの制御信号に基づき、圧電素子52の供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに圧電素子53の供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と振動検出部30hとの電気的な接続と、第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と第1駆動信号供給部30bとの電気的な接続とを切り替える。
【0118】
接続の切替は、機械的なスイッチを用いてもよいし、トランジスタなどのスイッチング素子を用いてもよい。
振動検出部30h’は、接続流路管200又は吸引管700の振動を受振した圧電素子52及び53の圧電効果によって生じる起電力を検出し、この起電力を検出電圧として、動作制御部30a’に出力する。
【0119】
次に、図20に基づき、第1駆動信号供給部30b’における圧電素子52及び53への駆動信号供給処理の流れを説明する。
ここで、図20は、第1駆動信号供給部30b’における駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、圧電素子52及び53への駆動信号供給処理が開始されると、図20に示すように、まず、ステップS400に移行する。
【0120】
ステップS400では、第1駆動信号供給部30b’において、動作制御部30a’からの振動発生指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS402に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS402に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b’において、振動発生指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子52の駆動に用いる第1の振動発生用波形データと、圧電素子53の駆動に用いる第2の振動発生用波形データとをデータ記憶部30eから読み出して、ステップS404に移行する。
【0121】
ステップS404では、第1駆動信号供給部30b’において、ステップS402で読み出した第1及び第2の振動発生用波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS406に移行する。
ステップS406では、第1駆動信号供給部30b’において、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、ステップS404でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第1の振動発生用の駆動信号を圧電素子52に出力し、ステップS404でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第2の振動発生用の駆動信号を圧電素子53に出力して、ステップS408に移行する。
【0122】
ステップS408では、第1駆動信号供給部30b’において、動作制御部30a’から振動停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS410に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS404の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS410に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b’において、圧電素子52及び53のそれぞれに対して1周期分の信号を全て出力後に、これらへの駆動信号の供給を停止して、ステップS400に移行する。
【0123】
次に、本実施の形態の駆動部30’’の動作を説明する。
本実施の形態の駆動部30’’は、より強力な加振力の付与を行うために、対向配置された圧電素子52と圧電素子53とを、それぞれが加振力を高め合う方向に伸縮する(一方が伸張したときに他方を伸縮させる)ように、第1駆動信号供給部30b’に供給する駆動信号の供給内容を制御する。
【0124】
更に、上記第3の実施の形態と同様に、圧電素子52及び53によって、加振力の付与と付与した加振力によって発生する振動の大きさの検出とを両方行うために、WPSの駆動スイッチがオンになると、一定時間、第1駆動信号供給部30b’によって圧電素子52及び53に駆動信号を供給する処理と、一定時間、振動検出部30h’で振動の大きさを検出する処理とを時分割で交互に繰り返し行うようにする。そのため、動作制御部30a’において、まず、接続切替部30d’の切替動作を制御信号によって制御する。
【0125】
具体的に、駆動スイッチがオンになると、まず、動作制御部30a’において、供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と第1駆動信号供給部30b’との電気的な接続と、供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と振動検出部30h’との電気的な接続とを、接続切替部30d’への制御信号の供給内容を制御することで、時分割に交互に切り替える。
これと並行に、接続切替部30d’への制御信号の出力タイミングに応じて、第1駆動信号供給部30b’に対して、振動発生指令を出力する。これによって、圧電素子52の供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに圧電素子53の供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と、第1駆動信号供給部30b’とが電気的に接続されると共に、第1駆動信号供給部30b’に振動発生指令が供給される。
【0126】
第1駆動信号供給部30b’は、動作制御部30a’から振動発生指令を受けると、第1及び第2の振動発生用波形データを、データ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出し、該読み出した波形データをDA変換してアナログの波形信号を生成する。
そして、生成した第1の振動発生用の駆動信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子52に出力し、生成した第2の振動発生用の駆動信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子53に出力する。
【0127】
これによって、圧電素子52が伸張動作をすると圧電素子53が伸縮動作をするといったように、互いの力を強めあう方向に両者が伸縮し、この伸縮力(加振力)がそれぞれの取付部を介して接続流路管200又は吸引管700に伝達され、接続流路管200又は吸引管700を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、接続流路管200又は吸引管700が振動する。このとき、接続流路管200又は吸引管700の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子52及び53を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
【0128】
このようにして加振力が付与される期間が一定時間経過すると、動作制御部30a’からの制御信号によって、接続切替部30d’の接続が、圧電素子52の供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに圧電素子53の供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と、振動検出部30h’との接続に切り替わる。これにより、切り替わり後の一定時間が振動検出部30h’による検出期間となる。
つまり、振動の発生する期間と、振動を検出する期間とが一定時間毎に交互に切り替わり、上記第3の実施の形態の図17(a)に示す振動波形の振幅をより大きくした波形となる振動を時分割で発生させることができると共に、この振動の大きさを時分割で検出することができる。
【0129】
なお、圧電素子52及び53の起電力を検出電圧値として両方とも検出する構成としたがこれに限らず、どちらか一方を検出する構成としてもよい。
また、振動検出部30h’において、圧電素子52及び53の起電力をそれぞれ検出電圧値として動作制御部30a’にそのまま出力する構成としてもよいし、圧電素子52及び53の起電力の平均値を算出し、その算出値を検出電圧値として動作制御部30a’に出力する構成としてもよい。
なお、検出電圧値を用いたノズル211又は吸引管700の先端部の接触又は非接触の判定処理については、検出電圧値が時分割で得られることになるだけで、上記第1〜第3の実施の形態と同様となる。
【0130】
また、その他の動作については、上記第1〜第3の実施の形態の動作制御部30aと同様となるので説明を省略する。
以上、本実施の形態の流体噴射装置1又は3は、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を互いに加振力を強め合う方向に伸縮駆動させることが可能である。
これにより、接続流路管200又は吸引管700に対してより強い加振力を付与することができる。
更に、圧電素子52及び53の2つの圧電素子によって、加振力の付与と付与した加振力によって発生する振動の大きさの検出とを時分割で行うことが可能である。
これによって、振動の大きさを検出するための歪ゲージなどの検出素子を設ける必要がなくなるので、その分の部品コストや加工コストなどを低減することができる。
【0131】
上記第4の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態1、2、3、4及び14のいずれか1に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態1、3、13及び14のいずれか1に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態1又は14に記載の流体供給手段に対応し、吸引管700は、形態3、6及び7のいずれか1に記載の吸引管に対応し、吸引ポンプ60は、形態3に記載の吸引力付与手段に対応し、圧電素子52、圧電素子53及び第1駆動信号供給部30b’は、形態12に記載の加振手段に対応し、圧電素子52、圧電素子53及び振動検出部30h’は、形態11に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30a’は、形態1、13及び14のいずれか1に記載の動作制御手段に対応し、動作制御部30a’及び接続切替部30d’は、形態11に記載の時分割制御手段に対応し、振動検出部30h’は、形態11に記載の起電力検出部に対応し、圧電素子52及び53は、形態12に記載の加振力発生部に対応する。
【0132】
なお、上記第1〜第2の実施の形態において、振動受振部として、抵抗線またはフォトエッチング加工した抵抗箔を抵抗体とする金属抵抗体式の歪みゲージ51を用いる構成を説明したが、この構成に限らず、半導体式、圧電素子式、表面弾性波式、磁歪式、光ファイバ式などの他の方式の歪みゲージを用いる構成としてもよい。
また、上記第1〜第4の実施の形態において、加振力発生部として、圧電素子を用いる構成を説明したが、これに限らず、ソレノイドやモータなどの他の加振力を発生する部品を用いる構成としてもよい。
【0133】
また、上記第1〜第2の実施の形態では、圧電素子50と歪みゲージ51とを管を隔てて対向する位置に固着する構成としたが、この構成に限らず、振動の発生及び振動の受振が可能であれば、この位置関係に限らず、それぞれを異なる位置に配設してもよい。
また、上記第1〜第4の実施の形態では、圧電素子50、52、53、歪みゲージ51を接続流路管200又は吸引管700の外周面上における脈動発生部100寄りの位置に管を隔てて対向して配設する構成としたが、この構成に限らず、異なる位置に配設してもよい。例えば、接続流路管200又は吸引管700の先端側や、管の外周面上ではなく管の内側に配設する構成などとしてもよい。
【0134】
また、上記第4の実施の形態では、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を用いて、より強力な振動の発生を行うようにしたが、この構成に限らず、3つ以上の圧電素子を用いて加振力(発生する振動)を大きくする構成としてもよい。
また、上記第1〜第4の実施の形態及び上記変形例は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記第1〜第4の実施の形態及び上記変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明に係る脈動発生部100の構造を示す断面図である。
【図3】流体噴射装置1の流体噴射部分の分解図である。
【図4】入口流路503の形態を示す平面図である。
【図5】駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成を説明する説明図である。
【図7】(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成の他の例を示す図である。
【図8】動作制御部30aにおける第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30fの動作制御処理を示すフローチャートである。
【図9】第1駆動信号供給部30bにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
【図10】第2駆動信号供給部30fにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
【図11】ノズル211が接触時及び非接触時の振動波形の一例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態に係る流体噴射装置3の概略構成を示す説明図である。
【図13】圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成を説明する説明図である。
【図14】(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成の他の例を示す図である。
【図15】(a)は、圧電素子52の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
【図16】駆動部30’の詳細な構成を示すブロック図である。
【図17】(a)は、圧電素子52によって加振力を付与した期間の振動波形を示す図であり、(b)は、圧電素子52によって振動を受振する期間の振動波形を示す図である。
【図18】(a)は、圧電素子52及び53の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52及び53の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
【図19】駆動部30’’の詳細な構成を示すブロック図である。
【図20】第1駆動信号供給部30b’における駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0136】
1,3…流体噴射装置、20…ポンプ、30,30’,30’’…駆動部、50…振動発生用圧電素子、52,53…振動発生用及び受振用の圧電素子、60…吸引ポンプ、30a,30a’…動作制御部、30b,30b’…第2駆動信号供給部、30c,30h,30h’…振動検出部、30d,30d’…接続切替部、30e…データ記憶部、30f…第2駆動信号供給部、100…脈動発生部、200…接続流路管、201…接続流路、400…ダイアフラム、401…容積変更用圧電素子、501…流体室、211…ノズル、212…流体噴射開口部、503…入口流路、511…出口流路、700…吸引管
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を高速で噴射する流体噴射装置に係り、特に、噴射対象物と噴射先端との接触状態に応じて流体の噴射動作を制御するのに好適な流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織を切開または切除する流体噴射装置として、本発明者らによる流体噴射装置がある(特許文献1を参照)。
かかる流体噴射装置は、容積が変更可能な流体室と、流体室に連通する入口流路及び出口流路と、駆動信号の供給に応じて流体室の容積を変更する容積変更部とを備える脈動発生部と、出口流路に一方の端部が連通され、他方の端部が出口流路の直径よりも縮小された流体噴射開口部(ノズル)が設けられた接続流路と、接続流路が穿設され流体室から流動される流体の脈動を流体噴射開口部に伝達し得る剛性を有する接続流路管と、入口流路に流体を供給する圧力発生部とを備え、圧力発生部により一定圧力で入口流路に流体を供給すると共に、容積変更部によって流体室の容積を変更して脈動を発生し流体の吐出動作を行う。
【0003】
この流体噴射装置の流体室はその容積を変更しない場合、圧力発生部からの供給圧力と流路抵抗の釣り合った状態で流体が流れている。この状態ではノズルからの流体の吐出は連続的で、その速度が遅いために組織の切除能力はほとんどない。
一方、流体室を急激に縮小すると、流体室の圧力が上昇する。そのとき、入口流路から流体が流体室へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路に脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管内を伝播して、先端のノズルの流体噴射開口部から高速で流体が噴射される。
この動作を繰り返すことで高速のパルス・ジェットによる流体の吐出が可能となる。流体室の縮小拡大動作を圧電素子で行うことによって、数[msec]以下での起動停止が可能である。
このことは、本出願人らによる圧力発生部が不要である別の発明(特許文献2を参照)の流体噴射装置においても同様である。
【特許文献1】特開2008−82202号公報
【特許文献2】特開2005−152127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の流体噴射装置を、例えば、ウォーターメスとして手術に適用した場合に、手術は、ノズルがほとんど患部に密着した状態で行われる。そのため、流体を噴射中にノズルが患部から離れると、流体噴射による液滴の飛散が発生し、それとともに切除されたがん細胞等の組織片が辺りに飛び散ったりする恐れがあった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、噴射対象物と噴射先端との接触状態に応じて流体の噴射動作を制御するのに好適な流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の流体噴射装置は、容積が変更可能な流体室と、
前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、
前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、
前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振手段と、
前記近傍の部材の振動の大きさを検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段で検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御する動作制御手段と、を備える。
【0006】
このような構成であれば、容積変更手段で流体室の容積が変更されると、流体室内の圧力が変化し脈動流が発生する。そして、この該脈動流は出口流路を通って流体噴射開口部から噴射される。
更に、加振手段によって、流体噴射開口部の近傍の部材に加振力が付与されると、流体噴射開口部の近傍の部材が振動すると共に流体噴射開口部が振動する。
更に、振動検出手段によって、前記近傍の部材の振動の大きさが検出されると、動作制御手段によって、検出された振動の大きさに基づき、容積変更手段の動作が制御される。
ここで、流体の噴射対象物又はその近傍の物体(噴射した流体による液溜まりなど)に振動中の流体噴射開口部を接触させると、流体噴射開口部及び前記近傍の部材の振動の大きさが変化し(小さくなり)、この変化が振動検出手段によって検出される。
【0007】
このことを踏まえて、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、流体噴射開口部が何にも接触していないときの大きさのときは、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えないようにその動作を制御したり、流体の噴射力が弱まるようにその動作を制御したりするようにしておく。
更に、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、流体噴射開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触しているときの大きさのとき(接触していないときよりも小さい振動のとき)は、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えるようにその動作を制御するようにしておく。
【0008】
これにより、流体噴射開口部が噴射対象物又はその近傍の物体に接触していないときに、噴射動作をさせないようにしたり、噴射力を弱めるようにしたりできるので、流体噴射開口部が、利用者(以下、施術者とも言う)の操作ミス等によって、噴射対象物又はその近傍の物体から離れたときに、思わぬ方向への流体の噴射や、それによる切除された物質の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
ここで、上記流体噴射開口部の近傍の部材は、その部材に加振力を付与することで振動し、且つ流体噴射開口部を含む先端部分が物体(固体、液体など)に当接したときに近傍の部材の振動の大きさが変化(例えば、弱まる)ものが望ましい。
【0009】
〔形態2〕 更に、形態2の流体噴射装置は、形態1の流体噴射装置において、前記流体噴射開口部の近傍の部材が流体噴射開口部を構成する部材である。
このような構成であれば、加振手段によって、流体噴射開口部を構成する部材に加振力が付与されると、流体噴射開口部を構成する部材が振動する。
更に、振動検出手段によって、流体噴射開口部の振動の大きさが検出されると、動作制御手段によって、検出された振動の大きさに基づき、容積変更手段の動作が制御される。
【0010】
〔形態3〕 更に、形態2の流体噴射装置は、形態1の流体噴射装置において、前記流体噴射開口部の近傍に位置する吸引開口部と、前記吸引開口部を介して吸引した物体を搬送する通路とを有する吸引管と、前記吸引開口部の近傍の物体を吸引する吸引力を付与する吸引力付与手段と、を備え、
前記流体噴射開口部の近傍の部材が前記吸引開口部を構成する部材である。
このような構成であれば、吸引力付与手段によって吸引力が付与されると、吸引開口部の近傍にある物体(流体噴射開口部から噴射した流体や、流体の噴射により切除又は除去された物体(例えば、組織片など)など)が吸引され、この吸引された物体が吸引管内の通路を通って吸引物を収容する容器などに搬送される。
更に、加振手段によって、吸引開口部を構成する部材に加振力が付与されると、吸引開口部が振動する。
【0011】
更に、振動検出手段によって、吸引開口部の振動の大きさが検出されると、動作制御手段によって、検出された振動の大きさに基づき、容積変更手段の動作が制御される。
ここで、流体の噴射対象物又はその近傍の物体(噴射した流体による液溜まりなど)に振動中の吸引開口部を接触させると、吸引開口部の振動の大きさが変化し(小さくなり)、この変化が振動検出手段によって検出される。
【0012】
このことを踏まえて、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、吸引開口部が何にも接触していないときの大きさのときは、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えないようにその動作を制御したり、流体の噴射力が弱まるようにその動作を制御したりするようにしておく。
更に、動作制御手段において、振動検出手段で検出される振動の大きさが、吸引開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触しているときの大きさのとき(接触していないときよりも小さい振動のとき)は、例えば、容積変更手段が容積の変更動作を行えるようにその動作を制御するようにしておく。
【0013】
これにより、吸引開口部が噴射対象物又はその近傍の物体に接触していないときに、噴射動作をさせないようにしたり、噴射力を弱めるようにしたりできるので、吸引開口部と共に流体噴射開口部が、施術者の操作ミス等によって、噴射対象物又はその近傍の物体から離れたときに、思わぬ方向への流体の噴射や、それによる切除された物質の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
更に、例えば、本形態の流体噴射装置をウォーターメスとして手術に用いた場合に、切除した生体組織片や吐出した流体を吸引することができるので、良好な視野を確保しながら手術を行うことができる。
【0014】
〔形態4〕 更に、形態4の流体噴射装置は、形態1又は2の流体噴射装置において、前記加振手段は、前記流体噴射開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記出口流路に設けた。
このような構成であれば、加振力発生部によって出口流路に対して加えられた加振力が流体噴射開口部又はその近傍の部材を振動させ、その振動が振動受振部において受振される。
【0015】
〔形態5〕 更に、形態5の流体噴射装置は、形態4の流体噴射装置において、前記出口流路の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けた。
このような構成であれば、加振力発生部及び振動受振部が曲げ難い部材で構成されている場合に、真っ直ぐな形状のまま、これらを出口流路に容易に取り付けることができる。
【0016】
〔形態6〕 更に、形態6の流体噴射装置は、形態3の流体噴射装置において、前記加振手段は、前記吸引開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記吸引管に設けた。
このような構成であれば、加振力発生部によって吸引管に対して加えられた加振力が吸引開口部を振動させ、その振動が振動受振部において受振される。
【0017】
〔形態7〕 更に、形態7の流体噴射装置は、形態6の流体噴射装置において、前記吸引管の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けた。
このような構成であれば、加振力発生部及び振動受振部が曲げ難い部材で構成されている場合に、真っ直ぐな形状のまま、これらを吸引管に容易に取り付けることができる。
【0018】
〔形態8〕 更に、形態8の流体噴射装置は、形態4乃至7のいずれか1の流体噴射装置において、前記振動受振部を歪みゲージを含んで構成した。
このような構成であれば、歪みゲージによって、簡易に振動の大きさを検出することができる。
〔形態9〕 更に、形態9の流体噴射装置は、形態4乃至8のいずれか1の流体噴射装置において、前記加振力発生部を圧電素子を含んで構成した。
このような構成であれば、圧電素子によって加振力を発生することができるので、印加電圧の制御によって、簡易に加振力の制御を行うことができる。
【0019】
〔形態10〕 更に、形態10の流体噴射装置は、形態8の流体噴射装置において、前記加振力発生部は、前記加振力を発生する圧電素子と同じ圧電素子によって、加振力を発生する機能と、振動を受振する、前記振動受振部としての機能とを兼ね備える。
このような構成であれば、加振力の発生と、振動の受振とを1つの圧電素子で行うことができるので、比較的低コストで加振手段及び振動検出手段を構成することができる。
【0020】
〔形態11〕 更に、形態11の流体噴射装置は、形態10の流体噴射装置において、前記加振手段は、前記圧電素子を駆動する駆動部を有し、
前記振動検出手段は、前記圧電素子に生じる起電力を検出する起電力検出部を有し、
前記駆動部による駆動信号の供給と前記起電力検出部による起電力の検出とを時分割で行うように制御する時分割制御手段を備える。
このような構成であれば、加振力の発生と、振動の受振とを1つの圧電素子で行うことができるので、比較的低コストで加振手段及び振動検出手段を構成することができる。
【0021】
〔形態12〕 更に、形態12の流体噴射装置は、形態4乃至11のいずれか1の流体噴射装置において、前記加振手段は、複数の前記加振力発生部を有し、前記複数の加振力発生部において発生する力が前記加振力を大きくするように各加振力発生部の動作を制御する。
このような構成であれば、より大きな加振力を発生することができるので、加振対象物をより大きく振動させることができ、振動の大きさの検出精度を高めることができる。
【0022】
〔形態13〕 更に、形態13の流体噴射装置は、形態1乃至12のいずれか1の流体噴射装置において、前記動作制御手段は、前記振動検出手段で検出された振動の大きさが所定の大きさよりも小さいときに前記容積変更手段が動作するように制御し、前記振動の大きさが前記所定の大きさ以上のときに前記容積変更手段が動作しないように制御する。
このような構成であれば、例えば、流体噴射開口部又は吸引開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触しているときに、流体の噴射を行わせることができ、流体噴射開口部又は吸引開口部が、噴射対象物又はその近傍の物体に接触していないときに、噴射動作をさせないようにすることができる。
【0023】
〔形態14〕 また、上記目的を達成するために、形態14の流体噴射装置の駆動方法は、容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、加振手段と、振動検出手段と、動作制御手段と、を備えた流体噴射装置の駆動方法であって、
前記加振手段に、前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振ステップと、
前記振動検出手段に、前記近傍の部材の振動の大きさを検出させる振動検出ステップと、
前記動作制御手段に、前記振動検出ステップで検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御させる動作制御ステップと、を含む。
これにより、上記形態1の流体噴射装置と同等の作用及び効果が得られる。
【0024】
〔形態15〕 また、上記目的を達成するために、形態15の手術用器具は、流体の噴射によって患部の治療的措置を支援する手術用器具であって、
形態1乃至形態13のいずれか1に記載の流体噴射装置を備える。
このような構成であれば、上記形態1乃至13のいずれか1の流体噴射装置による流体の噴射によって、腫瘍などの患部の切除などの治癒的措置の支援を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づき説明する。図1〜図9は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第1の実施の形態を示す図である。
なお、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、物体の切断や切除、手術用メス等様々に採用可能であるが、以下に説明する実施の形態では、生体組織を切開または切除することに好適なウォーター・パルス・メス(流体噴射装置及び手術用器具)を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水、生理食塩水、薬液等である。
【0026】
まず、本発明に係る流体噴射装置の構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。
流体噴射装置1は、図1に示すように、基本構成として、流体を収容する流体容器10と、圧力発生部としてのポンプ20と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100と、脈動発生部100を駆動する駆動部30と、振動発生用圧電素子50と、歪みゲージ51とを含んで構成されている。
更に、脈動発生部100には、細いパイプ状の接続流路管200が接続され、接続流路管200の先端部には接続流路管200の流路径よりも小さい流路径を有するノズル211が挿着されている。
【0027】
接続流路管200の外周面上には、ノズル211を振動させるための振動発生用圧電素子50(以下、単に圧電素子50と称す)と、ノズル211に発生した振動の大きさを検出するための歪みゲージ51が固着されている。
脈動発生部100の内側には、圧電素子50に駆動信号を供給するための2本の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と、歪みゲージ51のゲージ入力線及びゲージ出力線と、流体噴射用圧電素子401(後述)に駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT(−)及びJPZT(+)とを配線する通路が形成されている。
これらの通路は、脈動発生部100からの信号線の出口で合流し、4本の供給線と、ゲージ入力線及びゲージ出力線とは、1箇所の出口からまとめて外へと出る。
これらの線はケーブル45によってひとまとめにされて駆動部30に接続される。なお、ケーブル45の各線は、駆動部30のそれぞれ対応する構成部と電気的に接続される。
【0028】
次に、図1及び図2に基づき、流体噴射装置1における流体の流動を簡単に説明する。
ここで、図2は、本発明に係る脈動発生部100の構造を示す断面図である。なお、図2において、左右方向が上下方向に対応する。また、図2は、後述する図4におけるA−A'断面図である。
流体容器10に収容された流体は、接続チューブ15を介してポンプ20によって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25を介して脈動発生部100に供給される。脈動発生部100には流体室501と、この流体室501の容積を駆動部30からの駆動信号に応じて変更する容積変更部405とを備えており、この容積変更部405を駆動して脈動を発生し、接続流路管200、ノズル211を通して流体を高速で噴射する。脈動発生部100の詳しい説明については後述する。
【0029】
なお、圧力発生部としてはポンプ20に限らず、輸液バッグをスタンド等によって脈動発生部100よりも高い位置に保持するようにしてもよい。従って、ポンプ20は不要となり、構成を簡素化することができる他、消毒等が容易になる利点がある。
ポンプ20の吐出圧力は概ね3気圧(0.3MPa)以下に設定する。また、輸液バッグを用いる場合には、脈動発生部100と輸液バッグの液上面との高度差が圧力となる。輸液バックを用いるときには0.1〜0.15気圧(0.01〜0.015MPa)程度になるように高度差を設定することが望ましい。
【0030】
なお、この流体噴射装置1を用いて手術をする際には、術者が把持する部位は脈動発生部100である。従って、脈動発生部100までの接続チューブ25はできるだけ柔軟であることが好ましい。そのためには、柔軟で薄いチューブで、流体を脈動発生部100に送液可能な範囲で低圧にすることが好ましい。
また、特に、脳手術のときのように、機器の故障が重大な事故を引き起こす恐れがある場合には、接続チューブ25の切断等において高圧な流体が噴出することは避けなければならず、このことからも低圧にしておくことが要求される。
【0031】
次に、図2〜図4に基づき、脈動発生部100の構造について説明する。
ここで、図3は、流体噴射装置1の流体噴射部分の分解図であり、図4は、入口流路503の形態を示す平面図であり、上ケース500を下ケース301との接合面側から視認した状態を表している。
脈動発生部100は、図2〜図4に示すように、4隅に螺子穴500aの穿設された上ケース500と、4隅に螺子穴301a(図示は省略)の穿設された下ケース301とを備えている。そして、これら上ケース500と下ケース301とがそれぞれ対向する面において、螺子穴500a及び301aが対向するように接合され、4本の固定螺子600(図示は省略)を螺子穴500a及び301aに螺合することによって上ケース500と下ケース301とが螺着されている。
【0032】
下ケース301は、鍔部を有する中空筒状の部材であって、一方の端部は底板311で密閉されている。この下ケース301の内部空間に、容積変更部405を構成する部材の1つである圧電素子401が配設されている。
この圧電素子401は、積層型圧電素子であってアクチュエータを構成している。圧電素子401の一方の端部は上板411を介してダイアフラム400に、他方の端部は底板311の上面312に固着されている。
また、ダイアフラム400は、円盤状の金属薄板からなり、下ケース301の上面側に形成された円環状の凹部303内において周縁部が凹部303の底面に密着固着されている。ダイアフラム400の上面には、中心部に円形の開口部を有する円盤状の金属薄板からなる補強板410が積層配設される。
【0033】
この構成により、駆動部30によって、圧電素子401に駆動信号を入力(動作電圧を印加)することで、圧電素子401が伸張、収縮し、その伸長時の上方向の力及び収縮時の下方向の力が上板411を上下方向に移動させる。そして、上板411が移動することでダイアフラム400が変形し、流体室501の容積を変更する。
つまり、圧電素子401、上板411、ダイアフラム400及び補強板410から容積変更部405が構成されている。
上ケース500は、下ケース301と対向する面の中心部に円形の凹部が形成され、この凹部とダイアフラム400とから構成され、内部に流体が充填された状態の回転体形状が流体室501となる。つまり、流体室501は、上ケース500の凹部の封止面505と内周側壁501aとダイアフラム400によって囲まれた空間となる。流体室501の略中央部には出口流路511が穿設されている。
【0034】
出口流路511は、流体室501から上ケース500の一方の端面から突設された出口流路管510の端部まで貫通されている。出口流路511の流体室501の封止面505との接続部は、流体抵抗を減ずるために滑らかに丸められている。
なお、以上説明した流体室501の形状は、本実施形態では、両端が封止された略円筒形状としているが、側面視して円錐形や台形、あるいは半球形状等でもよく限定されない。例えば、出口流路511と封止面505との接続部を漏斗のような形状にすれば、後述する流体室501内の気泡を排出しやすくなる。
出口流路管510には接続流路管200が接続されている。接続流路管200には接続流路201が穿設されており、接続流路201の直径は出口流路511の直径より大きい。また、接続流路管200の管部の厚さは、流体の圧力脈動を吸収しない剛性を有する範囲に形成されている。
【0035】
接続流路管200の先端部には、ノズル211が挿着されている。このノズル211には流体噴射開口部212が穿設されている。流体噴射開口部212の直径は、接続流路201の直径より小さい。
更に、接続流路管200の脈動発生部100側における出口流路管510との接続部より先端側の外周面には、圧電素子50と歪みゲージ51とが管を隔てた対向位置にそれぞれ固着されている。
上ケース500の側面には、ポンプ20から流体を供給する接続チューブ25を挿着する入口流路管502が突設されており、入口流路管502に入口流路側の接続流路504が穿たれている。この接続流路504は入口流路503に連通されている。入口流路503は、流体室501の封止面505の周縁部に溝状に形成され、流体室501に連通している。
【0036】
上ケース500と下ケース301との接合面において、ダイアフラム400の外周方向の離間した位置には、下ケース301側にパッキンボックス304、上ケース500側にパッキンボックス506が形成されており、パッキンボックス304,506にて形成される空間にリング状のパッキン450が装着されている。
ここで、上ケース500と下ケース301とを組立てたとき、ダイアフラム400の周縁部と補強板410の周縁部とは、上ケース500の封止面505の周縁部と下ケース301の凹部303の底面によって密接されている。この際、パッキン450は上ケース500と下ケース301によって押圧されて、流体室501からの流体漏洩を防止している。
流体室501内は、流体吐出の際に例えば30気圧(3MPa)以上の高圧状態となり、ダイアフラム400、補強板410、上ケース500、下ケース301それぞれの接合部において流体が僅かに漏洩することが考えられるが、パッキン450によって漏洩を阻止している。
【0037】
図2に示すようにパッキン450を配設すると、流体室501から高圧で漏洩してくる流体の圧力によってパッキン450が圧縮され、パッキンボックス304,506内の壁にさらに強く押圧されるので、流体の漏洩を一層確実に阻止することができる。このことから、駆動時において流体室501内の高い圧力上昇を維持することができる。
続いて、上ケース500に形成される入口流路503についてさらに詳しく説明する。
入口流路503は、図4に示すように、上ケース500の封止面505の周縁部に形成された溝部と封止面505に押圧固定される補強板410によって形成される。
入口流路503は、一方の端部が流体室501に連通し、他方の端部が接続流路504に連通している。入口流路503と接続流路504との接続部には、流体溜り507が形成されている。そして、流体溜り507と入口流路503との接続部は滑らかに丸めることによって流体抵抗を減じている。
【0038】
また、入口流路503は、流体室501の内周側壁501aに対して略接線方向に向かって連通している。ポンプ20から一定の圧力で供給される流体は、内周側壁501aに沿って(図中、矢印で示す方向に)流動して流体室501に旋回流を発生する。旋回流の遠心力により、流体室501内に含まれる低密度の気泡は旋回流の中心部に集中する。
そして、中心部に集められた気泡は、出口流路511から排除される。このことから、出口流路511は旋回流の中心近傍、つまり回転形状体の軸中心部に設けられることがより好ましい。図4の例では、入口流路503は平面形状が渦巻状に湾曲されている。入口流路503は、直線で流体室501に連通させてもよいが、狭いスペースの中で所望のイナータンスを得るために、入口流路503の流路長を長くする必要性から湾曲させている。
【0039】
なお、図2に示したように、ダイアフラム400と入口流路503が形成されている封止面505の周縁部との間には、補強板410が配設されている。補強板410を設ける意味は、ダイアフラム400の耐久性を向上することである。入口流路503の流体室501との接続部には切欠き状の接続開口部509が形成されるので、ダイアフラム400が高い周波数で駆動されたときに、接続開口部509近傍において応力集中が生じて疲労破壊を発生することが考えられる。そこで、切欠き部がない連続した開口部を有している補強板410を配設することで、ダイアフラム400に応力集中が発生しないようにしている。
【0040】
また、以上説明した流体噴射装置1においては、上ケース500の外周隅部に、4箇所の螺子穴500aが開設されており、この螺子穴位置において、上ケース500と下ケース301とを螺合接合するようにしたがこの構成に限らない。例えば、図示は省略するが、補強板410とダイアフラム400とを接合し、一体に積層固着することができる。固着手段としては、接着剤を用いる貼着としても、固層拡散接合、溶接等を採用することが可能であるが、補強板410とダイアフラム400とが、接合面において密着されていることがより好ましい。
【0041】
また、以上説明した流体噴射装置1においては、出口流路511とノズル211とを接続流路管200を介して接続する構成としているが、この構成に限らず、接続流路管200を用いずに、出口流路管510の流体室501とは反対側の端部にノズル211を挿着することも可能である。この場合は、より簡素な構成が可能になる。
また、手術に用いる場合には、接続流路管200を用いてハンドピースと流体噴射開口部212までの距離が適度に長くなるように(奥まった患部に届く長さに)構成にしたほうが好適である。
【0042】
次に、本実施形態の脈動発生部100の流体吐出の原理について説明する。
本実施形態の脈動発生部100の流体吐出は、入口流路側のイナータンスL1(合成イナータンスL1と呼ぶことがある)と出口流路側のイナータンスL2(合成イナータンスL2と呼ぶことがある)との差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
【0043】
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンスは、個々の流路のイナータンスを電気回路におけるインダクタンスの並列接続、または直列接続と同様に合成して算出することができる。
なお、入口流路側のイナータンスL1は、接続流路504が入口流路503に対して直径が十分大きく設定されているので、イナータンスL1は、入口流路503のイナータンスのみ算出すればよい。また、ポンプ20と入口流路を接続する接続チューブは柔軟性を有するため、イナータンスL1の算出から除かれる。
【0044】
また、出口流路側のイナータンスL2は、接続流路201の直径が出口流路よりもはるかに大きく、接続流路管200の管部(管壁)の厚さが薄い場合イナータンスL2への影響は軽微である。従って、出口流路側のイナータンスL2は出口流路511のイナータンスに置き換えてもよい。
接続流路管200の管壁の厚さが厚い場合には、イナータンスL2は、出口流路511、接続流路201及びノズル211の合成イナータンスとなる。
そして、本実施形態では、入口流路側のイナータンスL1が出口流路側のイナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路503の流路長及び断面積、出口流路511の流路長及び断面積を設定している。
【0045】
次に、図5に基づき、駆動部30の詳細な構成を説明する。
ここで、図5は、駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30は、図5に示すように、動作制御部30aと、第1駆動信号供給部30bと、振動検出部30cと、データ記憶部30eと、第2駆動信号供給部30fと、同期信号発生部30gとを含んで構成されている。
動作制御部30aは、流体噴射装置1の入力装置(不図示)からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30bの駆動信号の供給処理、ノズル211の接触状態の判定処理、この判定結果に基づく第2駆動信号供給部30fの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
【0046】
具体的に、動作制御部30aは、ウォーター・パルス・メスの駆動スイッチ(不図示)がオフの状態からオンの状態になったときに、まず、接続流路管200に対してノズル211を振動させるための加振力を発生させるために第1駆動信号供給部30bに対して振動発生指令を出力する。
これによって、第1駆動信号供給部30bから駆動信号が圧電素子50に供給されて圧電素子50が伸縮動作を行い、その力が加振力となって接続流路管200及びノズル211に伝達され、接続流路管200及びノズル211が振動する。
【0047】
更に、動作制御部30aは、振動検出部30cからの振動の大きさの検出結果(歪みゲージ51の出力電圧値)と、データ記憶部30eに記憶された振動の大きさの閾値とに基づき、ノズル211が患部又はその近傍の物体(噴射した流体溜まりなど)と接触しているか否かを判定する。そして、接触していると判定した場合は、流体を噴射させるために第2駆動信号供給部30fに対して噴射駆動指令を出力する。
これによって、第2駆動信号供給部30fから駆動信号が圧電素子401に供給されて圧電素子401が伸張動作を行い、流体室501が縮小し室内の流体が圧縮されて脈動流となって、出口流路511及び接続流路201を介して流体噴射開口部212から噴射される。
【0048】
一方、接触していないと判定した場合は、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射駆動指令を出力しない又は流体を噴射中(圧電素子401を駆動中)であれば、噴射停止指令を出力する。
一方、ウォーター・パルス・メスの駆動スイッチがオンの状態からオフの状態になったときに、流体の噴射を停止させるために第2駆動信号供給部30fに対して噴射停止指令を出力する。更に、ノズル211の振動を停止させるために第1駆動信号供給部30bに対して振動停止指令を出力する。
これによって、流体の噴射が停止すると共に、ノズル211の振動が停止する。
【0049】
第1駆動信号供給部30bは、動作制御部30aから振動発生指令に応じて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、振動を発生させるための駆動信号を圧電素子50に供給する機能を有している。
具体的に、振動発生指令に含まれる波形指定情報に基づき、該当する振動発生用の波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30eから読み出し、該読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号を同期信号に同期させて圧電素子50に供給する。なお、波形指定情報は、振動発生用の信号波形に付された識別情報などとなる。
【0050】
更に、動作制御部30aから駆動信号の振動停止指令に応じて、駆動信号の供給を停止する機能を有している。本実施の形態では、駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときは、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子50に供給してから駆動信号の供給を停止するようになっている。
振動検出部30cは、ホイートストンブリッジ回路を含んで構成される検出回路を含み、圧電素子50によって加えられた加振力による接続流路管200の曲げ変化による歪みゲージ51の抵抗変化を、検出回路によって電圧レベルとして検知する。そして、この検知レベル(電圧値)を検出結果として、動作制御部30aに出力する。
【0051】
データ記憶部30eは、設定される噴射強さに対応する、周期や振幅の異なる複数種類の信号波形の波形情報、接触検出用の閾値、その他各構成部の処理に用いるデータなどを記憶する記憶媒体を含んで構成され、各構成部からの読み出し要求に応じて記憶媒体に記憶されたデータを読み出し、各構成部からの書き込み要求に応じて記憶媒体にデータを書き込む機能を有している。
第2駆動信号供給部30fは、動作制御部30aからの噴射駆動指令に応じて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、駆動信号を容積変更部405の圧電素子401に供給線JPZT(−)及びJPZT(+)を介して供給する機能を有している。
【0052】
具体的に、噴射駆動供給指令に含まれる噴射駆動用の波形指定情報に基づき、該当する波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30eから読み出し、該読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号を同期信号に同期させて圧電素子401に供給する。なお、波形指定情報は、噴射強さに応じた噴射駆動用の信号波形に付された識別情報などとなる。
更に、動作制御部30aからの噴射停止指令に応じて、駆動信号の供給を停止する機能を有している。本実施の形態では、駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときは、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子401に供給してから駆動信号の供給を停止するようになっている。
【0053】
同期信号発生部30gは、セラミック振動子、水晶振動子などの発振子、カウンタ(又はPLL回路)などを含み、発振子から出力される信号を基準クロック信号clkとして、該clkから同期信号を生成する機能を有している。そして、基準クロック信号及び同期信号を駆動信号供給部30fに供給する。
なお、駆動部30は、上記各構成部の機能をソフトウェアを用いて実現するため、および上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するためのコンピュータシステムを備えている。このコンピュータシステムのハードウェア構成は、図示しないが、プロセッサ(Processer)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを有し、これらの間を各種内外バスで接続した構成となっている。
【0054】
更に、バスには、IEEE1394、USB、パラレルポート等の入出力インターフェース(I/F)を介して、例えば、CRTまたはLCDモニター等の表示装置、操作パネル、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
そして、電源を投入すると、ROM等に記憶されたシステムプログラムが、ROMに予め記憶された上記各部の機能を実現するための各種専用のコンピュータプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従ってプロセッサが各種リソースを駆使して所定の制御および演算処理を行うことで前述したような各機能を実現するようになっている。
【0055】
次に、図6〜図7に基づき、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成について説明する。
ここで、図6は、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成を説明する説明図である。また、図7(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成の他の例を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、接続流路管200の外周面における脈動発生部100寄りの位置に配設且つ固着されている。
【0056】
更に、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、図6上図中の丸で囲った部分のB−B’断面である図6下図に示すように、断面が円環状の接続流路管200の外周面(曲面)上に固着されている。
従って、接続流路管200の外周面の曲面に沿って密着固着されるように、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分には曲げ加工が施されている。
なお、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付構成は、この構成に限らず、例えば、図7(a)に示すように、接続流路管200の少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を断面矩形状に構成して外周面に水平面を形成し、この水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
【0057】
また、図7(b)及び(c)に示すように、断面円環形状の取付部分の曲面部を押し潰すなどして、接続流路管200における圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分のみに水平面を設け、この水平面に配設且つ固着する構成としてもよい。
また、図7(d)に示すように、少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を、接続流路管200の内側の空洞部は断面円形のままに、外側の管壁部が断面矩形となるように構成して外周面に水平面を形成し、この水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
上記図7(a)〜(d)のいずれかの取付構成に示すように、管の外周面に水平面を形成し、その水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を固着することで、圧電素子50及び歪みゲージ51を曲げ加工する必要がなくなり、簡易な構成で取り付けることが可能となる。この取付構成は、特に曲げ加工の難しい圧電素子に有効な構成である。
【0058】
次に、図8に基づき、動作制御部30aにおける第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30fの動作制御処理の流れを説明する。
ここで、図8は、動作制御部30aにおける第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30fの動作制御処理を示すフローチャートである。
プロセッサによって専用のプログラムが実行され、動作制御処理が開始されると、図8に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、動作制御部30aにおいて、ウォーター・パルス・メス(以下、WPSと称す)の駆動スイッチがオンになったか否かを判定し、オンになったと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでない場合(No)は、オンになるまで判定処理を繰り返す。
【0059】
ステップS102に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して、振動発生指令を出力して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、動作制御部30aにおいて、振動検出部30cからの検出電圧と、データ記憶部30eに記憶された接触検出用の閾値とを比較して、ステップS106に移行する。
ここで、比較処理としては、検出電圧(絶対値)をそのまま使用して閾値との比較する方法、検出電圧(絶対値)の所定時間の平均値を算出して閾値との比較する方法などがある。
【0060】
本実施の形態においては、後者の平均電圧値を算出し、この平均電圧値と、予め測定しておいたノズル211が患部やその近傍の物体などに接触して振動が弱まったときの平均電圧値を示す閾値とを比較する。
ステップS106では、動作制御部30aにおいて、ステップS104の比較結果に基づき、検出電圧値の所定時間の平均値が閾値以下か否かを判定し、閾値以下であると判定された場合(Yes)は、ステップS108に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS116に移行する。
【0061】
ステップS108に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触していると判定し、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射駆動指令を出力して、ステップS110に移行する。
ステップS110では、動作制御部30aにおいて、駆動スイッチがオフになったか否かを判定し、オフになったと判定した場合(Yes)は、ステップS112に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS104に移行する。
ステップS112に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射停止指令を出力して、ステップS114に移行する。
【0062】
ステップS114に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して、振動停止指令を出力して、ステップS104に移行する。
一方、ステップS102において、検出電圧値の所定時間の平均値が閾値よりも大きくてノズル211が接触状態ではないと判定されステップS116に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、噴射停止指令を、第2駆動信号供給部30fに出力して、ステップS100に移行する。なお、噴射動作を行っていない場合は、噴射停止指令を出力せずに、ステップS100に移行するようにしてもよい。
【0063】
次に、図9に基づき、第1駆動信号供給部30bにおける圧電素子50への駆動信号供給処理の流れを説明する。
ここで、図9は、第1駆動信号供給部30bにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、圧電素子50への駆動信号供給処理が開始されると、図9に示すように、まず、ステップS200に移行する。
ステップS200では、第1駆動信号供給部30bにおいて、動作制御部30aからの振動発生指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS202に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
【0064】
ステップS202に移行した場合は、第1駆動信号供給部30bにおいて、振動発生指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子50の駆動に用いる振動発生用の波形データをデータ記憶部30eから読み出して、ステップS204に移行する。
ステップS204では、第1駆動信号供給部30bにおいて、ステップS202で読み出した波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS206に移行する。
ステップS206では、第1駆動信号供給部30bにおいて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、ステップS204でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる駆動信号を、圧電素子50に出力して、ステップS208に移行する。
【0065】
ステップS208では、第1駆動信号供給部30bにおいて、動作制御部30aから振動停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS210に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS204の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS210に移行した場合は、第1駆動信号供給部30bにおいて、1周期分の信号を全て出力後に、駆動信号の供給を停止して、ステップS200に移行する。
【0066】
次に、図10に基づき、第2駆動信号供給部30fにおける圧電素子401への駆動信号の供給処理の流れを説明する。
ここで、図10は、第2駆動信号供給部30fにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、圧電素子401への駆動信号供給処理が開始されると、図10に示すように、まず、ステップS300に移行する。
ステップS300では、第2駆動信号供給部30fにおいて、動作制御部30aからの噴射駆動指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS302に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
【0067】
ステップS302に移行した場合は、第2駆動信号供給部30fにおいて、噴射駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401の駆動に用いる噴射駆動用の波形データをデータ記憶部30eから読み出して、ステップS304に移行する。
ステップS304では、第2駆動信号供給部30fにおいて、ステップS302で読み出した波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS306に移行する。
ステップS306では、第2駆動信号供給部30fにおいて、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、ステップS304でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる駆動信号を、圧電素子401に出力して、ステップS308に移行する。
【0068】
ステップS308では、第2駆動信号供給部30fにおいて、動作制御部30aから噴射停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS310に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS304の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS310に移行した場合は、第2駆動信号供給部30fにおいて、1周期分の信号を全て出力後に、駆動信号の供給を停止して、ステップS300に移行する。
【0069】
次に、図11に基づき、本実施の形態の流体噴射装置1の具体的な動作を説明する。
図11は、ノズル211が接触時及び非接触時の振動波形の一例を示す図である。
まず、流体噴射装置1の電源をオンにすると初期化動作が行われ駆動待機状態へと移行する。
この状態において、WPSの駆動スイッチがオンにされると(ステップS100の「Yes」の分岐)、動作制御部30aは、まず、第1駆動信号供給部30bに対して、振動発生指令を出力する(ステップS102)。
第1駆動信号供給部30bは、動作制御部30aからの振動発生指令を受けると(ステップS200の「Yes」の分岐)、振動発生用の波形データをデータ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出し、該読み出した波形データをDA変換してアナログの波形信号を生成する(ステップS204)。
【0070】
そして、生成した振動発生用のアナログの波形信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子50に出力する(ステップS206)。
これによって、圧電素子50が伸縮動作し、この伸縮力(加振力)が圧電素子50の取付部を介して接続流路管200に伝達され、接続流路管200を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、接続流路管200及びノズル211が振動する。このとき、接続流路管200の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子50を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
一方、この振動による接続流路管200の変形によって、歪みゲージ51のベース(取付部)を経由して内部の抵抗体(線・箔)に歪みが伝わる。そして、振動検出部30cでは、検出回路において、この発生した歪みに対応した抵抗変化が電圧値として検出され、この検出電圧値が動作制御部30aに出力される。
【0071】
ノズル211に発生した振動の大きさは、振動検出部30cにおいて、ノズル211が患部やその近傍の物体などに非接触の状態であれば、図11の左側の波形に示すように、図11の右図の接触時の波形の振幅よりも大きな振幅となる。
これは、ノズル211が患部やその近傍の物体などに接触することで振動が弱められるためである。
動作制御部30aは、所定時間の検出電圧値の絶対値の平均値を算出し、この平均値と、データ記憶部30eに記憶された閾値とを比較する(ステップS104)。
更に、動作制御部30aは、比較結果に基づき、平均値が閾値以下のときは(ステップS106の「Yes」の分岐)、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触しているとして、第2駆動信号供給部30fに対して、噴射駆動指令を出力する(ステップS108)。
【0072】
また、平均値が閾値よりも大きいときは(ステップS106の「No」の分岐)、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触していないとして、駆動スイッチがオンになっても、第2駆動信号供給部30fに対して噴射駆動指令を出力しない(ステップS116)。
第2駆動信号供給部30fは、動作制御部30aから噴射駆動指令を受けると(ステップS300の「Yes」の分岐)、噴射駆動指令に含まれる波形情報の識別情報に基づき、該当の噴射駆動用の波形データをデータ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出す(ステップS302)。
次に、ワークメモリに読み出した波形データをDA変換し、アナログの駆動信号を生成する(ステップS304)。
【0073】
次に、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、生成した噴射駆動用のアナログの駆動信号を圧電素子401に出力する(ステップS306)。
ここで、駆動信号の供給前は、ポンプ20によって入口流路503には、常に一定圧力の液圧で流体が供給されている。その結果、圧電素子401が動作を行わない場合、ポンプ20の吐出力と入口流路側全体の流体抵抗値の差とによって流体は流体室501内に流動する。
ここで、圧電素子401に駆動信号が入力され、急激に圧電素子401が伸張したとすると、流体室501内の圧力は、入口流路側及び出口流路側のイナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
【0074】
この圧力は、入口流路503に加えられていたポンプ20による圧力よりはるかに大きいため、入口流路側から流体室501内への流体の流入はその圧力によって減少し、出口流路511からの流出は増加する。
しかし、入口流路503のイナータンスL1は、出口流路511のイナータンスL2よりも大きいため、入口流路503から流体が流体室501へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路201にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管200内を伝播して、先端のノズル211の流体噴射開口部212から流体が噴射される。
【0075】
ここで、ノズル211の流体噴射開口部212の直径は、出口流路511の直径よりも小さいので、流体は、高速のパルス状の液滴として噴射される。
一方、流体室501内は、入口流路503からの流体流入量の減少と出口流路511からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。
そして、伸長状態にある圧電素子401は駆動波形の立ち下がり波形形状に応じた速度で収縮していき、最終的に流体の流れは、駆動信号を供給する前の定常状態へと復帰する。
なお、流体室501が、略回転体形状を有し、入口流路503を備えていることと、出口流路511が略回転体形状の回転軸近傍に開設されていることから、流体室501内において旋回流が発生し、流体内に含まれる気泡(真空泡及びガス泡)は速やかに出口流路511から外部に排出される。
【0076】
駆動信号を連続で圧電素子401に供給することで、ノズル211からの脈動流を継続して噴射することができる。
このように、連続して駆動信号を供給し脈動流を継続して噴射しているときに、施術者が脈動発生部100を動かして、ノズル211が患部又はその近傍の物体から離れると、ノズル211の振動を阻害する要因が無くなるので、振動検出部30cにおいて検出される検出電圧値が大きくなる。
これにより、動作制御部30aにおいて、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値が閾値よりも大きくなり(ステップS106の「No」の分岐)、動作制御部30aは、ノズル211が患部又はその近傍の物体に非接触であるとして、第2駆動信号供給部30fに、噴射停止指令を出力する(ステップS116)。
【0077】
第2駆動信号供給部30fは、動作制御部30aから噴射停止指令が入力されると(ステップS308の「Yes」の分岐)、現在供給中の駆動信号を、1周期分すべて供給してから、駆動信号の供給を停止する(ステップS310)。
その後、WPSの駆動スイッチがオンの状態で、再びノズル211が患部やその近傍の物体に接触すると、ノズル211の振動が弱まって、振動検出部30cにおいて検出される検出電圧値が小さくなる。
これにより、動作制御部30aにおいて、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値が閾値以下となり(ステップS106の「Yes」の分岐)、動作制御部30aは、ノズル211が患部又はその近傍の物体に接触しているとして、第2駆動信号供給部30fに、噴射駆動指令を出力する(ステップS108)。これによって、圧電素子401に駆動信号が供給され、脈動流の噴射が再開される。
【0078】
この状態において、施術者によってWPSの駆動スイッチがオフにされると、動作制御部30aは、駆動スイッチがオフになったと判定して(ステップS110の「Yes」の分岐)、第2駆動信号供給部30fに噴射停止指令を出力する(ステップS112)。
これによって、第2駆動信号供給部30fは、現在供給中の駆動信号を、1周期分すべて供給してから、駆動信号の供給を停止する(ステップS310)。駆動信号の供給が停止されると、脈動流の噴射も停止する。
更に、動作制御部30aは、第1駆動信号供給部30bに振動停止指令を出力する(ステップS114)。
これによって、第1駆動信号供給部30bは、現在供給中の駆動信号を、1周期分すべて供給してから、駆動信号の供給を停止する(ステップS210)。駆動信号の供給が停止されると、振動も停止する。
【0079】
以上、本実施の形態の流体噴射装置1は、WPSの駆動スイッチがオンのときに、第1駆動信号供給部30bによって、振動発生用圧電素子50を駆動してノズル211を振動させることが可能である。更に、この振動の大きさを、振動検出部30cにおいて検出することが可能であり、動作制御部30aにおいて、この検出結果に基づき、ノズル211が患部などに接触しているか否かを判定することが可能である。更に、動作制御部30aは、ノズル211が患部などに接触していると判定したときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射駆動指令に応じて容積変更用圧電素子401に駆動信号を供給して、流体室501の容積を変更し、流体の噴射を行うことが可能である。
【0080】
一方、動作制御部30aは、ノズル211が患部などに接触していないと判定したときは、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。
更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射停止指令に応じて容積変更用圧電素子401への駆動信号の供給を停止して、流体の噴射を停止させることが可能である。
また、動作制御部30aは、WPSの駆動スイッチがオンになっており且つ流体の噴射動作が行われていないときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力しないようにすることが可能である。
【0081】
これによって、ノズル211が患部などに接触していないときに、噴射動作をさせないようにすることができるので、施術者(担当医)の操作ミスなどによって、ノズル211が、患部やその近傍の物体(噴射流体や血液による液溜まりなど)から離れたときに、思わぬ方向へ(例えば、手術室内にいる医師や看護士の眼や切除したくない部位などに向けて)の脈動流の噴射や、思わぬ方向又は位置からの噴射による切除された組織片の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
【0082】
上記第1の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態1、2、4及び14のいずれか1に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態1、13及び14のいずれか1に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態1又は14に記載の流体供給手段に対応し、圧電素子50及び第1駆動信号供給部30bは、形態1、4及び14のいずれか1に記載の加振手段に対応し、歪みゲージ51及び振動検出部30cは、形態1、4、13及び14のいずれか1に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30aは、形態1、13及び14のいずれか1に記載の動作制御手段に対応し、圧電素子50は、形態4、5及び9のいずれか1に記載の加振力発生部に対応し、歪みゲージ51は、形態4、5及び8のいずれか1に記載の振動受振部に対応する。
【0083】
〔第2の実施の形態〕
以下、本発明の第2の実施の形態を図面に基づき説明する。図12〜図14は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第2の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1の実施の形態と比較して、接続流路管200を覆うように設けられた、ノズル211の近傍の物体を吸引するための吸引管及び吸引力を付与するポンプなどを備え、振動発生用圧電素子50と歪みゲージ51とが吸引管の外周面上に設けられている点が異なる。従って、他の構成部については、上記第1の実施の形態と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0084】
まず、本実施の形態に係る流体噴射装置の構成を図12に基づき説明する。図12は、本実施の形態に係る流体噴射装置3の概略構成を示す説明図である。
流体噴射装置3は、図12に示すように、基本構成として、流体を収容する流体容器10と、圧力発生部としてのポンプ20と、吸引物を収容する吸引容器70と、吸引力付与手段としての吸引ポンプ60と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100と、脈動発生部100を駆動する駆動部30と、振動発生用圧電素子50と、歪みゲージ51とを含んで構成されている。
脈動発生部100には、細いパイプ状の接続流路管200が接続され、接続流路管200の先端部には接続流路管200の流路径よりも小さい径のノズル211が挿着されている。
【0085】
更に、脈動発生部100には、接続流路管200を内包する、該接続流路管200の径よりも大きい径のパイプ状の吸引管700が接続されている。
吸引管700の内周面と接続流路管200の外周面との間には、両者の径の大きさの相違によって、吐出された液体や組織片などの吸引物の通路が形成される。
吸引管700の脈動発生部100寄りの位置には、通路中の吸引物を吸引容器70へと放出するための出口流路管702が突設されており、吸引物は、出口流路管702に接続された接続チューブ65を介して吸引ポンプ60によって吸引され、接続チューブ75を介して吸引容器70に放出される。
【0086】
脈動発生部100の内側には、圧電素子50に駆動信号を供給するための2本の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と、歪みゲージ51のゲージ入力線及びゲージ出力線と、流体噴射用圧電素子401(後述)に駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT(−)及びJPZT(+)とを配線する通路が形成されている。
これらの通路は、脈動発生部100からの信号線の出口で合流し、4本の供給線と、ゲージ入力線及びゲージ出力線とは、1箇所の出口からまとめて外へと出る。
これらの線はケーブル47によってひとまとめにされて駆動部30に接続される。なお、ケーブル47の各線は、駆動部30のそれぞれ対応する構成部と電気的に接続される。
【0087】
次に、図13〜図14に基づき、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成について説明する。
ここで、図13は、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成を説明する説明図である。また、図14(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成の他の例を示す図である。
図13に示すように、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、吸引管700の外周面における脈動発生部100寄りの位置に配設且つ固着されている。
更に、本実施の形態の圧電素子50及び歪みゲージ51は、図13上図中の丸で囲った部分のC−C’断面である図13下図に示すように、断面が円環状の吸引管700の外周面(曲面)上に固着されている。
【0088】
従って、吸引管700の外周面の曲面に沿って密着固着されるように、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分には曲げ加工が施されている。
なお、圧電素子50及び歪みゲージ51の取付構成は、この構成に限らず、例えば、図14(a)に示すように、吸引管700の少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を断面矩形状に構成して外周面に水平面を形成し、この水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
【0089】
また、図14(b)及び(c)に示すように、断面円環形状の取付部分の曲面部を押し潰すなどして、吸引管700における圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分のみに水平面を設け、この水平面に配設且つ固着する構成としてもよい。
また、図14(d)に示すように、少なくとも圧電素子50及び歪みゲージ51の取付部分を、吸引管700の内側の空洞部は断面円形のままに、外側の管壁部が断面矩形となるように構成して外周面に水平面を形成し、この水平面上に圧電素子50及び歪みゲージ51を配設且つ固着する構成としてもよい。
【0090】
上記図14(a)〜(d)のいずれかの取付構成に示すように、管の外周面に水平面を形成し、その水平面に圧電素子50及び歪みゲージ51を固着することで、圧電素子50及び歪みゲージ51を曲げ加工する必要がなくなり、簡易な構成で取り付けることが可能となる。この取付構成は、特に曲げ加工の難しい圧電素子に有効な構成である。
上記構成において、第1駆動信号供給部30bから振動発生用の駆動信号が供給され圧電素子50が伸縮動作をすると、この伸縮力(加振力)が圧電素子50の取付部を介して吸引管700に伝達され、吸引管700を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、吸引管700が振動する。このとき、吸引管700の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子50を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
【0091】
一方、この振動による吸引管700の変形によって、歪みゲージ51のベース(取付部)を経由して内部の抵抗体(線・箔)に歪みが伝わる。そして、振動検出部30cでは、検出回路において、この発生した歪みに対応した抵抗変化が電圧値として検出され、この検出電圧値が動作制御部30aに出力される。
吸引管700に発生した振動の大きさは、振動検出部30cにおいて、吸引管700の先端部が患部やその近傍の物体などに非接触の状態であれば、上記第1の実施の形態と同様に、図11の左側の波形に示すように、図11の右図の接触時の波形の振幅よりも大きな振幅となる。
【0092】
これは、吸引管700の開口部などの先端部分が患部やその近傍の物体などに接触することで振動が弱められるためである。
従って、吸引管700の先端部が患部やその近傍の物体などに接触している状態で、WPSの駆動スイッチがオンになると、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値は、閾値以下となるので、動作制御部30aは、接触状態を検知して、第2駆動信号供給部30fに噴射駆動指令を出力する。
これによって、容積変更部405の圧電素子401が駆動して、高圧力の流体(脈動流)の噴射が行われる。
【0093】
一方、吸引管700の先端部が、患部又はその近傍の物体から離れている場合は、検出電圧値の絶対値の所定時間の平均値が、閾値より大きくなるので、駆動スイッチがオンの状態であっても、動作制御部30aは、非接触状態を検知して第2駆動信号供給部30fに噴射駆動指令を出力しない。
また、噴射状態である場合は、第2駆動信号供給部30fに噴射停止指令を出力する。これによって、容積変更部405の圧電素子401の駆動が停止して、流体(脈動流)の噴射が停止する。
なお、駆動部30の動作は、上記第1の実施の形態において、振動させる対象がノズル211及び接続流路管200から、吸引管700になるだけで動作内容を同様となる。
【0094】
以上、本実施の形態の流体噴射装置3は、WPSの駆動スイッチがオンのときに、第1駆動信号供給部30bによって、振動発生用圧電素子50を駆動して吸引管700を振動させることが可能である。更に、この振動の大きさを、振動検出部30cにおいて検出することが可能であり、動作制御部30aにおいて、この検出結果に基づき、吸引管700の開口部などの先端部分が患部などに接触しているか否かを判定することが可能である。更に、動作制御部30aは、吸引管700の先端部分が患部などに接触していると判定したときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射駆動指令に応じて容積変更用圧電素子401に駆動信号を供給して、流体室501の容積を変更し、流体の噴射を行うことが可能である。
【0095】
一方、動作制御部30aは、吸引管700の先端部分が患部などに接触していないと判定したときは、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力することが可能である。
更に、第2駆動信号供給部30fは、噴射停止指令に応じて容積変更用圧電素子401への駆動信号の供給を停止して、流体の噴射を停止させることが可能である。
また、動作制御部30aは、WPSの駆動スイッチがオンになっており且つ流体の噴射動作が行われていないときは、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力しないようにすることが可能である。
【0096】
これによって、吸引管700の先端部分がノズル211と共に患部などに接触していないときに、噴射動作をさせないようにすることができるので、施術者(担当医)の操作ミスなどによって、ノズル211及び吸引管700の先端部分が、患部やその近傍の物体(噴射流体や血液による液溜まりなど)から離れたときに、思わぬ方向へ(例えば、手術室内にいる医師や看護士の眼や切除したくない部位などに向けて)の脈動流の噴射や、思わぬ方向又は位置からの噴射による切除された組織片の飛散などが生じるのを防ぐことができる。
【0097】
上記第2の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態3又は4に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態3又は13に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態3に記載の流体供給手段に対応し、吸引管700は、形態3、6及び7のいずれか1に記載の吸引管に対応し、吸引ポンプ60は、形態3に記載の吸引力付与手段に対応し、圧電素子50及び第1駆動信号供給部30bは、形態3又は4に記載の加振手段に対応し、歪みゲージ51及び振動検出部30cは、形態3、4及び13のいずれか1に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30aは、形態3又は13に記載の動作制御手段に対応し、圧電素子50は、形態6、7及び9のいずれか1に記載の加振力発生部に対応し、歪みゲージ51は、形態6、7及び8のいずれか1に記載の振動受振部に対応する。
【0098】
〔第3の実施の形態〕
以下、本発明の第3の実施の形態を図面に基づき説明する。図15〜図17は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第3の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第1及び第2の実施の形態と比較して、接続流路管200又は吸引管700に圧電素子を1つだけ設け、この圧電素子によって、接続流路管200又は吸引管700への加振力の付与及び振動の大きさの検出を時分割で行う点が異なる。従って、駆動部30の構成も一部異なるが、他の構成部については、上記第1及び第2の実施の形態と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0099】
まず、図15に基づき、本実施の形態の加振力の付与及び振動の受振の両機能を兼ね備えた圧電素子52の取付構成について説明する。
ここで、図15(a)は、圧電素子52の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
本実施の形態においては、1つの圧電素子52によって、加振力の付与及び振動の大きさの検出を行うため、上記第1及び第2の実施の形態で説明した歪みゲージ51を不要とすることができる。
従って、吸引管を有さない流体噴射装置1の場合は、1つの圧電素子52が、図15(a)に示すように、上記第1の実施の形態の圧電素子50と同様に、接続流路管200の外周面上における出口流路管510よりもノズル211側の位置に配設且つ固着される。
【0100】
また、圧電素子52の取付構成としては、上記第1の実施の形態の図6及び図7に示す圧電素子50の取付構成のいずれも採用することができる。
一方、吸引管を有する流体噴射装置3の場合は、1つの圧電素子52が、図15(b)に示すように、上記第2の実施の形態の圧電素子50と同様に、吸引管700の外周面上における脈動発生部100寄りの位置に配設且つ固着される。
また、圧電素子52の取付構成としては、上記第2の実施の形態の図13及び図14に示す圧電素子50の取付構成のいずれも採用することができる。
【0101】
次に、図16に基づき、加振力の付与と振動の受振に1つの圧電素子52を用いる構成を適用した本実施の形態の流体噴射装置1又は3の駆動部30’の詳細な構成を説明する。
ここで、図16は、本実施の形態の駆動部である駆動部30’の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30’は、図16に示すように、動作制御部30aと、第1駆動信号供給部30bと、振動検出部30hと、接続切替部30dと、データ記憶部30eと、第2駆動信号供給部30fと、同期信号発生部30gとを含んで構成される。
【0102】
動作制御部30aは、流体噴射装置1又は3の入力装置からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30bの駆動信号の供給処理、接続切替部30dの時分割切替処理、ノズル211又は吸引管700の先端部の接触状態の判定処理、この判定結果に基づく第2駆動信号供給部30fの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
【0103】
接続切替部30dは、動作制御部30aからの制御信号に基づき、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と振動検出部30hとの電気的な接続と、供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と第1駆動信号供給部30bとの電気的な接続とを切り替える。
接続の切替は、機械的なスイッチを用いてもよいし、トランジスタなどのスイッチング素子を用いてもよい。
振動検出部30hは、接続流路管200又は吸引管700の振動による圧電効果によって圧電素子52に生じる起電力を検出し、この起電力を検出電圧として、動作制御部30aに出力する。
【0104】
次に、図17に基づき、本実施の形態の駆動部30’の動作を説明する。
ここで、図17(a)は、圧電素子52によって加振力を付与した期間の振動波形を示す図であり、(b)は、圧電素子52によって振動を受振する期間の振動波形を示す図である。
本実施の形態の駆動部30’は、1つの圧電素子52によって、加振力の付与及び付与した加振力によって発生する振動の受振(ここでは、圧電効果による振動の大きさの電圧変換)を行う。そのため、駆動部30’は、WPSの駆動スイッチがオンになると、一定時間、第1駆動信号供給部30bによって圧電素子52に駆動信号を供給する処理と、一定時間、振動検出部30hで振動の大きさを検出する処理とを時分割で交互に繰り返し行うように接続切替部30dの動作及び第1駆動信号供給部30bの動作を制御する。
【0105】
具体的に、駆動スイッチがオンになると、まず、動作制御部30aにおいて、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と第1駆動信号供給部30bとの電気的な接続と、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と振動検出部30hとの電気的な接続とを、接続切替部30dへの制御信号の供給内容を制御することで、時分割に交互に切り替える。
【0106】
これと並行に、動作制御部30aは、接続切替部30dへの制御信号の出力タイミングに応じて、第1駆動信号供給部30bに対して振動発生指令を出力する。これによって、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と、第1駆動信号供給部30bとが電気的に接続されると共に、第1駆動信号供給部30bに振動発生指令が供給される。
第1駆動信号供給部30bは、動作制御部30aから振動発生指令を受けると、振動発生用波形データを、データ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出し、該読み出した波形データをDA変換してアナログの波形信号を生成する。
【0107】
そして、生成した振動発生用の駆動信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子52に出力する。
これによって、圧電素子52が伸縮動作し、この伸縮力(加振力)が取付部を介して接続流路管200又は吸引管700に伝達され、接続流路管200又は吸引管700を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、接続流路管200又は吸引管700が振動する。このとき、接続流路管200又は吸引管700の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子52を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
【0108】
このようにして加振力が付与される期間が一定時間経過すると、動作制御部30aからの制御信号によって、接続切替部30dの接続が、圧電素子52の供給線VPZT(−)及びVPZT(+)と振動検出部30hとの接続に切り替わる。これにより、切り替わり後の一定時間が振動検出部30hによる検出期間となる。
これにより、図17(a)及び(b)に示すように、振動の発生する期間と、振動を検出する期間とが一定時間毎に交互に切り替わる。
そして、振動の検出期間において、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに接触することで、図17(b)の後半の振動波形に示すように、接触していないときと比較して検出期間の振動の大きさ(起電力)が小さくなる。
【0109】
従って、振動検出部30hにおいて、このときの圧電素子52の起電力を検出し、動作制御部30aにおいて、この検出起電力(又はその所定期間の平均値)と閾値との比較を行うことで振動が小さくなったことを検出する。これにより、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに接触していることを検出することができる。
動作制御部30aは、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに接触していることが検出されると、噴射駆動指令を第2駆動信号供給部30fに出力する。
また、噴射駆動中に、ノズル211又は吸引管700の先端部が患部などに対して非接触となったことが検出されると、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力する。
また、駆動スイッチがオフになると、噴射停止指令を第2駆動信号供給部30fに出力し、噴射動作が停止後に、振動停止指令を第1駆動信号供給部30bに出力すると共に、接続切替部30dへの制御信号の供給を停止する。
【0110】
なお、他の動作については、上記第1の実施の形態と同様となるので説明を省略する。
以上、本実施の形態の流体噴射装置1又は3は、1つの圧電素子52によって、接続流路管200又は吸引管700に対して加振力の付与と、付与した加振力によって発生する振動の大きさの検出とを時分割で行うことが可能である。
これによって、振動の大きさを検出するための歪ゲージなどの検出素子を設ける必要がなくなるので、その分の部品コストや加工コストなどを低減することができる。
【0111】
上記第3の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態1、2、3、4及び14のいずれか1に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態1、2、3、13及び14のいずれか1に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態1、2、3及び14のいずれか1に記載の流体供給手段に対応し、吸引管700は、形態3、6及び7のいずれか1に記載の吸引管に対応し、吸引ポンプ60は、形態3に記載の吸引力付与手段に対応し、圧電素子52及び第1駆動信号供給部30bは、形態11に記載の加振手段に対応し、圧電素子52及び振動検出部30hは、形態11に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30aは、形態1、2、3、13及び14のいずれか1に記載の動作制御手段に対応し、動作制御部30a及び接続切替部30dは、形態11に記載の時分割制御手段に対応し、振動検出部30hは、形態11に記載の起電力検出部に対応し、圧電素子52は、形態10に記載の加振力発生部に対応する。
【0112】
〔第4の実施の形態〕
以下、本発明の第4の実施の形態を図面に基づき説明する。図18〜図20は、本発明に係る流体噴射装置、流体噴射装置の駆動方法及び手術用器具の第4の実施の形態を示す図である。
本実施の形態は、上記第3の実施の形態と比較して、接続流路管200又は吸引管700に圧電素子を2つ設け、この2つの圧電素子によって、接続流路管200又は吸引管700に対してより強力な加振力の付与を行う点が異なる。従って、駆動部30’の構成も一部異なるが、他の構成部については、上記第3の実施の形態と同様となるので、以下、異なる部分を詳細に説明し、重複する部分は同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0113】
まず、図18に基づき、本実施の形態の加振力の発生且つ振動の検出の両機能を兼ね備えた圧電素子52及び53の取付構成について説明する。
ここで、図18(a)は、圧電素子52及び53の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52及び53の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
本実施の形態においては、圧電素子52及び53の2つの圧電素子によって、加振力の付与及び振動の大きさの検出を行う。
【0114】
従って、吸引管を有さない流体噴射装置1の場合は、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を、図18(a)に示すように、上記第1の実施の形態の圧電素子50及び歪ゲージ51と同様に、接続流路管200の外周面上における出口流路管510よりもノズル211側の位置に、両者を管を隔てて対向するように配設且つ固着する。
また、圧電素子52及び53の取付構成としては、上記第1の実施の形態の図6及び図7に示す圧電素子50及び歪ゲージ51の取付構成のいずれも採用することができる。
【0115】
一方、吸引管を有する流体噴射装置3の場合は、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を、図18(b)に示すように、上記第2の実施の形態の圧電素子50及び歪ゲージ51と同様に、吸引管700の外周面上における脈動発生部100寄りの位置に、両者を管を隔てて対向するように配設且つ固着する。
また、圧電素子52及び53の取付構成としては、上記第2の実施の形態の図13及び図14に示す圧電素子50及び歪ゲージ51の取付構成のいずれも採用することができる。
【0116】
次に、図19に基づき、加振力の発生と受振に圧電素子52及び53を用いる上記構成を適用した本実施の形態の流体噴射装置1又は3の駆動部である駆動部30’’の詳細な構成を説明する。
ここで、図19は、駆動部30’’の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30’’は、図19に示すように、動作制御部30a’と、第1駆動信号供給部30b’と、振動検出部30h’と、接続切替部30d’と、データ記憶部30eと、第2駆動信号供給部30fと、同期信号発生部30gとを含んで構成される。
【0117】
動作制御部30a’は、流体噴射装置1又は3の入力装置からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30b’の駆動信号の供給処理、接続切替部30d’の時分割切替処理、ノズル211又は吸引管700の先端部の接触状態の判定処理、この判定結果に基づく第2駆動信号供給部30fの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
接続切替部30d’は、動作制御部30a’からの制御信号に基づき、圧電素子52の供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに圧電素子53の供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と振動検出部30hとの電気的な接続と、第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と第1駆動信号供給部30bとの電気的な接続とを切り替える。
【0118】
接続の切替は、機械的なスイッチを用いてもよいし、トランジスタなどのスイッチング素子を用いてもよい。
振動検出部30h’は、接続流路管200又は吸引管700の振動を受振した圧電素子52及び53の圧電効果によって生じる起電力を検出し、この起電力を検出電圧として、動作制御部30a’に出力する。
【0119】
次に、図20に基づき、第1駆動信号供給部30b’における圧電素子52及び53への駆動信号供給処理の流れを説明する。
ここで、図20は、第1駆動信号供給部30b’における駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
プロセッサにより専用のプログラムが実行され、圧電素子52及び53への駆動信号供給処理が開始されると、図20に示すように、まず、ステップS400に移行する。
【0120】
ステップS400では、第1駆動信号供給部30b’において、動作制御部30a’からの振動発生指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS402に移行し、そうでない場合(No)は、入力されるまで判定処理を繰り返す。
ステップS402に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b’において、振動発生指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子52の駆動に用いる第1の振動発生用波形データと、圧電素子53の駆動に用いる第2の振動発生用波形データとをデータ記憶部30eから読み出して、ステップS404に移行する。
【0121】
ステップS404では、第1駆動信号供給部30b’において、ステップS402で読み出した第1及び第2の振動発生用波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS406に移行する。
ステップS406では、第1駆動信号供給部30b’において、同期信号発生部30gからの同期信号に同期して、ステップS404でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第1の振動発生用の駆動信号を圧電素子52に出力し、ステップS404でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第2の振動発生用の駆動信号を圧電素子53に出力して、ステップS408に移行する。
【0122】
ステップS408では、第1駆動信号供給部30b’において、動作制御部30a’から振動停止指令が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定した場合(Yes)は、ステップS410に移行し、そうでない場合(No)は、ステップS404の駆動信号の出力処理を続行する。
ステップS410に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b’において、圧電素子52及び53のそれぞれに対して1周期分の信号を全て出力後に、これらへの駆動信号の供給を停止して、ステップS400に移行する。
【0123】
次に、本実施の形態の駆動部30’’の動作を説明する。
本実施の形態の駆動部30’’は、より強力な加振力の付与を行うために、対向配置された圧電素子52と圧電素子53とを、それぞれが加振力を高め合う方向に伸縮する(一方が伸張したときに他方を伸縮させる)ように、第1駆動信号供給部30b’に供給する駆動信号の供給内容を制御する。
【0124】
更に、上記第3の実施の形態と同様に、圧電素子52及び53によって、加振力の付与と付与した加振力によって発生する振動の大きさの検出とを両方行うために、WPSの駆動スイッチがオンになると、一定時間、第1駆動信号供給部30b’によって圧電素子52及び53に駆動信号を供給する処理と、一定時間、振動検出部30h’で振動の大きさを検出する処理とを時分割で交互に繰り返し行うようにする。そのため、動作制御部30a’において、まず、接続切替部30d’の切替動作を制御信号によって制御する。
【0125】
具体的に、駆動スイッチがオンになると、まず、動作制御部30a’において、供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と第1駆動信号供給部30b’との電気的な接続と、供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と振動検出部30h’との電気的な接続とを、接続切替部30d’への制御信号の供給内容を制御することで、時分割に交互に切り替える。
これと並行に、接続切替部30d’への制御信号の出力タイミングに応じて、第1駆動信号供給部30b’に対して、振動発生指令を出力する。これによって、圧電素子52の供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに圧電素子53の供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と、第1駆動信号供給部30b’とが電気的に接続されると共に、第1駆動信号供給部30b’に振動発生指令が供給される。
【0126】
第1駆動信号供給部30b’は、動作制御部30a’から振動発生指令を受けると、第1及び第2の振動発生用波形データを、データ記憶部30eからRAMなどのワークメモリに読み出し、該読み出した波形データをDA変換してアナログの波形信号を生成する。
そして、生成した第1の振動発生用の駆動信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子52に出力し、生成した第2の振動発生用の駆動信号を、同期信号発生部30gからの同期信号に同期させて、圧電素子53に出力する。
【0127】
これによって、圧電素子52が伸張動作をすると圧電素子53が伸縮動作をするといったように、互いの力を強めあう方向に両者が伸縮し、この伸縮力(加振力)がそれぞれの取付部を介して接続流路管200又は吸引管700に伝達され、接続流路管200又は吸引管700を力の加わった方向に曲げる。この曲げ力及び曲げ状態からの復帰力によって、接続流路管200又は吸引管700が振動する。このとき、接続流路管200又は吸引管700の固有振動に合わせて加振力を加えるように圧電素子52及び53を駆動することで、より小さな力で大きな振動を発生させることができる。
【0128】
このようにして加振力が付与される期間が一定時間経過すると、動作制御部30a’からの制御信号によって、接続切替部30d’の接続が、圧電素子52の供給線第1VPZT(−)及び第1VPZT(+)並びに圧電素子53の供給線第2VPZT(−)及び第2VPZT(+)と、振動検出部30h’との接続に切り替わる。これにより、切り替わり後の一定時間が振動検出部30h’による検出期間となる。
つまり、振動の発生する期間と、振動を検出する期間とが一定時間毎に交互に切り替わり、上記第3の実施の形態の図17(a)に示す振動波形の振幅をより大きくした波形となる振動を時分割で発生させることができると共に、この振動の大きさを時分割で検出することができる。
【0129】
なお、圧電素子52及び53の起電力を検出電圧値として両方とも検出する構成としたがこれに限らず、どちらか一方を検出する構成としてもよい。
また、振動検出部30h’において、圧電素子52及び53の起電力をそれぞれ検出電圧値として動作制御部30a’にそのまま出力する構成としてもよいし、圧電素子52及び53の起電力の平均値を算出し、その算出値を検出電圧値として動作制御部30a’に出力する構成としてもよい。
なお、検出電圧値を用いたノズル211又は吸引管700の先端部の接触又は非接触の判定処理については、検出電圧値が時分割で得られることになるだけで、上記第1〜第3の実施の形態と同様となる。
【0130】
また、その他の動作については、上記第1〜第3の実施の形態の動作制御部30aと同様となるので説明を省略する。
以上、本実施の形態の流体噴射装置1又は3は、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を互いに加振力を強め合う方向に伸縮駆動させることが可能である。
これにより、接続流路管200又は吸引管700に対してより強い加振力を付与することができる。
更に、圧電素子52及び53の2つの圧電素子によって、加振力の付与と付与した加振力によって発生する振動の大きさの検出とを時分割で行うことが可能である。
これによって、振動の大きさを検出するための歪ゲージなどの検出素子を設ける必要がなくなるので、その分の部品コストや加工コストなどを低減することができる。
【0131】
上記第4の実施の形態において、ノズル211及び流体噴射開口部212は、形態1、2、3、4及び14のいずれか1に記載の流体噴射開口部に対応し、容積変更部405及び第2駆動信号供給部30fは、形態1、3、13及び14のいずれか1に記載の容積変更手段に対応し、流体容器10及びポンプ20は、形態1又は14に記載の流体供給手段に対応し、吸引管700は、形態3、6及び7のいずれか1に記載の吸引管に対応し、吸引ポンプ60は、形態3に記載の吸引力付与手段に対応し、圧電素子52、圧電素子53及び第1駆動信号供給部30b’は、形態12に記載の加振手段に対応し、圧電素子52、圧電素子53及び振動検出部30h’は、形態11に記載の振動検出手段に対応し、動作制御部30a’は、形態1、13及び14のいずれか1に記載の動作制御手段に対応し、動作制御部30a’及び接続切替部30d’は、形態11に記載の時分割制御手段に対応し、振動検出部30h’は、形態11に記載の起電力検出部に対応し、圧電素子52及び53は、形態12に記載の加振力発生部に対応する。
【0132】
なお、上記第1〜第2の実施の形態において、振動受振部として、抵抗線またはフォトエッチング加工した抵抗箔を抵抗体とする金属抵抗体式の歪みゲージ51を用いる構成を説明したが、この構成に限らず、半導体式、圧電素子式、表面弾性波式、磁歪式、光ファイバ式などの他の方式の歪みゲージを用いる構成としてもよい。
また、上記第1〜第4の実施の形態において、加振力発生部として、圧電素子を用いる構成を説明したが、これに限らず、ソレノイドやモータなどの他の加振力を発生する部品を用いる構成としてもよい。
【0133】
また、上記第1〜第2の実施の形態では、圧電素子50と歪みゲージ51とを管を隔てて対向する位置に固着する構成としたが、この構成に限らず、振動の発生及び振動の受振が可能であれば、この位置関係に限らず、それぞれを異なる位置に配設してもよい。
また、上記第1〜第4の実施の形態では、圧電素子50、52、53、歪みゲージ51を接続流路管200又は吸引管700の外周面上における脈動発生部100寄りの位置に管を隔てて対向して配設する構成としたが、この構成に限らず、異なる位置に配設してもよい。例えば、接続流路管200又は吸引管700の先端側や、管の外周面上ではなく管の内側に配設する構成などとしてもよい。
【0134】
また、上記第4の実施の形態では、圧電素子52及び53の2つの圧電素子を用いて、より強力な振動の発生を行うようにしたが、この構成に限らず、3つ以上の圧電素子を用いて加振力(発生する振動)を大きくする構成としてもよい。
また、上記第1〜第4の実施の形態及び上記変形例は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記第1〜第4の実施の形態及び上記変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明に係る流体噴射装置1の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明に係る脈動発生部100の構造を示す断面図である。
【図3】流体噴射装置1の流体噴射部分の分解図である。
【図4】入口流路503の形態を示す平面図である。
【図5】駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。
【図6】圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成を説明する説明図である。
【図7】(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の接続流路管200への取付構成の他の例を示す図である。
【図8】動作制御部30aにおける第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30fの動作制御処理を示すフローチャートである。
【図9】第1駆動信号供給部30bにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
【図10】第2駆動信号供給部30fにおける駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
【図11】ノズル211が接触時及び非接触時の振動波形の一例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態に係る流体噴射装置3の概略構成を示す説明図である。
【図13】圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成を説明する説明図である。
【図14】(a)〜(d)は、圧電素子50及び歪みゲージ51の吸引管700への取付構成の他の例を示す図である。
【図15】(a)は、圧電素子52の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
【図16】駆動部30’の詳細な構成を示すブロック図である。
【図17】(a)は、圧電素子52によって加振力を付与した期間の振動波形を示す図であり、(b)は、圧電素子52によって振動を受振する期間の振動波形を示す図である。
【図18】(a)は、圧電素子52及び53の接続流路管200への取付構成の一例を示す図であり、(b)は、圧電素子52及び53の吸引管700への取付構成の一例を示す図である。
【図19】駆動部30’’の詳細な構成を示すブロック図である。
【図20】第1駆動信号供給部30b’における駆動信号供給処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0136】
1,3…流体噴射装置、20…ポンプ、30,30’,30’’…駆動部、50…振動発生用圧電素子、52,53…振動発生用及び受振用の圧電素子、60…吸引ポンプ、30a,30a’…動作制御部、30b,30b’…第2駆動信号供給部、30c,30h,30h’…振動検出部、30d,30d’…接続切替部、30e…データ記憶部、30f…第2駆動信号供給部、100…脈動発生部、200…接続流路管、201…接続流路、400…ダイアフラム、401…容積変更用圧電素子、501…流体室、211…ノズル、212…流体噴射開口部、503…入口流路、511…出口流路、700…吸引管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積が変更可能な流体室と、
前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、
前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、
前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振手段と、
前記近傍の部材の振動の大きさを検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段で検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御する動作制御手段と、を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体噴射開口部の近傍の部材が前記流体噴射開口部を構成する部材であることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体噴射開口部の近傍に位置する吸引開口部と、前記吸引開口部を介して吸引した物体を搬送する通路とを有する吸引管と、前記吸引開口部の近傍の物体を吸引する吸引力を付与する吸引力付与手段と、を備え、
前記流体噴射開口部の近傍の部材が前記吸引開口部を構成する部材であることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記加振手段は、前記流体噴射開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記出口流路に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記出口流路の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記加振手段は、前記吸引開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記吸引管に設けたことを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記吸引管の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記振動受振部を歪みゲージを含んで構成したことを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記加振力発生部を圧電素子を含んで構成したことを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記加振力発生部は、前記加振力を発生する圧電素子と同じ圧電素子によって、加振力を発生する機能と、振動を受振する、前記振動受振部としての機能とを兼ね備えることを特徴とする請求項9に記載の流体噴射装置。
【請求項11】
前記加振手段は、前記圧電素子を駆動する駆動部を有し、
前記振動検出手段は、前記圧電素子に生じる起電力を検出する起電力検出部を有し、
前記駆動部による駆動信号の供給と前記起電力検出部による起電力の検出とを時分割で行うように制御する時分割制御手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の流体噴射装置。
【請求項12】
前記加振手段は、複数の前記加振力発生部を有し、前記複数の加振力発生部において発生する力が前記加振力を大きくするように各加振力発生部の動作を制御することを特徴とする請求項4乃至請求項11のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項13】
前記動作制御手段は、前記振動検出手段で検出された振動の大きさが所定の大きさよりも小さいときに前記容積変更手段が動作するように制御し、前記振動の大きさが前記所定の大きさ以上のときに前記容積変更手段が動作しないように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項14】
容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、加振手段と、振動検出手段と、動作制御手段と、を備えた流体噴射装置の駆動方法であって、
前記加振手段に、前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振ステップと、
前記振動検出手段に、前記近傍の部材の振動の大きさを検出させる振動検出ステップと、
前記動作制御手段に、前記振動検出ステップで検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御させる動作制御ステップと、を含むことを特徴とする流体噴射装置の駆動方法。
【請求項15】
流体の噴射によって患部の治療的措置を支援する手術用器具であって、
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の流体噴射装置を備えることを特徴とする手術用器具。
【請求項1】
容積が変更可能な流体室と、
前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、
前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、
前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振手段と、
前記近傍の部材の振動の大きさを検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段で検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御する動作制御手段と、を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体噴射開口部の近傍の部材が前記流体噴射開口部を構成する部材であることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体噴射開口部の近傍に位置する吸引開口部と、前記吸引開口部を介して吸引した物体を搬送する通路とを有する吸引管と、前記吸引開口部の近傍の物体を吸引する吸引力を付与する吸引力付与手段と、を備え、
前記流体噴射開口部の近傍の部材が前記吸引開口部を構成する部材であることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記加振手段は、前記流体噴射開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記出口流路に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記出口流路の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記加振手段は、前記吸引開口部を振動させる加振力を発生する加振力発生部を有し、前記振動検出手段は、振動を受振する振動受振部を有し、前記加振力発生部及び前記振動受振部を、前記吸引管に設けたことを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記吸引管の外周面の少なくとも一部に平面を設け、該平面上に前記加振力発生部及び前記振動受振部を設けたことを特徴とする請求項6に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記振動受振部を歪みゲージを含んで構成したことを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記加振力発生部を圧電素子を含んで構成したことを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記加振力発生部は、前記加振力を発生する圧電素子と同じ圧電素子によって、加振力を発生する機能と、振動を受振する、前記振動受振部としての機能とを兼ね備えることを特徴とする請求項9に記載の流体噴射装置。
【請求項11】
前記加振手段は、前記圧電素子を駆動する駆動部を有し、
前記振動検出手段は、前記圧電素子に生じる起電力を検出する起電力検出部を有し、
前記駆動部による駆動信号の供給と前記起電力検出部による起電力の検出とを時分割で行うように制御する時分割制御手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の流体噴射装置。
【請求項12】
前記加振手段は、複数の前記加振力発生部を有し、前記複数の加振力発生部において発生する力が前記加振力を大きくするように各加振力発生部の動作を制御することを特徴とする請求項4乃至請求項11のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項13】
前記動作制御手段は、前記振動検出手段で検出された振動の大きさが所定の大きさよりも小さいときに前記容積変更手段が動作するように制御し、前記振動の大きさが前記所定の大きさ以上のときに前記容積変更手段が動作しないように制御することを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の流体噴射装置。
【請求項14】
容積が変更可能な流体室と、前記流体室に連通する入口流路及び出口流路と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、前記出口流路の前記流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に設けられた流体噴射開口部と、加振手段と、振動検出手段と、動作制御手段と、を備えた流体噴射装置の駆動方法であって、
前記加振手段に、前記流体噴射開口部の近傍の部材を振動させる加振ステップと、
前記振動検出手段に、前記近傍の部材の振動の大きさを検出させる振動検出ステップと、
前記動作制御手段に、前記振動検出ステップで検出された振動の大きさに基づき、前記容積変更手段の動作を制御させる動作制御ステップと、を含むことを特徴とする流体噴射装置の駆動方法。
【請求項15】
流体の噴射によって患部の治療的措置を支援する手術用器具であって、
請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の流体噴射装置を備えることを特徴とする手術用器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−82306(P2010−82306A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256092(P2008−256092)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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