説明

流体荷役装置支持構造

【課題】流体荷役ラインの簡易化且つ省スペース化が可能な流体荷役装置支持構造を提供する。
【解決手段】リンク支持機構21によって、ローディングアーム2(流体荷役装置)をLNGライン1(流体荷役ライン)の軸方向へ移動可能に吊持することにより、LNGライン1のクールダウンに伴う熱収縮を、ローディングアーム2をLNGライン1の軸方向へ移動させて吸収することができる。これにより、LNGライン1の直線区間を長く設定することが可能になり、LNGライン1を簡易化且つ省スペース化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体荷役装置の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化天然ガス(以下、LNGという)は、低温貯蔵タンクからLNGライン(流体荷役ライン)によって移送され、さらに、LNGラインからローディングアーム(流体荷役装置)によってタンクローリ(荷役対象)へ荷役される。一般に、LNGをタンクローリへ荷役する場合、構造が簡易で安全性が高く且つ迅速な荷役作業が可能であることから、カウンタウェイトによるバランス機構を備えるローディングアームが採用される。例えば、特許文献1のローディングアームは、立上り管(固定管路)、スイベルジョイント(回動管継手)、インボードアーム、アウトボードアーム、バランスアームおよび該バランスアームに固定されるバランスウェイトによって構成され、LNGラインのラインエンドは、管継手を介してローディングアームの立上り管に接続される。
また、従来の流体荷役装置として、バランスウエイトによるバランス機構に代えて、スプリングによるバランス機構を利用したローディングアーム(スプリング式ローディングアーム)や、バランスウエイトによるバランス機構を利用しないでインボードアームを立上り管の周囲で水平旋回させるローディングアーム(水平旋回式ローディングアーム)が存在する。さらに従来の流体荷役装置として、ローディングアームの代わりにフレキシブルホースを用いた流体荷役装置(フレキシブルホース式流体荷役装置)も存在する。
【0003】
ところで、従来の種々の形式の流体荷役装置では、LNGを、LNGラインからローディングアームまたはフレキシブルホースを利用して荷役する場合、LNGは極低温(−162℃)であることから、LNGラインを構成する各LNG移送管(例えば、ステンレス鋼管)は、LNGによるクールダウンに伴い、径方向および長手方向へ熱収縮する。LNGラインでは、ラインレイアウト、特に、ラインエンドのレイアウトを簡易に構成するために、ラインエンドの各固定点(固定部)を直線上に配置することが好ましい。しかしながら、ラインエンドの各固定点を直線上に配置した場合、LNGによるクールダウンに伴うLNG移送管の長手方向への熱収縮により、LNG移送管に過大な熱応力が発生することになる。従来、LNG移送管の長手方向への熱収縮に起因する熱応力の発生を回避するため、本来、直線にレイアウトすることができるラインエンドに屈曲管を組込み、直線上の熱収縮を屈曲管の曲げ変形によって吸収することが行われていた。
【0004】
この場合、ラインレイアウトが煩雑化してLNGラインのスペースが増大するのに加え、作業性ならびにLNGラインのメンテナンス性が著しく悪化する。さらに、LNGをタンクローリに荷役する場合、LNGの供給と同時にベーパーの回収が実施される、すなわち、LNGラインとベーパー回収ライン(流体荷役ライン)とが並設されることから、ラインレイアウトがさらに煩雑化することになり、各ラインの簡易化且つ省スペース化が課題になっていた。
【特許文献1】特開2004−155471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、流体荷役ラインの簡易化且つ省スペース化が可能な流体荷役装置支持構造を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の流体荷役装置支持構造は、流体荷役ラインが接続されて荷役対象に流体を荷役する流体荷役装置の支持構造であって、前記流体荷役装置を前記流体荷役ラインの軸方向へ移動可能に吊持するリンク支持機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
流体荷役ラインの簡易化且つ省スペース化が可能な流体荷役装置支持構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図1ないし図3に基き説明する。本実施形態では、LNGライン1(流体荷役ライン)によって供給されるLNG(流体)をタンクローリ(荷役対象)へ荷役するローディングアーム2(流体荷役装置)の支持構造を説明する。なお、LNGをタンクローリに荷役する場合、LNGの供給と同時にベーパーの回収が実施される。しがたって、LNG荷役用ローディングアーム2とベーパー回収用ローディングアームとが並設されるが、両者の支持構造は基本的な構成が同一であるため、LNG荷役用ローディングアーム2(以下、単にローディングアーム2という)の支持構造のみを説明し、ベーパー回収用ローディングアームの支持構造の詳細な説明を省く。
ここで、本実施形態では、バランスウエイトを備えたローディングアームについて説明するが、スプリング式ローディングアーム、水平旋回式ローディングアーム、または、フレキシブルホース式流体荷役装置でも同様に実施することができる。
【0009】
図1に示されるように、本実施形態のローディングアーム2支持構造は、リンク支持機構21によって、ローディングアーム2をLNGライン1の軸方向(図1における左右方向)へ移動可能に吊持する。これにより、LNGライン1のクールダウンに伴う熱収縮を、ローディングアーム2をLNGライン1の軸方向へ移動させることで吸収することができる。したがって、直線上の熱収縮を吸収するために従来使用される屈曲管をLNGライン1に組込むことが回避される。これにより、LNGライン1、特に、管継手3を介してローディングアーム2に接続される区間の固定点Pを直線上に配置することが可能、言い換えると、LNGライン1の直線区間を長く設定することが可能になり、LNGライン1を簡易化且つ省スペース化することができる。なお、固定点Pは、便宜上、図1に1箇所だけ示されているが、実際のLNGライン1においては、複数箇所に配設される。
【0010】
図1に示されるように、ローディングアーム2は、立上り管4、2軸スイベルジョイント5、インボードアーム6、スイベルジョイント7、アウトボードアーム8、バランスアーム9およびバランスウェイト10によって大別構成される。立上り管4は、矩形に形成された基台11上に立設されて鉛直に配置される。立上り管4の下端部には、管継手3が設けられ、該管継手3には、LNGライン1の端部を構成する管が接続される。2軸スイベルジョイント5は、鉛直回転部5a(鉛直軸を回転中心とする回転部)が立上り管4の上端部に接続され、水平回転部5b(水平軸を回転中心とする回転部)がインボードアーム6の基端部に接続される。
【0011】
図1に示されるように、バランスアーム9は、基部がインボードアーム6の基部に設けられ、インボードアーム6に対して反対方向へ延びる。このバランスアーム9の先端部には、例えば、鉄板を重ねて重量が調節されたバランスウェイト10が取り付けられる。アウトボードアーム8は、スイベルジョイント7を介してインボードアーム6の先端部に接続される。また、アウトボードアーム8は、中間管12と吐出バルブ17を備える吐出管13とを有し、両者は、スイベルジョイント14、15および屈曲管16を介して接続される。また、アウトボードアーム8は、吐出管13の基部に吐出管13に対して反対方向へ延びるバランスアーム18を有し、該バランスアーム18の先端部には、例えば、鉄板を重ねて重量が調節されたバランスウェイト19が取り付けられる。
【0012】
図2および図3に示されるように、リンク支持機構21は、ローディングアーム2の基台11が固定される台座22と、該台座22を吊持する4つのアーム23と、を有する。台座22は、例えば鉄板からなる矩形のベースプレート22aと、該ベースプレート22aの下面に接合される枠体22bと、によって構成される。なお、枠体22bは、チャンネル材等の鋼材を適宜組み合わせて接合することにより形成される。各アーム23は、各上端部23aが、LNGライン1の配管用フレーム24に配設された相対する各接続機構25によってフレーム24に接続される。また、各アーム23は、各下端部23bが、ベースプレート22a上面の四隅に配設された相対する各接続機構26によって台座22に固定される。
【0013】
各接続機構25は、フレーム24上部を構成する角パイプの下面に設けられる対向配置された一対の支持プレート27と、一対の支持プレート27間に差込まれたアーム23の上端部23aを水平方向且つ管継手3に接続されるLNGライン1の軸に対して垂直方向(図3における左右方向)へ貫通する平行ピン28と、を含む。なお、各アーム23の上端部23aには、平行ピン28を挿通させるための貫通孔が形成されており、各接続機構25の平行ピン28は、相対する各アーム23の上端部23aの貫通穴に嵌着されたブッシュに挿通される。
【0014】
同様に、各接続機構26は、台座22のベースプレート22a上面に設けられる対向配置された一対の支持プレート27と、一対の支持プレート27間に差込まれたアーム23の下端部23bを水平方向且つ管継手3に接続されるLNGライン1の軸に対して垂直方向(図3における左右方向)へ貫通する平行ピン28と、を含む。なお、各アーム23の下端部23bには、平行ピン28を挿通させるための貫通孔が形成されており、各接続機構26の平行ピン28は、相対する各アーム23の貫通穴に嵌着されたブッシュに挿通される。
【0015】
これにより、台座22は、フレーム24から垂下された各アーム23によって、図1に示されるLNGライン1の直線区間の軸線を含む鉛直面内(図1および図2の平面内)を、水平を維持しながら前後方向(LNGライン1の軸方向であって、図1および図2における左右方向)へ揺動可能に吊持される。なお、図3に示されるように、リンク支持機構21は、台座22とフレーム24下部との間に構成される横揺れ防止機構29によって、横揺れ(図3における左右方向への揺動)が防止される。この横揺れ防止機構29は、一端部が台座22の底面に設けられた軸に回動可能に接続されて他端部がフレーム24に設けられた軸に回動可能に接続される複数個のアーム29aを有する。
【0016】
次に、本実施形態の作用を説明する。
図1に示されるLNGライン1(流体荷役ライン)の直線区間は、極低温のLNG(流体)によるクールダウンに伴い、例えば、固定点Pを基点に熱収縮する。そして、本実施形態では、このクールダウンに伴うLNGライン1の直線区間の熱収縮が、リンク支持機構21によって、ローディングアーム2(流体荷役装置)を前後方向(LNGライン1の軸方向であって、図1における左方向)へ移動させることで吸収する。ここで、ローディングアーム2は、リンク支持機構21の台座22が揺動することから、厳密には、前後方向へ移動すると同時に上下方向へも移動する。
【0017】
しかしながら、本実施形態では、LNGライン1の直線区間の熱収縮量に対して、リンク支持機構21の各アーム23の長さ(より厳密には、上端部23aを貫通する平行ピン28と下端部23bを貫通する平行ピン28との軸間距離)が十分に長く設定されることから、LNGライン1の直線区間の熱収縮によるローディングアーム21の上下方向への移動は、構造上、無視できる程度に微小である。横揺れ防止機構29においても同様に、厳密には、ローディングアーム21の前後方向(図1における左右方向)への移動に伴い、台座22は、前後方向へ移動すると同時に横方向(図3における左右方向)へも移動するが、台座22の横方向への移動量に対して、横揺れ防止機構29の各アーム29aの長さが十分に長く設定されることから、台座22の横方向への移動は、構造上、無視できる程度に微小である。
【0018】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、リンク支持機構21によって、ローディングアーム2(流体荷役装置)をLNGライン1(流体荷役ライン)の軸方向へ移動可能に吊持したことにより、LNGライン1のクールダウンに伴う熱収縮を、ローディングアーム2をLNGライン1の軸方向へ移動させることで吸収することができる。
したがって、本実施形態では、直線上の熱収縮を吸収するために使用される屈曲管をLNGライン1に組込むことを回避することができる。これにより、LNGライン1、特に、管継手3を介してローディングアーム2に接続される区間の固定点Pを直線上に配置することが可能、言い換えると、LNGライン1の直線区間を長く設定することが可能になり、LNGライン1を簡易化且つ省スペース化することができる。
また、本実施形態によれば、LNGライン1が簡易化されることから、メンテナンス性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、LNGライン1の配管用フレームをリンク支持機構21のフレーム24に併用したことで、より簡易に構成することができる。
さらに、本実施形態によれば、地震あるいは基礎の振動等によりLNGライン1の直線区間が軸方向へ振動(移動)した場合であっても、このLNGライン1の振動を、リンク支持機構21によってローディングアーム2をLNGライン1の軸方向へ振動(揺動)させることで吸収することができ、LNGライン1を構成する各移送管への負担を最小限に抑止することができる。
【0019】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施形態では、流体をLNGとしたが、流体はLNGに限定されるものではなく、例えば、石油類あるいは薬品等であってもよい。
本実施形態では、荷役対象をタンクローリとしたが、荷役対象は、タンクローリに限定されるものではなく、例えば、タンカー等であってもよい。
本実施形態では、LNGラインの配管用フレームに各アームを接続してリンク支持機構を構成したが、フレームはLNGラインの配管用フレームに限定されるものではなく、LNGラインの配管用フレームとは別個にリンク支持機構用のフレームを設けてもよい。
本実施形態では、リンク支持機構の台座にローディングアームの基台を載置して固定する構成としたが、台座と基台とを一体に構成してもよい。この場合、ローディングアームの基台をリンク支持機構の各アームで吊持するように構成してもよい。
横揺れ防止機構は、必要に応じて適宜設ければよい。また、横揺れ防止機構は、リンク機構を用いたもの他、ガイドレール等を用いた構造を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ローディングアームならびに該ローディングアームに接続されるLNGラインの直線区間を示す正面図である。
【図2】図1におけるローディングアーム支持構造を拡大して示した図である。
【図3】図2におけるA−A矢視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 LNGライン(流体荷役ライン)、2 ローディングアーム(流体荷役装置)、3 管継手、11 基台、21 リンク支持機構、22 台座、23 アーム、23a アームの上端部、23b アームの下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体荷役ラインが接続されて荷役対象に流体を荷役する流体荷役装置の支持構造であって、前記流体荷役装置を前記流体荷役ラインの軸方向へ移動可能に吊持するリンク支持機構を有することを特徴とする流体荷役装置支持構造。
【請求項2】
前記リンク支持機構は、前記流体荷役装置の基台が固定される台座と、上端部がフレームに回動可能に接続されて下端部が前記台座に回動可能に接続されるアームと、を有することを特徴とする請求項1に記載の流体荷役装置支持構造。
【請求項3】
前記フレームは、前記流体荷役ラインの配管用フレームを併用することを特徴とする請求項1または2に記載の流体荷役装置支持構造。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記台座が矩形に形成されており、該台座の四隅が、前記フレームから垂下された4つの前記アームにそれぞれ接続されることを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の流体荷役装置支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−298413(P2009−298413A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151667(P2008−151667)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(508173901)東京貿易機械株式会社 (3)
【Fターム(参考)】