説明

流動物質の分配包装体

【課題】包装体を折り曲げることで簡単に内容物を抽出することができるようにすると共に、主室内の収容物を変質させることなく、それと同種の内容物を適当量得ることができるようにした流動物質の分配包装体を提供せんとするものである。
【解決手段】一枚の可撓性を有するシートと、これと互いに接合させれ全体として流動性の被収容物を被覆して収容する収容部をなす比較的硬く略平坦なシートとからなり、該収容部が、互いに隔絶しつつ併設される二つの主室と、それらにそれぞれ一室ずつ隣接的に併設される互いに隔絶される副室とから構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数種の内容物をそれぞれ独立のポケットに分離して収容し、包装体を折り曲げるときポケットを開口して内容物を抽出し得るようにした分配包装体に関し、特に開封後の鋭敏な変質を伴う内容物の収容に適する分配包装体に関するものであって、小分けされた収容部を備え、主量の内容物と独立に、内容物を使用し得るように構成される分配包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指でつまんで折り曲げ操作することにより、内容物を簡単に抽出できる小型の分配包装体は公知であり、例えば特許第3140016号公報に開示されている。かかる公知の分配包装体は、比較的硬く略平坦なシート体の裏面に可撓性を有するシート体を接合し、該可撓性を有するシート体の一部をポケット状に膨張させて内容物を収容するための凹部を形成し、このポケット状凹部内に内容物を封入すると共に、硬いシート体の中央にハーフカット等の手段で折曲線を形成し、折曲線に沿って折り曲げるときポケットを開口して内容物を抽出可能としている。
【0003】
しかしながら、従来の分配包装体は内容物を収容するポケット状凹部は、該包装体を折り曲げて簡単に適量ずつ内容物を得られるものの、特に開封後の変性が著しい内容物であって、内容物を少量だけ使用する必要があり、多量の使用はその後に要求される場合には折り曲げたことで破断開口したポケット内に残留する後に使用すべき内容物は、刻々と経時変化を伴い結果的、本使用を必要とする時点では使用不能となっているという問題がっあった。
【0004】
【特許文献1】特許第3140016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、内容物を主室に収容して従来同様に包装体を折り曲げることで簡単に内容物を抽出することができるようにすると共に、内容物の一部を主室と隔絶された副室に収容することによって、主室と独立に副室を開封してそこに予め収容された主室の収容物と同種の内容物を抽出することができるようにした流動物質の分配包装体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明が採った手段は、流動物質を収容するための収容部を成す一対の、比較的硬く略平坦なシートと、このシートに接合される、少なくとも一側に端辺近傍を折り曲げて拡縮自在とする襞状部を形成した可撓性シートとを備え、これらのシートを互いに重ねその周縁を互いに固着して、少なくとも一種類の流動物質を収容し得る収容部を形成し、この収容部を少なくとも主室と副室の二つの隔絶した室に分割するための隔壁を形成して構成されることを特徴とする。
【0007】
また、一種類の流動物質を収容し得るように形成される収容部を、互いに間隔を存し隔絶させて少なくとも二つ併設し、二種類乃至それ以上の種類の流動物質を互いに独立に収容することができるようにすると共に、それらの収容部をそれぞれ少なくとも主室と副室の二つの隔絶した室に分割するための隔壁を形成して構成されることを特徴とする。
【0008】
また、互いに独立に収容された二種類の流動物質の収容部を画する隔壁上に、折れ目線を設け、一方の収容部内から連通して前記折れ目線を跨いで他方の収容部の方に向かって他方の収容部の手前まで延びた流動物質の半通路をそれぞれの収容部に対して設け、比較的硬く略平坦なシートの両側を互いに近付けるように圧縮力を付与し、該シートの面から外方向に応力を作用させて前記折れ目線に沿って該シートを破断することで、それぞれの収容部から連通して延びた前記半通路それぞれが破断した折れ目線上において開口し、それぞれ独立に収容された二種類の流動物質を同時に得ることができるように構成されること、或いは前記半通路が、主室としての流動物質の収容部のみに形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、主室と副室とを隔絶する隔壁上にハーフカットを設け、このハーフカットに沿って、主室を形成した包装体の主要部から副室を切り離すことができるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
主室を開封することなく、すなわち主量の内容物を変質させることなく、予め主室に収容された所定の種類の流動物質をそれぞれ所定量だけ抽出することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の好ましい実施の形態を、図を参照しながら以下に詳細に説明する。図1は本発明を適用した二つの主室とそれぞれの副室を一室ずつ設けてなる流動物質の分配包装体であって、可撓性シート(1)を上方に向けた状態の斜視図であり、図2はその裏面であって比較的硬く略平坦なシート(2)を上方に向けた状態の斜視図である。図3は、図1の分配包装体の周縁接合部(3)と、各室を隔絶する隔壁(4f)(4h)の様子及びそれらの隔壁(4f)(4h)上に設けられた折れ目線(f)とハーフカット(h)の配置関係等の構成を示す模式図であり、図4は図3に示す分配包装体の副室(5a)(5b)の開封方法の例を示す模式図である。
【0012】
本実施の形態例の流動物質の分配包装体は、図1及び図2に示すように、二つの主室(6a)(6b)とそれぞれの副室(5a)(5b)を一室ずつ設けてなる流動物質の分配包装体であり、一枚の可撓性を有するシート(1)と、これと互いに接合され全体として流動性の被収容物を被覆して収容する収容部をなす比較的硬く略平坦なシート(2)とから構成される。
【0013】
前記一枚の可撓性を有するシート(1)の、両端とそれら両端からのほぼ中間位置を挟む2カ所をそれぞれN字状に折り曲げて拡縮自在とする全部で四つの襞状部(7)を形成し、この可撓性シート(1)を、該シート(1)の襞状部(7)形成状態の平面投影面積に等しい面積及び形状を有する前記比較的硬く略平坦なシート(2)に重ね、二つの主室(6a)(6b)の底部(8)をなすようにそれらの周縁上の一辺を互いに熱融着し、この底部(8)を成す一辺に垂直な周縁上の二辺(i)(j)と、前記中間位置近傍に形成された2つの襞状部(7)の間の一辺(k)とを、下端から上端にかけて熱融着し、これによって形成された二つの独立した袋状の収容部にそれぞれ所望の流動物質を所定量充填する。このとき、充填量を適当に調整し、分配包装体の上端と下端の間の所定の位置で主室(6a)(6b)上部をなすように封じてもなお上端までの間に一室ずつ形成することができる程度に計らう。また該シート(1)の折り畳み方法は、N字状に限らず例えばV字状或いはW字状であってもよく襞状部(7)が所望の程度に拡開し得るものであればよく特に限定されない。
【0014】
次いで、主室(6a)(6b)に所定量の内容物を充填した後、主室の上部をなすように、と同時にこの上部が副室(5a)(5b)の底部をなすように可撓性シート(1)と、比較的硬く略平坦なシート(2)とを熱融着する。ただし、可撓性シート(1)と比較的硬く略平坦なシート(2)との接合方法は、上記の如くの熱融着に限らず、それらのシート(1)とシート(2)を互いに固着してそれぞれ密閉することができるものであればよく手段を問うものではない。
【0015】
その後、主室(6a)(6b)の直上に形成されたそれぞれの副室(5a)(5b)に、主室(6a)(6b)に対応する各々の流動物質を充填して、分配包装体全体としての上端を熱融着することによって、内容物を各々の室内に区分けして分配包装体内に密封して構成されている。勿論、熱融着手順や充填手順は上記のものに限定されるものではなく最終的に図1に示すように構成されていればよいことはいうまでもない。
【0016】
また図1に示すように、二つの主室(6a)(6b)及び二つの副室(5a)(5b)はそれぞれその両側に襞状部(7)を有するように構成されているので、充填状態においては襞状部(7)が拡開し非伸縮性のシートからなる分配包装体であっても素材自体を伸縮させることなく十分な容積を以て内容物を収容することが可能である。ただし、襞状部(7)は少なくとも一側に形成されていれば、襞状部(7)が拡開してシート自体に負担をかけず無理なく内容物を収容できるのであり、各室の両側に襞状部(7)を形成しなければならないというものではない。
【0017】
可撓性シート(1)としては、収容する内容物にもよるが例えば、アルミ、アルミナ、シリカ等の無機物質を蒸着した樹脂フィルムやシート、又は金属箔を積層した樹脂フィルムやシートで構成され、気体、液体或いは太陽光等に対してバリヤ効果の高い非伸縮性の材質のシートを使用することで内容物の保護効果を向上させることができる。
【0018】
比較的硬い略平坦なシート(2)は、図2に示すように、その下端のほぼ中点から上端のほぼ中点にかけて熱融着して形成された隔壁上の上下方向の中央に沿って設けられた折れ目線(f)を有し、一方の主室(6a)(6b)の収容部に連通して前記折れ目線(f)を跨ぎ他方の主室(6a)(6b)の収容部に向かって、その手前位置まで延び、該シート(2)の表面から凸状に突出して形成された突状半通路(9)が、異なる位置において互違いに、それぞれの主室(6a)(6b)の収容部に対して複数形成され、前記折れ目線(f)に沿って該シート(2)を折り曲げて該折れ目線(f)に沿って該シート(2)を破断させたとき、これに伴って該折れ目線(f)を跨いで形成されていた突状半通路(9)の折れ目線(f)上の位置に、開口が作出されてそれぞれの連通する主室(6a)(6b)の収容部内に収容されていた内容物を同時に抽出することができるように構成されている。ただし、本例においては、主室(6a)(6b)としての収容部のみに半通路を設けてあるが、これに限らず副室(5a)(5b)にも同様の半通路を設けることができる。
【0019】
図3に示すように、本例においては主室(6a)(6b)と副室(5a)(5b)との間の隔壁(4h)の中央部に沿って左右に抜けたハーフカット(h)が設けられている。従って、副室(5a)(5b)内に収容された収容物を抽出する場合には、副室(5a)(5b)部分を該ハーフカット(h)に沿って本体から切り離して使用することができる。勿論、切り離して使用しなければならないというものではなく、従って必ずしもハーフカット(h)がなければならないというものではない。つまり、ハーフカット(h)を設けるか否かは用途や必要に応じて適宜選択することができる。また図4に示すように、一点鎖線部をハサミ等によって裁断することで開封して内容物を抽出し得るようにしてもよい。この場合、可撓性シート(1)はもとより、これに接合される比較的硬い略平坦なシート(2)も、重ねた物としたとき容易に切断し得るように構成することが望ましい。
【実施例1】
【0020】
以上説明した当該発明の流動物質の分配包装体の各室に対して、染毛剤を収容した例を以下に示す。ただし、既に説明した上記事柄と同等の事項については略記する。本例の染毛剤の分配包装体は、上記の如くに構成された分配包装体の一方の主室(6a)及びこれに隣接する副室(5a)にはそれぞれ、第一剤としてパラフェニレジアミン3.0%、レゾルシン0.5%、オレイン酸20.0%、ポリオキシエチレン(10)オレイアルコールエーテル15.0%、イソプロピルアルコール10.0%、アンモニア水10%〜28%、精製水41.5%、酸化防止剤及びキレート剤適量ずつを封入し、他方の主室(6b)及びこれに隣接する副室(5b)にはそれぞれ、第二剤として過酸化水素水20.0%〜30.0%、精製水70.0%〜80.0%、及び安定化剤を適量封入して構成される。
【0021】
本例の染毛剤の分配包装体を使用する場合には、先ず、主室(6a)(6b)と副室(5a)(5b)の間の隔壁(4h)上に設けられた上記ハーフカット(h)に沿って、本体から副室(5a)(5b)部分を切り離す。次いで、切り離した副室(5a)(5b)をその中央の隔壁(4f)を中心として折り畳んで副室(5a)(5b)同士を重ね、図4に示す一点鎖線上にハサミ等を用いて端を裁断して、両副室(5a)(5b)を開口させる。開口させた両副室(5a)(5b)の後端から徐々に開口に向かって負荷を加えつつ、それぞれに収容された第一剤と第二剤を所望の容器等に抽出し混合剤をつくる。
【0022】
その後、所定の方法に従って、少量の前記混合剤を用いてパッチテストと呼ばれる試用を行う。ただし、パッチテストには凡そ24〜48時間程度の時間を要することが普通である。従って、このテストの結果において問題がなければ、残された本体の主室(6a)(6b)に未開封状態で収容された経時的変質のない第一剤及び第二剤を従来のようにして、つまり、比較的硬く略平坦なシート(2)を折り曲げて折れ目線(f)に沿って破断し、該シート(2)に形成された突状半通路(9)を通じてそれぞれに連通した主室(6a)(6b)内に収容されていた内容物を同時に抽出して本使用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した二つの主室とそれぞれの副室を一室ずつ設けてなる流動物質の分配包装体であって、可撓性シートを上方に向けた状態の斜視図
【図2】図1に示す分配包装体の裏面であって、比較的硬く略平坦なシートを上方に向けた状態の斜視図
【図3】図1の分配包装体の周縁接合部と、各室を隔絶する隔壁の様子及びそれらの隔壁上に設けられた折れ目線とハーフカットの配置関係等の構成を示す模式図
【図4】図3に示す分配包装体の副室の開封方法の例を示す模式図
【符号の説明】
【0024】
1 可撓性シート
2 比較的硬く略平坦なシート
3 周縁接合部
4f 隔壁
4h 隔壁
5a 副室
5b 副室
6a 主室
6b 主室
7 襞状部
8 底部
9 突状半通路
f 折れ目線
h ハーフカット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動物質を収容するための収容部を成す一対の、比較的硬く略平坦なシートと、このシートに接合される、少なくとも一側に端辺近傍を折り曲げて拡縮自在とする襞状部を形成した可撓性シートとを備え、これらのシートを互いに重ねその周縁を互いに固着して、少なくとも一種類の流動物質を収容し得る収容部を形成し、この収容部を少なくとも主室と副室の二つの隔絶した室に分割するための隔壁を形成して構成されることを特徴とする流動物質の分配包装体。
【請求項2】
一種類の流動物質を収容し得るように形成される収容部を、互いに間隔を存し隔絶させて少なくとも二つ併設し、二種類乃至それ以上の種類の流動物質を互いに独立に収容することができるようにすると共に、それらの収容部をそれぞれ少なくとも主室と副室の二つの隔絶した室に分割するための隔壁を形成して構成されることを特徴とする請求項1記載の流動物質の分配包装体。
【請求項3】
互いに独立に収容された二種類の流動物質の収容部を画する隔壁上に、折れ目線を設け、一方の収容部内から連通して前記折れ目線を跨いで他方の収容部の方に向かって他方の収容部の手前まで延びた流動物質の半通路をそれぞれの収容部に対して設け、比較的硬く略平坦なシートの両側を互いに近付けるように圧縮力を付与し、該シートの面から外方向に応力を作用させて前記折れ目線に沿って該シートを破断することで、それぞれの収容部から連通して延びた前記半通路それぞれが破断した折れ目線上において開口し、それぞれ独立に収容された二種類の流動物質を同時に得ることができるように構成されることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の流動物質の分配包装体。
【請求項4】
前記半通路が、主室としての流動物質の収容部のみに形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流動物質の分配包装体。
【請求項5】
主室と副室とを隔絶する隔壁上にハーフカットを設け、このハーフカットに沿って、主室を形成した包装体の主要部から副室を切り離すことができるように構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流動物質の分配包装体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−62723(P2006−62723A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248959(P2004−248959)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(593040298)株式会社ディスペンパックジャパン (14)
【出願人】(000005979)三菱商事株式会社 (56)
【Fターム(参考)】