説明

流量制御方法及び流量制御装置

【課題】流量センサを用いることなく、流量の制御が可能な流量制御方法及び装置を得る。
【解決手段】密閉タンク内においては、その液面高さとタンク内圧力との間に相関が存在することから、吐出ノズルからの液体流量を一定にするための液面高さ-タンク内圧力の関係式を求め、密閉タンク内に液体を封入した状態において、この液面高さ-タンク内圧力の関係式に基づいて密閉タンク内の気体圧力を制御し、吐出ノズルから吐出流量を制御する流量制御方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量センサを用いることなく密閉タンクから吐出される液体の流量を制御することができる流量制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体の製造工程中における洗浄工程、飲料の瓶詰め工程においては、液体の吐出量を可及的に一定にすることが求められる。このような要求に対して従来は、実際に流れる流体の吐出流量を測定し、その測定結果に基づき開閉弁の開度あるいは圧送ポンプの送り圧力を制御するフィードバック制御が行われている。
【特許文献1】特開平5-248917号公報
【特許文献2】特開平6-132268号公報
【特許文献3】特開2005-196788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、高精度の流量センサは比較的高価であり、また、フィードバック系を組むため装置構成が複雑となる。
【0004】
本発明は、流量センサを用いることなく、流量の制御が可能な方法及び装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、密閉タンク内においては、その液面高さとタンク内圧力との間に相関が存在し、その相関を利用すれば、タンク内圧力の制御だけで流量制御が可能であるとの着眼に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち本発明は、流量制御方法の態様では、液体吐出ノズルを有する密閉タンク内の圧力と液面高さとの関係を実験により求め、上記吐出ノズルからの液体流量を一定にするための液面高さ-タンク内圧力の関係式を求めるステップ;密閉タンク内に液体を封入するステップ;及び液面高さ-タンク内圧力の関係式に基づいて密閉タンク内の気体圧力を制御し、吐出ノズルからの液体の吐出流量を制御する吐出ステップ;を有することを特徴としている。
【0007】
吐出ステップでは、吐出ノズルから一定流量の液体を吐出させるように気体圧力を制御することができる。あるいは、時系列に流量を変化(増減)させる制御も可能である。
【0008】
液面高さ-タンク内圧力の関係式は、一般的には1次関数で足り、2次関数とすることも可能である。
【0009】
本発明方法は、少なくとも、液体吐出ノズルを有する密閉タンク;この密閉タンク内の液面上に加える気体圧力を変化させる可変圧力レギュレータ;密閉タンク内の液面高さを検知するセンサ;及びこの液面高さ検知センサによる液面高さに応じて可変圧力レギュレータによる密閉タンク内圧力を変化させる制御手段;を備えた流量制御装置により実施することができる。
【0010】
液面高さ検知センサは、例えば超音波変位センサを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、流量センサを用いることなく、密閉タンク内の圧力を制御することで、吐出流量の制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明による流量制御装置(一定流量装置)10の一実施形態を示している。対象とする液体(例えば蒸留水)を貯留するタンク11には、その底部に吐出ノズル12が備えられ、上壁に液体補給口13と、気体流通口14が開口している。吐出ノズル12と液体補給口13はそれぞれ開閉バルブ12Vと13Vを備えている。開閉バルブ13Vを開いてタンク11内部に液体Wを貯留した後、開閉バルブ13Vを閉じると、タンク11内は密閉空間となる。「密閉」は、液面上部の空間内の圧力を制御可能であることを意味するものであり、物理的な気密を意味しない。すなわち、内部圧力の制御が可能であれば、タンクに外部との連通オリフィス等が存在してもよい。
【0013】
密閉タンク11内には、その天井部分に超音波変位センサ15が設けられている。この超音波変位センサ15は、液体Wに向けて超音波を発し、液体Wの液面からの反射超音波を受信することで、該超音波変位センサ15から液体W迄の距離(液面高さ)を検出するセンサである。このようなセンサは周知である。
【0014】
気体流通口14は、可変圧力レギュレータ20を介して加圧空気(気体)源21に接続されている。可変圧力レギュレータ20の出口側には圧力センサ22が設けられており、この圧力センサ22の出力及び超音波変位センサ15の出力は、制御手段(制御回路)23に入力される。
【0015】
以上の基本構成を有する本流量制御装置10は、制御手段23により可変圧力レギュレータ20を制御することにより、タンク11内に及ぼす気体圧力を変化させることができ、その気体圧力の大小により、開閉バルブ12Vを開いた状態において吐出ノズル12から吐出させる液体Wの流量が変化する。
【0016】
本実施形態は、以上の装置構成において、吐出ノズル12から吐出される流量が可及的に一定となるように、超音波変位センサ15によって検出される液体Wの液面高さに応じて、タンク11内の圧力を制御するものである。
【0017】
このような圧力制御をするために、予め、次の流量フィードバック実験により「液面高さ-タンク内圧力の関係式」を求めた。吐出ノズル12に流量計を取り付け、該吐出ノズル12を流れる流量(信号)が目標流量(2.0L/分)となるように、制御手段23及び可変圧力レギュレータ20によりタンク11内の圧力を制御する。同時に超音波変位センサ15によりタンク11内の液面高さを検出する。この流量フィードバック制御により、一定流量を得るための液面高さとタンク11内の圧力の関係が分かる。
【0018】
図2は、この「液面高さ-タンク内圧力の関係式」の一例を示している。この関係式は、タンク内圧力をy、液面高さをxとして、両者を、1次関数(y=ax+b)(a、b:定数)で線形近似させたものである。あるいは、2次関数(y=cx2+dx+e)(c、d、e:定数)で近似してもよい。いずれの近似を採用するかは、要求される流量精度に応じて定める(選択する)ことができる。なお、図2における液面高さは、超音波変位センサ15からの距離で示しており、貯留液量の減少に伴い高さが増加する関係となっている。また、図2は、液体として蒸留水を用い、目標流量を2.0L/分としたときの「液面高さ-タンク内圧力の関係式」であるが、液体の種類(粘度)や目標流量に応じ、複数の関係式を予め求めておくことができる。
【0019】
以上の手順で求めた「液面高さ-タンク内圧力の関係式」は、制御手段23に記憶される。実際の装置構成では、吐出ノズル12に流量計は備えておらず(不要であり)、開閉バルブ12Vを開けた状態において、超音波変位センサ15により液体Wの液面高さがリアルタイムで検出される。制御手段23と可変圧力レギュレータ20は、この液面高さに応じ、「液面高さ-タンク内圧力の関係式」に基づいてタンク11内の圧力を制御し、一定流量を得る。圧力センサ22は、タンク11内の圧力を制御手段23にフィードバックする。タンク11内の液体Wが費消されたときには、開閉バルブ12Vを閉じて装置を止め、液体補給口13からタンク11内に液体を補給する。以下同様にして貯留流体の定量供給を行うことができる。なお、本実施形態では、液体の吐出途中において開閉バルブ12Vを閉めて吐出を止めたとき、タンク11内の圧力を変化させずに維持することにより、該バルブを再び開けたときに再び同一流量を流すことができる。
【0020】
「液面高さ-タンク内圧力関係式」は、液体の種類、タンク内圧力、開閉バルブ12Vの開度等の要素をパラメータとして複数を予め求めておくことが可能であり、これらの複数の関係式に基づいて、異なる液体の定量吐出制御、時系列に流量を変化させる制御等が可能である。
【0021】
液体の性質によっては、タンク11内に圧力を及ぼす気体は不活性ガスとすることが可能である。また液面高さを検知するセンサは、超音波変位センサ15以外のセンサでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による流量制御装置の一実施形態を示す概念接続図である。
【図2】「液面高さ-タンク内圧力の関係式」の一例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0023】
10 流量制御装置
11 密閉タンク
12 吐出ノズル
13 液体補給口
12V 13V 開閉弁
14 気体流通口
15 超音波変位センサ(液面高さ検知センサ)
20 可変圧力レギュレータ
21 加圧気体源
22 圧力センサ
23 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ノズルを有する密閉タンク内の圧力と液面高さとの関係を実験により求め、上記吐出ノズルからの液体流量を一定にするための液面高さ-タンク内圧力の関係式を求めるステップ;
上記密閉タンク内に液体を封入するステップ;及び
上記液面高さ-タンク内圧力の関係式に基づいて密閉タンク内の気体圧力を制御し、吐出ノズルからの液体の吐出流量を制御する吐出ステップ;
を有することを特徴とする流量制御方法。
【請求項2】
請求項1記載の流量制御方法において、上記吐出ステップでは、吐出ノズルから一定流量の液体を吐出させるように気体圧力を制御する流量制御方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の流量制御方法において、上記液面高さ-タンク内圧力の関係式は、1次関数または2次関数である流量制御方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の流量制御方法において、該制御方法は、液体吐出ノズルを有する密閉タンク;この密閉タンク内の液面上に加える気体圧力を変化させる可変圧力レギュレータ;密閉タンク内の液面高さを検知するセンサ;及びこの液面高さ検知センサによる液面高さに応じて上記可変圧力レギュレータによる密閉タンク内圧力を変化させる制御手段;を備えた流量制御装置によって実行される流量制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の流量制御方法において、上記液面高さ検知センサは、超音波変位センサである流量制御方法。
【請求項6】
液体吐出ノズルを有する密閉タンク;
この密閉タンク内の液面上に加える気体圧力を変化させる可変圧力レギュレータ;
上記密閉タンク内の液面高さを検知するセンサ;及び
この液面高さ検知センサによる液面高さに応じて上記可変圧力レギュレータによる密閉タンク内圧力を変化させる制御手段;
を備えたことを特徴とする流量制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の流量制御装置において、上記液面高さ検知センサは、超音波変位センサである流量制御装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の流量制御装置において、上記制御装置は、吐出ノズルからの液体流量を一定にするための密閉タンク内の圧力と液面高さとの関係式に基づいて可変圧力レギュレータの圧力を制御する流量制御装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−148512(P2007−148512A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338542(P2005−338542)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】