説明

流量計測方法

【課題】水蒸気等が含有されているにもかかわらず、ガスのみの流量を正確に計測できる流量計測方法を提供。上述の正確な計測をするのに高価な流量計を用いる必要のない流量計測方法を提供。
【解決手段】管体を通してガスが供給され、該管体に取り付けられた第1流量計により該ガスの流量値が検出されるガス供給経路にあって、
該第1流量計の下流側の前記管体に、該第1流量計よりも測定精度が優れ該第1流量計とは異なる第2流量計を取り付ける行程と、
該第2流量計の出力から水蒸気を含まないガスの流量を演算する行程と、
該ガスの流量の演算結果から前記第1流量計により検出された流量値を補正し、この補正された流量値を前記第1流量計の検出値として用いる行程と、
前記管体から少なくとも前記第2流量計を取り外す行程と、を有し、
前記補正された流量値は水蒸気を含まないガスの流量値に相当する値となっていることを特徴とする流量計測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流量計測方法に係り、水素ガスの流量を計測するのに好適な流量計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、燃料電池はその空気極(プラス極)に空気が供給され燃料極(マイナス極)に水素が供給されることにより構成される。このような構成からなる燃料電池は空気中の酸素と前記水素を反応させ、この反応から直接電気エネルギーを生成するため極めて変換効率の優れた電池であるとして知られるに至っている。
【0003】
そして、該燃料電池の燃料極への水素供給のための経路において、該水素の供給量の制御を行うため、たとえば水素ボンベからの配管の途中に流量計が設けられ、この流量計の計測値に基づき実運用を行うのが通常である。
【0004】
この場合、該燃料電池はその変換効率が高いがゆえに、その被反応物質である水素の流量も正確な値が期され、したがって、前記流量計の計測値において正確な値が要求されることはいうまでもない。
【0005】
なお、このような燃料電池システムにおける水素供給経路はたとえば下記の特許文献1等に詳述されている。
【特許文献1】特開平7−37598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した流量計による水素ガスの流量計測において、その計測値が正確でなく、その原因が該水素ガスに含まれてしまう水蒸気に原因があることが見いだされるに至った。
【0007】
水蒸気が含まれることによる流量計測の誤差は、ガス体がたとえば窒素(N)の場合において弊害とは見出されなかった。それは窒素ガスのモル質量は水蒸気よりも大きく、多湿状態のガスでもたとえば容積比率で考えれば5%程度であり誤差要因とならなかったからである。
【0008】
しかし、上述のようにガス体が水素の場合にあっては、そのモル質量は水蒸気の1/10であり、該水蒸気は十分な誤差要因となり得るものとなっている。
【0009】
したがって、通常の燃料電池への水素供給経路において、水素ボンベから配管を通して得られる水素ガスは実際には該配管内に残留する水蒸気を含み、たとえそれが微量であったとしても、計測された流量値は水素のみの流量値と比較してずれが生じることが判明する。
【0010】
このずれは、たとえば気温20℃の時に露点温度が0℃の水素ガスが水蒸気を含まない純ガス状態時と比較して密度が+4%の増大を伴い、これがそのまま測定流量値に影響して現れることを鑑みれば、無視し得ないことが判明する。
【0011】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、その目的は、水蒸気等が含有されているにもかかわらず、水蒸気を含まないガスのみの流量を正確に計測することのできる流量計測方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、上述の正確な計測をするのに高価な流量計を用いる必要のない流量計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
(1)本発明による流量計測方法は、たとえば、管体を通してガスが供給され、該管体に取り付けられた第1流量計により該ガスの流量値が検出されるガス供給経路にあって、
該第1流量計の下流側の前記管体に、該第1流量計よりも測定精度が優れる第2流量計を取り付ける行程と、
該第2流量計の検出出力から水蒸気を含まないガスの流量を演算する行程と、
該ガスの流量の演算結果から前記第1流量計により検出された流量値を補正し、この補正された流量値を前記第1流量計の検出値として用いる行程と、
前記管体から少なくとも前記第2流量計を取り外す行程と、を有し、
前記補正された流量値は水蒸気を含まないガスの流量値に相当する値となっていることを特徴とする。
【0015】
(2)本発明による流量計測方法は、たとえば、管体を通してガスが供給され、該管体に取り付けられた第1流量計と、この第1流量計からの出力によって流量値を検出する検出回路とを有するガス供給経路にあって、
該第1流量計の下流側の前記管体に、該第1流量計よりも測定精度の優れる第2流量計と、この第2流量計からの出力から水蒸気を含まない水素ガスの流量を演算するガス流量抽出回路を配置させる行程と、
前記第1流量計にて、前記ガス流量抽出回路によって演算されたガスの流量値と前記検出回路からの流量値との差分値を算出し、その後、前記検出回路からの流量値から前記差分値を減算させた補正を行い、この補正された流量値を前記第1流量計から出力させる行程と、
前記管体から、前記第2流量計とガス流量抽出回路を取り外す行程と、を有することを特徴とする。
【0016】
(3)本発明による流量計測方法は、たとえば、(1)、(2)のいずれかの構成を前提とし、前記ガスの流量の演算は、前記第2流量計によって検出された流量値、圧力、温度、湿度を少なくとも用いて行うことを特徴とする。
【0017】
(4)本発明による流量計測方法は、たとえば、(1)の構成を前提とし、第1流量計にはその検出出力を補正する補正回路が備えられ、該第1流量計の検出された流量値の補正は該補正回路によって行われることを特徴とする。
【0018】
(5)本発明による流量計測方法は、たとえば、(2)の構成を前提とし、第1流量計にはその検出出力を補正する補正回路が備えられ、ガス流量抽出回路によって演算された水蒸気を含まぬガスの流量値と前記検出回路からの流量値との差分値を算出し、その後、検出回路の流量値から減算させる補正は該補正回路によって行われることを特徴とする。
【0019】
(6)本発明による流量計測方法は、たとえば、(2)、(5)のいずれかの構成を前提とし、前記差分値はメモリに格納され、検出回路の流量値から前記メモリに格納された該差分値を減算させる補正を行うことを特徴とする。
【0020】
(7)本発明による流量計測方法は、たとえば、(2)の構成を前提とし、前記ガス流量抽出回路はマイクロコンピュータで構成されていることを特徴とする。
【0021】
(8)本発明による流量計測方法は、たとえば、(1)、(2)のいずれかの構成を前提とし、第2流量計は標準流量計として構成されていることを特徴とする。
【0022】
なお、本発明は以上の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による流体計測方法の実施例を図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本発明による流体計測方法の一実施例を適用させた構成図で、たとえば、燃料電池試験システムを示した構成図である。
【0025】
まず、水素ガスボンベ1があり、この水素ガスボンベ1内の水素ガスは管体2の途中に配置された汎用形の流量計F、加湿源3、および本発明による純ガス流量抽出回路を搭載した標準流量計SFを通して図示しない燃料電池側に供給されるようになっている。ここでの「純ガス流量」とは「水蒸気を含まぬガスの流量」の意味である。なお、前記標準流量計SFは燃料電池の設置個所に代替されて取り付けられたものであってもよい。
【0026】
ここで、前記流量計Fは管体2に常時設置されたものとして構成されるものである。これに対し、前記標準流量計SFはこの発明を適用させる際において管体2に取り付けられるようになっている。すなわち、該標準流量計SFは、この発明を適用させた後には管体2から取り外されるようになっており、燃料電池試験システム系にあってはその構成要素の一つとして構成しないものとなっている。
【0027】
この標準流量計SFは、前記流量計Fと比較して、流量値を極めて正確に測定できるように構成されたものとなっており、併せて流体の圧力、温度、湿度を検出し、水蒸気を含まぬガス流量を抽出する機能を備えることから、その構成は該流量計Fよりも複雑で、かつ、価格も該流量計Fよりも高価となっている。したがって、燃料電池試験システムにおいて、その水素ガスの計測を精度よく行うため、該標準流量計SFを該燃料電池試験システムに組み込んだままとして用いることは極めて好都合であるが、該燃料電池試験システムとして高価格となってしまうことが免れないことから、上述したように、この発明を適用させた後には管体2から取り外すように構成したものとなっている。なお、この標準流量計SFはその名が示す通りある規定以上の精度を有するものとして構成されるのが通常であるが、この発明の適用にあって該標準流量計SFは前記流量計Fよりも測定精度がよいものであれば、これを適用できる。後の説明が明らかとなるように、この燃料電池システムにおいて純水素ガス(水蒸気を含まないガス)の正確な流量測定は該標準流量計SFの精度にそのまま依存するからである。
【0028】
また、前記加湿源3は、燃料電池において、水素と酸素を反応させる電池部分(セルスタック)は湿潤環境下で安定動作するものであり、その必要のために設けられている。しかし、他の実施例として該加湿源3は必ずしも前記管体2の途中に備えられたものでなくてもよい。この加湿源3が存在しない場合であっても、水素ガスボンベ1からの水素ガスには配管途中で水蒸気が含まれる可能性があり、それにも関わらず、本発明は該水蒸気を除いた純水素ガスの流量を精度よく計測しようとするものであるからである。それは、たとえ、該加湿源3が存在しない場合であっても、水素ガスボンベ1から該標準流量計SFに至るまでの管体2内には完全に除去することが叶うことのない水蒸気が存在するからである。
【0029】
前記流量計Fは、たとえばマスフローメータ(熱式流量計)からなり、該加湿源や燃料電池の取り外し時に起因する湿り気が流量計Fへの逆流を防ぐ機構を備えていれば、その測定精度は前記標準流量計SFの測定精度よりも高いものを用いる必要のないものとなっている。この流量計Fにおいて、管体2内に配置される該熱式流量計の検出電極からの出力は、検出回路4に入力され、この検出回路4によって前記流量計Fに流れる水素ガスの流量が算出されるようになっている。ここで、この流量計Fによって算出された水素ガスの流量値は、水素ガスボンベ1内の水蒸気を含まない純水素ガスの流量値ではなく、該水素ガスボンベ1から流量計Fにまで至る管体内に存在する水蒸気の影響を受けた流量値となっている。燃料電池システムの制御においては、水蒸気を含まない純水素ガスのみの流量値に基づいて行うのが極めて好都合であることから、前記検出回路4によって算出された流量値を、その後において、補正回路5によって補正されるように構成されている。なお、この実施例では、前記検出回路4および補正回路5からなる回路を純ガス流量検出回路6と称する。この純ガス流量検出回路6は前記検出回路4からの出力を得るのが目的でなく、該出力を補正して純ガスの流量値を出力させるのが目的だからである。
【0030】
該補正回路5はたとえば第1メモリ7、第1演算回路8、第2メモリ9、および第2演算回路10とから構成されている。そして、第1メモリ7には標準流量計SFからの出力によって純水素ガスの流量値を演算する後述の純ガス流量抽出回路14からの出力値(流量値)が格納されるようになっており、この格納された流量値に相当する情報は、第1演算回路8に入力されるようになっている。
【0031】
一方、第1演算回路8には前記検出回路4からの検出された流量値に相当する情報も入力されており、この情報の流量値と前記第1メモリ7に格納されている情報の流量値との差分値がこの第1演算回路8によって演算されるようになっている。そして、この差分値は第2メモリ9に出力されて格納されるようになっている。その後において、前記検出回路4からの流量値は第2演算回路10に入力されるようになり、この第2演算回路10によって、該流量値から第2メモリ9に格納された前記差分値を減算させ、この減算させた値を前記補正回路5の出力として、すなわち純ガス流量検出回路6の出力として、出力させるようになっている。これにより、前記補正回路5によって補正された流量値は、水蒸気を含まない純水素ガスのみの流量値となり、その値は、表示装置11に表示されるように構成されている。
【0032】
なお、後述の純ガス流量抽出回路14からの出力値を前記純ガス流量検出回路6の第1メモリ7に格納した後は、その純ガス流量抽出回路14および標準流量計SFはいずれも必要としなくなるものであり、図3に示すように、これら純ガス流量抽出回路14および標準流量計SFを取り除いた構成として燃料電池試験システムを構成する。この時点で、流量計Fは前記標準流量計SFの計測精度に準拠した計測精度を備えたものとして校正されたからである。
【0033】
次に、前記標準流量計SFと純ガス流量抽出回路の各構成について以下説明をする。前記標準流量計SFはそれが取り付けられた管体2内の水素ガス(水蒸気を含む)の流量Qを検出回路13によって検出するようになっている。この場合、標準流量計SFには、被計測流体の圧力P、温度T、および絶対湿度haを検出するセンサを備えてなり、これらセンサの圧力P、温度T、および絶対湿度haに相当する出力値は純水素ガス(水蒸気を含まない)流量Qgvnを算出する際のパラメータとなる。
【0034】
そして、前記検出器13からの出力、すなわち、前記流量Q、前記圧力P、温度T、および絶対湿度haに相当する出力値は、それぞれ、純ガス流量抽出回路14に入力されるようになっている。
【0035】
純ガス流量抽出回路14は、たとえばマイクロコンピュータから構成され、図2に示すステップで順次演算がなされるようになっている。以下、ステップ順に該純ガス流量抽出回路14の動作を説明する。
【0036】
ステップST1:湿りガスのモル分率Xvを求める。ここで、湿りガスは水蒸気を含む水素ガスをいう。
【0037】
湿りガスのモル分率Xvは次式(1)に基づいて算出される。
【0038】
Xv=(ha・Ru・T)/(P・Nvap) ……(1)
ここで、Nvapは水蒸気のモル質量(=0.0180150kg/mol)、Ruは普遍気体定数(=8.31451J/(K・mol))、Pはガス圧力(Pa[abs])、Tはガス温度(K)、haは絶対湿度(kg/m)である。
【0039】
ガス圧力P、ガス温度T、絶対湿度haはそれぞれ標準流量計SFに設けられたセンサからの出力から算出されるものである。
【0040】
ステップST2:湿りガス中の純ガスのモル質量Ngasを求める。まず、ステップST1で得られたモル分率Xvより、湿りガスのモル質量Nは次式(2)に示すように分解できる。
【0041】
N=Ndry×(1−Xv)+Nvap・Xv ……(2)
ここで、Ndryは乾燥ガスのモル質量(kg/mol)である。この乾燥ガスは不純物を含まない水素ガスであることから、既定値として定まっている値である。
【0042】
そして、純ガスのみのモル質量Ngasは次式(3)に基づいて算出される。
【0043】
Ngas=Ndry×(1−Xv) ……(3)
ステップST3:純ガスの実際の密度値ρgasを求める。この密度値ρgasは次式(4)に基づいて算出される。
【0044】
ρgas=(Ngas・P)/(Ru・Z・T) ……(4)
ここで、Zは圧縮係数である。
【0045】
ステップST4:純ガスの質量流量値Qgmを求める。この質量流量値Qgmは次式(5)に基づいて算出される。
【0046】
Qgm=ρgas×Q ……(5)
ここで、Qは容積流量値(L/min)であり、前記標準流量計SFから得られる流量値である。
【0047】
ステップST5:純ガスのノルマル容積流量値Qgvnを求める。このノルマル容積流量値Qgvnは次式(6)に基づいて算出される。
【0048】
Qgvn=Qgm/ρgn ……(6)
ここで、ρgnはガスの標準(ノルマル)条件時の密度(g/L)であり、既定値として定まっている。
【0049】
このようにして得られたノルマル容積流量値Qgvnは純ガス流量抽出回路14の出力として得られ、上述したように、流量計Fの純ガス流量検出回路6に組み込まれた第1メモリ7に格納されるようになっている。なお、この実施例では、前記純ガス流量抽出回路14をマイクロコンピュータが行う演算回路として示したものであるが、これに限定されることはなく、専用のデジタル回路として構成してもよいことはいうまでもない。また、流量計Fの構造が、該補正回路5を非搭載な簡易なものであった場合、直接その流量出力値Qm(F)を校正値Qgmに合わせて調整してもよいことはいうまでもない。
【0050】
以上説明したことから明らかなように、本実施例による流量計測方法によれば、管体2に常備されている流量計Fは水蒸気の影響が排除されたガスのみの流量値が出力されるようになる。そして該流量計Fは適時標準流量計SFにより水蒸気を含まぬガス流量値での校正を実施することが可能であるため、いわゆる純ガスのみの流量を極めて精度よく計測することができるようになる。
【0051】
さらに、前記標準流量計SFのように前記流量計Fよりも計測精度の良好な他の流量計SFの使用は一時的なもの(流量計Fの出力値を補正する際の使用)であり、その後は管体2から取り外され、管体2に常備されている流量計Fによって精度よい計測を行うようにしていることから、この計測にあって高価な流量計を用いる必要のないものとなる。
【0052】
上述した実施例では、純ガス流量抽出回路14からの出力(流量値)を演算を用いて求めるのに、標準流量計SFから得られるガス圧力P、ガス温度T、および絶対湿度haのみを考慮に入れたものである。これは標準流量計SFにいわゆる純ガスのみの流量を正確に算出させるためである。すなわち、加湿源3を通過後のガス圧力P、ガス温度T、および絶対湿度haの変化に関わらず、標準流量計SFは水蒸気を含まぬガスの流量値のみを抽出できるので、流量計Fからの検出出力に対し補正を施し、これを純ガスの流量値とするものである。経験則上、流量計Fの上流側に加湿源が無い構成、または安定した加湿源を有する構成の場合には、水蒸気が流量計Fに及ぼす誤差補正量の変化は緩やかであるとともに、その変化量も極めて小さいことに基づくものである。
【0053】
さらに流量計Fに圧力、温度、湿度を測定できる能力を附加した場合、流量計Fの上流側に不安定な加湿源が存在しても対応可能な流量計となる。この実施例の態様としてたとえば流量計Fにより測定されるガス圧力、ガス温度、および絶対湿度をそれぞれの設定された範囲でグループ分けさせ、それぞれのグループ毎に標準流量計SFから得られる純ガス流量抽出回路14からの各流量値を前記第1メモリ7に格納させておく。その後標準流量計SFを管体2から取り外し、流量計Fにより流量を測定する場合、流量計Fにより最初に得られた流量値Qm(F)を、同時に測定されたガス圧力、ガス温度、および絶対湿度から上述したグループの内より近似のグループを選択し、この選択されたグループにおいて測定流量値Qm(F)に対応する流量値を選択し、この選択された流量値で前記第1演算回路8および第2演算回路10による演算を行うように構成してもよいことはいうまでもない。換言すれば、前記第1メモリ7には標準流量計SFにより測定された各流量値がマップ化されて格納されている。すなわち、各流量値は、同時に流量計Fで測定されたガス圧力、ガス温度、および絶対湿度の各区分に応じて格納される。その後、標準流量計SFが取り外されて、流量計Fによる測定が行われる際には、測定されたガス圧力、ガス温度、および絶対湿度に応じて該区分に格納されている各流量値により補正が行われるようになっている。このように構成した場合、流量計Fに流入するガス圧力、ガス温度、および絶対湿度が変化しても、これに応じた適切な流量値を算出できるようになる。
【0054】
さらに、実施例の他の態様として、上述した各態様から、ガス圧力、ガス温度、および絶対湿度のうち、一つあるいは二つを度外しし、残りの二つあるいは一つによって純ガス流量抽出回路からの出力を演算するように構成し、この場合、上述した各態様を適用させるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0055】
また、上述した実施例では、燃料電池試験システムに配置される標準流量計SFは容積流量計であるとして説明をしたものである。しかし、容積流量計に限定されることはなく、質量流量計であっても同様に本発明を適用できることはいうまでもない。この場合の図1に対応する構成図は図4に示すようになる。図1の場合と比較して異なる部分は、加湿源3の下流側に配置される標準流量計SFが質量流量計であること、そして、純ガス流量抽出回路14の構成が若干異なるにすぎないものとなっている。すなわち、純ガス流量抽出回路14は、図5に示すフローチャートのように動作し、前述した図2と対応した図となっている。図2の場合には、ステップST4にて純ガスの質量流量値Qgmを算出し、さらにこの質量流量値Qgmからノルマル容積流量値Qgvnを算出するようにしているが、図4の場合には、標準流量計SFから質量流量Qmとアクチュアル密度ρを得ることで、アクチュアル容積流量Qが求まり、以下、同様の処理を行うようになっている。
【0056】
このように構成した場合において、図1の場合と同様に、第1演算回路8では、流量計Fで検出された流量値と標準流量計SF側の純ガス流量抽出回路14からの流量値との差分値が演算され、第2演算回路10では、流量計Fで検出された流量値に前記差分値を減算する演算がされるようになる。
【0057】
以上説明したことから明らかなように、本発明による流量計測方法によれば、水素ガス供給経路に常備されている流量計の精度を維持するためには定期的な校正が不可欠なのだが、たとえば校正時の配管経路上に不安定な加湿源が存在した場合でも純ガス流量抽出機能付きの標準流量計を用いれば適時純ガスのみでの校正ができるようになる。
【0058】
このようにして精度の管理が行われた汎用流量計では、汎用形であるにも拘わらず、純ガスのみの流量を極めて精度よく計測することができるようになる。
【0059】
さらに、前記標準流量計のように前記流量計よりも計測精度の良好な他の流量計の使用は一時的なものであり、その後は管体から取り外され、水素ガス供給経路に常備されている流量計によって精度よい計測を行うようにしていることから、この計測にあって高価な流量計を用いる必要のないものとなる。
【0060】
また、上述した各実施例では、水素ガス供給経路として燃料電池システムを例に挙げて説明したものである。しかし、燃料電池試験システムに限定されることはなく、他のシステムにおける水素ガス供給経路において本発明が適用できることはいうまでもない。他の水素ガス供給経路においても、水蒸気を含まない純水素ガスのみの流量を精度よく計測したいという要望があるからである。
【0061】
さらに、上述した図1、図3、図4、及び図6に示した構成において、流量計Fに搭載される補正回路5は、第1メモリ7、第1演算回路8、第2メモリ9、第2演算回路10から構成された場合を示したものである。しかし、これら補正回路5を非搭載とした、より簡易な構造の流量計の場合でも本発明が適用できることはいうまでもない。その場合には流量計の出力値Qm(F)を直接校正値であるQgmに合わせて調整できるからである。
【0062】
上述した各実施例はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施例での効果を単独であるいは相乗して奏することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による流量計測方法の一実施例を燃料電池試験システムに適用させた場合の構成図である。
【図2】図1に示す純ガス流量抽出回路の動作の一実施例を示すフローチャートである。
【図3】本発明による流量計測方法の一実施例を適用させた後における燃料電池試験システムの構成図である。
【図4】本発明による流量計測方法の他の実施例を燃料電池試験システムに適用させた場合の構成図である。
【図5】図4に示す純ガス流量抽出回路の動作の他の実施例を示すフローチャートである。
【図6】本発明による流量計測方法の他の実施例を適用させた後における燃料電池試験システムの構成図である。
【符号の説明】
【0064】
F……流量計(管体2に常備)、SF……標準流量計(管体に対して取り外し可能)、1……水素ガスボンベ、2……管体、3……加湿源、4、13……検出回路、5……補正回路、6……純ガス流量検出回路、7……第1メモリ、8……第1演算回路、9……第2メモリ、10……第2演算回路、11……表示装置、14……純ガス流量抽出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を通してガスが供給され、該管体に取り付けられた第1流量計により該ガスの流量値が検出されるガス供給経路にあって、
該第1流量計の下流側の前記管体に、該第1流量計よりも測定精度が優れる第2流量計を取り付ける行程と、
該第2流量計の検出出力から水蒸気を含まないガスの流量を演算する行程と、
該ガスの流量の演算結果から前記第1流量計により検出された流量値を補正し、この補正された流量値を前記第1流量計の検出値として用いる行程と、
前記管体から少なくとも前記第2流量計を取り外す行程と、を有し、
前記補正された流量値は水蒸気を含まないガスの流量値に相当する値となっていることを特徴とする流量計測方法。
【請求項2】
管体を通してガスが供給され、該管体に取り付けられた第1流量計と、この第1流量計からの出力によって流量値を検出する検出回路とを有するガス供給経路にあって、
該第1流量計の下流側の前記管体に、該第1流量計よりも測定精度の優れる第2流量計と、この第2流量計の出力から水蒸気を含まないガスの流量を演算するガス流量抽出回路を配置させる行程と、
第1流量計にて、前記ガス流量抽出回路によって演算されたガスの流量値と前記検出回路からの流量値との差分値を算出し、その後、前記検出回路からの流量値から前記差分値を減算させた補正を行い、この補正された流量値を前記第1流量計から出力させる行程と、
前記管体から、前記第2流量計とガス流量抽出回路を取り外す行程と、を有することを特徴とする流量計測方法。
【請求項3】
前記ガスの流量の演算は、前記第2流量計によって検出された流量値、圧力、温度、湿度を少なくとも用いて行うことを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の流量計測方法。
【請求項4】
第1流量計にはその検出出力を補正する補正回路が備えられ、該第1流量計の検出された流量値の補正は該補正回路によってなされることを特徴とする請求項1に記載の流量計測方法。
【請求項5】
第1流量計にはその検出出力を補正する補正回路が備えられ、ガス流量抽出回路によって演算された水蒸気を含まないガスの流量値と前記検出回路からの流量値との差分値を算出し、その後、前記検出回路の流量値から前記差分値を減算させる補正は該補正回路によってなされることを特徴とする請求項2に記載の流量計測方法。
【請求項6】
前記差分値はメモリに格納され、検出回路の流量値から前記メモリに格納された該差分値を減算させる補正を行うことを特徴とする請求項2、5のいずれかに記載の流量計測方法。
【請求項7】
前記ガス流量抽出回路はマイクロコンピュータで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の流量計測方法。
【請求項8】
第2流量計は標準流量計として構成されていることを特徴とする請求項1、2のうちいずれかに記載の流量計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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