説明

浮遊型検出装置の検査装置

【課題】簡単に作動確認試験を行うことができる浮遊型検出装置の検査装置を提供すること。
【解決手段】浮遊型検出装置100を検査する検査装置10は、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる液体貯蔵部30を備える。液体貯蔵部30は、液体wの表面に形成された油膜foの表面積が所定面積になるように、油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。検査装置10は、さらに、貯蔵範囲を広げたり狭めたりする貯蔵範囲変更手段50を備える。貯蔵範囲変更手段50は、凹部21の内部において、内部容器40を上下動させる移動装置60を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊型検出装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、発電所、変電所のような油入機器210を使用している電気所のような設備200では、その油入機器210から漏れ出た油が設備200の排出口220を介して設備200の外に流出しないように、油膜の厚さを検出する浮遊型検出装置100を設けている。例えば、中国電力株式会社が管轄する設備200の数は数百である。1つの設備には、少なくとも1つの浮遊型検出装置が設けられているので、浮遊型検出装置100の数は、設備200の数以上の数になる。
【0003】
浮遊型検出装置100は、例えば、油入機器210と設備200の排出口220との間に設けられた排水230を貯蔵する排水ピット240に常時浮遊しており、所定量の油を検出すると、設備200を保全する作業員に警報を発するとともに、油を含んだ排水230を排水ピット240から排出口220を介して設備200の外に流さないように排水制御装置(図示せず)に排出停止信号を発する。そのような浮遊型検出装置100としては、旭化成テクノシステム株式会社の商品名「エポラームC」(CSi−3005)を用いることができる。
【0004】
図10に示すように、浮遊型検出装置100は、検知層tを3mmから5mmの範囲としている。浮遊型検出装置100は、検知電極101の先端が表面fwから約2mmの深さに位置するように、表面fwに接して浮いている。浮遊型検出装置100は、高周波発振回路102、交流ブリッジ回路103、スイッチング回路104及び定電圧電源回路105を有する。交流ブリッジ回路103には約1MHzの高周波電庄が印加される。交流ブリッジ回路103の一部が3本の電極に並列に接続されている。これにより、検知電極101の周囲の静電容量の変化を交流ブリッジ回路103で検出することができる。
【0005】
浮遊型検出装置100は、表面fwに油oが流入し、流入した油oが検知電極101に接すると、検知電極101と大地Eとの間の静電容量、換言すると検知電極101の周囲の静電容量が大きく変化し、交流ブリッジ回路103のバランスが反転する。交流ブリッジ回路103のバランスが反転したことをスイッチング回路104で検出・増幅し、定電圧電源回路105で電流信号に変え、変換器(図示せず)に信号を送る。浮遊型検出装置100は、油を検出しないとき、高い電流信号(約14mAのDC)を出力し、油を検出したとき、低い電流信号(約4mAのDC)を出力する。
【0006】
このような、浮遊型検出装置100は、1年に1回の頻度で、作動確認試験を行っている。作動確認試験は、非特許文献1の「8−3.実液テスト」の欄の「(1)フロート近くに容器を持込み、水を張ってエポラームCを浮かべ、油を容器内に注いで検知したときの油層を測定する。」との記載に基づいて行われる。具体的には、作動確認試験は、図11及び以下に示す手順で行われる。
【0007】
先ず、透明な容器110に、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の液体wを蓄え、その容器110に浮遊型検出装置100を浮かせる。
【0008】
次に、検査員は検査用油入容器120に入っている油oを容器110に少しずつ注入し、表面fwに形成される油膜の厚さを徐々に増やしていく。浮遊型検出装置100は油入機器から漏れた油を検出しなければならないので、検査用油入容器120に入っている油oはタービン油のような油入機器に用いられる油を用いる。
【0009】
次に、検査員は、例えば、定電圧電源回路105から出力される電流信号を監視する。検査員は、浮遊型検出装置100が油を検出したときの油膜の厚さを測定し、その油膜の厚さと検知層とを対比する。
【0010】
そして、検査員は、容器110に注入された油を廃液用容器に回収する。
【0011】
以上の作動確認試験は、1つの浮遊型検出装置100について、3回以上行われ、その総合判断により、浮遊型検出装置100の合否判定を行う。
【非特許文献1】旭化成テクノシステム株式会社発行、油漏れ検知器エポラームC:CSi−3005(静電容量式)取扱説明書、第7版改訂1.7、22p(2006年5月19日現在、同一の情報がアドレスhttp://www.asahi−kasei.co.jp/ats/pdf/epo−inst.pdfにも公開されている。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
浮遊型検出装置100の合否判定のために、作動確認試験を行う毎に、容器110に油oを注入する注入作業や油oを廃液用容器に回収する回収作業を行わなければならないので、作動確認試験で用いた油oの廃液処理の負担が発生する。
【0013】
作動確認試験では、容器110に油を注入しているだけであるので、油膜の厚さを増やすことは簡単であるが、油膜の厚さを薄くすることは簡単ではない。したがって、油を注入する作業は、慎重に行う必要があり、作動確認試験の試験時間が長いので、簡単に作動確認試験を行うことができるとは言い難い。
【0014】
本発明の目的は、簡単に作動確認試験を行うことができる浮遊型検出装置の検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するため、発明者は、油の量を一定に保った状態において、油膜の厚さが油膜の表面積に反比例することに鑑みて、以下の発明をした。
【0016】
(1) 油膜の厚さを検出する浮遊型検出装置の検査装置であって、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる液体貯蔵部であって前記液体の表面に油によって形成された油膜の表面積が所定面積になるように前記油を所定の貯蔵範囲に貯蔵する液体貯蔵部と、前記貯蔵範囲を広げたり狭めたりする貯蔵範囲変更手段とを備えた浮遊型検出装置の検査装置。
【0017】
(1)に記載の発明によれば、検査装置は、浮遊型検出装置によって、液体の表面に浮遊させた状態で油の表面積を広げたり狭くしたりすることができる。換言すると漸次増径内周面において貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油の表面積に応じて油膜の厚さが変化する。これにより、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0018】
(2) 前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる液体槽と、前記液体槽の内部に上下方向に移動可能に配置された内部容器とを有し、前記貯蔵範囲変更手段は、前記内部容器を上下動させる移動装置を有し、前記内部容器は、上方口及び下方口がそれぞれ前記液体に浸されない非浸水部及び前記液体に浸される浸水部に解放する貫通路を備え、前記貫通路は、前記貫通路の一方から他方に向かうにつれて前記貫通路の内周面の内径が大きくなる漸次増径内周面を有し、前記漸次増径内周面は、前記液体のうち前記下方口から入り込んだ液体に前記浮遊型検出装置を浮遊させることができる大きさを有し、前記漸次増径内周面と前記下方口から入り込んだ液体の表面とは共同して前記油を前記所定の貯蔵範囲に貯蔵する、(1)に記載の検査装置。
【0019】
(2)に記載の発明によれば、内部容器の漸次増径内周面に油を貯蔵するので、内部容器を移動装置によって上下動させることにより、漸次増径内周面において貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0020】
(3) 前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる液体槽と、前記液体槽の内部に相対的移動不能に配置された内部容器とを有し、前記貯蔵範囲変更手段は前記液体槽に前記液体を注入したり吐出したりするポンプを有し、前記内部容器は、上方口及び下方口がそれぞれ前記液体に浸されない非浸水部及び前記液体に浸される浸水部に解放する貫通路を備え、前記貫通路は、前記貫通路の一方から他方に向かうにつれて前記貫通路の内周面の内径が大きくなる漸次増径内周面を有し、前記漸次増径内周面は、前記液体のうち前記下方口から入り込んだ液体に前記浮遊型検出装置を浮遊させることができる大きさを有し、前記漸次増径内周面と前記下方口から入り込んだ液体の表面とは共同して前記油を前記所定の貯蔵範囲に貯蔵する、(1)に記載の検査装置。
【0021】
(3)に記載の発明によれば、内部容器の漸次増径内周面に油を貯蔵するので、ポンプによって液体槽に液体を注入したり吐出したりすることにより、漸次増径内周面において貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0022】
(4) 前記下方口には、前記油を通さないボールチェッキバルブが設けられている(2)又は(3)に記載の浮遊型検出装置の検査装置。
【0023】
(4)に記載の発明によれば、漸次増径内周面と下方口から入り込んだ液体の表面とが共同して所定の貯蔵範囲に貯蔵した油を下方口から流れでないようにすることができる。
【0024】
(5) 前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる貫通路であって前記液体に浸されない非浸水部と前記液体に浸される浸水部とが形成される貫通路を有する外部容器を有し、前記貯蔵範囲変更手段は前記貫通路に前記液体を注入させ又は前記貫通路から前記液体を排出させる液体供給手段を備え、前記貫通路の内周面は、前記貫通路の一方から他方に向かうにつれて前記貫通路の内径が大きくなる漸次増径内周面を有し、前記漸次増径内周面における内周面と前記液体供給手段によって供給された液体の表面とは共同して油を蓄えることができる、(1)に記載の検査装置。
【0025】
(5)に記載の発明によれば、液体供給手段は貫通路に液体を注入させ又は貫通路から液体を排出させるので、貫通路の漸次増径内周面に油を貯蔵し、かつ、漸次増径内周面において貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0026】
(6) 前記漸次増径内周面には上下方向における距離を測る目盛が付されている(2)から(5)のいずれかに記載の浮遊型検出装置の検査装置。
【0027】
(6)に記載の発明によれば、油膜は、漸次増径内周面に接して形成されるので、油膜の厚さを正確に計ることができる。
【0028】
(7) 前記漸次増径内周面は漏斗形状を有する(2)から(6)のいずれかに記載の浮遊型検出装置の検査装置。
【0029】
(8) 前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる凹部であって互いに平行に対向する側面を有する凹部を備える液体槽と、前記液体の表面近傍を2分割しながら前記側面をスライドするように前記液体槽の内部に配置されたスライド板とを含み、かつ、前記液体の表面に形成された油膜の表面積が所定面積になるように、前記側面と前記スライド板とによって前記油を所定の貯蔵範囲に貯蔵し、前記貯蔵範囲変更手段は、前記スライド板と前記凹部の側面との間から前記油が漏れないように前記側面に沿って摺動する摺動部を有する(1)に記載の検査装置。
【0030】
(8)に記載の発明によれば、液体槽の側面とスライド板とにより形成された貯蔵範囲に油を貯蔵するので、スライド板を側面に沿って摺動させることにより、貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0031】
(9) 前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる凹部であって互いに平行に対向する側面を有する凹部を備える液体槽と、前記側面を水密的にスライドするように前記液体槽の内部に配置されたスライド板とを有し、前記液体の表面に形成された油膜の表面積が所定面積になるように、前記側面と前記スライド板とによって前記油を所定の貯蔵範囲に貯蔵し、前記貯蔵範囲変更手段は、スライド板と前記凹部の側面との間から前記油及び前記液体が漏れないように前記側面に沿って摺動させる移動装置を有する(1)に記載の検査装置。
【0032】
(9)に記載の発明によれば、スライド板が移動装置によってスライド板と凹部の側面との間から油及び液体が漏れないように側面に沿って摺動することにより、貯蔵範囲を広くしたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、検査装置は、浮遊型検出装置を液体の表面に浮遊させた状態で油膜の表面積を広くしたり狭くしたりすることができる。換言すると漸次増径内周面において貯蔵範囲を広くしたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の表面積に応じて油膜の厚さを変化させることができる。これにより、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0035】
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態における浮遊型検出装置100の検査装置10を示す模式図である。
【0036】
図1に示すように、浮遊型検出装置100を検査する検査装置10は、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる液体貯蔵部30を備える。液体貯蔵部30は、液体wの表面に形成された油膜foの表面積が所定面積になるように、油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。検査装置10は、さらに、貯蔵範囲を広げたり狭めたりする貯蔵範囲変更手段50を備える。
【0037】
液体貯蔵部30は、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる液体槽20と、液体槽20の内部に上下方向に移動可能に配置された内部容器40とを有する。液体wとしては、水を挙げることができる。
【0038】
液体槽20は例えば直方体の外形を有する。液体槽20は凹部21を有する。凹部21は、上方から内部容器40及び浮遊型検出装置100を入れることができる大きさの開口22を有する。凹部21の底部23の近傍には、凹部21に蓄えられた液体wを排出するためのパイプ24が設けられている。パイプ24の先端には、弁24aが設けられている。液体槽20は透明プラスチックのような透明材料で形成されていることが好ましい。
【0039】
内部容器40は、上方口41及び下方口42を有する貫通路46を備える。貫通路46は、貫通路46の一方から他方に向かうにつれて貫通路46の内周面の内径が大きくなる漸次増径内周面45を有している。漸次増径内周面45は、液体wのうち下方口42から入り込んだ液体に浮遊型検出装置100を浮遊させることができる大きさを有する。本実施例では、漸次増径内周面45は、貫通路46の下方から上方に向かうにつれて貫通路46の内周面の内径が大きくなる。
【0040】
漸次増径内周面45は、漸次増径内周面45内において、表面fwの水位の変化に従って液面積が暫時変化するように、漏斗形状を有する。また、漸次増径内周面45には上下方向における距離を測る目盛(図示せず)が付されている。
【0041】
下方口42には、後述するように、漸次増径内周面45に注入された油oが下方口42から凹部21ひいてはパイプ24から外に流出しないように、水を通すが油oを通さないボールチェッキバルブ43が設けられている。
【0042】
貯蔵範囲変更手段50は、凹部21の内部において、内部容器40を上下動させる移動装置60を有する。
【0043】
移動装置60は、上下方向に伸びる複数の雄ネジ61と、それぞれが各雄ネジ61の一端を回転可能に指示する複数の回転軸受62と、それぞれが各雄ネジ61の他端に相対的回転不能に組み付けられた複数のタイミングプーリ63と、複数の雄ネジ61の1つの他端に相対的回転不能に組み付けられたハンドル64と、複数のタイミングプーリ63に架けられたタイミングベルト65とを備える。回転軸受62は底部23に組み付けられている。
【0044】
複数の雄ネジ61は、内部容器40の上方口41の周囲から外周に向けて延在するフランジ47に形成された雌ネジ44に螺合している。したがって、移動装置60は、ハンドル64が時計方向又は反時計方向に回転することにより、内部容器40を上下動するように内部容器40を保持する。
【0045】
以上の検査装置10は、例えば、以下に示す手順に従って用いる。
【0046】
先ず、検査員は、弁24aが閉まっていることを確認する。
【0047】
次に、ハンドル64を回転させて、このときの内部容器40の上部と液体槽20の底部との間の距離が寸法h1になるように、内部容器40の下方口42を凹部21の底部23に接近させる。これにより、内部容器40は、下方口42と底部23との間に液体wが下方口42から流入することができる隙間cが形成されるように、凹部21に配置される。
【0048】
次に、液体槽20の凹部21に液体wを注ぎ込む。液体wは、検査が終わった液体wを排水ピットにそのまま戻すことができるように、検査しようとしている浮遊型検出装置100が設置されていた排水ピットに溜まっている排水から採取することが好ましい。
【0049】
液体wが注ぎ込まれるにつれて、液体wの表面fwが上昇し、下方口42からボールチェッキバルブ43を通って貫通路46に入り込む。液体wは、液体wの表面fwが漸次増径内周面45の上部近傍に位置するまで、注ぎ込まれる。これにより、貫通路46ひいては漸次増径内周面45に、液体wに浸されない非浸水部Aと液体wに浸される浸水部Bとが形成される。また、貫通路46の上方口41及び下方口42は、それぞれ、液体wに浸されない非浸水部A及び液体wに浸される浸水部Bに解放する。
【0050】
次に、検査員は、浮遊型検出装置100を漸次増径内周面45の液体wに浮遊させる。また、検査員は、浮遊型検出装置100が油を検出するように、浮遊した浮遊型検出装置100を作動させる。これにより、浮遊型検出装置100は、液体wの表面fwに所定量の油oが蓄えられて、所定の厚さの油膜foが形成されたことを検出することができる状態になる。浮遊型検出装置100が油膜foを検出したか否かの判断は、浮遊型検出装置100から出力される電流信号を測定することにより行われる。
【0051】
次に、検査員は、上方口41から貫通路46ひいては漸次増径内周面45の内部に、油膜foの厚さt1が浮遊型検出装置100の検知層t(図10参照)より薄くなる量の油oを注入する。このときの油oは、表面積a1の油膜foを形成する。つまり、漸次増径内周面45と下方口42から入り込んだ液体wの表面fwとが共同して油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。
【0052】
なお、油oは、予め少量の試験用油を検査装置1に設けられた油保管容器に準備しておき、浮遊型検出装置100の作動試験の終了後、他の電気所のような設備に設置されている浮遊型検出装置の作動試験に使用できるように油保管容器内に再び保管したり、若干の水分を含んだ試験用油として回収したりすることが好ましい。
【0053】
所定量の油oを注入すると、漸次増径内周面45内に厚さt1の油膜foが形成される。このとき、厚さt1は検知層tよりも薄いので、浮遊型検出装置100は、油膜foを検出することができず、高い電流信号を出力する。
【0054】
次に、図2に示すように、検査員は、このときの内部容器40の上部と液体槽20の底部との間の距離が寸法h2になるように、ハンドル64をゆっくり回転させる。これにより、内部容器40の非浸水部Aの範囲が広くなり、かつ、浸水部Bの範囲が狭くなる。これにともなって、漸次増径内周面45において、漸次増径内周面45内にある液体wの表面fwの位置が下がり、油oは、表面積a1より狭い表面積a2の油膜foを形成する。すなわち、内部容器40が上下動しても、油oの体積は変化しないので、油膜foの表面積が狭くなるにつれて、油膜foの厚さt2は厚くなる。換言すると油膜foの表面積と油膜foの厚さは反比例の関係を有する。
【0055】
さらに、内部容器40を上昇させると、やがて、油膜foの厚さt2は、浮遊型検出装置100の検知層tに達し、浮遊型検出装置100は低い電流信号を出力する。
【0056】
そして、検査員は、低い電流信号を出力したときの油膜foの厚さt2を測定し、浮遊型検出装置100の合否を判断する。
【0057】
すなわち、検査装置10は、油oを追加したり抜き取ったりすることなく、ハンドル64を回転させるだけで、浮遊型検出装置100を液体wの表面に浮遊させた状態で油膜foの表面積を広くしたり(表面積a1)狭くしたり(表面積a2)することができる。換言すると漸次増径内周面45において貯蔵範囲を広くしたり狭くしたりすることができる。このため、油膜foの表面積に応じて油膜foの厚さを変化させることができる。これにより、作動確認試験を行っている最中に、油oを追加したり、油oを抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間を短縮させることができる。
【0058】
図3及び図4は本発明の第2の実施形態における浮遊型検出装置100の検査装置10Aを示す模式図である。
【0059】
図3に示すように、検査装置10Aは、液体貯蔵部30Aと、貯蔵範囲変更手段50Aとを備える。
【0060】
液体貯蔵部30Aは、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる液体槽20Aと、液体槽20Aの凹部21の内部に相対的移動不能に配置された内部容器40Aとを有する。
【0061】
検査装置10Aの貯蔵範囲変更手段50は、液体槽に液体wを注入したり吐出したりするポンプ26を有する。
【0062】
内部容器40Aは、上方口41及び下方口42がそれぞれ液体wに浸されない非浸水部A及び液体wに浸される浸水部Bに解放する貫通路46を備える。
【0063】
パイプ24の一端は凹部21の底部23の近傍に開口するように設けられている。パイプ24の他端は、ポンプ26が液体wを注入したり吐出したりすることができるように、例えば排水ピット240に溜まっている排水230の中に設けられている。ポンプ26は、パイプ24の両端の間に設けられている。これにより、ポンプ26の作動に従って液体槽20A内の液体wの水位すなわち寸法h3を増減させることができる。
【0064】
内部容器40Aは、固定手段70によって、液体槽20Aの凹部21の内部に相対的移動不能に配置されている。具体的には、固定手段70は、上下方向に伸びる複数の柱71と、それぞれが各柱71の一端に相対的移動に組み付けられる複数の固定部72を備える。複数の固定部72は凹部21の底部23に相対的移動不能に組み付けられている。内部容器40Aはフランジ47を有する。フランジ47は、それぞれが複数の柱71の他端に相対的移動不能に嵌合する複数の嵌合部48を有する。したがって、柱71は嵌合部48を介して内部容器40Aを支持する。
【0065】
以上の検査装置10Aは、例えば、以下に示す手順に従って用いる。
【0066】
先ず、検査員は、パイプ24の他端を例えば排水ピット240に溜まっている排水230の中に入れる。
【0067】
次に、検査員は、ポンプ26を作動させて、排水ピット240に溜まっている排水230を液体wとして凹部21の内部に汲み上げる。凹部21の内部に汲み上げられた液体wは、下方口42からボールチェッキバルブ43を通って貫通路46に入り込む。これにより、貫通路46ひいては漸次増径内周面45に、液体wに浸されない非浸水部Aと液体wに浸される浸水部Bとが形成される。また、貫通路46の上方口41及び下方口42は、それぞれ、液体wに浸されない非浸水部A及び液体wに浸される浸水部Bに解放する。
【0068】
次に、検査員は、液体wの表面fwと凹部21の底部23との間の距離が寸法h3になると、ポンプ26の作動を一端停止させる。これにより、液体wの表面fwは、漸次増径内周面45の上部の近傍に位置する。漸次増径内周面45の内径は下方に向かうにつれて小さくなるので、液体wの表面fwは狭くなる。
【0069】
次に、検査員は、浮遊型検出装置100を漸次増径内周面45の液体wに浮遊させる。また、検査員は、浮遊型検出装置100が油を検出するように、浮遊した浮遊型検出装置100を作動させる。
【0070】
次に、検査員は、上方口41から貫通路46ひいては漸次増径内周面45の内部に、油膜foの厚さt3が浮遊型検出装置100の検知層tより薄くなる量の油oを注入する。これにより、漸次増径内周面45と下方口42から入り込んだ液体wの表面fwとが共同して油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。
【0071】
所定量の油oを注入すると、漸次増径内周面45内に厚さt3の油膜foが形成される。このとき、厚さt3は検知層tよりも薄いので、浮遊型検出装置100は、油膜foを検出することができず、高い電流信号を出力する。
【0072】
次に、図4に示すように、検査員は、このときの内部容器40の上部と凹部21の底部23との間の距離が寸法h4になるように、液体wを排出させるべく、ポンプ26をゆっくり作動させる。これにより、内部容器40の非浸水部Aの範囲が広くなり、かつ、浸水部Bの範囲が狭くなる。これにともなって、漸次増径内周面45において、漸次増径内周面45内にある液体wの表面fwの位置が下がり、油oは、より狭い表面積の油膜foを形成する。
【0073】
すなわち、液体wの水位が上下動しても油oの体積は変化しないので、油膜foの表面積が狭くなるにつれて、油膜foの厚さt4は厚くなる。
【0074】
さらに、液体wの水位を下げさせると、やがて、油膜foの厚さt4は、浮遊型検出装置100の検知層tに達し、浮遊型検出装置100は低い電流信号を出力する。
【0075】
そして、検査員は、低い電流信号を出力したときの油膜foの厚さt4を測定し、浮遊型検出装置100の合否を判断する。
【0076】
すなわち、検査装置10Aは、油oを追加したり抜き取ったりすることなく、ポンプ26を作動させるだけで、浮遊型検出装置100を液体wの表面に浮遊させた状態で油膜foの表面積を広くしたり狭くしたりすることができる。換言すると漸次増径内周面45において貯蔵範囲を広くしたり狭くしたりすることができる。このため、油膜foの表面積に応じて油膜foの厚さを変化させることができる。これにより、作動確認試験を行っている最中に、油oを追加したり、油oを抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間を短縮させることができる。
【0077】
図5及び図6は本発明の第3の実施形態における浮遊型検出装置100の検査装置10Bを示す模式図である。
【0078】
図5に示すように、検査装置10Bは、液体貯蔵部30Bと、貯蔵範囲変更手段50Bとを備える。
【0079】
液体貯蔵部30Bは、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる貫通路86を有する外部容器80を備える。貫通路86には、液体wに浸されない非浸水部Aと液体wに浸される浸水部Bとが形成される。
【0080】
具体的には、外部容器80は、この内部に形成された貫通路86を有する。貫通路86は、非浸水部Aに形成される上方口81と浸水部Bに形成される下方口82を有する。
【0081】
貯蔵範囲変更手段50Bは、貫通路86に液体wを注入させる注入ポンプ87及び貫通路86から液体wを排出させる排水弁89を備えている。注入ポンプ87及び排水弁89は液体供給手段として作用する。
【0082】
上方口81には、注入ポンプ87によって汲み上げられた液体wの注入パイプ88の先端が貫通路86の内部に向くにように配置されている。したがって、注入ポンプ87が作動すると、液体wが貫通路86内に注入するので、液体貯蔵部30B内の液体wの水位を上げさせることができる。
【0083】
下方口82は排水弁89に接続されている。したがって、排水弁89を作動すると、液体wが貫通路86内から排出されるので、液体貯蔵部30B内の液体wの水位を下げさせることができる。また、下方口82には油を通さないボールチェッキバルブ43が配置されている。
【0084】
貫通路86の内周面は、貫通路86の一方から他方に向かうにつれて貫通路86の内径が大きくなる漸次増径内周面85を有している。本実施例では、漸次増径内周面85は、貫通路86の下方から上方に向かうにつれて貫通路86の内径が大きくなる。
【0085】
以上の検査装置10Bは、例えば、以下に示す手順に従って用いる。
【0086】
先ず、検査員は、排水弁89が閉じていることを確認する。また、注入パイプ88の端部を例えば排水ピット240に溜まっている排水230の中に入れる。
【0087】
次に、検査員は、注入ポンプ87を作動させて、排水ピット240に溜まっている排水230を液体wとして貫通路86の内部に汲み上げる。貫通路86の内部に汲み上げられた液体wは、貫通路86ひいては漸次増径内周面85に、液体wに浸されない非浸水部Aと液体wに浸される浸水部Bとが形成される。また、貫通路86の上方口81及び下方口82は、それぞれ、液体wに浸されない非浸水部A及び液体wに浸される浸水部Bに解放する。
【0088】
次に、検査員は、液体wの表面fwと外部容器80の底部との間の距離が寸法h5になると、注入ポンプ87の作動を停止させる。これにより、液体wの表面fwは、漸次増径内周面85の上部の近傍に位置する。漸次増径内周面85の内径は下方に向かうにつれて小さくなるので、液体wの表面fwは狭くなる。
【0089】
次に、検査員は、浮遊型検出装置100を漸次増径内周面45の液体wに浮遊させる。また、検査員は、浮遊型検出装置100が油を検出するように、浮遊した浮遊型検出装置100を作動させる。
【0090】
次に、検査員は、上方口81から貫通路86ひいては漸次増径内周面85の内部に、油膜foの厚さt5が浮遊型検出装置100の検知層tより薄くなる量の油oを注入する。これにより、漸次増径内周面85と注入ポンプ87によって注入された液体wの表面fwとは共同して油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。
【0091】
所定量の油oを注入すると、漸次増径内周面85内に厚さt5の油膜foが形成される。このとき、厚さt5は検知層tよりも薄いので、浮遊型検出装置100は、油膜foを検出することができず、高い電流信号を出力する。
【0092】
次に、図6に示すように、検査員は、液体wの表面fwと外部容器80の底部との間の距離が寸法h6になるように、液体wを排出させるべく、排水弁89をゆっくり開放させる。これにより、貫通路86ひいては漸次増径内周面85の非浸水部Aの範囲が広くなり、かつ、浸水部Bの範囲が狭くなる。これにともなって、漸次増径内周面85において、漸次増径内周面85内にある液体wの表面fwの位置が下がり、油oは、より狭い表面積の油膜foを形成する。
【0093】
すなわち、液体wの水位が上下動しても油oの体積は変化しないので、油膜foの表面積が狭くなるにつれて、油膜foの厚さt6は厚くなる。
【0094】
さらに、液体wの水位を下げさせると、やがて、油膜foの厚さt6は、浮遊型検出装置100の検知層tに達し、浮遊型検出装置100は低い電流信号を出力する。
【0095】
そして、検査員は、低い電流信号を出力したときの油膜foの厚さt6を測定し、浮遊型検出装置100の合否を判断する。
【0096】
注入ポンプ87は貫通路に液体を注入させ、排水弁89は貫通路86から液体wを排出させることができるので、貫通路86の漸次増径内周面85に油oを貯蔵し、かつ、漸次増径内周面85において貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油oの厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0097】
図7は本発明の第4の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【0098】
検査装置10Cは、液体貯蔵部30Cと、貯蔵範囲変更手段50Cとを備える。
【0099】
液体貯蔵部30Cは液体槽20Cを有する。液体槽20Cは、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる凹部21を有する。凹部21は、互いに平行に対向する一対の側面21a、21aを有する。液体貯蔵部30Cは、さらに、液体wの表面近傍を領域A1と領域A2とに2分割しながら側面21a,21aをスライドするように液体槽20Cの内部に配置されたスライド板92を含む。液体貯蔵部30Cは、液体wの表面fwに形成された油膜foの表面積が所定面積になるように、側面21a、21aとスライド板92とによって油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。
【0100】
液体槽20Cは、透明なプラスチックで形成されていることが好ましい。また、液体槽20Cには、垂直方向に等間隔の目盛29aと水平方向に等間隔の目盛29bとが形成されていることが好ましい。
【0101】
貯蔵範囲変更手段50Cは、スライド板92と凹部21の側面21a,21aとの間から油oが漏れないように側面21a、21aに沿って摺動する摺動部91を有する。貯蔵範囲変更手段50Cは、さらに、油oが漏れないように、スライド板92と摺動部91との間に形成されたパッキン97を有する。
【0102】
スライド板92には、開閉機構90が形成されている。開閉機構90は、スライド板92の下端部の近傍に形成されたゲート93と、ゲート93を塞ぐ蓋部95と、蓋部95を上下方向に摺動させるアーム94と、アーム94に形成された取手96とを有する。
【0103】
以上の検査装置10Cは、例えば、以下に示す手順に従って用いる。
【0104】
先ず、検査員は、弁24aが閉まっていることを確認する。
【0105】
次に、検査員は、液体槽20Cの凹部21に液体wを注ぎ込む。スライド板92には、ゲート93が形成されているから、凹部21に注ぎ込まれた液体wはゲート93を介して領域A1と領域A2とに流れ込む。検査員は、液体wを所定量だけ凹部21に注ぎ込む。
【0106】
次に、検査員は、浮遊型検出装置100を領域A1に浮遊させる。また、検査員は、浮遊型検出装置100が油を検出するように、浮遊させた浮遊型検出装置100を作動させる。これにより、浮遊型検出装置100は、領域A1において液体wの表面fwに所定量の油oが蓄えられて、所定の厚さの油膜foが形成されたことを検出することができる状態になる。浮遊型検出装置100が油膜foを検出したか否かの判断は、浮遊型検出装置100から出力される電流信号を測定することにより行われる。
【0107】
次に、検査員は、スライド板92を、浮遊型検出装置100が浮遊可能な範囲において、領域A1が最大になるように、浮遊型検出装置100から離れる方向にスライドさせる。
【0108】
次に、検査員は、領域A1に、油膜foの厚さt1が浮遊型検出装置100の検知層tより薄くなる量の油oを注入する。このときの油oは、領域A1を上方から見た表面積の油膜foを形成する。つまり、凹部21の側面21aの一部とスライド板92と液体wの表面fwとが共同して油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。
【0109】
ここで、所定量の油oを注入すると、貯蔵範囲である領域Xに所定の厚さの油膜foが形成される。このときの厚さは検知層tよりも薄いので、浮遊型検出装置100は、油膜foを検出することができず、高い電流信号を出力する。
【0110】
次に、検査員は、蓋部95がゲート93からスライドするように、取手96を引いて、領域A1と領域A2とをゲート93を介して接続させる。
【0111】
次に、検査員は、スライド板92を浮遊型検出装置100に近寄る方向にスライドさせる。このとき、ゲート93は、開口しているので、領域A1にある液体wがゲート93を介して領域A2に入り込む。よって、領域A1の水位と領域A2の水位とは殆ど変化しない。
【0112】
しかし、上方から見た領域A1の表面積は、狭くなるので、スライド板92が浮遊型検出装置100に近づくにつれて油膜foの厚さは厚くなる。すなわち、スライド板92がスライドしても、油oの体積は変化しないので、油膜foの表面積が狭くなるにつれて、油膜foの厚さは厚くなる。
【0113】
さらに、スライド板92を浮遊型検出装置100に近づけると、やがて、油膜foの厚さは、浮遊型検出装置100の検知層tに達し、浮遊型検出装置100は低い電流信号を出力する。
【0114】
そして、検査員は、低い電流信号を出力したときの油膜foの厚さを目盛29aを利用して測定し、浮遊型検出装置100の合否を判断する。
【0115】
液体槽20Cの側面21aとスライド板92とにより形成された貯蔵範囲ひいては領域Xに油oを貯蔵するので、スライド板92を側面21aに沿って摺動させることにより、領域Xひいては貯蔵範囲を広げたり狭くしたりすることができる。このため、油oの厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0116】
図8は本発明の第5の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【0117】
浮遊型検出装置100の検査装置10Dは、液体槽20Dと液体貯蔵部30Dとを備える。
【0118】
液体貯蔵部30Dは液体槽20Dを備える。液体槽20Dは、浮遊型検出装置100を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体wを蓄えることができる凹部21を有する。凹部21は、平行に対向する側面21a、21aを有する。液体貯蔵部30Dは、側面21a、21aを水密的にスライドするように液体槽20Dの内部に配置されたスライド板92aを有する。液体貯蔵部30Dは、液体wの表面fwに形成された油膜foの表面積が所定面積になるように、側面21a、21aとスライド板92aとによって油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する。
【0119】
貯蔵範囲変更手段50Dは、スライド板92aと凹部21の側面21aとの間から油o及び液体wが漏れないように、スライド板92aを側面21aに沿って摺動させる移動装置60Dを有する。
【0120】
移動装置60Dは、水平方向に伸びる複数の雄ネジ61aと、それぞれが各雄ネジ61の一端に相対的回転可能に組み付けられた複数の回転軸受62aと、それぞれが各雄ネジ61aの他端に相対的回転不能に組み付けられた複数のタイミングプーリ63aと、複数のタイミングプーリ63aに架けられたタイミングベルト65aと、複数の雄ネジ61aの1つを回転させるハンドル64aと、それぞれが各雄ネジ61aに螺合する複数の雌ネジ66aとを有する。複数の回転軸受62aは、スライド板92aに組み付けられている。複数の雌ネジ66aは凹部の側壁に組み付けられている。
【0121】
したがって、スライド板92aは、ハンドル64aを回転させることによって、側面21aに沿って摺動する。
【0122】
以上の検査装置10Dは、例えば以下の手順で用いられる。
【0123】
先ず、検査員は、弁24aが閉まっていることを確認する。
【0124】
次に、検査員は、ハンドル64aを回転させて、スライド板92aを弁24aから離れる方向にスライドさせる。これにより、スライド板92aによって2分割された凹部21の2つの領域のうち弁24aのある側の領域Yに液体wを注ぎ込む。スライド板92aは、凹部21の側面21aに水密的にスライドするように凹部21の内部に配置されているので、領域Yに注ぎ込まれた液体wは領域Zに流れ込んでこない。検査員は、液体wを所定量だけ領域Yに注ぎ込む。
【0125】
次に、検査員は、浮遊型検出装置100を領域Yに浮遊させる。また、検査員は、浮遊型検出装置100が油を検出するように、浮遊させた浮遊型検出装置100を作動させる。これにより、浮遊型検出装置100は、領域Yにおいて液体wの表面fwに所定量の油oが蓄えられて、所定の厚さの油膜foが形成されたことを検出することができる状態になる。
【0126】
次に、検査員は、領域Yに、油膜foの厚さt1が浮遊型検出装置100の検知層tより薄くなる量の油oを注入する。このときの油oは、領域Yを上方から見た表面積の油膜foを形成する。つまり、凹部21の側面21aの一部とスライド板92aと液体wの表面fwとが共同して油oを所定の貯蔵範囲に貯蔵する貯蔵範囲を形成する。
【0127】
ここで、所定量の油oを注入すると、貯蔵範囲である領域Yに所定の厚さの油膜foが形成される。このときの厚さは検知層tよりも薄いので、浮遊型検出装置100は、油膜foを検出することができず、高い電流信号を出力する。
【0128】
次に、検査員は、スライド板92aを浮遊型検出装置100に近寄る方向にスライドさせるべく、ハンドル64aを回転させる。このとき、スライド板92aには、ゲートのような開口が形成されていないで、領域Yにある液体wが領域Zに入り込むことはない。よって、領域Yの水位は、スライド板92aの摺動によって、高くなる。
【0129】
しかし、上方から見た領域Yの表面積は、狭くなるので、スライド板92aが浮遊型検出装置100に近づくにつれて油膜foの厚さは厚くなる。
【0130】
さらに、スライド板92aを浮遊型検出装置100に近づけると、やがて、油膜foの厚さは、浮遊型検出装置100の検知層tに達し、浮遊型検出装置100は低い電流信号を出力する。
【0131】
そして、検査員は、低い電流信号を出力したときの油膜foの厚さを目盛29aを利用して測定し、浮遊型検出装置100の合否を判断する。
【0132】
スライド板92aが移動装置60Dによってスライド板92aと凹部21の側面21aとの間から油o及び液体wが漏れないように側面21aに沿って摺動することにより、貯蔵範囲を広くしたり狭くしたりすることができる。このため、油膜の厚さを変更させることができるので、作動確認試験を行っている最中に、油を追加したり、油を抜き取ったりする作業をしなくてすむので、作動確認試験の試験時間が短縮する。
【0133】
なお、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【図2】図1に続く検査装置の状態を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【図4】図3に続く検査装置の状態を示す模式図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【図6】図5に続く検査装置の状態を示す模式図である。
【図7】本発明の第4の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【図8】本発明の第5の実施形態における浮遊型検出装置の検査装置を示す模式図である。
【図9】浮遊型検出装置が設置されている設備を示す模式図である。
【図10】図9に示す浮遊型検出装置の電気回路図である。
【図11】図9に示す浮遊型検出装置の検査方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0135】
A 非浸水部
B 浸水部
A1、A2、X、Y、Z 領域
fo 油膜
fw 液体の表面
o 油
w 液体
10、10A、10B、10C、10D 検査装置
20、20A、20C、20D 液体槽
21 凹部
21a 凹部の側面
22 開口
23 底部
24 パイプ
24a 弁
26 ポンプ
29a、29b 目盛
30、30A、30B、30C、30D 液体貯蔵部
40、40A 内部容器
41、81 上方口
42、82 下方口
43 ボールチェッキバルブ
44 雌ネジ
45、85 漸次増径内周面
46 貫通路
47 フランジ
48 嵌合部
50、50A、50B、50C、50D 貯蔵範囲変更手段
60、60D 移動装置
61、61a 雄ネジ
62、62a 回転軸受
63、63a タイミングプーリ
64、64a ハンドル
65、65a タイミングベルト
66a 雌ネジ
70 固定手段
71 柱
72 固定部
80 外部容器
86 貫通路
87 注入ポンプ
88 注入パイプ
89 排水弁
90 開閉機構
91 摺動部
92、92a スライド板
93 ゲート
94 アーム
95 蓋部
96 取手
97 パッキン
100 浮遊型検出装置
230 排水
240 排水ピット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油膜の厚さを検出する浮遊型検出装置の検査装置であって、
前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる液体貯蔵部であって前記液体の表面に油によって形成された油膜の表面積が所定面積になるように前記油を所定の貯蔵範囲に貯蔵する液体貯蔵部と、
前記貯蔵範囲を広げたり狭めたりする貯蔵範囲変更手段とを備えた浮遊型検出装置の検査装置。
【請求項2】
前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる液体槽と、前記液体槽の内部に上下方向に移動可能に配置された内部容器とを有し、
前記貯蔵範囲変更手段は、前記内部容器を上下動させる移動装置を有し、
前記内部容器は、上方口及び下方口がそれぞれ前記液体に浸されない非浸水部及び前記液体に浸される浸水部に解放する貫通路を備え、
前記貫通路は、前記貫通路の一方から他方に向かうにつれて前記貫通路の内周面の内径が大きくなる漸次増径内周面を有し、
前記漸次増径内周面は、前記液体のうち前記下方口から入り込んだ液体に前記浮遊型検出装置を浮遊させることができる大きさを有し、
前記漸次増径内周面と前記下方口から入り込んだ液体の表面とは共同して前記油を前記所定の貯蔵範囲に貯蔵する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる液体槽と、前記液体槽の内部に相対的移動不能に配置された内部容器とを有し、
前記貯蔵範囲変更手段は前記液体槽に前記液体を注入したり吐出したりするポンプを有し、
前記内部容器は、上方口及び下方口がそれぞれ前記液体に浸されない非浸水部及び前記液体に浸される浸水部に解放する貫通路を備え、
前記貫通路は、前記貫通路の一方から他方に向かうにつれて前記貫通路の内周面の内径が大きくなる漸次増径内周面を有し、
前記漸次増径内周面は、前記液体のうち前記下方口から入り込んだ液体に前記浮遊型検出装置を浮遊させることができる大きさを有し、
前記漸次増径内周面と前記下方口から入り込んだ液体の表面とは共同して前記油を前記所定の貯蔵範囲に貯蔵する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記下方口には、前記油を通さないボールチェッキバルブが設けられている請求項2又は3に記載の浮遊型検出装置の検査装置。
【請求項5】
前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる貫通路であって前記液体に浸されない非浸水部と前記液体に浸される浸水部とが形成される貫通路を有する外部容器を有し、
前記貯蔵範囲変更手段は前記貫通路に前記液体を注入させ又は前記貫通路から前記液体を排出させる液体供給手段を備え、
前記貫通路の内周面は、前記貫通路の一方から他方に向かうにつれて前記貫通路の内径が大きくなる漸次増径内周面を有し、
前記漸次増径内周面における内周面と前記液体供給手段によって供給された液体の表面とは共同して油を蓄えることができる、請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記漸次増径内周面には上下方向における距離を測る目盛が付されている請求項2から5のいずれかに記載の浮遊型検出装置の検査装置。
【請求項7】
前記漸次増径内周面は漏斗形状を有する請求項2から6のいずれかに記載の浮遊型検出装置の検査装置。
【請求項8】
前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる凹部であって互いに平行に対向する側面を有する凹部を備える液体槽と、前記液体の表面近傍を2分割しながら前記側面をスライドするように前記液体槽の内部に配置されたスライド板とを含み、かつ、前記液体の表面に形成された油膜の表面積が所定面積になるように、前記側面と前記スライド板とによって前記油を所定の貯蔵範囲に貯蔵し、
前記貯蔵範囲変更手段は、前記スライド板と前記凹部の側面との間から前記油が漏れないように前記側面に沿って摺動する摺動部を有する請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
前記液体貯蔵部は、前記浮遊型検出装置を浮遊させるために必要な所定量の非油系の液体を蓄えることができる凹部であって互いに平行に対向する側面を有する凹部を備える液体槽と、前記側面を水密的にスライドするように前記液体槽の内部に配置されたスライド板とを有し、前記液体の表面に形成された油膜の表面積が所定面積になるように、前記側面と前記スライド板とによって前記油を所定の貯蔵範囲に貯蔵し、
前記貯蔵範囲変更手段は、スライド板と前記凹部の側面との間から前記油及び前記液体が漏れないように前記側面に沿ってスライド板を摺動させる移動装置を有する請求項1に記載の検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−3024(P2008−3024A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174899(P2006−174899)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】