説明

浴室ユニット

【課題】 保温シートを施工現場において浴槽全体を覆うように被せることができて、浴槽を良好な保温構造にすることのできる浴室ユニットを提供する。
【解決手段】 上面のフランジ部2aに壁パネル3を載置できる浴槽2と、別体の洗い場パン4と、別体のエプロン5とを架台6上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニット1において、少なくともエプロン5側を除く浴槽2の側面と底面を覆うことができる可撓性の保温シート7を、浴槽2と架台6との間に通し、保温シート7を浴槽の裏面上方や洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、ユニット部材の外側全体を可撓性のシート素材で形成した保温袋で包み込む構造の浴室ユニットが存在する。
【特許文献1】実公平3−1568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の浴室ユニットの構造では、保温袋を施工することが困難であり、十分な保温性を確保することが難しくなるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、良好に浴槽を保温構造とすることのできる浴室ユニットを提供せんとするものであり、その請求項1は、上面のフランジ部に壁パネルを載置できる浴槽と、別体の洗い場パンと、別体のエプロンとを架台上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニットにおいて、少なくとも前記エプロン側を除く浴槽側面と浴槽底面を覆うことができる可撓性の保温シートを、前記浴槽と前記架台との間に通し、該保温シートを前記浴槽の裏面上方や前記洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させたことである。
【0005】
また、請求項2は、上面のフランジ部に壁パネルを載置できる浴槽と、別体の洗い場パンと、別体のエプロンとを架台上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニットにおいて、少なくとも前記エプロン側を除く浴槽側面と浴槽底面を覆うことができる可撓性の保温シートを、前記浴槽を設置する架台と架台の設置面との間に通し、該保温シートを前記浴槽の裏面上方や前記洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させたことである。
【0006】
また、請求項3は、前記保温シートで、前記洗い場パン底側に設けられる排水トラップを覆うように構成したことである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浴室ユニットは、上面のフランジ部に壁パネルを載置できる浴槽と、別体の洗い場パンと、別体のエプロンとを架台上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニットにおいて、少なくとも前記エプロン側を除く浴槽側面と浴槽底面を覆うことができる可撓性の保温シートを、前記浴槽と前記架台との間に通し、該保温シートを前記浴槽の裏面上方や前記洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させたことにより、浴室ユニットの施工現場において良好に浴槽全体を覆うように保温シートを被せることができ、浴槽を良好な保温構造にすることができるものとなる。
【0008】
また、上面のフランジ部に壁パネルを載置できる浴槽と、別体の洗い場パンと、別体のエプロンとを架台上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニットにおいて、少なくとも前記エプロン側を除く浴槽側面と浴槽底面を覆うことができる可撓性の保温シートを、前記浴槽を設置する架台と架台の設置面との間に通し、該保温シートを前記浴槽の裏面上方や前記洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させたことにより、2階部分に浴室ユニットを設置する際にも、良好に施工現場で保温シートを施工して浴槽全体を覆うように被せることができ、浴槽を良好な保温構造にすることができるものとなる。
【0009】
また、前記保温シートで、前記洗い場パン底側に設けられる排水トラップを覆うように構成したことにより、排水トラップも良好に保温シートで覆い保温することができ、寒冷地で設定される排水トラップの保温材の代わりに保温シートで良好に覆うことができ、浴槽の保温と排水トラップの保温を兼用することができるものとなる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、浴室ユニットを構成する構成素材の分解斜視構成図である。
浴室ユニット1は、浴槽2と洗い場パン4とエプロン5が3分割されて形成されており、浴槽2は、その上面のフランジ部2aの外周に水切立上片2bが形成されて、この水切立上片2bの内側のフランジ部2a上に壁パネル3を載置できるように構成されている。
【0011】
また、この浴槽2の、例えばフランジ部2aの裏側には、下方側へ突出状に、図3に拡大図で示すように掛止フック2cが設けられており、この掛止フック2cは、水切立上片2bが形成されている3辺に所定間隔で複数設けられたものとなっている。
【0012】
また、洗い場を形成する洗い場パン4は、図4に要部拡大断面構成図で示すように、浴槽2側に凹み状に排水枡4aが形成されており、この排水枡4aの底面には下方へ突出状に排水トラップ4bが取り付けられており、この排水トラップ4bには、浴槽2の底面側から浴槽水を排水する浴槽排水管9が接続されるものであり、また反対側には、排水管10が接続されるものである。
洗い場パン4の裏側の浴槽2側の辺に沿って複数の掛止フック4cが形成されており、また、この掛止フック4cは、排水枡4aの裏側にも複数突出形成されている。
【0013】
このような洗い場パン4と浴槽2とエプロン5は架台6上に載せられて現場で組み付け施工されるものである。
架台6に垂設されている複数の脚部6a,6aをそれぞれ高さ調節して、架台6を所定高さに設置し、この架台6上に、図5に示すように、先ず洗い場パン4を置き、この状態で架台6上に浴槽2を傾けた状態で設置するのであるが、この時に架台6上に予め保温シート7を置き、保温シート7を架台6と浴槽2の底面間に通した状態にしておき、保温シート7の上部を前記浴槽2の複数の掛止フック2c,2c,2cに掛止することができる。
【0014】
即ち、この保温シート7は、エプロン5側を除く浴槽2の側面と浴槽の底面を覆うことができる形状に可撓性のシート素材で形成されたものであり、図1に示すように、浴槽2の底面の下方に配置される底面7aの後方から背面7cが立ち上げ形成され、また側方には側面7d,7dが一体状に立ち上げ形成されてエプロン5側のみが開放され、このエプロン5側の底面7aには、凹み状に凹面7bが一体形成されており、この凹面7bは、排水トラップ4bの下方を覆うことのできる形状に形成されたものである。
【0015】
この保温シート7の背面7cと側面7d,7dの上部および底面7aのエプロン側には、複数の掛止孔7e,7e,7eが形成されており、図2には、この上部の掛止孔7eの拡大図を示す。
また、保温シート7には、掛止孔7e,7e,7eの内側に発泡シール部材(例えばスポンジパッキン等)8が貼着されており、この発泡シール部材8は、背面8cから左右の側面7dに亘り貼着され、さらにエプロン側5で下方側へ向かい、さらにエプロン側の底面7aに亘って内側全周に貼着されたものとなっている。
【0016】
図5のように、浴槽2を傾けた状態で保温シート7の上端側の掛止孔7e,7e,7eを浴槽2の掛止フック2c,2c,2cに掛止させて、保温シート7の上端側を固定することができ、また、保温シート7の下側は、排水枡4aや洗い場パン4の裏側に形成されている掛止フック4c,4c,4cに掛止させて固定することができるものであり、この状態では、保温シート7はエプロン5側を除く浴槽2の側面および底面を覆い、しかも排水トラップ4bも覆うことができるものである。
【0017】
浴槽2の洗い場パン4側にエプロン5を取り付けた後に、図6に示すように、浴槽2を水平状態に架台6上に落とし込んで施工することができ、この状態では、浴槽2の底面が保温シート7を架台6上に挟み付けて、良好に保温シート7を固定状態とすることができるものであり、この状態で保温シート7の内側に設けられている発泡シール部材8が浴槽2の側面等に当接して潰れた状態となり、これにより、発泡シール部材8の内側で保温シート7と浴槽2の外周間に良好な断熱空気層Sが形成されることとなる。
また、排水トラップ4bの回りも良好に保温シート7で覆われて、排水トラップ4bも良好な保温状態とすることができるものである。
なお、図7には、保温シート7で浴槽2および排水トラップ4bを覆った状態の平面図を示す。
【0018】
発泡シール部材8が潰れて保温シート7の内部に良好に断熱空気層Sが形成されることで、保温シート7の内部に空気が侵入することが良好に防がれて、対流による熱の伝導が低減され、良好な保温性能が確保されるものとなる。
なお、保温シート7に防水性能も備えられている場合には、浴槽2に形成されている追い焚き加工の穴や排水トラップ4bからの万が一の漏水を、ある程度保持することが可能となり、漏水による拡大被害の発生を遅延させることができ、定期点検などでの発見で良好に漏水を回避できる可能性が増すこととなる。
【0019】
なお、このように浴槽2と架台6間に保温シート7を挟み込んで設置した後に、図6のように、浴槽2の水切立上片2bの内側に壁パネル3が載置されて壁面が形成されるものである。
このように排水トラップ4bも保温シート7で保温できるような構造では、寒冷地等で設定される排水トラップの保温材の代わりに保温シート7で覆うことができ、浴槽2と排水トラップ4bの保温を兼用することができるものとなる。
【0020】
なお、図8の平面図で示すように、保温シート7で浴槽のみを保温するように構成しても良く、この場合は、排水トラップ4bは保温シート7で覆われることがないため、保温シート7は凹面7bの存在しない単純な形状に設定しておくことができ、また、排水枡4aには掛止フック4cを形成させる必要がない。
【0021】
次に、図9に示すものは、2階部分に浴室ユニットを設置した場合の設置状態図であり、2階部分では、図10に示すように、土台12,12間に掛け渡し状に予め通し架台11が設置されるものであり、この通し架台11は、水平片11aの両端側に吊り下げ片11b,11bが一体形成されたものであり、吊り下げ片11b,11bの両端を土台12にボルト等で固定して、土台12に取り付け固定できるものである。
【0022】
このようにして予め通し架台11を設置しておき、この通し架台11の水平片11a上に、図9に示すように、架台6の脚部6aを載せて、通し架台11上に架台6を設置し、架台6上に浴槽2および洗い場パン4が組み付けられるものである。
図9では、施工時に保温シート7を通し架台の水平片11aの上面に載せておき、架台6を設置する時に、この架台6の脚部6aで保温シート7を通し架台の水平片11aに挟み付けて、保温シート7を固定することができるものである。
なお、その他の構造は、図5および図6の場合と同様なものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】浴室ユニットの構成部材の分解斜視構成図である。
【図2】保温シートに形成された掛止孔の部分の拡大斜視構成図である。
【図3】浴槽の要部拡大構成図である。
【図4】洗い場パンの排水トラップ周辺の拡大縦断面構成図である。
【図5】現場において架台上に浴槽を傾けて設置した状態の作業説明図である。
【図6】浴槽を水平にして架台との間で保温シートを挟み込んだ状態の作業説明図である。
【図7】図6の平面構成図である。
【図8】浴槽のみを保温シートで覆った場合の図7に対応する平面構成図である。
【図9】2階部分に浴室ユニットを施工した状態の施工状態図である。
【図10】2階部分に浴室ユニットを施工する際に予め設置される通し架台の斜視構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 浴室ユニット
2 浴槽
2a フランジ部
2b 水切立上片
2c 掛止フック
3 壁パネル
4 洗い場パン
4a 排水枡
4b 排水トラップ
4c 掛止フック
5 エプロン
6 架台
6a 脚部
7 保温シート
7a 底面
7b 凹面
7c 背面
7d 側面
7e 掛止孔
8 発泡シール部材
11 通し架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面のフランジ部に壁パネルを載置できる浴槽と、別体の洗い場パンと、別体のエプロンとを架台上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニットにおいて、少なくとも前記エプロン側を除く浴槽側面と浴槽底面を覆うことができる可撓性の保温シートを、前記浴槽と前記架台との間に通し、該保温シートを前記浴槽の裏面上方や前記洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させたことを特徴とする浴室ユニット。
【請求項2】
上面のフランジ部に壁パネルを載置できる浴槽と、別体の洗い場パンと、別体のエプロンとを架台上に載せて組み付け施工する構造の浴室ユニットにおいて、少なくとも前記エプロン側を除く浴槽側面と浴槽底面を覆うことができる可撓性の保温シートを、前記浴槽を設置する架台と架台の設置面との間に通し、該保温シートを前記浴槽の裏面上方や前記洗い場パン裏面に設けた掛止手段に掛止させたことを特徴とする浴室ユニット。
【請求項3】
前記保温シートで、前記洗い場パン底側に設けられる排水トラップを覆うように構成した請求項1または請求項2に記載の浴室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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