説明

浴槽の設置構造

【課題】 エプロンの取り付けに邪魔にならない支柱を用いて転倒防止が図れるステップ付き浴槽の設置構造を提供する。
【解決手段】 防水パンの洗い場面と浴槽設置面の境に設けられる凸条の堤防4の真上に浴槽6のステップ6aが位置するように設置されるステップ6a付き浴槽6において、ステップ6aの裏面に支柱8を設け、この支柱8の下端が防水パンの堤防4上に載るように構成し、支柱8は、高さ調整可能にボルト14とナット部材9で構成されており、支柱8の下端と堤防4の上面間には受け部材19が挟み込まれて、この受け部材19のズレがカバー部材17で防止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステップを有する浴槽の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、着座可能なステップを有する浴槽を設置するに際し、ステップの下に高さの高い脚を取り付け、この脚の下端を防水パンの洗い場側に載せた構造が存在する。
【特許文献1】特開2002−112911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の構造では、高さの高い脚を洗い場側に載せているため、洗い場側からエプロンを取り付ける時に邪魔になり、脚を回避するためにエプロンを洗い場の手前側に配置すると、その分、洗い場が狭くなってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、洗い場が狭くなることがなく、良好にステップの部分を補強して、浴槽への出入り時や座った時の転倒防止が図れる浴槽の設置構造を提供せんとするものであり、その請求項1は、防水パンの洗い場面と浴槽設置面の境に設けられる凸条の堤防の真上に浴槽のステップが位置するように設置されるステップ付き浴槽において、前記ステップの裏面に支柱を設け、該支柱の下端が前記堤防の上に載るように構成したことである。
また、請求項2は、前記支柱が、高さ調整可能にボルトとナット部材で構成されていることである。
また、請求項3は、前記ナット部材は、前記ステップの下面に設けられたリブにビス固定できる表側面と、リブを有しないステップの下面にビス固定できる平面状の裏側面を備えていることである。
また、請求項4は、前記支柱の下端と前記堤防上面間に衝撃緩衝用の受け部材を挟み込むとともに、該受け部材のズレを防止し得るカバー部材を前記支柱の下端側に固設したことである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、浴槽のステップの裏面に支柱を設け、支柱の下端が防水パンの堤防の上に載るように構成したことにより、高さの低い支柱でコストを低減させて良好にステップの部分を補強することができ、また、洗い場側からエプロンを取り付ける際にも支柱が邪魔にならず、洗い場を広く確保することができるものとなる。
【0006】
また、支柱が、高さ調整可能にボルトとナット部材で構成されていることにより、浴槽設置後に支柱の高さを調節して、がたつくことなく良好に浴槽を設置できるものとなる。
【0007】
また、ナット部材は、ステップの下面に設けられたリブにビス固定できる表側面と、リブを有しないステップの下面にビス固定できる平面状の裏側面を備えていることにより、ステップの下面にリブが存在する浴槽にも、またリブの存在しない浴槽にも良好に対応させて、ナット部材をステップの下面に固定でき、良好にステップの下面に支柱を取り付けることができるものとなる。
【0008】
また、支柱の下端と堤防上面間に衝撃緩衝用の受け部材を挟み込むとともに、受け部材のズレを防止し得るカバー部材を支柱の下端側に固設したことにより、ステップ上に人が乗った時に受け部材で良好に衝撃を吸収でき、衝撃音の生じない設置状態が得られ、また、カバー部材により受け部材がズレ落ちることを良好に防ぐことができるものとなる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、防水パン上にステップ付き浴槽を設置した状態の平面構成図であり、また図2は、図1の縦断面側面構成図である。
【0010】
防水パン1は、図3の斜視図で示すように、洗い場面2と浴槽設置面3間に、上方へ立ち上げて堤防4が幅方向に一体形成されており、この堤防4の中央側には、さらに上方へ突出した突起5,5が一体形成されている。
【0011】
図1及び図2に示すように、堤防4の上面の突起5,5の部分に支柱8,8を立設し、この支柱8,8で浴槽6のステップ6aの裏面を支持して、浴槽6のステップ6aに座った時等に浴槽が転倒することなく良好に保持されるように構成されており、この支柱8,8は、浴槽のステップ6aの裏面下に設けられて、その下端は堤防4上に載るように設置されている。
なお、浴槽6の着座可能なステップ6aの部分が、設置状態で防水パン1の堤防4の真上に位置するように予め設定されている。
【0012】
なお、図4は、支柱8の部分の拡大縦断面構成図であり、堤防4の洗い場面2側にエプロン7の下端が配置され、エプロン7の取り付け時に支柱8が邪魔になることはなく、そのため洗い場面2を広く確保できるように構成されている。
【0013】
本例では、支柱8は、図6に分解斜視図で示すような部材で構成されており、図5の拡大図で示すように設置されるものである。
なお、図7は、図5の洗い場面2側から見た正面構成図である。
支柱8は、ナット部材9と、ボルト14と、ナット15,16と、カバー部材17と、受け部材19で構成されている。
【0014】
ナット部材9は、本体平面部10の表側面9aに、内側に雌ネジ部11aを形成した雌ネジボス11が一体状に立設されており、また、本体平面部10の前端部には立ち上げ状に立上片12が一体形成されており、この立上片12には、上方が開放された縦長状のビス孔12a,12aが形成されている。
この立上片12と、本体平面部10から立ち上がる複数のリブ13,13,13間には、係入溝Mが直線状に形成されている。
また、本体平面部10の雌ネジボス11の両側には、上下に貫通して長孔状のビス長孔10a,10aが形成されている。
なお、図8は、ナット部材9を裏返した状態の斜視図を示すものである。
【0015】
また、カバー部材17は、上面カバー片17aの洗い場2側に垂下状に前カバー片17bが一体形成されており、反対の後端側には、後カバー片17cが垂下状に一体形成されており、また、両側の側面にも垂下状に側カバー片17d,17dが一体形成されている。また、上面カバー片17aから後カバー片17cに亘り、上下に貫通してボルト14を通すボルト通し長孔18が形成されている。
また、受け部材19は、ゴム等の衝撃緩衝性能を有する素材で形成されており、上面19aの前端側に垂下状に前垂下片19bが一体形成され、また、上面19aの後端側には垂下状に後係止片19cが一体形成されており、この後係止片19cと前垂下片19b間に凹み状に嵌合凹部20が形成されている。
【0016】
なお、図5では、浴槽のステップ6aの裏面に垂下状に補強用のリブ6bが一体形成されている場合であり、この浴槽のリブ6bを、ナット部材9の係入溝M内に差し込んで、リブ6bの洗い場2側にナット部材9の立上片12を当接させて、この状態でビス孔12a,12a内にビス21を差し込んで、ビス21をリブ6bにねじ込むことで、リブ6bにビス21を介してナット部材9を固定することができるものである。
このナット部材9の雌ネジ部11aに対し、下方側からボルト14を螺合させて、ナット15で位置決めすることができ、また、ボルト14の下端の頭部14aとナット16間にカバー部材17を挟み込んで固定することができるものである。
【0017】
なお、受け部材19は、防水パンの堤防4の突起5に嵌合凹部20に係合させて、突起5上に被せて取り付けることができ、さらに、この受け部材19の前後左右をカバー部材17の前カバー片17b,後カバー片17c,側カバー片17d,17dで包囲して、受け部材19のズレを防ぐことができるものである。
【0018】
なお、ナット15を弛めて、ボルト14を雌ネジ部11aに対し螺進退させて高さ調整することができ、浴槽1を設置した後に高さ調整して、浴槽1のがたつきを無くすことができるものである。
この場合、ボルト14の頭部14aが受け部材19に当接状態となり、浴槽6内に入る時とか、ステップ6a上に着座した時等には、受け部材19で衝撃が緩衝されて、音が発生することが良好に防がれるものとなる。
【0019】
本例では、ステップ6aの下面と堤防4の上面間に支柱8が立設されるため、支柱8のボルト14の寸法は短いものであれば良く、短い部材で構成できるためコストを低減させることができ、しかも、強固にステップ6aの下部を補強することができるものとなる。
【0020】
次に、図9及び図10で示すものは、浴槽6のステップ6aの裏面にリブ6bが存在しない場合の設置状態図であり、この場合は、ステップ6aの下面に、予め平板状の補強材22を貼着等の手段により固定しておき、この補強材22の下面に、図8のように、ナット部材9の裏側面9bを上方に向けて固設することができるものである。
【0021】
即ち、ナット部材9の本体平面部10のビス長孔10a,10a内に下方よりビス21,21を入れて、ビス21を補強材22にねじ込んで、ビス21,21を介しナット部材9を固定することができ、このナット部材9の雌ネジ部11aに対し下方よりボルト14を螺合させることができるものである。
この場合も、ボルト14を高さ調整した後に、ナット15で締め付けて、ボルト14の高さを固定することができ、また、ナット16を締め付けてボルトの頭部14aとの間にカバー部材17を固定することができ、カバー部材17で受け部材19を包囲して、受け部材19のズレを良好に防ぐことができるものである。
【0022】
このようにリブ6bを有する浴槽6に対しては、ナット部材9の表側面9aを上向きにして、リブ6bにナット部材9を固定することができ、また、リブ6bが存在しない浴槽6においては、図8のように、ナット部材9の裏側面9bを上向きにして良好に固定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】防水パン上に浴槽を設置した状態の平面構成図である。
【図2】図1の縦断面側面構成図である。
【図3】防水パンの斜視構成図である。
【図4】ステップの下部の拡大縦断面構成図である。
【図5】さらにステップの下部の支柱を拡大した縦断面構成図である。
【図6】支柱の構成部材の分解斜視図である。
【図7】図5のステップの下部の支柱を洗い場側から見た正面構成図である。
【図8】ナット部材の裏側面を上向きにした斜視構成図である。
【図9】リブの存在しない浴槽に支柱を設置した状態の縦断面拡大構成図である。
【図10】図9のステップの下部の支柱を洗い場側から見た正面構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 防水パン
2 洗い場面
3 浴槽設置面
4 堤防
5 突起
6 浴槽
6a ステップ
6b リブ
7 エプロン
8 支柱
9 ナット部材
9a 表側面
9b 裏側面
10 本体平面部
10a ビス長孔
11 雌ネジボス
11a 雌ネジ部
12 立上片
12a ビス孔
13 リブ
14 ボルト
14a 頭部
15,16 ナット
17 カバー部材
17a 上面カバー片
17b 前カバー片
17c 後カバー片
17d 側カバー片
18 ボルト通し長孔
19 受け部材
20 嵌合凹部
21 ビス
22 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水パンの洗い場面と浴槽設置面の境に設けられる凸条の堤防の真上に浴槽のステップが位置するように設置されるステップ付き浴槽において、前記ステップの裏面に支柱を設け、該支柱の下端が前記堤防の上に載るように構成したことを特徴とする浴槽の設置構造。
【請求項2】
前記支柱が、高さ調整可能にボルトとナット部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽の設置構造。
【請求項3】
前記ナット部材は、前記ステップの下面に設けられたリブにビス固定できる表側面と、リブを有しないステップの下面にビス固定できる平面状の裏側面を備えていることを特徴とする請求項2に記載の浴槽の設置構造。
【請求項4】
前記支柱の下端と前記堤防上面間に衝撃緩衝用の受け部材を挟み込むとともに、該受け部材のズレを防止し得るカバー部材を前記支柱の下端側に固設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浴槽の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−6846(P2006−6846A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192168(P2004−192168)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】