説明

浴槽用保温器

【課題】浴槽水に浸漬され浴槽水を加熱・保温する浴槽用保温器において、ヒータが焼き付くことなく、浴槽から直ちに取り出すことができるようにする。
【解決手段】流入開口12と流出開口11を有するケース1内に、浴槽水を加熱するヒータ5と、ヒータ5への通電を入切するフロートスイッチ4と、上面開口の貯水容器6とを設ける。そして、ヒータ5の少なくとも一部を上面開口から貯水容器6内に挿入する。ヒータ5が棒状であって縦向きに取り付けられている場合、ヒータ5の長手方向長さの40%以上を貯水容器6内に挿入するのが好ましい。また、貯水容器6の上面開口の高さ方向位置Hは、フロートスイッチ4が切から入になる水位よりも低い位置とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽水を加熱し保温する浴槽用保温器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣の多様化に伴い入浴時間も多様化している。例えば一つの家庭の中でも親は夜に入浴し、子どもは朝に入浴するということが少なからず行われている。このような場合、浴槽内の夜に張った湯は朝には室温程度にまで冷めているので、朝に入浴する場合には浴槽水を適温まで上昇させる必要がある。浴槽水の温度を上げる一つの手段として高温湯をたし湯することが行われている。しかし、この手段では浴槽水を適温に調節することが困難である上に不経済であり、また入浴が可能となるまでに時間がかかるという問題点がある。またもう一つの手段として浴槽水を追い焚きすることも行われているが、前記と同様に不経済であり入浴できるまでに時間がかかる問題がある。
【0003】
そこで本件出願人は、棒状ヒータを内蔵した浴槽用保温器を提案し、長時間の間隔をおいて入浴する場合にはこの保温器を浴槽湯に浸漬させ、浴槽湯を所定温度に常時保持することを提案した(特許文献1)。この提案技術によれば、棒状ヒータが浴槽湯に完全に浸かるため高い熱効率が得られ経済的であると共に、従来のような適温とするための入浴待機時間がないとう利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-310444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記提案の浴槽用保温器では、棒状ヒータの焼き付きを防止するため、浴槽用保温器を浴槽から取り出す場合には、主電源を切った後、数分間浴槽に漬けた状態のままとし、棒状ヒータの温度の下がるのを待つ必要があった。このため、使用者からは、使い終わったら、浴槽用保温器を浴槽から直ちに取り出したいという強い要望があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ヒータが焼き付くことなく、浴槽から直ちに取り出すことができる浴槽用保温器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係る浴槽用保温器は、浴槽水に浸漬され浴槽水を加熱・保温する浴槽用保温器であって、流入開口と流出開口を有するケース内に、浴槽水を加熱するヒータと、該ヒータへの通電を入切するフロートスイッチと、上面開口の貯水容器とが設けられ、前記ヒータの少なくとも一部が前記上面開口から前記貯水容器内に挿入されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記ヒータが棒状であって縦向きに取り付けられている場合、前記ヒータの長手方向長さの40%以上が前記貯水容器内に挿入されているのが好ましい。
【0009】
また、前記貯水容器の上面開口の高さ方向位置は、前記フロートスイッチが切から入になる水位よりも低い位置とするのが好ましい。
【0010】
さらに、耐熱性及び放熱性などの観点からは、前記貯水容器は金属材料からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る浴槽用保温器では、ヒータの少なくとも一部が貯水容器内に挿入されているので、主電源を切った後、浴槽用保温器を浴槽から直ちに取り出しても、貯水容器内に貯まっている浴槽水によってヒータが冷却され、これによりヒータの焼き付きを防止できる。
【0012】
また、ヒータが棒状であって縦向きに取り付けられている場合、ヒータの長手方向長さの40%以上が貯水容器内に挿入されているようにすると、ヒータの焼き付きがより確実に防止できる。
【0013】
また、貯水容器の上面開口の高さ方向位置を、前記フロートスイッチが切から入になる水位よりも低い位置にすると、浴槽内の水位が異常に低い状態でヒータに通電され続けた場合であっても、貯水容器には浴槽水が貯まっているのでヒータの空焚きが防止される。
【0014】
さらに、貯水容器を金属材料から構成すると耐熱性及び放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る浴槽用保温器の一例を示す正面図および平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】浴槽用保温器を浴槽から取り出した場合の、ヒータ温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る浴槽用保温器について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
本発明に係る浴槽用保温器の一例を示す正面図および平面図を図1に、そして図1のA−A線断面図を図2に示す。図1に示すように、ケース1は略楕円錐形状を有し、上部中央に楕円形の流出開口11が形成され、底面には複数の流入開口12(図2に図示)が形成されている。そして、下端側面には4つの短い脚片13が周方向に等間隔に設けられている。
【0018】
図2において、ケース1の内部空間に、ボックス3がケース内面と余裕のある状態で固定されている。このボックス3内には、サーモスタット(制御部)34とフロートスイッチのスイッチング部35とが設けられている。またボックス3の底面には棒状のヒータ5が縦向きに取り付けられている。サーモスタット34は、浴槽水が一定温度以上に上昇した場合にヒータ5への通電を遮断するよう作動し、スイッチング部35は、後述するフロート4と協動して浴槽水が所定水位以下のときはヒータ5への通電を遮断し、浴槽水が所定水位以上のときにヒータ5に通電するよう作動する。なお、この実施形態においてはフロートスイッチはフロート4とスイッチング部35とからなる。
【0019】
また図2に示すように、ボックス3の下方には、ヒータ5と並ぶようにフロート4が配設されている。フロート4は、ケース1の内底面に取り付けられた円筒状の支持台8に上下方向に移動可能に支持されている。フロート4の上端には軸部41が突設され、その先端にはマグネットM1が固定されている。そして、軸部41は、ボックス3の下面に形成された筒状突部37の中央穴にスライド可能に嵌まっている。フロート4が支持台8上に載っている状態において、マグネットM1と中央穴との間には軸部41が少し上昇できる程度の空間しかないので、筒状突部37の中央穴から軸部41が外れることはない。
【0020】
筒状突部37上のボックス内には、前述のようにスイッチング部35が設けられている。このスイッチング部35は、フロート4のマグネットM1と同極性のマグネットM2を先端に固定した作動片351と、この作動片351をフロート4の軸心を含む垂直面内で揺動可能に取り付けた支持部材352とからなり、支持部材352には、マグネットM1,M2の反発によってフロート4と反対方向に作動片351が移動したとき、通電状態となる接点353が設けられている。
【0021】
また、ケース1の内底面には上面開口の有底円筒状の貯水容器6が取り付けられ、この貯水容器6にヒータ5が、貯水容器6の側壁に接触しないように挿入されている。後述するように、貯水容器6内の浴槽水でヒータ5を効果的に冷却する観点からは、ヒータ5の長手方向長さの40%以上、より好ましくは50%以上を貯水容器6内に挿入するのが望ましい。また、貯水容器6内におけるヒータ5の占める体積割合は50%以下とするのが望ましい。なお、図2に示す浴槽用保温器で使用しているヒータ5は、1本の真っ直ぐな棒状のシーズヒータであるが、棒状体を細長U字状に屈曲したヒータであってもよい。もちろん本発明で使用できるヒータに特に限定はなく従来公知のものが使用できる。
【0022】
また、貯水容器6の上面開口の高さ方向位置Hは、フロートスイッチが「切」から「入」となる水位Fよりも低くされている。これにより、例えば、浴槽の栓が不十分で浴槽水が浴槽から漏れ出し、浴槽水の異常に低い水位で、且つフロートスイッチが「入」状態となる水位が長時間維持された場合であっても、貯水容器6内は必ず浴槽水で満たされているので、ヒータ5が空焚きとなることはない。
【0023】
貯水容器6の内容積は、ヒータ5の熱容量や形状、挿入長さ等から適宜決定すればよい。また、貯水容器6の材質としては金属材料や樹脂材料など従来公知の材料を用いることができるが、耐熱性および放熱性の観点からはステンレス鋼や銅板などの金属材料が望ましい。
【0024】
電源に接続される通電コード7は、ボックス3の上面中央からボックス3内に水密に進入し、所定の端子に接続されている。他方、通電コード先端のソケット71は、漏電遮断器72を備え、また通電コード7の途中には入切スイッチ73が設けられている。
【0025】
このような構造の浴槽用保温器の使用は、例えば浴槽用保温器を浴槽内に設置した後、浴槽に水を供給する。すると、ケース1内に水が徐々に流入し、まず貯水容器6に水が充填される。そして、浴槽内の水位が水位Fを越えると、フロート4が上昇してスイッチング部35がONとなり、ヒータ5に通電される。ヒータ5に通電されると、ケース1内の水は暖められて上昇し、ボックス3とケース1内面との間隙を通過して流出開口11から流出する。一方、ケース1の流入開口12からは浴槽水が新たに流入し、ヒータ5で暖められて上昇する。ケース1内でこのような浴槽水の流れが連続して生じ、浴槽内では保温器を中心として大きな対流が生じる。これによって、浴槽水の温度は全体に均一となり、局部的に温度が異なることはない。そして、所定量の水が浴槽に供給され終わると、サーモスタット34によって浴槽水は一定温度に維持される。なお、浴槽内に水を張った後に浴槽用保温器を浴槽内に浸漬させてももちろん構わない。
【0026】
浴槽から浴槽用保温器を取り出す場合には、従来はヒータ5の焼き付きを防止するために、入切スイッチ73を切とした後数分間経ってから取り出す必要があったが、本発明の浴槽用保温器では、浴槽用保温器を浴槽から取り出す際に貯水容器6に浴槽水が貯留され、この貯留水によってヒータ5が冷却されヒータ5の焼き付きが防止されるので、使用後に浴槽用保温器を浴槽から直ちに取り出すことができる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
図2に示した構造の浴槽用保温器を水を張った浴槽に浸漬し、ヒータの温度が安定したところで浴槽から取り出し、ヒータ温度の経時変化を測定した。図3に、ヒータ温度の経時変化を示す。
【0028】
(比較例1)
図2に示した構造で貯水容器を設けなかった浴槽用保温器を用いて、実施例1と同様にしてヒータ温度の経時変化を測定した。図3に、ヒータ温度の経時変化を合わせて示す。
【0029】
図3から明らかなように、実施例1の浴槽用保温器では、入切スイッチを切った後浴槽から直ちに取り出しても、ヒータ温度の上昇はわずかでありヒータの焼き付きは生じなかった。これに対し、貯水容器を設けていない比較例1の浴槽用保温器では、浴槽から直ちに取り出すとヒータ温度は約280℃まで急上昇しヒータの焼き付きが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の浴槽用保温器は、浴槽から取り出す際に貯水容器に浴槽水が貯留され、この貯留水によってヒータが冷却されヒータの焼き付きが防止されるので、使用後に浴槽用保温器を浴槽から直ちに取り出すことができ有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 ケース
3 ボックス
4 フロート(フロートスイッチ)
5 ヒータ
6 貯水容器
8 支持台
11 流出開口
12 流入開口
34 サーモスタット(制御部)
35 スイッチング部(フロートスイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽水に浸漬され浴槽水を加熱・保温する浴槽用保温器であって、
流入開口と流出開口を有するケース内に、浴槽水を加熱するヒータと、該ヒータへの通電を入切するフロートスイッチと、上面開口の貯水容器とが設けられ、
前記ヒータの少なくとも一部が前記上面開口から前記貯水容器内に挿入されていることを特徴とする浴槽用保温器。
【請求項2】
前記ヒータが棒状であって縦向きに取り付けられ、前記ヒータの長手方向長さの40%以上が前記貯水容器内に挿入されている請求項記載の浴槽用保温器。
【請求項3】
前記貯水容器の上面開口の高さ方向位置が、前記フロートスイッチが切から入になる水位よりも低い位置である請求項1又は2記載の浴槽用保温器。
【請求項4】
前記貯水容器が金属材料からなる請求項1〜3のいずれかに記載の浴槽用保温器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53781(P2013−53781A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191238(P2011−191238)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(596062510)
【Fターム(参考)】