説明

浴槽

【課題】浴槽表面を親水表面部と撥水表面部から構成し、浴槽内の水はけ性を改善し、すべり防止を付与すること。
【解決手段】浴槽10の略水平面に親水塗料の親水塗膜23と、略垂直面に撥水塗料の撥水塗膜26を形成し、親水塗膜23に樹脂ビーズ24と酸化アルミ粒子25を混入することで、浴槽内の全面の水はけ性を向上するとともに特に浴槽の水平面をすべり難くし安全に入浴ができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滑り防止と水はけ性を改善した浴槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浴槽は、浴槽底面に滑り防止部材を設けて滑り止めを構成したものであった(例えば、特開文献1参照)。
【0003】
図8(a)は特開文献1に記載された従来の浴槽の断面を示すものであり、(b)は(a)のA部の詳細断面を示すものである。図に示すように、浴槽1の底面2に凹部3を設け、凹部3に別体の滑り防止部材4を着脱可能に嵌合してある。滑り防止部材4は陶磁製タイルの裏にラバーなどのクッションシートを貼着してあり、凹部3にはめ込んだ状態で浴槽1の底面より突出し、使用者があしをのせても突起により、滑りを防止する構成である。
【特許文献1】特開平7−241250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成は浴槽底面に凹部を設け、着脱可能の滑り防止部材を嵌合している構成なので、滑り防止部材の突起以外では、滑り止め効果がなく、数多くの滑り防止部材を設置する必要があった。また、使用者の足の裏全体が滑り防止部材の上におかれる可能性は低く、滑り防止としては不十分であった。さらに、着脱可能としているため形状が複雑になり、使用者の清掃性が低下するとともに、水はけ性については改善されるものではなかった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、浴槽表面を親水部と撥水部から構成し、浴槽内の水はけ性を改善し、すべり防止を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の浴槽は、浴槽表面の少なくとも一部に撥水表面部と親水表面部を備えたものである。
【0007】
これによって、水が流れやすい表面は撥水表面部とし、水がより流れやすくするとともに、水が流れにくい表面および使用者が手や足で体重を支える表面を親水表面部とし、水はけ性を改善しつつ、使用者が浴槽使用時にすべりにくく安全な入浴ができるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浴槽は、水が流れやすい表面は撥水表面部とし、水がより流れやすくするとともに、水が流れにくい表面および使用者が手や足で体重を支える表面を親水表面部とし、水はけ性を改善しつつ、使用者が浴槽使用時にすべりにくく安全な入浴ができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は浴槽表面の少なくとも一部を撥水表面部と親水表面部を備えた浴槽とすることにより、水が流れやすい表面は撥水表面部とし、水がより流れやすくするとともに、水が流れにくい表面および使用者が手や足で体重を支える表面を親水表面部とし、水はけ性を改善しつつ、使用者が浴槽使用時にすべりにくく安全な入浴ができるものである。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の浴槽の少なくとも略水平面を親水表面部とすることにより、特に水が流れ難く滞留しやすく、しかも使用者が手や足で体重を支える水平面を親水表面部とすることで、水が滞留することを抑制し、使用者が浴槽使用時にすべり難く安全な入浴ができるものである。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の浴槽の撥水表面部もしくは親水表面部の少なくとも一方を浴槽基材で形成し、他方を塗装処理で形成することにより、一方の特性を有する材料で浴槽を成型し、他方の特性の部分は後加工で容易に任意の場所を撥水もしくは親水化が可能となり、安価に水はけ性を改善しつつ、使用者が浴槽使用時にすべりにくく安全に入浴可能な浴槽を提供することができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の浴槽の親水表面部を親水塗装処理で形成し、塗料に粒子状物質を混入することにより、親水表面部である親水塗装面に粒子状物質の大きさの凹凸ができ、摩擦抵抗がより大きくなり、使用者が浴槽使用時によりすべりにくく安全に入浴可能な浴槽を提供することができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第4の発明の粒子状物質を異なる粒子径範囲からなる少なくとも2種類の粒子状物質を混入することにより、親水表面部である親水塗装面に粒子状物質の2種類の粒子状物質による大きさによるのバランスのよい凹凸ができ、摩擦抵抗がより大きくなり、使用者が浴槽使用時によりすべりにくく安全に入浴可能な浴槽を提供することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における浴槽を用いた浴室の部分斜視図を示すものである。
【0016】
図1において、浴槽10は、浴室11の洗い場12から浴槽10の上沿面13までが所定の高さになるように設置される。浴槽10の上沿面13の高さは洗い場12から350〜500mm程度が好ましいが、最適な範囲は400〜450mmであり、システムバスではほぼこの範囲に設計されている。浴槽10への入浴補助として、壁14に握りバー15や、浴槽10の長手側面16にハンドグリップ17が取り付けられている。
【0017】
浴槽10の短手断面図を図2に示す。浴槽10は強化プラスチック(以下、FRPと略す)を主として構成されており、上沿面13および底面18は略水平面であり、0〜10°の勾配を有しており、水がたまらないように設計されている。また、肘かけ面19は肘が滑らないように同様に略水平面であり、水がたまらないように0〜10°の勾配を有している。
【0018】
浴槽10の長手断面図を図3に示す。図3において、ステップ面20は半身浴時に使用者が腰掛けたり、浴槽への出入りの際に足場として利用し、脚や着座時に滑らないように同様に略水平面で構成され、水がたまらないように0〜10°の勾配を有している。
【0019】
浴槽10の略垂直面は、長手側面16、短手側面21、外縁面22などであり、略水平面とは曲面で自然に接合している。
【0020】
略水平面である上沿面13、底面18、肘かけ面19、ステップ面20の表面には、それぞれ親水塗料が塗布され、親水塗膜23で親水表面部を形成している。
【0021】
親水塗膜23の部分断面図を図4に示す。親水塗料は、ウレタン系の主材と硬化剤からなる2液混合タイプの塗料基材23aに、添加剤として粒子状物質である粒径が500μm以下の樹脂ビーズ24と、粒子状物質である粒子径が0.1〜500nmの酸化アルミ(Al)粒子25が混入されている。
【0022】
樹脂ビーズ24と酸化アルミ粒子25は塗料基材23aに対して1〜50重量%の割合で混合されている。樹脂ビーズ24は粒径が500μm以下であり、膜厚が1〜200μmの親水塗膜23において、親水塗膜23の表面に適度の凹凸を形成しており、使用者の滑り止めとして機能するとともに、粒子状物質である樹脂ビーズ24と酸化アルミ粒子25は塗料基材23aより硬度が高く、親水塗膜23の表面を硬いものでこすられた場合でも親水塗膜23全体が磨耗しないように塗膜保護の役割も兼ねている。
【0023】
酸化アルミ粒子25は、粒子径が0.1〜500nmの大きさであるため、塗料中に分散されており、樹脂ビーズ24の表面を含め、樹脂ビーズ24が形成する凹凸とは異なる大きさの凹凸を形成し、更に摩擦抵抗を大きくすることができるので、入浴時に使用者が頻繁に荷重をかける上沿面13、底面18、肘かけ面19、ステップ面20の表面をすべりにくく安全性を向上できるともに、酸化アルミ粒子25の親水性能による親水性向上が図れ、水が流れにくい低勾配でも水溜りがなく水はけ性能も向上し、水による摩擦係数低減を回避でき、安全性が向上するとともに乾燥性能も向上する。ここでの親水性は水の接触角で40°以下が望ましく、30°以下であればより効果は大きいが、浴槽形状などによりその最適範囲は変わってくる。
【0024】
また、酸化アルミ粒子25は、樹脂ビーズ24や親水塗膜23を構成する塗料基材23aの樹脂よりも硬度が高く、親水塗膜23内に十分に分散されているため、耐磨耗性を向上するという効果も有している。
【0025】
略垂直面である、長手側面16、短手側面21、外縁面22などは浴槽基材の表面に撥水塗装による撥水塗膜26で撥水表面部を形成している、撥水塗料はフッ素塗料を使用している。したがって、撥水塗膜26が形成されている略垂直面では表面張力が低下し、ほとんど水滴が残らずスケールなどの汚れがつきにくく、仮についたとしても、簡単な水拭き程度で汚れを落とすことができる。特に汚れがつきやすい喫水線がくる長手側面16、短手側面21はその効果が顕著に現れる。ここでの撥水性は水の接触角で60°以上が望ましく、80°以上であればより効果は大きいが、浴槽形状などによりその最適範囲は変わってくる。
【0026】
なお、本実施の形態では、塗料をウレタン系塗料としているが、アクリル系やエポキシ系の2液混合タイプ塗料でもかまわないし、塗料の密着性能さえ問題なければ、1液性の塗料を用いても同様の効果が得られる。
【0027】
また、粒子状物質として樹脂ビーズを用いているが、ガラスビーズや球形状ではない物質でも塗膜の厚みとの関係さえ満たしていれば、同様の効果が得られる。
【0028】
また、2種類の粒子状物質の大きさは本実施の形態の組み合わせでは最適であるが、粒子材質などによりそれぞれ最適範囲が異なる。
【0029】
さらに、酸化アルミ粒子以外の粒子でもnmオーダーの粒子径の同様に親水化性を有する酸化ケイ素などを組み合わせれば、凹凸形状の最適化により同様の効果を得ることができるし、nmオーダーの粒子径の無機物の粒子状物質を混入することで、耐磨耗性を向上するという同様の効果を得ることができる。
【0030】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態の浴槽27の短手断面図を図5に、長手断面図を図6に示す。本実施の形態において、第1の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0031】
浴槽27の浴槽基材28はFRPであり、樹脂内に撥水添加剤を混入し、樹脂の特性を撥水性としている。フッ素塗料などによる表面塗装に比べると表面張力の低下レベルは若干劣るが、一般のFRPと比較すると表面張力が低下したものである。同レベルの表面張力の材料であれば、撥水添加剤を混入する必要はなく、例えば、浴槽27の浴槽基材28の表面部を好適な表面張力のアクリルシート等を真空成型したもので構成しても構わない。
【0032】
親水表面部は親水塗料による親水塗膜29で形成してあり、その範囲は、図5、図6に示す浴槽27の略水平面部であり、塗装範囲以外は、浴槽27の浴槽基材28が表面に出て撥水面部を形成している。
【0033】
図7は、親水塗膜29の部分拡大断面図であり、第1の実施の形態と相違する点は、塗料基材29aに混入する粒子状物質を実施の形態1の樹脂ビーズから中空部30aを有するガラスビーズ30に変更した点である。本構成により樹脂ビーズ24よりもその硬度が上昇するため、さらに耐磨耗性が向上するとともに、内部に中空部30aを有するので空気層を有し熱容量が大きく断熱性も有しているので、入浴時にいったん暖められた空気により浴槽の親水塗膜29の表面温度が維持されやすく、乾燥時間を短縮できる。
【0034】
その他は、第1の実施の形態と同様の構成であり、同じ効果を有する。
【0035】
また、本実施の形態において、親水塗料には粒子状物質を異なる大きさの範囲で2種類添加しているが、同等の範囲でも滑り防止の相乗効果は少ないが、同様の効果を得ることができる。また、いずれか一方の粒子状物質でも親水性が確保されれば、相乗効果は得られないが、滑りにくく、水はけ性がよいとともに、耐磨耗性を向上した塗膜を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる浴槽は、水が流れやすい表面は撥水表面部とし、水がより流れやすくするとともに、水が流れにくい表面および使用者が手や足で体重を支える表面を親水表面部とし、水はけ性を改善しつつ、使用者が浴槽使用時にすべりにくく安全な入浴ができるものであり、キッチン、洗面所等の同様の形状を有する水周り設備の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシステムバスの斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における浴槽の短手断面図
【図3】本発明の実施の形態1における浴槽の長手断面図
【図4】本発明の実施の形態1における浴槽の塗膜部分断面図
【図5】本発明の実施の形態2における浴槽の短手断面図
【図6】本発明の実施の形態2における浴槽の長手断面図
【図7】本発明の実施の形態2における浴槽の塗膜部分断面図
【図8】(a)従来の浴槽の長手断面図(b)A部詳細断面図
【符号の説明】
【0038】
10、27 浴槽
28 浴槽基材(撥水表面部)
23、29 親水塗膜(親水表面部)
24 樹脂ビーズ(粒子状物質)
25 酸化アルミ粒子(粒子状物質)
26 撥水塗膜(撥水表面部)
30 ガラスビーズ(粒子状物質)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽表面の少なくとも一部に撥水表面部と親水表面部を備えた浴槽。
【請求項2】
少なくとも略水平面を親水表面部とした請求項1に記載の浴槽。
【請求項3】
撥水表面部もしくは親水表面部の少なくとも一方を浴槽基材で形成し、他方を塗装処理で形成した請求項1または2に記載の浴槽。
【請求項4】
親水表面部を親水塗装処理で形成し、塗料に粒子状物質を混入した請求項1〜3のいずれか1項に記載の浴槽。
【請求項5】
粒子状物質を異なる粒子径範囲からなる少なくとも2種類の粒子状物質から構成した請求項4に記載の浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−68279(P2006−68279A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255221(P2004−255221)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】