説明

浴槽

【課題】浴槽への出入りが容易とし、かつ、利用者が浴槽へ入った後の給湯時間を短縮することの可能な浴槽を得る。
【解決手段】洗い場側の側壁部16Fには、出入り用開口部22が構成され、出入り用開口部22の片側辺には、扉部材20が取り付けられている。扉部材20が仕切位置P2に配置された状態では、入浴空間R1は、仕切空間R2と開放空間R3とに仕切られる。また、扉部材20が仕切位置P2に配置された状態では、止水部材30によって扉部材20と突出枠部32との間が密閉され、仕切空間R2に湯溜め可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴槽に係り、特に、浴槽への出入りが容易な浴槽ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴に用いられる浴槽として、従来から様々な形態が提案されている。例えば、特許文献1に記載の浴槽では、高齢者や肢体不自由者等の入浴に好適なように、浴槽のエプロン側に開閉自在な扉を設けると共に、利用者が浴槽内に入った後に、温水シャワーを噴霧することにより給湯の間の寒さ対策を行っている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、浴槽内への給湯時間は短縮されず、利用者は長時間、給湯の完了を待たなければならない。また、温水シャワー用の装置が大がかりとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−271185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、浴槽への出入りが容易で、かつ、利用者が浴槽へ入った後の給湯時間を短縮することの可能な浴槽を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の浴槽は、湯溜め可能な入浴空間の構成された浴槽本体と、前記浴槽本体の洗い場側の壁部を所定の深さまで切り欠いた出入り用開口部と、前記出入り用開口部を閉鎖する閉鎖位置と、前記出入り用開口部を開放すると共に前記入浴空間の一部に湯溜め可能な仕切空間を構成する仕切位置と、の間を移動可能な扉部材と、を備えている。
【0007】
本発明の浴槽では、まず、扉部材を仕切位置へ配置して、仕切空間へ給湯する。仕切空間への湯溜めが完了した後、出入り用開口部を通じて利用者が浴槽内へ入る。そして、扉部材を仕切位置から閉鎖位置へ移動させて、出入り用開口部を閉鎖する。これにより、仕切空間から入浴空間全体へ湯が流出し、所定の水位となる。その後、追加で給湯を行い、通常の入浴時の水位を得る。
【0008】
本発明の浴槽によれば、利用者の入浴前に予め有る程度の湯を仕切空間に溜めておくことができるので、浴槽へ入った後の給湯時間を短縮することができる。また、扉部材が仕切位置に配置されている時には、出入り用開口部は開放されているので、利用者は、容易に浴槽内へ入ることができる。
【0009】
請求項2に記載の浴槽は、前記扉部材の周縁部に、前記閉鎖位置に配置された際には前記出入り用開口部を密閉し、前記仕切位置に配置された際には前記仕切空間を密閉する止水部材が設けられていること、を特徴とする。
【0010】
このように、止水部材を設けておくことにより、入浴空間内及び仕切空間内の湯の漏出を、確実に防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の浴槽は、前記仕切空間の前記仕切位置側には、前記浴槽本体の内壁から内側に突出した突出枠部が形成され、前記扉部材の周縁部が前記突出枠部に密着されて前記仕切空間を構成すること、を特徴とする。
【0012】
このように、突出枠部を形成することにより、扉部材を密着させて容易に仕切空間を構成することができる。
【0013】
請求項4に記載の浴槽は、前記仕切空間は、仕切空間内底部が、前記入浴空間の底部よりも高く、前記扉部材の底縁部が前記仕切空間内床部と前記入浴空間の底部との間の段差部に密着されて前記仕切空間を構成すること、を特徴とする。
【0014】
このように、前記仕切空間の仕切空間内底部を高くすることにより、入浴空間の底部との間に段差部が構成されるので、この段差部に扉部材を密着させて容易に仕切空間を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成としたので、浴槽への出入りが容易とし、かつ、利用者が浴槽へ入った後の給湯時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る浴槽で、扉部材が取り外された状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る浴槽で、扉部材が仕切位置に配置された状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る浴槽で、扉部材が仕切位置に配置された状態を示す上面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る浴槽で、扉部材が閉鎖位置に配置された状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る浴槽で、扉部材が閉鎖位置に配置された状態を示す上面図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例に係る浴槽で、扉部材が取り外された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、本発明の実施形態に浴槽10が示されている。浴槽10は、浴槽本体12、及び、扉部材20を備えている。
【0018】
浴槽本体12は、底部14、及び、側壁部16を備えている。底部14は浴槽本体12の底面を構成し、側壁部16は浴槽本体12の側面を構成している。底部14及び側壁部16に囲まれた内側に、湯溜め可能な入浴空間R1が構成されている。
【0019】
洗い場側の側壁部16Fには、出入り用開口部22が構成されている。出入り用開口部22は、側壁部16Fの上縁から所定の深さD1まで切り欠かれて構成されている。出入り用開口部22の周面には、入浴空間R1側の開口が大きくなるように厚み方向に段差部21が構成されている。
【0020】
出入り用開口部22の片側辺には、扉部材20が取り付けられている。扉部材20は、図1に示すように、略四角板形状とされ、取付部24及び閉鎖壁部26を有している。取付部24は、出入り用開口部22の片側辺に沿ったピン25を有しており、ピン25を側壁部16Fの内側の係合部(不図示)に係合させることにより、ピン25の軸周りに回転可能に取り付けられている。
【0021】
閉鎖壁部26は、取付部24と一体的に構成され、出入り用開口部22の段差部21に対応するように、段差部27が構成され、外凸部28を有している。閉鎖壁部26の段差部27が出入り用開口部22の段差部21に係合しつつ外凸部28が外側に露出して側壁部16Fと面一となり、閉鎖壁部26が出入り用開口部22に嵌め込み可能な構造とされている。閉鎖壁部26が出入り用開口部22に嵌め込まれた状態で、浴槽本体12の外側に配置される面を外側面20Aとし、内側に配置される面を内側面20Bとする。
【0022】
扉部材20の段差部27から内側面20Bにかけと、取付部24側の端面から内面にかけてには、止水部材30が設けられており、図4及び図5に示すように、扉部材20が出入り用開口部22に嵌め込まれた位置(以下この位置を「閉鎖位置P1」という)に配置された際に、出入り用開口部22を閉鎖して入浴空間R1が密閉されるようになっている。また、閉鎖壁部26の取付部24と逆側の側端面には、出入り用開口部22の段差部21構成された係合凹部23に係合可能な係合凸部29が構成されている。係合凸部29と係合凹部23とが係合されることにより、扉部材20が閉鎖位置P1に保持される。扉部材20が閉鎖位置P1に配置された状態では、入浴空間R1は、止水部材30によって扉部材20と側壁部16との間が密閉されている。
【0023】
浴槽本体12には、突出枠部32が形成されている。突出枠部32は、扉部材20のピン25が取り付けられた位置に沿って、側壁部16及び底部14の内壁から内側へ突出するように略U字状に形成されている。突出枠部32は、扉部材20の内側面20Bの外周部分が密着可能な位置まで入浴空間R1の内側へ突出されている。
【0024】
扉部材20が入浴空間R1の内側へ回動して閉鎖壁部26の内側面20Bが突出枠部32に密着された状態で、係合凸部29が配置される位置の側壁部16内側には、係合凹部34が構成されている。係合凸部29と係合凹部34とが係合されることにより、扉部材20が仕切位置P2に保持される。
【0025】
扉部材20が仕切位置P2に配置された状態では、入浴空間R1は、仕切空間R2と開放空間R3とに仕切られる。また、扉部材20が仕切位置P2に配置された状態では、止水部材30によって扉部材20と突出枠部32との間が密閉され、仕切空間R2に湯溜め可能となる。
【0026】
次に、浴槽10の利用について説明する。
浴槽10を使用する際には、まず、図2及び図3に示すように、扉部材20を仕切位置P1に配置し、仕切空間R2を構成する。そして、仕切空間R2に給湯を行う。仕切空間R2への給湯が完了した後、利用者は出入り用開口部22を通って、浴槽本体12内に入る。そして、図4及び図5に示すように、扉部材20を閉鎖位置P1に配置する。これにより、仕切空間R2の湯が入浴空間R1全体に流れ込む。その後、入浴空間R1に追加の給湯を行って、所望の湯量とする。
【0027】
本実施形態によれば、利用者の入浴前に、仕切空間R2にある程度の湯を溜めておくことができるので、利用者の入浴後の給湯時間を短縮することができる。また、仕切空間R2に湯を溜めている時には、扉部材20は、仕切位置P2に配置されており、出入り用開口部22は開放されているので、利用者は、出入り用開口部22を通って容易に浴槽本体12内へ入ることができる。
【0028】
また、突出枠部32が設けられているので、利用者は、突出枠部32を手すりとして用いることもできる。
【0029】
なお、本実施形態では、閉鎖壁材26に止水部材30を設けた例について説明したが、止水部材30は、出入り用開口部22の段差部21、及び、突出枠部32に設けてもよい。
【0030】
また、本実施形態では、突出枠部32を設け、閉鎖壁材26と突出枠部32とを密着させて、仕切空間R2を構成したが、図6に示すように、突出枠部32の下側部分については、仕切空間R2を構成する側の底部14Aを高くして段差14Dを構成し、段差14Dに閉鎖壁材26を密着させて、仕切空間R2を構成してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 浴槽
12 浴槽本体
16F 側壁部
20 扉部材
22 出入り用開口部
26 閉鎖壁部
27 段差部
30 止水部材
32 突出枠部
P1 閉鎖位置
R1 入浴空間
R2 仕切空間
R3 開放空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯溜め可能な入浴空間の構成された浴槽本体と、
前記浴槽本体の洗い場側の壁部を所定の深さまで切り欠いた出入り用開口部と、
前記出入り用開口部を閉鎖する閉鎖位置と、前記出入り用開口部を開放すると共に前記入浴空間の一部に湯溜め可能な仕切空間を構成する仕切位置と、の間を移動可能な扉部材と、
を備えた浴槽。
【請求項2】
前記扉部材の周縁部には、前記閉鎖位置に配置された際には前記出入り用開口部を密閉し、前記仕切位置に配置された際には前記仕切空間を密閉する止水部材が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の浴槽。
【請求項3】
前記仕切空間の前記仕切位置側には、前記浴槽本体の内壁から内側に突出した突出枠部が形成され、前記扉部材の周縁部が前記突出枠部に密着されて前記仕切空間を構成すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の浴槽。
【請求項4】
前記仕切空間は、仕切空間内底部が、前記入浴空間の底部よりも高く、前記扉部材の底縁部が前記仕切空間内床部と前記入浴空間の底部との間の段差部に密着されて前記仕切空間を構成すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−142963(P2011−142963A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4355(P2010−4355)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】