説明

消臭剤添着活性炭の製造方法

【課題】粒状活性炭への消臭剤の添着量がコントロールでき、粒状活性炭に消臭剤を均一に添着することができ、しかも乾燥効率が向上する消臭剤添着活性炭の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の製造方法は、予め加熱された容器(混合タンク21)内に粒状活性炭を導入し、導入された粒状活性炭を螺旋状のスクリュウ型攪拌機235で攪拌しながら消臭剤の水溶液を噴霧し、消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、消臭剤の水溶液が噴霧された粒状活性炭を熱風乾燥により乾燥し、消臭剤の添着した粒状活性炭を製造する消臭剤添着活性炭の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤を添着した粒状活性炭の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、臭気の原因物質を化学吸着する薬剤を粒状活性炭に添着した消臭剤添着活性炭が、空気清浄フィルターの臭気吸収物質として利用されることが知られている。
【0003】
消臭剤を添着した活性炭の製造方法として、例えば、特許文献1には、吸着材を薬剤溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬後の吸着材を、薬剤溶液に浸漬させた状態で加熱して、蒸発乾固させる加熱工程とを有する添着方法が記載されている。
【0004】
また、消臭剤を添着した活性炭の製造方法として、例えば、特許文献2には、フッ素樹脂のエマルジョンを水に分散させてフッ素樹脂分散液に調製する工程と、活性炭を攪拌しながらスプレーを用いてフッ素樹脂分散液を噴霧し混合攪拌してフッ素樹脂添着活性炭とする工程とを有する脱臭活性炭の製法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−265953号公報
【特許文献2】特開2006−61804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術では、吸着材を薬剤溶液に浸漬するため、乾燥効率が悪く、しかも吸着材への薬剤の添着量をコントロールすることが難しかった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、単にスプレーを用いて活性炭にフッ素樹脂分散液を噴霧しているため、フッ素樹脂分散液の量が少量の場合には活性炭へのフッ素樹脂の添着量にムラが生じ、添着量のムラを生じないように、活性炭の飽和吸収量以上のフッ素樹脂分散液を噴霧する場合には、特許文献1に記載の技術と同様に、乾燥効率が悪く、活性炭へのフッ素樹脂の添着量をコントロールすることが難しかった。
【0008】
したがって本発明の課題は、上述した従来技術が有する欠点を解消し得る、消臭剤添着活性炭の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、予め加熱された容器内に粒状活性炭を導入し、導入された該粒状活性炭を螺旋状のスクリュウ型攪拌機で攪拌しながら消臭剤の水溶液を噴霧し、該消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、該消臭剤の水溶液が噴霧された前記粒状活性炭を熱風乾燥により乾燥し、前記消臭剤の添着した前記粒状活性炭を製造する消臭剤添着活性炭の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、粒状活性炭への消臭剤の添着量がコントロールでき、粒状活性炭に消臭剤を均一に添着することができ、しかも乾燥効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の製造方法を実施するために用いられる好ましい加工装置を示す概略図である。
【図2】図2(a)ないし(b)は、図1に示す加工装置を用いた消臭剤添着活性炭の製造工程を示す図である。
【図3】図3は、実施例1及び比較例1の製造方法における、消臭剤の粒状活性炭への均一添着性と乾燥効率との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の消臭剤添着活性炭の製造方法をその好ましい実施態様に基づき、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の消臭剤添着活性炭の製造方法に用いられる加工装置(以下、単に加工装置10ともいう。)の一実施形態を模式的に示したものである。図1に示す加工装置10は、加熱混合部20及び乾燥部30に大別される。加熱混合部20は、粒状活性炭のすべてが充填され、充填された加熱下の粒状活性炭に、消臭剤の水溶液を噴霧しながら混合するために用いられるものである。乾燥部30は、加熱混合された混合物を熱風乾燥し、目的とする消臭剤添着活性炭を得るために用いられるものである。
尚、各図中のZ方向は、加工装置10の上下方向であり、鉛直方向であり、各図中のX方向は、Z方向に垂直な面方向であって、図の左右方向である。
【0013】
加工装置10の加熱混合部20は、図1に示すように、すり鉢状の混合タンク21を備えている。混合タンク21は、その側壁及び底面を覆うジャケット22を備えており、ジャケット22により加熱され、所定温度に調整されるようになっている。加熱混合部20は、図1に示すように、すり鉢状の混合タンク21内の粒状活性炭を攪拌しながら、消臭剤の水溶液を粒状活性炭に噴霧する攪拌噴霧装置23を備えている。攪拌噴霧装置23は、混合タンク21の開口よりもZ方向上方に設置されたモータ231と、モータ231に一端232aが接続されたZ方向に延びる棒状の回転軸232とを備えている。また、攪拌噴霧装置23は、回転軸232の他端232bからX方向外方に延びる2本のアーム233,234を有し、一方のアーム233を介して接続された螺旋状のスクリュウ型攪拌機235と、他方のアーム234を介して接続されたスプレー部236とを有している。攪拌噴霧装置23は、モータ231により回転軸232を回転させ、回転軸232を軸心としてスクリュウ型攪拌機235及びスプレー部236が回転(公転)可能に構成されている。
【0014】
攪拌噴霧装置23のスクリュウ型攪拌機235は、図1に示すように、混合タンク21の内壁に沿って平行に延びる棒状のシャフト237と、シャフト237の周面に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238と、アーム233の先端に配され且つシャフト237を回転させるモータ239とを備えている。スクリュウ型攪拌機235は、モータ239によりシャフト237に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238を回転(自転)可能に構成されている。スクリュウ型攪拌機235の攪拌羽根238の回転(自転)により、混合タンク21内に充填された粒状活性炭が、混合タンク21の下層部から上層部に向かって上昇し攪拌されるようになっている。このように、シャフト237に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238が回転(自転)しながら、更に上述したように、モータ231によって、スクリュウ型攪拌機235のシャフト237に沿って螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238が混合タンク21の内壁に沿って回転(公転)することにより、混合タンク21内の粒状活性炭が効率的に混合されるようになっている。
【0015】
攪拌噴霧装置23のスプレー部236は、図1に示すように、混合タンク21の外に配され且つ消臭材の水溶液を貯蔵するタンク(不図示)から、小型ポンプ(不図示)により配管(不図示)を通じて消臭材の水溶液が回転軸232の内部の配管(不図示)に供給され、アーム234の内部を通過し、スプレー部236の噴出口236aから、消臭材の水溶液が混合タンク21内の粒状活性炭の表面に向かって噴霧されるようになっている。
【0016】
攪拌噴霧装置23のスクリュウ型攪拌機235とスプレー部236とは、回転軸232の他端232b側に取り付けられていれば、特に取り付け位置が限定されることはないが、混合タンク21内の粒状活性炭に消臭材の水溶液を均等にゆきわたらせる観点から、スクリュウ型攪拌機235とスプレー部236とが対向配置されていることが好ましい。加工装置10においては、図1に示すように、2本のアーム233,234が回転軸232の他端232bからX方向外方に対称に延びており、スクリュウ型攪拌機235とスプレー部236とが対向配置されている。
【0017】
以上のような構成を有する加工装置10の加熱混合部20としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製のナウターミキサー(品番「NX−S」)に、温度を調整するジャケットを備えた装置が挙げられる。
【0018】
加工装置10の乾燥部30は、図1に示すように、熱風発生装置31と、熱風発生装置31により発生した熱風が通る管状のパイプ32とを備えている。乾燥部30は、パイプ32の吐出口321から、混合タンク21内の粒状活性炭の表面に向かって熱風発生装置31により発生した熱風を吐き出し、混合タンク21の上層部側から、消臭剤の水溶液の噴霧された粒状活性炭を乾燥可能に構成されている。
【0019】
混合タンク21内に導入される粒状活性炭としては、悪臭その他ガス状物質に対して高い吸着性を示すものであれば、原料、活性化法等には制限されない。粒状活性炭の平均粒子径は、0.1〜1000μm、特に200〜700μmであることが好ましい。また、粒状活性炭の比表面積(BET)は、500〜2500m2/g、特に1500〜2200m2/gであることが好ましい。
【0020】
スプレー部236のタンク(不図示)に貯蔵される消臭材の水溶液としては、(イ)ヒドロキシアミン化合物及び(ロ)界面活性剤を基本組成とするイオン交換水を媒体とした水溶液が挙げられる。
【0021】
ヒドロキシアミン化合物としては、下記の式(1)で表されるものが用いられる。ヒドロキシアミン化合物は、アルデヒドや低級脂肪酸、硫化水素等のガスに対して効果的に安定した消臭性能を発揮する物質である。特にアルデヒド系ガスに対して有効である。例えば、アセトアルデヒドを含むタバコ臭、ノネナール、ノナナールを含む体臭や加齢臭、デカジエナールなどを含む加熱調理油の臭いなどに有効である。
【0022】
【化1】

【0023】
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。特に、消臭性能及び入手性の観点から、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子や、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基等のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0024】
式(1)中、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、R1の説明で例示したものが挙げられる。特に、消臭性能及び入手性の観点から、R2は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0025】
式(1)中、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を表す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が挙げられ、特にメチレン基が好ましい。
【0026】
ヒドロキシアミン化合物の具体例としては、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらのヒドロキシアミン化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。特に、消臭性能等が高い観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールを用いることが特に好ましい。
【0027】
ヒドロキシアミン化合物とともに用いられる界面活性剤は、粒状活性炭に保持されたヒドロキシアミン化合物の近傍に水を存在させやすくして、ヒドロキシアミン化合物の消臭効果を持続的に発現させるために用いられる。したがって、界面活性剤としては、水分保持効果が高いものを用いることが好ましく、そのような効果を有するものであれば、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでも用いることができる。
【0028】
陽イオン界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられ、特に第4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。陰イオン界面活性剤としては、エチレン又はプロピレンオキシド付加のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、脂肪酸カリウム石鹸等が挙げられる。
【0029】
非イオン界面活性剤としては、アルキルグリコシド、エチレン又はプロピレンオキシド付加のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやアルキルアルカノールアミドを用いることが好ましい。
【0030】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド等(アルキルアミド型を含む)のアミンオキシド型、ラウリルアミノ脂肪酸ベタインなどのアルキルベタイン型、アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン型、ラウロイルアミドプロピルベタインなどのアミドベタイン型、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ラウリン酸アミドエチル−β−アラニン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヤシ油脂肪酸アミドエチル−β−アラニン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(ソフタゾリン LAO)などのアミドアミン型、アルキルジエチレントリアミノ酢酸塩型等が挙げられる。特に、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(ソフタゾリン LAO)やアルキルジメチルアミンオキシドやアルキルアミドジメチルアミンオキシドを用いることが好ましい。アルキルジメチルアミンオキシドとしては、例えばラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。アルキルアミドジメチルアミンオキシドとしては、例えばラウリルアミドプロピルアミン−N,N−ジメチル−N−オキシド等が挙げられる。
【0031】
以上の各界面活性剤のうち、特に非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を用いることが好ましく、両性界面活性剤を用いることが特に好ましい。
【0032】
消臭材の水溶液中におけるヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤の濃度については、ヒドロキシアミン化合物は1〜50重量%、特に20〜40重量%であることが、所定量のヒドロキシアミン化合物を含む溶液を粒状活性炭に十分に保持できるとともに、水分の除去において乾燥負荷を少なくできる点から好ましい。一方、界面活性剤は、0.1〜20重量%、特に1〜15重量%であることが、同様の理由から好ましい。また、消臭材の水溶液中における界面活性剤の量は、ヒドロキシアミン化合物1gに対して、0.05〜2g、特に0.1〜1.5gであることが、良好な消臭性能が得られる点から好ましい。
【0033】
消臭材の水溶液中には、上述したヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤に加え、消臭剤添着活性炭の各種性能を一層向上させる観点から、必要に応じ消泡剤、サイズ剤、湿潤剤、表面紙力向上剤、防腐剤、バインダー、顔料、染料、多孔質粉体、滑剤、填料、導電剤、増粘剤等を配合してもよい。
【0034】
次に、本発明の消臭剤添着活性炭の製造方法の一実施態様を、上述した本実施形態の加工装置1を用いて、図2を参照しながら説明する。
【0035】
先ず、予め容器(混合タンク21)を加熱する。本実施態様においては、図2(a)に示すように、ジャケット22により予め混合タンク21を加熱する。尚、ジャケット22により混合タンク21を80〜90℃に加熱することが好ましく、85〜90℃に加熱することが更に好ましい。
【0036】
次いで、予め加熱された容器(混合タンク21)内に粒状活性炭を導入する。混合タンク21としては、その内容量が30〜30000Lのものが好ましく用いられる。導入される粒状活性炭は、5〜5000kgであることが好ましい。
【0037】
次いで、導入された粒状活性炭を螺旋状のスクリュウ型攪拌機235で攪拌しながら消臭剤の水溶液を噴霧する。本実施態様においては、図2(a)に示すように、混合タンク21内に導入された粒状活性炭を、攪拌噴霧装置23の備えるシャフト237に螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238をモータ239を用いて回転(自転)させることにより、混合タンク21の下層部から上層部に向かって上昇させるとともに、スクリュウ型攪拌機235のシャフト237に沿って螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238をモータ231を用いて混合タンク21の内壁に沿って回転(公転)させることにより、混合攪拌する。
【0038】
モータ239によるスクリュウ型攪拌機235のシャフト237の回転(自転)数は、80〜100rpmであることが好ましく、モータ231による攪拌噴霧装置23の回転軸232の回転(公転)数は、2.8〜3.5rpmであることが好ましい。
【0039】
上述したように、粒状活性炭を混合攪拌しながら消臭剤の水溶液を噴霧するのであるが、本実施態様においては、図2(a)に示すように、タンク(不図示)に貯蔵された消臭材の水溶液を、小型ポンプ(不図示)によりアーム234の内部を通過させ、スプレー部236の噴出口236aから、混合タンク21内で混合攪拌されている粒状活性炭の表面に向かって噴霧する。消臭材の水溶液は、小型ポンプ(不図示)により0.1〜0.2MPaの圧がかけられて噴出口236aから噴霧されることが好ましい。
【0040】
粒状活性炭への消臭剤の水溶液の噴霧量は、消臭性能の観点から、噴霧前の粒状活性炭の重量100重量部に対して100〜350重量部、特に120〜230重量部とすることが好ましい。
【0041】
消臭剤の水溶液の噴霧の噴霧速度は、噴霧の開始から終了に至るまで一定速度に保たれていても良いが、粒状活性炭に消臭剤を均一に添着させる観点、活性炭の吸水性能の観点から、噴霧の開始から終了に至るまで漸減させて消臭剤の水溶液を噴霧することが好ましい。噴霧速度の漸減は、噴霧の開始から終了に至るまで徐々に漸減させてもよく、噴霧の開始から終了に至る途中までは徐々に漸減させ、その後終了に至るまでは一定速度であってもよい。
【0042】
次いで、消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、消臭剤の水溶液が噴霧された粒状活性炭を熱風乾燥により乾燥し、消臭剤の添着した粒状活性炭を製造する。本実施態様においては、図2(b)に示すように、消臭材の水溶液の噴出口236aからの粒状活性炭表面への噴霧を終了させた後、消臭剤の水溶液が噴霧された粒状活性炭を、同一の容器(混合タンク21)内で、熱風発生装置31により発生した熱風をパイプ32の吐出口321から粒状活性炭の表面に向かって吐き出し、熱風乾燥する。熱風の温度は、水分の蒸発と薬剤の分解温度の観点から、100〜150℃であることが好ましい。このように、同一の容器(混合タンク21)内で、粒状活性炭と消臭剤の水溶液との加熱混合と、熱風乾燥とを行うことにより、乾燥工程を短縮でき、また加工装置10をコンパクトに抑えることができ、加工装置10の製造コストを抑えることができる。
【0043】
熱風発生装置31による熱風乾燥を、消臭剤の水溶液が噴霧された粒状活性炭の水分率が10%未満となるまで行い、粒状活性炭にヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤が保持された消臭剤添着活性炭を製造する。粒状活性炭の水分率は、METTLER TOLEDO社製のハロゲン水分計(品番HB43−S)を用いて測定する。
【0044】
本実施態様においては、熱風乾燥による粒状活性炭の乾燥中においても、容器(混合タンク21)を加熱すると共に、容器(混合タンク21)内の粒状活性炭をスクリュウ型攪拌機235で攪拌する。具体的には、図2(b)に示すように、熱風発生装置31による熱風乾燥中においても、ジャケット22により容器(混合タンク21)を加熱すると共に、容器(混合タンク21)内の粒状活性炭を、攪拌噴霧装置23の備えるシャフト237に取り付けられた攪拌羽根238の回転(自転)とスクリュウ型攪拌機235の回転(公転)によって混合攪拌し続ける。このように、乾燥中においても容器(混合タンク21)を加熱すると共に粒状活性炭をスクリュウ型攪拌機235で攪拌するため、より全体に熱が伝わりやすく、乾燥の効率が向上する。
【0045】
上述のようにして得られた消臭剤添着活性炭においては、ヒドロキシアミン化合物が好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは10〜40重量%含まれており、界面活性剤が好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%含まれている。
【0046】
以上説明したように、加工装置10を用いて消臭剤添着活性炭を製造する本実施態様の製造方法によれば、予め加熱された容器(混合タンク21)内に粒状活性炭を導入するので、粒状活性炭が温まり易く、温まった粒状活性炭を螺旋状のスクリュウ型攪拌機235で攪拌しながら消臭剤の水溶液を噴霧するので、消臭剤の水溶液の粘度を下げることができ、消臭剤の水溶液を粒状活性炭に浸透させ易く、粒状活性炭に消臭剤を均一に添着させることができ、しかも、粒状活性炭への消臭剤の添着量をコントロールすることができる。更に、消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、水溶液が噴霧され且つ温められた粒状活性炭を、乾燥部30の熱風発生装置31により熱風乾燥するので、乾燥効率も向上する。
【0047】
本発明の消臭剤添着活性炭の製造方法は、上述の実施態様の製造方法に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0048】
例えば、本実施態様の消臭剤添着活性炭の製造方法においては、熱風乾燥による粒状活性炭の乾燥中にも、容器(混合タンク21)を加熱すると共に容器(混合タンク21)内の粒状活性炭をスクリュウ型攪拌機235で攪拌しているが、例えば、容器(混合タンク21)を加熱せず粒状活性炭を余熱状態としておき、余熱状態の粒状活性炭をスクリュウ型攪拌機235で攪拌してもよい。
【0049】
また、本実施態様の消臭剤添着活性炭の製造方法においては、同一の容器(混合タンク21)内で、粒状活性炭と消臭剤の水溶液との加熱混合と、熱風乾燥とを行っているが、同一の容器(混合タンク21)内でなくてもよい。
【0050】
また、本実施態様の消臭剤添着活性炭の製造方法に用いられる加工装置10においては、スクリュウ型攪拌機235のシャフト237が混合タンク21の内壁に平行に延びているが、平行に延びていなくてもよい。
【0051】
本発明に従い製造された消臭剤添着活性炭は、例えば、家庭用、施設用、自動車用の空気清浄機、エアコンディショナー、フィルター等に用いられる消臭シートの構成材料に適用することができ、また、使い捨ておむつや生理用ナプキン、パンティライナ等の吸収性物品の構成材料として用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0053】
〔実施例1〕
(消臭材の水溶液の調整)
ヒドロキシアミン化合物としては、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(Jiangyin Nijiaxiang Chemical社製のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)を用いた。界面活性剤としては、両性界面活性剤のラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(川研ファインケミカル(株)社製のソフタゾリン LAO)を用いた。消臭材の水溶液におけるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの濃度は17.47重量%、ソフタゾリン LAOの濃度は8.73重量%、媒体であるイオン交換水の濃度は73.80重量%であった。
【0054】
図1に示す加工装置10を用い、図2に示す方法で、消臭剤添着活性炭を製造した。
具体的には、先ず、ジャケット22により予め混合タンク21を90℃に加熱しておき、加熱された混合タンク21(30L)内に粒状活性炭(フタムラ化学(株)社製の品番「SGP」)を5kg導入した。次いで、混合タンク21内に導入された粒状活性炭を、モータ239を用いて攪拌羽根238を回転数100rpmで回転(自転)させるとともに、モータ231を用いてシャフト237に沿って螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238を混合タンク21の内壁に沿って回転数3.5rpmで回転(公転)させることにより、混合攪拌した。そして、粒状活性炭を混合攪拌しながら混合攪拌されている粒状活性炭の表面に、上述のように調整した消臭剤の水溶液を、0.2MPaの圧をかけてスプレー部236の噴出口236aから噴霧した。粒状活性炭への消臭剤の水溶液の噴霧量は、噴霧前の粒状活性炭の重量100重量部に対して229重量部であり、噴霧速度は、噴霧の開始から終了に至るまで一定速度であった。次いで、消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、混合タンク21内で、150℃の熱風をパイプ32の吐出口321から粒状活性炭の表面に向かって吐き出し、粒状活性炭と消臭剤の水溶液とを混合攪拌しながら熱風乾燥した。水分率が10%以下となるまで熱風乾燥し、消臭剤の添着した消臭剤添着活性炭を製造した。製造された消臭剤添着活性炭においては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)が17.47重量%、ソフタゾリン LAOが8.73重量%添着されていた。
【0055】
〔比較例1〕
比較例1においては、予め混合タンク21を加熱しない以外は、実施例1と同様にして、消臭剤添着活性炭を製造した。以下、具体的に説明する。
比較例1においても、実施例1と同様の消臭材の水溶液を調整した。
また、比較例1においても、実施例1と同様に、図1に示す加工装置10を用いて消臭剤添着活性炭を製造した。
先ず、混合タンク21(30L)内に粒状活性炭(フタムラ化学(株)社製の品番「SGP」)を5kg導入し、次いで、混合タンク21内に導入された粒状活性炭を、モータ239を用いて攪拌羽根238を回転数100rpmで回転(自転)させるとともに、モータ231を用いてシャフト237に沿って螺旋状に取り付けられた攪拌羽根238を混合タンク21の内壁に沿って回転数3.5rpmで回転(公転)させることにより、混合攪拌した。そして、粒状活性炭を混合攪拌しながら混合攪拌されている粒状活性炭の表面に、上述のように調整した消臭剤の水溶液を、0.2MPaの圧をかけてスプレー部236の噴出口236aから噴霧した。粒状活性炭への消臭剤の水溶液の噴霧量は、噴霧前の粒状活性炭の重量100重量部に対して229重量部であり、噴霧速度は、噴霧の開始から終了に至るまで一定速度であった。次いで、消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、ジャケット22により混合タンク21を90℃に加熱した。またジャケット22により90℃に加熱すると共に、粒状活性炭を混合攪拌しながら混合攪拌されている粒状活性炭の表面に150℃の熱風をパイプ32の吐出口321から粒状活性炭の表面に向かって吐き出し、粒状活性炭と消臭剤の水溶液とを混合攪拌しながら熱風乾燥した。水分率が10%以下となるまで熱風乾燥し、消臭剤の添着した消臭剤添着活性炭を製造した。比較例1で製造された消臭剤添着活性炭は、実施例1で製造された消臭剤添着活性炭と同様に、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)が17.47重量%、ソフタゾリン LAOが8.73重量%添着されていた。
【0056】
〔評価〕
実施例1及び比較例1において、上述したように、METTLER TOLEDO社製のハロゲン水分計(品番HB43−S)を用いて、混合タンク21内で混合攪拌されている上層側の粒状活性炭の水分率を経時的に測定し、水分率が10%以下となるまで測定した。尚、粒状活性炭に消臭剤が均一に添着していると判断するために、粒状活性炭を混合攪拌しながら、混合タンク21の上層側から3回に分けて水分率を測定し、水分率の測定結果の全てが10%以下となるまで測定した。また、水分率の測定結果の全てが10%以下となるまでの時間を測定した。得られた測定結果を図3に示す。
【0057】
図3に示す結果から明らかなように、実施例1の製造方法によれば、比較例1の製造方法に比べて、乾燥効率が向上し、消臭剤が均一に添着している消臭剤添着活性炭を効率的に製造できることが判る。
【符号の説明】
【0058】
10 加工装置
20 加熱混合部
21 混合タンク
22 ジャケット
23 攪拌噴霧装置
231 モータ
232 回転軸
232a 一端,232b 他端
233,234 アーム
235 螺旋状のスクリュウ型攪拌機
236 スプレー部
236a 噴出口
237 シャフト
238 攪拌羽根
239 モータ
30 乾燥部
31 熱風発生装置
32 パイプ
321 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め加熱された容器内に粒状活性炭を導入し、導入された該粒状活性炭を螺旋状のスクリュウ型攪拌機で攪拌しながら消臭剤の水溶液を噴霧し、該消臭剤の水溶液の噴霧を終了させた後、該消臭剤の水溶液が噴霧された前記粒状活性炭を熱風乾燥により乾燥し、前記消臭剤の添着した前記粒状活性炭を製造する消臭剤添着活性炭の製造方法。
【請求項2】
前記消臭剤の水溶液の噴霧の噴霧速度を、噴霧の開始から終了に至るまで漸減させて前記消臭剤の水溶液を噴霧する請求項1に記載の消臭剤添着活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記熱風乾燥による前記粒状活性炭の乾燥中においても、前記容器を加熱すると共に、該容器内の前記粒状活性炭を前記スクリュウ型攪拌機で攪拌する請求項1又は2に記載の消臭剤添着活性炭の製造方法。
【請求項4】
前記容器を予め80〜90℃に加熱する請求項1〜3の何れか1項に記載の消臭剤添着活性炭の製造方法。
【請求項5】
前記消臭剤の水溶液が噴霧された前記粒状活性炭を、同一の前記容器内で熱風乾燥する請求項1〜4の何れか1項に記載の消臭剤添着活性炭の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−213549(P2012−213549A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81718(P2011−81718)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】