説明

液体を満たしたユニット内のガス量監視装置及び方法

本発明は、少なくとも1つの膨張室を備えた流入導管を有し液体を満たしたユニットと、液体の中に浮かぶ浮子とを備えている、液体を満たしたユニット内のガス量監視装置に関する。浮子は膨張室内に固定された軸に結合され、軸に関して回転可能に支持される。浮子によって発生された回転モーメント又は水平に対する角度の測定によって、液体の上方に存在するガス量を迅速かつ高精度に検出することができる。さらに本発明は液体を満たしたユニット内のガス量を浮子によって監視する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入導管を介して少なくとも1つの膨張室に接続され液体を満たしたユニット内のガス量を監視するために、液体の中に浮かぶ浮子を備えている、液体を満たしたユニット内のガス量監視装置に関する。本発明の考え方における膨張室は、ユニットの導管を介して膨張する液体を受け入れることができる容器や、例えば液体膨張室の上流側に配置されるブッフホルツリレーのようなガス溜めタンクである。さらに本発明は、液体を満たしたユニット内のガス量をこのユニットの膨張室内に浮かぶ浮子によって監視する方法に関する。
【0002】
大容量変圧器においては、その運転中に大きな磁気的及び電気的な損失が発生し、それに関連して変圧器が加熱されるので、必然的にユニットの十分な冷却が必要になる。そのため、変圧器の鉄心及び巻線は液体タンク、特に油タンク内に収納される。タンク内に存在する冷却液体は大抵、変圧器油であり、変圧器の運転中、その温度上昇に基づいて膨張する。その場合、オーバーフローした冷却液体は変圧器の上方に設けられた膨張室内に集められる。液体の温度上昇に起因する膨張に対して付加的に、変圧器内の冷却液体の強い加熱により、又は起こり得る化学的・物理的プロセスにより、冷却液体から付加的にガスが離脱し、つまりユニット内または接続導管内に発生することがある。同様にユニット又は接続導管の内部の漏れ箇所を介して周囲空気がその気密の循環経路内に流れ込み、ユニット内ないしは膨張室内に集まることがある。ガスの密度によりそのガスは変圧器の上方にある膨張室内に集まる。
【0003】
この膨張室はその機能上、ガス溜めタンク、大抵はブッフホルツリレーとも称される。ドイツ工業規格DIN42566によれば、油冷却式変圧器の運転に対して、ユニット内のガス量が予め定められた値を超えた時は警報を発するように規定されている。ガス量が予め定められた値に達したことは、本来の液体膨張室の上流側に配置されている対応する膨張室およびガス溜めタンクとしてのブッフホルツリレー内で検出される。液体膨張室はもっぱら膨張した液体を受け入れるのに用いられ、そのため周囲空気に連通している開放型システムである。液体膨張室内に液体が存在し、ユニット内に付加的なガスが形成されていない場合、膨張室(ブッフホルツリレー)は完全に液体で満たされる。膨張室内で検出された警報に基づいて、変圧器の起こり得る臨界的な状態が明示され、変圧器の詳細な検査によって求めることができる。
【0004】
さらに独国特許第10133615号明細書により、液体を満たしたユニット、特に高電圧ユニット内の不溶解ガスの検出装置が開示されており、その装置によってブッフホルツリレー内のガス生成の時間的経過が求められる。独国特許第10133615号明細書で提案されている測定装置は、液体を満たした2本の導管を介して少なくとも2つの圧力測定ラインに接続された差圧測定装置を備えている。液体を満たした導管は一端がブッフホルツリレーの内室に接続され、他端が上方に向かって開放した基準液体筒に接続されている。
【0005】
本発明の課題は、液体を満たしたユニット内に存在するガス量を迅速かつ確実に検出することである。
【0006】
この課題は請求項1に記載の装置及び請求項9に記載の方法によって解決される。
【0007】
本発明によれば、浮子は膨張室内に固定された軸に結合され、かつ軸に対して回転可能に支持される。本発明の考えでは、軸の回転可能な支持は固定軸に関して浮子の枢着、並びに軸に固定された浮子を有する軸の回転軸線を中心とする軸の回転を含む。浮かぶ浮子は膨張室内の液面の高さレベルを反映する。そのため膨張室の形状及び大きさの付加的な知識から、液体の上方に存在するガス量を推測することができる。
【0008】
好ましくは軸をその軸から離間した浮子に接続する接続素子、特に小直径で小自重の棒体が設けられる。液面に対する軸の相対高さ及び接続素子の長さが検出すべきガスの広がり面積及びガス検出器の精度を決定する。
【0009】
好ましくは予め定められた長さ(a)の所に接続素子の回転モーメントを検出する力検出器が固定配置される。力検出器で測定された回転モーメント(トルク)が予め定められた値を超えた時、プロセッサが警報を発する。予め定められた回転モーメントは、膨張室内の軸の相対位置に関連して、警報を発するためにブッフホルツリレーとして用いられた膨張室内の検出すべき最大ガス量に対する尺度であり、したがってドイツ工業規格DIN42566を満たしている。
【0010】
好ましくは複数の浮子が互いに平行に配置された複数の軸に関してそれぞれ決められた高さレベルの所に互いにずらして配置され、各浮子は互いに異なる大きさ及び/又は密度を持っている。個々の軸の異なる高さレベルの所に異なる密度の浮子を取り付けることによって、異なるガスを検出し、及び/又は異なるガス量測定で求められたガス量によりガス量測定の精度を互いに調整することができる。しかし、異なるガスの検出のために、膨張室を別々の複数の部屋に分割し、各部屋でその部屋内に存在する浮子によってそれぞれただ1種のガスを決定できるようにすることが必要である。
【0011】
代替的に、浮子の接続素子と軸の水平横軸線との間の角度を検出する角度計を固定配置することもできる。同様に、角度の検出を介して膨張室の大きさ及び形状を知ることによって、液体の上方に存在するガス量を決定することが可能である。浮子の接続素子が水平線に対する予め定められた角度を超えたとき、ブッフホルツリレーとして用いられる膨張室内のプロセッサが警報を発することもできる。それにより同様にドイツ工業規格DIN42566を満たすことができる。
【0012】
好ましくは浮子は付加的なキャパシタンス素子、インダクタンス素子及び光学素子の内の少なくとも1つの素子を備え、その素子から発生された電磁信号、電気信号及び光学信号の内の少なくとも1つの信号をプロセッサが検出する。代替的な付加的ガス量決定方法を用いることによって、それぞれ求められたガス量を互いに調整することが可能になる。
【0013】
本発明によれば、少なくとも1つの膨張室を備えた流入導管を有し液体を満たしたユニット内のガス量を監視する方法において、膨張室内に、液体に浮かぶ浮子が存在し、膨張室内で浮子が固定された軸に結合され軸に関して回転可能に支持され、軸に関する浮子の回転運動が求められる。好ましくは軸は検出すべき最大ガス量に基づいて膨張室の上部カバー板の内面に対して相対的に膨張室内に決められた高さレベルに定められ、軸は固定装置、特に保持部に沿って予め定められ空所の形に作られた固定装置によってその決められた高さレベルに固定される。検出すべきガス量は常にブッフホルツリレーとして用いられた膨張室内の液体の上方に集まるので、好ましいことに検出すべきガス量は上部カバーの内面に関して決定され、したがって軸の決めるべき高さレベルを求めることができる。
【0014】
他の好ましい実施態様は他の従属請求項に記載されている。次に実施例及び図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1は膨張室1aとして構成された本発明による監視装置の概略図を示す。変圧器(図示されていない)の上方に配置された膨張室1aは接続導管(図示されていない)を介して流入開口2に接続される。さらに膨張室1aは流出開口3を介して下流側に配置された膨張室1b(図示されていない)に接続される。下流側に配置された液体膨張室は上部カバー板(10a)に設けられた流出開口を有する膨張室1aとして同様に構成することができる。下流側に配置された膨張室1b(図示されていない)は完全に液体を満たしている時の膨張室1a内の過大圧力上昇を防止する。膨張室1a内には2つの浮子5,6が配置されている。浮子5,6は、膨張室1a内に存在する液体の液体表面に対して相対的に、離間した接続素子4a,4bを介して回転可能に支持されている。上部浮子5は固定された高さレベル9の軸11に接続され、回転可能に支持されている。下部浮子6は液面が特定のレベルを下まわった時、つまり変圧器の過熱を引き起こす虞のある時に変圧器ユニット全体を遮断するために用いられる。同じことは、例えば変圧器内の爆発時のように突発的な圧力上昇が生じた場合、膨張室1aの瞬時インターロックを保証する閉鎖板8に対しても当てはまる。上部浮子5は膨張室1a内に、膨張室1a内にガスが形成された場合にガス量の持続的な検出を可能とするように配置されている。このことは、上部浮子5が膨張室1aの上部カバー板10aの内面に対して予め定められた間隔をおいて配置され、そのように決定された相対レベル9に関して回転可能に支持されることによって保証される。これにより、膨張室1a内のガス量の形成は持続的に、予め定められた最大ガス量に達するまで遺漏なく監視でき、予め定められた最大ガス量を超えた時にシステムから警報を発信することができる。浮子5,6の密度及び大きさ、並びに接続素子4a,4bの長さは用いられた液体に依存し、軸11に対して相対的に浮子5の浮力によって生じる最大限可能な回転モーメントに基づいて算出される。上部浮子5つまり上部接続素子4aに接続された力検出器7が浮子5によって発生された力又は回転モーメントを持続的に検知し、それによって膨張室1a内に存在するガス量に対する尺度を形成する。そのガス量は迅速かつ確実に検出することができる。
【0016】
図2は本発明による2つの膨張室1a,1bを備えたユニット12を示す。液体タンク14、特に高電圧変圧器ユニット用の液体タンク14には、液体タンク14の蓋領域に流入導管13が配置されている。この流入導管13は流入開口2を介して第1膨張室1aに接続されている。第1膨張室1aは膨張室1a内に集まるユニット12のガス量の検出に用いられる。第1膨張室1aは流出開口3及び他の流入導管13を介して高位に配置された第2膨張室1bにその流入開口2を介して接続される。さらに上部カバー板10a(図示されていない)には流出開口3が存在し、周囲空気との平衡化に用いられる。ここで第2膨張室1b内で測定されたガス量は周囲圧力のもとで測定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による装置の概略図
【図2】2つの本発明による装置を備えたガス検出システムの概略図
【符号の説明】
【0018】
1a 第1膨張室
1b 第2膨張室
2 流入開口
3 流出開口
4a 上部接続素子
4b 下部接続素子
5 上部浮子
6 下部浮子
7 力検出器
8 閉鎖板
9 高さレベル
10a 上部カバー板
10b 下部カバー板
11 軸
12 ユニット
13 流入導管
14 液体タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの膨張室(1a)を備えた流入導管(13)を有し液体を満たしたユニット(12)内のガス量を監視するために、液体の中に浮かぶ少なくとも1つの浮子(5)を備えている、液体を満たしたユニット(12)内のガス量監視装置において、
浮子(5)は膨張室(1a)内に固定配置された軸(11)に結合され、軸(11)に関して回転可能に支持されていることを特徴とする液体を満たしたユニット内のガス量監視装置。
【請求項2】
軸(11)をこの軸(11)から離間した浮子(5)に接続する接続素子(4a)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
接続素子(4a)の回転モーメントを予め定められた長さ(a)の所で検出する力検出器(7)が固定配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
力検出器(7)で測定された回転モーメントが予め定められた回転モーメント値を超えた時、プロセッサが警報を発することを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の装置。
【請求項5】
複数の浮子(5)が互いに平行に配置された複数の軸(11)に関してそれぞれ決められた高さレベル(9)の所に互いにずらして配置され、各浮子(5)は異なる大きさ及び/又は密度を持っていることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の装置。
【請求項6】
接続素子(4a)と軸(11)の水平横軸線との間の角度を検出する角度計が固定配置されていることを特徴とする請求項1及び2の1つに記載の装置。
【請求項7】
接続素子(4a)が予め定められた角度を超えたときプロセッサが警報を発することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
浮子(5)がキャパシタンス素子、インダクタンス素子及び光学素子の内の少なくとも1つの素子を備え、その素子から発生された電磁信号、電気信号及び光学信号の内の少なくとも1つの信号をプロセッサが検出することを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの膨張室(1a)を備えた流入導管(13)を有し液体を満たしたユニット(12)内のガス量を監視する方法において、膨張室(1a)内に、液体の中に浮かぶ浮子(5)が存在し、膨張室(1a)内で浮子(5)が固定された軸(11)に結合され回転可能に支持され、軸(11)に関する浮子(5)の回転運動が検出されることを特徴とする液体を満たしたユニット内のガス量監視方法。
【請求項10】
軸(11)が、検出すべき最大ガス量に基づいて膨張室(1a)の上部カバー板の内面に対して相対的に膨張室(1a)内に決められた高さレベル(9)に定められ、軸(11)が固定装置によってその決められた高さレベル(9)に固定されることを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−514940(P2007−514940A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544205(P2006−544205)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002656
【国際公開番号】WO2005/059483
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】