説明

液体分離装置

【課題】工作機械に水溶性液体を供給して回収する際に、貯留タンクで貯留する水溶性液体の腐敗、酸化を抑制できる液体分離装置を提供する。
【解決手段】貯留手段1で分離した下層の水溶性液体の液面を、上層の不水溶性液体で被覆して、下層の水溶性液体と空気との接触を遮断する液体分離装置X1であって、貯留手段1は、工作機械から回収した水溶性液体が流入され、水溶性液体の流入に伴って、不水溶性液体及び水溶性液体の各液体が混濁する混濁液体KOを貯留して一次分離する回収貯留室Bと、一次分離した液体を貯留して、上層の不水溶性液体及び下層の水溶性液体に分離する分離貯留室Cとに区画されており、回収貯留室Bは、各液体の液面に水平な方向に延設して形成され、延設端BAから分離貯留室Cに連通されている液体分離装置X1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械における切削、研削等の加工時に、被加工体や工具に水溶性液体を循環供給させる液体分離装置に関し、特に、水溶性液体の腐敗、酸化などの劣化を抑制する液体分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工作機械においては、切削、研削等の加工時に、被加工体や工具に水溶性液体を循環供給して、被加工体や工具を冷却、潤滑する。
この工作機械には、水溶性液体を循環供給する液体分離装置が配設されている。液体分離装置は、水溶性液体を貯留する貯留タンク、及び貯留タンクの水溶性液体を被加工体や工具に供給するポンプ装置を備えている。この液体分離装置は、ポンプ装置を駆動することで、貯留タンクの水溶性液体を被加工体や工具に供給し、工作機械の被加工体や工具から回収された水溶性液体を貯留タンクに貯留する。
このように、液体分離装置は、貯留タンクに貯留した水溶性液体を工作機械の被加工体や工具に循環供給する。
【0003】
工作機械による切削、研削等の加工において、貯留タンクに貯留した水溶性液体は、貯留タンク内の空気と接触して、空気中の細菌及び酸素によって腐敗、酸化などの劣化が発生する。水溶性液体の腐敗、酸化などの劣化は、被加工体や工具の冷却及び潤滑に影響を与えるため、頻繁に水溶性液体を交換する必要があり、しかも腐敗、酸化などの劣化による悪臭によって作業環境も悪くなるという問題がある。
【0004】
水溶性液体の腐敗、酸化などの劣化を抑制する技術として、特許文献1に開示する技術は、不水溶性切削油及び水溶性切削を貯留する回収槽を備え、各切削油の比重差に基づいて上層の不水溶性切削油及び下層の水溶性切削油に分離して、下層の水溶性切削油の液面を上層の不水溶性切削油で被覆する。
この特許文献1に開示する技術では、下層の水溶性切削油の液面を上層の不水溶性切削油で被覆することで、水溶性切削油と空気(外気)との接触を遮断して、水溶性切削油の腐敗、酸化などの劣化を抑制している。
【0005】
一方、特許文献1に開示する技術において、回収槽で分離した水溶性切削油は、ポンプ装置及び水管によって工作機械の被加工体等に供給される。被加工体から回収された水溶性切削油は、回収パイプから回収槽に流入され、回収槽に貯留される。また、回収槽の中央部には、隔壁が配設されている。
このように、特許文献1に開示する技術は、回収槽で分離した下層の水溶性切削油を工作機械の被加工体等に循環供給している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示する技術では、切削、研削等の加工時に、工作機械の被加工体から回収した水溶性切削油を回収槽に流入させると、回収槽に貯留した不水溶性切削油及び水溶性切削油と混濁され、各液体が混濁する混濁液は、隔壁の上方側及び下方側から回収槽全体にわたって流入する。
従って、切削、研削の加工時では、回収槽全体にわたって混濁液中の水溶性切削油が空気(外気)と接触することになり、水溶性切削油の腐敗、酸化などの劣化を効果的に抑制することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−77483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、工作機械に水溶性液体を供給して回収する際に、貯留タンクで貯留する水溶性液体の腐敗、酸化などの劣化を抑制できる液体分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る請求項1は、不水溶性液体及び水溶性液体を貯留して、比重差に基づいて上層の不水溶性液体及び下層の水溶性液体に分離する貯留手段と、前記貯留手段で分離した前記下層の水溶性液体を、工作機械に供給する供給手段を備え、前記貯留手段で分離した前記下層の水溶性液体の液面を、前記上層の不水溶性液体で被覆して、該下層の水溶性液体と空気との接触を遮断する液体分離装置であって、前記貯留手段は、前記工作機械から回収した水溶性液体が流入され、該水溶性液体の流入に伴って、前記不水溶性液体及び前記水溶性液体の各液体が混濁する混濁液体を貯留して、一次分離する回収貯留室と、前記回収貯留室から流入する前記一次分離した液体を貯留して、前記上層の不水溶性液体及び前記下層の水溶性液体に二次分離する分離貯留室と、に区画されており、前記回収貯留室は、前記各液体の液面に水平な方向に延設して形成され、該回収貯留室の延設端から前記分離貯留室に連通されていることを特徴とする液体分離装置である。
【0010】
本発明に係る請求項2は、前記供給手段は、前記工作機械に、前記貯留手段で分離した前記上層の不水溶性液体及び前記下層の水溶性液体を同時又は選択的に供給してなり、前記回収貯留室には、前記工作機械から回収した前記不水溶性液体及び/又は前記水溶性液体が流入されることを特徴とする請求項1に記載の液体分離装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1によれば、工作機械から回収した水溶性液体を貯留手段の回収貯留室に流入させるので、この水溶性液体の流入に伴って、不水溶性液体及び水溶性液体の各液体が混濁する混濁液を、回収貯留室内に貯留(滞留)させることができる。
この混濁液体は、回収貯留室内で貯留(滞留)されるので、水溶性液体の流入後、直ちに、貯留手段の分離貯留室に流入することが阻止されて、回収貯留室内の水平方向に流動される。そして、混濁液体は、回収貯留室の流動に伴って、一次分離され、一次分離した液体が回収貯留室から分離貯留室に流入される。
これにより、分離貯留室では、混濁液体の流入や混濁液体の波動等の影響を直接受けることなく、上層の不水溶性液体と下層の水溶性液体に分離できるので、下層の水溶性液体の液面を上層の不水溶性液体で被覆して、水溶性液体と空気の接触を遮断できる。
また、工作機械に供給される水溶性液体は、被加工体や工具を冷却、潤滑して、高温状態で貯留手段の回収貯留室に流入される。分離貯留室では、下層の水溶性液体を上層の不水溶性液体で被覆できるので、高温の水溶性液体の蒸発を抑制できる。
【0012】
本発明に係る請求項2によれば、工作機械に、水溶性液体及び不水溶性液体を同時又は選択的に供給する液体分離装置であっても、貯留手段の分離貯留室で分離した下層の水溶性液体の液面を上層の不水溶性液体で被覆できるので、水溶性液体の腐敗、酸化などの劣化及び蒸発を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る液体分離装置及び工作機械を示す正面図である。
【図2】本発明に係る液体分離装置の上面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図2のC−C断面図である。
【図6】本発明に係る他の液体分離装置及び工作機械を示す正面図である。
【図7】本発明に係る他の液体分離装置の上面図である。
【図8】図7のD−D矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る液体分離装置について、図1乃至図8を参照して説明する。
図1は本発明に係る液体分離装置及び工作機械を示す正面図であり、図2は本発明に係る液体分離装置を示す上面図であり、図3は図2のA−A矢視図であり、図4は図2のB−B断面図であり、図5は図2のC−C断面図である。
また、図6は本発明に係る他の液体分離装置及び工作機械を示す正面図であり、図7は本発明に係る他の液体分離装置を示す上面図であり、図8は図7のD−D矢視図である。
【0015】
図1乃至図5において、液体分離装置(X1)は、工作機械(Y)の工具(Y1)や加工する被加工体(Z)に水溶性液体(WO)を供給し、工作機械(Y)から回収した水溶性液体(WO)を貯留する。この液体分離装置(X1)は、貯留した水溶性液体(WO)の液面(α)を不水溶性液体(FO)で被覆して、この水溶性液体(WO)と空気(外気)との接触を遮断する。
なお、工作機械(Y)は、旋盤、フライス盤、NC旋盤(数値制御旋盤)、マシニングセンタ(数値制御フライス盤)、及び研削盤、NC研削盤(数値制御研削盤)等であって、図1にはエンドミル等の工具(Y1)の移動を数値制御することで被加工体(Z)を切削加工するマシニングセンタを例示している。また、被加工体(Z)は、金属、木材又は樹脂等の材質で形成されている。
【0016】
不水溶性液体(FO)は、一般には、鉱油と動植物油、又は鉱油とエステル油からなる1種切削油剤(1号〜6号)や、1種切削油剤に添加剤を加えた2種切削油剤(1号〜6号、11号〜17号)であるが、水溶性液体との分離を考慮すると、酸価が低く、鹸化物の含有率が低いものが好ましく、使用する添加剤の酸価は1KOH mg/g以下の油脂を少量添加すれば良い。
【0017】
水溶性液体(WO)は、一般に、水や、水溶性切削剤の水溶液体や、防錆剤を含む水溶性液体や、洗浄剤水溶液体が該当し、アルカリ性の液体であれば、防錆力に多少の差があっても使用可能であるが、不水溶性液体と分離性が良く、中間層ができ難いものが好適である。具体的には、i)トリエタノールアミンの0.1〜2%の水溶液体、ii)トリエタノールアミン25〜30%程度と、中鎖脂肪酸8〜15%程度と、水40〜60%程度とを主成分とした水溶性切削油の30倍希釈の水溶性液体、iii)親油基の炭素数が12以上の界面活性剤(石鹸を含む陰イオン、陽イオン、両性イオン、非イオン界面活性剤)が0.5%以下の水溶性液体が該当する。
また、不水溶性液体(FO)の比重は、水溶性液体(WO)の比重より小さくされており、各液体(FO)、(WO)を貯留すると、比重の小さい不水溶性液体(FO)が上層に、比重の大きい水溶性液体(WO)が下層に分離される。
【0018】
液体分離装置(X1)は、図1乃至図5に示すように、貯留手段である貯留タンク(1:以下「貯留タンク(1)」と称する)と供給手段(2)を備え、被加工体(Z)の下方に位置して、工作機械(Y)内に配置されている。
【0019】
貯留タンク(1)は、図1乃至図5に示すように、矩形状に形成されている。この貯留タンク(1)は、不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)を貯留して、これら各液体(FO)、(WO)の比重差に基づいて上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)に分離する。また、貯留タンク(1)で分離した下層の水溶性液体(WO)の液面(α)を、上層の不水溶性液体(FO)で被覆しており、この下層の水溶性液体(WO)は、上層の不水溶性液体(FO)と貯留タンク(1)の前後壁(1A)、(1B)、左右壁(1C)、(1D)及び底壁(1E)で覆われている。
これにより、貯留タンク(1)で分離した下層の水溶性液体(WO)は、空気(外気)との接触が遮断される。
【0020】
貯留タンク(1)の内部には、図1及び図3に示すように、第1仕切板(5)を備えており、この第1仕切板(5)及び貯留タンク(1)の各壁(1A)〜(1F)によって、回収貯留室(B)と分離貯留室(C)とに区画されている。
【0021】
第1仕切板(5)は、図1及び図2に示すように、貯留タンク(1)の前壁(1A)と後壁(1B)の間に位置して、前壁(1A)寄りに配置されている。
この第1仕切板(5)は、図1及び図3に示すように、貯留タンク(1)の底壁(1E)と天井壁(1F)の間にわたって配置され、これら各壁(1E)、(1F)に取り付け固定されている。
また、第1仕切板(5)は、不水溶性液体(FO)の液面(β)や水溶性液体(WO)の液面(α)に対して水平な方向(以下、「水平方向(HL)」と称する。)に延設され、貯留タンク(1)の左右壁板(1C)、(1D)間に配置されている。例えば、第1仕切板(3)は、図2に示すように、貯留タンク(1)の右壁(1D)に固定され、右壁(1D)から水平方向(HL:左右方向)に左壁(1C)近傍まで延設されている。
これにより、第1仕切板(5)は、貯留タンク(1)の前壁(1A)、右壁(1D)、底壁(1E)とで回収貯留室(B)を区画し、貯留タンク(1)の後壁(1B)、右壁(1D)、底壁(1E)とで分離貯留室(C)を区画している。
そして、回収貯留室(B)は、図2に示すように、貯留タンク(1)の右壁(1D)から左壁(1C)に向かって水平方向(HL)に延設して形成される。回収貯留室(B)の貯留容積(BV)と分離貯留室(C)の貯留容積(CV)は、第1仕切板(5)の配置によって貯留容積(CV)>貯留容積(BV)にされている。
【0022】
第1仕切板(5)の延設端(5A)は、図2に示すように、貯留タンク(1)の左壁(1C)に間隔を隔てて対峙され、これにより、回収貯留室(B)は、延設端(BA)から分離貯留室(C)内に連通されている。
【0023】
また、回収貯留室(B)は、工作機械(Y)の回収トレイ(11)に連通されている。この回収トレイ(11)は、図1に示すように、工作機械(Y)の被加工体(Z)の下方側に配置されて、貯留タンク(1)の回収口(9)に連結されている。
この回収口(9)は、貯留タンク(1)の天井壁(1F)に形成されて、回収貯留室(B)内に開口している。また、回収口(9)は、図2に示すように、貯留タンク(1)の右壁(1D)近傍に配置されている。
これにより、工作機械(Y)から回収した水溶性液体(WO)は、回収トレイ(11)、回収口(9)を通して、貯留タンク(1)の回収貯留室(B)内に流入される。この水溶性液体(WO)の流入に伴って、不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)の各液体が回収貯留室(B)内で混濁して混濁液体(KO)となり、この混濁液体(KO)は回収貯留室(B)に貯留(滞留)される。
また、回収貯留室(B)に貯留される混濁液体(KO)は、回収口(9)から貯留タンク(1)の左壁(1C)に向けて流動し、この流動に伴って、一次分離されて回収貯留室(B)の延設端(BA)から分離貯留室(C)内に流入される。
【0024】
貯留タンク(1)の分離貯留室(C)は、図1及び図2に示すように、複数の第2〜第4仕切板(6)〜(8)が備えられ、第2仕切板(6)は、第1仕切板(5)と貯留タンク(1)の後壁(1B)の間に配置されている。
この第2仕切板(6)は、貯留タンク(1)の底壁(1E)及び天井壁(1F)にわたって配置されて、各壁(1E)、(1F)に取付け固定されている。
また、第2仕切板(6)は、貯留タンク(1)の左壁(1C)に固定されて、この左壁(1C)から右壁(1D)に向けて水平方向(HL:左右方向)に延設されている。第2仕切板(6)の延長端(6A)は、貯留タンク(1)の右壁(1D)に間隔を隔てて対峙されている。
【0025】
第3仕切板(7)は、第2仕切板(6)と貯留タンク(1)の後壁(1B)の間に配置されている。この第3仕切板(7)は、貯留タンク(1)の底壁(1E)及び天井壁(1F)にわたって配置されて、各壁(1E)、(1F)に取付け固定されている。
また、第3仕切板(7)は、貯留タンク(1)の右壁(1D)に固定されて、この右壁(1D)から左壁(1C)に向けて水平方向(HL:左右方向)に延設されている。第3仕切板(7)の延設端(7A)は、貯留タンク(1)に左壁(1C)に間隔を隔てて対峙されている。
【0026】
第4仕切板(8)は、第3仕切板(7)と貯留タンク(1)の後壁(1B)の間に配置されている。この第4仕切板(8)は、貯留タンク(1)の底壁(1E)及び天井壁(1F)にわたって配置されて、各壁(1E)、(1F)に取付け固定されている。
また、第4仕切板(8)は、貯留タンク(1)の右壁(1D)に固定されて、この右壁(1D)から左壁(1C)に向けて水平方向(HL:左右方向)に延設されている。第4仕切板(8)の延設端(8A)は、貯留タンク(1)の右壁(1D)に間隔を隔てて対峙されている。
また、第1〜第4仕切板(5)〜(8)、貯留タンク(1)の後壁(1B)は、相互に間隔を隔てて配置されて、各間隔は各延設端(5A)〜(8A)で連通されている。
これにより、第1〜第4仕切板(5)〜(8)、及び貯留タンク(1)の後壁(1B)は、図2に示すように、回収貯留室(B)から水平方向(HL)に蛇行しつつ貯留タンク(1)の後壁(1B)に至る分離流路(D)を形成している。
【0027】
液体分離装置(X1)の供給手段(2)は、図1乃至図3に示すように、第1ポンプ装置(22)、第1管路(23)及び複数の噴射ノズル(24)で構成され、第1ポンプ装置(22)は貯留タンク(1)の天井壁(1F)上に設けられている。
【0028】
この第1ポンプ装置(22)は、分離貯留室(C)に開口する流出口(25)から下層の水溶性液体(WO)に浸漬されている。また、第1ポンプ装置(22)は、図2に示すように、第4仕切板(8)及び貯留タンク(1)の後壁(1B)間の分離経路(D)内に挿入され、貯留タンク(1)の左壁(1C)近傍に配置されている。
【0029】
第1管路(23)は、図1に示すように、第1ポンプ装置(22)及び複数の噴射ノズル(24)に連結されている。
【0030】
複数の噴射ノズル(24)は、図1に示すように、工作機械(Y)の被加工体(Z)の上方に位置して、被加工体(Z)に対峙されている。これら各噴射ノズル(24)は、相互に間隔を隔てて被加工体(Z)周りに配置されている。
これにより、第1ポンプ装置(22)を駆動すると、第1ポンプ装置(22)は、貯留タンク(1)の分離貯留室(C)で分離した下層の水溶性液体(WO)を吸引して、第1管路(23)内に吐出する。そして、水溶性液体(WO)は、第1管路(23)内を流通して、複数の噴射ノズル(24)から被加工体(Z)や工具(Y1)に噴射(供給)される。
【0031】
上記構成の液体分離装置(X1)は、図1に示すように、貯留タンク(1)に不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)を貯留している。
回収貯留室(B)及び分離貯留室(C)に貯留した不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)は、各液体(FO)、(WO)の比重差に基づいて上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)に分離される。そして、回収貯留室(B)及び分離貯留室(C)に貯留した下層の水溶性液体(WO)の液面(α)全体は、上層の不水溶性液体(FO)で被覆されて、この不水溶性液体(FO)及び貯留タンク(1)の各壁(1A)〜(1E)によって、下層の水溶性液体(WO)と空気(外気)との接触を遮断する。
このように、工作機械(Y)の被加工体(Z)に水溶性液体(WO)を供給しない時は、貯留タンク(1)で分離した下層の水溶性液体(WO)の液面(α)全体を上層の不水溶性液体(FO)で被覆して空気(外気)から遮断するので、空気中の細菌等による腐敗、及び空気中の酸素による酸化などの劣化を防止できる。
また、貯留タンク(1)で分離した不水溶性溶液(FO)及び水溶性液体(WO)は、第1〜第4仕切板(5)〜(8)によって流動が規制されるので、下層の水溶性液体(WO)の液面(α)を確実に、上層の不水溶性液体(FO)で被覆できる。
【0032】
上記構成の液体分離装置(X1)において、工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に水溶性液体(WO)を供給するため、第1ポンプ装置(22)を駆動すると、第1ポンプ装置(22)は、図1に示すように、貯留タンク(1)の分離貯留室(C)から下層の水溶性液体(WO)を吸引する。そして、第1ポンプ装置(22)は、吸引した水溶性液体(WO)を第1管路(23)に吐出する。
水溶性液体(WO)は、第1管路(23)を流通して、複数の噴射ノズル(24)から工作機械(Y)の被加工体(Z)に噴射供給される。
【0033】
一方、工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に供給された水溶性液体(WO)は、被加工体(Z)から回収トレイ(11)上に流れ落ちて回収され、図1及び図2に示すように、回収トレイ(11)から回収口(9)を通して回収貯留室(B)内に流入される。
この水溶性液体(WO)の流入に伴って、回収貯留室(B)に流入する水溶性液体(WO)は、回収貯留室(B)に貯留した不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)の各液体と混濁されて、混濁液体(KO)となる。
このとき、回収貯留室(B)に流入する水溶性液体(WO)、及び混濁液体(KO)は、図1及び図2示すように、第1仕切板(5)及び貯留タンク(1)の右壁(1D)等によって直接、分離貯留室(C)に流入することが阻止され、回収貯留室(B)に貯留(滞留)される。
【0034】
回収貯留室(B)に貯留する混濁液体(KO)は、図2及び図4に示すように、第1仕切板(5)及び貯留タンク(1)の前壁(1A)に沿って、回収貯留室(B)内を水平方向(HL)に流動され、この流動に伴って、上層の不水溶性液体(FO)、中間層の液体(FWO)及び下層の水溶性液体(WO)に一次分離される。中間層の液体(FWO)は、不水溶性液体(FO)中に10%前後の水溶性液体(WO)が混濁する液体層である。
【0035】
これにより、貯留タンク(1)の回収貯留室(B)において、回収口(9)側では、水溶性液体(WO)中に混濁する不水溶性液体(FO)の割合(%)が最大となり、回収貯留室(B)の延設端(BA)に向うにつれて、一次分離が進み、水溶性液体(WO)中に混濁する不水溶性液体(FO)の割合(%)は低くなる。そして、回収貯留室(B)の延設端(BA)では、上層の不水溶性液体(FO)、中間層の液体(FWO)及び下層の水溶性液体(WO)に分離され、下層の水溶性液体(WO)の液面(α)は、図4に示すように、上層の不水溶性液体(FO)及び中間層の液体(FWO)で被覆される。
なお、回収貯留室(B)の延設長さや、各液体(FO)、(WO)の組成を適宜選択することで、回収貯留室(B)の延設端(BA)において、混濁液体(KO)を上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)に完全分離することもできる。
【0036】
一次分類した上層の不水溶性液体(FO)、中間層の液体(FWO)及び下層の水溶性液体(WO)は、図2及び図4に示すように、回収貯留室(B)の延設端(BA)から分離貯留室(C)に流入され、分離流路(D)を流動する。
分離貯留室(C)に流入した各層の各液体(FO)、(FWO)、(WO)は、分離流路(D)を水平方向(HL:左右方向)に蛇行しつつ流動され、この流動に伴って、上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)に二次分離される。
また、分離貯留室(C)に流入した各層の各液体(FO)、(FWO)、(WO)は、分離流路(D)を形成する第2〜第4仕切板(6)〜(8)によって、直接、貯留タンク(1)の後壁(1B)側に流動することが阻止され、水平方向(HL)に蛇行しつつ第2〜第4仕切板(6)〜(8)の延設端(6A)〜(8A)を通して、貯留タンク(1)の後壁(1B)側に流動される。
【0037】
これにより、貯留タンク(1)の分離貯留室(C)では、回収貯留室(B)に流入される水溶性液体(WO)及び混濁液体(KO)が回収貯留室(B)から直接流入されず、回収貯留室(B)の延設端(BA)から一次分離した各層の液体(FO)、(FWO)、(WO)が流入され、各層の液体(FO)、(FWO)、(WO)は分離流路(D)を蛇行しつつ流動して、確実に、上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)に二次分離される。
従って、貯留タンク(1)の分離貯留室(C)では、二次分離した下層の水溶性液体(WO)の液面(α)を上層の不水溶性液体(FO)で被覆して、この不水溶性液体(FO)、貯留タンク(1)の各壁(1A)〜(1E)によって下層の水溶性液体(WO)と空気(外気)との接触を遮断できる。
分離貯留室(C)に貯留した下層の水溶性液体(WO)は、空気(外気)との接触が遮断されるので、空気中の細菌や酸素によって腐敗、酸化などの劣化すること、及び蒸発することが抑制される。
【0038】
次に、本発明に係る他の液体分離装置(X2)について、図6乃至図8を参照して説明する。なお、図6乃至図8において、図1乃至図5と同一符号は同一の部材、構成を示すので、その説明は省略する。
【0039】
図6乃至図8において、液体分離装置(X2)は、工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に、貯留タンク(1)で二次分離した不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)を同時、又は選択的に供給する。
【0040】
液体分離装置(X2)は、工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に、不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)を同時又は選択的に供給する供給手段(51)を備えている。
供給手段(51)は、第1ポンプ装置(22)、第1管路(23)及び複数の噴射ノズル(24)に加えて、第2ポンプ装置(52)、第2管路(53)及び複数の噴射ノズル(54)を含んで構成されている。なお、第1ポンプ装置(22)は、円筒部材(22A)を通して二次分離した水溶性液体(WO)に浸漬されている。
【0041】
第2ポンプ装置(52)は、図2及び図3に示すように、第1ポンプ装置(22)に並設して、貯留タンク(1)の天井壁(1F)上に配置されている。この第2ポンプ装置(52)は、分離貯留室(C)に開口する流出口(55)から二次分離した上層の不水溶性液体(FO)に浸漬され、この上層の不水溶性液体(FO)を吸引して吐出させる。
第2管路(23)は、第2ポンプ装置(52)及び複数の噴射ノズル(54)に接続されている。
複数の噴射ノズル(54)は、工作機械(Y)の被加工体(Z)上方に位置して、被加工体(Z)に対峙されている。各噴射ノズル(54)は、間隔を隔てて被加工体(Z)周りに配設されている。
【0042】
上記構成の液体分離装置(X2)は、図1に示すように、第1ポンプ装置(22)を駆動することで、第1ポンプ装置(22)で二次分離した水溶性液体(WO)を吸引して、第1管路(23)に吐出させる。この水溶性液体(WO)は、第1管路(23)を通して複数の噴射ノズル(24)から被加工体(Z)や工具(Y1)に噴射供給される。
また、第2ポンプ装置(52)を駆動することで、第2ポンプ装置(52)で二次分離した不水溶性液体(FO)を吸引して、第2管路(53)に吐出させる。この不水溶性液体(FO)は、第2管路(53)を通して複数の噴射ノズル(54)から工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に噴射供給される。
更に、第1ポンプ装置(22)及び第2ポンプ装置(52)を同時に駆動することで、二次分離した上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)は、各管路(23)、(53)を通して各噴射ノズル(24)、(45)から工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に噴射供給される。
このように、液体分離装置(X2)では、第1ポンプ装置(22)、第2ポンプ装置(52)を同時又は選択的に駆動することで、工作機械(Y)に、不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)を同時又は選択的に供給する。
【0043】
工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)に供給された不水溶性液体(FO)及び/又は水溶性液体(WO)は、回収トレイ(11)で回収され、各液体(FO)、(WO)でなる回収液体(WFO)は回収口(9)を通して貯留タンク(1)の回収貯留室(B)に流入される。
【0044】
回収液体(WFO)は、回収貯留室(B)の不水溶性液体(FO)及び水溶性液体(WO)と混濁されて、各液体(WO)、(FO)の混濁する混濁液体(KO)となる。
液体分離装置(X1)における混濁液体(KO)は、図1乃至図5に示す液体分離装置(X2)と同様に、回収貯留室(B)に貯留されつつ水平方向に流動されて、一次分離される。
【0045】
この一次分離された上層の不水溶性液体(FO)、中間層の液体(FWO)及び下層の水溶性液体(WO)は、図7に示すように、回収貯留室(B)の延設端(BA)から分離貯留室(C)に流入される。
貯留タンク(1)の分離貯留室(C)において、一次分離された各層の液体(FO)、(FWO),(WO)は、分離流路(D)を水平方向に蛇行しつつ貯留タンク(1)の後壁(1B)側に流動され、この流動に伴って、上層の不水溶性液体(FO)及び下層の水溶性液体(WO)に二次分離される。
【0046】
これにより、分離貯留室(C)では、下層の水溶性液体(WO)の液面(α)を上層の不水溶性液体(FO)で被覆して、この不水溶性液体(FO)及び貯留タンク(1)の各壁(1A)〜(1E)によって水溶性液体(WO)と空気(外気)の接触を遮断できる。従って、工作機械(Y)の被加工体(Z)や工具(Y1)から回収した回収液体(WFO)が貯留タンク(1)の回収貯留室(B)に流入しても、水溶性液体(WO)と空気(外気)との接触を遮断でき、空気中の細菌及び酸素による水溶性液体(WO)の腐敗、酸化などの劣化を抑制でき、しかも水溶性液体(WO)の蒸発も抑制できる。
【0047】
なお、本発明に係る液体分離装置(X1)、(X2)において、回収貯留室(B)、分離貯留室(C)及び分離流路(D)は、図2及び図7に示すように、各液体(FO)、(WO)の液面(α)、(β)に水平な方向であって、貯留タンク(1)の左右方向に形成する例を示しているが、これに限定されるものでなく、各液体(FO)、(WO)の液面(α)、(β)に水平であれば、貯留タンク(1)の前後方向や斜め方向等に形成しても良い。回収貯留室(B)、分離貯留室(C)及び分離流路(D)は、第1〜第4仕切板(5)〜(8)を前後方向又は斜め方向等に配置することで形成する。
また、仕切板の枚数は、4枚に限定されず、1枚から3枚、又は5枚以上であっても良く、貯留タンク(1)の容積等によって適宜選択される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、工作機械に水溶性液体を供給する液体分離装置に好適である。
【符号の説明】
【0049】
B 回収貯留室
BA 延設端
C 分離貯留室
FO 不水溶性液体
WO 水溶性液体
KO 混濁液体
X1 液体分離装置
X2 液体分離装置
Y 工作機械
1 貯留手段
21 供給手段
51 供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不水溶性液体及び水溶性液体を貯留して、比重差に基づいて上層の不水溶性液体及び下層の水溶性液体に分離する貯留手段と、
前記貯留手段で分離した前記下層の水溶性液体を、工作機械に供給する供給手段を備え、
前記貯留手段で分離した前記下層の水溶性液体の液面を、前記上層の不水溶性液体で被覆して、該下層の水溶性液体と空気との接触を遮断する液体分離装置であって、
前記貯留手段は、
前記工作機械から回収した水溶性液体が流入され、該水溶性液体の流入に伴って、前記不水溶性液体及び前記水溶性液体の各液体が混濁する混濁液体を貯留して、一次分離する回収貯留室と、
前記回収貯留室から流入する前記一次分離した液体を貯留して、前記上層の不水溶性液体及び前記下層の水溶性液体に二次分離する分離貯留室と、に区画されており、
前記回収貯留室は、
前記各液体の液面に水平な方向に延設して形成され、該回収貯留室の延設端から前記分離貯留室に連通されている、
ことを特徴とする液体分離装置。
【請求項2】
前記供給手段は、
前記工作機械に、前記貯留手段で分離した前記上層の不水溶性液体及び前記下層の水溶性液体を同時又は選択的に供給してなり、
前記回収貯留室には、
前記工作機械から回収した前記不水溶性液体及び/又は前記水溶性液体が流入されることを特徴とする請求項1に記載の液体分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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