説明

液体吐出装置

【課題】吐出量の誤差を少なくでき、かつ、弾性体の永久変形を容易に防止できるダイアフラムやチューブなどの弾性体を用いた液体吐出装置の提供。
【解決手段】液体吐出装置は、ケースと、ケース内に設けられた駆動装置本体と、ケースに装着されたダイアフラム8とを備える。駆動装置本体は、ダイアフラム8に近づく第1方向およびダイアフラム8から離れる第2方向に移動可能に設けられた複数の押圧ロッド33〜35と、各押圧ロッド33〜35を第1方向に付勢する皿バネ57と、前記皿バネ57の付勢力に抗して、前記各押圧ロッド33〜35を個別に前記第2方向に移動させる駆動手段と、前記皿バネ57による付勢力を解除する付勢力解除手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムやチューブを用いた液体吐出装置に係り、特に、設定された所定量の液体を移送するダイアフラムポンプやチューブポンプに利用できる。
【背景技術】
【0002】
ダイアフラム(ダイヤフラム)やチューブを用いたダイアフラムポンプ、チューブポンプは、ダイアフラムやチューブを合成樹脂製にすることなどで、送る液にダメージを与えず、各種フィラー入りの液体の吐出も可能となり、液漏れ防止用のシール材を用いる必要がなく、液が金属に触れない構造も可能などの利点があり、化学・薬品、半導体、印刷などの広い分野で使用されている。
このようなポンプは、ダイアフラムやチューブに対して複数の押圧ロッドを順次往復駆動させてダイアフラムやチューブを押圧したり、その押圧を解除することで液体の吸入、計量、吐出動作を繰り返すことで液を吐出している。そして、押圧ロッドの駆動には、エアシリンダを用いたものが知られているが、本出願人は、エアシリンダ駆動に比べて高速駆動が可能であるモータで回転されるカムを利用したものを開発した(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−29314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1のダイアフラムポンプでは、押圧部材をダイアフラム側に常時付勢する皿バネを設けていたため、次のような課題があった。
すなわち、押圧部材の先端がガイドブロックから突出するため、ガイドブロックと、このガイドブロックに対向配置されるベースブロックとの間にダイアフラムをセットする際に、ダイアフラムを平らにセットすることができなかった。すなわち、ダイアフラムのセット時に、ダイアフラムにおいて押圧部材の先端が当接する部分は変形した状態のままセットされていた。このため、ダイアフラムポンプにおいて周期的な吐出量誤差が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、押圧部材をダイアフラム側に常に付勢しているため、ダイアフラムは押圧部材で押圧される部分が常に変形した状態となり、ダイアフラムが元の状態に戻らない状態、つまり永久変形になってしまうという問題もあった。
このような問題は、ダイアフラムを用いた液体吐出装置(ポンプ)に限らず、ダイアフラムの代わりにチューブを用いたチューブポンプなどの液体吐出装置においても同様であった。
【0006】
本発明の目的は、ダイアフラムやチューブなどの弾性体を用いた液体吐出装置において、吐出量の誤差を少なくでき、かつ、弾性体の永久変形を容易に防止できる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、ケースと、前記ケース内に設けられた駆動装置本体と、前記ケースに装着された弾性体とを備える液体吐出装置であって、前記弾性体は、ダイアフラムまたはチューブで構成され、前記駆動装置本体は、前記弾性体に近づく第1方向および前記弾性体から離れる第2方向に移動可能に設けられた複数の押圧部材と、各押圧部材を前記第1方向に付勢する押圧部材付勢手段と、前記押圧部材付勢手段の付勢力に抗して、前記各押圧部材を個別に前記第2方向に移動させる駆動手段と、前記押圧部材付勢手段による付勢力を解除する付勢力解除手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、複数の押圧部材は、弾性体に近づく第1方向には前記押圧部材付勢手段の付勢力で移動し、弾性体から離れる第2方向には駆動手段によって移動される。すなわち、各押圧部材は、押圧部材付勢手段および駆動手段によって往復移動される。
ここで、押圧部材が第1方向に移動すると弾性体が押圧される。このため、ダイアフラムとダイアフラムが取り付けられた取付面間に形成された液体流路や、中空のチューブ内に形成された液体流路が閉塞される。
一方、弾性体を押圧していた押圧部材が第2方向に移動すると、押圧が解除されて弾性体が元の状態に戻る。このため、前記液体流路は閉塞状態から開放状態に戻る。
従って、複数の押圧部材で弾性体を順次押圧したり、押圧を解除することで、ダイアフラムポンプやチューブポンプのように液体を順次吐出することができる。
【0009】
また、押圧部材付勢手段の付勢力を付勢力解除手段で解除すると、押圧部材による弾性体の付勢が解除されるため、押圧部材を案内するガイドブロックなどから押圧部材が突出しない状態にすることが可能となる。このため、弾性体を液体吐出装置にセットする際に、押圧部材がガイドブロックなどから突出することを防止でき、弾性体としてダイアフラムを用いた場合には、ダイアフラム全体を平らにセットでき、ダイアフラムの一部が変形してセットされるために生じる吐出量の誤差を低減できる。同様に、弾性体としてチューブを用いた場合も、チューブの一部が変形してセットされることも無く、その変形によって生じる吐出量の誤差を低減できる。
さらに、液体吐出装置を停止している場合には、付勢力解除手段で押圧部材の付勢を解除できるため、弾性体が押圧部材で常に付勢されることを防止でき、弾性体の永久変形を少なくできる。このため、弾性体を交換するまでの期間を延長でき、交換コストも低減できる。
【0010】
本発明の液体吐出装置において、前記ケース内には、各押圧部材をガイドするガイドブロックが設けられ、前記駆動手段は、回転駆動源と、この回転駆動源の出力軸に対して回転軸方向に移動可能にかつ出力軸と一体に回転可能に設けられたカムと、前記ガイドブロック内に配置されて各押圧部材を第2方向に付勢して前記カムのカム面に当接させる当接用付勢手段とを備えて構成され、前記付勢力解除手段は、前記カムの第2方向側に配置され、かつ、第1方向および第2方向に沿って所定範囲内でスライド移動可能に設けられたバネ受け部材を備えて構成され、前記押圧部材付勢手段は、前記カムと前記バネ受け部材との間に配置されたバネで構成され、前記バネ受け部材が第1方向側のストロークエンド位置に移動された状態では、前記押圧部材は、前記押圧部材付勢手段によって第1方向に付勢され、前記バネ受け部材が第2方向側のストロークエンド位置に移動された状態では、前記押圧部材は、前記押圧部材付勢手段による付勢力が解除され、かつ、前記当接用付勢手段によって第2方向に付勢され、押圧部材の第1方向側の端部がガイドブロックから突出しない位置まで移動されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、バネ受け部材をスライド移動するだけで、押圧部材に付勢力を加える状態と、押圧部材の付勢力を解除した状態とに容易に切り替えることができる。
【0012】
本発明の液体吐出装置において、前記弾性体はダイアフラムで構成され、前記ガイドブロックは、ガイドブロック付勢手段によって第1方向に付勢され、前記ダイアフラムに密着されていることが好ましい。
このような構成によれば、ガイドブロック付勢手段を備えているので、ガイドブロックを確実にダイアフラムに密着させることができる。
【0013】
本発明の液体吐出装置において、流路ブロックと、この流路ブロックに密着して設けられたダイアフラムと、このダイアフラムを往復駆動する駆動手段とを備え、前記流路ブロックおよびダイアフラムで区画形成され、かつ、液体の吸入流路および吐出流路を連通する少なくとも3本以上の液体流路が設けられ、前記流路ブロックは、前記ダイアフラムが密着されるダイアフラム密着面の中心軸部分に吸入流路または吐出流路の一方が形成され、前記ダイアフラム密着面の外周側に吸入流路または吐出流路の他方が形成され、各液体流路の途中には、前記吸入流路に連通された吸入側バルブ室と、前記吐出流路に連通された吐出側バルブ室と、吸入側バルブ室および吐出側バルブ室の間に形成されて各バルブ室に連通された計量室とがそれぞれ設けられ、前記駆動手段は、前記吸入側バルブ室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材と、前記吐出側バルブ室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記吐出側バルブ室に対応して設けられた吐出側押圧部材と、前記計量室に対しダイアフラムを挟んで配置されて前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材と、前記各押圧部材の駆動を制御する駆動装置本体と、を備えて構成され、前記駆動装置本体は、回転駆動源と、この回転駆動源で回転されるカムと、前記各押圧部材をカムのカム面に当接させる当接用付勢手段と、前記各押圧部材を第1方向に付勢する押圧部材付勢手段とを有するとともに、前記吸入側押圧部材を第1方向に移動してダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着するまで動かして前記吸入側バルブ室を密閉する吸入側バルブ密閉動作、前記吐出側押圧部材を第1方向に移動してダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックに密着するまで動かして前記吐出側バルブ室を密閉する吐出側バルブ密閉動作、前記吸入側押圧部材を第2方向に移動して流路ブロックに密着しているダイアフラムの吸入側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して前記吸入側バルブ室を開放する吸入側バルブ開放動作、前記吐出側押圧部材を第2方向に移動して流路ブロックに密着しているダイアフラムの吐出側バルブ室に対応する部分を流路ブロックから離して前記吐出側バルブ室を開放する吐出側バルブ開放動作、計量室用押圧部材を第1方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックに近づけて前記計量室内の容積を徐々に小さくする容積減少動作、および、計量室用押圧部材を第2方向に移動してダイアフラムの計量室に対応する部分を流路ブロックから遠ざけて計量室の容積を徐々に大きくする容積増大動作を、前記カムを回転駆動源で回転させて各押圧部材をカム面に追従して往復駆動させることで、各押圧部材毎に設定された所定のタイミングで実行させることを特徴とするものでもよい。
【0014】
このような本発明においては、各液体流路に設けられた各バルブ室や計量室に対応する押圧部材を所定のタイミングで往復駆動することで、各バルブ室を開閉したり、計量室の容積を増大させたり、減少させることができる。このため、各押圧部材を所定のタイミングで動かすことで、チェック弁を用いなくても逆流を防止でき、液体を移送できる。従って、チェック弁を備えていないので、各押圧部材の駆動を逆転させて液体を逆流させることができる。
また、3本以上の液体流路を形成し、各液体流路にそれぞれ前記各バルブ室や計量室を設け、かつ各バルブ室や計量室に対応する押圧部材を設けて各液体流路毎に液体の移送タイミングを設定できるので、各液体流路毎の液体移送タイミングを所定位相だけずらすことで、一定量の液体を連続して移送することができ、脈動の少ないポンプにすることができる。
さらに、本発明は、従来のダイアフラムポンプのように、ダイアフラム全体を進退駆動するのではなく、1枚のダイアフラムにおいて、各バルブ室や計量室に対応する部分を個別に駆動しているので、ダイアフラム全体に比べて非常に狭い領域のみを駆動すればよく、ダイアフラム自体の変形等による液移送量の誤差を小さくできる。このため、液移送量が微量であっても、精度よく移送することができる。
その上、ダイアフラムを設けることで、押圧部材等の駆動手段側を、液体流路やバルブ室、計量室等の液体が流れる側と区画できる。従って、シール材を設ける必要が無く、その分、部品点数も少なくできる。
さらに、ダイアフラムは弾性変形可能なゴム等で構成されるため、銀ペーストやはんだペースト、シリカ粉が混入された樹脂などの粒子を含む液体であっても、粒子を潰すことなく吐出でき、液体にダメージを与えることなく移送できる。
また、本発明では、ダイアフラム密着面の中心軸部分に吸入流路または吐出流路の一方を形成し、ダイアフラム密着面の外周側に吸入流路または吐出流路の他方を形成しているので、吸入流路および吐出流路間を連通する3本以上の流体流路を中心軸部分から外周に向かって放射状や螺旋状に形成できる。さらに、各流体流路に対応して設けられた各押圧部材は、回転駆動源によってカムを回転させるだけで、カム面に追従して往復駆動される。このため、駆動装置本体は、端面にカム面を有するカムと、このカムを回転させるモータ等の回転駆動源と、各押圧部材をカム面に当接させるバネ等の当接用付勢手段と、各押圧部材を第1方向に付勢する押圧部材付勢手段とを備えて構成でき、ダイアフラムポンプを小型・軽量化できる。従って、各種製品の生産ラインにおいて、接着剤や各種ペースト等の吐出に本発明のダイアフラムポンプを利用する際にも、ロボットのアームに取り付けて、高速、高加速度で移動させることができ、生産ラインのタクトタイムの短縮を実現でき、生産性向上に寄与することができる。
さらに、本発明では、モータ等からなる回転駆動源でカムを回転させるだけで、各押圧部材を所定のタイミングで繰り返し動作させることができる。この際、各押圧部材の1サイクル動作毎の液体移送量は一定に設定できるため、カムの回転速度を調整するだけで、単位時間当たりの液体移送量を調整できる。従って、ダイアフラムポンプにおける液移送量の制御を非常に簡単に行うことができ、使い勝手の良いダイアフラムポンプ(ディスペンサ)を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,2には、本発明の第1実施形態のダイアフラムポンプ1が示されている。
ダイアフラムポンプ1は、吸入ブロック2と、ポンプブロック3と、保持ブロック4と、モータ取付ブロック5と、駆動ユニット6とを備えている。各ブロック2〜5でダイアフラムポンプ1のケースが構成されている。
【0016】
吸入ブロック2は、図3に示すように、平面略円形に形成され、周囲4箇所の貫通孔21を介してポンプブロック3にねじ込まれるネジ10によって、ポンプブロック3に着脱可能に取り付けられている。
また、ポンプブロック3および保持ブロック4は、保持ブロック4側からポンプブロック3にねじ込まれるネジ(図示略)によって互いに着脱可能に取り付けられている。
【0017】
さらに、保持ブロック4およびモータ取付ブロック5は、図2に示すように、モータ取付ブロック5側からねじ込まれるネジ11によって取り付けられている。
また、保持ブロック4には、モータ取付ブロック5を貫通して抜け止め用のネジ12がねじ込まれている。
なお、各ネジ11,12はそれぞれ2本設けられ、各ネジ11同士やネジ12同士は、それぞれ各ブロック4,5の平面位置において略対角線上の位置に設けられている。
これらの各ブロック3,4,5には中心軸部分に貫通孔がそれぞれ形成され、後述するガイド部材30やカム51等が配置されている。
【0018】
吸入ブロック2のポンプブロック3に対向する面(上面)には、図3に示すように、環状(リング状)のダイアフラム係止溝22が形成されている。
ダイアフラム係止溝22の内周側には、円弧状の吸入流路23が形成されている。吸入流路23および吸入ブロック2の側面間には、液供給孔となるポート24が貫通して形成されている。
吸入ブロック2の側面には、継ぎ手13が袋ナット14で取り付けられ、前記ポート24は継ぎ手13に連通されている。継ぎ手13には、図示略のシリンジやチューブが取り付けられ、吐出用の液体が供給される。
【0019】
吸入ブロック2の上面において、吸入流路23の内側には取付孔25が複数形成されている。
また、吸入ブロック2の上面における中心軸部分には、吸入ブロック2の下面まで連続する貫通孔26が形成されている。
貫通孔26は、小径部と、その小径部の上面側および下面側にそれぞれ形成された大径部とを備えている。
【0020】
この貫通孔26には、吸入ブロック2の下面側から段付きのパイプ27が挿入されている。パイプ27と貫通孔26間にはOリング271が配置され、貫通孔26とパイプ27との隙間からの液漏れを防止している。
さらに、貫通孔26には、ノズル28が下面側から挿入されている。ノズル28は、貫通孔26にねじ込まれる固定ネジ29で固定されている。
【0021】
前記取付孔25には、ベース部材7が取り付けられている。ベース部材7は、図4にも示すように、略円盤状に形成され、その下面に突設された5本のピンを前記取付孔25に挿入することで取り付けられている。
ベース部材7の上面には、ポンプブロック3に対向するダイアフラム密着面である凹部形成面71が設けられている。凹部形成面71は、略円形に形成された平面部分で構成されている。この凹部形成面71には、その中心軸部分に前記パイプ27に挿通されるポート72が形成され、その周囲に複数の凹部73〜75が形成されている。
すなわち、凹部形成面71には、凹部形成面71の外周に沿って形成された第1凹部73と、その内周側に形成された第2凹部74と、その内周側つまりポート72の周囲に配置された第3凹部75とが設けられている。各凹部73〜75は球面状の凹部とされている。
【0022】
ベース部材7の側面には、第1凹部73に連通する切欠76が形成されている。各切欠76は、吸入流路23に連通され、吸入流路23に供給された液体は切欠76を介して各第1凹部73に供給可能にされている。このため、吸入流路23は、ポート24に連通する部分から、少なくともベース部材7に設けられた5つの切欠76に連通可能な位置まで延長されて、平面略C字状に形成されている。
第2凹部74は、連通溝77を介して第1凹部73に連通され、連通溝78を介して第3凹部75に連通されている。第3凹部75は、連通溝79を介してポート72つまり前記パイプ27に連通されている。
【0023】
従って、ベース部材7のダイアフラム密着面である凹部形成面71に形成された第1凹部73、第2凹部74、第3凹部75、切欠76、連通溝77〜79により、ダイアフラム密着面に形成される凹溝が構成され、この凹溝およびダイアフラム8で区画される空間により液体流路が形成されている。この液体流路は、本実施形態では5個(5セット)設けられている。
【0024】
各凹部73,74,75は、ポート72の中心から各凹部73,74,75の中心までの長さが、徐々に小さくなるように設定されている。従って、各凹部73,74,75は、ポート72を中心として螺旋状(スパイラル状)に配置されている。
また、本実施形態においては、凹部73〜75は5セット配置され、各第1凹部73同士はポート72の周囲に360/5=72度ピッチで配置されている。他の第2凹部74同士、第3凹部75同士も72度ピッチで配置されている。
さらに、本実施形態では、第1凹部73により吸入側バルブ室用凹部が構成され、第2凹部74により計量室用凹部が構成され、第3凹部75により吐出側バルブ室用凹部が構成されている。
【0025】
吸入ブロック2およびベース部材7の上面には、図2に示すように、ダイアフラム8が取り付けられている。すなわち、吸入ブロック2のリング状のダイアフラム係止溝22にダイアフラム8の周端縁が配置されている。このダイアフラム8の端縁は、ネジ10で固定された吸入ブロック2およびポンプブロック3で挟持されている。
【0026】
ダイアフラム8は、弾性変形可能なゴム(合成ゴム、天然ゴム)等で構成された弾性体であり、略円盤状に形成されている。ダイアフラム8の上下両面は平面(フラット)状に形成されている。また、ダイアフラム8の厚さは約1mm程度とされている。
この際、吸入ブロック2の上面と、ポンプブロック3の下面との間は、例えば0.9mmなどと前記ダイアフラム8の厚さ寸法よりも僅かに小さくされている。このため、各ブロック2,3をネジ10で組み付けた際には、ダイアフラム8の周縁部は、ブロック2,3で挟持されて圧縮され、ダイアフラム8は所定の圧力で保持される。
【0027】
ポンプブロック3の中心の貫通孔部分にはガイド部材30が配置されている。また、保持ブロック4の中心の貫通孔にはガイド押しリング40および皿バネ41が配置されている。そして、ガイド部材30は、ガイド押しリング40を介して皿バネ41によってダイアフラム8側に付勢されている。
このため、ダイアフラム8は、ベース部材7の凹部形成面71において凹部73〜75や連通溝77〜79以外の平面部分に所定の圧力で押し付けられる。従って、各凹部73〜75は、凹部形成面71に密着されたダイアフラム8で区画され、切欠76、連通溝77〜79のみで吸入流路23、他の凹部73〜75、パイプ27と連通可能に構成されている。このため、第1凹部73およびダイアフラム8で区画された空間により吸入側バルブ室が構成され、第2凹部74およびダイアフラム8で区画された空間により計量室が構成され、第3凹部75およびダイアフラム8で区画された空間により吐出側バルブ室が構成されている。また、切欠76や各連通溝77〜79およびダイアフラム8で区画された空間により、各連通路が構成されている。そして、液体流路は、これらの各バルブ室、計量室および連通路を備えて構成されている。
【0028】
ガイド部材30は、略円柱状に形成され、かつ、ベース部材7の各凹部73〜75の形成位置に対応するガイド孔32が軸方向に貫通して形成されている。各ガイド孔32は、軸方向の中間部に段差が形成されて直径が異なっており、下面側が小径孔部、上面側が小径孔部よりも径の大きな大径孔部とされている。
【0029】
各ガイド孔32には、押圧部材である押圧ロッド33〜35が挿入されている。すなわち、第1凹部73に対応するガイド孔32には、第1押圧ロッド33がそれぞれ挿入され、第2凹部74に対応するガイド孔32には、第2押圧ロッド34がそれぞれ挿入され、第3凹部75に対応するガイド孔32には、第3押圧ロッド35がそれぞれ挿入されている。そして、吸入側バルブ室に対応して設けられた第1押圧ロッド33により吸入側押圧部材が構成され、計量室に対応して設けられた第2押圧ロッド34により計量室用押圧部材が構成され、吐出側バルブ室に対応して設けられた第3押圧ロッド35により吐出側押圧部材が構成されている。
各押圧ロッド33〜35は、段付き形状とされ、ガイド孔32内に配置されたコイルバネ38によってダイアフラム8から離れる方向に付勢されている。
【0030】
各押圧ロッド33〜35のダイアフラム8側の端面は球面状に形成されている。このため、各押圧ロッド33〜35をダイアフラム8側に移動すると、ダイアフラム8は各凹部73〜75の球面に密着するように構成されている。但し、連通溝77〜79は幅寸法が小さいため、連通溝77〜79内にダイアフラム8が入り込むことはなく、連通溝77〜79は常時連通状態に維持される。
一方、押圧ロッド33〜35の他方の端面には、略半球状の凹部が形成され、この凹部にはボール39が収納されている。
【0031】
モータ取付ブロック5は、保持ブロック4の貫通孔内に挿入される円筒状の挿入部5Aと、前記ネジ11,12が挿通される貫通孔が形成されたフランジ部5Bとを備えて構成されている。また、モータ取付ブロック5の中心軸部分にも断面略円形の貫通孔が形成されている。
これらの保持ブロック4およびモータ取付ブロック5の貫通孔部分には、前記押圧ロッド33〜35を駆動する駆動手段が配置されている。
すなわち、保持ブロック4の内部貫通孔には駆動ユニット6で回転駆動されるカム51が配置されている。このカム51は、駆動ユニット6の出力軸61に直接取り付けてもよいが、本実施形態では、スプラインボス52、スプライン軸53を介して出力軸61に取り付けられている。すなわち、出力軸61にはスプライン軸53がピン54により一体的に回転可能に取り付けられている。また、カム51にはスプラインボス52が圧入されている。スプラインボス52およびカム51は、スプライン軸53に対して出力軸61の軸方向にスライド移動可能に、かつスプライン軸53および出力軸61と一体に回転可能に構成されている。
【0032】
カム51およびスプラインボス52は、ボールベアリング55によってモータ取付ブロック5に対して回動自在に支持されている。ボールベアリング55、スプラインボス52およびカム51は、スペーサリング56を介して皿バネ57によってガイド部材30側に付勢されている。また、押圧ロッド33〜35はコイルバネ38でカム51側に付勢されているので、カム51のカム面511は常にボール39に当接されている。
皿バネ57の付勢力は、各コイルバネ38による付勢力の合計値よりも大きく設定されており、押圧ロッド33〜35は、カム51、スプラインボス52、ボールベアリング55を介して皿バネ57によってダイアフラム8に近づく方向つまり第1方向に付勢されている。従って、皿バネ57によって、押圧部材である押圧ロッド33〜35を第1方向に付勢する押圧部材付勢手段が構成されている。
また、コイルバネ38により、押圧ロッド33〜35をダイアフラム8から離れる方向つまり第2方向に付勢してカム51のカム面511に当接させる当接用付勢手段が構成されている。
【0033】
カム51は、端面にカム面511が形成された端面カム(立体カム)で構成され、カム面511は、所定のカム線図に応じたカム形状を有している。すなわち、カム51は、中心軸部分に貫通孔が形成され、その周囲にリング状にカム面511が形成されている。
本実施形態では、カム面511は90°で1サイクルとされ、90°から180°、180°から270°、270°から360°はその繰り返しであるため、0°から90°の部分で説明する。なお、下記の説明において、yはカム面511の軸方向の位置を表し、カム面511が最もダイアフラム8側に近い部分をカム最低位置(y=0)、最も遠い部分をカム最高位置(本実施形態の一例では、例えばy=0.5mm)とする。一方、xは、カム最低位置(y=0)に第1押圧ロッド33のボール39が当接されている状態を0°とし、その位置からのカム51の回転角度つまりボール39に対するカム面511の相対回転角度である。
【0034】
カム51の回転角度が0°から12°までのカム面511は最低位置(y=0)の状態のままである。つまり、その部分のカム面511は、カム51の回転軸に直交する平面で構成されている。
12°から24°までのカム面511は、円周方向の形状が、例えば、
y=(x−12)2/864で表される二次曲線とされている。
24°から30°までのカム面511は、円周方向の形状が、例えば、
y=x/36-1/2で表される直線である。
【0035】
30°から42°までのカム面511は、円周方向の形状が、例えば、
y=-(x−42)2/864+1/2で表される二次曲線である。
42°から48°までのカム面511は、カム最高位置(y=0.5)の状態のままである。
48°から60°までのカム面511は、円周方向の形状が、例えば、
y=-(x−42)2/864+1/2で表される二次曲線である。
【0036】
60°から66°までのカム面511は、円周方向の形状が、例えば、
y=-x/36+2で表される直線である。
66°から78°までのカム面511は、円周方向の形状が、例えば、
y=(x−78)2/864で表される二次曲線である。
78°から90°まではカム面511は、最低位置(y=0)の状態のままである。
【0037】
上記の各カム面は、カム面511の中心軸から放射状に形成されている。すなわち、各カム面511の境界線は、カム面511の中心軸から放射状に配置される直線である。
【0038】
従って、駆動ユニット6によってスプライン軸53、スプラインボス52、カム51が回転すると、前記カム面511の形状に沿って、前記ボール39および押圧ロッド33〜35は軸方向に進退する。押圧ロッド33〜35が凹部73〜75側に移動すると、ダイアフラム8の凹部73〜75に対応する部分(ダイアフラム8において押圧ロッド33〜35が当接する凹部対応部)および凹部73〜75で区画形成される各バルブ室や計量室の容積が減少し、最終的には凹部対応部が凹部73〜75の内面に密着する。すなわち、押圧ロッド33〜35は、容積減少動作を行う。
また、この状態から押圧ロッド33〜35が凹部73〜75から離れる方向に移動すると、ダイアフラム8の凹部対応部は密着していた凹部73〜75の内面から離れ、凹部73〜75およびダイアフラム8間に区画形成される各バルブ室や計量室の容積が増大する。すなわち、押圧ロッド33〜35は、容積増大動作を行う。
このため、本実施形態では、駆動ユニット6、スプライン軸53、スプラインボス52、カム51、当接用付勢手段であるコイルバネ38を備えて駆動手段が構成されている。
【0039】
ここで、押圧ロッド33〜35とボール39との摩擦係数は、ボール39とカム面511の摩擦係数よりも低くなるように、各押圧ロッド33〜35、ボール39、カム51の材質、コーティング処理の有無、コーティング方法等が設定されている。
具体的には、ボール39はタングステンカーバイト等の超硬質合金等で構成された硬質ボールとされている。また、カム51も焼き入れ研磨された炭素工具鋼等の金属等で構成され、カム面511は硬質なものとされている。
一方、各押圧ロッド33〜35およびスプラインボス52は、プラスチック(合成樹脂)などで構成されたものが利用できる。ここで、押圧ロッド33〜35は、通常、ボール39に比べて軟質な樹脂材で構成されるが、その表面をDLCコーティング等でボール39と同程度の硬度としたものを利用しても良い。要するに、ボール39との摩擦係数が、カム面511に比べて各押圧ロッド33〜35側が低くなるように、各材質等が選定されていればよい。なお、各押圧ロッド33〜35は、軟質といってもボール39に比較してのことであり、カム面511の変位をボール39および各押圧ロッド33〜35を介してダイアフラム8に伝達しなければならないため、そのような当接によって変形しないような強度は確保されている。
【0040】
駆動ユニット6は、出力軸61を回転可能な回転駆動源であればよく、各種モータが利用できる。本実施形態では、減速機付のサーボモータで構成されている。
保持ブロック4の側面には、ダイアフラムポンプ1を各種製造装置やロボットアーム等に取り付けるためのネジ穴が形成されている。
【0041】
なお、本実施形態では、5系統の液体流路毎に液体の移送が実行されるため、各液体流路毎にポンプが構成されているといえる。つまり本実施形態では、液体流路に設けられた各バルブ室、計量室(凹部73〜75)、押圧ロッド33〜35、連通路(切欠76、連通溝77〜79)、ダイアフラム8によって液体移送用の各ポンプが構成され、これら複数のポンプによって一定量の液体を脈動少なく連続的に移送できるダイアフラムポンプ1が構成されている。
【0042】
このような本実施形態のダイアフラムポンプ1は、各押圧ロッド33〜35がカム51のカム面511の形状に応じた動作を行うことで特許文献1のポンプと同様に動作する。
すなわち、各押圧ロッド33〜35の進退に応じて前記ダイアフラム8が凹部73〜75に密着する方向に移動して各バルブ室や計量室の容積を小さくしたり、凹部73〜75から離れる方向に移動して各バルブ室や計量室の容積を大きく広げることで、各バルブ室や計量室内への液体の吸入や各バルブ室や計量室からの液体の吐出が行われる。
具体的には、カム51を回転させることで、前記計量室に対応して設けられた計量室用押圧部材である第2押圧ロッド34を第1方向に移動してダイアフラム8の計量室に対応する部分を第2凹部74に密着させて計量室を密閉し、かつ、吸入側バルブ室に対応して設けられた吸入側押圧部材である第1押圧ロッド33を第2方向に移動してダイアフラム8の吸入側バルブ室に対応する部分を第1凹部73から離して吸入流路23から吸入側バルブ室に液体を吸入する吸入工程と、吐出側バルブ室に対応して設けられた吐出側押圧部材である第3押圧ロッド35を第1方向に移動してダイアフラム8の吐出側バルブ室に対応する部分を第3凹部75に密着させて吐出側バルブ室を密閉し、かつ、前記第2押圧ロッド34を第2方向に移動してダイアフラム8の計量室に対応する部分を第2凹部74から離して計量室の容積を増大させるとともに、第1押圧ロッド33を第1方向に移動してダイアフラム8の吸入側バルブ室に対応する部分を第1凹部73側に移動させて吸入側バルブ室の容積を減少させて吸入側バルブ室から計量室に液体を移送する第1移送工程と、前記吐出側バルブ室を密閉した状態のまま、前記第1押圧ロッド33を第1方向に移動してダイアフラム8の吸入側バルブ室に対応する部分を第1凹部73に密着させて吸入側バルブ室を密閉し、液体を吸入側バルブ室および吐出側バルブ室間に区画して計量する計量工程と、前記吸入側バルブ室を密閉した状態のまま、前記第2押圧ロッド34を第1方向に移動して計量室の容積を減少させるとともに、第3押圧ロッド35を第2方向に移動して吐出側バルブ室の容積を増大させて計量室から吐出側バルブ室に液体を移送する第2移送工程と、前記計量室を密閉し、第3押圧ロッド35を第3凹部75に近づく方向に移動して吐出側バルブ室の容積を減少させて吐出側バルブ室から吐出側のポート72に液体を移送し、パイプ27を経由してノズル28から液体を吐出させる吐出工程とが、各ポンプで順次実効され、液体との吐出が行われる。
【0043】
[押圧ロッドに対する付勢力の解除]
ダイアフラムポンプ1を組み立てる場合や、ポンプの駆動を停止している場合には、図5に示すように、前記ネジ11を緩め、モータ取付ブロック5を保持ブロック4に対して第2方向にスライド移動させる。この際、モータ取付ブロック5は、ネジ12の頭に係止されるまで移動可能である。
【0044】
モータ取付ブロック5を第2方向に移動させると、皿バネ57が配置されていたボールベアリング55とモータ取付ブロック5との間隔も広がるため、皿バネ57によってカム51に加わる付勢力が解除される。従って、本実施形態では、モータ取付ブロック5によりバネ受け部材が構成され、このモータ取付ブロック5、前記ネジ11,12等を備えて付勢力解除手段が構成されている。
皿バネ57の付勢力が解除されると、各押圧ロッド33〜35は、コイルバネ38の付勢力で第2方向に移動される。そのため、押圧ロッド33〜35の下端(ダイアフラム8側の端部)は、ガイド部材30の端面よりも上方に移動し、少なくとも押圧ロッド33〜35の下端がガイド部材30から突出しない状態になる。
このため、ダイアフラム8を吸入ブロック2に装着する際に、モータ取付ブロック5を移動させて皿バネ57の付勢力を解除しておけば、ダイアフラム8を平らな状態にセットできる。また、製造ラインなどで使用されるダイアフラムポンプ1は、夜間などのラインの停止時間帯に、前記モータ取付ブロック5を移動させて皿バネ57の付勢力を解除しておけば、ダイアフラム8に押圧ロッド33〜35による押圧力が常時加わることを防止できる。
【0045】
このような本実施形態によれば、特許文献1と同様の効果が得られる他、次のような効果がある。
(1)押圧ロッド33〜35をダイアフラム8側に向かって付勢する皿バネ57の付勢力を解除できるように構成したので、ガイド部材30から押圧ロッド33〜35が突出していない状態でダイアフラム8をセッティングできる。このため、押圧ロッド33〜35が突出した状態でダイアフラム8をセットしていたために、周期的な吐出量誤差が生じていた従来のダイアフラムポンプに対し、本実施形態のダイアフラムポンプ1は、ダイアフラム8を平らにセットできるので、周期的な吐出量誤差の発生を防止できる。
【0046】
(2)また、ダイアフラムポンプ1を使用していない際に、前記モータ取付ブロック5を移動させておけば、ダイアフラム8に押圧ロッド33〜35による押圧力が加わることを解除できる。このため、ダイアフラム8が押圧ロッド33〜35で常時押圧されている場合には、ダイアフラム8に永久変形が生じ、ダイアフラム8を交換する期間も短縮されてしまうが、本実施形態ではダイアフラムポンプ1の未使用時には押圧ロッド33〜35による押圧力が加わることがなく、ダイアフラム8も永久変形し難くできる。このため、ダイアフラム8を交換するまでの期間も長くでき、ダイアフラム8の交換コストも低減できる。
【0047】
(3)さらに、モータ取付ブロック5の第2方向への移動を規制するネジ12を設けているので、前記ネジ11を外した際にモータ取付ブロック5と、保持ブロック4とが完全に離れてしまうことを容易に防止できる。このため、再度、モータ取付ブロック5および保持ブロック4を接合する際には、前記ネジ11を締め付けるだけでよく、ダイアフラムポンプ1を簡単な操作で使用可能な状態に戻すことができる。
【0048】
(4)また、モータ取付ブロック5は、挿入部5Aを保持ブロック4内の貫通孔に挿入しているので、前記ネジ11を緩めることで、モータ取付ブロック5を保持ブロック4に対して容易にスライド移動することができる。このため、ネジ11を緩めるという簡単な操作で皿バネ57の付勢力を解除でき、操作性も向上できる。その上、皿バネ57の付勢力を解除するための構造も簡単であるため、コストも低減できる。
【0049】
(5)皿バネ57とは別に、ガイド部材30をダイアフラム8側に付勢する皿バネ41を設けているので、ダイアフラム8をベース部材7の凹部形成面71に所定の押圧力で密着させることができる。このため、ガイド部材30やベース部材7の加工精度が多少低くても、ベース部材7の各凹部73〜75を確実に区画でき、液体の移送量の精度低下を防止できる。
【0050】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0051】
本発明の液体吐出装置は、弾性体としてダイアフラム8を用いたものに限らず、弾性体としてチューブを用いたチューブポンプでもよい。すなわち、押圧部材をチューブに近づく第1方向に移動してチューブを押し潰すことでチューブを閉塞したり、チューブから離れる第2方向に移動して押し潰されていたチューブを開放することで、吸入側バルブや吐出側バルブを開閉し、また、各バルブ間に配置された計量室の容積を変化させて、液体の吸入や吐出を行えばよい。
【0052】
カム51を駆動する駆動機構の構造としては前記実施形態のものに限らない。例えば、スプラインボス52やスプライン軸53を用いずにカム51を直接出力軸に固定してもよい。
また、モータとしては、ステッピングモータ、サーボモータ、シンクロナスモータ、DCモータ、インダクションモータ、レバーシブルモータ、エアモータ等の種々のモータを利用することができる。
【0053】
また、ダイアフラム8の材質は、ゴム製のものに限らず、フッ素樹脂等とゴム等を積層したものでもよい。このような構成によれば、ダイアフラム8の液に接する面を耐薬品性能が高いフッ素樹脂等で構成することで、使用できる液体の種類を大幅に増やすことができ、各種用途に利用できる。要するに、ダイアフラム8としては、押圧ロッド33〜35による押圧力で変形可能であり、かつ押圧ロッド33〜35の押圧力が解除された際には元の状態に戻ることができる弾性変形可能な材質であればよい。
なお、フッ素樹脂等のゴムに比べて変形し難い材質のものを利用した場合には、凹部73〜75の深さ寸法を例えば0.1mm程度に小さくしたり、形状等を工夫して、変形量の少ないダイアフラム8でも凹部73〜75に密着できるように構成すればよい。要するに、凹部73〜75の形状、寸法は、使用するダイアフラム8の材質や液体の移送量に応じて適宜設定すればよい。
【0054】
前記実施形態は、ベース部材7を吸入ブロック2と別体に構成していたが、吸入ブロック2にダイアフラム8に密着する凹部形成面を形成してもよい。但し、ベース部材7を吸入ブロック2と別体で構成すれば、例えば、ベース部材7を樹脂製成形品などで構成でき、例えば金属製とされる吸入ブロック2に切削加工などで各凹部73〜75を形成する場合に比べて、加工精度を向上できる。
また、押圧部材付勢手段の構成は皿バネ57に限らず、押圧部材を第1方向に付勢できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図である。
【図2】前記実施形態の要部の断面図である。
【図3】前記実施形態の吸入ブロックを示す平面図である。
【図4】前記実施形態のベース部材の凹部形成面を示す平面図である。
【図5】前記実施形態の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…ダイアフラムポンプ、2…吸入ブロック、3…ポンプブロック、4…保持ブロック、5…モータ取付ブロック、6…駆動ユニット、7…ベース部材、8…ダイアフラム、30…ガイド部材、33…第1押圧ロッド、34…第2押圧ロッド、35…第3押圧ロッド、38…コイルバネ、41…皿バネ、51…カム、57…皿バネ、71…凹部形成面、73…第1凹部、74…第2凹部、75…第3凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に設けられた駆動装置本体と、前記ケースに装着された弾性体とを備える液体吐出装置であって、
前記弾性体は、ダイアフラムまたはチューブで構成され、
前記駆動装置本体は、
前記弾性体に近づく第1方向および前記弾性体から離れる第2方向に移動可能に設けられた複数の押圧部材と、
各押圧部材を前記第1方向に付勢する押圧部材付勢手段と、
前記押圧部材付勢手段の付勢力に抗して、前記各押圧部材を個別に前記第2方向に移動させる駆動手段と、
前記押圧部材付勢手段による付勢力を解除する付勢力解除手段と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記ケース内には、各押圧部材をガイドするガイドブロックが設けられ、
前記駆動手段は、回転駆動源と、この回転駆動源の出力軸に対して回転軸方向に移動可能にかつ出力軸と一体に回転可能に設けられたカムと、前記ガイドブロック内に配置されて各押圧部材を第2方向に付勢して前記カムのカム面に当接させる当接用付勢手段とを備えて構成され、
前記付勢力解除手段は、前記カムの第2方向側に配置され、かつ、第1方向および第2方向に沿って所定範囲内でスライド移動可能に設けられたバネ受け部材を備えて構成され、
前記押圧部材付勢手段は、前記カムと前記バネ受け部材との間に配置されたバネで構成され、
前記バネ受け部材が第1方向側のストロークエンド位置に移動された状態では、前記押圧部材は、前記押圧部材付勢手段によって第1方向に付勢され、
前記バネ受け部材が第2方向側のストロークエンド位置に移動された状態では、前記押圧部材は、前記押圧部材付勢手段による付勢力が解除され、かつ、前記当接用付勢手段によって第2方向に付勢され、押圧部材の第1方向側の端部がガイドブロックから突出しない位置まで移動されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記弾性体はダイアフラムで構成され、
前記ガイドブロックは、ガイドブロック付勢手段によって第1方向に付勢され、前記ダイアフラムに密着されていることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7980(P2009−7980A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168845(P2007−168845)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000111373)ノイベルク有限会社 (10)
【Fターム(参考)】