説明

液体流路の洗浄方法

【課題】本発明の目的は、飲料水用貯蔵容器内の飲料水を内部に組み込まれた液体流路に通して冷却し吐出コックから吐出するための飲料水供給装置において、タンパク質、雑菌等を確実に排除できる液体流路の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】 飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路1に通して冷却し、吐出コック2から外部に吐出するための飲料水供給装置Aにおける液体流路1の洗浄方法であって、上記液体流路に対して最初に強アルカリ電解水を流通させ、次に強酸性電解水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体流路の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、飲食店の多くで冷えたビール等の飲料水を提供するサービスに飲料水供給装置が使われている。(特開2003−97876参照)
この飲料水供給装置は、飲料水を流通させる液体流路10を備え、この液体流路10は冷却水、氷、不凍液等によって冷却されており、液体流路10を通った飲料水は最終的に吐出コック20を介して外部に吐出される構造となっている。
これら飲料水供給装置は、その使用後に内部の液体流路10の洗浄を行わないと、酒石、酵母カスまたは雑菌の死骸といったものが液体流路10の内側に付着してしまう。
そのため、これらを洗浄しないまま放置すると、飲料水を供給した際、異臭を発したり味自体が変化してしまったりする。
このようなことから、液体流路10に水道30から水を流したり(図7参照)、或いは液体流路10にスポンジ等のような図示しない可撓性部材を水と共に通過させることで液体流路10の壁面を洗浄する方法が提供されている。
【特許文献1】特開2003−97876
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述したような物理的な力や水による洗浄だけでは壁面に付着したタンパク質、雑菌等を完全に除去することはできない。
特にスポンジ等のような可撓性部材を使用する場合には、液体流路途中でそれが詰まってしまって機械の故障の原因となる。
【0004】
本発明はかかる実状を鑑みて、より洗浄効果が高い洗浄方法を開発した。
すなわち、本発明は飲料水用貯蔵容器内の飲料水を内部に組み込まれた液体流路に通して冷却し吐出コックから吐出するための飲料水供給装置において、タンパク質、雑菌等を確実に排除できる液体流路の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、本発明者はこのような課題背景を考慮し鋭意研究を重ねた結果、飲料水供給装置における液体流路の洗浄方法として、その液体流路に強アルカリ電解水、強酸性電解水を流すことでタンパク質、雑菌等を確実に除去できることを見出し、この知見により本発明を完成させたものである。
【0006】
すなわち本発明は(1)、飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路に通して冷却し、吐出コックから外部に吐出するための飲料供給装置における液体流路の洗浄方法であって、
上記液体流路に対して強アルカリ電解水及び強酸性電解水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法に存する。
【0007】
また、本発明は(2)、飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路に通して冷却し、吐出コックから外部に吐出するための飲料水供給装置における液体流路の洗浄方法であって、
上記液体流路に対して最初に強アルカリ電解水を流通させ、次に強酸性電解水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法に存する。
【0008】
また、本発明は(3)、飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路に通して冷却し、吐出コックから外部に吐出するための飲料水供給装置における液体流路の洗浄方法であって、
上記液体流路に対して最初に強アルカリ電解水を流通させ、次に強酸性電解水を流通させ、最後に水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法に存する。
【0009】
また、本発明は(4)、水を流通させた後、ガス体を流通させることを特徴とする(3)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0010】
また、本発明は(5)、強酸性電解水を流通させた後、再び強アルカリ電解水を流通させることを特徴とする(4)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0011】
また、本発明は(6)、飲料水がビール、ワイン、焼酎等のアルコール類であることを特徴とする(1)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0012】
また、本発明は(7)、飲料水が清涼水、水、ジュース等の嗜好用飲料類であることを特徴とする(1)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0013】
また、本発明は(8)、飲料水供給装置が、冷凍液を使った冷凍装置を有するものであることを特徴とする(1)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0014】
また、本発明は(9)、液体流路への液入り口と電解水供給口とを外部流路を介して連絡して流通させることを特徴とする(1)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0015】
また、本発明は(10)、外部流路が飲料水用貯蔵容器の供給コックと、該供給コックと液入り口とを連結するホースにより構成される事を特徴とする(9)記載の液体流路の洗浄方法に存する。
【0016】
なお、本発明の目的に添ったものであれば上記(1)から(10)を適宜組み合わせた構成も採用可能である
【発明の効果】
【0017】
本発明の液体流路の洗浄方法によれば、飲料水用貯蔵容器内の飲料水を内部に組み込まれた液体流路に通して冷却し吐出コックから吐出させるための飲料水供給装置において、上記液体流路に対して強アルカリ電解水及び強酸性電解水を流通させることとしたので液体流路内のタンパク質が除去され、また腐敗物と雑菌も確実に排除されるので殺菌と消臭が行われる。
すなわち強アルカリ性電解水が液体流路内のタンパク質を除去し、強酸性電解水が液体流路内の腐敗物や雑菌類を除去し殺菌、消臭する。
【0018】
また、水を流通させることによって更に確実に液体流路に付着した各電解水の洗浄が可能となる。
また、エアーを流通させることによって液体流路内部が乾燥され、その後の雑菌の繁殖の可能性を抑えることができる。
また、強酸性電解水を流通させた後に強アルカリ電解水を再び流通させることで、液体流路の腐食も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、洗浄方法の対象となる飲料水供給装置(通常使用モード)の例を示す。
飲料水供給装置Aは、飲料水用貯蔵容器内の飲料水を内蔵された液体流路1に通して冷却し、吐出コック2から吐出する装置である。
飲料水供給装置Aは、供給コック5Bを備えた飲料水用貯蔵容器内の飲料水を、外部流路5であるホース5Aを介して液入り口3から受け入れており、この受け入れられた飲料水は、内蔵されている液体流路1を通るうちに冷却されて最終的に吐出コック2から吐出される。
この飲料水供給装置Aには冷却部A1を備えており、この冷却部A1に配設されている部分の液体流路1が冷却されることにより内部を流れる飲料水も冷却される仕組みとなっている。
ここで、飲料水としては、ビール、ワイン、焼酎等のアルコール類であっても、或いは清涼水、水、ジュース等の嗜好用飲料類であっても、その他の飲料水であっても限定されるものではない。
【0020】
〔実施形態1〕
図3は本発明の実施形態1の工程を説明するブロック図である。
飲料水供給装置Aを洗浄する場合、図1に示す「通常使用モード」から図2に示す「洗浄モード」に切り換える。
まずホース5Aは液入り口3と接続したままで供給コック5Bを飲料水用貯蔵容器から切り離して電解水供給口4に接続する。
接続した後、電解液供給装置A2より、最初に強アルカリ電解水を液体流路1に流通させ、(強アルカリ電解水流通工程)汚水を吐出コック2から排出する。
ここで電解液供給装置A2は、塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム溶液等から常法により強アルカリ電解水や強酸性電解水を製造する装置である。
強アルカリ電解水と同時に強酸性電解水も製造されるために電解水供給口4から強アルカリ電解水を供給する場合、強酸性電解水は、電解水供給装置A2に接続されているドレン管を通して外部に排出される。
上述のように強アルカリ電解水を供給することにより、液体流路内壁に付着したタンパク質が分解されて強アルカリ電解水と共に押し流され、吐出コック2より排出される。
後述するように強酸性電解水を液体流路内に流通させる前に、強アルカリ性電解水でタンパク質を分解しておくことで、強酸性電解水の殺菌、消臭効果を高めることができる。
【0021】
次に、強酸性電解水を液体流路1に流し(強酸性電解水流通工程)、液体流路1の殺菌消臭を行い、汚水を吐出コック2から排出する。
ここで、強酸性電解水を供給する場合は、強アルカリ電解水は、同様に電解水供給装置A2に接続されているドレン管を通して外部に排出される。
実質的にはこの強アルカリ電解水流通工程と強酸性電解水流通工程の二つの工程により、ほぼ完璧に液体流路内のタンパク質の除去、及び殺菌、消臭が達成される。
【0022】
〔実施形態2〕
図4は、本発明の実施形態2の工程を説明するブロック図である。
実施形態2が実施形態1と異なる点は最後に液体流路1に水を流通させる点である。
これにより、液体流路内のすすぎを行い、次に飲料水供給装置を使うときに、流路内に付着していた電解水が、飲料水に混入され、その味を変えてしまうようなことを防止する。
【0023】
〔実施形態3〕
図5は本発明の実施形態3の工程を説明するブロック図である。
実施形態3が実施形態2と異なる点は、水を流通させた後、更に高圧のエアーを液体流路1に通す点である。
液体流路を完全に乾燥させることで液体流路内に残っていた水分に雑菌等が繁殖することを完全に防止する。
【0024】
〔実施形態4〕
図6は本発明の実施形態4の工程を説明するブロック図である。
この実施形態4が実施形態3と異なる点は、強酸性電解水を流通させた後、再び強アルカリ電解水を流通させることにある。
これにより液体流路を構成する管の腐食を防止する効果がある。
【0025】
ここで参考までに電解水の性質について述べると、電解水は浄化過程を経た通常の水を電気分解することで得られ、医療分野でも広く使用されているものである。
例えば、強酸性電解水は塩化ナトリウム溶液(食塩水)を電気分解することにより、陽極側で得られるものであり、強アルカリ電解水は、陰極側で得られるものである。
【0026】
後者の強酸性電解水は、次亜塩素酸(HCLO)に起因する殺菌力(除菌、抗菌等)を有するが、空気に接すると含まれる塩素化合物が塩素ガスとして空気中に放出され、通常の水に戻るため環境への汚染はほとんどない。
強酸性電解水の物理的性質は、通常、pH2.7以下、酸化還元電位1000mV以上である。
【0027】
後者の強アルカリ電解水には極微量のNaOHが存在するためタンパク質溶解作用があり、また別に、脂質等の汚れに対しては、油脂分を分解してグリセリンと脂肪酸に鹸化する鹸化作用や油脂分を小さく寸断したり、細かく分散させて剥がれ易くする乳化、分散作用を有し、汚れの除去に効果がある。
さらに、金属の表面に不動態皮膜を形成するため腐食抑制効果も有する。
強アルカリ電解水の物理的性質は、通常pH11以上、酸化還元電位-50〜-200mVである。
【0028】
参考までに、強酸性電解水と他の消毒薬との殺菌性の比較を表1に示す。
【0029】
〔表1〕

【0030】
以上説明してきたように、本発明により、飲料水用貯蔵容器内の液体流路内を常に清潔な状態に保つことができ、味を損なうことなく質の良い飲料水(アルコール類や嗜好用飲料類)を提供することができる。
【0031】
また、本発明は上述した一実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で他の種々の変形が可能であること言うまでもない。
図1に示した飲料水供給装置とは異なる冷却用の流体流路を有する構造の飲料水供給装置であっても当然採用可能である。
例えば、上述した一実施形態では冷却部の構造は冷却水によって冷却する構造であるが、不凍液を使って冷却する構造であっても当然に採用可能である。
また付属する装置も更に機能を有する装置であってもよく、図のものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、洗浄方法の対象とする飲料水供給装置における通常使用モードを説明する図である。
【図2】図2は、洗浄方法の対象とする飲料水供給装置における洗浄モードを説明する図である。
【図3】図3は、本発明の第一の実施例の工程を説明するブロック図である。
【図4】図4は、本発明の第二の実施例の工程を説明するブロック図である。
【図5】図5は、本発明の第三の実施例の工程を説明するブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第四の実施例の工程を説明するブロック図である。
【図7】図7は、従来の水道水による洗浄を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 液体流路
2 吐出コック
3 液入り口
4 電解水供給口
5 外部流路
5A ホース
5B 供給コック
10 液体流路
20 吐出コック
30 水道
A 飲料水供給装置
A1 冷却部
A2 電解水供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路に通して冷却し、吐出コックから外部に吐出するための飲料水供給装置における液体流路の洗浄方法であって、
上記液体流路に対して強アルカリ電解水及び強酸性電解水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法。
【請求項2】
飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路に通して冷却し、吐出コックから外部に吐出するための飲料水供給装置における液体流路の洗浄方法であって、
上記液体流路に対して最初に強アルカリ電解水を流通させ、次に強酸性電解水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法。
【請求項3】
飲料水用貯蔵容器内の飲料水を液体流路に通して冷却し、吐出コックから外部に吐出するための飲料水供給装置における液体流路の洗浄方法であって、
上記液体流路に対して最初に強アルカリ電解水を流通させ、次に強酸性電解水を流通させ、最後に水を流通させることを特徴とする液体流路の洗浄方法。
【請求項4】
水を流通させた後、ガス体を流通させることを特徴とする請求項3記載の液体流路の洗浄方法。
【請求項5】
強酸性電解水を流通させた後、再び強アルカリ電解水を流通させることを特徴とする請求項4記載の液体流路の洗浄方法。
【請求項6】
飲料水がビール、ワイン、焼酎等のアルコール類であることを特徴とする請求項1記載の液体流路の洗浄方法。
【請求項7】
飲料水が清涼水、水、ジュース等の嗜好用飲料類であることを特徴とする請求項1記載の液体流路の洗浄方法。
【請求項8】
飲料水供給装置が、冷凍液を使った冷凍装置を有するものであることを特徴とする請求項1記載の液体流路の洗浄方法。
【請求項9】
液体流路への液入り口と電解水供給口とを外部流路を介して連絡して流通させることを特徴とする請求項1記載の液体流路の洗浄方法。
【請求項10】
外部流路が飲料水用貯蔵容器の供給コックと、該供給コックと液入り口とを連結するホースにより構成される事を特徴とする請求項9記載の液体流路の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−39051(P2007−39051A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222263(P2005−222263)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(595076008)株式会社ニットク (14)
【Fターム(参考)】