説明

液体燃料用燃焼器

【課題】チェーフィングなど調理済み食物を適温に維持するために用いる液体燃料用燃焼器において、残存燃料の目視確認が可能な透明ないし半透明の素材を用いながら安全性と利便性を損なうことなく逆に向上させること。
【解決手段】燃焼器本体を、一方側の端部に開口部を設けると共に他方側の端部を閉止して液体燃料を充填収容する空積を与えた透明ないし半透明の素材からなる中空の容器と、当該容器の開口部に着脱自在に取り付けて容易且つ確実に閉止することができる蓋体と、当該蓋体の表面略中央位置に設けた貫通孔を介して挿通保持された燃焼芯で構成することにより、燃焼器の使用時にだけ容器内に液体燃料を充填収容して燃焼利用を行い、非使用時や保管時には容器内の液体燃料を簡単に除くことができ、廃棄時にも残存燃料と構成各部簡便に分別廃棄できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料用燃焼器、さらに詳しくは、主としてチェーフィングなど調理済みの食物を液体燃料の燃焼で加熱加温することにより調理直後の適温に維持して飲食者に提供するために用いるのに適した液体燃料用燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の食物で構成される料理を飲食者に供するに当たっては、いわゆるフルコース料理や会席料理で行われている如く、各食物毎に調理直後の適温で提供して食してもらうことが好ましいことは言うまでもないが、飲食者の人数や飲食時間さらには飲食形態などの環境条件によっては必ずしも容易ではなく、何らかの熱源を用いて調理後の食物を加熱加温して適温に維持することが必要になる。
【0003】
パーティーやセレモニーなど、多数の飲食者が長時間に亘って他種類に及ぶ食物を自由に食して楽しむ場合にはその必要性が特に高く、例えば図5に示す如く、脚部11を持つ枠台10に温水を収容したウォーターパン12と調理済みの食物を収容するチェーフィングパン13とを順次載置し、ウォーターパン12の下部に備えた適宜熱源(例えば、液体燃料用燃焼器1)でウォーターパン12内の温水を加熱することによりチェーフィングパン13上に載置した食物を適温に維持して飲食者の自由に任せて随時提供するチェーフィングが行われていることは周知のところである。
【0004】
このチェーフィングの熱源、その他調理済み食物を保温(適温維持)するために使用されている主要な熱源の一つが、アルコール系の液体燃料を充填収容して燃焼させる液体燃料用燃焼器であり、保温専用燃料もしくはチェーフィング燃料などの一般名称の下で既に広く提供され用いられて今日に至っている。
【0005】
この種の液体燃料用燃焼器として従来から最も一般的に用いられているのは、図6に示すところのもので、両端を閉止して略密閉状態に形成された金属製筒状容器2の中空部に予め液体燃料が充填収容されていると共に、該容器2の一方端部の端面略中央位置に設けられた挿通保持部25を介して、燃焼芯4が上端側を容器2の外部に突出し下端側を容器2内部に収容された液体燃料に浸漬する位置に固定的な状態で取り付けられており、この燃焼芯4が毛管現象を利用して容器2内の液体燃料を吸い上げ外部に突出した上端部分で燃焼するよう構成されている。
【0006】
上記の燃焼器は、強度の高い金属素材で略密閉状態に構成されているため、内部に充填収容された液体燃料が漏れ出す恐れや容器破損の危険が少ないなどの安全面や比較的廉価に提供できるコスト面が評価されて広く採用され続けてきたものと考えられるが、燃焼利用時の燃料残量を目視確認することができず、わざわざ燃焼を中断した上で容器を振るなどして判断せざるを得ない点が問題として指摘されていた。
【0007】
この問題を解決するため、燃焼器本体(容器)を透明ないし半透明の素材(耐熱性の合成樹脂或いはガラス)で形成することが提案され提供もされており、これによって燃焼利用時における燃料残量の目視確認は可能になっているものの、次に挙げる問題点が改めて指摘されるに至っている。
【0008】
その一つは、燃焼器本体を透明ないし半透明の耐熱性素材で形成しても、従来の金属素材を用いた容器の場合と同様に略密閉状態の容器形態を踏襲していることに起因するものである。
【0009】
第1点としては、略密閉構造のために、金属素材を用いた燃焼器の場合同様、非使用時や保管時にも容器内に液体燃料を充填収容しておかなければならないが、耐熱性の樹脂素材やガラス素材の通常強度が金属素材の強度より低いことから、少なくとも利用者側において非使用時や保管時における安全性が金属素材の燃焼器より劣るとする安全面への懸念を生む恐れがあり、このような懸念が生じた場合にこれを払拭することは容易でない。
【0010】
もちろん、強度的要請に応える耐熱樹脂や耐熱ガラスを選択することは可能であると共に容易であり、透明ないし半透明の素材を用いて形成した燃焼器であっても、通常保管時に要求される強度を十分に充たして金属製の燃焼器に特段劣るところのない安全な燃焼器を提供することはでき、現にそのように安全な燃焼器が提供されているが、利用者に素材の強度と非使用時の安全性に関する懸念を抱かれた場合、現実の安全性とは関わりなくその市場性を制約されざるを得ない。
【0011】
第2点としては、同様に略密閉構造のため、利用時に液体燃料を簡便且つ安全に補充して継続利用を図り或いは燃焼利用終了後に液体燃料を補充ないし再充填して反復利用を可能にするなど、利用者のコスト負担を緩和し利用の便を向上させる道が拓かれていない。
【0012】
第3点も同一の理由によるもので、この種の液体燃料用燃焼器は使い捨ての消耗使用を前提としているが、略密閉構造であることから燃焼器を廃棄する際に残存燃料を捨てる手間が大きなことも問題点として指摘されている。
【0013】
他の一つも安全面の懸念に関するもので、燃焼器本体に透明ないし半透明の樹脂素材またはガラス素材を用いる以上、燃焼芯を取り付けた容器の上端部端面も同素材で形成することになるが、当該部分が燃焼部の直近に位置する上に、クーラーの風などにより避けることのできない炎の揺らぎに晒され、特にチェーフィングの熱源として用いる場合にウォーターパンの高い輻射熱を受けることから、金属素材より耐熱性の低い通常の樹脂素材やガラス素材では長時間に亘って加えられる高熱で劣化ないし脆弱化する可能性を完全に否定することはできないから、少なくともそのように考える利用者が燃焼使用時の安全性に懸念を抱いた場合、上記第1点に挙げた安全性に関する懸念と同様にこれを払拭することは容易でなく、その市場性を大きく制約される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−132215号公報
【特許文献2】特開2002−81616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、透明ないし半透明の素材を用いることで燃焼利用時の燃料残量を容易に目視確認できることはもちろんのこと、その強度や耐熱性に利用者が懸念を抱く場合のある透明ないし半透明の素材を用いながら、非使用時には燃焼器本体内に液体燃料を収容することなく保管することができる上に、燃焼利用中に燃料を燃焼し尽くした際には簡便且つ安全に燃料を補充して利用を継続できると共に、燃焼利用後にも適時容易に燃料を補充ないし再充填することで反復利用に供することができ、また、廃棄時に残存燃料を捨てる手間も大きく軽減されており、さらには長時間に亘る燃焼利用を行っても燃焼芯を突出配設した上端部端面が高熱によって劣化ないし脆弱化する懸念を抱かせない、安全で利便性が高くしかも廉価で市場性の高い液体燃料用燃焼器を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、一方端部に開口部を設けると共に他方端部を閉止して液体燃料を収容する中空の空積を形成した透明ないし半透明の素材からなる容器と、前記容器の開口部と略同形でその略中央部に貫通孔を設けてなり前記開口部に着脱自在に取り付けて閉止する蓋体と、前記蓋体の貫通孔に挿通しその上端側を前記蓋体の外面側に突出させて取り付ける燃焼芯とからなる、ことを特徴とする液体燃料用燃焼器である。
【0017】
請求項2の発明は、前記蓋体が金属素材からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の液体燃料用燃焼器である。
【0018】
請求項3の発明は、前記容器の開口部が容器端部の端面全体に亘る、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体燃料用燃焼器である。
【0019】
請求項4の発明は、前記容器が上端部外周表面に周方向に設けられた複数の嵌合凸溝を備えると共に、前記蓋体が外周端部に下方に張設された環状の嵌合縁部を有してなり、該嵌合凸溝と嵌合縁部を係合して前記容器と蓋体とを取り付けるよう構成してなる、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体燃料用燃焼器である。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係る液体燃料用燃焼器は、単に燃焼器本体を透明ないし半透明の耐熱素材で形成して燃料残量の目視確認を可能にしたに止まるものではなく、燃焼器を着脱容易な容器部分と蓋体で構成することによって、燃焼器内には燃焼利用時にのみ液体燃料を充填供給すれば足り非使用時には液体燃料を収容しない状態で安全に保管できる上に、簡便で容易な継続利用や反復利用も可能なものとしており、さらに、蓋体に金属素材を用いれば高熱に曝される燃焼器の上端部端面に生じる劣化や脆弱化の懸念まで払拭することができるから、従来指摘された問題の全てを解決して安全で利便性が高く廉価で市場性に富んだ液体燃料用燃焼器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る液体燃料用燃焼器の一例を示す分解斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明に係る液体燃料用燃焼器の一例を示す断面図である。(実施例1)
【図3】本発明に係る液体燃料用燃焼器による燃焼状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図4】本発明に係る液体燃料用燃焼器による燃焼状態を示す断面図である。(実施例1)
【図5】本発明に係る液体燃料用燃焼器を用いたチェーフィングの一例を示す分解斜視図である。
【図6】従来の液体用燃焼器の一例を示す斜視図である。
【0022】
主としてチェーフィングなど調理済み食物の保温(適温維持)に用いられる液体燃料用燃焼器において、安全で利便性が高く廉価で市場性に富む液体燃料用燃焼器を提供するという目的を、特段の部材点数の増加も、製造工数の増加やコストの上昇も伴うことなく実現した。
【実施例1】
【0023】
図1および図2をもってその一実施例を示し、図3および図4をもって燃焼時の状態を示した通り、本発明に係る液体燃料用燃焼器は、着脱自在に構成された容器2並びに蓋体3と、該蓋体3に取り付けられた燃焼芯4によって構成されている。
【0024】
容器2は、一方側の端部に開口部を設けると共に他方側の端部を閉止して液体燃料を収容するための中空の空積を設けてなり、透明ないし半透明の耐熱素材で形成されるものとするが、本実施例では、素材として透明性と耐熱性、さらには難燃性と耐衝撃性において高い物性を示すポリカーボネート樹脂を採用したほか、容器2一方端部側にその端面全体に亘る広い開口部を与えている。
【0025】
また、上記容器2の開口された上端部の外周表面側には、次に説明する蓋体3を着脱容易で且つ確実に取り付けて開口部を閉止することができるように、周方向に沿って複数の嵌合凸溝21を刻設すると共に、該嵌合凸溝21に上下方向の適宜傾斜角を与えている。
【0026】
蓋体3は、上記した容器2の開口部を閉止するに足る略同形の外形面積を有する略扁平な板状材であって、その略中央位置には貫通孔32と該貫通孔32を囲繞するスリーブ状の保持部31とが設けられ、該貫通孔32と保持部31を介して次に説明する燃焼芯4を抜き差し自在に挿通保持して取り付けられるよう構成してあり、本実施例においては蓋体の素材として適厚のスチール材を用いた。
【0027】
また、蓋体3の外周端縁には裏面方向へ適幅で進展する環状の縁部を設けると共に、該縁部の下端部を蓋体3の内方へかしめて適宜屈曲させることにより容器2の開口部外周表面に刻設した嵌合凸溝21と係合する嵌合縁部33を形成し、この嵌合縁部33と嵌合凸溝21の係合により、蓋体3を容器2の開口部に着脱容易に嵌合させて取り付け、容器2の開口部を確実に閉止することができるよう構成している。
【0028】
燃焼芯4は、ガラス繊維を主材とする公知のものを選んでおり、前記した蓋体3の略中央位置に設けられた貫通孔32を介して挿通すると共に、保持部31をもって上端側が蓋体3の表面側外方へ突出し下端側が容器2内に収容される液体燃料に浸漬する位置に抜き差し自在な状態に保持して取り付け、図3および図4で示す如く、容器2内に充填収容された液体燃料Fを毛管現象によって上端側まで吸い上げて該部において燃焼する。
【0029】
本発明に係る液体燃料用燃焼容器は以上に説明の構成を有してなるものであって、燃焼器1を着脱自在な蓋体3と透明ないし半透明の容器2とによって構成しているので、燃焼器1の使用時にだけ液体燃料Fを容器2内に充填収容しその開口部を蓋体3で閉止した上で蓋体3に取り付けられた燃焼芯4に着火して燃焼利用すればよく、非使用時や保管時には液体燃料Fをより安全な適宜容器に移した空の状態にできるので、透明ないし半透明の素材を用いた従来品と比較した場合にはもちろん、金属製の燃焼器と比較しても、非使用時や保管時の安全性が大きく向上しており、透明ないし半透明の素材を用いた燃焼器に対して利用者が抱く場合のある安全性に関する懸念を完全に払拭することができる。
【0030】
特に、本実施例に係る燃焼器1では、容器2の一方端部端面の全体に亘って開口部を設けることで開口を大きくとり、しかも、容器2の嵌合凸溝21と蓋体3の嵌合縁部33によって容器2と蓋体3の着脱と開口部の閉止を極めて容易で確実なものにしているから、使用前における液体燃料Fの供給も使用後における排除も共に簡便になっており、利用者に対して些かの手間も求めるところがない。
【0031】
同様に、容器2と蓋体3とを容易且つ安全に着脱できる結果、燃焼利用の最中に燃料を燃焼し尽くしてしまった場合に備えて、液体燃料を充填収容した別の燃焼器を用意しておく必要はなく、利用中の燃焼器に簡便且つ安全に燃料を補充して燃焼利用を再開し継続できると共に、燃焼利用を終了した燃焼器も従来のように直ちに廃棄する必要はなく、残存燃料を除いて安全に保管しておき、次の使用機会に再び液体燃料を充填収容し反復して燃焼利用に供することができるから、利用者のコスト負担を大きく軽減し利用の便を向上させることができる。
【0032】
また、本実施例では、燃焼芯4を挿通保持した蓋体3に耐熱性と強度に富むスチール素材を用いているので、燃焼部の直近に位置し、クーラーの風などで揺らいだ炎と直接接触し、或いはチェーフィングの熱源として利用することで高い輻射熱を長時間継続的に受けても、この高熱によって蓋体3が劣化もしくは脆弱化することは考えられないから、燃焼利用時の安全性に関して利用者が懸念を抱き市場性が狭められる恐れもない。
【0033】
さらに、本実施例に係る液体燃料用燃焼器においては、これまで説明の通り、ポリカーボネートからなる容器2とスチール製の蓋体3を容易に着脱して容器2の開口部を開披できる上に、非使用時や保管時にも液体燃料が充填収容されていることを前提とする従来品において蓋体3に挿通保持された燃焼芯を固定的に取り付けなければならなかったのと異なり、燃焼芯4が蓋体3に抜き差し自在に取り付けられているに止まるから、燃焼器を廃棄する際には容器2と蓋体3と燃焼芯4を簡単に分解し、容器2の開披された開口部から残存燃料を直ちに捨てることができるので、素材を異にする各構成部分の分別廃棄も極めて容易であり、ホテルなど大量利用者による燃焼器廃棄の手間も大きく軽減されている。
【0034】
なお、本実施例では、最も高い効果を奏するために容器や蓋体の素材を選択し、着脱部や開口部の構成と燃料芯の取り付け状態を特定しているが、本発明がこれら特定された素材や構成のみに限定されるものでないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 燃焼器
2 容器
3 蓋体
4 燃焼芯
5 キャップ
10 枠台
11 脚部
12 ウォーターパン
13 チェーフィングパン
20 蓋板
21 嵌合凸溝
31,25 保持部
32 貫通孔
33 嵌合縁部
F 液体燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端部に開口部を設けると共に他方端部を閉止して液体燃料を収容する中空の空積を形成した透明ないし半透明の素材からなる容器と、前記容器の開口部と略同形でその略中央部に貫通孔を設けてなり前記開口部に着脱自在に取り付けて閉止する蓋体と、前記蓋体の貫通孔に挿通しその上端側を前記蓋体の外面側に突出させて取り付ける燃焼芯とからなる、ことを特徴とする液体燃料用燃焼器。
【請求項2】
前記蓋体が金属素材からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の液体燃料用燃焼器。
【請求項3】
前記容器の開口部が容器端部の端面全体に亘る、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体燃料用燃焼器。
【請求項4】
前記容器が上端部外周表面に周方向に設けられた複数の嵌合凸溝を備えると共に、前記蓋体が外周端部に下方に張設された環状の嵌合縁部を有してなり、該嵌合凸溝と嵌合縁部を係合して前記容器と蓋体とを取り付けるよう構成してなる、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体燃料用燃焼器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133130(P2011−133130A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290703(P2009−290703)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(593009583)株式会社ニチネン (8)