説明

液体現像剤

【課題】本発明は、トナー粒子の低付着量下においても画像濃度と定着強度とを両立させることを可能とした液体現像剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを含み、該トナー粒子は、樹脂と顔料と顔料分散剤とを含み、該顔料は、下記一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物を含み、該顔料分散剤は、塩基性分散剤であることを特徴とする。


(上記式中、nは1〜3の整数を表わし、XはOH、Cl、または酸基のいずれかを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像剤としては、種々のものが知られている。たとえば、黒色の画像を得るための黒色現像剤として、アニリンブラック系顔料を使用したものが知られている(特開2010−019970号公報(特許文献1)、特開昭63−285556号公報(特許文献2)、特開2005−182036号公報(特許文献3))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−019970号公報
【特許文献2】特開昭63−285556号公報
【特許文献3】特開2005−182036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような現像剤は、顔料を樹脂に分散させたトナー粒子を含むものであるが、通常、トナー粒子や磁性体等の粉体のみからなる乾式現像剤とトナー粒子を液体中に分散させた液体現像剤との2種に大別される。
【0005】
一般的な乾式現像剤の場合、トナー粒子の樹脂中に含まれる顔料の含有割合は、樹脂100質量部に対して10質量部以下である。この含有割合は、トナー粒子の粒径(すなわち画像膜厚)に対する画像濃度の関係で決定される。一方、液体現像剤においては、トナー粒子の粒径が乾式現像剤に比べて一般的に小さいため、顔料の含有割合を乾式現像剤の場合に比べて増加させなければ必要な画像濃度が得られない。
【0006】
このため、黒色画像を得るための黒色液体現像剤において、黒色顔料を使用する場合、画像濃度確保に必要なトナー粒子中の黒色顔料の含有割合は、樹脂100質量部に対しておおよそ15質量部以上となる(ただし、乾式現像剤の場合と同様に、適正な量はトナー粒子の粒径により異なる)。しかし、顔料の含有割合を高くすると、顔料の分散性不良が問題となり、十分な画像濃度が得られない場合がある。
【0007】
一方、このような液体現像剤を用いて、高画質、裏写り防止、低コストを達成するためには、紙等の記録材上へのトナー粒子の付着量(画像膜厚)をより低減する必要がある。しかし、トナー粒子の付着量を低減させたとしても画像濃度としては所望の濃度が要求されるため、トナー粒子中の顔料の含有割合をさらに高める必要がある。しかしながらこの場合、顔料の分散性不良の問題に加えて、トナー粒子中の樹脂量が低下することから定着強度が低下するという問題も生じる。
【0008】
したがって、このような液体現像剤の使用においては、トナー粒子の低付着量下においても、画像濃度と定着性とを両立させることが強く望まれる。
【0009】
特許文献1は、黒色顔料として特定構造のアニリンブラックを用いることを開示しているが、乾式現像剤に関するものであり、上記のような液体現像剤に関する問題を解決するものではない。
【0010】
特許文献2は、黒色顔料としてアニリンブラック等のスルホンアミド誘導体を用いた液体現像剤を開示しているが、顔料分散剤が用いられていないことから顔料の分散性に問題があり、顔料の含有割合を高めることにつき限界がある。
【0011】
特許文献3は、黒色顔料としてアニリンブラックを用いた液体現像剤を開示しているが、特許文献2と同様に顔料分散剤が用いられていないことから顔料の分散性に問題があり、顔料の含有割合を高めることにつき限界がある。
【0012】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、トナー粒子の低付着量下においても画像濃度と定着強度とを両立させることを可能とした液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを含み、該トナー粒子は、樹脂と顔料と顔料分散剤とを含み、該顔料は、下記一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物を含み、該顔料分散剤は、塩基性分散剤であることを特徴とする。
【0014】
【化1】

【0015】
(上記式中、nは1〜3の整数を表わし、XはOH、Cl、または酸基のいずれかを示す。)
ここで、上記顔料は、上記樹脂100質量部に対して25〜60質量部含まれることが好ましく、上記アニリンブラック構造化合物は、上記顔料の全質量に対して30〜100質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液体現像剤は、上記の構成を有することにより、画像濃度と定着強度との両立を可能としたという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の概略概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態ついて、さらに詳細に説明する。
<液体現像剤>
本実施の形態の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体とを少なくとも含み、トナー粒子は絶縁性液体中に分散している。かかる液体現像剤は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえばトナー分散剤(トナー粒子に含まれる後述の顔料分散剤とは異なり、トナー粒子を分散させるために絶縁性液体中に含まれる分散剤であり、本実施の形態では便宜上「トナー分散剤」という)、荷電制御剤、増粘剤等を挙げることができる。
【0019】
液体現像剤の配合割合は、たとえばトナー粒子を1〜50質量%とし、残部を絶縁性液体等とすることができる。トナー粒子の配合量が1質量%未満では、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性が低下する傾向を示し、また必要な画像濃度を得るためには多量の液体現像剤を供給する必要があり、紙等の記録材上に付着する絶縁性液体の量が増加し、定着時にそれを乾燥させる必要が生じるとともに発生したその蒸気により環境上の問題が生じる可能性がある。一方、トナー粒子の配合量が50質量%を超えると、液体現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上および取り扱い上、困難になる傾向を示す。
【0020】
また、液体現像剤の粘度は、25℃において0.1mPa・s以上10000mPa・s以下とすることが好ましい。10000mPa・sを超えると、液体現像剤を撹拌することが困難となり、絶縁性液体中にトナー粒子を均一に分散させることができず液体現像剤を得るための装置面での負担が大きくなる場合がある。一方、0.1mPa・s未満では、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性が低下し、画像濃度が不安定となる場合がある。
【0021】
このような液体現像剤は、電子写真方式の画像形成装置用の現像剤として有用である。
<トナー粒子>
本実施の形態の液体現像剤に含まれるトナー粒子は、樹脂と顔料と顔料分散剤とを含み、該顔料は、上記一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物を含み、該顔料分散剤は、塩基性分散剤であることを特徴とする。本実施の形態のトナー粒子は、このような構成を有することにより、トナー粒子中の顔料含有量を増加させることができるため、紙等の記録材上のトナー粒子の付着量が少ない(たとえば2.0g/m2以下)場合でも、画像濃度と定着強度とを高度に両立できる。以下、このような優れた効果について更に詳細に説明する。
【0022】
まず、上記一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物は、漆黒性の色調を有し、且つ着色力にも優れている上、樹脂(たとえばポリエステル樹脂)中での分散性が高く、顔料分散剤である塩基性分散剤とともに樹脂中へ添加することにより、更にその分散性が向上する。したがって、このようなアニリンブラック構造化合物以外の通常の黒色顔料に比し、トナー粒子中における顔料含有量を飛躍的に高めることができる(たとえば樹脂100質量部に対し60質量部程度まで配合することが可能となる)。
【0023】
記録材上での画像濃度は、トナー粒子中における顔料含有量と顔料の分散性に大きく影響され、顔料含有量が高く良好な分散性を有するものほど高い画像濃度が得られる。本実施の形態のトナー粒子では、上記のように良好な分散性を示すアニリンブラック構造化合物が塩基性分散剤の作用によりさらに分散性が良好となり、本来的に着色力に優れる当該アニリンブラック構造化合物を極めて高濃度に含有できるため、トナー粒子が低付着量(たとえば2.0g/m2以下)であっても十分な画像濃度を達成することができるのである。
【0024】
一方、通常の顔料を用いた場合、トナー粒子中での顔料含有量を高くすると樹脂の含有量(配合比率)が少なくなるため記録材上での定着強度は悪化する傾向を示す。液体現像剤の定着強度の向上には、トナー粒子中の顔料分散性の向上、定着する際の絶縁性液体(キャリア液)の保持量の低減、トナー粒子間の相溶性の向上、樹脂と記録材の接着性の向上などが寄与するものと考えられる。本実施の形態のトナー粒子は、上記の通り、顔料分散性が良好であり、このためトナー粒子間の相溶性が向上するとともにそれにともない絶縁性液体の保持量も低減するため、上記のように当該アニリンブラック構造化合物を高濃度で含む(換言すれば樹脂の含有量が相対的に低下する)にもかかわらず定着強度が飛躍的に向上したものとなる。
【0025】
したがって、上記のようなトナー粒子を含む本実施の形態の液体現像剤は、画像濃度と定着強度とを高度に両立させたものとなるのである。
【0026】
このような本実施の形態のトナー粒子は、樹脂と顔料と顔料分散剤とを含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえばワックス、荷電制御剤等を挙げることができる。また、このようなトナー粒子は、0.1〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmの平均粒径を有することが好ましい。なお、ここでいう平均粒径とは、体積平均粒径をいう。
【0027】
以下、このようなトナー粒子を構成する各構成要素についてさらに説明する。
<顔料>
本実施の形態のトナー粒子に含まれる顔料は、上記一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物を少なくとも含む。このアニリンブラック構造化合物は、一般式(I)からも明らかなように、重金属を含まないため、極めて安全性の高いものである。なお、上記式中、nは1〜3の整数を表わし、XはOH、Cl、または酸基のいずれかを示す。
【0028】
既に説明したように、顔料としてこのような構造のアニリンブラック構造化合物を用いることにより、画像濃度と定着強度を高度に両立することができる。また、これらの効果とともに、高画質、裏写り防止、低コストも達成される。
【0029】
ここで、本実施の形態の「アニリンブラック構造化合物」とは、その構造中にクロムや銅などの重金属を含まないアニリンブラック構造を骨格とした、上記一般式(I)で示される化合物(以下単に「アニリンブラック構造化合物」とも記す)をいう。
【0030】
このようなアニリンブラック構造化合物を液体現像剤に添加した場合には、漆黒性の色調を有し、且つ着色力にも優れた画像を得ることが可能となる。本実施の形態のアニリンブラック構造化合物は、従来のアニリンブラック(クロム法による)に比し、吸光度が1.3〜1.4倍高く、たとえば顔料濃度(顔料/顔料+樹脂)10%の場合の、波長400〜800nmにおける吸光度は2.5〜3.0(平均)という高い数値を示し、これはカーボンブラックにおけるそれと比べても遜色ない。
【0031】
上記一般式(I)において酸基とは、各種の無機酸および有機酸の分子から金属と置換し得る水素原子を1個または2個以上除いた残りの部分をいう。一般式(I)で示されるように、この酸基は負の電荷を有し、正の電荷を有する窒素原子(N+)とイオン結合する性質を有する。ここで、有機酸とは、有機化合物の酸であり、たとえば蟻酸、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、シュウ酸等であり、無機酸とは、無機化合物の酸(鉱酸)であり、たとえば塩酸(ただし塩酸の場合、酸基はClとなる),硝酸,リン酸,硫酸,ホウ酸,フッ化水素酸等である。
【0032】
このようなアニリンブラック構造化合物は、1種単独でまたは2種以上のものを組合わた混合物(たとえば一般式(I)において互いにnが異なる混合物や、Xが異なる混合物等)として用いることができる。
【0033】
また、このようなアニリンブラック構造化合物は、必要に応じて、分散性を高めるためのカップリング処理を施したり、その他各種添加剤等を構成成分として含んでいても良い。また、従来より使用されているカーボンブラックやチタンブラック等の他の顔料と併用しても良い。カーボンブラックとしては、たとえばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用可能である。併用割合としては、本実施の形態のアニリンブラック構造化合物がトナー粒子中の顔料の全質量に対して10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、特に30質量%以上がより好ましい。勿論、顔料としては本実施の形態のアニリンブラック構造化合物のみを用いるものであっても良い。したがって、本実施の形態のアニリンブラック構造化合物は、顔料の全質量に対して30〜100質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0034】
一方、本実施の形態のトナー粒子中に含まれる顔料(の全量)は、樹脂100質量部に対して25〜60質量部含まれることが好ましく、より好ましくは40〜60質量部である。25質量部未満では、高画像品質達成のためにトナー粒子付着量を低減化したとき(トナー粒子量2g/m2以下)に所望の画像濃度を得ることが難しくなる場合があり、60質量部を超えるとトナー粒子中の顔料分散性の低下に起因した定着性の悪化、画像濃度の低下、光沢度不足の問題が生じる場合がある。なお、本実施の形態において、顔料としてアニリンブラック構造化合物とともに使用し得る顔料としては、上記のようなカーボンブラックのほか、フタロシアニン系、キナクリドン系、キナクリドンキノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、ピランスロン系、アンスアンスロン系、フラバンスロン系、インダンスロン系、金属錯体系等の縮合多環系顔料、ベンズイミダゾロン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、溶性アゾ系等の各種有機顔料等を1種または2種以上用いることができる。
【0035】
このようなアニリンブラック構造化合物は、酸の水溶液中においてアニリンを過硫酸塩で酸化することにより好適に製造できる。この場合、酸化剤として用いられる過硫酸塩としては、たとえばアンモニウム塩;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等のアルカリ金属塩;過硫酸バリウム等のアルカリ土類金属塩等、何れの塩でも良いが、特に過硫酸アンモニウムが好ましい。このような製造方法において、酸化剤として用いられる過硫酸塩の使用量は、アニリン11モルに対して14モルが理論量であるが、その理論量からその2倍の14〜28モルで製造でき、好ましくは理論量の1.2〜1.7倍程度の16〜24モルである。
【0036】
また、酸の水溶液としては、たとえば塩酸、硫酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸、過沃素酸等の鉱酸水溶液、たとえば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のカルボン酸水溶液、たとえばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のスルホン酸水溶液等を挙げることができるが、特に鉱酸水溶液が好ましく、なかでもテトラフルオロホウ酸水溶液が特に好ましい。
【0037】
また、酸の水溶液として、鉱酸(たとえばテトラフルオロホウ酸)水溶液と有機酸水溶液とを併用しても良い。更に、鉱酸(たとえばテトラフルオロホウ酸)水溶液と、たとえばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の水に不溶性の高級脂肪酸のエマルジョン(界面活性剤を併用)とを併用しても良い。更にまた、鉱酸(たとえばテトラフルオロホウ酸)水溶液と、たとえばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のカルボキシル基を有するポリマーまたはその水溶性の塩の水溶液とを併用してもよい。なお、このようにポリマーまたはその水溶性の塩を用いる場合、酸化反応後の反応液に対してたとえば塩化カルシウム等を加えてポリマーを水不溶性の塩にした後、通常の後処理を行なえば、分散性の良好な顔料が得られるので好ましい。なお、酸の水溶液の濃度は、酸の種類にもよるが、通常1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%程度である。
【0038】
また、上記の製造方法において触媒を使用する場合は、触媒として鉄塩を用いることが好ましい。鉄塩としては、たとえば塩化第一鉄、塩化第二鉄、臭化第一鉄、臭化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄(これらの鉄塩類は無水塩でも含水塩(水和物)でもどちらでも良い)等の無機の水溶性鉄塩が挙げられる。鉄塩の使用量は、通常、アニリン11モルに対し、0.1〜5モル程度、好ましくは1〜2.5モル程度である。
【0039】
上記の製造方法における反応温度および反応時間は、特に限定されるものではないが、通常10〜60℃、好ましくは20〜50℃で、10〜60分かけて過硫酸塩の滴下を行ない、次いで50〜80℃で1〜2時間、更に、要すれば90〜95℃で30分〜1時間反応させれば良い。反応後は、不要物を濾取、水洗し、要すれば、これを再度、水でスラリー化し、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で中和した後、要すれば90〜95℃で30分〜1時間加熱撹拌し、その後、再度、濾取、水洗し、乾燥することにより本実施の形態のアニリンブラック構造化合物が得られる。
【0040】
反応後の系はpHが1〜2と強酸性になっているが、そのまま中和せずに濾取、水洗、乾燥しても、一度濾取した物を再度スラリー化し、中和した後、再度濾取、水洗し、乾燥してもどちらでも良い。しかしながら、この工程でpHを中性領域に調整することにより得られたアニリンブラック構造化合物は、電子写真方式用の液体現像剤として使用した場合に帯電性の安定化が図られるとともに、高品位な漆黒調の色相を有する画像を得ることができる。
【0041】
なお、反応に際し、酸として、鉱酸とカルボキシル基を有するポリマーまたはその水溶性の塩とを併用した場合には、過硫酸塩滴下後、60〜80℃で1〜2時間反応させた後に、たとえば塩化カルシウム等を加えて同温度で30分程度撹拌して該ポリマーを水に不溶性の塩にした後、上記した如き後処理を行なえば、先に述べたように、分散性の良いアニリンブラック構造化合物が得られるので好ましい。
【0042】
また、上記一般式中のnは、アニリンと酸化剤として使用される過硫酸塩の量により調整することができ、通常はnが1から3の混合物となる。たとえばアニリンに対して過硫酸塩の量を増やすことによりnの数値は大きくなる。また、Xは、アニリンを過硫酸塩で酸化する際の酸の水溶液中の酸の種類を選択することにより選択することができ、たとえば塩酸を用いれば、XはClとなり、テトラフルオロホウ酸を用いれば、XはOHとなり、酢酸を用いれば、XはCH3COO(酸基)となる。
【0043】
<顔料分散剤>
本実施の形態の顔料分散剤は、トナー粒子中に顔料を均一に分散させる作用を有するものであり、塩基性分散剤が使用される。ここで、塩基性分散剤とは、以下に定義されるものをいう。すなわち、顔料分散剤0.5gと蒸留水20mlとをガラス製スクリュー管に入れ、それをペイントシェーカーを用いて30分間振り混ぜた後、ろ過することにより得られたろ液のpHをpHメータ(商品名:「D−51」、堀場製作所社製)を用いて測定し、そのpHが7より大きい場合を塩基性分散剤とする。なお、そのpHが7より小さい場合は、酸性分散剤と呼ぶものとする。
【0044】
このような塩基性分散剤は、その種類は特に限定されない。たとえば、分散剤の分子内にアミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、ウレタン基等の官能基を有する化合物(分散剤)を挙げることができる。なお分散剤とは、通常、分子中に親水性の部分と疎水性の部分とを有するいわゆる界面活性剤が該当するが、上記の通り顔料を分散させる作用を有する限り、種々の化合物を用いることができる。
【0045】
このような塩基性分散剤の市販品としては、たとえば味の素ファインテクノ社製の「アジスパーPB−821」(商品名)、「アジスパーPB−822」(商品名)、「アジスパーPB−881」(商品名)や日本ルーブリゾール社製の「ソルスパーズ28000」(商品名)、「ソルスパーズ32000」(商品名)、「ソルスパーズ32500」(商品名)、「ソルスパーズ35100」(商品名)、「ソルスパーズ37500」(商品名)等を挙げることができる。
【0046】
このような顔料分散剤の添加量は、顔料に対して、1〜100質量%添加することが好ましい。より好ましくは、1〜40質量%である。1質量%未満では、顔料の分散性が不十分となる場合があり、必要なID(画像濃度)が達成できないとともに、定着強度が低下する場合がある。また100質量%を超えると、顔料分散に対する必要量以上の顔料分散剤が添加されることになり、余剰の顔料分散剤が絶縁性液体中へ溶解する場合があり、トナー粒子の荷電性や定着強度に悪影響を及ぼす場合がある。
【0047】
このような顔料分散剤は、1種単独でまたは2種以上のものを組合わせて用いることができる。
【0048】
<樹脂>
本実施の形態のトナー粒子に含まれる樹脂としては、トナー粒子(顔料)を記録材上に定着させる作用を主として有するものであり、このようなトナー粒子を構成する樹脂として用いられる従来公知の樹脂を特に限定することなく用いることができる。しかしながら、そのような樹脂の中でも特にポリエステル樹脂を用いることが好ましい。広範囲に熱特性等の物性を変化させることができるだけではなく、延展性や粘弾性に優れるために定着後の樹脂膜が強靱で、紙等の記録材と良好な接着性が示されるからである。
【0049】
このようなポリエステル樹脂は熱可塑性のもので、多価アルコールと多塩基酸(多価カルボン酸)との重縮合により得られる。
【0050】
多価アルコールとしては、特に限定されるものではないが、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール等のプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、4−ブタンジオール等のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1、6−ヘキサンジオール等のヘキサンジオール等のアルキレングリコール(脂肪族グリコール)およびこれらのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール等のビスフェノール類およびこれらのアルキレンオキサイド付加物のフェノール系グリコール類、単環あるいは多環ジオール等の脂環式または芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール等を挙げることができる。これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。特に、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド2〜3モル付加物が、生成物であるポリエステル樹脂の溶解性、安定性の点で液体現像剤のトナー粒子用樹脂に適し、また低コストであることからも好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
多塩基酸(多価カルボン酸)としては、特に限定されるものではないが、たとえばマロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸またはその変性酸(たとえば、ヘキサヒドロ無水フタル酸)、イソフタル酸、テレフタル酸等の2価塩基酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メチルナディック酸等の3官能以上の多価塩基酸、およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等を挙げることができる。これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0052】
特に、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、メチルナディック酸等の3官能以上の多価塩基酸を含むことにより、ポリエステル樹脂が架橋による立体構造を有するため、絶縁性液体(キャリア液)による膨潤性を抑制することができるため好ましい。また、低コストで入手が可能であることからトリメリット酸を使用することが有利である。
【0053】
縮合の方法としては、通常公知の重縮合の方法を用いることができる。原料モノマーの種類によっても異なるが、一般的には150℃〜300℃程度の温度下で行なわれる。また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を使用したり、反応容器内圧力を常圧または減圧にする等、任意の条件で行なうことができる。また、反応促進のためにエステル化触媒を用いても良い。エステル化触媒としては、テトラブチルジルコネート、ジルコニウムナフテネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、3/1しゅう酸第1スズ/酢酸ナトリウムのような金属有機化合物等を使用できるが、生成物であるエステルを着色しないものが好ましい。
【0054】
生成物であるポリエステル樹脂の重量平均分子量を調整するためには、一般的には反応時間を調整すればよい。ポリエステルの重縮合反応は、低分子量物質が次第に分子量を増大させていく逐次反応であるため、時間とともに分子量が増大する。反応時間と分子量の関係はモノマー原料の種類、重合条件、ロットスケール等により異なるが、たとえば、ヘキサンジオールとセバシン酸のポリエステル化反応の場合、温度200℃で、窒素気流中、1〜2時間反応させると数平均分子量(Mn)約1000の生成物が得られ、4〜5時間反応させるとMnが約2000の生成物が得られ、7〜8時間反応させるとMnが約3000の生成物が得られる。また、高分子量の樹脂を得る場合は、多価アルコールと多塩基酸との混合モル比をほぼ等量にすることにより、重合度が高くなる。さらに、反応温度をやや低くして長時間反応させると、より効率良く高分子量の生成物が得られる。
【0055】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3万以上20万未満が好ましく、より好ましくは4万以上8万未満である。Mwが3万より小さいものは絶縁性液体と相互作用しやすくなり、保管安定性が悪化し好ましくない。Mwが20万以上になるとトナー粒子の製造性が悪化する。具体的には、造粒法でトナー粒子を製造する場合には樹脂を溶剤に溶解する際の溶解性が悪くなるために所望のトナー粒子の粒径および形状に制御できなくなる。一方、粉砕法でトナー粒子を製造する場合にはトナー粒子の粉砕性が悪化し、所望の粒径に制御できなくなる。
【0056】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜85℃が好ましい。Tgが50℃より低くなると保管安定性が悪化し、85℃以上になると定着に必要な熱量が著しく増加すると共に光沢度が低下し好ましくない。
【0057】
なお、トナー粒子に含まれる樹脂としては、上記のポリエステル樹脂以外のものとして、たとえばスチレン−アクリル系樹脂、エチレン性アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、各単独でまたは2種以上のものを組合わせて用いることができる。
【0058】
<絶縁性液体>
本実施の形態の液体現像剤に含まれる絶縁性液体は、静電潜像を乱さない程度の抵抗値(1011〜1016Ω・cm程度)を有するものが好ましい。また、臭気および毒性が無いものが好ましい。
【0059】
このような絶縁性液体としては、たとえば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等を挙げることができる。特に、臭気、無害性、コストの点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒が好ましい。具体的には、モレスコホワイト(商品名、松村石油研究所社製)、アイソパー(商品名、エクソン化学社製)、シェルゾール(商品名、シェル石油化学社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028(いずれも商品名、出光石油化学社製)等を挙げることができる。
【0060】
<トナー分散剤>
本実施の形態の液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させるために、絶縁性液体に可溶な分散剤(トナー分散剤)を含むことが好ましい。このようなトナー分散剤は、トナー粒子を安定に分散させるものであれば特に種類は限定されない。トナー粒子に含まれる樹脂として用いられるポリエステル樹脂の酸価が比較的高い場合は、塩基性の高分子分散剤を用いることが好ましい。
【0061】
<製造方法>
本発明の液体現像剤の調製は、造粒法、粉砕法等の従来公知の技法に基づいて行なうことができる。造粒法としては、懸濁重合法、乳化重合法、微粒子凝集法、樹脂溶液に貧溶媒を添加し析出する法、スプレードライ法等を挙げることができる。なお、懸濁重合法または乳化重合法の場合、連続相を水系とし、トナー粒子を作製後、その連続相を絶縁性液体で置換する方法や直接絶縁性液体中でトナー粒子を重合する方法等を採用することができる。
【0062】
また、顔料を樹脂溶液に分散した樹脂溶液を作製し、この樹脂溶液を絶縁性液体中に分散させ、適当な分散剤により乳化することによりトナー粒子を得る方法もある。この場合、樹脂溶液の溶媒は絶縁性液体に相溶しない溶媒を選択する。
【0063】
また粉砕法としては、予め樹脂と顔料を溶融混練し、その混合物を粉砕する。粉砕は乾式状態や絶縁性液体中での湿式状態で行なうことが好適である。
【0064】
なお、トナー粒子作製後、40〜50℃程度に加熱するとトナー粒子中の樹脂分子の配列が整うため好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは特に断らない限り「質量部」を示し、「%」とあるのは特に断らない限り「質量%」を示す。
【0066】
<一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物の製造>
<アニリンブラック構造化合物Aの製造>
アニリン10gを3%塩酸水溶液260mlに溶解し、これに硫酸第一鉄7水和物2.7gを加えた。そして、この混合物に対して30℃で過硫酸アンモニウム40gを水250mlに溶解した溶液を15分間かけて滴下した後、70〜75℃に加熱して1時間撹拌した。その後、不溶物を濾取、水洗し、得られたケーキを300mlの水に対して再スラリー化し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、90℃で30分間加熱撹拌した。引続き、不溶物を濾取、水洗、乾燥することにより、やや青味を帯びた漆黒性の黒色顔料9.1gを得た。この黒色顔料は、一般式(I)において、XがClであり、nが3である化合物であった。以下、この化合物を「アニリンブラック構造化合物A」とする。
【0067】
なお、このアニリンブラック構造化合物の化学構造は、NMR(核磁気共鳴)とMS(質量分析)により同定した(以下において同じ)。
【0068】
<アニリンブラック構造化合物Bの製造>
アニリン10gを6%テトラフルオロホウ酸水溶液250mlに溶解し、これに40℃で過硫酸アンモニウム40gを水300mlに溶解した溶液を20分間かけて滴下した後、70〜75℃に加熱して1時間撹拌した。その後、不溶物を濾取、水洗し、得られたケーキを300mlの水に対して再スラリー化し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、90℃で30分間加熱撹拌した。引続き、不溶物を濾取、水洗、乾燥することにより、やや青味を帯びた漆黒性の黒色顔料9.5gを得た。この黒色顔料は、一般式(I)において、XがOHであり、nが3である化合物であった。以下、この化合物を「アニリンブラック構造化合物B」とする。
【0069】
<アニリンブラック構造化合物Cの製造>
アニリン10gを6%テトラフルオロホウ酸水溶液250mlに溶解し、これに塩化第二鉄6水和物2.6gを加えた。そして、この混合物に対して40℃で過硫酸アンモニウム45gを水300mlに溶解した溶液を20分間かけて滴下した後、70〜75℃に加熱して1時間撹拌し、更に90℃で30分間撹拌した。その後、不溶物を濾取、水洗、乾燥することにより、やや赤味を帯びた漆黒性の黒色顔料9.5gを得た。この黒色顔料は、一般式(I)において、XがOHであり、nが3である化合物であった。以下、この化合物を「アニリンブラック構造化合物C」とする。
【0070】
<アニリンブラック構造化合物Dの製造>
アニリン10gを6%テトラフルオロホウ酸水溶液250mlに溶解し、これに40℃で過硫酸アンモニウム40gを水300mlに溶解した溶液を20分間かけて滴下した後、70〜75℃に加熱して1時間撹拌した。その後、不溶物を濾取、水洗し、得られたケーキを300mlの水に対して再スラリー化し、10%水酸化カリウム水溶液でpH7に調整した後、90℃で30分間加熱撹拌した。引続き、不溶物を濾取、水洗、乾燥することにより、やや青味を帯びた漆黒性の黒色顔料9.5gを得た。この黒色顔料は、一般式(I)において、XがOHであり、nが3である化合物であった。以下、この化合物を「アニリンブラック構造化合物D」とする。
【0071】
<参考化合物Eの製造>
アニリンブラック(C.I.50440)5.0g、n−オクタンスルホニルクロリド7.0g、二塩化メチレン100ml及びジオキサン100mlの混合物に、撹拌下温度30〜35℃に保ちながらトリエチルアミン7.0gを1時間で滴下した。そのままさらに2時間撹拌させた後、温度80〜85℃で4時間撹拌させた。反応混合物を減圧下に全体量の約1/3に濃縮した。次にこの混合物を水500ml中に、撹拌下滴下し、そのまま1時間撹拌した後、析出した黒色固体を炉集した。得られた固体を酢酸エチル100mlで2度洗浄した後、減圧下に温度50℃で乾燥した。このようにして得られた黒色物質を「参考化合物E」とする。この参考化合物Eは、特許文献2の実施例3の黒色物質(III)に相当する。
【0072】
<樹脂の製造>
トナー粒子に含まれる樹脂としてポリエステル樹脂を以下のようにして製造した。
【0073】
かきまぜ棒、パーシャルコンデンサー、窒素ガス導入管、温度計を備えた四つ口フラスコ中にモノマーとして、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(以下の一般式(II))を800部(多価アルコール)、テレフタル酸を320部(多塩基酸)、トリメリット酸を40部(多塩基酸)入れ、攪拌しながら窒素ガスを導入し、約170℃の温度で重縮合を行なった。重量平均分子量(Mw)が約19000になったところで温度を100℃程度に下げ、重合禁止剤としてヒドロキノンを0.012部添加して重縮合を停止させた。
【0074】
このようにしてポリエステル樹脂を得た(以下、これを「ポリエステル樹脂A」という)。ポリエステル樹脂AのMwを測定したところ21000であり、酸価は34.2mgKOH/gであり、ガラス転移温度(Tg)は67℃であった。
【0075】
【化2】

【0076】
式(II)中、R1およびR2は、プロピレン基を示し、mおよびnは、それぞれ独立して、0または正の整数を示し、両者の和が1〜16の混合物である。
【0077】
なお、重量平均分子量(Mw)、酸価、ガラス転移温度(Tg)は次のようにして測定した。
【0078】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により下記の条件に従って測定した。
DETECTOR:RI(屈折率)検出器
COLUMN:ShodexKF-404HQ+ShodexKF-402HQ(昭和電工社製)
溶 媒:テトラヒドロフラン
流 速:0.3ml/min
較正曲線:標準ポリスチレン
<酸価の測定>
酸価は、JIS K5400法に準拠した条件で測定した。
【0079】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(商品名:「DSC−6200」、セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料量20mg、昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0080】
<実施例1>
ポリエステル樹脂Aを100部、アセトン500部、アニリンブラック構造化合物Aを45部、顔料分散剤である塩基性分散剤(商品名:「アジスパーPB−821」、味の素ファインテクノ社製、アミン系塩基性化合物)25部にガラスビーズ500部を加え、ペイントコンディショナーを用いて2時間分散することにより樹脂中に顔料が分散した樹脂溶解液Xを作製した。
【0081】
次いで、トナー分散剤としてN−ビニルピロリドン基を有する塩基性の高分子分散剤であるN−ビニルピロリドン/アルキレン共重合体(商品名:「Antaron V−216」、GAF/ISP Chemicals社製)5部を絶縁性液体(商品名:「IPソルベント2028」、出光石油化学社製)70部中に溶解させ、ホモジナイザーを起動させた。起動中のホモジナイザーに上記の樹脂溶解液X150部を投入し、5分間分散させ、液体現像剤前駆体を作製した。
【0082】
引続き、エバポレーターにより上記の液体現像剤前駆体からアセトンを除去したところ、トナー粒子の平均粒径は2.3μmとなった。その後、この液体現像剤前駆体を50℃の恒温槽に4時間保管することにより、本発明の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は、粒径分布測定機(商品名:「SALD2200」、島津製作所社製)を用いて測定した(以下の実施例において同じ)。
【0083】
<実施例2>
実施例1において、「45部のアニリンブラック構造化合物A」を「15部のアニリンブラック構造化合物Bと30部のカーボンブラック(商品名:「Mogul−L」、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)」に置き換え、また顔料分散剤の量を「25部」から「20部」に変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.2μmであった。
【0084】
<実施例3>
実施例1において、「45部のアニリンブラック構造化合物A」を「10部のアニリンブラック構造化合物Bと30部のカーボンブラック(商品名:「Mogul−L」、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製)」に置き換え、また「塩基性分散剤(アジスパーPB−821)25部」を「塩基性分散剤(商品名:「ソルスパーズ32000」、日本ルーブリゾール社製)20部」に置き換えることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.3μmであった。
【0085】
<実施例4>
実施例1において、「45部のアニリンブラック構造化合物A」を「65部のアニリンブラック構造化合物C」に置き換え、また「塩基性分散剤(アジスパーPB−821)25部」を「塩基性分散剤(ソルスパーズ32000)10部」に置き換えることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.4μmであった。
【0086】
<実施例5>
ポリエステル樹脂Aを100部、アニリンブラック構造化合物Dを20部、顔料分散剤である塩基性分散剤(商品名:「アジスパーPB−822」、味の素ファインテクノ社製、アミン系塩基性化合物)15部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行なった。次いで、得られた混合物を冷却し、その後粗粉砕することにより粗粉砕トナーYを得た。
【0087】
引続き、粗粉砕トナーYをカウンタジェットミル(商品名:「200AFG」、ホソカワミクロン社製)を用いて粉砕することにより、トナー粒子Yを得た。このトナー粒子Yの粒径は2.3μmであった。
【0088】
その後、絶縁性液体(IPソルベント2028)70部、トナー粒子Y30部、トナー分散剤であるN−ビニルピロリドン/アルキレン共重合体(Antaron V−216)1部を混合し、ペイントシェーカーにて1時間分散することにより、本発明の液体現像剤を得た。
【0089】
<比較例1>
実施例1において、「アニリンブラック構造化合物A」を「カーボンブラック(Mogul−L)」に置き換えることを除き、他は全て実施例1と同様にして比較例の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.5μmであった。
【0090】
<比較例2>
実施例1において、「アニリンブラック構造化合物A」を「従来のクロム法によるアニリンブラック(C.I.Pigment Black 1、東京色材社製)」に置き換えることを除き、他は全て実施例1と同様にして比較例の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.4μmであった。
【0091】
<比較例3>
実施例2において、「アニリンブラック構造化合物B」を「従来のクロム法によるアニリンブラック(C.I.Pigment Black 1、東京色材社製)」に置き換えることを除き、他は全て実施例2と同様にして比較例の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.6μmであった。
【0092】
<比較例4>
実施例1において、「45部のアニリンブラック構造化合物A」を「25部の参考化合物E」に置き換えるとともに、顔料分散剤を添加しないことを除き、他は全て実施例1と同様にして比較例の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.8μmであった。
【0093】
<比較例5>
実施例5において、「15部の塩基性分散剤(アジスパーPB−822)」を「15部のドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製、塩基性ではない分散剤)」に置き換えることを除き、他は全て実施例5と同様にして比較例の液体現像剤を得た。なお、トナー粒子の平均粒径は2.4μmであった。
【0094】
<評価>
上記の実施例および比較例で得られた各液体現像剤について、以下のようにして定着強度と画像濃度を評価した。
【0095】
<定着強度の評価>
図1の画像形成装置を用い、実施例および比較例の各液体現像剤の単色ソリッド(ベタ)パターン(10cm×10cm、付着量:1.2g/m2)を記録材であるコート紙上に形成した。引続き、ヒートローラにより定着した。定着の条件は、180℃でニップ時間を50msecとした。
【0096】
その後、画像部(単色ソリッドパターン)に対して消しゴム(ライオン事務器社製、砂消し「LION 26111」)を押圧荷重1kgfで2回擦り、反射濃度計(商品名:「X−Rite model 404」、X−Rite社製)を用いて画像濃度の残存率(消しゴムで擦る前の画像濃度に対する消しゴムで2回擦った後の画像濃度)を測定した。評価は、以下の3段階とした。画像濃度残存率が高いものほど、定着強度が高いことを示す。結果を表1に示す。
A:画像濃度残存率が90%以上。
B:画像濃度残存率が80%以上90%未満。
C:画像濃度残存率が80%未満。
【0097】
<画像濃度の評価>
図1の画像形成装置を用い、実施例および比較例の各液体現像剤により単色ソリッド(ベタ)パターン(10cm×10cm、付着量:1.2mg/m2)を記録材であるコート紙上に形成した。引続き、ヒートローラにより定着した。定着の条件は、180℃でニップ時間を50msecとした。
【0098】
そして、このようにして得られた単色ソリッドパターン(すなわち定着画像)のブラック・ソリッド部の画像濃度を反射濃度計(商品名:「X−Rite model 404」、X−Rite社製)を用いて測定し、以下の3段階のランク評価を行なった。数値が高いものほど、画像濃度が高いことを示している。結果を以下の表1に示す。
A:画像濃度1.8以上
B:画像濃度1.7以上1.8未満
C:画像濃度1.7未満
なお、画像形成装置のプロセス条件およびプロセスの概略は以下の通りである。
【0099】
<プロセス条件>
システム速度:40cm/s
感光体:負帯電OPC
帯電電位:−700V
現像電圧(現像ローラ印加電圧):−450V
1次転写電圧(転写ローラ印加電圧):+600V
2次転写電圧:+1200V
現像前コロナCHG:針印加電圧−3〜5kVで適宜調整。
【0100】
<プロセスの概略>
図1は、電子写真方式の画像形成装置1の概略概念図である。まず、液体現像剤2が規制ブレード4によりすりきられ、現像ローラ3上に液体現像剤2の薄層が形成される。その後、現像ローラ3と感光体5とのニップでトナー粒子が移動し、感光体5上にトナー画像が形成される。
【0101】
次いで、感光体5と中間転写体6とのニップでトナー粒子が移動し、中間転写体6上にトナー画像が形成される。続いて、中間転写体6上でトナー粒子は重ね合わせられ、記録媒体10上へ画像が形成される。そして、記録媒体10上の画像がヒートローラ11で定着される。
【0102】
なお、画像形成装置1は、上記以外にもクリーニングブレード7、荷電装置8、バックアップローラ9を備えている。
【0103】
【表1】

【0104】
表1より明らかなように、実施例の液体現像剤は、比較例の液体現像剤に比べ、画像濃度および定着強度を高度に両立していることが確認された。
【0105】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0106】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 画像形成装置、2 液体現像剤、3 現像ローラ、4 規制ブレード、5 感光体、6 中間転写体、7 クリーニングブレード、8 荷電装置、9 バックアップローラ、10 記録媒体、11 ヒートローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と絶縁性液体とを含み、
前記トナー粒子は、樹脂と顔料と顔料分散剤とを含み、
前記顔料は、下記一般式(I)で示されるアニリンブラック構造化合物を含み、
前記顔料分散剤は、塩基性分散剤である、液体現像剤。
【化1】

(上記式中、nは1〜3の整数を表わし、XはOH、Cl、または酸基のいずれかを示す。)
【請求項2】
前記顔料は、前記樹脂100質量部に対して25〜60質量部含まれ、
前記アニリンブラック構造化合物は、前記顔料の全質量に対して30〜100質量%の範囲で含まれる、請求項1記載の液体現像剤。

【図1】
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【公開番号】特開2013−113972(P2013−113972A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258867(P2011−258867)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】