説明

液化ガス充填装置

【課題】 回収したガスを加圧用ガスとして、再利用する液化ガス充填装置を提供する。
【解決手段】 本発明による液化ガス充填装置は、ガス回収タンク11と、前記液化ガス収容タンク2と前記液化ガス供給ノズル4、又は、前記液化ガス供給ノズル4と前記ガス回収タンク11とを、選択的に連通させるための第1切換弁52と、前記ガス回収タンクと接続されたコンプレッサCと、該コンプレッサCと接続された気液分離器Sとを有し、該気液分離器Sが前記加圧用ガスボンベ3に接続されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス充填システムに関し、特に、充填すべき燃料タンクからガスを回収するガス回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタクシーなど一部の車両においては、その燃料として自動車燃料用液化石油ガス、すなわち、LPGが用いられている。
このような車両に燃料用LPGを充填する装置として液送ポンプを使用する場合が多い。
【0003】
しかし、この種の市販液送ポンプは流量が100m3/日以上であるところ、流量100m3/日以上のポンプを備える施設は第1種製造事業所と看做され、第1種製造事業所には、法令により、所定の資格者が要求され、また、相当な広さの敷地が必要とされる。
そこで、出願人は、液送ポンプを使用しない、LPG充填装置を開発し、既に実施している。
【0004】
液送ポンプを使用しないLPG充填装置の一例を図1に示す。
全体的に参照番号1で示すLPG充填装置は、車両の燃料タンクへ充填すべき自動車燃料用液化石油ガスであるブタンガス、或いは、ブタンガスを主成分として、これにプロパンガスを混合させた混合物(本願では、便宜上、単に「ブタンガス」と呼ぶ)を収容する燃料収容タンク2を有する。この燃料収容タンク2には、プロパンガス、窒素、又は、圧縮天然ガス等の高圧ガスからなる加圧ガスを収容する加圧用ガスボンベ3が接続されている。
【0005】
充填ノズル4を車両5の燃料タンク6に接続すると、加圧用ガスボンベ3の加圧ガスが燃料収容タンク2に流入する。加圧ガスの圧力は、燃料収容タンク2に収容されている液化ブタンの飽和蒸気圧よりも高いので、燃料収容タンク2に流入した加圧ガスは燃料収容タンク2内の液体燃料を押し下げる。これにより、燃料収容タンク2内の液体燃料は、連結配管7、ガスメータ8、連結配管9、3方弁10、充填ノズル4内を圧送され、車両5の燃料タンク6に充填される。
【0006】
ところで、夏場等外気温度の上昇などにより車両5の燃料タンク6内の圧力が高まり、車両の燃料タンク(内の圧力)と加圧用ガスボンベ3(内)のガス(の圧力)との差圧が低下してしまうと、車両5の燃料タンク6への充填速度が遅くなってしまうので、このような場合には、車両5の燃料タンク6への充填に先立って、内圧が高まってしまった燃料タンク6内のガス圧を下げる必要がある。
【0007】
LPG充填装置1では、充填ノズル4を車両5の燃料タンク6に接続した後、3方弁10を操作して、車両5の燃料タンク6内の(高圧)ガスをガス回収タンク11に導くことによって、車両5の燃料タンク6のガス圧を低下させる。
【0008】
ガス回収タンク11に回収されたガスは、連結配管12を介してガスボイラー13に送給され、ここでボイラー用燃料として使用される。
【0009】
また、燃料収容タンク2内のブタンガスが減少したときには、タンクローリー14によって輸送されたブタンガス(燃料用ガス)を燃料収容タンク2に移充填する。
【0010】
燃料収容タンク2へ移充填するときには、タンクローリー14のタンクに収容された液相ブタンガスを液相管15を介して燃料収容タンク2の液相ブタンガスと接続し、タンクローリー14の気相ブタンガスを気相管16を介して燃料収容タンク2の気相ブタンガスと接続し、タンクローリー14のポンプ(図示せず)によってタンクローリー14の液化ブタンガス(燃料用ガス)を燃料収容タンク2に移充填する。
【0011】
液化ブタンガス(燃料用ガス)が燃料収容タンク2に移充填されると、燃料収容タンク2内の気相の圧力が高まり、移充填効率が低下してしまうところ、燃料収容タンク2の気相はタンクローリー14の気相を接続されているため、燃料収容タンク2のガスはタンクローリー14に回収され、燃料収容タンク2内の気相の圧力が高まるのが阻止される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
LPG充填装置1では、車両5の燃料タンク6から回収したガスはボイラー用燃料として使用されることになるが、ガスが回収されることになるのは、燃料タンク6の内圧が上昇してしまう気温が高い日、すなわち、夏であるから、実際にはボイラーによって大量の湯を沸かしても有効な使い道がなく、また、このようなメリットのないボイラーの使用はCO2削減の社会目的にも反する。
【0013】
また、燃料収容タンク2に気相として溜まり、タンクローリー14に回収されたプロパン以外の加圧ガス、特に、ブタンガスと混合した窒素ガスは、焼却処理等の処理工程を必要とする。
【0014】
従って、本発明は、上述した課題を解決するために発明されたものであって、燃料タンクから回収した燃料ガスを有効利用する液化ガス充填システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した課題を解決するために発明されたものであって、燃料収容タンクから回収した加圧ガスに対する別基地での処理工程を不要とする、液化ガス充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の液化ガス充填装置は、液化ガス供給ノズルに接続された液化ガス収容タンクと、該液化ガス収容タンクに接続された加圧用ガスボンベとを有し、前記加圧用ガスボンベ内の加圧ガスによって前記液化ガス収容タンク内の液化ガスを付勢して前記液化ガス供給ノズルから前記液化ガスを送出するようになっており、ガス回収タンクと、前記液化ガス収容タンクと前記液化ガス供給ノズル、又は、前記液化ガス供給ノズルと前記ガス回収タンクとを、選択的に連通させるための第1切換弁と、前記ガス回収タンクと接続されたコンプレッサと、該コンプレッサと接続された気液分離器とを有し、該気液分離器が前記加圧用ガスボンベに接続された、ことを特徴とする。
【0016】
本発明では、補充用の液化ガス燃料を収容する収容体から送給される液化ガス燃料を前記液化ガス収容タンクに導入するための導入手段と、前記液化ガス収容タンクの気相部と前記ガス回収タンクとを選択的に連通させる第2切換弁とを有する、のが好ましい。
【0017】
また、本発明では、前記液化ガス収容タンクに選択的に連通されるようになった予備の加圧用ガスボンベを有する、のが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成による本発明のガス充填装置では、第1切換弁によって液化ガス供給ノズルとガス回収タンクとを連通させることができる構成としたので、例えば、車両の燃料タンクに液化ガス供給ノズルを接続し、燃料タンクのガスを回収することができる。そして、ガス回収タンクをコンプレッサに接続し、コンプレッサを気液分離器に接続し、気液分離器を加圧用ガスボンベに接続する構成を採用したので、回収したガスを加圧用ガスとして再利用、すなわち、有効利用することができる。
【0019】
また、補充用の液化ガス燃料を収容する収容体から送給される液化ガス燃料を液化ガス収容タンクに導入するための導入手段と、前記液化ガス収容タンクの気相部と前記ガス回収タンクとを選択的に連通させる第2切換弁とを有するように構成したときには、補充用の液化ガス燃料を収容する収容体から液化ガス燃料を液化ガス収容タンクに導入するときに、液化ガス収容タンクのガスをガス回収タンクに回収することができる。これによって、液化ガス収容タンクへの充填孔率の低下を回避することができ、また、ガス回収タンクに回収したガスを加圧用ガスとして再利用、すなわち、有効利用することができる。
【0020】
更に、液化ガス収容タンクに選択的に連通されるようになった予備の加圧用ガスボンベを備える構成を採用するときには、回収したガスの加圧用ガスとしての再利用により加圧用ガスボンベ内のガスの圧力が低下したときでも、予備の加圧用ガスボンベのガスを用いて液化ガス収容タンクの液化ガスを液化ガス供給ノズルに圧送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。この実施形態は、本発明を、LPG充填システムに適用したものである。
【0022】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によるLPG充填システムが参照番号30で示されている。
【0023】
LPG充填システム30は、背景技術の項で説明した、充填ポンプを使用しないLPG充填装置1と基本構造を同一とするガス充填構造を有する。すなわち、LPG充填システム30は、自動車燃料用液化石油ガス(ブタン)を収容する燃料収容タンク2と、液化プロパン、窒素、又は、圧縮天然ガスを収容する加圧用ガスボンベ3とを有する。
【0024】
燃料収容タンク2と加圧用ガスボンベ3とは第1管41によって接続され、第1管41には第1三方弁51が設けられている。すなわち、第1三方弁51の第1弁には加圧用ガスボンベ3から延びる第1管41が連結され、第1三方弁51の第2弁には燃料収容タンク2に延びる第1管41が連結されている。そして、第1三方弁51の第2弁から延びる第1管41の下流端部は燃料収容タンク2の上部、すなわち、気相部に接続されている。
【0025】
第2管42が、燃料収容タンク2の下部、すなわち、液相部から燃料収容タンク2の外部に延びる。第2管42の先端部には第2三方弁52(の第1弁)が取り付けられ、燃料収容タンク2と第2三方弁52との間にはガスメーター(流量計)GMが設けられている。
【0026】
第2三方弁52の第2弁には、先端に燃料供給ノズル4を備えたチューブが取り付けられ、第2三方弁52の第3弁には第3管43が接続されている。
【0027】
第2三方弁52から延びる第3管43の下流端はガス回収タンク11に接続され、このガス回収タンク11からは2つの管、すなわち、第4管44、第5管45が延びる。
【0028】
第4管44はコンプレッサCに接続され、このコンプレッサCは第6管46を介して気液分離器Sに接続されている。そして、気液分離器Sは第7管47を介して加圧用ガスボンベ3に接続されている。尚、気液分離器Sにより分離された液体は、下部に設けられた開閉弁S1を解放することによって下方に排出され、排出された液は回収容器S2によって収集される。
【0029】
ガス回収タンク11から延びた第5管45は第1三方弁51の第3弁に接続される。
【0030】
第1管41には加圧用ガスボンベ3と第1三方弁51との間から延びる延長管41Aが設けられ、延長管41Aの自由端部には予備の加圧用ガスボンベ3Aが接続されるようになっている。
【0031】
また、燃料収容タンク2の外部において第2管42には接続開閉弁53が設けられ、この接続開閉弁53には、タンクローリー14の液相部(液相ブタンガス)から延びる液相管15の自由端が接続されるようになっている。
【0032】
尚、タンク、ボンベ、その他各種機器には、同種、既知のシステムにおけるのと同様に、適宜、接続及び/又は開閉用弁が設けられているが、本発明の用紙とは直接関係しないので、これらの説明は省略する。
【0033】
次に、LPG充填システム30の作動を説明する。
【0034】
先ず、LPG充填システム30のガス充填(燃料供給)原理は、背景技術の項で説明したLPG充填装置1におけるのと同じである。すなわち、燃料収容タンク2の燃料を車両5の燃料タンク6に供給するときには、各種弁を適宜操作することによって(手動でも良いし、自動化しても良い)、加圧用ガスボンベ3のガスを燃料収容タンク2に流入させる。すると、流入した加圧ガスが燃料収容タンク2内の液体燃料(液相のブタン)を下方に付勢し、これにより、燃料収容タンク内の液体燃料は、第2管42、ガスメーターGM、第2三方弁52を通って燃料供給ノズル4から車両5の燃料タンク6に充填されることになる。
【0035】
LPG充填システム30においては、車両5の燃料タンク6内の圧力が高まったとき、第2三方弁52を操作して、車両5の燃料タンク6内の高圧のガスをガス回収タンク11に導いて、車両5の燃料タンク6のガス圧を低下させる。
【0036】
ガス回収タンク11内のガスは第4管44を介してコンプレッサCに送られ、コンプレッサCによって加圧されて、第6管46を介して気液分離器Sに送られる。尚、ここで使用されるコンプレッサCは流量が100m3/日未満のものである。よって、コンプレッサCを理由に、LPG充填システム30を備えた施設が第1種製造事業所と看做されることはない。
【0037】
加圧されたガスは、気液分離器Sによって液体と気体とに分離され、液体は開閉弁S1から排出され、回収容器S2によって収集され、気体のみが第7管を介して加圧用ガスボンベ3に送られ、加圧用ガスとして再利用される。
【0038】
加圧用ガスとして再利用されるガスは、加圧ガスが燃料ガスに溶解して消費されるため、加圧用ガスボンベ3内のガス圧力が一定値以下になった場合には、第1管41に対する加圧用ガスボンベ3の連通を閉じ、代わりに、予備加圧用ガスボンベ3Aを第1管41に連通させる。
【0039】
次に、燃料収容タンク2内のブタンガス(燃料用ガス)が減少したときには、タンクローリー14によって輸送されたブタンガス(燃料用ガス)を燃料収容タンク2に移充填する。
燃料収容タンク2へ移充填するときには、タンクローリー14の液相管15を第2管42の接続開閉弁53に接続する。これと前後して、第1三方弁51を操作することによって、燃料収容タンク2の気相部をガス回収タンク11に連通させる。この状態で、タンクローリー14のポンプ(図示せず)によってタンクローリー14の液化ブタンガス(燃料用ガス)を燃料収容タンク2に移充填すると、燃料収容タンク2のガスはガス回収タンク11に送られるので、燃料収容タンク2内のガス圧力が高まることはなく、従って、タンクローリー14から燃料収容タンク2への移充填が妨げられることもない。そしてまた、燃料収容タンク2内のガスはタンクローリー14に戻されることはないから、タンクローリー14で持ち帰ったガスを別工程で処理しなければならないという煩を避けることができる。更にまた、ガス回収タンク11に回収された燃料収容タンク2のガスは、先に述べた仕方で、加圧用ガスとして再利用されるという利点がある。
【0040】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく以下のような種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上述した実施形態では、本発明によるガス充填システムを自動車の燃料タンクへのLPG充填システムとして説明したけれども、本発明のガス充填システムは、LPG以外の任意のガスを容器、ボンベ等に充填するのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来のLPG充填システムを示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態によるLPG充填システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
2 燃料収容タンク(液化ガス収容タンク)
4 燃料供給ノズル(液化ガス供給ノズル)
3 加圧用ガスボンベ
11 ガス回収タンク
30 LPG充填システム(液化ガス充填装置)
51 第1三方弁(第2切換弁)
52 第2三方弁(第1切換弁)
C コンプレッサ
S 気液分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス供給ノズルに接続された液化ガス収容タンクと、該液化ガス収容タンクに接続された加圧用ガスボンベとを有し、前記加圧用ガスボンベ内の加圧ガスによって前記液化ガス収容タンク内の液化ガスを付勢して前記液化ガス供給ノズルから前記液化ガスを送出するようになった液化ガス充填装置であって、
ガス回収タンクと、
前記液化ガス収容タンクと前記液化ガス供給ノズル、又は、前記液化ガス供給ノズルと前記ガス回収タンクとを、選択的に連通させるための第1切換弁と、
前記ガス回収タンクと接続されたコンプレッサと、
該コンプレッサと接続された気液分離器とを有し、該気液分離器が前記加圧用ガスボンベに接続された、
液化ガス充填装置。
【請求項2】
補充用の液化ガス燃料を収容する収容体から送給される液化ガス燃料を前記液化ガス収容タンクに導入するための導入手段と、
前記液化ガス収容タンクの気相部と前記ガス回収タンクとを選択的に連通させる第2切換弁とを有する、
請求項1記載の液化ガス充填装置。
【請求項3】
前記液化ガス収容タンクに選択的に連通されるようになった予備の加圧用ガスボンベを有する、請求項1又は請求項2記載の液化ガス充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−300142(P2006−300142A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119960(P2005−119960)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000110734)ニイミ産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】