説明

液化燃料ガス貯槽及びそれを備えた液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理方法

【課題】液化燃料ガス貯槽内の圧力維持のための構成を簡略化して、機器の設置スペースの省スペース化、並びに機器のイニシャルコスト及びメンテナンスコストの低減が可能な液化燃料ガス貯槽を備えた液化燃料ガス貯蔵供給システムを提供する。
【解決手段】貯槽50に、内槽52の内部に貯蔵された液化燃料ガスに対して貯槽50外部からの熱を入熱させる入熱状態と入熱させない非入熱状態とに切換え自在な入熱調整手段Nが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧状態で低温の液化燃料ガスを貯蔵する内槽と、前記内槽の外側を覆う外槽と、前記内槽と前記外槽との間に設けられる断熱材層とからなる貯槽を備え、前記貯槽から前記液化燃料ガスを払出す払出路が接続された液化燃料ガス貯槽、及び、その液化燃料ガス貯槽を備えた液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大都市圏から離れた地域における都市ガス需要の増大に伴い、液化天然ガス(LNG)等の液化燃料ガスを貯蔵する液化燃料ガス貯槽を備えた液化燃料ガス貯蔵供給システムが採用されつつある。このような液化燃料ガス貯蔵供給システムは、加圧状態で低温の液化燃料ガスを貯蔵する液化燃料ガス貯槽を備え、その液化燃料ガス貯槽に液化燃料ガスを払出す払出路が接続され、液化燃料ガス貯槽内の圧力によって液化燃料ガスが払出路に送り出さるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
液化燃料ガス貯槽は断熱性を有するように構成されているが、大気熱や日射等によって貯槽内部の液化燃料ガスが蒸発して内槽内部の圧力が上昇する(以下、自然昇圧と称する)。通常はこの自然昇圧による圧力で液化燃料ガスの払出しが可能となる。しかしながら、単位時間内の液化燃料ガス貯槽からの液化燃料ガスの払出し量が大きくなると、頻繁ではないものの、自然昇圧だけでは液化燃料ガス貯槽内部の圧力が維持できなくなり(以下、貯槽内圧力異常低下状態と称する)、液化燃料ガスを払出路に送り出すための圧力が不足して安定した液化燃料ガスの払出しに支障を来すことがある。
【0004】
このため、従来の液化燃料ガス貯蔵供給システムの液化燃料ガス貯槽には、図5に示すように循環路20と循環開閉弁21と加圧蒸発器22とによって構成された加圧蒸発機構を備え、液化燃料ガス貯槽内部の圧力が低下したときには、液化燃料ガス貯槽の下部より循環路20に取り出した液化燃料ガスを加圧蒸発器22にて気化して液化燃料ガス貯槽の上部のガス相部に戻して、液化燃料ガス貯槽内の圧力を維持するように構成されたものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−108913号公報
【特許文献2】特開平6−117599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような液化燃料ガス貯蔵供給システムは、上記の如く頻繁に発生するものではない貯槽内圧力異常低下状態に備えて、液化燃料ガス貯槽の他に循環路、循環開閉弁、及び加圧蒸発器等によって構成された加圧蒸発機構を備えることが必要となるために、構成機器が増大し、設置スペースを要すると共に機器のイニシャルコスト及びメンテナンスコストの増加を招くものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液化燃料ガス貯槽内の圧力維持のための構成を簡略化して、機器の設置スペースの省スペース化、並びに機器のイニシャルコスト及びメンテナンスコストの低減が可能な液化燃料ガス貯槽を備えた液化燃料ガス貯蔵供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る液化燃料ガス貯槽は、加圧状態で低温の液化燃料ガスを貯蔵する内槽と、前記内槽の外側を覆う外槽と、前記内槽と前記外槽との間に設けられる断熱材層とからなる貯槽を備え、前記貯槽から前記液化燃料ガスを払出す払出路が接続された液化燃料ガス貯槽であって、
その第1特徴構成は、前記貯槽に、前記内槽の内部に貯蔵された前記液化燃料ガスに対して前記貯槽外部からの熱を入熱させる入熱状態と入熱させない非入熱状態とに切換え自在な入熱調整手段が設けられている点にある。
【0009】
すなわち、払出路を介する前記液化燃料ガスの払出しに起因する貯槽内の圧力低下に対して、入熱調整手段を入熱状態として前記貯槽内の圧力を維持可能とできるから、液化燃料ガスの払出しに起因して貯槽内の圧力低下が発生したときには、貯槽に設けられた入熱調整手段を入熱状態として、貯槽外部からの熱を内槽の内部に貯蔵された液化燃料ガスに入熱させることで、前記内槽内部の液化燃料ガスの気化を促進し、貯槽内の圧力を維持することができる。また、液化燃料ガスの払出しがない状態で、入熱調整手段を非入熱状態として貯槽内の圧力を維持可能とできるから、液化燃料ガスの払出しに起因する貯槽内の圧力低下がないときには、貯槽に設けられた入熱調整手段を非入熱状態として、貯槽外部からの熱を内槽の内部に貯蔵された液化燃料ガスに入熱させないようにすることで、前記内槽内部の液化燃料ガスの気化を抑制し、貯槽内の圧力を維持することができるものとなる。
【0010】
従って、貯槽そのものに設けられた入熱調整手段にて、貯槽外部の熱を貯槽内部に入熱する入熱状態と入熱しない非入熱状態に切換えて、貯槽内の圧力を維持することができるものとなり、貯槽内の圧力を維持するために必要な構成、例えば、循環路、循環開閉弁、及び加圧蒸発器によって構成された加圧蒸発機構等の構成が不要となって、その設置スペースを確保する必要がないものとなり、且つ、機器のイニシャルコスト及びメンテナンスコストも低減することが可能な液化燃料ガス貯槽を提供できるものとなった。
【0011】
本発明に係る液化燃料ガス貯槽の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記入熱調整手段が、前記貯槽における前記外槽及び前記断熱材層を取り外し可能に構成された着脱式断熱パネル部と、その着脱式断熱パネル部が嵌合自在に前記外槽及び前記断熱材層に凹設された着脱式断熱パネル取付孔部とから構成され、前記入熱調整手段が複数設けられ、その複数設けられた前記入熱調整手段における前記着脱式断熱パネル部の一部又は全部を取り外し可能に構成されている点にある。
【0012】
すなわち、入熱調整手段が、貯槽における外槽及び断熱材層を取り外し可能に構成された着脱式断熱パネル部と、その着脱式断熱パネル部が嵌合自在に外槽及び断熱材層に凹設された着脱式断熱パネル取付孔部とから構成されているものであるから、着脱式断熱パネル部を着脱式断熱パネル取付孔部に装着して非入熱状態とし、着脱式断熱パネル部を着脱式断熱パネル取付孔部から取り外して入熱状態とする入熱状態の切換えが容易に行えるものとなる。しかも、入熱調整手段は貯槽における外槽及び断熱材層に設けるものであるから、貯槽内の圧力を維持するために必要な構成を簡略化して、その設置スペースを確保する必要がないものとなり、且つ、機器のイニシャルコスト及びメンテナンスコストも低減することが可能となる。
【0013】
また、入熱調整手段が複数設けられ、その複数設けられた入熱調整手段における着脱式断熱パネル部の一部又は全部が取り外し可能に構成されているものであるから、その複数の入熱調整手段のうち、着脱式断熱パネル部を着脱式断熱パネル取付孔部から取り外す入熱状態とする数量を調整することによって、入熱量を調整することができるものとなる。
【0014】
本発明に係る液化燃料ガス貯槽の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記着脱式断熱パネル部と前記着脱式断熱パネル取付孔部との間に着霜防止シートが着脱自在に取り付けられている点にある。
【0015】
すなわち、前記着脱式断熱パネル部と前記着脱式断熱パネル取付孔部との間に着霜防止シートが着脱自在に取り付けられているものであるから、着脱式断熱パネル取付孔部に霜等の異物が付着した場合であっても、容易にそれを取り除くことができるものとなる。
【0016】
説明を加えると、液化燃料ガス貯槽に貯蔵される液化燃料ガスは大気に対して非常に低温であるため、着脱式断熱パネル取付孔部にて大気の保有熱が液化燃料ガスに入熱すると同時に該着脱式断熱パネル取付孔部近傍の空気が冷却されることとなる。このとき、大気に含まれる水蒸気は凝結して霜となって着脱式断熱パネル取付孔部周辺に付着する。このように着脱式断熱パネル取付孔部に霜が付着すると、入熱調整手段を非入熱状態とすべく着脱式断熱パネルを着脱式断熱パネル取付孔部に取り付ける際に、付着した霜の除去作業を行う必要が生じて作業効率が低下する。前記入熱状態であるときには上述のように着脱自在に構成された着霜防止シートを着脱式断熱パネル取付孔部に取り付けた状態としておくことにより、霜は着霜防止シートに付着するものとなるため、その着霜防止シートを取り外すことによって着脱式断熱パネル取付孔部周辺に付着した霜を容易に除去することができるものとなる。
なお、霜が付着した着霜防止シートを取り除いた後は、予備の(霜の付着していない)新しい着霜防止シートを取り付けた後に着脱式断熱パネル部を装着することによって次回の入熱状態への切換えに備えることができる。
【0017】
本発明に係る液化燃料ガス貯槽の第4特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記貯槽における前記外槽と前記内槽とを貫通し、前記内槽内部の前記液化燃料ガスに対して前記貯槽外部からの熱が入熱可能なヒートパイプと、前記ヒートパイプにより前記貯槽外部から前記貯槽内に入熱される入熱量を調整可能な入力量調整手段とを備え、前記入熱調整手段が構成されている点にある。
【0018】
すなわち、貯槽における外槽と内槽とを貫通し、内槽内部の液化燃料ガスに対して貯槽外部からの熱が入熱可能なヒートパイプと、ヒートパイプにより貯槽外部から貯槽内に入熱される入熱量を調整可能な入力量調整手段とを備えて入熱調整手段が構成されているものであるから、入力量調整手段によって貯槽外部から貯槽内に入熱される入熱量を適切に調整しながら液化燃料ガスの気化を促進することができるものとなり、貯槽内の圧力を適切に維持することができるものとなった。
【0019】
本発明に係る液化燃料ガス貯槽の第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、前記ヒートパイプを複数備えるとともに、各ヒートパイプの貯槽外突出部を断熱する断熱部材を前記入力量調整手段として前記ヒートパイプに装着自在に備え、前記断熱部材の装着数を変更自在に構成されている点にある。
【0020】
すなわち、前記ヒートパイプが複数備えられるとともに、複数備えられたヒートパイプの貯槽外突出部を断熱する断熱部材を入力量調整手段としてヒートパイプに各別に装着自在に備えて、その断熱部材の装着数を変更自在に構成されるものであるから、断熱部材の装着数を変更することによって内槽内部の液化燃料ガスに対する貯槽外部からの熱の入熱量を、断熱部材の装着数によって調整することが可能となる。従って、入熱量を適切に調整しながら液化燃料ガスの気化を促進することができるものとなり、貯槽内の圧力を適切に維持することができるものとなった。
【0021】
本発明に係る液化燃料ガス貯槽の第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、前記ヒートパイプの貯槽外突出部を液化燃料ガス温度より高い温度に維持する温度維持機構が装着自在に設けられている点にある。
【0022】
すなわち、ヒートパイプの貯槽外突出部を液化燃料ガス温度より高い温度に維持する温度維持機構が装着自在に設けられるものであるから、温度維持機構により液化燃料ガスの温度より高い外部の熱を内槽内部の液化燃料ガスに対してより確実に入熱させ、液化燃料ガスの気化を促進して液化燃料ガス貯槽内の圧力を維持することができるものとなった。
【0023】
本発明に係る液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理方法の特徴構成は、上記第1〜第6特徴構成を備えた液化燃料ガス貯槽において、貯槽内ガス相部の圧力を検知する貯槽内圧力検知手段と、前記払出路を介して払い出される予定の液化燃料ガス払出量を管理する管理手段と、前記管理手段により管理される液化燃料ガス払出量を出力する出力手段が設けられ、前記出力手段により出力される液化燃料ガス払出量に従って、その払出量に対して貯槽内圧力を維持するのに必要な入熱量を算出し、前記入熱調整手段を前記入熱状態と前記非入熱状態との間で切換え管理する点にある。
【0024】
すなわち、第1〜第6特徴構成に記載する入熱調整手段を備えた液化燃料ガス貯槽において、貯槽内ガス相部の圧力を検知する貯槽内圧力検知手段と、払出路を介して払い出される予定の液化燃料ガス払出量を管理する管理手段と、管理手段により管理される液化燃料ガス払出量を出力する出力手段が設けられ、出力手段により出力される液化燃料ガス払出量に従って、その払出量に対して貯槽内圧力を維持するのに必要な入熱量を算出し、入熱調整手段を入熱状態と非入熱状態との間で切換え管理するものであるから、液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理者は、払出路を介して払い出される予定の液化燃料ガス払出量を出力手段を介して知ることができる。そして、そのように液化燃料ガス払出量を知ることができることにより、液化燃料ガス払出量が多いと予定されるときには、貯槽内の圧力が低下する虞があるとして事前に入熱調整手段を入熱状態とし、液化燃料ガス払出量が少ないと予定されるときには、貯槽内の圧力はあまり低下しないとして入熱調整手段を非入熱状態とすることによって、貯槽内の圧力を維持することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液化燃料ガス貯蔵供給システムの全体構成図
【図2】本発明の第1実施形態に係る液化燃料ガス貯槽の入熱調整手段を示す図
【図3】本発明の第1実施形態に係る入熱調整手段の構成を示す図
【図4】本発明の第2実施形態に係る入熱調整手段の構成を示す図
【図5】従来の液化燃料ガス貯蔵供給システムの全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
(液化燃料ガス貯蔵供給システムの構成)
第1実施形態に係る液化燃料ガス貯蔵供給システムは、図1に示すように、液化燃料ガスを受け入れる受入路1と、貯蔵する液化燃料ガスを需要家に向けて払出す払出路30とが接続された液化燃料ガス貯槽を備えて構成されている。受入路1には液化燃料ガスの受入れ状態と受入れ停止状態とを切換える受入開閉弁2が設けられている。そして、払出路30には、液化燃料ガスを液化燃料ガス貯槽から払出す払出し状態と払出しを停止する払出し停止状態とを切換える払出開閉弁31が設けられ、払出開閉弁31を開状態にして払出路30を通じて液化燃料ガスが払出されるように構成されている。払出路30から払出された液化燃料ガスは、気化器33にて気化され、気体となった燃料ガスがガス導管35にて需要家に供給されるように構成されている。
【0027】
貯槽50には、貯槽内ガス相部の圧力を検知する貯槽内圧力検知手段37が設けられている。この貯槽内圧力検知手段37での検出値は、図1に一点鎖線にて示す通信回線を介して管理手段Hに通信される。また、ガス導管35には、それを通じて需要家に供給される燃料ガスの流量を検知するガス供給量検出手段36が設けられている。このガス供給量検出手段36での検出値は、図1に一点鎖線にて示す通信回線を介して管理手段Hに通信される。管理手段Hは、詳しい説明は省略するが、前記ガス供給量検出手段36による検出値の過去データ、前記貯槽内圧力検出手段37による検出値、季節、気候又は時期によるガス需要の変動に関するデータ、及び、需要家の操業計画等より、液化燃料ガス貯槽からどれだけの量の液化燃料ガスが払出されるかを管理するように構成されている。また、この管理手段には、管理手段に対する指令を入力する入力装置とともに、その管理手段Hによって管理される情報を出力する出力手段D(例えばディスプレイ装置や音声出力装置等が含まれる)が設けられ、前記管理手段により管理される液化燃料ガス払出量を出力手段Dに出力するようになっている。
【0028】
(液化燃料ガス貯槽及び入熱調整手段の構成)
液化燃料ガス貯槽は、図3(a)の断面図に示すように、加圧状態で低温の液化燃料ガスを貯蔵する内槽52と、内槽の外側を覆う外槽51と、内槽52と外槽51との間に設けられる断熱材層Fとからなる貯槽50を備えて構成されている。そして、貯槽50の下部に液化燃料ガスを払出す払出路30が接続されている。
【0029】
本実施形態における貯槽50は、図1に示す如く筒軸が垂直方向となるように立設された円筒状に形成され、前記貯槽50の筒周面の下端側近傍に、図2及び図3(a)に示すように、外槽51の一部に設けられた矩形の孔51aと、その51aと略同形で内槽52に向かう方向に断熱材槽Fに設けられた凹部とによって構成される着脱式断熱パネル取付孔部101が、前記筒周面において水平方向に離間する状態で複数設けられている。さらに、外槽51と同じ材質で且つ外槽51に設けられた孔51aを密着状態で覆うべく孔51aより若干大きい板材を湾曲形成して構成された板状部51bと、その板状部51bにおける湾曲内方側に一体に接合され、断熱材槽Fに設けられた凹部と略密着状態で嵌合する断熱材Fと、板状部51bの湾曲外方側に接合された2つの取手部105とによって着脱式断熱パネル部100が構成され、この着脱式断熱パネル部100が複数の前記着脱式断熱パネル取付孔部101の夫々に、着脱自在に装着されている。
【0030】
外槽51における孔51aの周囲には、図3(b)に示す如く、周囲に6つのスタッドボルト103が突設して設けられている。そして、着脱式断熱パネル部100における板状部51bには、そのスタッドボルト103の夫々に対応する部分にボルト孔が穿設され、着脱式断熱パネル部100を前記着脱式断熱パネル取付孔部101に装着した状態においては、板状部51bのボルト孔の夫々にスタッドボルト103の夫々を嵌合してナット留めされるようになっている。尚、上記スタッドボルト103及びボルト孔の個数は、着脱式断熱パネル部100を着脱式断熱パネル取付孔部101に確実に取付保持できる強度を有する限りにおいて任意に変更可能である。
【0031】
着脱式断熱パネル取付孔部101に着脱式断熱パネル部100が装着された状態では、貯槽50は外槽51及び断熱材層Fの全部を具備する状態であるので、内槽52内部への入熱が抑制された非入熱状態となる。
そして、着脱式断熱パネル取付孔部101から着脱式断熱パネル部100を取り外した状態では、貯槽50において外槽51と断熱材層Fの一部を欠いた状態となり、図3(a)に破線矢印で示す如く着脱式断熱パネル取付孔部101から内槽52内部の液化燃料ガスに対して外部の熱が入熱する入熱状態となる。
すなわち、外槽51及び断熱材層Fを取り外し可能に構成された着脱式断熱パネル部100と、その着脱式断熱パネル部100が嵌合自在に外槽51及び断熱材層Fに凹設された着脱式断熱パネル取付孔部101とから入熱調整手段Nが構成され、貯槽50に設けられたこの入熱調整手段Nが、内槽52の内部に貯蔵された液化燃料ガスに対して貯槽50外部からの熱を入熱させる入熱状態と入熱させない非入熱状態とに切換え自在に構成されている。
そして、入熱状態となると、低温の液化燃料ガス(例えばLNGでは約−160℃前後の温度である)は内槽52の外部より入熱する熱にて気化する。液化燃料ガスが気化すると、貯槽50内の圧力を上昇させることとなる。
【0032】
着脱式断熱パネル取付孔部101と着脱式断熱パネル部100との間には、着霜防止シート104が着脱自在に取り付けられている。この着霜防止シート104は、例えばポリ塩化ビニルやポリプロピレン等耐候性素材にて構成され、スタッドボルト103の夫々に対応する部分にボルト孔が穿設されている。そして、着脱式断熱パネル取付孔部101に着脱式断熱パネル部100が装着された状態においては、着脱式断熱パネル取付孔部101と着脱式断熱パネル部100との間に挟まれた状態で備えられると共に、着脱式断熱パネル取付孔部101から着脱式断熱パネル部100を取り外した状態においては、着脱式断熱パネル取付孔部101を密着状態で覆う状態に備えられる。
【0033】
尚、本実施形態においては、図1に示すように、気化器33は第1気化器33aと第2気化器33bとによって並列運転可能とされている。すなわち、払出路30の先が第1払出分岐路32aと第2払出分岐路32bとに分岐され、第1払出分岐路32aには第1気化器33aと第1気化器開閉弁34aが設けられ、第2払出分岐路32bには第2気化器33bと第2気化器開閉弁34bが設けられている。そして、第1気化器開閉弁34a及び第2気化器開閉弁34bの下流側で、分岐路32a及び32bは再び合流されてガス導管35に接続される。なお、第1気化器開閉弁34aと第2気化器開閉弁34bとは、排他的に開状態となるように構成され、通常使用状態の一方側の系が障害により使用不能となった際には、その系の開閉弁を閉じ、他方側の系の開閉弁を開とすることによりガスの供給を継続するように構成されている。上記の系の切換えは従来周知の方式により行っているため、説明は省略する。
【0034】
次に、入熱調整手段Nの使用態様を説明する。
上述したように、入熱調整手段Nとしての着脱式断熱パネル部100及び着脱式断熱パネル取付孔部101は複数設けられて、その複数設けられた入熱調整手段Nにおける前記着脱式断熱パネル部100の一部又は全部が取り外し可能に構成されている。これにより、複数設けられた入熱調整手段Nのうち幾つを入熱状態にするか、また、その入熱状態とする時間を如何ほどとするかによって、内槽52内への入熱量を調整することができるものとなる。
【0035】
そして、払出路30を介する液化燃料ガスの払出しに起因する貯槽50内の圧力低下に対しては、着脱式断熱パネル取付孔部101から着脱式断熱パネル部100を取り外す、つまり、入熱調整手段Nを入熱状態として液化燃料ガスの気化を促進して貯槽50内の圧力を維持可能に構成され、また、払出路30を介する液化燃料ガスの払出しがない状態では、着脱式断熱パネル取付孔部101に着脱式断熱パネル部100を取り付ける、つまり、入熱調整手段Nを非入熱状態として液化燃料ガスが気化しないように断熱することにより、貯槽50内の圧力を維持するように構成されている。
従って、液化燃料ガスの払出しに起因する貯槽50内の圧力低下がある場合には入熱調整手段Nを入熱状態とし、液化燃料ガスの払出しがない場合には入熱調整手段Nを非入熱状態として貯槽50内の圧力を維持することにより、需要家に対して安定した燃料ガスの供給が行えるものとなる。
【0036】
入熱調整手段Nを入熱状態とすべく着脱式断熱パネル取付孔部101から着脱式断熱パネル部100を取り外すと、着脱式断熱パネル取付孔部101にて大気の保有熱が液化燃料ガスに入熱すると同時に該着脱式断熱パネル取付孔部101近傍の空気が冷却されるため、大気に含まれる水蒸気は凝結して霜となって着脱式断熱パネル取付孔部101周辺に付着する。このように着脱式断熱パネル取付孔部に霜が付着した状態となると、入熱調整手段を非入熱状態とすべく着脱式断熱パネル100を着脱式断熱パネル取付孔部101に取り付ける際に付着した霜の除去作業を行う必要があるため、作業効率が非常に悪化する。尚、霜の除去のために霜の付着した着脱式断熱パネル取付孔部101を温水や温風等によって加温することは、内槽52内部の液化燃料ガスの気化を過剰に促進することとなり好ましくない。そこで、上記の如く着霜防止シート104を入熱状態時に着脱式断熱パネル取付孔部101に密着状態に備えておけば、霜はその着霜防止シート104の外気側に付着するため、着霜防止シート104を取り外すだけで霜を容易且つ安全に除去することができるものとなる。また、霜が付着した着霜防止シートを取り除いた後は、予備の(霜の付着していない)新しい着霜防止シートを取り付けた後に着脱式断熱パネル部を装着する。
【0037】
(液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理方法)
上記のように構成された液化燃料ガス貯蔵供給システムにおいて、上述のように、管理手段Hは、液化燃料ガス貯槽から払出路30を介して払い出される予定の液化燃料ガス払出量を管理し、前記管理手段により管理される液化燃料ガス払出量を出力手段Dにより出力する。例えば、当日の現時点までに払出された液化燃料ガス払出し量と当日の現時点までの貯槽内圧力変化に基づいて、貯槽内の圧力を維持するために、複数の入熱調整手段Nの幾つをどれだけの時間入熱状態にすればよいかを液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理者が判断して、前記入熱調整手段Nにおける着脱式断熱パネル部100を着脱させる。つまり、出力手段Dにより出力される液化燃料ガス払出量に従って、その払出量に対して貯槽50内圧力を維持するのに必要な入熱量を算出し、入熱調整手段Nを入熱状態と非入熱状態との間で切換え管理する。このように管理することで、液化燃料ガスの払出しを良好に行える。このようにして当日の現時点までの管理を行うほか、当日の液化燃料ガスの需要量(推定)を表示し、その需要量に応じて入熱調整手段Nにおける着脱式断熱パネル部100の着脱数を決定して管理してもよい。
【0038】
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態について説明するが、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより説明を省略し、主として第1実施形態と異なる構成を説明する。
第2実施形態においては、第1実施形態における着脱式断熱パネル部100及び着脱式断熱パネル取付孔部101に代えて、図4(a)に示すように、貯槽50における外槽51と内槽52とを貫通して内槽52内部の液化燃料ガスに対して貯槽50外部からの熱が入熱可能な複数のヒートパイプ201が設けられ、その夫々に、図4(b)に示すように、各ヒートパイプ201の貯槽外突出部201aを断熱する断熱部材202が入力量調整手段としてヒートパイプ201に装着自在に備えられている。この断熱部材202は、複数の前記ヒートパイプ201に対して各別に着脱が可能に構成されている。すなわち、ヒートパイプ201に対する断熱部材202の装着数を変更自在に構成されている。
つまり、ヒートパイプ201と断熱部材202とにより入熱調整手段Nが構成されている。
【0039】
さらに、図4(c)に示すように、各ヒートパイプ201の貯槽外突出部201aには、貯槽外突出部201aを液化燃料ガスの温度より高い温度に維持する温度維持機構が装着自在に構成されている。温度維持機構は、具体的には水容器203等にて構成される。
【0040】
ヒートパイプ201は周知のものを用いているため詳細な説明は省略するが、金属パイプの内部に封入した液体の蒸発と凝縮とを利用して金属パイプの一端側から他端側へと大量の熱輸送を可能にする機構である。本実施形態の貯槽50において、貯槽50外部からの熱は、図4(b)及び図4(c)にて破線矢印にて示すように入熱する。すなわち、液化燃料ガスは、例えば液化天然ガス(LNG)であれば約−160℃前後という低い温度であるため、図4(b)の如く断熱部材202を取り外すと大気の保有熱を貯槽外突出部201aの他端側の貯槽内突出部に伝える。また、図4(c)のように水容器203等の温度維持機構をヒートパイプ201の貯槽外突出部201aに装着することによって、温度維持機構から貯槽外突出部201aに与えられる熱をより効率的に内槽52内部の液化燃料ガスに入熱させることができるものとなる。
【0041】
そして、この場合にも、管理手段Hによって管理され出力手段Dにより出力される液化燃料ガス払出量と貯槽内圧力に従って、貯槽内の圧力を維持するために複数の入熱調整手段Nの幾つを、どれだけの時間入熱状態にすればよいかを液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理者が判断して、前記入熱調整手段Nにおける断熱部材202を着脱させ、もしくヒートパイプ201の貯槽外突出部201aに温度維持機構を装着する。つまり、出力手段Dにより出力される液化燃料ガス払出量に従って、入熱調整手段Nを入熱状態と非入熱状態との間で切換え管理する。
【0042】
〔別実施形態〕
次に、本発明の別実施形態について説明する。
(イ)上記第1及び第2実施形態では、貯槽50は筒軸が垂直方向となるように立設された円筒状に形成され、その下端部側に入熱調整手段Nを設けたものとしたが、このような構成に限定されるものではない。たとえば、貯槽50は上述の如く円筒状に形成し、且つその筒軸心が水平になるように設置してもよい。このときの入熱調整手段Nの設置箇所は、入熱状態と非入熱状態との切換操作を行なう作業者の手の届く高さに設けることが好ましい。
【0043】
(ロ)上記第1及び第2実施形態では、貯槽50の下部に払出路30を接続する構成としたが、そのような構成に限定されるものではなく、払出路を貯槽50の上部に接続し且つその払出路の端部を貯槽50の内槽52内部にてその下端部分まで延長したサイホン構造としてもよい。
【0044】
(ハ)上記第1及び第2実施形態では、ガス供給量検出手段36をガス導管35に設け、需要家に供給される燃料ガスの流量を検知するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、払出し路30を介して払出される液化燃料ガス(LNG)の流量を検知するように構成してもよい。
【0045】
(ニ)上記第1及び第2実施形態においては、管理手段Hにて液化燃料ガス払出量を管理して出力手段Dにて出力するように構成したが、出力手段Dにて出力する情報は液化燃料ガス払出量に限定されるものではなく、例えば季節や外気温等を総合的に勘案して、複数の入熱調整手段Nの幾つを、どれだけの時間入熱状態にすれば貯槽内の圧力を維持可能であるかという情報を出力させることも可能である。すなわち、夏季であるか冬季であるか、外気温の高低、又は日射量によって、入熱調整手段Nからの単位時間当たりの入熱量は変動するので、その情報を図示しない検出装置により検出して、又は通信回線を通じて外部より取り入れて、それらの情報を元に入熱調整手段Nを入熱状態にする個数及び時間を計算し、出力手段Dにより出力させる。そして、この出力手段Dからの出力結果に従って、複数の入熱調整手段Nのうちの幾つをどれだけの時間だけ入熱状態にすればよいかを知った液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理者が、前記入熱調整手段Nを入熱状態とする。
【0046】
(ホ)上記第1実施形態では、着脱式断熱パネル部100を、外槽51の孔51a周囲に設けられたスタッドボルト103と着脱式断熱パネル部100に設けられたボルト孔との嵌合によって装着するように構成したが、そのような構成に限定されるものではなく、着脱式断熱パネル部100が脱落しないように固定できるものであれば、例えばパチン錠等各種の係止具あるいは係止機構が採用可能である。また、例えば着脱式断熱パネル部100の板状部51bの一辺にヒンジを備え、外槽51からヒンジを支点に支持されて離脱させるようにし、ヒンジの対向辺側に閂状等のロック機構を設けて構成してもよい。
【0047】
(ヘ)上記第2実施形態では、ヒートパイプ201から断熱部材202を取り外した後、ヒートパイプ201の貯槽外突出部201aが露出状態となるように構成したが、貯槽外突出部201aに第1実施形態同様に着霜防止シートを取付けるように構成してもよい。
【0048】
(ト)上記第2実施形態では、ヒートパイプ201は内槽52を貫通して内槽52内部の液化燃料ガスに直接接触するように構成したが、ヒートパイプ201を内槽52の外壁部に貼り付けて、内槽52の壁面を通して伝熱するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、液化燃料ガス貯蔵供給システムにおける液化燃料ガス貯槽内の圧力維持のための構成を簡略化して、機器の設置スペースの省スペース化、並びに機器のイニシャルコスト及びメンテナンスコストの低減が可能な液化燃料ガス貯槽を備えた液化燃料ガス貯蔵供給システムを提供することが可能となるものである。
【符号の説明】
【0050】
50 貯槽
51 外槽
52 内槽
51a 孔
51b 板状部
100 着脱式断熱パネル部
101 着脱式断熱パネル取付孔部
103 スタッドボルト
104 着霜防止シート
105 取手
N 入熱調整手段
F 断熱材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧状態で低温の液化燃料ガスを貯蔵する内槽と、前記内槽の外側を覆う外槽と、前記内槽と前記外槽との間に設けられる断熱材層とからなる貯槽を備え、
前記貯槽から前記液化燃料ガスを払出す払出路が接続された液化燃料ガス貯槽であって、
前記貯槽に、前記内槽の内部に貯蔵された前記液化燃料ガスに対して前記貯槽外部からの熱を入熱させる入熱状態と入熱させない非入熱状態とに切換え自在な入熱調整手段が設けられている液化燃料ガス貯槽。
【請求項2】
前記入熱調整手段が、前記貯槽における前記外槽及び前記断熱材層を取り外し可能に構成された着脱式断熱パネル部と、その着脱式断熱パネル部が嵌合自在に前記外槽及び前記断熱材層に凹設された着脱式断熱パネル取付孔部とから構成され、
前記入熱調整手段が複数設けられ、その複数設けられた前記入熱調整手段における前記着脱式断熱パネル部の一部又は全部を取り外し可能に構成されている請求項1記載の液化燃料ガス貯槽。
【請求項3】
前記着脱式断熱パネル部と前記着脱式断熱パネル取付孔部との間に着霜防止シートが着脱自在に取り付けられた請求項2記載の液化燃料ガス貯槽。
【請求項4】
前記貯槽における前記外槽と前記内槽とを貫通し、前記内槽内部の前記液化燃料ガスに対して前記貯槽外部からの熱が入熱可能なヒートパイプと、前記ヒートパイプにより前記貯槽外部から前記貯槽内に入熱される入熱量を調整可能な入力量調整手段とを備え、前記入熱調整手段が構成されている請求項1記載の液化燃料ガス貯槽。
【請求項5】
前記ヒートパイプを複数備えるとともに、各ヒートパイプの貯槽外突出部を断熱する断熱部材を前記入力量調整手段として前記ヒートパイプに装着自在に備え、前記断熱部材の装着数を変更自在に構成されている請求項4記載の液化燃料ガス貯槽。
【請求項6】
前記ヒートパイプの貯槽外突出部を液化燃料ガス温度より高い温度に維持する温度維持機構が装着自在に設けられている請求項5記載の液化燃料ガス貯槽。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の液化燃料ガス貯槽において、
貯槽内ガス相部の圧力を検知する貯槽内圧力検知手段と、前記払出路を介して払い出される予定の液化燃料ガス払出量を管理する管理手段と、前記管理手段により管理される液化燃料ガス払出量を出力する出力手段が設けられ、
前記出力手段により出力される液化燃料ガス払出量に従って、その払出量に対して貯槽内圧力を維持するのに必要な入熱量を算出し、前記入熱調整手段を前記入熱状態と前記非入熱状態との間で切換え管理する液化燃料ガス貯蔵供給システムの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−137515(P2011−137515A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297922(P2009−297922)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501246488)株式会社クリエイティブテクノソリューション (10)
【Fターム(参考)】