説明

液圧成形方法

【課題】上方に突出する突出部を有する成形素材を用いてハイドロフォームなどの液圧成形を行なうに当たって、素材内の空間の空気などの気体を確実に排除し、これによって成形素材における突出部内の空間に空気などの気体が残留することを確実に防止し、残留気体に起因する成形不良が発生しないようにした液圧成形方法を提供する。
【解決手段】加圧用液体を成形用素材内に充填する以前の段階で、前記突出部に、成形用素材の外部に連通する開口穴を形成しておき、型締め前に、加圧用液体を素材内に充填するとともに、前記突出部の内側の空間に存在する気体を、前記開口穴を介して成形用素材の外部に排出させ、その後、型締めしてから、加圧用液体により成形用素材の内側空間を加圧して成形する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品などに使用される中空部材を、ハイドロフォーム加工で代表される液圧成形法によって所定の形状に成形するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液圧成形法は、鋼やステンレス鋼、アルミなどからなる中空な素材を金型の内側の成形用空間(キャビティ)にセットし、素材内に液圧を加えて、素材を金型の内面形状に沿った形状に塑性変形させる加工法である。このような液圧成形法のうち、ハイドロフォーム加工は、成形用素材として、鋼管やステンレス鋼管、あるいはアルミ管などの中空管状の素材(素材管)を用い、その素材管を金型のキャビティにセットし、素材管内に高圧の液圧を加えると同時に、素材管の両端部からその軸線方向に沿って圧縮する(軸押しする)加工法であり、複雑な形状の中空部材を一体に形成することができるため、近年、自動車などの各種部品の製造に適用されるようになっている。
【0003】
ところで、ハイドロフォーム加工により得るべき成形製品の形状によっては、上方に突出する凸状空間部が形成されたキャビティを有する金型を使用し、かつ素材管としてキャビティ内の凸状空間部に対応して、上方に突出する突出部を有するものを用いることがある。この場合、素材管を金型に挿入する以前の段階で、素材の直管に予備加工を施して、前記突出部を有する素材管に加工しておくことが多い。また場合によっては、素材の直管をそのまま上型と下型との間に挿入して、型締めを行い、その型締め時の圧力により直管を成形用空間(キャビティ)の形状に沿うように変形させて、突出部を有する形状とし、その後に液圧付与と軸押しを行なうこともある。
【0004】
このように上方に突出する突出部を有する素材管を使用してハイドロフォーム加工を行う場合の状況について、図7を参照して説明する。
【0005】
図7において、金型1は、上下に分離可能な上型3と下型5によって構成されており、その上型3と下型5との間にキャビティ7が形成されている。キャビティ7の上部、すなわち上型3の内側上部には、上方に突出する凸状空間部9が形成されている。成形用素材としては、通常は、前述のように直管状の中空管に予め予備加工を施して、キャビティ7の形状にある程度対応する形状に加工した管状の素材、すなわち突出部11Aを有する形状とした素材管11を用いる。あるいは直管状の素材を用意しておき、前述のように型締め時の圧力によって、キャビティ7の形状にある程度対応する形状、すなわち突出部11Aを有する形状としてもよい。
【0006】
素材管11の軸方向両端部13A、13Bは、素材管11内の空間を密閉するためのシール部材15A、15Bによってシールされている。これらのシール部材15A、15Bは、単に素材管11を密閉するばかりでなく、素材管11をその軸線方向に沿って圧縮する(軸押しする)ための軸押し部材を兼ねており、その少なくとも一方は、図示しない油圧シリンダなどの軸押し駆動装置に連結されている。またこれらのシール部材15A、15Bのうち、一方のシール部材15Aには、素材管11内に加圧用液体、例えば水を導入して加圧するための導入路17が形成されており、他方のシール部材15Bには、素材管11内の空気を排除するための排出路19が形成されている。
【0007】
ハイドロフォーム加工を行うにあたっては、上型3と下型5とを離隔させた状態(金型開放状態)で素材管11を上型3と下型5との間に配置し、上型3と下型5を閉じて型締めした後、シール部材15A、15Bを素材管11の軸方向両端部13A、13Bへ駆動してシールし、素材管11の一端側の導入路17から素材管11内に加圧用液体を導入し(黒矢印A)、その加圧用液体により素材管11内の空気を排出路19から追い出し(黒矢印B)ながら、素材管11内を加圧用液体で満たし、引き続き排出路19を閉じ、図示しない増圧装置を用いて、加圧用液体により素材管11内を高圧に加圧し、同時に軸押し部材を兼ねたシール部材15A、15Bによって、素材管11にその軸線方向に沿った荷重(白矢印C,D)を加えて圧縮する。これによって素材管11が塑性変形して、キャビティ7の内面に沿った形状に成形される。
【0008】
ここで、液圧付与及び軸押し前の段階で素材管11内に存在していた空気は、導入路17から素材管11内に加圧用液体を導入する際に、その加圧用液体に置換されて排出路19から追い出される。しかしながら、図7に示しているように、素材管11の中途に上方に突出する突出部11Aが存在すれば、その突出部11Aの内側に空気が残留してしまいやすい(例えば図7において符号12で示すクロスハッチング部分)。
このように空気が残留すれば、高圧に加圧しようとしても、残留した空気の著しい体積変化により増圧機の容量を超えてしまって、高圧を安定して維持できなくなる。そのため素材の塑性変形が不十分となって素材が金型内面に密着せず、結果として金型内面沿った形状に成形できずに、成形不良が発生してしまう。
【0009】
このような問題を解決するための一つの方策としては、例えば特許文献1に示される方法が提案されている。この特許文献1に示される方法は、液圧付与のために素材管内に導入する液体に脈動を与え、その液体の脈動によって残留空気を追い出すこととしている。
【0010】
しかしながら特許文献1に記載されているような加圧液体に脈動を与える方法では、突出部内側からの残留空気の排除にある程度の効果は示すが、突出部の高さ(突出部内の空間の上方への突出高さ)が高い場合や、突出部内の空間が狭小である場合、あるいは突出部の形状が複雑な場合などにおいては、残留空気を突出部内の空間から確実には追い出せないことが多い。そのため残留空気による成形不良の発生を確実かつ充分に回避することは困難であった。
【0011】
また、特許文献2に記載されているような吸引ポンプを用いて素材管内の空気を排出する方法では、前記特許文献1では排出困難な残留空気も排出することが可能であるが、この場合は、ハイドロフォーム装置のほかに吸引ポンプが必要となり、設備コストが上昇するとともに、吸引ポンプの設備保守も必要となるという不利がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−334958号公報
【特許文献2】特開2005−125342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記事情を背景としてなされたもので、上方に突出する突出部を有する成形素材を用いてハイドロフォームなどの液圧成形を行なうに当たって、素材内の空間の空気などの気体、特に突出部内の空間に存在する空気などの気体を、吸引ポンプなどの機械設備を用いずに確実に排気し得るようにし、これによって、高コスト化を招くことなく、突出部内の空間に空気などの気体が残留することを確実に防止して、残留気体に起因する成形不良が発生しないようにした液圧成形方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上述の課題を解決するため、基本的には、加圧用液体を成形用素材内に充填する以前の段階で、成形用素材における突出部に、素材の外部に連通する開口穴を形成しておき、しかも型締め以前に素材内への加圧用液体の充填を行うようにし、これによって加圧用液体の充填時に、前記開口穴から突出部内の空間の空気などの残留気体を素材の外部に排出させ、その後に型締めを行なって、高圧の液圧印加を行なうようにした。
なお、型締め時には、金型の内面が成形用素材の開口穴周囲の外面に接することによって、開口穴が自ずとシールされることが多いが、シール性をより確実にするため、好ましい態様として、いくつかの方策も講じることとした。
【0015】
したがって本発明の要旨とするところは、下記の通りである。
(1)金型のキャビティ内に、上方に向けて突出する凸状空間部を有する成形用素材を収容するとともに、前記成形用素材内に加圧用液体を充填し、その成形用素材内の液体を加圧して、素材をキャビティの内面に沿った形状に成形する液圧成形方法において、
加圧用液体を成形用素材内に充填する以前の段階で、前記突出部に、成形用素材の外部に連通する開口穴を形成しておき、型締め前に、加圧用液体を素材内に充填するとともに、前記突出部の内側の空間に存在する気体を、前記開口穴を介して成形用素材の外部に排出させ、その後、型締めしてから、加圧用液体により成形用素材の内側空間を加圧して成形することを特徴とする液圧成形方法、
【0016】
(2)前記成形用素材として管状素材を用い、その管状素材の両端部から軸線方向に沿って荷重を与えて、管状素材を軸線方向に沿って圧縮させながら、管状素材内を前記加圧用液圧によって加圧することを特徴とする(1)に記載の液圧成形方法、
【0017】
(3)前記型締めより前の段階で、開口穴の周囲に弾性シール材を配置しておき、型締め時にその弾性シール材が金型内面と成形用素材とに挟まれて弾性圧縮されるようにしたことを特徴とする(1)もしくは(2)に記載の液圧成形方法、
【0018】
(4)前記金型における、前記開口穴の周囲に対応する部位に突起部を形成しておき、型締め時にその突起部が成形用素材の開口穴の周囲の表面に食い込むようにしたことを特徴とする(1)もしくは(2)に記載の液圧成形方法、
【0019】
(5)前記成形用素材における開口穴の周囲の表面部分に段差部を形成しておき、型締め時にその段差部が金型内面により圧縮変形するようにしたことを特徴とする(1)もしくは(2)に記載の液圧成形方法、
【0020】
(6)前記金型に穿孔手段を組み込んでおき、成形用素材内への加圧用液体の充填以前の段階で、前記穿孔手段により成形用素材の前記突出部に前記開口穴を形成することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の液圧成形方法、
にある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上方に突出する突出部を有する中空な成形用素材を液圧成形するにあたって、吸引ポンプ等の機械設備を用いなくても、前記突出部の空間に存在する空気などの気体を、成形用素材内への加圧用液体の充填時に成形用素材の開口穴から素材の外部に排出することができ、そのため高圧の液圧印加時において、突出部内の残留気体の存在によって成形不良が発生することを確実に防止することができる。したがって本発明によれば、複雑な形状の中空成形品を、低コストで確実かつ安定して製造できるため、自動車・建設機械など、複雑な形状の成形部品が要求される分野でその工業的意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の液圧成形方法の第1の実施形態に使用される成形用素材(素材管)の一例を示す模式的な断面図である。
【図2】第1の実施形態において型締め後、液圧印加及び軸押しを実施している状況を示す模式的な断面図である。
【図3】第1の実施形態に適用されるシール性向上手段の第1の例として、成形用素材の開口穴付近の状況を拡大して示す模式的な断面図である。
【図4】第1の実施形態に適用されるシール性向上手段の第2の例として、成形用素材の開口穴付近の状況を拡大して示す模式的な断面図である。
【図5】第1の実施形態に適用されるシール性向上手段の第3の例として、成形用素材の開口穴付近の状況を拡大して示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の液圧成形方法の第2の実施形態を実施している状況を示す模式的な断面図である。
【図7】従来法に従って液圧成形を実施している状況の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明について詳細に説明する。
【0024】
図1、図2には、本発明の第1の実施形態を示す。この実施形態では、成形用素材として管状の素材(素材管11)を用い、その軸線方向に沿って軸押ししながら液圧成形する加工法、すなわちハイドロフォーム加工により成形する例である。なお図1、図2において、図7に示した要素と同一の要素については図7と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0025】
図1は、第1の実施形態において使用される素材管11の一例を示すと同時に、その素材管11内に加圧用液体、例えば水を充填する状況を示している。
【0026】
図1において、素材管11は、その中央部分が上方に膨出されて、突出部11Aが形成されている。このような素材管11は、予め予備加工を施すことによって、突出部11Aを有する形状に加工しておくのが通常であるが、場合によっては直管状の素材を金型内に挿入して、金型の型締め時の圧力によって突出部11Aを有する形状としても良い。
さらに直管素材11の突出部11Aの頂部には、その壁面を厚み方向に貫通する開口穴11Bが形成されている。この実施形態では、前記開口穴11Bは、予め予備加工によって形成されたものとしている。ここで、開口穴11Bの形成は、前述のような突出部11Aの形成のための予備加工と同時に行なっても、あるいは突出部11Aの形成後に、別途穿孔機(ピアサ)などによって形成しても良い。このような開口穴11Bによって、素材管11における内部の空間(特に突出部11Aの内側空間)と、素材管11の外部とが連通されている。
また、素材管11の両端には、予め、軸押し部材を兼ねたシール部材15A、15Bを取り付けておく。これらのシール部材A、15Bのうち、一方のシール部材15Aには、液圧付与のための液体を導入する導入路17が形成されており、他方のシール部材15Bには、排出路19が形成されている。なお排出路19には、排出管路20が接続されており、この排出管路20には開閉弁23が設けられている。
【0027】
上述のような素材管11にハイドロフォーム加工を実施するにあたっては、後述する金型によって型締めする以前の段階で、素材管11内に加圧用液体、例えば水を充填する。具体的には、開閉弁23を閉じた状態で、導入路17を介し、素材管11内に加圧用液体を注入する。そして、素材管11内の加圧用液体の液面の上昇に伴って、素材管11内に存在していた空気などの気体は、開口穴11Bから外部に排気される。このとき、素材管11の開口穴11Bは、突出部11Aの頂部に位置しているため、最終的に突出部11Aの内側空間の残留気体は、すべて排気されることになる。
なお、上述のような加圧用液体の充填は、型締めしていない状態(金型開放状態)で、管状素材11を金型1の下型5上に配置して実施するのが好ましいが、場合によっては金型1から離れた箇所で実施してもよい。
【0028】
このようにして素材管11内の空気を追い出して素材管11内を加圧用液体で充満させた後、図2に示すように、素材管11を金型1内に配置した状態で型締めする。そして開閉弁23を閉じた状態で、図示しない増圧機を用いて導入路17を介し素材管11内の加圧用液体に高圧を加えると同時に、軸押し部材を兼ねたシール部材15A、15Bによって素材管11に軸線方向に沿った荷重を与えて、素材管11を軸押しする。このとき、素材管11の内側には空気が残留していないため、増圧機により十分な高圧を加えることができ、その結果、素材管11は、その外面がキャビティ7の内面に密着するように塑性変形し、成形加工が行われる。
【0029】
前述のようにして金型1内で成形した後には、常法に従って液圧付与を停止させるとともに、軸線方向加圧力を解除し、金型1を開放する。またそれに前後して素材管11内の液体を排出し、成形品を金型1から取り出し、シール部材15A、15Bを素材管11から取り外せば、一連の成形プロセスが終了する。
【0030】
以上のような実施形態によれば、素材管の突出部の高さ(突出部内の空間の上方への突出高さ)が高い場合や、突出部内の空間が狭小である場合、あるいは突出部の形状が複雑な場合などにおいても、素材管の開口穴を介して突出部内の空間の空気などの残留気体を確実に排出することができ、その結果、残留空気による成形不良の発生を確実かつ充分に回避することが可能となった。
【0031】
ここで、前述のように型締めした状態では、金型1の内面が成形用素材11の開口穴11Bの周囲の表面に、ある程度の圧力をもって接するのが通常であり、その場合には、開口穴11の周囲が金型内面によってシールされ、そのため高圧の液圧付与時においても、加圧用液体が高圧下で開口穴11Bから漏洩するおそれは少ない。但し、素材管11における突出部11Aの形状などによっては、型締めした状態でも金型1の内面と開口穴11Bの周囲の表面とが密着しないこともあり、その場合には、次に説明する図3〜図5に示すようなシール性向上手段を適用して、開口穴からの高圧の加圧用液体の漏洩を、より確実に防止することが望ましい。
【0032】
図3〜図5には、型締め時において金型1の内面と素材管11の開口穴11Bとの間のシール性を向上させて、液圧印加・軸押し時に加圧用液体が開口穴から外部に漏出してしまうことを確実に防止するためのシール性向上手段の各例を示す。なお図3〜図5のいずれも、素材管11における開口穴11Bとそれに対応する金型1(上型3)の一部を、型締め直前の状態として拡大して示している。
【0033】
図3の例では、素材管11における開口穴11Bの周囲の外面に、ゴムなどの弾性圧縮変形可能な材料からなる環状のシール材30を配置することとしている。このようにシール材30を配置しておけば、型締め時には、シール材30が金型1の内面と素材管11の外面との間に挟まれて弾性的に圧縮変形し、シール機能を発揮して、開口穴11Bから外部に加圧用液体が漏出することを確実に防止することが可能となる。
【0034】
図4の例では、管型1の上型3における、素材管11の開口穴11Bに対向する領域の周囲に、開口穴11Bの周方向に沿って連続する環状の1又は2以上の突起部32が形成されている。図示の例では異なる径の連続環状の突起部32が内外2重に形成されている。
このような突起部32を上型3に形成しておけば、型締め時には、型締め圧力によってその突起部32が素材管11の開口穴11Bの周囲の表面に食い込み、これにより開口部11Aの周囲が密閉され、開口穴11Bから外部に加圧用液体が漏出することを確実に防止することが可能となる。なおこの場合の突起部32は、必ずしも連続環状である必要はなく、例えば突起部32を内外2重に形成する場合、それぞれの突起部を不連続環状として、開口穴11Bの中心からの放射線上に、内側の突起部の不連続領域と外側の突起部の連続領域とが交互に位置するように各突起部を配設しても、前記と同様なシール性向上効果を得ることができる。
【0035】
図5の例では、素材管11における開口穴11Bの周囲の表面に、開口穴11B周方向に沿って連続する段差部34が形成されている。このような段差部34を形成しておけば、型締め時には、型締め圧力によってその段差部34が塑性変形して、上型3の表面に緊密に接し、これにより開口穴11Bの周囲が密閉され、開口穴11Bから外部に加圧用液体が漏出することを確実に防止することが可能となる。なおこのような段差部34は、素材管11に突出部11Aを形成するための予備加工を施す際に、突出部形成と同時に形成しても、あるいは突出部11Aに開口穴11Bを形成する際に、開口穴形成と同時に形成してもよい。
【0036】
図6には、本発明の第2の実施形態として、金型1の上型3に、穿孔手段36を組み込んだ例を示す。
図6において、上型3における、素材管突出部11Aの頂部に対応する個所には、穿孔手段36としてピアサ36Aが組み込まれており、このピアサ36Aは、上型3の上部に配置された穿孔駆動装置36Bによって上下動するように構成されている。
この場合、素材管11としては、未だ開口穴11Bが形成されていないものを用意し、その素材管11内に加圧用液体を充填する以前の段階で、素材管11を下型5上にセットして、上型3を下降させ、上型3の内面が素材管11の突出部11Aに接するかまたは近接した状態で、ピアサ36Aを駆動させて、そのピアサ36Aにより突出部11Aの頂部を穿孔し、開口穴11Bを形成する。その後は、既に述べたと同様に、素材管11内に加圧用液体を充填し、型締めしてから、高圧の液圧印加及び軸押しを行なえばよい。
【0037】
このように金型1に穿孔手段36を組み込んでおけば、素材管11を下型5上に配置してから最終的に金型1内での成形が終了するまでの、金型での一連のプロセス中において開口穴形成を行なうことができるから、別工程で素材管に開口穴を形成する必要がなく、そのため素材予備加工工程の能率を向上させることができる。
【0038】
なお、以上の各実施形態では、金型1内のキャビティ7として、その中央部分が上方に膨出して凸状空間9を有する形状とし、それに合わせて、素材管11も、上方に膨出する突出部11Aを有する形状としているが、金型1内のキャビティ7を、上下に蛇行する形状として、素材管11としても管を上下に蛇行させた形状とすることもあり、その場合にも、前記と同様に、素材管の蛇行部分内において上方に突出する突出部11Aの頂部に開口穴11Bを形成しておくことによって、加圧用液体の充填時に、突出部11A内の空気を確実に除去することができる。
【0039】
さらに素材管11として、突出部11Aが、より複雑な形状となっている場合にも適用できる。例えば素材管11の突出部11Aが、上方に2段階に突出する形状となっているような場合にも、開口穴11Bを突出部11Aの最も奥部の頂面に形成しておくことによって、加圧用液体の充填時に、突出部11A内の空気を確実に除去することができる。
【0040】
また素材管11として、異なる2箇所以上の部分に突出部11Aが形成されている場合でも、各突出部11Aの頂部にそれぞれ開口穴11Bを形成しておけば、加圧用液体の充填時に、2箇所以上の突出部11Aのそれぞれの内部から空気を確実に除去することができる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはもちろんである。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。例えば、前述の各実施形態では、成形用素材として管状の素材を用い、高圧の液圧付与と同時に軸押しする、ハイドロフォーム加工を行うこととしているが、軸押しを行なわない液圧成形にも適用できることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の液圧成形方法は、自動車などに使用される中空部品として、複雑な形状を有する部品の成形に適している。
【符号の説明】
【0043】
1 金型
7 キャビティ(成形用空間)
9 凸状空間部
11 素材管(成形用素材としての管状素材)
11A 突出部
11B 開口穴
15A、15B シール部材
30 弾性シール材
32 突起部
34 段差部
36 穿孔手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティ内に、上方に向けて突出する凸状空間部を有する成形用素材を収容するとともに、前記成形用素材内に加圧用液体を充填し、その成形用素材内の液体を加圧して、素材をキャビティの内面に沿った形状に成形する液圧成形方法において、
加圧用液体を成形用素材内に充填する以前の段階で、前記突出部に、成形用素材の外部に連通する開口穴を形成しておき、型締め前に、加圧用液体を素材内に充填するとともに、前記突出部の内側の空間に存在する気体を、前記開口穴を介して成形用素材の外部に排出させ、その後、型締めしてから、加圧用液体により成形用素材の内側空間を加圧して成形することを特徴とする液圧成形方法。
【請求項2】
前記成形用素材として管状素材を用い、その管状素材の両端部から軸線方向に沿って加圧力を与えて、管状素材を軸線方向に沿って圧縮させながら、管状素材内を前記加圧用液圧によって加圧することを特徴とする請求項1に記載の液圧成形方法。
【請求項3】
前記型締めより前の段階で、開口穴の周囲に弾性シール材を配置しておき、型締め時にその弾性シール材が金型内面と成形用素材とに挟まれて弾性圧縮されるようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の液圧成形方法。
【請求項4】
前記金型における、前記開口穴の周囲に対応する部位に突起部を形成しておき、型締め時にその突起部が成形用素材の開口穴の周囲の表面に食い込むようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の液圧成形方法。
【請求項5】
前記成形用素材における、開口穴の周囲の表面部分に段差部を形成しておき、型締め時にその段差部が金型内面により圧縮変形するようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の液圧成形方法。
【請求項6】
前記金型に穿孔手段を組み込んでおき、成形用素材内への加圧用液体の充填以前の段階で、前記穿孔手段により成形用素材の前記突出部に前記開口穴を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の液圧成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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