説明

液晶表示素子

【構成】液晶層での電圧非印加時の液晶の屈折率異方性(△n)と液晶の厚み(d)との積△n・dを、画素部分と画素外部分とで異ならせ、画素外部分の光透過率が、画素部分のオフ時の光透過率に比べて実質的に同等以下となるようにされる。また、液晶層の外側に積層する複屈折板の主屈折率の関係をnx >nz >ny とする。[nx 、ny は複屈折板面内方向の屈折率(nx >ny )。nz は複屈折板の厚み方向の屈折率。]
【効果】従来の白黒表示スーパーツイステッド液晶表示素子と比べてより優れたコントラスト比を持つ白黒表示が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、データ端末等の表示端末のような高密度表示に適した液晶表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、両電極間の液晶分子のツイスト角を大きくして、鋭い電圧−透過率変化を起し、高密度のドットマトリクス表示をする方法として、スーパーツイスト素子( T. J. Scheffer and J. Nehring, Appl. Phys. Lett. 45(10),1021-1023(1984))が知られていた。
【0003】しかし、この方法は用いられる液晶表示素子の液晶の複屈折率△nと液晶層の厚みdとの積△n・dの値が実質的に0.8〜1.2μmの間にあり(特開昭60−10720)、表示色として、黄緑色と暗青色、青紫色と淡黄色等、特定の色相の組み合せでのみ、良いコントラストが得られていた。
【0004】このようにこの液晶表示素子では白黒表示ができなかったことにより、マルチカラーフィルターと組み合せて、マルチカラーまたはフルカラー表示ができない欠点があった。
【0005】一方、同様な方式を使用し、液晶の複屈折率と厚みとの積△n・dを0.6μm付近と小さく設定することにより、ほぼ白と黒に近い表示が得られる方式が提案されている( M. Schadt et al, Appl. Phys. Lett.50(5),1987,p.236 )。
【0006】しかし、この方式を使用した場合においては表示が暗く、かつ、最大コントラストがあまり大きくなく、青味を帯びるため、表示の鮮明度に欠ける欠点があった。
【0007】また、白黒表示でかつコントラストの高い液晶表示素子として、互いに逆らせんの液晶セルを2層積層し、一方のセルのみ電圧を印加し、他方のセルは単なる光学的な補償板として使用する方式が提案されている(奥村ほか、テレビジョン学会技術報告、11(27),p.79,(1987))。
【0008】しかし、この方式は2層セルでの△n・dのマッチングが非常に厳しく、歩留りの向上が困難なうえ、液晶セルが2層必要なため、液晶セルの薄く軽いという特長を犠牲にしている欠点があった。
【0009】これらの問題点を解決するために、ほぼ平行に配置された配向制御膜を有する一対の透明電極付きの基板間に挟持された旋光性物質を含有した誘電異方性が正のネマチック液晶によるねじれ角が160〜300°の液晶層と、この液晶層を挟持する上下の基板の透明電極間に電圧を印加する駆動手段とを有し、この液晶層の外側に少なくとも1枚の複屈折板と一対の偏光板を設置した液晶表示素子が提案されている。
【0010】これによれば、従来の二層式スーパーツイスト液晶表示素子と比べてより薄く、軽くてコンパクトな白黒表示液晶素子が得られる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような液晶表示素子においては、例えば暗い背景に明るい表示のネガ型で駆動する場合、画素部分とその外側や境界部分(画素外部分)とでは光透過率が異なる。即ち、画素部分は電極が存在するため、その厚み分だけ、液晶の複屈折率△nと液晶層の厚みdとの積△n・dの値が画素外部分より小さくなり、透過光の複屈折状態が異なるため、画素部分がオフ状態のときでも、境界部分では画素部分よりも光透過率が高く、光抜けを生じることになる。そして、このような状況はポジ型で駆動した場合もほぼ同様である。
【0012】このような問題点を解決するために、画素外部分の基板の厚みを画素部分の基板厚みとほぼ同じにして、液晶層の厚みを均一化した液晶表示素子が提案されている。しかし、このような液晶表示素子は通常マルチプレックス駆動ににより駆動されるが、これによれば、画素部分にはオフ時に電圧が印加されないのではなく、非選択電圧が印加されているため、画素上の液晶層の△n・dの値が実質的に減少し、画素外部分との△n・dの値の差を生じ、その透過光の複屈折状態の差からネガ型であれば画素外部分からの光抜けを生じ、全体として、コントラストの低下を生じる原因になっていた。
【0013】本発明の目的は、従来技術が有していた前述の欠点を解消して、広視角で高コントラスト比の白黒に近い表示を実現することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の問題点を解決すべくなされたものであり、ほぼ平行に配置された配向制御膜を有する一対の透明電極付きの基板間に挟持された旋光性物質を含有した誘電異方性が正のネマチック液晶によるねじれ角が160〜300°の液晶層と、この液晶層を挟持する上下の基板の透明電極間に電圧を印加する駆動手段とを有し、この液晶層の外側に少なくとも1枚の主屈折率の関係が、3個の主屈折率をnx 、ny 、nz とし、nx 、ny を複屈折板面内方向の屈折率とし(nx >ny )、nz を複屈折板の厚み方向の屈折率とした場合、nx >nz >ny の複屈折板と一対の偏光板を設置した液晶表示素子において、液晶層での電圧非印加時の液晶の屈折率異方性(△n)と液晶の厚み(d)との積△n・dを画素部分と画素外部分とで異ならせ、画素外部分の光透過率が、画素部分のオフ時の光透過率に比べて実質的に同等以下となるようにされたことを特徴とする液晶表示素子を提供するものである。
【0015】また、液晶層での電圧非印加時の液晶の屈折率異方性(△n)と液晶の厚み(d)との積△n・dが液晶層の画素部分の△n1 ・d11で0.4〜1.5μmとされ、液晶層と偏光板との間の少なくとも一方に少なくとも1枚の主屈折率の関係がnx >nz >ny の複屈折板であって、合計の複屈折板の△n2 ・d2 が、0.6×△n1 ・d11<△n2 ・d2 <1.1×△n1 ・d11であり、さらに液晶層の画素外部分の△n1 ・d12との関係が、0.9×△n2 ・d2 <△n1 ・d12≦△n1 ・d11となるような複屈折板を配置したことを特徴とする液晶表示素子を提供するものである。
【0016】本発明では、液晶層の片側または両外側であって、液晶層と偏光板との間に少なくとも1枚の複屈折板を配置したものである。
【0017】このため、液晶層は1層でよく、生産性を下げたり色ムラを起こしやすい第2の液晶層を設けなくても、明るい白黒表示の液晶表示素子が容易に得られる。
【0018】この液晶層は、従来のスーパーツイステッド液晶表示素子の液晶層と同じ構成の液晶層であり、電極群が対向しており、これにより各ドット毎にオンオフを制御可能とされる。この液晶層のねじれ角は約160〜300°とされる。
【0019】具体的には、ほぼ平行に配置された一対の透明電極基板間に旋光性物質を含有した誘電異方性が正のネマチック液晶を挟持し、両電極間での液晶分子のねじれ角を160〜300°とすればよい。これは、160°未満では急峻な透過率変化が必要とされる高デューティでの時分割駆動をした際のコントラスト比の向上が少なく、逆に300°を超えるとヒステリシスや光を散乱するドメインを生じやすいためである。
【0020】本発明では、液晶層において、電圧非印加時の液晶の屈折率異方性(△n)とその液晶の厚み(d)との積△n・dを、画素部分とその画素外部分とで異ならせ、境界部分の光透過率が、画素部分のオフ時の光透過率に比べて実質的に同等以下となるようにされる。具体的には、画素部分と、その境界部分とで、液晶層の厚みを異ならせることにより、△n・dをそれぞれ調整する。
【0021】本発明では、液晶層の△n・dが特に次のようにされるのが好ましい。
【0022】液晶層の画素部分では、△n1 ・d11は0.4〜1.5μmとされる。これは、0.4μm未満では、オン時の透過率が低く、青味がかった表示色になりやすく、また1.5μmを超えるとオン時の色相が黄色から赤色を呈し、白黒表示となりにくい。特に、表示色の無彩色化が厳しく要求される用途では、液晶層の画素部分の△n1 ・d11は0.5〜1.0μmとされることが好ましい。
【0023】なお、この△n1 ・d11の範囲は、その液晶表示の使用温度範囲内で満足されるようにされることが好ましく、使用温度範囲内で美しい表示が得られる。もっとも他の性能の要求のために、使用温度範囲の一部でのみ、この関係を満足するようにされることもありうる。この場合には、△n1 ・d11の範囲が上記範囲からはずれる温度範囲では、表示が色付いたり、視野角特性が低下したりすることとなる。
【0024】所望のパターンにパターニングをしたITO(In23 −SnO2 )、SnO2 等の透明電極を設けたプラスチック、ガラス等の基板の表面にポリイミド、ポリアミド等の膜を設け、この表面をラビングしたり、SiO等を斜め蒸着したりして配向制御膜を形成した透明電極付きの基板を準備して、この透明電極付きの基板の間に、前記した誘電異方性が正のネマチック液晶による160〜300°ツイストの液晶層を挟持するようにされる。この代表的な例としては、多数の行列状の電極が形成され、一方の基板に640本のストライプ状の電極が形成され、他方の基板をこれに直交するように400本のストライプ状の電極が形成され、640×400ドットのような表示がなされる。さらにこの640本のストライプ状の電極を夫々3本一組として1920本のストライプ状の電極とし、RGBのカラーフィルターを配置してフルカラーで640×400ドットの表示をすることもできる。
【0025】なお、電極と配向制御膜との間に基板間短絡防止のためにTiO2 、SiO2、Al23 等の絶縁膜を設けたり、透明電極にAl、Cr、Ti等の低抵抗のリード電極を併設けたり、カラーフィルターを電極の上もしくは下に積層してもよい。この液晶層の両外側に一対の偏光板を配置する。この偏光板自体もセルを構成する基板の外側に配置することが一般的であるが、性能が許せば、基板自体を偏光板で構成したり、基板と電極との間に偏光層として設けてもよい。
【0026】本発明では、上記液晶層の片側もしくは両側に隣接して一枚以上の複屈折板を積層する。
【0027】この複屈折板は、液晶層の片側および両側の液晶層と偏光板との間に設ければよく、例えば、液晶層と電極の間に層状に設けたり、基板自体を複屈折板としたり、基板と偏光板との間に層状に設けたり、偏光板と複屈折板とを複屈折板が液晶側にくるようにして積層して一体化した偏光板を用いたり、それらを組み合わせて設けたりすればよい。
【0028】この複屈折板としては、後述の複屈折性を示す透明板であれば使用でき、プラスチックフィルム、無機の結晶板等が使用可能である。
【0029】この複屈折板とは、3個の主屈折率をnx 、ny 、nz とし、nx 、ny を複屈折板面内方向の屈折率とし(nx >ny )、nz を複屈折板の厚み方向の屈折率とした場合、nx >nz >ny となるような複屈折板である。
【0030】所望の複屈折効果を得るために△n2 ・d2 =(nx −ny )・d2 を調整して使用するが、1枚の板で調整できない場合には、同じ複屈折板または異なる複屈折板を3個の主屈折率をnx 、ny 、nz の方向が一致するように複数枚組合せて用いてもよい。
【0031】良好な白黒表示を行うためには、ある特定のツイスト角と△n1 ・d11を持った液晶層に対し、複屈折板の△n2 ・d2 の大きさおよびそれらの貼付け方向、さらに一対の偏光板の偏光軸の方向を最適化することが重要である。
【0032】片面および両側に配置される複屈折板の合計の△n2 ・d2 の大きさは、概略液晶層の画素部分の△n1 ・d11の大きさにほぼ等しいか、それよりも少し小さめに設定すれば良好な白黒表示を得易い。即ち、一枚以上の複屈折板の合計の△n2 ・d2 が、0.6×△n1 ・d11<△n2 ・d2 <1.1×△n1 ・d11となるようにされればよい。
【0033】この複屈折板の合計の△n2 ・d2 は、0.6×△n1 ・d11よりも小さくなるとオンにおける透過率が低くなり、表示が暗くなり、逆に1.1×△n1 ・d11よりも大きくなるとオフにおける透過率が高くなるため、コントラスト比が低下することとなるので、前述の範囲とされる。
【0034】具体的に、2枚の複屈折板を積層して用いる場合には、その△n2 ・d2 の大きさは通常ほぼ等しくされるため、概略液晶層の画素部分の△n1 ・d11の大きさの半分にほぼ等しいか、その半分よりも少し小さめに設定される。0.6×△n1 ・d11/2<△n2 ・d2 <1.1×△n1 ・d11/2とされればよい。
【0035】さらに、液晶層の画素外部分では、△n1 ・d12は、複屈折板の合計の0.9×△n2 ・d2 の大きさより大きく、かつ、液晶層の画素部分の△n1 ・d11の大きさとほぼ同等に設定すればコントラスト比が高い表示を得やすい。即ち、△n1 ・d12が0.9×△n2 ・d2 <△n1 ・d12≦△n1 ・d11となるようにされればよい。
【0036】この液晶層の画素外部分の△n1 ・d12は、上記範囲外にあると例えばネガ型の場合、画素外部分からの光漏れが大きくなり、コントラスト比が低下することとなる。
【0037】以下図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0038】図1は、本発明による液晶表示素子を模式的に表した斜視図である。
【0039】図2(A)(B)は、夫々上から見た図1の上側の偏光板の偏光軸方向、複屈折板の主屈折率nx 方向および液晶層の上側の液晶分子の長軸方向、並びに、下側の偏光板の偏光軸方向および液晶層の下側の液晶分子の長軸方向の相対位置を示した平面図である。
【0040】図1において、1、2は一対の偏光板、3は文字や図形を表示するための△n1 ・d11が0.4〜1.5μmの誘電異方性が正のネマチック液晶によるねじれ角が160〜300°の液晶層、4は液晶層に積層された複屈折板、5は上側の偏光板の偏光軸、6は下側の偏光板の偏光軸、7は液晶層の上側の液晶分子の長軸方向、8は液晶層の下側の液晶分子の長軸方向、9は積層された複屈折板の主屈折率nx 方向を示している。
【0041】図2において、液晶層の上側の液晶分子の長軸方向7からみた上側の偏光板の偏光軸5の方向を時計回りに計ったものをθ1 、液晶層の上側の液晶分子の長軸方向7からみた複屈折板4の主屈折率nx 方向9を時計回りに計ったものをθ2、液晶層の下側の液晶分子の長軸方向8からみた下側の偏光板の偏光軸6の方向を時計回りに計ったものをθ3 とする。
【0042】本発明では、このθ1 、θ2 、θ3 を白黒表示となるように最適化すればよい。
【0043】図3は本発明による液晶表示素子の別の例を模式的に表した斜視図である。
【0044】図4(A)(B)は、夫々上から見た図3の上側の偏光板の偏光軸方向、複屈折板の光軸方向および液晶層の上側の液晶分子の長軸方向、並びに、複屈折板の主屈折率nx 方向および下側の偏光板の偏光軸方向および液晶層の下側の液晶分子の長軸方向の相対位置を示した平面図である。
【0045】図3において、11、12は一対の偏光板、13は文字や図形を表示するための△n1 ・d11が0.4〜1.5μmの誘電異方性が正のネマチック液晶によるねじれ角が160〜300°の液晶層、14A、14Bは液晶層の上下に積層された複屈折板、15は上側の偏光板の偏光軸、16は下側の偏光板の偏光軸、17は液晶層の上側の液晶分子の長軸方向、18は液晶層の下側の液晶分子の長軸方向、19Aは積層された上側の複屈折板の主屈折率nx 方向、19Bは積層された下側の複屈折板の主屈折率nx 方向を示している。
【0046】図4において、液晶層の上側の液晶分子の長軸方向17からみた上側の偏光板の偏光軸15の方向を時計回りに計ったものをθ1 、液晶層の上側の液晶分子の長軸方向17からみた上側の複屈折板14Aの主屈折率nx 方向19Aを時計回りに計ったものをθ2 、液晶層の下側の液晶分子の長軸方向18からみた下側の複屈折板14Bの主屈折率nx 方向19Bを時計回りに計ったものをθ4 、液晶層の下側の液晶分子の長軸方向18からみた下側の偏光板の偏光軸16の方向を時計回りに計ったものをθ3 とする。
【0047】本発明では、このθ1 、θ2 、θ3 、θ4 を白黒表示となるように最適化すればよい。
【0048】本発明で用いる複屈折板の主屈折率の定義につき図5を参照して説明する。
【0049】本発明の複屈折板は、x、y、zの3方向で屈折率が異なっている。このため、複屈折板の面内方向で屈折率の大きい方向をx軸方向とし、屈折率の小さい方向をy軸方向とする。この夫々の方向の屈折率をnx 、ny 、nz とする。この場合、nx >ny であり、△n2 =nx −ny であり、本発明では、nx >nz>ny とされる。なお、dは複屈折板の厚みである。
【0050】本発明では、第1の液晶層において、その画素部分と、画素外部分とで、両者の△n・dをそれぞれ調整するためには、例えば、液晶層の厚みを両者で異ならせることにより行える。図6(A)(B)(C)は、そのような基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【0051】図において、基板21上に、電極22を形成しさらに、遮光層23を形成する。この上に適宜の厚みの感光性樹脂24を塗布し、基板21の下側から紫外線照射し、現像により非照射部分の感光性樹脂層を除去し、さらに遮光層も除去する。感光樹脂層24の膜厚を制御することにより、画素外部分の基板厚み、ひいては液晶層の厚みを調整することができる。
【0052】この遮光層としては、パターニングができ、光を遮断するものであればよく、市販のフォトレジストやニッケルメッキまたは遮光性のインク等を使用した印刷等を用いてもよい。また感光性樹脂層としては、紫外線等により硬化するものであればよく、市販のネガ型フォトレジストや感光性樹脂等を用いてもよい。
【0053】液晶表示素子がマルチプレックス駆動による場合には、前述のように、画素部分には、ゼロでない非選択電圧が印加されるので、駆動時の液晶層の△n・dが実質的に減少するため、画素外部分の液晶層の厚みを小さくして、非駆動時の液晶層の△n・dを画素部分よりも小さくすることが望ましい。即ち、一般的には、基板厚みは、画素部分よりも画素外部分のほうが厚くなるようにすることが望ましい。
【0054】なお、本発明では、白黒表示に近い表示が得られるため、カラーフィルターを併用してカラフルな表示が可能となる。特に高デューティ駆動でも、コントラスト比が高くとれるため、フルカラーによる階調表示も可能であり、液晶テレビにも使用できる。
【0055】このカラーフィルターは、セル内面に形成することにより、視角によるズレを生じなく、より精密なカラー表示が可能となる。具体的には、電極の下側に形成されてもよいし、電極の上側に形成されてもよい。
【0056】また、より色を完全に白黒化する必要がある場合には、色を補正するためのカラーフィルターや、カラー偏光板を併用したり、液晶中に色素を添加したり、あるいは特定の波長分布を有する照明を用いたりしてもよい。
【0057】本発明は、このような構成の液晶セルの電極に電圧を印加するための駆動手段を接続し、駆動を行う。
【0058】特に、本発明では明るい表示が可能なため、透過型でも反射型でも適用可能であり、その応用範囲が広い。
【0059】なお、透過型で使用する場合には裏側に光源を配置する。もちろん、これにも導光体、カラーフィルターを併用してもよい。
【0060】本発明の液晶表示素子は透過型で使用することが多いが、明るいため反射型で使用することも可能である。
【0061】透過型で使用する場合、画素以外の背景部分を印刷等による遮光膜で覆うこともできる。また、遮光膜を用いるとともに、表示したくない部分に選択電圧を印加するように、逆の駆動をすることもできる。
【0062】本発明は、この外、本発明の効果を損しない範囲内で、通常の液晶表示素子で使用されている種々の技術が適用可能である。
【0063】本発明では、時分割特性がスーパーツイステッド液晶表示素子と同等であるうえ、前述したように明るく鮮明な白黒表示が可能なため、赤、緑、青の三原色の微細カラーフィルターをセル内面等に配置することにより、高密度のマルチカラー液晶表示素子とすることも可能である。
【0064】本発明の液晶表示素子は、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、ワークステーション等の表示素子として好適であるが、この外液晶テレビ、魚群探知機、レーダー、オシロスコープ、各種民生用ドットマトリクス表示装置等の白黒表示、カラー表示を問わず各種の用途に使用可能である。
【0065】
【作用】本発明では、画素部分と画素外部分との液晶層の厚みを調整し、非駆動時の液晶層の△n・dを画素部分よりも小さくし、境界部分の光透過率が、画素部分のオフ時の光透過率に比べて実質的に同等以下となるようにされたので、従来よりもコントラスト比の良い液晶表示素子が得られる。
【0066】また、特に、画素外部分の液晶層の厚みを小さくして、非駆動時の液晶層の△n・dを画素部分よりも小さくしてやることにより、マルチプレックス駆動における駆動時の液晶層と複屈折板との光学的補償を確実なるものとし、境界部分の光透過率が、画素部分のオフ時の光透過率に比べて実質的に同等以下となるようにされたので、従来よりもコントラストの良い液晶表示素子が得られる。
【0067】さらに、主屈折率の関係がnx >nz >ny の複屈折板を用いることにより、広い視野角が得られる。
【0068】
【実施例】第1の基板として、ガラス基板上に設けられたITOの透明電極をストライプ状にパターニングし、蒸着法によりSiO2 による短絡防止用の絶縁膜を形成し、ポジ型フォトレジストを塗布し、マスクを用いて露光し、現像することにより透明電極部の上に遮光層を形成した。さらに、透明電極の膜厚より厚くなるように感光性樹脂を塗布した。これをガラス基板の下側から紫外線照射して未照射部分の感光性樹脂層を除去し、遮光層を形成していたフォトレジストを除去して、画素外部分に電極部より厚い、感光性樹脂層を形成した。これにポリイミドのオーバーコートをスピンコートし、これをラビングして配向制御膜を形成した基板を作成した。
【0069】第2の基板として、ガラス基板上に設けられたITOの透明電極を第1の基板と直交するようにストライプ状にパターニングし、蒸着法によりSiO2 による短絡防止用の絶縁膜を形成した後、ポジ型フォトレジストを塗布し、マスクを用いて露光し、現像することにより透明電極部の上に遮光層を形成した。さらに、透明電極の膜厚より厚くなるように感光性樹脂を塗布した。これをガラス基板の下側から紫外線照射して未照射部分の感光性樹脂層を除去し、遮光層を形成していたフォトレジストを除去し、画素外部分に電極部より厚い、感光性樹脂層を形成した。これにポリイミドのオーバーコートをスピンコートし、これをラビングして配向制御膜を形成した基板を作成した。
【0070】この2枚の基板の周辺をシール材でシールして、液晶セルを注入する層を形成し、この層に誘電異方性が正のネマチック液晶を注入して、注入口を封止した。この液晶セルの片側に、複屈折板を積層し、さらに、両側に、偏光板を配置して、ネガ型の液晶表示素子を形成した。
【0071】このとき、液晶層は240°ねじれの左らせんとし、表1の実施例1および比較例1のように各△n・dを設定し、液晶層の片側に配置された複屈折板の主屈折率nx 方向と、この液晶表示素子の液晶分子の長軸方向、および偏光板の偏光軸方向との相対的な関係は、θ1 =45°、θ2 =95°、θ3 =135°とした。
【0072】この液晶表示素子の裏側に冷陰極管付のバックライトを配置して、1/200デューティ、1/15バイアスで駆動した場合、鮮明な白黒表示が得られた。
【0073】この時、非選択電圧に相当するセグメントは黒色、選択電圧に相当するセグメントは白色であり、いわゆるネガ表示であった。また、この液晶表示素子の開口率は80%であった。実施例1は比較例1に比べて広視角で高コントラスト比が得られた。
【0074】
【表1】


【0075】さらに実施例2、比較例2として、それぞれ実施例1、比較例1の液晶表示素子において、液晶層の両面に複屈折板を夫々積層し、液晶分子の長軸方向、偏光板の偏光軸方向および複屈折板の光軸方向との相対的な関係は、θ1 =150°、θ2 =85°、θ3 =120°、θ4 =90°とした。この液晶表示素子の裏側に冷陰極管付のバックライトを配置して、1/200デューティ、1/15バイアスで駆動した場合、鮮明な白黒表示が得られた。このとき、非選択電圧に相当するセグメントは黒色、選択電圧に相当するセグメントは白色であり、いわゆるネガ表示であった。実施例2は比較例2に比べ広視角で高コントラスト比が得られた。視角の様子を図7に示す。
【0076】
【発明の効果】以上に説明したように本発明は、従来の白黒表示スーパーツイステッド液晶表示素子と比べてより優れたコントラスト比を持つ白黒表示が可能となり、鮮明で表示品位の高いポジ型あるいはネガ型の表示が得られる。
【0077】また、時分割表示特性や視野角特性も従来のスーパーツイステッド液晶表示素子と遜色がない等の優れた効果を有する。
【0078】また、表示が白黒に近いということから、カラーフィルターと組み合わせることにより、カラフルな表示が可能となり、特に赤、緑、青のカラーフィルターを画素ごとに配置することにより、マルチカラーやフルカラーの表示も実現できるという効果も認められ、より多様性のある応用が開ける。
【0079】特に、本発明では白黒表示が可能であるにもかかわらず、明るい表示が可能であり、透過型のみならず、反射型の表示も可能であり、その応用範囲が広いものである。
【0080】本発明は、本発明に効果を損しない範囲内で今後とも種々の応用が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液晶表示素子を模式的に表した斜視図
【図2】夫々上からみた上側および下側の液晶分子の長軸方向、偏光板の偏光軸方向および複屈折板の主屈折率nx 方向の相対位置を示した平面図
【図3】本発明による液晶表示素子を模式的に表した斜視図
【図4】夫々上からみた上側および下側の液晶分子の長軸方向、偏光板の偏光軸方向および複屈折板の主屈折率nx 方向の相対位置を示した平面図
【図5】複屈折板の主屈折率の定義を示す概念図
【図6】基板の基本的製造方法を示す断面図
【図7】本発明の実施例と比較例の視角を示す図
【符号の説明】
1、2、11、12:偏光板
3、13:液晶層
4、14A、14B:複屈折板
5、6、15、16:偏光軸
7、8、17、18:液晶分子の長軸方向
9、19A、19B:複屈折板の主屈折率nx 方向
21:基板
22:電極
23:遮光層
24:感光性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】ほぼ平行に配置された配向制御膜を有する一対の透明電極付きの基板間に挟持された旋光性物質を含有した誘電異方性が正のネマチック液晶によるねじれ角が160〜300°の液晶層と、この液晶層を挟持する上下の基板の透明電極間に電圧を印加する駆動手段とを有し、この液晶層の外側に少なくとも1枚の主屈折率の関係が、3個の主屈折率をnx 、ny 、nz とし、nx 、ny を複屈折板面内方向の屈折率とし(nx >ny )、nz を複屈折板の厚み方向の屈折率とした場合、nx >nz >ny の複屈折板と一対の偏光板を設置した液晶表示素子において、液晶層での電圧非印加時の液晶の屈折率異方性(△n)と液晶の厚み(d)との積△n・dを画素部分と画素外部分とで異ならせ、画素外部分の光透過率が、画素部分のオフ時の光透過率に比べて実質的に同等以下となるようにされたことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】液晶層での電圧非印加時の液晶の屈折率異方性(△n)と液晶の厚み(d)との積△n・dが液晶層の画素部分の△n1 ・d11で0.4〜1.5μmとされ、液晶層と偏光板との間の少なくとも一方に少なくとも1枚の主屈折率の関係がnx >nz >ny の複屈折板であって、合計の複屈折板の△n2 ・d2 が、0.6×△n1 ・d11<△n2 ・d2 <1.1×△n1 ・d11であり、さらに液晶層の画素外部分の△n1 ・d12との関係が、0.9×△n2 ・d2 <△n1 ・d12≦△n1 ・d11となるような複屈折板を配置したことを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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