説明

液晶表示装置

【課題】良好な表示品位が得られ、且つ、製造歩留まりを改善することが可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 アレイ基板10と対向基板20との間に液晶層30を保持し、マトリクス状の画素PXを有する液晶表示パネル1を備えた液晶表示装置であって、各画素の有効部APを囲む配線部と、配線部上の隔壁100と、を備え、隔壁100の高さHは、有効部APにおいて液晶層30が保持されるギャップGの1/3以上2/3以下に設定されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に係り、特に、アクティブマトリクス型の液晶表示パネルを備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの平面表示装置は、コンピュータ、カーナビゲーションシステム、あるいはテレビ受信機等のモニタディスプレイとして広く利用されている。このような表示装置は、画像を表示する表示エリアを備えた表示パネル、及び、この表示パネルを制御する制御回路を備えている。
【0003】
アクティブマトリクス型の液晶表示パネルは、アレイ基板と対向基板との間に液晶層を保持した構造であり、マトリクス状に配置された画素からなる表示エリアを備えている。アレイ基板は、複数の画素電極、複数の画素電極の行方向に沿って配置された複数の走査線、複数の画素電極の列方向に沿って配置された複数の信号線、走査線と信号線とが交差する位置の近傍に配置された複数のスイッチング素子を備えている。対向基板は、アレイ基板に配置された複数の画素電極に対向して配置された対向電極を備えている。画素電極及び対向電極は、これらの間に保持される駆動電圧に対応した電界によって液晶層に含まれる液晶分子の配列を制御している。
【0004】
液晶表示装置は、ダスト管理されたクリーンルーム内で製造されるが、内部に異物が混入する場合がある。セルギャップ(すなわち画素電極を覆う配向膜と対向電極を覆う配向膜との間の距離)と同等か、それ以上の径を有する異物が混入した場合、異物がある場所に挟み込まれてしまう。異物がアレイ基板側の配線部あるいは画素電極と対向基板側の対向電極との間に挟み込まれた場合、表示不良やアレイ基板−対向基板間のショート不良を生ずるおそれがある。
【0005】
このように一対の基板間に挟み込まれた異物は、移動することがないため、画素を電気的に切り離すことによるリペアや、特許文献1に記載のように液晶封入前の真空加圧中にアレイ基板側電極と対向基板側電極との間に電圧を印加してショートの原因となる導電性異物を焼き切るヒーリング工程を追加することで対応可能となる。
【特許文献1】特開平06−148585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セルギャップより小さい異物は、一対の基板間に固定されず浮遊する。導電性を有ししかもセルギャップより小さい異物が液晶層の中に存在していると、液晶表示パネルが押圧された場合や、OCB(Optically Compensated Bend)モードの液晶表示パネルにおいて液晶層に転移電圧のような大きな電位差がかかった場合、表示不良やアレイ基板−対向基板間のショート不良を生ずる場合がある。
【0007】
この場合、異物が小さいため、定常的なショート(輝点)ではなく、点滅輝点となることが多く、しかも異物の移動によりショートの位置も移動する。このため、異物の位置を特定することが困難であり、リペアによる対応が困難となる。したがって、製造歩留まりの低下を招くおそれがある。
【0008】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、良好な表示品位が得られ、且つ、製造歩留まりを改善することが可能な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1態様による液晶表示装置は、
第1基板と第2基板との間に液晶層を保持し、マトリクス状の画素を有する液晶表示パネルを備えた液晶表示装置であって、
各画素の有効部を囲む配線部と、
前記配線部上の隔壁と、を備え、
前記隔壁の高さは、有効部において液晶層が保持されるセルギャップの1/3以上2/3以下に設定されたことを特徴とする。
【0010】
この発明の第2態様による液晶表示装置は、
第1基板と第2基板との間に液晶層を保持し、マトリクス状の画素を有する液晶表示パネルを備えた液晶表示装置であって、
前記第1基板は、画素毎に配置された画素電極と、前記画素電極を囲む配線部と、前記配線部に重なるように配置された隔壁と、前記画素電極の表面を覆う第1配向膜と、を備え、
前記第2基板は、複数の画素に共通の対向電極と、前記対向電極の表面を覆う第2配向膜と、を備え、
前記隔壁の高さは、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間のセルギャップの1/3以上2/3以下に設定され、
しかも、前記隔壁は、前記第2配向膜から離間するように形成されたことを特徴とする。
【0011】
この発明の第3態様による液晶表示装置は、
第1基板と第2基板との間に液晶層を保持し、マトリクス状の画素を有する液晶表示パネルを備えた液晶表示装置であって、
前記第1基板は、画素毎に配置された画素電極と、前記画素電極を囲む配線部と、前記画素電極の表面を覆う第1配向膜と、を備え、
前記第2基板は、複数の画素に共通の対向電極と、前記配線部に対向する隔壁と、前記対向電極の表面を覆う第2配向膜と、を備え、
前記隔壁の高さは、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間のセルギャップの1/3以上2/3以下に設定され、
しかも、前記隔壁は、前記第1配向膜から離間するように形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、良好な表示品位が得られ、且つ、製造歩留まりを改善することが可能な液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置、例えばアクティブマトリクス方式の液晶表示装置について図面を参照して説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、液晶表示装置は、液晶表示パネル1を備えている。この液晶表示パネルは、一対の基板すなわちアレイ基板(第1基板)10及び対向基板(第2基板)20間に液晶層30を保持した構造であり、画像を表示する表示エリアDAを備えている。この表示エリアDAは、マトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。
【0015】
アレイ基板10は、例えばガラス基板等の光透過性を有する絶縁基板11を用いて形成されている。このアレイ基板10は、絶縁基板11上において、各画素に駆動信号を供給する配線部を備えている。すなわち、アレイ基板10は、配線部として、画素PXの行方向に沿って配置された複数の走査線Y(Y1〜Ym)及び複数の補助容量線C(C1〜Cm)、画素PXの列方向に沿って配置されたN本の信号線X(X1〜Xn)、画素PX毎に配置されたスイッチング素子12などを備えている。さらに、アレイ基板10は、各スイッチング素子12に接続された画素電極13などを備えている。走査線Yのそれぞれは、駆動信号(走査信号)を供給するゲートドライバYDに接続されている。信号線Xのそれぞれは、駆動信号(映像信号)を供給するソースドライバXDに接続されている。
【0016】
各スイッチング素子12は、例えば薄膜トランジスタによって構成されている。このスイッチング素子12は、各画素PXに対応して走査線Y及び信号線Xの交差部に配置されている。スイッチング素子12のゲートは、対応する走査線Yに接続されている(あるいは走査線Yと一体的に形成されている)。スイッチング素子12のソースは、対応する信号線Xに接続されている(あるいは信号線Xと一体的に形成されている)。スイッチング素子12のドレインは、画素電極13に電気的に接続されている。
【0017】
各画素電極13は、スイッチング素子12を覆う絶縁膜14上に配置されており、絶縁膜14に形成されたコンタクトホール14Hを介してスイッチング素子12のドレインと電気的に接続されている。この画素電極13は、バックライトユニットから放射されたバックライト光を選択的に透過して画像を表示する透過型の液晶表示装置においては、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)やインジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する導電材料によって形成される。また、各画素電極13は、対向基板20側から入射する外光(フロントライトユニットから放射されたフロントライト光も含む)を選択的に反射して画像を表示する反射型の液晶表示装置においては、アルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料によって形成される。このような画素電極13の表面は、液晶層30に含まれる液晶分子の配向を制御するための第1配向膜15によって覆われている。
【0018】
対向基板20は、例えばガラス基板等の光透過性を有する絶縁基板21を用いて形成されている。この対向基板20は、絶縁基板21上において、複数の画素電極13に対向して配置された対向電極22などを備えている。対向電極22は、光透過性を有する導電材料によって形成されている。このような対向電極22の表面は、液晶層30に含まれる液晶分子の配向を制御するための第2配向膜23によって覆われている。
【0019】
これらのアレイ基板10及び対向基板20は、画素電極13と対向電極22とを対向させた状態で配設され、これらの間にセルギャップを形成する。液晶層30は、アレイ基板10と対向基板20とのセルギャップに封止された液晶組成物によって形成されている。この実施の形態においては、液晶モードについて特に制限はなく、TN(Twisted Nematic)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、VA(Vertical Aligned)モード、IPS(In−Plane Switching)モードなどが適用可能である。
【0020】
カラー表示タイプの液晶表示装置では、液晶表示パネル1は、複数種類の画素、例えば赤(R)を表示する赤色画素、緑(G)を表示する緑色画素、青(B)を表示する青色画素を有している。すなわち、赤色画素は、赤色の主波長の光を透過する赤色カラーフィルタを備えている。緑色画素は、緑色の主波長の光を透過する緑色カラーフィルタを備えている。青色画素は、青色の主波長の光を透過する青色カラーフィルタを備えている。これらのカラーフィルタは、アレイ基板10または対向基板20の主面に配置される。
【0021】
各画素PXは、各々画素電極13及び対向電極22間に液晶容量CLCを有している。複数の補助容量線C(C1〜Cm)は、各々対応行の画素電極13に容量結合して補助容量Csを構成する。
【0022】
ところで、各画素PXは、配線部によって囲まれた有効部APを有している。すなわち、図3A乃至図3Cに示した例では、表示エリアにおける一画素PXnに着目する。この画素PXnは、対応する走査線Yn1、隣接する行に対応する走査線Yn0、対応する信号線Xn1、及び、隣接する列に対応する信号線Xn2によって囲まれている。これらに示した例では、画素PXnに対応する補助容量線Cn1は、走査線Yn0に近接して配置され且つ信号線Xn1及びXn2に沿って走査線Yn1付近まで延在している。画素PXnに対応するスイッチング素子12nは、走査線Yn1と信号線Xn1とが交差する位置の近傍に配置されている。画素PXnに対応する画素電極13nは、スイッチング素子12nとコンタクトホール14Hを介して接続され、走査線Yn1及びYn0、信号線Xn1及びXn2によって囲まれた内側に配置されている。走査線Yn1及びYn0の上には、アレイ基板と対向基板との間にセルギャップを形成するための柱状スペーサSPが配置されている。
【0023】
このようなレイアウトにおいて、有効部APは、図中に斜線で示した通り、画素電極13nが配置された領域のうち、配線部とは重ならない領域(すなわち配線部によって囲まれた領域)に相当する。つまり、図3A乃至図3Cに示した例では、有効部APは、走査線Y11、補助容量線C11、及び、スイッチング素子12nによって囲まれた領域に相当する。
【0024】
この実施の形態においては、液晶表示パネルは、配線部上に隔壁100を備えている。
【0025】
図3Aに示した例では、隔壁100は、有効部APを囲むループ状に形成されている。ここでは、特に、配線部は、信号線X及び走査線Yに相当する。つまり、隔壁100は、信号線X及び走査線Yに沿って格子状に形成されている。有効部APは、このような形状の隔壁100の内側に位置している。
【0026】
隔壁100の形状は、図3Aに示した例に限らない。図3Bに示した例では、隔壁100は、長方形状の有効部APに対して、有効部APの一対の長辺及び1つの短辺に沿ったU字状に形成されている。この例においても、配線部は、信号線X及び走査線Yに相当する。つまり、画素PXnに対応する隔壁100は、信号線Xn1及びXn2、及び、走査線Yn1に沿って形成されている。有効部APは、このような形状の隔壁100の内側に位置している。
【0027】
図3Cに示した例では、隔壁100は、矩形状の有効部APに対して、有効部APの直交する2辺に沿ったL字状に形成されている。この例においても、配線部は、信号線X及び走査線Yに相当する。つまり、画素PXnに対応する隔壁100は、信号線Xn1、及び、走査線Yn1に沿って形成されている。有効部APは、このような形状の隔壁100の内側に位置している。
【0028】
このような隔壁100は、アレイ基板10または対向基板20に一体的に形成されている。ここでは、図3Aに示した例において、図中のA−A線で液晶表示パネルを切断したときの断面構造について説明する。なお、ここで説明する液晶表示パネルは、カラー表示タイプのものであり、対向基板20側にカラーフィルタを備えているものとする。また、ここでは、透過型の液晶表示パネルを例に説明するが、透過型に限らず、反射型の液晶表示パネルであっても同様の構造が適用可能である。
【0029】
図4に示した例では、隔壁100は、アレイ基板10側に配置されている。すなわち、アレイ基板10は、絶縁基板11の一方の主面側に、配線部に相当する信号線X、走査線Y、補助容量線C、及び、スイッチング素子12を備え、さらに、絶縁膜14上に配置された画素電極13、画素電極13の表面を覆う第1配向膜15、配線部に相当する信号線Xに重なるように配置された隔壁100を備えている。また、アレイ基板10は、絶縁基板11の他方の主面側に、偏光板などの光学素子OD1を備えている。
【0030】
対向基板20は、絶縁基板21の一方の主面側に、赤色画素に対応して配置された赤色カラーフィルタCFR、緑色画素に対応して配置された緑色カラーフィルタCFG、青色画素に対応して配置された青色カラーフィルタCFBを備え、さらに、カラーフィルタCF(R、G、B)上に配置された対向電極22を備えている。対向電極22の表面は、第2配向膜23によって覆われている。また、対向基板20は、絶縁基板21の他方の主面側に、偏光板などの光学素子OD2を備えている。
【0031】
これらのアレイ基板10と対向基板20とは、柱状スペーサによって所定のセルギャップを形成した状態でシール材SEによって貼り合わせられている。液晶層30は、アレイ基板10と対向基板20との間に形成されたセルギャップに保持されている。
【0032】
このような構造において、隔壁100は、その高さHが有効部APにおいて液晶層30が保持されるセルギャップGの1/3以上2/3以下に設定されている。すなわち、有効部APにおいて、液晶層30は、第1配向膜15と第2配向膜23との間に保持されているため、セルギャップGは、実質的に液晶表示パネル1の法線方向Nに沿った第1配向膜15と第2配向膜23との間隔に相当する。有効部APと、信号線Xなどが配置された配線部とでは、絶縁基板11からの法線方向Nに沿った高さ(膜厚)に差があるが、その差はセルギャップGに対して1/10以下(0.1乃至0.2μm程度)である。このため、隔壁100は、第2配向膜23から離間している。つまり、隔壁100と配向膜23との間には、液晶層30の流れを許容する間隙が形成されている。
【0033】
図5に示した例では、隔壁100は、対向基板20側に配置されている。なお、図4と同一の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、アレイ基板10は、絶縁基板11の一方の主面側に、配線部、画素電極13、及び、第1配向膜15を備え、また、絶縁基板11の他方の主面側に、光学素子OD1を備えている。
【0034】
対向基板20は、絶縁基板21の一方の主面側に、カラーフィルタCF(R、G、B)、対向電極22、第2配向膜23を備えており、さらに、配線部に相当する信号線Xに対向するように配置された隔壁100を備えている。また、対向基板20は、絶縁基板21の他方の主面側に、光学素子OD2を備えている。
【0035】
このような構造においても、図4に示した例と同様に、隔壁100は、その高さHが有効部APにおいて液晶層30が保持されるセルギャップGの1/3以上2/3以下に設定され、第2配向膜23から離間している。
【0036】
以上説明したように、各画素PXの有効部APを囲む配線部上に隔壁100を配置したことにより、有効部APの面積を犠牲にすることなく、セルギャップより小さい径を有する微小異物が混入した場合であっても、隔壁100によって微小異物の移動が制限される。このため、特定の画素の有効部APに微小異物が混入した場合には、液晶層に電圧が印加されるなどの条件により当該画素において点滅輝点などの表示不良が生ずることとなり、その表示不良の位置の移動が抑制される。したがって、微小異物が混入した位置を特定しやすくなり、容易にリペアが可能となる。リペアの手法としては、例えば、微小異物が混入した画素に対してレーザビームを照射して第1配向膜15及び第2配向膜23を焼失させるなどして液晶層30に含まれる液晶分子の配向を乱す手法があり、これによれば、画素を比較的視認されにくい半輝点とすることが可能となる。
【0037】
このような微小異物の移動を制限するための隔壁100については、その高さHの設定が特に重要である。すなわち、高さHが低すぎる場合には、上述したような点滅輝点を生じさせ得る径の微小異物の移動を十分に制限することができず、微小異物の位置を特定することが困難となる。また、高さHが高すぎる場合には、毛細管現象を利用して液晶材料を注入する工程において、著しく注入効率を低下させてしまう。
【0038】
発明者の検討によれば、セルギャップGに対して1/3未満の径を有する微小異物については、点滅輝点などの表示不良の原因となりにくいことがわかった。また、セルギャップGよりも小さい径を有する微小異物のうち、表示不良の原因となり得る微小異物の径の分布に基づくと、セルギャップGに対して1/2〜3/4の径を有する微小異物が大半を占めることがわかった。特に、OCBモードの液晶表示パネルにおける実績では、このような点滅輝点になる微小異物は、セルギャップ4μmに対し、2〜3μmの径を有するものが多かった。
【0039】
このような検討に基づき、移動が許容される微小異物の径及び液晶注入効率を考慮して、隔壁100と対向する配向膜(15または23)との間隙は、セルギャップGの1/3以上に設定することが望ましいことがわかった。つまり、隔壁100の高さHは、セルギャップGの2/3以下に設定することが望ましい。また、表示不良の原因となり得る微小異物の径の分布を考慮して、隔壁100の高さHは、セルギャップGの1/4以上、より好適には1/3以上に設定することが望ましい。
【0040】
このような高さHを有する隔壁100を配置したことにより、点滅輝点の原因となるほとんどの微小異物は、隔壁100と対向する配向膜との隙間を通過することが出来ず、特定の画素内に固定される。また、液晶材料にとっては、隔壁100と対向する配向膜との間に十分隙間が形成されているため、液晶注入効率の低下を抑制することができ、また、表示の妨げになることもない。
【0041】
上述した実施の形態においては、セルギャップGの1/2の高さHを有する隔壁100を配置して液晶表示パネル1を製造したところ、微小異物が混入したことに起因する表示不良の液晶表示パネルについては、微小異物の移動に伴う表示不良位置の移動がなく、微小異物を有する画素を容易に特定することが可能であった。
【0042】
図3Aに示したように、有効部APを囲むようなループ状の隔壁100を配置した場合には、有効部AP内の微小異物の移動を確実に防止することが可能となる。
【0043】
図3Bに示したように、一対の長辺と1つの短辺とに沿ったU字状の隔壁100を配置した場合には、一対の長辺及び1つの短辺を横切るような微小異物の移動が阻止される。微小異物が特定画素から移動可能となるのは、開放された短辺を横切る1つのルートのみであるが、開放された短辺に隣接する画素に対応するように同一形状のU字状の隔壁を配置することにより、そのルートでの移動も制限することが可能となる。このとき、隣接する隔壁同士の間隔を十分に小さく設定することが望ましい。
【0044】
図3Cに示したように、直交する2辺に沿ったL字状の隔壁100を配置した場合には、1つの長辺及び1つの短辺を横切るような微小異物の移動が阻止される。微小異物が特定画素から移動可能となるのは、開放された長辺及び短辺を横切る2つのルートのみであるが、四方に隣接する画素に対応するように同一形状のL字状の隔壁を配置することにより、それぞれのルートでの移動も制限することが可能となる。このとき、隣接する隔壁同士の間隔を十分に小さく設定することが望ましい。
【0045】
上述したような隔壁100は、絶縁性の樹脂材料によって形成可能である。
【0046】
図4に示したように、アレイ基板10と一体的な隔壁100を配置する場合には、有機材料系の保護膜(HRCなど)などを用いて隔壁100を形成することが可能である。また、アレイ基板10に備えられる絶縁膜と同一材料により隔壁100を形成しても良い。これにより、製造コストの増大を抑制することが可能である。
【0047】
図5に示したように、対向基板20と一体的な隔壁100を配置する場合には、複数のカラーフィルタを積層して隔壁100を形成することが可能であり、また、ブラックマトリクスや周辺遮光層を形成するための黒色樹脂層を用いて隔壁100を形成することも可能である。
【0048】
上述した実施の形態においては、液晶モードについて特に制限はなかったが、ここでは、特にOCBモードの液晶表示パネルを適用した場合の実施形態について説明する。
【0049】
OCBモードは、応答性に優れ、且つ、視野角が広いといった特徴を有している。このOCBモードの液晶表示パネル1においては、液晶層30を保持する第1配向膜15及び第2配向膜23は、互いに平行な方向にラビング処理されている。このような配向膜の作用により、電源投入以前の段階では、図6Aに示すように、液晶層30に含まれる液晶分子31は、スプレイ配向している。このスプレイ配向は、液晶分子31がほとんど寝ている状態に相当する。
【0050】
そして、電源投入後、表示動作以前の段階において、初期化処理が行われる。この初期化処理は、液晶層30に対して転移電圧を印加して、この転移電圧に対応した比較的強い電界により液晶分子31の配向状態をスプレイ配向からベンド配向に転移させるものである。液晶分子31の配向状態は、表示動作中、ベンド配向に維持されている。
【0051】
表示動作において、液晶層30に白画像(最高輝度に対応した階調レベルの画像)を表示するための白表示電圧が印加された際には、液晶分子31は、図6Bに示すようなベンド配向の配向状態を形成する。また、液晶層30に黒画像(最低輝度に対応した階調レベルの画像)を表示するための黒表示電圧が印加された際には、液晶分子31は、図6Cに示すようなベンド配向の配向状態を形成する。
【0052】
このようなOCBモードの液晶表示パネル1においては、液晶分子31の配向状態は、スプレイ配向のエネルギーとベンド配向のエネルギーとが拮抗するレベル以下の電圧印加状態や電圧無印加状態が長期間続く場合に、再びベンド配向からスプレイ配向に逆転移してしまう。このため、OCBモードの液晶表示パネル1では、この逆転移を防止するために、黒挿入駆動の方式がとられている。黒挿入駆動では、例えば逆転移防止電圧及び映像信号に対応した電圧がフレーム周期で交互に駆動電圧として液晶層30に印加され、ベンド配向を維持する。ノーマリホワイトモードにおいては、逆転移防止電圧が黒表示電圧に相当するため、黒挿入駆動と呼ばれる。
【0053】
一方で、液晶表示パネル1の製造過程において、微小異物が液晶層30に混入する場合がある。この微小異物は、表示動作において液晶層30への電圧印加に伴い、液晶層30内をラビング方向Rに沿って移動する場合が多い。
【0054】
すなわち、OCBモードの液晶表示パネル1では、液晶分子31が表示動作のために液晶層30内でベンド配向している。液晶層30に低い電圧が印加された白表示状態と、液晶層30に高い電圧が印加された黒表示状態との間では、液晶分子のオリエンテーション角が大きく変化する。オリエンテーション角の変化は、液晶分子31の変位(drift)を伴うので、液晶層30内でこの変位の方向に液晶分子31の流れ(flow)が発生する。この流れの方向は、OCBモードの液晶表示パネル1では液晶分子31を配向させる配向膜のラビング方向Rと一致している。
【0055】
そこで、このOCBモードを適用した液晶表示パネルにおいては、図6A乃至図6Cに示したように、隔壁100は、配線部Wの上において、第1配向膜15及び第2配向膜23のラビング方向Rに直交するように配置されている(つまり、隔壁100は紙面の法線方向に延在している)。ここに示した例では、隔壁100は、アレイ基板10と一体的に形成されているが、対向基板20と一体的に形成されても同様の構造が適用可能である。また、隔壁100は、セルギャップGが4μmであるのに対して、2μmの高さHを有するように形成されている。
【0056】
このように、表示動作に伴ってラビング方向Rに沿って移動しようとする微小異物に対して、その移動方向に直交するように配置された隔壁100により、微小異物の他の画素への移動を効果的に抑制することが可能となる。
【0057】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る液晶表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した液晶表示装置を構成する液晶表示パネルの構造を概略的に示す断面図である。
【図3A】図3Aは、図2に示した液晶表示パネルに適用可能な隔壁の形状例(ループ状)を概略的に示す平面図である。
【図3B】図3Bは、図2に示した液晶表示パネルに適用可能な隔壁の他の形状例(U字状)を概略的に示す平面図である。
【図3C】図3Cは、図2に示した液晶表示パネルに適用可能な隔壁の他の形状例(L字状)を概略的に示す平面図である。
【図4】図4は、図3Aに示した隔壁をアレイ基板側に一体的に形成した液晶表示パネルの断面図である。
【図5】図5は、図3Aに示した隔壁を対向基板側に一体的に形成した液晶表示パネルの断面図である。
【図6A】図6Aは、OCBモードの液晶表示パネルにおいて、電源投入前の初期状態を説明するための図である。
【図6B】図6Bは、OCBモードの液晶表示パネルにおいて、表示動作において白表示電圧が印加された液晶層の状態を説明するための図である。
【図6C】図6Cは、OCBモードの液晶表示パネルにおいて、表示動作において黒表示電圧が印加された液晶層の状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1…液晶表示パネル DA…表示エリア PX…画素 AP…有効部 SE…シール材 G…セルギャップ N…法線方向 R…ラビング方向
10…アレイ基板 11…絶縁基板 12…スイッチング素子 13…画素電極 14…絶縁膜 14H…コンタクトホール 15…第1配向膜 Y…走査線 C…補助容量線 X…信号線 W…配線部
20…対向基板 21…絶縁基板 22…対向電極 23…第2配向膜
30…液晶層 31…液晶分子 CF(R、G、B)…カラーフィルタ
SP…柱状スペーサ 100…隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に液晶層を保持し、マトリクス状の画素を有する液晶表示パネルを備えた液晶表示装置であって、
各画素の有効部を囲む配線部と、
前記配線部上の隔壁と、を備え、
前記隔壁の高さは、有効部において液晶層が保持されるセルギャップの1/3以上2/3以下に設定されたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記隔壁は、有効部を囲むループ状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記隔壁は、長方形状の有効部に対して、有効部の一対の長辺及び1つの短辺に沿ったU字状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記隔壁は、矩形状の有効部に対して、有効部の直交する2辺に沿ったL字状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記配線部は、画素の行方向に沿って配置された走査線及び補助容量線、画素の列方向に沿って配置された信号線、画素毎に配置されたスイッチング素子のいずれかに相当することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶表示パネルは、前記液晶層を保持する前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれの表面に、平行な方向にラビング処理された配向膜を備え、OCBモードにより駆動可能に構成され、
前記隔壁は、前記配向膜のラビング方向に直交するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記隔壁は、絶縁性の樹脂材料によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
第1基板と第2基板との間に液晶層を保持し、マトリクス状の画素を有する液晶表示パネルを備えた液晶表示装置であって、
前記第1基板は、画素毎に配置された画素電極と、前記画素電極を囲む配線部と、前記配線部に重なるように配置された隔壁と、前記画素電極の表面を覆う第1配向膜と、を備え、
前記第2基板は、複数の画素に共通の対向電極と、前記対向電極の表面を覆う第2配向膜と、を備え、
前記隔壁の高さは、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間のセルギャップの1/3以上2/3以下に設定され、
しかも、前記隔壁は、前記第2配向膜から離間するように形成されたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
第1基板と第2基板との間に液晶層を保持し、マトリクス状の画素を有する液晶表示パネルを備えた液晶表示装置であって、
前記第1基板は、画素毎に配置された画素電極と、前記画素電極を囲む配線部と、前記画素電極の表面を覆う第1配向膜と、を備え、
前記第2基板は、複数の画素に共通の対向電極と、前記配線部に対向する隔壁と、前記対向電極の表面を覆う第2配向膜と、を備え、
前記隔壁の高さは、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間のセルギャップの1/3以上2/3以下に設定され、
しかも、前記隔壁は、前記第1配向膜から離間するように形成されたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2008−107551(P2008−107551A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289947(P2006−289947)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】