液状態検知センサ
【課題】部品点数の増大や、組立上の問題もなく、電極の支持で、誤差を吸収可能でありかつ内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合でもその膜に損傷を与えず、両電極を安定して支持をする。
【解決手段】筒状の外筒電極10と、その内側に設けられた軸状の内部電極20と、その両電極の基端側で、両電極を絶縁を保持して支持する取付け部40とを備え、両電極間の静電容量を測定することで、液体のレベルなどを検知する液状態検知センサで、内部電極20の先端を、その先端に取付けたヒータ付きホルダ120を介して、外筒電極10の内側に取付けたゴムブッシュ80の内側にて弾性的に支持させた。ゴムブッシュ80の先端を位置決めするため外筒電極10に内側に位置決め部材150を取付けた。内部電極20は先端でホルダ120を介して弾性的にかつ安定して支持できるし、組立も容易となる。
【解決手段】筒状の外筒電極10と、その内側に設けられた軸状の内部電極20と、その両電極の基端側で、両電極を絶縁を保持して支持する取付け部40とを備え、両電極間の静電容量を測定することで、液体のレベルなどを検知する液状態検知センサで、内部電極20の先端を、その先端に取付けたヒータ付きホルダ120を介して、外筒電極10の内側に取付けたゴムブッシュ80の内側にて弾性的に支持させた。ゴムブッシュ80の先端を位置決めするため外筒電極10に内側に位置決め部材150を取付けた。内部電極20は先端でホルダ120を介して弾性的にかつ安定して支持できるし、組立も容易となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の静電容量を測定することで液体収容容器(タンク)内に収容される液体の状態を検知する液状態検知センサ(以下、単にセンサともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル自動車から排出される排気ガスには、一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)以外に窒素酸化物(NOx)が含まれている。そこで、近年、この有害な窒素酸化物(NOx)を無害なガスに還元することが行われている。例えば、ディーゼル自動車の排気ガス排出用のマフラーの途中にNOx選択還元触媒(SCR)を設置し、別途車両に設けたタンクに還元剤溶液として尿素水を入れ、この尿素水を上記触媒へ噴射するようにして、NOxをN2等の無害なガスに還元するシステムが提案されている。このシステムでは、尿素水が無くなった場合にはNOx還元反応を促すことができずにNOxの大量な排出を起こすため、尿素水を収容する収容容器(以下、タンクともいう)に、収容される尿素水の液位(以下、水位ともいう)を測定するセンサを設け、尿素水の残量が規定量以下となった場合に警報を発する等の措置が講じられている。
【0003】
この水位を測定するためのセンサの一例として、静電容量式の液状態検知センサが知られている。この液状態検知センサは、導体からなる細長い筒を外側の電極(外筒電極)とし、この外筒電極内にて軸線方向に沿って同心で設けられた細長い柱状又は管状の内部電極との間の静電容量を測定し、その静電容量から水位を検知するというものである。例えば、尿素水のように導電性を有する液体の水位の測定に用いる静電容量式の液状態検知センサでは、外筒電極と内部電極との間でのショート防止のために、内部電極の表面に絶縁膜を形成し、その上で、外筒電極の軸線方向が水位の上下方向となるように、液状態検知センサを測定対象をなすタンクにセットする。このような導電性の液体の水位を測定する場合には、液体に浸漬していない部分の静電容量は、内外の両電極のギャップ間の空気層および内部電極の絶縁膜の厚みに依存する。一方、液体に浸漬している部分の静電容量は、導電性の液体が外筒電極と同電位となるため絶縁膜の厚みに依存し、前者よりも静電容量が大きくなる。このため、液体に浸漬している部分が増えるほど測定される静電容量が大きくなることとなり、水位として検知することができる。
【0004】
こうした液状態検知センサは、タンク内に、外筒電極の軸線方向が水位の上下方向となるように取り付けられるのが普通である。例えば、外筒電極(及び内部電極)がタンクの天井からタンク内に垂下状にして取り付けられる場合、その液状態検知センサは、その天井側に、外筒電極の基端側を位置させるため、外筒電極の基端(上)を、タンクへの取り付け手段を有する基端支持部材に固定(又は支持)することになる。一方、内部電極は、外筒電極内にこれとの絶縁を保持するようにして、内部電極自身の基端部を外筒電極内の基端側に固定することになる。しかし、このように両電極をその基端部のみで固定或いは支持するだけでは、各電極はその先端側が自由であるいわば片持ち支持の状態となってしまうことから、センサが振動のある使用条件(環境下)におかれるときや、横方向からの外力が加わる場合には、各電極がその軸の半径方向に振れたり、撓み変形を起こしてしまう。このため、両電極間の寸法が不安定となったり、場合によっては両電極間の接触を招いたりするなどにより、正確な静電容量を測定することができない。また、このような振れや変形の繰り返しによって各電極には、特に内部電極の根元には大きな応力が発生し、折損してしまう危険性もある。
【0005】
このため、このようなセンサでは、両電極間の寸法安定化手段ないし両電極間の寸法を一定に保持するための内部電極の支持手段として、両電極間にスペーサ或いは支持部材を介在させることが行われている。例えば、絶縁材からなるスペーサを、内外の両電極が同心に保持されるように、その軸周りと共に、電極の長手方向に複数配置するようにした技術が知られている(特許文献1)。また、内外の両電極の先端部において、その電極間に絶縁性のある樹脂製の支持部材を配置し、その支持部材によって電極間を絶縁しながら、その両電極間の間隔(寸法)を一定に保持するようにした技術も知られている(特許文献2)。
【0006】
しかし、前者の内部電極の支持手段においては、複数のスペーサを必要とするために部品点数の増大を招いてしまう。また、各スペーサを内部電極の外周面に取り付けた後で、これを外筒電極内にその一端側の開口から圧入(又は挿入)する必要があるということから、組み立て作業が厄介である。また、後者の、電極間に樹脂製の支持部材を配置するという技術においては、それが樹脂製のものであることから、振動や外力が両電極間で吸収されにくいため、次の問題がある。まず、両電極の軸が製造、組立て上の誤差により正しく同心にない状態において、支持部材を両電極(先端)間に配置すると、各電極に横方向に残留応力が発生したり偏荷重が作用することになり、一方の電極が根元などで破断する要因となることがある。一方で、これを防止するためには、各電極を含む部品の寸法精度を極端に上げる必要があり、製造コストの上昇を招いてしまう。また、通常の樹脂製の支持部材ではそれが硬質のものであるため、その支持部材を介して両電極間に振動が直接伝わる結果、例えば、表面に絶縁膜が形成されているような内部電極ではその絶縁膜が損傷を受けやすく、絶縁が破壊される危険性がある。
【特許文献1】実開平01−151215号公報
【特許文献2】特開平09−152368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした中、本願出願人は、特許文献2に記載の問題を解消するため、上記したような液状態検知センサにおいて、内部電極の先端又は先端寄り部位の外側であって外筒電極の内側に、ゴム等の弾性体からなる先端支持部材を圧入等によって介在させて、その内部電極の先端又は先端寄り部位を外筒電極の内側に弾性的に支持させるようにした発明を出願している(特願2005−140071)。このものでは、内部電極の先端における支持に硬質の樹脂ではない弾性体を用いたことから、上記したような誤差や精度上の問題を吸収可能であり、かつ内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合であってもその膜に損傷を与えることなく、内部電極をその先端又は先端寄り部位(以下、単に先端ともいう)で支持することができる。
【0008】
このような、内部電極の先端の外側であって外筒電極の内側に介在させるようにした、ゴム等の弾性体からなる先端支持部材(以下、電極支持用弾性部材又は単に支持用弾性部材ともいう)は、その製造上及び外筒電極の内側への取付けのし易さなどから、通常、中央に内部電極の先端を通すための貫通孔又は凹部のある、例えばブッシュ状の1個の部品となる。したがって、このような電極支持用弾性部材は、環状(リング状)又は有底の環状ないし筒状の形状を有するものとなる。一方、この電極支持用弾性部材は、外筒電極の内側において、抜け落ちたり回転ないし移動したりすることなく、安定して介在させる必要がある。このため、支持用弾性部材には自身の外周面に外向きに突出する突起部(凸部)を設けておくと共に、外筒電極には、その先端寄り部位に径方向に貫通する開口部(貫通孔)を設けておき、その内側に圧入等により介在されたときにその突起部が開口部に嵌合する構造とされている。
【0009】
他方、このような弾性体からなる電極支持用弾性部材を用いて、内部電極の先端を外筒電極の内側で支持する場合には、センサの組立てにおいて、その支持用弾性部材を外筒電極の内側にその先端側から圧入等により挿入して、その突起部を開口部に嵌合させてその取付けをした後、内部電極を外筒電極の基端(後端)側からその内側に挿入し、内部電極の先端又は先端寄り部位が支持用弾性部材の中央(貫通孔)に挿入されるようにして、内部電極の先端が外筒電極の内側で支持されるようにしていた。ところが、このような内部電極の挿入においては、組立て作業上、或いは精度上から発生する内部電極の傾きなどに起因して、その先端は外筒電極内において必ず軸心に真っ直ぐに位置させるということは通常できない。すなわち、その挿入過程では、内部電極が同軸状に真っ直ぐ入らなかったり、その先端がその軸心から偏在するため、支持用弾性部材の中央の貫通孔に円滑に挿入されずに、その中央からずれた部位を先端側に押すような作用を及ぼす。このような作用が及ぶと、支持用弾性部材は先端側に押されるから、外筒電極の開口部に嵌合させられている突起部がせん断力を受けて、その根元に亀裂や割れ等の損傷を受ける危険性や、突起部が開口部から外れる可能性が有り、電極の支持の安定性ないし信頼性に問題があった。
【0010】
こうした問題回避のためには、内部電極の先端に丸みを付けたり、支持用弾性部材の中央の貫通孔の入口側にも外広がり状に丸みをつけることも考えられるが、それだけでは十分ではない。しかも、内部電極の安定的な支持のため、その軸線方向に圧縮力が作用するようにして支持したい場合があり、その場合には特に問題が大きい。というのは、このような場合にはその挿入後であるセンサの組立て後(完成品)においても、支持用弾性部材には常時、先端側に押される力が加わっていることになる。このため、自動車等に搭載されて使用される場合のように、振動下で使用されるものでは、最悪の場合には突起部が根元で切断されてしまい、外部電極の内側から先端側に移動したり、軸線回りに回転したり、脱落したりするなどの問題があるなど、その支持の信頼性に問題があるためである。
【0011】
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたもので、部品点数の増大や、組立上の問題もなく、しかも、電極の支持において、誤差を吸収可能でありかつ内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合であってもその膜に損傷を与えることなく、さらには、電極先端における信頼性の高い支持をし得るようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、収容容器内に収容される液体の状態を検知するための液状態検知センサであって、
導体からなる筒状の外筒電極と、この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、この両電極の間で前記収容容器内に収容される前記液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部と、
該レベル検知部の長手方向の後端側に位置し、前記収容容器に液状態検知センサを取付けるための取付け部と、
前記内部電極の先端又は先端寄り部位の外周面を直接又は間接に包囲するようにして支持する環状部を有する弾性体からなる電極支持用弾性部材であって、前記外筒電極の内側に圧入されてなる電極支持用弾性部材とを備えており、
前記外筒電極は、その先端寄り部位に径方向に貫通する開口部を備えている一方、
前記電極支持用弾性部材は、その外周面に前記開口部に嵌合可能の突起部を備えていると共に、前記外筒電極の内側に圧入されて該突起部を前記開口部に嵌合することで取付けられており、
さらに、該電極支持用弾性部材の先端側であって前記外筒電極の内側には、該電極支持用弾性部材をその先端側において位置決めするための位置決め部材が取付けられており、
前記内部電極を、その先端側から前記外筒電極の内側に挿入し、前記内部電極の先端又は先端寄り部位を、直接又は別部材を介して、前記電極支持用弾性部材の前記環状部の内側に挿入して弾性的に支持させてなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記外筒電極の内側と前記内部電極の外側との間と、前記位置決め部材の先端側とに前記液体が流通するように、前記外筒電極の内側にある前記電極支持用弾性部材と前記位置決め部材とに連なる流通路が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液状態検知センサである。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、前記位置決め部材は、外径が前記外筒電極の内径より小さい位置決め板部と、該位置決め板部の周縁から該位置決め板部と略直角で先端側に延びる脚部と、その脚部の先端において外向きに突出するフックとを有しており、該位置決め板部を前記外筒電極の内側に配置して前記電極支持用弾性部材の先端を支持させるようにすると共に、前記フックを前記外筒電極の先端に係合させて、前記脚部の少なくとも一部を前記外筒電極の内周面に溶接してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状態検知センサである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセンサによれば、前記電極支持用弾性部材にて内部電極の先端又は先端寄り部位を前記外筒電極の内側に弾性的に支持させてなるものであることから、部品点数の増大もなく、またその支持のための組立も容易であり、内部電極をその先端において安定して支持できる。しかも、内部電極の支持において、弾性体からなる電極支持用弾性部材を用いているため、各電極等の寸法ないし組立上の誤差を吸収可能である。また、内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合であってもその膜に損傷を与えることもない。すなわち、このような膜は薄く、したがって、センサが振動に晒される環境下で使用される場合には、従来の硬質の樹脂製支持部材による支持では損傷を受けやすいが、本発明では弾性体からなる電極支持用弾性部材で内部電極を支持しているため、そうした危険性も小さい。しかも、本願発明においては次のような特有の効果も得られる。
【0016】
本願発明においては、電極支持用弾性部材の先端側であって前記外筒電極の内側には、該電極支持用弾性部材をその先端側において位置決めするための位置決め部材が取付けられている。このため、内部電極を、その先端側から外筒電極の内側に挿入し、この内部電極の先端又は先端寄り部位を、電極支持用弾性部材の環状部の内側に挿入して弾性的に支持させる際において、内部電極が例えば傾斜していて、その先端が電極支持用弾性部材の中心に位置せず、これを先端側に押すようなことになっても、電極支持用弾性部材は位置決め部材にて位置決めされつつ支持されるため、電極支持用弾性部材の突起部がせん断されることもないし、開口部から外れることもない。したがって、その後、自動車等に搭載されて使用される場合においても、電極支持用弾性部材が外部電極の内側から先端側に移動したり軸線回りに回転したり、或いは脱落してしまう危険性を解消できるため、内部電極は著しく安定して支持される。なお、本発明において、「前記内部電極の先端又は先端寄り部位を、直接又は別部材を介して、」としたのは、その先端又は先端寄り部位に、ホルダ等の別部材を取付けた場合には、その別部材を介していても、同様の効果が得られるためである。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、その構成に基づいて、電極の全長(全高)が同じであっても、測定範囲を広げることができるため、所定の液位範囲を測定対象とする場合には、測定範囲が広げられる分、センサの全長を短くでき、したがって、その小型化を図ることができる。すなわち、本発明のような流通路が形成されていない場合には、外筒電極の内側と内部電極の外側との間に存在している液が出入り可能の液出入り口(穴又はスリットなど)を外筒電極の下方に対して別途に設ける必要がある。この場合、その液出入り口を外筒電極の下端に設けたとしても、その液出入り口の下縁より下方には外筒電極の内側において少なからずや液が存在する(溜まる)ことから、センサの測定範囲をなす液位の下限はその下縁となる。したがって、液出入り口の下縁から外筒電極の下端までの部位は液位の検出に寄与できない。これに対して本発明では、前記流通路を備えているため、このような液出入り口の有無にかかわらず電極支持用弾性部材の内側においても液位の低下(変動)が確保されるので、センサの全長(全高)が同じであっても、測定範囲を広げることができるという効果がある。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、位置決め部材のフックを外筒電極の先端に係合させるものであるから、脚部の長さを所望とする大きさに設定しておくことで、そのフックを外筒電極の先端に係合させるまで、位置決め板部を外筒電極の内側に入れることで、位置決め部材自体の外筒電極の軸線方向の位置決めをすることができるから、位置決め部材自体の外筒電極への位置決めが簡易にできる。しかも、位置決め部材を溶接で外筒電極に取付ける場合には、電極支持用弾性部材の先端を支持する位置決め板部から離間した位置にある脚部において、抵抗溶接などによって溶接できるため、この場合には、弾性体への熱的影響も小さくできる。
【0019】
電極支持用弾性部材は、内部電極の先端又は先端寄り部位を前記外筒電極の内側に弾性的に支持させてなるものであればよく、したがって、本発明における弾性体からなる電極支持用弾性部材は、その全てがゴム製のものに限定されるものではなく、例えば一部に芯金のように非弾性体を含む構造のものであってもよい。なお、上記したように、弾性体の代表例はゴムであり、測定対象をなす液体に対する耐力のある合成ゴムから、適宜に選択して使用すればよい。
【0020】
本発明に係るセンサは各種の液体の状態(液位、濃度等)の検知に好適であるが、特に、測定対象をなす液体が尿素水である場合には取り分け好適である。尿素水は導電性を有するため、内部電極の表面には、フッ素系樹脂などからなる絶縁膜を形成しておく必要がある。一方、内部電極の先端における支持を本発明のように弾性体からなる電極支持用弾性部材で弾性的に支持した場合には、上記もしたように、振動や外力がセンサに作用したとしても、その絶縁膜が損傷を受けることが効果的に防止されるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した液状態検知センサの一実施の形態について、図1〜図10に基づいて詳細に説明する。図1は、液状態検知センサの実施の形態を示す縦断正面図である。図2は、図1の液状態検知センサの先端部の拡大図である。図3は、セラミックヒータのヒータパターンを示す模式図である。図4は、図1のセンサに使用したゴムブッシュを斜め下方からみた斜視図である。図5は、図1のセンサに使用したゴムブッシュの側面図である。図6は、図1のセンサに使用したゴムブッシュの平面図である。図7は、図6の一点鎖線A−Aにおいて矢視方向からみたゴムブッシュの断面図である。図8は、外部電極の先端寄り部位と、ゴムブッシュ及び位置決め部材を示す分解斜視図である。なお、本発明の液状態検知センサ100において、レベル検知部70(外筒電極10および内部電極20から構成されるコンデンサ)の長手方向を軸線O方向とし、液体性状検知部30が設けられる側を先端側、そして、取付部40が設けられる側を後端側とする。
【0022】
本実施の形態の液状態検知センサ100は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液の状態、つまりは尿素水溶液のレベル(液位)であるが、さらに、その尿素水溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知する検出手段をも備えたものである。まず、センサ100の全体構成について、図1〜図10に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、液状態検知センサ(以下、単にセンサともいう)100は、円筒形状を有する外筒電極10、および、その外筒電極10の内部にて外筒電極10の軸線O方向に沿って設けられた円筒状の内部電極20から構成されるレベル検知部70と、内部電極20の先端側に設けられた液体性状検知部30と、液状態検知センサ100を、尿素水溶液の収容容器としての尿素水タンク(図示外)に取り付けるための取付部40などから、以下に詳述するように構成されている。
【0023】
本形態におけるセンサ100をなす外筒電極10は金属材料からなり、軸線O方向に延びる長細い円筒形状を呈している。外筒電極10の外周上における周方向に等間隔となる例えば3本の母線上には、各母線に沿ってそれぞれ複数の細幅のスリット15が断続的に開口されている。また、外筒電極10の先端部11において、上記スリット15が形成された各母線上には、後述する内部電極20との間に介在され、ゴム製の電極支持用弾性部材(以下、ゴムブッシュともいう)80の抜け防止のための開口部16がそれぞれ貫通して設けられている。さらに、外筒電極10の後端側の基端部12に近い位置で、スリット15が形成された各母線とは異なる母線上には、1つの空気抜き孔19が形成されている。また、外筒電極10の先端部11は、後述する液体性状検知部30をなすセラミックヒータ110の径方向周囲を覆って保護するプロテクタ130ごと包囲するように、開口部16の位置よりさらに軸線O方向先端側に延長されている。そして最先端部は開口されており、液体性状検知部30を構成するプロテクタ130が開口側(図1下側)から視認可能な状態となっている。
【0024】
この外筒電極10は、基端部12が金属製の取付部(取付け部材)40の電極支持部41の外周に嵌合(係合)した状態で溶接されている。取付部40は尿素水タンク(図示外)に液状態検知センサ100を固定するための台座として機能し、取り付けボルトを挿通するための取り付け孔(図示外)が鍔部42に形成されている。また、取付部40の鍔部42を挟んで電極支持部41の反対側には、液状態検知センサ100と外部回路(図示外)との電気的な接続を行うために設けられた中継用の回路基板60などを収容する収容部43が形成されている。
【0025】
回路基板60は、収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示外)上に載置されている。収容部43はカバー45に覆われ保護されており、そのカバー45は、鍔部42に固定されている。また、カバー45の側面にはコネクタ62が固定されており、コネクタ62の接続端子(図示外)と回路基板60上のパターンとが配線ケーブル61によって接続されている。このコネクタ62を介し、回路基板60と外部回路(図示外)との接続が行われている。
【0026】
取付部40の電極支持部41には収容部43内に貫通する孔46が開口されており、この孔46内に、内部電極20の基端部22が挿通されている。本実施の形態の内部電極20は軸線O方向に延びる長細い円筒形状をした金属材料からなっている。この内部電極20の外周面上には、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁性被膜23が形成されている。絶縁性被膜23は、このような樹脂をディッピングもしくは静電粉体塗装により内部電極20の外表面上に塗布し、熱処理することにより、樹脂コーティング層の形態で形成される。後述するが、この内部電極20と外筒電極10との間で、尿素水溶液のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部70が構成されている。
【0027】
この内部電極20の軸線O方向の後端側の基端部22の外周には、内部電極20を取付部40に固定するためにフランジ状をなすパイプガイド55が固定されており、電極支持部41における孔46内に上端部を係合して配置された筒状のインナーケース50の内側に配置され、パイプガイド55を介して係合されている。すなわち、このパイプガイド55は、内部電極20の基端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材である。一方、インナーケース50は内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように内部電極20を位置決め支持する鍔付き筒状の樹脂製部材であり、先端側が取付部40の電極支持部41の孔46に内挿されている。そして、このインナーケース50には径方向外側に向かって突出する鍔部51が形成されており、インナーケース50が電極支持部41に係合される際には、収容部43側から電極支持部41の孔46に挿通される。そして、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、インナーケース50が孔46内を通り抜けることが防止されている。また、内部電極20は、収容部43側からインナーケース50の内側に挿通されており、パイプガイド55が鍔部51に当接することで、インナーケース50からの脱落が防止されている。
【0028】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、Oリング53とOリング54とが設けられている。Oリング53は、インナーケース50の外周と取付部40の孔46との間の隙間を密閉し、Oリング54は、インナーケース50の内周と内部電極20の基端部22の外周との間の隙間を密閉している。これにより、液状態検知センサ100が尿素水タンク(図示外)の天板又は上蓋に取り付けられた際に、尿素水タンクの内部と外部とが収容部43を介して連通しないようにその水密性および気密性が保たれるように構成されている。なお、取付部40の鍔部42の先端側の面(図1下面)には図示外の板状のシール部材が装着され、液状態検知センサ100を尿素水タンクに取り付けた際に、鍔部42と尿素水タンクとの間の水密性および気密性が保たれるようになっている。
【0029】
そして、内部電極20の取付部40への組み付けは、図1に示したように、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧されることによっている。押さえ板56は、パイプガイド55との間に絶縁性のある押さえ板57を挟み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58による締付けによって収容部43内に固定されている。これにより、パイプガイド55に接合された内部電極20が電極支持部41に固定されている。この固定に使用している押さえ板56,57には中央に孔59が開口されており、内部電極20の電極引出線52と、後述するセラミックヒータ110との電気的な接続を行う2本のリード線90(図1では一方のリード線90のみを表示している。)を内包する2芯のケーブル91とが挿通され、それぞれ回路基板60上のパターンに電気的に接続されている。回路基板60のグランド側の電極(図示外)は取付部40に接続されており、これにより、取付部40に溶接された外筒電極10がグランド側に電気的に接続されるように構成されている。
【0030】
次に液体性状検知部30について説明するが、この液体性状検知部30は、内部電極20の先端部21に連結されている。そして、図2に拡大して示したように、液体性状検知部30は、本例では尿素水溶液中の尿素の濃度検出を行う液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110と、このセラミックヒータ110をその先端部を突出させた状態で保持すると共に、内部電極20の先端部21に装着される絶縁性樹脂製のホルダ120と、このホルダ120から露出されたセラミックヒータ110の先端部の周囲を覆って保護するプロテクタ130とを備えて構成されている。
【0031】
このうちセラミックヒータ110は、図3に示したように、絶縁性セラミックからなる板状のセラミック基体111上にPtを主体とするヒータパターン115を形成し、対となるセラミック基体(図示せず)で挟んだ状態でヒータパターン115を埋設した状態で形成したものである。ここでは発熱抵抗体114を構成するパターンの断面積を、電圧印加のための両極となるリード部112,113のパターンよりも小さくするようにして、通電時、主に発熱抵抗体114において発熱が行われるようにしている。また、リード部112,113の両端には、それぞれセラミック基体111の表面に貫通するビア導体(図示外)が設けられており、2本のリード線90との接続を中継する2つの端子119(図2では共に一方のみを表示している。)のそれぞれと電気的に接続されている。
【0032】
また、セラミックヒータ110を支持する絶縁性樹脂製のホルダ120は、図2等に示したように、同心で、大径をなす大径円筒部122と小径をなす小径円筒部121との径違いの円筒状に形成されており、その大径円筒部122の内側に内部電極20の先端部21を挿入させてその外周から覆うように構成されている。なお、本形態では、このようにホルダ120を内部電極20の先端部21に取付けており、詳しくは後述するが、このホルダ120を介して、ゴムブッシュ80の内側にてその先端部を弾性的に支持している。また、このホルダ120における大径円筒部122と小径円筒部121とを接続する部位の外周面は先端に向かって縮径するテーパー状の段部(テーパ部)123とされている。そして、ホルダ120の先端寄り部位をなす小径円筒部121の外周面には、周方向に等角度間隔で4箇所、正面視において略矩形をなす凹部124が一定深さで形成(凹設)されている。また、ホルダ120の小径円筒部121の先端(面)125の外周寄り部位にはテーパが付されている。
【0033】
一方、ホルダ120の内周面は、小径円筒部121、段部123、そして大径円筒部122に向けて、段付き状に拡径する横断面円形に形成されている。ただし、小径円筒部121の先端125には、セラミックヒータ110の先端部110bが略隙間なく突出可能に軸線O方向から見て(横断面において)矩形をなす開口126が形成されている。この開口126の横断面における矩形の短辺及び長辺は、それぞれセラミックヒータ110の厚み及び幅の各寸法に対応するように設定されている。そして、詳しくは図示しないが、横断面において、この開口126の各辺の中心が、上記した4箇所の凹部124の中心に対応するように形成されている。なお、セラミックヒータ110は、長手方向のリード部112,113(図3参照)側を小径円筒部121内に挿入し、発熱抵抗体114の埋設された先端部110b側をホルダ120の先端125から露出させ、その状態で、接着剤又は樹脂129を小径円筒部121の内周面127内に充填して固化させることにより、セラミックヒータ110はホルダ120の開口126内にシールを保持して固定されている。
【0034】
他方、大径円筒部122の内径は、内部電極20の先端部21の外径より若干大きく構成されており、その内周面128には本形態では2つの凹溝128bがその周方向に形成されている。しかして、このようなホルダ120が大径円筒部122側から内部電極20の先端部21に外嵌状に装着される際には、大径円筒部122の内周面128の2つの凹溝128bに装填されたそれぞれのシールリング(例えばゴム製のOリングパッキン)140を介して、その内周面128と内部電極20の外周面との間のシールが確保され、内部電極20の内部にこの間を通って測定対象をなす液が侵入することが防止されるように構成されている。また、ホルダ120の段部123の内周面には、環状の棚段部128cが形成されており、ホルダ120が内部電極20の先端部21に装着される際には、その先端部21の端面21bがこの棚段部128cに当接して軸線O方向の位置決めがされるように構成されている。なお絶縁性被膜23は、内部電極20の外周面において、内部電極20先端側の先端部21にてこのシールリング140が配置される位置よりも先端側から、後端側の基端部22にてOリング54が配置される位置にかけて形成されており、尿素水タンク(図示外)内にてレベル検知部70が尿素水溶液に浸漬されても、内部電極20が尿素水溶液に直接接触することがないようにされている。
【0035】
なお、ホルダ120は内部電極20への装着前において、セラミックヒータ110の端子119にはケーブル91の2本のリード線90の芯線がそれぞれ加締めまたは半田付けにより接合される。さらに絶縁性の保護部材95により、端子119とリード線90とが接合部位ごと覆われ保護される。そして、2つのリード線90は筒形状の内部電極20内を挿通され、上記回路基板60に接続されている。
【0036】
ホルダ120の先端側には、液体性状検出素子であるセラミックヒータ110の先端部の周囲を覆って保護するプロテクタ130が取付けられている。このプロテクタ130は、例えば金属板を深絞り成形により、有底円筒形状に形成されてている。これは、ヒータ110の露出部の保護部材であり、底部132と胴部133との間の稜角部分は曲面状に面取りされ、剛性が高められている。また、プロテクタ130の胴部133の外周上にて、本形態では周方向に等間隔となる4本の母線上に、それぞれ2つの円形に開口された測定対象をなす液の流通孔135が形成されている。そして、底部132にはその中心に同様に開口された流通孔136が形成されている。このようなプロテクタ130は、その胴部133の内径が、上記したホルダ120における小径円筒部121の外径と同じか若干大きくなるように設定されている。そして、プロテクタ130は、その胴部133のうち、ホルダ120に外嵌される基端(後端)又は基端寄り部位であって、周方向に等角度間隔で4箇所の部位には、その内側に突出すると共に弾性変形することで、ホルダ120における凹部124に嵌合可能の凸部137を備えている。この凸部137は、その端部を先端側に位置させて内側に斜めに突出するように、プロテクタ130自身の壁を切起こして形成されてなる突出片部とされ、舌片状の爪を呈している。なお、凸部137は、プロテクタ130を軸線O方向から見たとき、胴部133に設けた流通孔135の各母線の中間に位置するように形成されている。
【0037】
このプロテクタ130は、ホルダ120の先端125側の小径円筒部121に、その胴部133の基端部を外嵌して押込むことで凸部137を、外方に弾性変形させ、押込み後においてその変形を復元させる形で凹部124に嵌合させるように構成されており、その嵌合状態においてプロテクタ130はホルダ120に抜け止め状に、しかも軸線O回りに回転不能に取付けられるように構成されている。こうしてホルダ120にプロテクタ130が取付けられることで、発熱抵抗体114側がホルダ120から露出されたセラミックヒータ110は、プロテクタ130内に収容されている。
【0038】
前記したように、本形態のセンサでは、このような構成の液体性状検知部30を備えており、これは、内部電極20の先端部21にホルダ120が装着されることによって、レベル検知部70と絶縁された状態で連結されている。そして、図2に示したように、液体性状検知部30は、内部電極20の先端部21と共に、外筒電極10の内側と内部電極20の外側との間に介在するゴム製でリング状の電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80によって、次のようにして外筒電極10内で位置決め支持されている。
【0039】
すなわち、ゴムブッシュ80は、本形態では、図4〜図8に示すように、それ自体全体が環状をなすように構成されており、その内周面は、プロテクタ130の胴部133の外周面のうち、凸部137に対応する部位と、プロテクタ130を避けたホルダ120の大径円筒部122の外周面とに、軸線O方向の先後に跨るようにして、その胴部133と大径円筒部122との外周面に締り嵌め状に取付けられるように、内径が径違いの筒状をなし、その先端側の円筒部の内周面81が小径をなし、後端側の円筒部の内周面82が大径をなしている。そして、小径の内周面81は、その内径がプロテクタ130の胴部133の外径より若干小さくされており、大径の円筒部の内周面82は、その内径がホルダ120の大径円筒部122の外径より若干小さくされており、両者を接続するテーパー状の内周面83のテーパはホルダ120の段部123に対応するテーパとされている。そして、ゴムブッシュ80の小径の内周面81の形成部位は、大径の内周面82の形成部位よりも肉厚に形成されている。
【0040】
このように、ゴムブッシュ80の内周側の面は、ホルダ120およびプロテクタ130の外周面が締り嵌め状に嵌合するように形成された内径の異なる2つの内周面81,82と、両者を接続するテーパー状の内周面83とから構成される。ただし、その内周面81〜83上で、突起部87が形成された外周面89上の各母線に対応する位置には、小径の内周面81側から大径の内周面82側にかけて各内周面81,83,82上を連続する溝部84がそれぞれ溝設されている(図6,7参照)。
【0041】
また、本形態において使用している電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80は、その外周面89上にて周方向に等間隔となる3本の母線上に、外筒電極10の各開口部16にそれぞれ嵌合(係合)し、抜け防止及び回転防止として機能する突起部87が設けられている。本形態では、この突起部87は、正面は略円形とされているが、側面視において、後端側に向かって高さが低くなる鋸歯形状を呈しており、ゴムブッシュ80の外筒電極10の内側への圧入において、開口部16に嵌合しやすく、しかも抜け止め作用があるようにされている。なお、外周面89の周方向において各突起部87間には、それぞれ軸線O方向に沿った複数(本実施の形態では5本)の溝部88が溝設されている。
【0042】
このようなゴムブッシュ80は、ホルダ120が取付けられた内部電極20が外筒電極10の内側に挿入される前に、内周面82が大径をなす部位から、外筒電極10の内側にその先端側から押込まれるようにして圧入され、その外周面の突起部87を外筒電極10に設けられた開口部16に嵌合させて取り付けられている。すなわち、ホルダ120が取付けられた内部電極20は、ゴムブッシュ80を外筒電極10の内側に圧入して取付けた後で、挿入されている。その工程については後述するが、このように外筒電極10の内側に取り付けらたゴムブッシュ80の先端80a側であって外筒電極10の内側には、図2に示したように、このゴムブッシュ80をその先端80a側において支持するようにして位置決めするための位置決め部材150が取付けられている。
【0043】
この位置決め部材150は、図2、図8及び図9に示したように、本形態では、環状をなす円形板部からなる位置決め板部152と、その外周縁からその位置決め板部152と略直角で先端側に延びる脚部154と、その脚部154の先端において外向きに突出するフック156とを有している。ただし、各脚部154の先端は、縦に3分割されており、フック156は、その中央の脚部片154bの先端に設けられている。ここで、位置決め板部154を環状をなす円形板部としたのは、本形態ではその内側(内周面)153にホルダ120の先端部とともに、プロテクタ130の胴部133を挿通させるためと、図2、図10に示したように、ゴムブッシュ80の内周面に設けられた溝部84を介して、外筒電極10の内側と、位置決め板部152の先端側との液の流通を確保するためである。本形態では、位置決め板部152の内径は、溝部84の溝底を通る円の径と一致させている。なお、本形態では、位置決め部材150における脚部154とフック156は位置決め板部152の周方向において等角度間隔で3箇所設けられている。また、この位置決め板部152は、外径が外筒電極10の内径より小さ目とされ、脚部154は外筒電極10の軸線方向にその内周面に沿うように設定されている。このような位置決め部材150は、ゴムブッシュ80を取付けた後、その位置決め板部152を外筒電極10の内側に配置してゴムブッシュ80の先端80aを支持させるようにすると共に、フック156を外筒電極10の先端10aに係合させ、その状態で、各脚部154の少なくとも一部Wを外筒電極10と例えば抵抗溶接で固定している。
【0044】
なお、本形態のセンサ100は、前述したように、内部電極20は、パイプガイド55を介し2枚の押さえ板56,57により軸線O方向先端側に向け押圧されている。そして、図2に示したように、その内部電極20の先端部21に装着されたホルダ120の段部123は、ゴムブッシュ80の内周面83にて支持された状態にある。さらに、内部電極20は、ホルダ120およびプロテクタ130を介して、外筒電極10の先端において支持されているのであるが、上記したように、位置決め部材150によって位置決め保持されたゴムブッシュ80の内周面によって、外筒電極10の内側に弾性的に支持されている。
【0045】
このような構成の本形態のセンサ100によれば、上記したように、ゴムブッシュ80によって内部電極20の先端又は先端寄り部位を外筒電極10の内側にホルダ120およびプロテクタ130を介して、弾性的に支持させてなるものであることから、格別の部品点数の増大もなく、内部電極20をその先端において安定して支持できる。しかも、ゴムブッシュ80を用いているため、各電極等の寸法ないし組立上の誤差を吸収可能である。また、内部電極20の表面に形成される絶縁性被膜23に損傷を与えることもない。
【0046】
さらに、このようなセンサ100は、その組み立てにおいては、ホルダ120等を装着した内部電極20を、その先端のホルダ120側から、図11、及び図12に示したように組立て段階にある、取付部40の電極支持部41に基端部12が溶接された外筒電極10の内側に挿入し、プロテクタ130の胴部133と、ホルダ120の大径円筒部122を外筒電極10内に取付けられたゴムブッシュ80の内側に挿入することにより、ホルダ120等を介して、その先端又は先端寄り部位を弾性的に支持させることができる。したがって、組立も容易に行うことができる。しかも、この挿入時においては、図11、及び図12中に2点鎖線で示したように、内部電極20が傾斜等してその先端(本形態ではホルダ120およびプロテクタ130)が、ゴムブッシュ80の中心に位置せず、これを先端側に押すようなことがあっても、本形態では、ゴムブッシュ80の先端側であって外筒電極10の内側には、ゴムブッシュ80をその先端側において支持するようにして位置決めするための位置決め部材150が取付けられている。したがって、そのような場合であっても、ゴムブッシュ80が外筒電極10の先端側に押出されることもないし、突起部87がせん断されることも、開口部16から外れることもない。
【0047】
このように、本形態のセンサ100においては、内部電極20の外筒電極10の内側への挿入においては、その先端のホルダ120がゴムブッシュ80の内側に強く押込まれるようにしても問題を起こすこともないから、信頼性ないし安定性の高い内部電極20の支持が得られる。さらに、セラミックヒータ110付きのホルダ120が内部電極20の先端において移動するのを防止できるし、それにより、ホルダ120と内部電極20の間の液密を保持しているシールリング140によるシール性の低下防止を図ることもでき、センサの信頼性を著しく高めることができる。
【0048】
なお、上記した液状態検知センサ100自体の作用等について、以下に詳述する。このセンサ100が尿素水タンク(図示外)に取り付けられ使用されたとき、図2に示すように、外筒電極10内には、ゴムブッシュ80よりも軸線O方向先端側のB部と、後端側のC部とに、それぞれ外筒電極10の軸線O方向最先端部の開口とスリット15とを介して尿素水溶液が流入する。また、プロテクタ130内のD部には、液体流通孔135,136を介してB部より尿素水溶液が流入する。そして、B部とC部とに流入した尿素水溶液は、ゴムブッシュ80の溝部88と外筒電極10の内周面とで形成された流通路85や、溝部84とホルダ120の外周面とで形成された流通路86を介して流通される。さらに、プロテクタ130の液体流通孔135に、流通路86が連続している。これにより、流通路85,86を介してB部とC部との間およびD部とC部との間で尿素水溶液の流通が行われる。また、空の尿素水タンクに尿素水溶液を満たした場合にB部やD部に空気が残る虞があるが、この空気は流通路85,86を通じてC部に到達することができる。
【0049】
次に、本実施の形態の液状態検知センサ100により、尿素水溶液のレベルおよび濃度を検知する原理について説明する。まず、図13を参照し、レベル検知部70において尿素水溶液のレベルを検知する原理について説明する。図13は、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図である。
【0050】
液状態検知センサ100は、尿素水溶液を収容した尿素水タンク(図示外)に、その底壁側に外筒電極10および内部電極20の先端側を向けた状態で組み付けられる。つまり液状態検知センサ100のレベル検知部70は、尿素水タンク(図示外)内で容量の変化する尿素水溶液の変位方向(尿素水溶液のレベルの高低方向)を軸線O方向とし、外筒電極10および内部電極20の先端側が尿素水溶液の容量の少ない側(低レベル側)となるように、尿素水タンク(図示外)に組み付けられる。そして、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間の静電容量を測定し、両者間に存在する尿素水溶液が軸線O方向においてどれだけのレベルまで存在しているか検知している。これは周知のように、径方向の電位の異なる2点間において、その径の差が小さくなるほど静電容量の大きさが大きくなることに基づく。
【0051】
すなわち、図13に示すように、尿素水溶液で満たされていない部分においては、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、外筒電極10の内周面と絶縁性被膜23との間に介在する空気層の厚みに相当する距離(距離Fで示す)と、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離(距離Gで示す)との合計の距離(距離Eで示す)となる。一方、尿素水溶液が満たされた部分において、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、尿素水溶液が導電性を示すため外筒電極10と尿素水溶液との電位がほぼ等しくなることから、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離Gとなる。
【0052】
換言すれば、尿素水溶液で満たされていない部分におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がFで空気を誘電体(不導体)とするコンデンサの静電容量と、電極間の距離がGで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサとを直列に接続したコンデンサの合成の静電容量といえる。また、尿素水溶液で満たされた部分におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がGで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサの静電容量といえる。そして両者を並列に接続したコンデンサの静電容量が、レベル検知部70全体の静電容量として測定されることとなる。
【0053】
ここで、絶縁性被膜23を挟む電極間の距離Gと比べ、空気層を挟む電極間の距離Fは大きく構成されているため、空気を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量は、絶縁性被膜23を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量よりも小さい。このため、尿素水溶液で満たされていない部分の静電容量の変化よりも尿素水溶液で満たされた部分の静電容量の変化の方が大きく、外筒電極10および内部電極20からなるコンデンサ全体としての静電容量は、尿素水溶液のレベルに比例する。なお、本実施の形態では、尿素水溶液のレベル検知を回路基板60に搭載したマイクロコンピュータを含むレベル検知回路で行っており、レベル検知回路にて得られたレベル情報信号を、コネクタ62を介して外部回路(例えば、ECU)に対し出力している。外部回路は、入力されるレベル情報信号に基づき、尿素水溶液のレベルが適正か否かを判定し、適正では無い場合に運転者のその旨を通知する処理を適宜行う。
【0054】
次に、液体性状検知部30を構成するセラミックヒータ110において、尿素水溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知する原理について説明する。一般に、液体に含まれる特定成分の濃度によって、液体の熱伝導率が異なることが知られている。つまり、発熱抵抗体を用い、その周囲の液体を一定時間加熱した場合、濃度の異なる液体では温度上昇率が異なってくる。また、発熱抵抗体に定電流を流した場合に、発熱抵抗体の周囲の温度の上昇に比例して、発熱抵抗体の抵抗値が上昇することも知られている。このことから発熱抵抗体を用い、その周囲の液体を一定時間加熱した場合に、発熱抵抗体の抵抗値変化の度合いが求まれば、周囲の液体の温度変化の度合いが求まり、液体の濃度を得ることができる。
【0055】
本実施の形態の液状態検知センサ100では、発熱抵抗体114に定電流を流すように構成されており、発熱抵抗体114の両端には自身の抵抗値の大きさに応じた検出電圧Vdが発生する。なお、発熱抵抗体114の一端の電位をPinとし、発熱抵抗体114の他端の電位をPoutとしたとき、検出電圧Vdは、電位Pinと電位Poutの差分で求められる。具体的には、まず、発熱抵抗体114への通電開始直後の検出電圧Vdを測定し、一定時間後(例えば700ms後)に、再度検出電圧Vdの測定を行う。そして、予め実験等により作成したテーブル(図示外)を用い、上記2つの検出電圧Vdの差分値をパラメータとして、尿素水溶液の濃度の決定を行っている。なお、本実施の形態では、尿素水溶液のレベル検知と同様に、尿素水溶液の濃度検知(算出)を回路基板60に搭載したマイクロコンピュータを含む濃度検知回路で行っており、濃度検知回路にて得られた濃度情報信号を、コネクタ62を介して外部回路(例えば、ECU)に対し出力している。外部回路は、入力された濃度情報信号に基づき、尿素水溶液の濃度が適正範囲にあるか否かを判定し、適正範囲に無い場合に運転者にその旨を通知する処理を適宜行う。
【0056】
なお、上記の本実施の形態では、セラミックヒータ110の発熱抵抗体114とリード部112,113とは同一の材料を用いパターンの断面積を異ならせたことによって主に発熱抵抗体114で発熱が行われるようにしたが、それぞれの材質を異ならせてもよい。また、本実施の形態ではセラミックヒータ110の発熱抵抗体114の抵抗値を用い、テーブル参照により尿素水溶液中の尿素濃度を求めたが、抵抗値を変数として、予め実験等により求めた上記関係を表す計算式に代入することで、尿素水溶液の濃度を算出してもよい。
【0057】
上記した実施の形態では、電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80による内部電極20の先端又は先端寄り部位における支持を、センサ100が尿素水溶液中の尿素の濃度検出を行う液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110を含む液体性状検知部30を有する構成に基づいて、プロテクタ130及びホルダ120といった別部材を介して行ったものを例示したが、本発明では、センサによってはこのような別部材を介することなく、内部電極20の先端又は先端寄り部位を電極支持用弾性部材にて直接、弾性的に支持してもよい。図14は、その1例を示したもので、上記した実施の形態における液体性状検知部30を保持しないセンサとして具体化したもので、液体性状検知部30の構成に関係する、セラミックヒータ110、プロテクタ130及びホルダ120などを省略した点のみが、相違するだけであるため、同一部位には、同一の符号を付すに止め、詳細な説明は省略する。なお、図14に示したものでは、内部電極20を筒体に代えて中実の丸棒からなるもので具体化したものである。また、このものでは、内部電極20の先端又は先端寄り部位をゴムブッシュ80の大径の内周面82にて締り嵌め状にして、弾性的に支持するようにしたものであり、取り付け状態では内部電極20の先端面がゴムブッシュ80に押付けられないように設定されている。
【0058】
また、上記形態では、電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80の溝部84,88を、流通路とすると共に、位置決め部材150の位置決め板部152の内側と、その外周縁と外部電極10の内周面との隙間S(図10参照)とを利用して、外筒電極10の内側と内部電極20の外側との間と、位置決め部材152の先端側とに、液体が流通するように流通路を形成したため、上記もしたように、ゴムブッシュ80の内側においても液位の低下(変動)が確保されるので、センサの全長(全高)が同じであっても、測定範囲を広げることができる。なお、上記形態において使用した電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80の溝部84,88は、ゴムブッシュ80の内周側や外周側に溝状に設けたが、肉厚部分を貫通する貫通孔として形成してもよい。さらに、溝部84,88のいずれかを省略してゴムブッシュ80を形成してもよい。また、外筒電極10や内部電極20を円筒形状としたが、角筒状であってもよい。
【0059】
位置決め部材150は、上記においては、リング状の位置決め板部152と、その外周縁に脚部154を設けた形状としたが、電極支持用弾性部材の先端側であってこの電極支持用弾性部材をその先端側において支持するようにして位置決めするために外部電極10の内側に取り付けられるものであればよく、その形状、取付け手段は限定されるものではない。単なるリング形状として、これを外部電極10の内側に溶接で取り付けるようにしてもよいし、外部電極10の内側にネジ込み方式で取り付けるようにしてもよい。さらに、位置決め部材は、単なる円板又は、円柱状のものとしてもよい。そして、このようなものにおいて、外筒電極の内側と内部電極の外側との間と、位置決め部材の先端側とに、液体が流通するように流通路を形成する場合には、適所に貫通孔を設ければよい。
【0060】
なお、上記センサでは尿素水を測定対象としているため、内部電極20に絶縁性被膜23を形成したが、この絶縁性被膜23としては、液体の特性(例えば、酸化・還元性など)にあわせて腐食されにくい材質のものを選択するとよい。なお、絶縁性被膜の形成をディッピングや静電粉体塗装により行ったが、内部電極との間で空気層の混入が全くない状態となるようにすれば、絶縁チューブを用いて絶縁性被膜の形成を行ってもよい。
【0061】
なお、液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110は、液体に含まれる特定成分(例えば、尿素)の濃度検出以外に、液体の温度や液体の下限レベルの検知を検出するために用いられてもよい。例えば、セラミックヒータ110にて液体の温度を検出する場合には、発熱抵抗体114に定電流を流し始めた直後の当該発熱抵抗体114の抵抗値の大きさ(より詳細には、発熱抵抗体114の両端に生じる検出電圧Vdの大きさ)に基づき、液体の温度を検出することができる。発熱抵抗体114の通電直後の抵抗値は、液体の温度に対応した値を示していることから、このような手法により液体の温度を検出することができるのである。また、セラミックヒータ110の周囲に液体が存在する場合と存在しない場合とでは、発熱抵抗体114の抵抗値の変化挙動が大きく異なることから、この違いを利用して液体の下限レベルの検知を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の液状態検知センサの実施の形態を示す縦断正面図。
【図2】図1の液状態検知センサの先端部の拡大図。
【図3】セラミックヒータのヒータパターンを示す模式図。
【図4】図1のセンサに使用したゴムブッシュを斜め下方からみた斜視図。
【図5】図1のセンサに使用したゴムブッシュの側面図。
【図6】図1のセンサに使用したゴムブッシュの平面図。
【図7】図6の一点鎖線A−Aにおいて矢視方向からみたゴムブッシュの断面図。
【図8】外部電極の先端寄り部位と、ゴムブッシュ及び位置決め部材を示す分解斜視図。
【図9】位置決め部材の拡大斜視図。
【図10】図1に示す液状態検知センサを先端側から軸線O方向に見た拡大図。
【図11】センサの組立て状態を説明する縦断正面図。
【図12】図11の要部拡大図。
【図13】支持外筒電極と内部電極とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図。
【図14】本発明の液状態検知センサの別例の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0063】
10 外筒電極
10a 外筒電極の先端
16 開口部16
20 内部電極
40 取付け部
70 レベル検知部
80 ブッシュ(電極支持用弾性部材)
80a ブッシュの先端
85,86 流通路
87 突起部
100 液状態検知センサ
150 位置決め部材
152 位置決め板部
154 脚部
156 フック
O 軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の静電容量を測定することで液体収容容器(タンク)内に収容される液体の状態を検知する液状態検知センサ(以下、単にセンサともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル自動車から排出される排気ガスには、一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)以外に窒素酸化物(NOx)が含まれている。そこで、近年、この有害な窒素酸化物(NOx)を無害なガスに還元することが行われている。例えば、ディーゼル自動車の排気ガス排出用のマフラーの途中にNOx選択還元触媒(SCR)を設置し、別途車両に設けたタンクに還元剤溶液として尿素水を入れ、この尿素水を上記触媒へ噴射するようにして、NOxをN2等の無害なガスに還元するシステムが提案されている。このシステムでは、尿素水が無くなった場合にはNOx還元反応を促すことができずにNOxの大量な排出を起こすため、尿素水を収容する収容容器(以下、タンクともいう)に、収容される尿素水の液位(以下、水位ともいう)を測定するセンサを設け、尿素水の残量が規定量以下となった場合に警報を発する等の措置が講じられている。
【0003】
この水位を測定するためのセンサの一例として、静電容量式の液状態検知センサが知られている。この液状態検知センサは、導体からなる細長い筒を外側の電極(外筒電極)とし、この外筒電極内にて軸線方向に沿って同心で設けられた細長い柱状又は管状の内部電極との間の静電容量を測定し、その静電容量から水位を検知するというものである。例えば、尿素水のように導電性を有する液体の水位の測定に用いる静電容量式の液状態検知センサでは、外筒電極と内部電極との間でのショート防止のために、内部電極の表面に絶縁膜を形成し、その上で、外筒電極の軸線方向が水位の上下方向となるように、液状態検知センサを測定対象をなすタンクにセットする。このような導電性の液体の水位を測定する場合には、液体に浸漬していない部分の静電容量は、内外の両電極のギャップ間の空気層および内部電極の絶縁膜の厚みに依存する。一方、液体に浸漬している部分の静電容量は、導電性の液体が外筒電極と同電位となるため絶縁膜の厚みに依存し、前者よりも静電容量が大きくなる。このため、液体に浸漬している部分が増えるほど測定される静電容量が大きくなることとなり、水位として検知することができる。
【0004】
こうした液状態検知センサは、タンク内に、外筒電極の軸線方向が水位の上下方向となるように取り付けられるのが普通である。例えば、外筒電極(及び内部電極)がタンクの天井からタンク内に垂下状にして取り付けられる場合、その液状態検知センサは、その天井側に、外筒電極の基端側を位置させるため、外筒電極の基端(上)を、タンクへの取り付け手段を有する基端支持部材に固定(又は支持)することになる。一方、内部電極は、外筒電極内にこれとの絶縁を保持するようにして、内部電極自身の基端部を外筒電極内の基端側に固定することになる。しかし、このように両電極をその基端部のみで固定或いは支持するだけでは、各電極はその先端側が自由であるいわば片持ち支持の状態となってしまうことから、センサが振動のある使用条件(環境下)におかれるときや、横方向からの外力が加わる場合には、各電極がその軸の半径方向に振れたり、撓み変形を起こしてしまう。このため、両電極間の寸法が不安定となったり、場合によっては両電極間の接触を招いたりするなどにより、正確な静電容量を測定することができない。また、このような振れや変形の繰り返しによって各電極には、特に内部電極の根元には大きな応力が発生し、折損してしまう危険性もある。
【0005】
このため、このようなセンサでは、両電極間の寸法安定化手段ないし両電極間の寸法を一定に保持するための内部電極の支持手段として、両電極間にスペーサ或いは支持部材を介在させることが行われている。例えば、絶縁材からなるスペーサを、内外の両電極が同心に保持されるように、その軸周りと共に、電極の長手方向に複数配置するようにした技術が知られている(特許文献1)。また、内外の両電極の先端部において、その電極間に絶縁性のある樹脂製の支持部材を配置し、その支持部材によって電極間を絶縁しながら、その両電極間の間隔(寸法)を一定に保持するようにした技術も知られている(特許文献2)。
【0006】
しかし、前者の内部電極の支持手段においては、複数のスペーサを必要とするために部品点数の増大を招いてしまう。また、各スペーサを内部電極の外周面に取り付けた後で、これを外筒電極内にその一端側の開口から圧入(又は挿入)する必要があるということから、組み立て作業が厄介である。また、後者の、電極間に樹脂製の支持部材を配置するという技術においては、それが樹脂製のものであることから、振動や外力が両電極間で吸収されにくいため、次の問題がある。まず、両電極の軸が製造、組立て上の誤差により正しく同心にない状態において、支持部材を両電極(先端)間に配置すると、各電極に横方向に残留応力が発生したり偏荷重が作用することになり、一方の電極が根元などで破断する要因となることがある。一方で、これを防止するためには、各電極を含む部品の寸法精度を極端に上げる必要があり、製造コストの上昇を招いてしまう。また、通常の樹脂製の支持部材ではそれが硬質のものであるため、その支持部材を介して両電極間に振動が直接伝わる結果、例えば、表面に絶縁膜が形成されているような内部電極ではその絶縁膜が損傷を受けやすく、絶縁が破壊される危険性がある。
【特許文献1】実開平01−151215号公報
【特許文献2】特開平09−152368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした中、本願出願人は、特許文献2に記載の問題を解消するため、上記したような液状態検知センサにおいて、内部電極の先端又は先端寄り部位の外側であって外筒電極の内側に、ゴム等の弾性体からなる先端支持部材を圧入等によって介在させて、その内部電極の先端又は先端寄り部位を外筒電極の内側に弾性的に支持させるようにした発明を出願している(特願2005−140071)。このものでは、内部電極の先端における支持に硬質の樹脂ではない弾性体を用いたことから、上記したような誤差や精度上の問題を吸収可能であり、かつ内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合であってもその膜に損傷を与えることなく、内部電極をその先端又は先端寄り部位(以下、単に先端ともいう)で支持することができる。
【0008】
このような、内部電極の先端の外側であって外筒電極の内側に介在させるようにした、ゴム等の弾性体からなる先端支持部材(以下、電極支持用弾性部材又は単に支持用弾性部材ともいう)は、その製造上及び外筒電極の内側への取付けのし易さなどから、通常、中央に内部電極の先端を通すための貫通孔又は凹部のある、例えばブッシュ状の1個の部品となる。したがって、このような電極支持用弾性部材は、環状(リング状)又は有底の環状ないし筒状の形状を有するものとなる。一方、この電極支持用弾性部材は、外筒電極の内側において、抜け落ちたり回転ないし移動したりすることなく、安定して介在させる必要がある。このため、支持用弾性部材には自身の外周面に外向きに突出する突起部(凸部)を設けておくと共に、外筒電極には、その先端寄り部位に径方向に貫通する開口部(貫通孔)を設けておき、その内側に圧入等により介在されたときにその突起部が開口部に嵌合する構造とされている。
【0009】
他方、このような弾性体からなる電極支持用弾性部材を用いて、内部電極の先端を外筒電極の内側で支持する場合には、センサの組立てにおいて、その支持用弾性部材を外筒電極の内側にその先端側から圧入等により挿入して、その突起部を開口部に嵌合させてその取付けをした後、内部電極を外筒電極の基端(後端)側からその内側に挿入し、内部電極の先端又は先端寄り部位が支持用弾性部材の中央(貫通孔)に挿入されるようにして、内部電極の先端が外筒電極の内側で支持されるようにしていた。ところが、このような内部電極の挿入においては、組立て作業上、或いは精度上から発生する内部電極の傾きなどに起因して、その先端は外筒電極内において必ず軸心に真っ直ぐに位置させるということは通常できない。すなわち、その挿入過程では、内部電極が同軸状に真っ直ぐ入らなかったり、その先端がその軸心から偏在するため、支持用弾性部材の中央の貫通孔に円滑に挿入されずに、その中央からずれた部位を先端側に押すような作用を及ぼす。このような作用が及ぶと、支持用弾性部材は先端側に押されるから、外筒電極の開口部に嵌合させられている突起部がせん断力を受けて、その根元に亀裂や割れ等の損傷を受ける危険性や、突起部が開口部から外れる可能性が有り、電極の支持の安定性ないし信頼性に問題があった。
【0010】
こうした問題回避のためには、内部電極の先端に丸みを付けたり、支持用弾性部材の中央の貫通孔の入口側にも外広がり状に丸みをつけることも考えられるが、それだけでは十分ではない。しかも、内部電極の安定的な支持のため、その軸線方向に圧縮力が作用するようにして支持したい場合があり、その場合には特に問題が大きい。というのは、このような場合にはその挿入後であるセンサの組立て後(完成品)においても、支持用弾性部材には常時、先端側に押される力が加わっていることになる。このため、自動車等に搭載されて使用される場合のように、振動下で使用されるものでは、最悪の場合には突起部が根元で切断されてしまい、外部電極の内側から先端側に移動したり、軸線回りに回転したり、脱落したりするなどの問題があるなど、その支持の信頼性に問題があるためである。
【0011】
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたもので、部品点数の増大や、組立上の問題もなく、しかも、電極の支持において、誤差を吸収可能でありかつ内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合であってもその膜に損傷を与えることなく、さらには、電極先端における信頼性の高い支持をし得るようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、収容容器内に収容される液体の状態を検知するための液状態検知センサであって、
導体からなる筒状の外筒電極と、この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、この両電極の間で前記収容容器内に収容される前記液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部と、
該レベル検知部の長手方向の後端側に位置し、前記収容容器に液状態検知センサを取付けるための取付け部と、
前記内部電極の先端又は先端寄り部位の外周面を直接又は間接に包囲するようにして支持する環状部を有する弾性体からなる電極支持用弾性部材であって、前記外筒電極の内側に圧入されてなる電極支持用弾性部材とを備えており、
前記外筒電極は、その先端寄り部位に径方向に貫通する開口部を備えている一方、
前記電極支持用弾性部材は、その外周面に前記開口部に嵌合可能の突起部を備えていると共に、前記外筒電極の内側に圧入されて該突起部を前記開口部に嵌合することで取付けられており、
さらに、該電極支持用弾性部材の先端側であって前記外筒電極の内側には、該電極支持用弾性部材をその先端側において位置決めするための位置決め部材が取付けられており、
前記内部電極を、その先端側から前記外筒電極の内側に挿入し、前記内部電極の先端又は先端寄り部位を、直接又は別部材を介して、前記電極支持用弾性部材の前記環状部の内側に挿入して弾性的に支持させてなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記外筒電極の内側と前記内部電極の外側との間と、前記位置決め部材の先端側とに前記液体が流通するように、前記外筒電極の内側にある前記電極支持用弾性部材と前記位置決め部材とに連なる流通路が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液状態検知センサである。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、前記位置決め部材は、外径が前記外筒電極の内径より小さい位置決め板部と、該位置決め板部の周縁から該位置決め板部と略直角で先端側に延びる脚部と、その脚部の先端において外向きに突出するフックとを有しており、該位置決め板部を前記外筒電極の内側に配置して前記電極支持用弾性部材の先端を支持させるようにすると共に、前記フックを前記外筒電極の先端に係合させて、前記脚部の少なくとも一部を前記外筒電極の内周面に溶接してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状態検知センサである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセンサによれば、前記電極支持用弾性部材にて内部電極の先端又は先端寄り部位を前記外筒電極の内側に弾性的に支持させてなるものであることから、部品点数の増大もなく、またその支持のための組立も容易であり、内部電極をその先端において安定して支持できる。しかも、内部電極の支持において、弾性体からなる電極支持用弾性部材を用いているため、各電極等の寸法ないし組立上の誤差を吸収可能である。また、内部電極の表面に絶縁膜が形成されている場合であってもその膜に損傷を与えることもない。すなわち、このような膜は薄く、したがって、センサが振動に晒される環境下で使用される場合には、従来の硬質の樹脂製支持部材による支持では損傷を受けやすいが、本発明では弾性体からなる電極支持用弾性部材で内部電極を支持しているため、そうした危険性も小さい。しかも、本願発明においては次のような特有の効果も得られる。
【0016】
本願発明においては、電極支持用弾性部材の先端側であって前記外筒電極の内側には、該電極支持用弾性部材をその先端側において位置決めするための位置決め部材が取付けられている。このため、内部電極を、その先端側から外筒電極の内側に挿入し、この内部電極の先端又は先端寄り部位を、電極支持用弾性部材の環状部の内側に挿入して弾性的に支持させる際において、内部電極が例えば傾斜していて、その先端が電極支持用弾性部材の中心に位置せず、これを先端側に押すようなことになっても、電極支持用弾性部材は位置決め部材にて位置決めされつつ支持されるため、電極支持用弾性部材の突起部がせん断されることもないし、開口部から外れることもない。したがって、その後、自動車等に搭載されて使用される場合においても、電極支持用弾性部材が外部電極の内側から先端側に移動したり軸線回りに回転したり、或いは脱落してしまう危険性を解消できるため、内部電極は著しく安定して支持される。なお、本発明において、「前記内部電極の先端又は先端寄り部位を、直接又は別部材を介して、」としたのは、その先端又は先端寄り部位に、ホルダ等の別部材を取付けた場合には、その別部材を介していても、同様の効果が得られるためである。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、その構成に基づいて、電極の全長(全高)が同じであっても、測定範囲を広げることができるため、所定の液位範囲を測定対象とする場合には、測定範囲が広げられる分、センサの全長を短くでき、したがって、その小型化を図ることができる。すなわち、本発明のような流通路が形成されていない場合には、外筒電極の内側と内部電極の外側との間に存在している液が出入り可能の液出入り口(穴又はスリットなど)を外筒電極の下方に対して別途に設ける必要がある。この場合、その液出入り口を外筒電極の下端に設けたとしても、その液出入り口の下縁より下方には外筒電極の内側において少なからずや液が存在する(溜まる)ことから、センサの測定範囲をなす液位の下限はその下縁となる。したがって、液出入り口の下縁から外筒電極の下端までの部位は液位の検出に寄与できない。これに対して本発明では、前記流通路を備えているため、このような液出入り口の有無にかかわらず電極支持用弾性部材の内側においても液位の低下(変動)が確保されるので、センサの全長(全高)が同じであっても、測定範囲を広げることができるという効果がある。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、位置決め部材のフックを外筒電極の先端に係合させるものであるから、脚部の長さを所望とする大きさに設定しておくことで、そのフックを外筒電極の先端に係合させるまで、位置決め板部を外筒電極の内側に入れることで、位置決め部材自体の外筒電極の軸線方向の位置決めをすることができるから、位置決め部材自体の外筒電極への位置決めが簡易にできる。しかも、位置決め部材を溶接で外筒電極に取付ける場合には、電極支持用弾性部材の先端を支持する位置決め板部から離間した位置にある脚部において、抵抗溶接などによって溶接できるため、この場合には、弾性体への熱的影響も小さくできる。
【0019】
電極支持用弾性部材は、内部電極の先端又は先端寄り部位を前記外筒電極の内側に弾性的に支持させてなるものであればよく、したがって、本発明における弾性体からなる電極支持用弾性部材は、その全てがゴム製のものに限定されるものではなく、例えば一部に芯金のように非弾性体を含む構造のものであってもよい。なお、上記したように、弾性体の代表例はゴムであり、測定対象をなす液体に対する耐力のある合成ゴムから、適宜に選択して使用すればよい。
【0020】
本発明に係るセンサは各種の液体の状態(液位、濃度等)の検知に好適であるが、特に、測定対象をなす液体が尿素水である場合には取り分け好適である。尿素水は導電性を有するため、内部電極の表面には、フッ素系樹脂などからなる絶縁膜を形成しておく必要がある。一方、内部電極の先端における支持を本発明のように弾性体からなる電極支持用弾性部材で弾性的に支持した場合には、上記もしたように、振動や外力がセンサに作用したとしても、その絶縁膜が損傷を受けることが効果的に防止されるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した液状態検知センサの一実施の形態について、図1〜図10に基づいて詳細に説明する。図1は、液状態検知センサの実施の形態を示す縦断正面図である。図2は、図1の液状態検知センサの先端部の拡大図である。図3は、セラミックヒータのヒータパターンを示す模式図である。図4は、図1のセンサに使用したゴムブッシュを斜め下方からみた斜視図である。図5は、図1のセンサに使用したゴムブッシュの側面図である。図6は、図1のセンサに使用したゴムブッシュの平面図である。図7は、図6の一点鎖線A−Aにおいて矢視方向からみたゴムブッシュの断面図である。図8は、外部電極の先端寄り部位と、ゴムブッシュ及び位置決め部材を示す分解斜視図である。なお、本発明の液状態検知センサ100において、レベル検知部70(外筒電極10および内部電極20から構成されるコンデンサ)の長手方向を軸線O方向とし、液体性状検知部30が設けられる側を先端側、そして、取付部40が設けられる側を後端側とする。
【0022】
本実施の形態の液状態検知センサ100は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液の状態、つまりは尿素水溶液のレベル(液位)であるが、さらに、その尿素水溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知する検出手段をも備えたものである。まず、センサ100の全体構成について、図1〜図10に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、液状態検知センサ(以下、単にセンサともいう)100は、円筒形状を有する外筒電極10、および、その外筒電極10の内部にて外筒電極10の軸線O方向に沿って設けられた円筒状の内部電極20から構成されるレベル検知部70と、内部電極20の先端側に設けられた液体性状検知部30と、液状態検知センサ100を、尿素水溶液の収容容器としての尿素水タンク(図示外)に取り付けるための取付部40などから、以下に詳述するように構成されている。
【0023】
本形態におけるセンサ100をなす外筒電極10は金属材料からなり、軸線O方向に延びる長細い円筒形状を呈している。外筒電極10の外周上における周方向に等間隔となる例えば3本の母線上には、各母線に沿ってそれぞれ複数の細幅のスリット15が断続的に開口されている。また、外筒電極10の先端部11において、上記スリット15が形成された各母線上には、後述する内部電極20との間に介在され、ゴム製の電極支持用弾性部材(以下、ゴムブッシュともいう)80の抜け防止のための開口部16がそれぞれ貫通して設けられている。さらに、外筒電極10の後端側の基端部12に近い位置で、スリット15が形成された各母線とは異なる母線上には、1つの空気抜き孔19が形成されている。また、外筒電極10の先端部11は、後述する液体性状検知部30をなすセラミックヒータ110の径方向周囲を覆って保護するプロテクタ130ごと包囲するように、開口部16の位置よりさらに軸線O方向先端側に延長されている。そして最先端部は開口されており、液体性状検知部30を構成するプロテクタ130が開口側(図1下側)から視認可能な状態となっている。
【0024】
この外筒電極10は、基端部12が金属製の取付部(取付け部材)40の電極支持部41の外周に嵌合(係合)した状態で溶接されている。取付部40は尿素水タンク(図示外)に液状態検知センサ100を固定するための台座として機能し、取り付けボルトを挿通するための取り付け孔(図示外)が鍔部42に形成されている。また、取付部40の鍔部42を挟んで電極支持部41の反対側には、液状態検知センサ100と外部回路(図示外)との電気的な接続を行うために設けられた中継用の回路基板60などを収容する収容部43が形成されている。
【0025】
回路基板60は、収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示外)上に載置されている。収容部43はカバー45に覆われ保護されており、そのカバー45は、鍔部42に固定されている。また、カバー45の側面にはコネクタ62が固定されており、コネクタ62の接続端子(図示外)と回路基板60上のパターンとが配線ケーブル61によって接続されている。このコネクタ62を介し、回路基板60と外部回路(図示外)との接続が行われている。
【0026】
取付部40の電極支持部41には収容部43内に貫通する孔46が開口されており、この孔46内に、内部電極20の基端部22が挿通されている。本実施の形態の内部電極20は軸線O方向に延びる長細い円筒形状をした金属材料からなっている。この内部電極20の外周面上には、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁性被膜23が形成されている。絶縁性被膜23は、このような樹脂をディッピングもしくは静電粉体塗装により内部電極20の外表面上に塗布し、熱処理することにより、樹脂コーティング層の形態で形成される。後述するが、この内部電極20と外筒電極10との間で、尿素水溶液のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部70が構成されている。
【0027】
この内部電極20の軸線O方向の後端側の基端部22の外周には、内部電極20を取付部40に固定するためにフランジ状をなすパイプガイド55が固定されており、電極支持部41における孔46内に上端部を係合して配置された筒状のインナーケース50の内側に配置され、パイプガイド55を介して係合されている。すなわち、このパイプガイド55は、内部電極20の基端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材である。一方、インナーケース50は内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように内部電極20を位置決め支持する鍔付き筒状の樹脂製部材であり、先端側が取付部40の電極支持部41の孔46に内挿されている。そして、このインナーケース50には径方向外側に向かって突出する鍔部51が形成されており、インナーケース50が電極支持部41に係合される際には、収容部43側から電極支持部41の孔46に挿通される。そして、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、インナーケース50が孔46内を通り抜けることが防止されている。また、内部電極20は、収容部43側からインナーケース50の内側に挿通されており、パイプガイド55が鍔部51に当接することで、インナーケース50からの脱落が防止されている。
【0028】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、Oリング53とOリング54とが設けられている。Oリング53は、インナーケース50の外周と取付部40の孔46との間の隙間を密閉し、Oリング54は、インナーケース50の内周と内部電極20の基端部22の外周との間の隙間を密閉している。これにより、液状態検知センサ100が尿素水タンク(図示外)の天板又は上蓋に取り付けられた際に、尿素水タンクの内部と外部とが収容部43を介して連通しないようにその水密性および気密性が保たれるように構成されている。なお、取付部40の鍔部42の先端側の面(図1下面)には図示外の板状のシール部材が装着され、液状態検知センサ100を尿素水タンクに取り付けた際に、鍔部42と尿素水タンクとの間の水密性および気密性が保たれるようになっている。
【0029】
そして、内部電極20の取付部40への組み付けは、図1に示したように、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧されることによっている。押さえ板56は、パイプガイド55との間に絶縁性のある押さえ板57を挟み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58による締付けによって収容部43内に固定されている。これにより、パイプガイド55に接合された内部電極20が電極支持部41に固定されている。この固定に使用している押さえ板56,57には中央に孔59が開口されており、内部電極20の電極引出線52と、後述するセラミックヒータ110との電気的な接続を行う2本のリード線90(図1では一方のリード線90のみを表示している。)を内包する2芯のケーブル91とが挿通され、それぞれ回路基板60上のパターンに電気的に接続されている。回路基板60のグランド側の電極(図示外)は取付部40に接続されており、これにより、取付部40に溶接された外筒電極10がグランド側に電気的に接続されるように構成されている。
【0030】
次に液体性状検知部30について説明するが、この液体性状検知部30は、内部電極20の先端部21に連結されている。そして、図2に拡大して示したように、液体性状検知部30は、本例では尿素水溶液中の尿素の濃度検出を行う液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110と、このセラミックヒータ110をその先端部を突出させた状態で保持すると共に、内部電極20の先端部21に装着される絶縁性樹脂製のホルダ120と、このホルダ120から露出されたセラミックヒータ110の先端部の周囲を覆って保護するプロテクタ130とを備えて構成されている。
【0031】
このうちセラミックヒータ110は、図3に示したように、絶縁性セラミックからなる板状のセラミック基体111上にPtを主体とするヒータパターン115を形成し、対となるセラミック基体(図示せず)で挟んだ状態でヒータパターン115を埋設した状態で形成したものである。ここでは発熱抵抗体114を構成するパターンの断面積を、電圧印加のための両極となるリード部112,113のパターンよりも小さくするようにして、通電時、主に発熱抵抗体114において発熱が行われるようにしている。また、リード部112,113の両端には、それぞれセラミック基体111の表面に貫通するビア導体(図示外)が設けられており、2本のリード線90との接続を中継する2つの端子119(図2では共に一方のみを表示している。)のそれぞれと電気的に接続されている。
【0032】
また、セラミックヒータ110を支持する絶縁性樹脂製のホルダ120は、図2等に示したように、同心で、大径をなす大径円筒部122と小径をなす小径円筒部121との径違いの円筒状に形成されており、その大径円筒部122の内側に内部電極20の先端部21を挿入させてその外周から覆うように構成されている。なお、本形態では、このようにホルダ120を内部電極20の先端部21に取付けており、詳しくは後述するが、このホルダ120を介して、ゴムブッシュ80の内側にてその先端部を弾性的に支持している。また、このホルダ120における大径円筒部122と小径円筒部121とを接続する部位の外周面は先端に向かって縮径するテーパー状の段部(テーパ部)123とされている。そして、ホルダ120の先端寄り部位をなす小径円筒部121の外周面には、周方向に等角度間隔で4箇所、正面視において略矩形をなす凹部124が一定深さで形成(凹設)されている。また、ホルダ120の小径円筒部121の先端(面)125の外周寄り部位にはテーパが付されている。
【0033】
一方、ホルダ120の内周面は、小径円筒部121、段部123、そして大径円筒部122に向けて、段付き状に拡径する横断面円形に形成されている。ただし、小径円筒部121の先端125には、セラミックヒータ110の先端部110bが略隙間なく突出可能に軸線O方向から見て(横断面において)矩形をなす開口126が形成されている。この開口126の横断面における矩形の短辺及び長辺は、それぞれセラミックヒータ110の厚み及び幅の各寸法に対応するように設定されている。そして、詳しくは図示しないが、横断面において、この開口126の各辺の中心が、上記した4箇所の凹部124の中心に対応するように形成されている。なお、セラミックヒータ110は、長手方向のリード部112,113(図3参照)側を小径円筒部121内に挿入し、発熱抵抗体114の埋設された先端部110b側をホルダ120の先端125から露出させ、その状態で、接着剤又は樹脂129を小径円筒部121の内周面127内に充填して固化させることにより、セラミックヒータ110はホルダ120の開口126内にシールを保持して固定されている。
【0034】
他方、大径円筒部122の内径は、内部電極20の先端部21の外径より若干大きく構成されており、その内周面128には本形態では2つの凹溝128bがその周方向に形成されている。しかして、このようなホルダ120が大径円筒部122側から内部電極20の先端部21に外嵌状に装着される際には、大径円筒部122の内周面128の2つの凹溝128bに装填されたそれぞれのシールリング(例えばゴム製のOリングパッキン)140を介して、その内周面128と内部電極20の外周面との間のシールが確保され、内部電極20の内部にこの間を通って測定対象をなす液が侵入することが防止されるように構成されている。また、ホルダ120の段部123の内周面には、環状の棚段部128cが形成されており、ホルダ120が内部電極20の先端部21に装着される際には、その先端部21の端面21bがこの棚段部128cに当接して軸線O方向の位置決めがされるように構成されている。なお絶縁性被膜23は、内部電極20の外周面において、内部電極20先端側の先端部21にてこのシールリング140が配置される位置よりも先端側から、後端側の基端部22にてOリング54が配置される位置にかけて形成されており、尿素水タンク(図示外)内にてレベル検知部70が尿素水溶液に浸漬されても、内部電極20が尿素水溶液に直接接触することがないようにされている。
【0035】
なお、ホルダ120は内部電極20への装着前において、セラミックヒータ110の端子119にはケーブル91の2本のリード線90の芯線がそれぞれ加締めまたは半田付けにより接合される。さらに絶縁性の保護部材95により、端子119とリード線90とが接合部位ごと覆われ保護される。そして、2つのリード線90は筒形状の内部電極20内を挿通され、上記回路基板60に接続されている。
【0036】
ホルダ120の先端側には、液体性状検出素子であるセラミックヒータ110の先端部の周囲を覆って保護するプロテクタ130が取付けられている。このプロテクタ130は、例えば金属板を深絞り成形により、有底円筒形状に形成されてている。これは、ヒータ110の露出部の保護部材であり、底部132と胴部133との間の稜角部分は曲面状に面取りされ、剛性が高められている。また、プロテクタ130の胴部133の外周上にて、本形態では周方向に等間隔となる4本の母線上に、それぞれ2つの円形に開口された測定対象をなす液の流通孔135が形成されている。そして、底部132にはその中心に同様に開口された流通孔136が形成されている。このようなプロテクタ130は、その胴部133の内径が、上記したホルダ120における小径円筒部121の外径と同じか若干大きくなるように設定されている。そして、プロテクタ130は、その胴部133のうち、ホルダ120に外嵌される基端(後端)又は基端寄り部位であって、周方向に等角度間隔で4箇所の部位には、その内側に突出すると共に弾性変形することで、ホルダ120における凹部124に嵌合可能の凸部137を備えている。この凸部137は、その端部を先端側に位置させて内側に斜めに突出するように、プロテクタ130自身の壁を切起こして形成されてなる突出片部とされ、舌片状の爪を呈している。なお、凸部137は、プロテクタ130を軸線O方向から見たとき、胴部133に設けた流通孔135の各母線の中間に位置するように形成されている。
【0037】
このプロテクタ130は、ホルダ120の先端125側の小径円筒部121に、その胴部133の基端部を外嵌して押込むことで凸部137を、外方に弾性変形させ、押込み後においてその変形を復元させる形で凹部124に嵌合させるように構成されており、その嵌合状態においてプロテクタ130はホルダ120に抜け止め状に、しかも軸線O回りに回転不能に取付けられるように構成されている。こうしてホルダ120にプロテクタ130が取付けられることで、発熱抵抗体114側がホルダ120から露出されたセラミックヒータ110は、プロテクタ130内に収容されている。
【0038】
前記したように、本形態のセンサでは、このような構成の液体性状検知部30を備えており、これは、内部電極20の先端部21にホルダ120が装着されることによって、レベル検知部70と絶縁された状態で連結されている。そして、図2に示したように、液体性状検知部30は、内部電極20の先端部21と共に、外筒電極10の内側と内部電極20の外側との間に介在するゴム製でリング状の電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80によって、次のようにして外筒電極10内で位置決め支持されている。
【0039】
すなわち、ゴムブッシュ80は、本形態では、図4〜図8に示すように、それ自体全体が環状をなすように構成されており、その内周面は、プロテクタ130の胴部133の外周面のうち、凸部137に対応する部位と、プロテクタ130を避けたホルダ120の大径円筒部122の外周面とに、軸線O方向の先後に跨るようにして、その胴部133と大径円筒部122との外周面に締り嵌め状に取付けられるように、内径が径違いの筒状をなし、その先端側の円筒部の内周面81が小径をなし、後端側の円筒部の内周面82が大径をなしている。そして、小径の内周面81は、その内径がプロテクタ130の胴部133の外径より若干小さくされており、大径の円筒部の内周面82は、その内径がホルダ120の大径円筒部122の外径より若干小さくされており、両者を接続するテーパー状の内周面83のテーパはホルダ120の段部123に対応するテーパとされている。そして、ゴムブッシュ80の小径の内周面81の形成部位は、大径の内周面82の形成部位よりも肉厚に形成されている。
【0040】
このように、ゴムブッシュ80の内周側の面は、ホルダ120およびプロテクタ130の外周面が締り嵌め状に嵌合するように形成された内径の異なる2つの内周面81,82と、両者を接続するテーパー状の内周面83とから構成される。ただし、その内周面81〜83上で、突起部87が形成された外周面89上の各母線に対応する位置には、小径の内周面81側から大径の内周面82側にかけて各内周面81,83,82上を連続する溝部84がそれぞれ溝設されている(図6,7参照)。
【0041】
また、本形態において使用している電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80は、その外周面89上にて周方向に等間隔となる3本の母線上に、外筒電極10の各開口部16にそれぞれ嵌合(係合)し、抜け防止及び回転防止として機能する突起部87が設けられている。本形態では、この突起部87は、正面は略円形とされているが、側面視において、後端側に向かって高さが低くなる鋸歯形状を呈しており、ゴムブッシュ80の外筒電極10の内側への圧入において、開口部16に嵌合しやすく、しかも抜け止め作用があるようにされている。なお、外周面89の周方向において各突起部87間には、それぞれ軸線O方向に沿った複数(本実施の形態では5本)の溝部88が溝設されている。
【0042】
このようなゴムブッシュ80は、ホルダ120が取付けられた内部電極20が外筒電極10の内側に挿入される前に、内周面82が大径をなす部位から、外筒電極10の内側にその先端側から押込まれるようにして圧入され、その外周面の突起部87を外筒電極10に設けられた開口部16に嵌合させて取り付けられている。すなわち、ホルダ120が取付けられた内部電極20は、ゴムブッシュ80を外筒電極10の内側に圧入して取付けた後で、挿入されている。その工程については後述するが、このように外筒電極10の内側に取り付けらたゴムブッシュ80の先端80a側であって外筒電極10の内側には、図2に示したように、このゴムブッシュ80をその先端80a側において支持するようにして位置決めするための位置決め部材150が取付けられている。
【0043】
この位置決め部材150は、図2、図8及び図9に示したように、本形態では、環状をなす円形板部からなる位置決め板部152と、その外周縁からその位置決め板部152と略直角で先端側に延びる脚部154と、その脚部154の先端において外向きに突出するフック156とを有している。ただし、各脚部154の先端は、縦に3分割されており、フック156は、その中央の脚部片154bの先端に設けられている。ここで、位置決め板部154を環状をなす円形板部としたのは、本形態ではその内側(内周面)153にホルダ120の先端部とともに、プロテクタ130の胴部133を挿通させるためと、図2、図10に示したように、ゴムブッシュ80の内周面に設けられた溝部84を介して、外筒電極10の内側と、位置決め板部152の先端側との液の流通を確保するためである。本形態では、位置決め板部152の内径は、溝部84の溝底を通る円の径と一致させている。なお、本形態では、位置決め部材150における脚部154とフック156は位置決め板部152の周方向において等角度間隔で3箇所設けられている。また、この位置決め板部152は、外径が外筒電極10の内径より小さ目とされ、脚部154は外筒電極10の軸線方向にその内周面に沿うように設定されている。このような位置決め部材150は、ゴムブッシュ80を取付けた後、その位置決め板部152を外筒電極10の内側に配置してゴムブッシュ80の先端80aを支持させるようにすると共に、フック156を外筒電極10の先端10aに係合させ、その状態で、各脚部154の少なくとも一部Wを外筒電極10と例えば抵抗溶接で固定している。
【0044】
なお、本形態のセンサ100は、前述したように、内部電極20は、パイプガイド55を介し2枚の押さえ板56,57により軸線O方向先端側に向け押圧されている。そして、図2に示したように、その内部電極20の先端部21に装着されたホルダ120の段部123は、ゴムブッシュ80の内周面83にて支持された状態にある。さらに、内部電極20は、ホルダ120およびプロテクタ130を介して、外筒電極10の先端において支持されているのであるが、上記したように、位置決め部材150によって位置決め保持されたゴムブッシュ80の内周面によって、外筒電極10の内側に弾性的に支持されている。
【0045】
このような構成の本形態のセンサ100によれば、上記したように、ゴムブッシュ80によって内部電極20の先端又は先端寄り部位を外筒電極10の内側にホルダ120およびプロテクタ130を介して、弾性的に支持させてなるものであることから、格別の部品点数の増大もなく、内部電極20をその先端において安定して支持できる。しかも、ゴムブッシュ80を用いているため、各電極等の寸法ないし組立上の誤差を吸収可能である。また、内部電極20の表面に形成される絶縁性被膜23に損傷を与えることもない。
【0046】
さらに、このようなセンサ100は、その組み立てにおいては、ホルダ120等を装着した内部電極20を、その先端のホルダ120側から、図11、及び図12に示したように組立て段階にある、取付部40の電極支持部41に基端部12が溶接された外筒電極10の内側に挿入し、プロテクタ130の胴部133と、ホルダ120の大径円筒部122を外筒電極10内に取付けられたゴムブッシュ80の内側に挿入することにより、ホルダ120等を介して、その先端又は先端寄り部位を弾性的に支持させることができる。したがって、組立も容易に行うことができる。しかも、この挿入時においては、図11、及び図12中に2点鎖線で示したように、内部電極20が傾斜等してその先端(本形態ではホルダ120およびプロテクタ130)が、ゴムブッシュ80の中心に位置せず、これを先端側に押すようなことがあっても、本形態では、ゴムブッシュ80の先端側であって外筒電極10の内側には、ゴムブッシュ80をその先端側において支持するようにして位置決めするための位置決め部材150が取付けられている。したがって、そのような場合であっても、ゴムブッシュ80が外筒電極10の先端側に押出されることもないし、突起部87がせん断されることも、開口部16から外れることもない。
【0047】
このように、本形態のセンサ100においては、内部電極20の外筒電極10の内側への挿入においては、その先端のホルダ120がゴムブッシュ80の内側に強く押込まれるようにしても問題を起こすこともないから、信頼性ないし安定性の高い内部電極20の支持が得られる。さらに、セラミックヒータ110付きのホルダ120が内部電極20の先端において移動するのを防止できるし、それにより、ホルダ120と内部電極20の間の液密を保持しているシールリング140によるシール性の低下防止を図ることもでき、センサの信頼性を著しく高めることができる。
【0048】
なお、上記した液状態検知センサ100自体の作用等について、以下に詳述する。このセンサ100が尿素水タンク(図示外)に取り付けられ使用されたとき、図2に示すように、外筒電極10内には、ゴムブッシュ80よりも軸線O方向先端側のB部と、後端側のC部とに、それぞれ外筒電極10の軸線O方向最先端部の開口とスリット15とを介して尿素水溶液が流入する。また、プロテクタ130内のD部には、液体流通孔135,136を介してB部より尿素水溶液が流入する。そして、B部とC部とに流入した尿素水溶液は、ゴムブッシュ80の溝部88と外筒電極10の内周面とで形成された流通路85や、溝部84とホルダ120の外周面とで形成された流通路86を介して流通される。さらに、プロテクタ130の液体流通孔135に、流通路86が連続している。これにより、流通路85,86を介してB部とC部との間およびD部とC部との間で尿素水溶液の流通が行われる。また、空の尿素水タンクに尿素水溶液を満たした場合にB部やD部に空気が残る虞があるが、この空気は流通路85,86を通じてC部に到達することができる。
【0049】
次に、本実施の形態の液状態検知センサ100により、尿素水溶液のレベルおよび濃度を検知する原理について説明する。まず、図13を参照し、レベル検知部70において尿素水溶液のレベルを検知する原理について説明する。図13は、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図である。
【0050】
液状態検知センサ100は、尿素水溶液を収容した尿素水タンク(図示外)に、その底壁側に外筒電極10および内部電極20の先端側を向けた状態で組み付けられる。つまり液状態検知センサ100のレベル検知部70は、尿素水タンク(図示外)内で容量の変化する尿素水溶液の変位方向(尿素水溶液のレベルの高低方向)を軸線O方向とし、外筒電極10および内部電極20の先端側が尿素水溶液の容量の少ない側(低レベル側)となるように、尿素水タンク(図示外)に組み付けられる。そして、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間の静電容量を測定し、両者間に存在する尿素水溶液が軸線O方向においてどれだけのレベルまで存在しているか検知している。これは周知のように、径方向の電位の異なる2点間において、その径の差が小さくなるほど静電容量の大きさが大きくなることに基づく。
【0051】
すなわち、図13に示すように、尿素水溶液で満たされていない部分においては、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、外筒電極10の内周面と絶縁性被膜23との間に介在する空気層の厚みに相当する距離(距離Fで示す)と、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離(距離Gで示す)との合計の距離(距離Eで示す)となる。一方、尿素水溶液が満たされた部分において、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、尿素水溶液が導電性を示すため外筒電極10と尿素水溶液との電位がほぼ等しくなることから、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離Gとなる。
【0052】
換言すれば、尿素水溶液で満たされていない部分におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がFで空気を誘電体(不導体)とするコンデンサの静電容量と、電極間の距離がGで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサとを直列に接続したコンデンサの合成の静電容量といえる。また、尿素水溶液で満たされた部分におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がGで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサの静電容量といえる。そして両者を並列に接続したコンデンサの静電容量が、レベル検知部70全体の静電容量として測定されることとなる。
【0053】
ここで、絶縁性被膜23を挟む電極間の距離Gと比べ、空気層を挟む電極間の距離Fは大きく構成されているため、空気を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量は、絶縁性被膜23を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量よりも小さい。このため、尿素水溶液で満たされていない部分の静電容量の変化よりも尿素水溶液で満たされた部分の静電容量の変化の方が大きく、外筒電極10および内部電極20からなるコンデンサ全体としての静電容量は、尿素水溶液のレベルに比例する。なお、本実施の形態では、尿素水溶液のレベル検知を回路基板60に搭載したマイクロコンピュータを含むレベル検知回路で行っており、レベル検知回路にて得られたレベル情報信号を、コネクタ62を介して外部回路(例えば、ECU)に対し出力している。外部回路は、入力されるレベル情報信号に基づき、尿素水溶液のレベルが適正か否かを判定し、適正では無い場合に運転者のその旨を通知する処理を適宜行う。
【0054】
次に、液体性状検知部30を構成するセラミックヒータ110において、尿素水溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知する原理について説明する。一般に、液体に含まれる特定成分の濃度によって、液体の熱伝導率が異なることが知られている。つまり、発熱抵抗体を用い、その周囲の液体を一定時間加熱した場合、濃度の異なる液体では温度上昇率が異なってくる。また、発熱抵抗体に定電流を流した場合に、発熱抵抗体の周囲の温度の上昇に比例して、発熱抵抗体の抵抗値が上昇することも知られている。このことから発熱抵抗体を用い、その周囲の液体を一定時間加熱した場合に、発熱抵抗体の抵抗値変化の度合いが求まれば、周囲の液体の温度変化の度合いが求まり、液体の濃度を得ることができる。
【0055】
本実施の形態の液状態検知センサ100では、発熱抵抗体114に定電流を流すように構成されており、発熱抵抗体114の両端には自身の抵抗値の大きさに応じた検出電圧Vdが発生する。なお、発熱抵抗体114の一端の電位をPinとし、発熱抵抗体114の他端の電位をPoutとしたとき、検出電圧Vdは、電位Pinと電位Poutの差分で求められる。具体的には、まず、発熱抵抗体114への通電開始直後の検出電圧Vdを測定し、一定時間後(例えば700ms後)に、再度検出電圧Vdの測定を行う。そして、予め実験等により作成したテーブル(図示外)を用い、上記2つの検出電圧Vdの差分値をパラメータとして、尿素水溶液の濃度の決定を行っている。なお、本実施の形態では、尿素水溶液のレベル検知と同様に、尿素水溶液の濃度検知(算出)を回路基板60に搭載したマイクロコンピュータを含む濃度検知回路で行っており、濃度検知回路にて得られた濃度情報信号を、コネクタ62を介して外部回路(例えば、ECU)に対し出力している。外部回路は、入力された濃度情報信号に基づき、尿素水溶液の濃度が適正範囲にあるか否かを判定し、適正範囲に無い場合に運転者にその旨を通知する処理を適宜行う。
【0056】
なお、上記の本実施の形態では、セラミックヒータ110の発熱抵抗体114とリード部112,113とは同一の材料を用いパターンの断面積を異ならせたことによって主に発熱抵抗体114で発熱が行われるようにしたが、それぞれの材質を異ならせてもよい。また、本実施の形態ではセラミックヒータ110の発熱抵抗体114の抵抗値を用い、テーブル参照により尿素水溶液中の尿素濃度を求めたが、抵抗値を変数として、予め実験等により求めた上記関係を表す計算式に代入することで、尿素水溶液の濃度を算出してもよい。
【0057】
上記した実施の形態では、電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80による内部電極20の先端又は先端寄り部位における支持を、センサ100が尿素水溶液中の尿素の濃度検出を行う液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110を含む液体性状検知部30を有する構成に基づいて、プロテクタ130及びホルダ120といった別部材を介して行ったものを例示したが、本発明では、センサによってはこのような別部材を介することなく、内部電極20の先端又は先端寄り部位を電極支持用弾性部材にて直接、弾性的に支持してもよい。図14は、その1例を示したもので、上記した実施の形態における液体性状検知部30を保持しないセンサとして具体化したもので、液体性状検知部30の構成に関係する、セラミックヒータ110、プロテクタ130及びホルダ120などを省略した点のみが、相違するだけであるため、同一部位には、同一の符号を付すに止め、詳細な説明は省略する。なお、図14に示したものでは、内部電極20を筒体に代えて中実の丸棒からなるもので具体化したものである。また、このものでは、内部電極20の先端又は先端寄り部位をゴムブッシュ80の大径の内周面82にて締り嵌め状にして、弾性的に支持するようにしたものであり、取り付け状態では内部電極20の先端面がゴムブッシュ80に押付けられないように設定されている。
【0058】
また、上記形態では、電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80の溝部84,88を、流通路とすると共に、位置決め部材150の位置決め板部152の内側と、その外周縁と外部電極10の内周面との隙間S(図10参照)とを利用して、外筒電極10の内側と内部電極20の外側との間と、位置決め部材152の先端側とに、液体が流通するように流通路を形成したため、上記もしたように、ゴムブッシュ80の内側においても液位の低下(変動)が確保されるので、センサの全長(全高)が同じであっても、測定範囲を広げることができる。なお、上記形態において使用した電極支持用弾性部材であるゴムブッシュ80の溝部84,88は、ゴムブッシュ80の内周側や外周側に溝状に設けたが、肉厚部分を貫通する貫通孔として形成してもよい。さらに、溝部84,88のいずれかを省略してゴムブッシュ80を形成してもよい。また、外筒電極10や内部電極20を円筒形状としたが、角筒状であってもよい。
【0059】
位置決め部材150は、上記においては、リング状の位置決め板部152と、その外周縁に脚部154を設けた形状としたが、電極支持用弾性部材の先端側であってこの電極支持用弾性部材をその先端側において支持するようにして位置決めするために外部電極10の内側に取り付けられるものであればよく、その形状、取付け手段は限定されるものではない。単なるリング形状として、これを外部電極10の内側に溶接で取り付けるようにしてもよいし、外部電極10の内側にネジ込み方式で取り付けるようにしてもよい。さらに、位置決め部材は、単なる円板又は、円柱状のものとしてもよい。そして、このようなものにおいて、外筒電極の内側と内部電極の外側との間と、位置決め部材の先端側とに、液体が流通するように流通路を形成する場合には、適所に貫通孔を設ければよい。
【0060】
なお、上記センサでは尿素水を測定対象としているため、内部電極20に絶縁性被膜23を形成したが、この絶縁性被膜23としては、液体の特性(例えば、酸化・還元性など)にあわせて腐食されにくい材質のものを選択するとよい。なお、絶縁性被膜の形成をディッピングや静電粉体塗装により行ったが、内部電極との間で空気層の混入が全くない状態となるようにすれば、絶縁チューブを用いて絶縁性被膜の形成を行ってもよい。
【0061】
なお、液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110は、液体に含まれる特定成分(例えば、尿素)の濃度検出以外に、液体の温度や液体の下限レベルの検知を検出するために用いられてもよい。例えば、セラミックヒータ110にて液体の温度を検出する場合には、発熱抵抗体114に定電流を流し始めた直後の当該発熱抵抗体114の抵抗値の大きさ(より詳細には、発熱抵抗体114の両端に生じる検出電圧Vdの大きさ)に基づき、液体の温度を検出することができる。発熱抵抗体114の通電直後の抵抗値は、液体の温度に対応した値を示していることから、このような手法により液体の温度を検出することができるのである。また、セラミックヒータ110の周囲に液体が存在する場合と存在しない場合とでは、発熱抵抗体114の抵抗値の変化挙動が大きく異なることから、この違いを利用して液体の下限レベルの検知を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の液状態検知センサの実施の形態を示す縦断正面図。
【図2】図1の液状態検知センサの先端部の拡大図。
【図3】セラミックヒータのヒータパターンを示す模式図。
【図4】図1のセンサに使用したゴムブッシュを斜め下方からみた斜視図。
【図5】図1のセンサに使用したゴムブッシュの側面図。
【図6】図1のセンサに使用したゴムブッシュの平面図。
【図7】図6の一点鎖線A−Aにおいて矢視方向からみたゴムブッシュの断面図。
【図8】外部電極の先端寄り部位と、ゴムブッシュ及び位置決め部材を示す分解斜視図。
【図9】位置決め部材の拡大斜視図。
【図10】図1に示す液状態検知センサを先端側から軸線O方向に見た拡大図。
【図11】センサの組立て状態を説明する縦断正面図。
【図12】図11の要部拡大図。
【図13】支持外筒電極と内部電極とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図。
【図14】本発明の液状態検知センサの別例の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0063】
10 外筒電極
10a 外筒電極の先端
16 開口部16
20 内部電極
40 取付け部
70 レベル検知部
80 ブッシュ(電極支持用弾性部材)
80a ブッシュの先端
85,86 流通路
87 突起部
100 液状態検知センサ
150 位置決め部材
152 位置決め板部
154 脚部
156 フック
O 軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容容器内に収容される液体の状態を検知するための液状態検知センサであって、
導体からなる筒状の外筒電極と、この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、この両電極の間で前記収容容器内に収容される前記液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部と、
該レベル検知部の長手方向の後端側に位置し、前記収容容器に液状態検知センサを取付けるための取付け部と、
前記内部電極の先端又は先端寄り部位の外周面を直接又は間接に包囲するようにして支持する環状部を有する弾性体からなる電極支持用弾性部材であって、前記外筒電極の内側に圧入されてなる電極支持用弾性部材とを備えており、
前記外筒電極は、その先端寄り部位に径方向に貫通する開口部を備えている一方、
前記電極支持用弾性部材は、その外周面に前記開口部に嵌合可能の突起部を備えていると共に、前記外筒電極の内側に圧入されて該突起部を前記開口部に嵌合することで取付けられており、
さらに、該電極支持用弾性部材の先端側であって前記外筒電極の内側には、該電極支持用弾性部材をその先端側において位置決めするための位置決め部材が取付けられており、
前記内部電極を、その先端側から前記外筒電極の内側に挿入し、前記内部電極の先端又は先端寄り部位を、直接又は別部材を介して、前記電極支持用弾性部材の前記環状部の内側に挿入して弾性的に支持させてなることを特徴とする液状態検知センサ。
【請求項2】
前記外筒電極の内側と前記内部電極の外側との間と、前記位置決め部材の先端側とに前記液体が流通するように、前記外筒電極の内側にある前記電極支持用弾性部材と前記位置決め部材とに連なる流通路が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液状態検知センサ。
【請求項3】
前記位置決め部材は、外径が前記外筒電極の内径より小さい位置決め板部と、該位置決め板部の周縁から該位置決め板部と略直角で先端側に延びる脚部と、その脚部の先端において外向きに突出するフックとを有しており、該位置決め板部を前記外筒電極の内側に配置して前記電極支持用弾性部材の先端を支持させるようにすると共に、前記フックを前記外筒電極の先端に係合させて、前記脚部の少なくとも一部を前記外筒電極の内周面に溶接してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状態検知センサ。
【請求項1】
収容容器内に収容される液体の状態を検知するための液状態検知センサであって、
導体からなる筒状の外筒電極と、この外筒電極内でその軸線方向に沿って設けられた導体からなる内部電極とを有し、この両電極の間で前記収容容器内に収容される前記液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部と、
該レベル検知部の長手方向の後端側に位置し、前記収容容器に液状態検知センサを取付けるための取付け部と、
前記内部電極の先端又は先端寄り部位の外周面を直接又は間接に包囲するようにして支持する環状部を有する弾性体からなる電極支持用弾性部材であって、前記外筒電極の内側に圧入されてなる電極支持用弾性部材とを備えており、
前記外筒電極は、その先端寄り部位に径方向に貫通する開口部を備えている一方、
前記電極支持用弾性部材は、その外周面に前記開口部に嵌合可能の突起部を備えていると共に、前記外筒電極の内側に圧入されて該突起部を前記開口部に嵌合することで取付けられており、
さらに、該電極支持用弾性部材の先端側であって前記外筒電極の内側には、該電極支持用弾性部材をその先端側において位置決めするための位置決め部材が取付けられており、
前記内部電極を、その先端側から前記外筒電極の内側に挿入し、前記内部電極の先端又は先端寄り部位を、直接又は別部材を介して、前記電極支持用弾性部材の前記環状部の内側に挿入して弾性的に支持させてなることを特徴とする液状態検知センサ。
【請求項2】
前記外筒電極の内側と前記内部電極の外側との間と、前記位置決め部材の先端側とに前記液体が流通するように、前記外筒電極の内側にある前記電極支持用弾性部材と前記位置決め部材とに連なる流通路が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の液状態検知センサ。
【請求項3】
前記位置決め部材は、外径が前記外筒電極の内径より小さい位置決め板部と、該位置決め板部の周縁から該位置決め板部と略直角で先端側に延びる脚部と、その脚部の先端において外向きに突出するフックとを有しており、該位置決め板部を前記外筒電極の内側に配置して前記電極支持用弾性部材の先端を支持させるようにすると共に、前記フックを前記外筒電極の先端に係合させて、前記脚部の少なくとも一部を前記外筒電極の内周面に溶接してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状態検知センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−178243(P2007−178243A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376613(P2005−376613)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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