説明

減衰力調整式油圧緩衝器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車等の車両の懸架装置に装着される減衰力調整式油圧緩衝器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両の懸架装置に装着される油圧緩衝器には、路面状況、走行状況等に応じて乗り心地や操縦安定性をよくするために減衰力を適宜調整できるようにした減衰力調整式油圧緩衝器がある。
【0003】従来、この種の油圧緩衝器としては、例えば実開昭58−70533号公報に記載されたもののように、油液を封入したシリンダ内に、ピストンロッドが連結されたピストンを摺動可能に嵌装し、このピストンにより画成されるシリンダ内の2室を第1および第2の油液通路で連通させ、第1の油液通路には比較的大きな減衰力を発生する減衰力発生機構(オリフィス、ディスクバルブ等)を設け、第2の油液通路には比較的減衰力の小さい減衰力発生機構および第2の油液通路を開閉する減衰力調整弁を設けたものがある。
【0004】この構成により、減衰力調整弁を開いた場合、ピストンロッドの伸縮にともなうピストンの摺動によって、シリンダ内の油液が主に第2の油液通路を流通して伸び縮み側共に比較的小さな減衰力を発生し、減衰力特性はソフト特性となる。減衰力調整弁を閉じた場合、ピストンロッドの伸縮にともなうピストンの摺動によって、シリンダ内の油液が第1の油液通路のみを流通して伸び縮み側共に比較的大きな減衰力を発生し減衰力特性はハード特性となる。このように、減衰力調整弁を開閉することにより減衰力特性を切換えることができる。
【0005】また、制御装置およびアクチュエータを用いて、路面状況、走行状況等に応じて上記減衰力調整式油圧緩衝器の減衰力特性を自動的に切換えることにより乗り心地および操縦安定性を向上させるようにしたサスペンション制御装置がある。
【0006】この種のサスペンション制御装置において、減衰力調整式油圧緩衝器の減衰力特性を、そのピストンロッドが所定の中立位置に向かってストロークするときハード特性とし、中立位置から離れる方向にストロークするときソフト特性とすることにより、車体のバウンシングを効果的に制御することができ、乗り心地を向上させることができることが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなバウンシング制御を上記従来の減衰力調整式油圧緩衝器を用いて行う場合、ピストンロッドの伸び側でハード特性、縮み側でソフト特性など、伸び側と縮み側とで異なる特性が必要なときは、伸縮のストローク方向が変わる都度、減衰力調整弁を開閉させねばならないが、ピストンロッドのストローク方向の変化を検出して制御装置が切換信号を出力しアクチュエータが作動して減衰力調整弁を開閉するまで通常15〜20msec程度時間がかかるため、実際の走行に対して充分な制御を行うことが困難であるという問題を生じる。
【0008】本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ピストンロッドのストロークの方向の変化にともない減衰力特性を迅速に切換えるため、伸び側と縮み側とで異なる減衰力特性の組み合わせを選択できるようにした減衰力調整式油圧緩衝器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、第1の発明に係る減衰力調整式油圧緩衝器は、油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装され前記シリンダ内を2室に画成するピストンと、一端側が前記ピストンに連結され、他端側が前記シリンダの外部まで延ばされたピストンロッドと、前記2室を連通し減衰力発生機構を有する主油液通路と、前記減衰力発生機構をバイパスして前記2室を連通するバイパス通路と、該バイパス通路に直列に設けられ、互いに逆方向の流通を許容する第1の逆止弁と第2の逆止弁と、該第1の逆止弁をバイパスする第1の油液通路と、前記第2の逆止弁をバイパスする第2の油液通路と、前記第1の油液通路の通路面積を可変とする第1の減衰力調整弁と、前記第2の油液通路の通路面積を可変とする第2の減衰力調整弁とを備え、前記第1及び第2の減衰力調整弁は、前記第1及び第2の油液通路の通路面積を両方とも開、一方が開で他方が閉または一方が閉で他方が開となるように選択的に調整可能になっていることを特徴とする。
【0010】また、第2の発明に係る減衰力調整式油圧緩衝器は、油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装され該シリンダ内を2室に画成する油界画成部材と、一端側が該油界画成部材に連結され、他端側が前記シリンダの外部まで延ばされたロッドと、前記2室を連通する主油液通路と、該主油液通路中に設けられ減衰力を発生する第1の減衰力発生機構と、前記主油液通路中に前記第1の減衰力発生機構と直列に設けられ減衰力を発生する第2の減衰力発生機構と、前記第1の減衰力発生機構をバイパスする第1のバイパス通路と、前記第2の減衰力発生機構をバイパスする第2のバイパス通路と、前記第1、第2のバイパス通路のそれぞれに設けられ互いに異なる方向の流通を許容する第1、第2の逆止弁と、前記第1のバイパス通路の通路面積を可変とする第1の減衰力調整弁と、前記第2のバイパス通路の通路面積を可変とする第2の減衰力調整弁とを備え、前記第1及び第2の減衰力調整弁は、前記第1及び第2の油液通路の通路面積を両方とも開、一方が開で他方が閉または一方が閉で他方が開となるように選択的に調整可能になっていることを特徴とする。
【0011】
【作用】このように構成したことにより、第1の発明においては、第1、第2の減衰力調整弁により、第1、第2の油液通路の通路面積が調整され、該第1、第2の油液通路が開いた状態では、第1、第2の油液通路を介してバイパス通路が連通され、伸び、縮み行程共に油液が主油液通路およびバイパス通路を流通して比較的小さな減衰力が発生する。また、第1、第2の減衰力調整弁により通路面積を縮小して閉じた場合、第1、第2の逆止弁および第1、第2の減衰力調整弁によってバイパス通路が閉鎖され、伸び、縮み行程共に油液が主油液通路のみを流通して比較的大きな減衰力が発生する。第1、第2の減衰力調整弁の一方を開き、他方を閉じた場合、閉じた側の逆止弁によってバイパス通路は一方向のみの油液の流通を許容するので、バイパス通路に許容方向の油液の流通させる行程では、油液が主油液通路およびバイパス通路を流通して比較的小さな減衰力が発生し、この反対の行程では、前記逆止弁によってバイパス通路が閉鎖され、油液が主油液通路のみを流通して比較的大きな減衰力が発生する。
【0012】また、第2の発明においては、第1、第2の減衰力調整弁により、第1、第2のバイパス通路の通路面積が調整され、該第1、第2のバイパス通路が開いた状態では、第1または第2の逆止弁のどちらか一方が伸び縮み両行程でそれぞれ開かれ、第1のバイパス流路または第2のバイパス流路を通り油液が2室間を流れる。よって、第1あるいは第2の減衰力発生機構のどちらか一方で減衰力を発生し、伸び縮み共に比較的小さな減衰力を発生する。第1または第2の減衰力調整弁のどちらか一方を閉じた場合、伸びあるいは縮みの一方の行程では、第1または第2のバイパス通路が開かれ、第1あるいは第2の減衰力発生機構のどちらか一方で減衰力を発生し比較的小さな減衰力を発生する。また、伸びあるいは縮みの他方の行程では、第1または第2減衰力調整弁と第1または第2逆止弁により第1または第2のバイパス通路が閉じられ、第1、第2の減衰力発生機構の両方を通り比較的大きな減衰力を発生する。第1、第2の減衰力調整弁の両方を閉じた場合、第1、第2のバイパス通路が閉じられ、伸び縮み両行程で第1、第2の減衰力発生機構の両方を通り比較的大きな減衰力を発生する。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。第1実施例について図1ないし図3を用いて説明する。
【0014】図1に示すように、減衰力調整式油圧緩衝器1は、油液が封入されたシリンダ2内にピストン3が摺動可能に嵌装されており、このピストン3によってシリンダ2内がシリンダ上室2aとシリンダ下室2bとの2室に画成されている。ピストン3には、先端がシリンダ2の外部まで延びるピストンロッド4の基端側が貫通されており、ピストンロッド4は、その基端部に円筒状の通路部材5が螺着されてピストン3に連結されている。シリンダ2には、ピストンロッド4がシリンダ2に侵入、退室した分の油液の出入りを補償するリザーバ室(図示せず)が設けられている。
【0015】ピストン3には、シリンダ上室2aとシリンダ下室2bを連通させる主油液通路6が設けられており、ピストン3の両端面には、主油液通路6内の油液の流動を制御して減衰力を発生するオリフィスおよびディスクバルブからなる減衰力発生機構としての第1の減衰力発生機構7(減衰力大)が設けられいる。
【0016】ピストンロッド4には、一端側がシリンダ上室2aに連通し、他端側がシリンダ下室2b側の通路部材5内に連通する油液通路8が設けられており、油液通路8と通路部材5とでシリンダ上室2aとシリンダ下室2bとを連通させるバイパス通路9が構成されている。
【0017】通路部材5のシリンダ下室2b側の開口部には、バイパス通路9と連通する油液通路10を有するバルブ本体11が嵌合されており、バルブ本体11の両端には、油液通路10内の油液の流動を制御して減衰力を発生するオリフィスおよびディスクバルブからなる第2の減衰力発生機構12(減衰力小)が設けられている。
【0018】通路部材5内には、円筒状のガイド部材13が嵌合されている。ガイド部材13のシリンダ上室2a側の端部には、ガイド部材13内側からシリンダ上室2a側への油液の流通を許容し、その反対方向の油液の流通を阻止する第1の逆止弁としての逆止弁14が設けられており、ガイド部材13のシリンダ下室2b側の端部にはガイド部材13内側からシリンダ下室2b側への油液の流通を許容し、その反対方向の油液の流通を阻止する第2の逆止弁としての逆止弁15が設けられている。
【0019】通路部材5とガイド部材13との間には、バイパス通路9内において、シリンダ上室2a側に連通する油液通路16とシリンダ下室2b側に連通する油液通路17とが形成されており、ガイド部材13の側壁には、油液通路16に連通する孔18および油液通路17に連通する孔19が設けられており、油液通路16と孔18とで逆止弁14をバイパスする第1の油液通路を構成し、油液通路17と孔19とで逆止弁15をバイパスする第2の油液通路を構成している。
【0020】ガイド部材13内には、第1および第2の減衰力調整弁として有蓋筒状のシャッタ20が回転可能に嵌合されている。シャッタ20の蓋部には、シャッタ20の内側と逆止弁14側とを連通させる油液通路21が設けられている。シャッタ20の側壁には、一対のスリット22が形成されており、シャッタ20を回転させスリット22をガイド部材13の孔に18,19に整合させるか否かにより第1および第2の油液通路の通路面積を可変し、該第1および第2の油液通路を開閉できるようになっている。
【0021】図2に示すように、ガイド部材13の孔18と19とは、ガイド部材13の中心から互いに異なる方向に向かって開口されており、シャッタ20が位置Aにある場合にはスリット22と孔18,19とが整合し、位置Bにある場合にはスリット22と孔18とだけが整合し、位置Cにある場合にはスリット22と孔19とだけが整合するようになってる。シャッタ20の底部には、操作ロッド23が連結され、操作ロッド23は逆止弁14を貫通してピストンロッド4に沿ってその外部まで延ばされており、減衰力調整式油圧緩衝器1の外部からシャッタ20を回転させられるようになっている。
【0022】以上のように構成した第1実施例の作用について次に説明する。減衰力調整式油圧緩衝器1の外部から操作ロッド23を操作してシャッタ20を回転させることにより減衰力特性を切換えることができる。
【0023】図2に示すように、シャッタ20が位置Aにある場合、孔18とスリット22とが整合することにより油液通路16および孔18によって逆止弁14がバイパスされ、また、孔19とスリット22とが整合することにより油液通路17および孔19によって逆止弁15がバイパスされる。このため、バイパス通路9が常時連通されるので、伸び、縮み行程共に、ピストンロッド4の伸縮にともなうピストン3の摺動によりシリンダ2内の油液が主油液通路6およびバイパス通路9を流通して第1の減衰力発生機構7および第2の減衰力発生機構12によって比較的小さな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図3中にAで示すように伸び側、縮み側共にソフト特性となる。
【0024】シャッタ20が位置Bにある場合、孔18とスリット22とが整合することにより油液通路16および孔18によって逆止弁14がバイパスされる。一方、孔19は、シャッタ20によって閉鎖される。このため、バイパス通路9は、逆止弁15を介して連通されることになり、シリンダ上室2a側からシリンダ下室2b側への油液の流通を許容し、その反対方向の油液の流通を阻止することになる。よって、ピストンロッド4の伸び行程時は、ピストン3の摺動によりシリンダ2内の油液が主油液通路6およびバイパス通路9を流通して第1の減衰力発生機構7および第2の減衰力発生機構12によって比較的小さな減衰力が発生する。一方、縮み行程時は、バイパス通路9の油液の流通が阻止されるので、ピストン3の摺動によってシリンダ2内の油液が主油液通路6のみを流通して第1の減衰力発生機構7によって比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図3中にBで示すように伸び側はソフト特性となり、縮み側はハード特性となる。
【0025】シャッタ20が位置Cにある場合、孔18は、シャッタ20により閉鎖される。一方、孔19とスリット22とが整合することにより油液通路17および孔19によって逆止弁15がバイパスされる。このため、バイパス通路9は、逆止弁14を介して連通されることになり、シリンダ下室2b側からシリンダ上室2a側への油液の流通を許容し、その反対方向の油液の流通を阻止することになる。よって、ピストンロッド4の縮み行程時は、ピストン3の摺動によりシリンダ2内の油液が主油液通路6およびバイパス通路9を流通して第1の減衰力発生機構7および第2の減衰力発生機構12によって比較的小さな減衰力が発生する。一方、伸び行程時は、バイパス通路9の油液の流通が阻止されるので、ピストン3の摺動によってシリンダ2内の油液が主油液通路6のみを流通して第1の減衰力発生機構7によって比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図3中にCで示すように伸び側はハード特性となり、縮み側はソフト特性となる。
【0026】このようにして、シャッタ20を回転させてその位置を変化させるにより、減衰力調整式油圧緩衝器1の減衰力特性を位置A:伸び側/ソフト 縮み側/ソフト位置B:伸び側/ソフト 縮み側/ハード位置C:伸び側/ハード 縮み側/ソフトの3種類の組合わせの中から選択的に切換えることができる。なお、シャッタ20により孔18および19を閉じてバイパス通路9を閉鎖することにより、伸び縮み両側でハード特性とすることも可能である。
【0027】なお、上記第1実施例ではオリフィスおよびディスクバルブからなる第2の減衰力発生機構12を設けたが、この限りでなく、第2の減衰力発生機構12を省略し、孔18、19をオリフィスとしてもよい。また、特に低い減衰力(減衰力がゼロに近い)が必要な場合には、第2の減衰力発生機構を特に設けることなく、バイパス通路内の流体抵抗を第2の減衰力発生機構とするなどしてもよい。また、上記第1実施例の逆止弁14、15の向きは互いに異なる方向を向いていればよく、逆止弁14、15の向きを逆にしてもよい。
【0028】なお、上記第1実施例では、シャッタ20により、孔18,19を開閉する例を示したが、シャッタ20を孔18,19の全開と全閉との間の任意の位置で止めて孔18,19とシャッタ20のスリット22とで形成される開口部の通路面積を調整することにより、任意の減衰力を発生させることも可能である。この場合、孔18,19を後述する図15に示す孔84のような異形の孔とすることにより、孔18,19とシャッタ20のスリット22とで形成される開口部の通路面積を容易に連続的に変化させることができ、オリフィス特性を連続的に変化させることができる。また、シャッタ20には、スリット22の代わりに他形状の開口部を設けるようにしてもよい。
【0029】次に、第2実施例として、減衰力特性を連続的に変化できるようにした減衰力調整式油圧緩衝器について説明する。なお、本実施例は、上記第1実施例に対してガイドおよびシャッタの開口部が異なるので、以下、第1実施例のものと同様の部材には同一の番号を付し、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0030】図4に示すように、第1実施例と同様に、通路部材5内には、円筒状のガイド部材13a が嵌合されている。そして、ガイド部材13a の一端部には、ガイド部材13a 内からシリンダ上室2a側への油液の流通を許容し、その反対方向の流通を阻止する第1の逆止弁としての逆止弁14a が設けられ、他端部には、ガイド部材13a 内からシリンダ下室2b側への油液の流通を許容し、その反対方向の流通を阻止する第2の逆止弁としての逆止弁15a が設けられている。
【0031】通路部材5とガイド部材13a との間には、バイパス通路9内において、シリンダ上室2a側に連通する油液通路16a とシリンダ下室2b側に連通する油液通路17aとが形成されており、ガイド部材13a の側壁には、油液通路16a に連通する一対の孔18a および油液通路17a に連通する一対の孔19a が設けられている。そして、油液通路16a と孔18a とで逆止弁14a をバイパスする第1の油液通路を構成し、油液通路17と孔19a とで逆止弁15a をバイパスする第2の油液通路を構成している。
【0032】ガイド部材13a 内には、第1および第2の減衰力調整弁として円筒状のシャッタ20a が回転可能に嵌合されている。シャッタ20a の側壁には、ガイド部材13aの孔18a に対向させて一対の開口部22a が設けられ、また、孔19a に対向させて一対の開口部22b が設けられている。開口部22a ,22b は、それぞれ、シャッタ20a の周方向に沿って延ばされて、開口部22a は一側にいくにつれて拡径される略くさび形に形成されており、開口部22b は、これと反対側にいくにつれて拡径される略くさび形に形成されている。そして、シャッタ20a を回転させることにより、孔18a と開口部22a との整合によって形成される連通路面積が変化して前記第1の油液通路の通路面積が調整され、また、孔19a と開口部22b との整合によって形成される連通路面積が変化して前記第2の油液通路の通路面積が調整されるようになっている。この場合、孔18a と開口部22a との連通路が全開のとき孔19a と開口部22b との連通路が全閉となり、この状態からシャッタ20a を一側に回転させるにつれて孔18a と開口部22a との連通路面積が小さくなり、孔19aと開口部22b との連通路面積が大きくなり、孔18a と開口部22a との連通路が全閉のとき孔19a と開口部22b との連通路が全開となるようになっている。
【0033】シャッタ20a には、操作ロッド23a が連結され、操作ロッド23a は逆止弁14aを貫通してピストンロッド4に沿ってその外部まで延ばされており、当該減衰力調整式油圧緩衝器の外部からシャッタ20a を回転させられるようになっている。また、シャッタ20a は、3つの部材20aA,20aBおよび20aCを操作ロッド23a により接合して構成されている。なお、図中、23b はシャッタ20a を小さいトルクで回転可能に支持する軸受であり、その内周部には油液通路が形成されている。
【0034】また、本実施例では、第1実施例の第2の減衰力発生機構12の代わりに油液通路10のシリンダ下室2b側からシリンダ上室2a側への油液の流通を許容する逆止弁12a が設けられている。
【0035】以上のように構成した第2実施例の作用について次に説明する。操作ロッド23a を外部から操作してシャッタ20a を回転させることにより減衰力特性を切換えることができる。
【0036】シャッタ20a を回転させて孔18a と開口部22a との連通路を全開、孔19a と開口部22b との連通路を全閉とした場合、ピストンロッド4の伸び行程時は、バイパス通路9内において、シリンダ上室2a側の油液は、逆止弁14a を閉じて油液通路16a 、孔18a および開口部22a を流通し、さらに、逆止弁15a を開いて油液通路10を通ってシリンダ下室2b側へ流れる。よって、孔18a と開口部22a との通路面積および減衰力発生機構12によって小さな減衰力が発生する。一方、ピストンロッド4の縮み行程時は、逆止弁15a が閉じ、孔19a と開口部22b との連通路が閉じているのでバイパス通路9が閉鎖される。よって、油液が主油液通路6のみを流通して減衰力発生機構7によって大きな減衰力が発生する。したがって、減衰力特性は、図5中にAで示すように、伸び側はソフト特性となり、縮み側はハード特性となる。
【0037】シャッタ20a を上記の位置から一側へ回転させ、孔18a と開口部22a との連通路面積を小さくし、孔19a と開口部22b との連通路を開いた場合、ピストンロッドの伸び行程時は、上記と同様にして、バイパス通路9内において、シリンダ上室2a側の油液がシリンダ下室2b側へ流れ、孔18a と開口部22a との連通路面積が小さくなった分だけ減衰力が大きくなる(バルブ特性の傾きが大きくなる)。一方、ピストンロッド4の縮み行程時は、バイパス通路9内において、シリンダ下室2b側の油液は、逆止弁12a を開き、逆止弁15a を閉じて油液通路17a 、孔19aおよび開口部22b を流通し、さらに、逆止弁14a を開いてシリンダ上室2a側へ流れる。よって、孔19a の開口部22b にいより開口された部分がオリフィスとなり、その連通路面積に応じた小さな減衰力(オリフィス特性)が発生する。したがって、減衰力特性は、図5中にBで示すように、伸び側、縮み側ともにミディアム特性となる。
【0038】シャッタ20a を上記の位置からさらに一側へ回転させ、孔18a と開口部22a との連通路を全閉、孔19a と開口部22b との連通路を全開とした場合、ピストンロッド4の伸び行程時は、逆止弁14a が閉じ、孔18a と開口部22a との連通路が閉じているのでバイパス通路9が閉鎖される。よって、油液が主油液通路6のみを流通して減衰力発生機構7によって大きな減衰力が発生する。一方、ピストンロッド4の縮み行程時は、上記と同様にして、バイパス通路9内において、シリンダ下室2b側の油液がシリンダ上室2a側へ流れ、孔19a と開口部22b との連通路面積が大きくなった分だけ減衰力(オリフィス特性)が小さくなる。したがって、減衰力特性は、図5中にCで示すように、伸び側はハード特性となり、縮み側はソフト特性となる。
【0039】このように、第1実施例と同様に、伸び側と縮み側とで異なる減衰力特性を設定することができ、さらに、シャッタ20a の回転角に応じて孔18a と開口部22a、孔19a と開口部22b の連通路面積を連続的に変化させることができるので、伸び側および縮み側のバイパス通路9の通路面積を変化させて減衰力特性を連続的に調整することができる。なお、シャッタ20a により孔18a および孔19a を閉じてバイパス通路9を閉鎖することにより、伸び縮み両側でハード特性とすることもできる。
【0040】次に、第1実施例の減衰力調整式油圧緩衝器1を用いたセミアクティブサスペンション装置のバウンシング制御の一例について説明する。
【0041】ピストンロッド4のストロークの中立位置N付近に中立範囲N1およびN2(>N1)を設定しておき、車高センサによりストロークSを検出して制御装置によりストロークSに応じて切換信号を出力してアクチュエータを作動させてシャッタ20の位置を切換える。シャッタ20の切換えは、ストロークSが中立範囲N1にあるときは位置A、伸び側で中立範囲N2から外れたときは位置B、縮み側で中立範囲N2から外れたときは位置Cとするように制御する。なお、中立範囲N2>N1としたのは、ハンチングを防止するためである。
【0042】このような制御によれば、平坦路を走行中の車両が路面の突起を乗り越した場合、図6に示すように、平坦路走行中はピストンロッド4のストロークSが中立範囲N1内にあるのでシャッタ20の位置はAとなり、減衰力特性は伸び、縮み側共にソフト特性となる。時刻t1で路面の突起を乗り越し、ピストンロッド4が縮み側へ大きくストロークし、時刻t2でストロークSが縮み側で中立範囲N2から外れると制御信号によりシャッタ20の位置がAからCに切換わるが減衰力特性はソフト特性のままである。時刻t3でストロークSが縮み側から伸び側へ変わると減衰力特性は制御信号なしで自動的にハード特性となる。時刻t4でストロークSが中立範囲N1内に戻ると制御信号によりシャッタ20の位置がCからAに切換わり減衰力特性はソフト特性となる。時刻t5でストロークSが伸び側で中立範囲N2から外れると制御信号によりシャッタ20の位置がAからBに切換わるが減衰力特性はソフト特性のままである。時刻t6でストロークSが伸び側から縮み側へ変わると減衰力特性は制御信号なしで自動的にハード特性となる。時刻t7でストロークSが中立範囲N1内に戻ると制御信号によりシャッタ20の位置はBからAに切換わり減衰力特性はソフト特性となる。このようにして、車体のバウンシングが抑えられる。
【0043】このとき、車高センサの検出に基づく制御信号による減衰力特性の切換えは、ストロークSが中立範囲N1またはN2を通過するとき(時刻t2,t4,t5,t7 )のみ行えばよく、縮み側から伸び側(時刻t3)および伸び側から縮み側(時刻t6)へ変わるときは制御信号なしで自動的に瞬時に切換わることになる。したがって、制御信号による減衰力特性の切換頻度が少なくなるので制御装置の応答遅れが少なく充分適切な制御を行うことができる。
【0044】本発明の第3実施例について説明する。第3実施例においては第1実施例と同様の部材あるいは相当する部材には同一の番号を付し異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0045】図7に示すように、ピストン3には、小径通路部材24が貫通され、その先端部に通路部材5が螺着されて固定されている。小径通路部材24の後端部にはピストンロッド4が連結されている。ピストンロッド4内には一端側が小径通路部材24内に連通し、他端側がシリンダ上室2a内に開口する油液通路25が形成されている。そして、通路部材5、小径通路部材24および油液通路25によりシリンダ上室2aとシリンダ下室2bとを連通するバイパス通路9が構成されている。
【0046】ピストンロッド4の油液通路25には円筒状のガイド部材26が嵌合されており、ガイド部材26の外周部に、バイパス通路9内において、シリンダ上室2a側に連通する油液通路27とシリンダ下室2b側に連通する油液通路28が形成されている。ガイド部材26の両端部寄りの側壁には、それぞれ孔29a,30a が設けられ、この孔29a,30a とこれをガイド部材26の外側から塞ぐ板状のばね部材29b,30b とでガイド部材26内側から油液通路27,28側への油液の流通を許容する第1の逆止弁としての逆止弁29および第2の逆止弁としての逆止弁30が構成されている。ガイド部材26の中央部寄りの側壁には油液通路27に連通する孔31および油液通路28に連通する孔32が設けられている。ガイド部材26には、円筒状のシャッタ33が摺動可能に嵌合されている。シャッタ33は、両端部にガイド部材26の内壁に摺接する大径部33a が形成されており、シャッタ33とガイド部材26との間に弁室33b が形成されるようになっている。シャッタ34にはその軸線方向に貫通孔33c が設けられており、この貫通孔33c によりガイド部材26内のシャッタ33の両端の室と弁室33b とが連通されている。
【0047】そして、シャッタ33が図7に示す中立位置Aにあるとき、孔31,32と弁室33bとが連通して油液通路27、孔31、弁室33b 、孔32および油液通路28により逆止弁29および30がバイパスされ、バイパス通路9が常時連通され、シャッタ33が上方に移動して大径部33a が孔32を閉鎖すると(位置B)、油液通路27、孔31および弁室33b により逆止弁29がバイパスされ、バイパス通路9が逆止弁30を介して連通され、シャッタ33が下方に移動して大径部33a が孔31を閉鎖すると(位置C)、油液通路28、孔32および弁室33b により逆止弁30がバイパスされ、バイパス通路9が逆止弁29を介して連通されるようになっている。
【0048】また、シャッタ33には、操作ロッド34の一端側が連結されており、操作ロッド34の他端側はピストンロッド4に内蔵されたソレノイドアクチュエータ35のプランジャ36に連結されている。そして、シャッタ33は、通常ばね38により中立位置Aにあり、ソレノイド37へ通電することにより位置B,Cに移動可能となっている。
【0049】以上のように構成した第3実施例の作用について次に説明する。
【0050】シャッタ33が中立位置Aにある場合、バイパス通路9は、常時連通されるので、第1実施例と同様に、伸び、縮み行程共に、ピストン3の摺動によりシリンダ2内の油液が主油液通路6およびバイパス通路9を流通して第1及び第2の減衰力発生機構7,12によって比較的小さな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図3中にAで示すように伸び側、縮み側共にソフト特性となる。
【0051】シャッタ33が上方の位置Bにある場合、バイパス通路9が逆止弁30を介して連通されるので、第1実施例と同様に、伸び行程時は、シリンダ2内の油液が主油液通路6およびバイパス通路9を流通して第1の減衰力発生機構7および第2の減衰力発生機構12によって比較的小さな減衰力が発生する。一方、縮み行程時は、バイパス通路9の油液の流通が阻止されるので、シリンダ2内の油液が主油液通路6のみを流通して第1の減衰力発生機構7よって比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図3中にBで示すように伸び側はソフト特性となり、縮み側はハード特性となる。
【0052】シャッタ33が下方の位置Cにある場合、バイパス通路9が逆止弁29を介して連通されるので、第1実施例と同様に、縮み行程時は、シリンダ2内の油液が主油液通路6およびバイパス通路9を流通して第1の減衰力発生機構7および第2の減衰力発生機構12によって比較的小さな減衰力が発生する。一方、伸び行程時は、バイパス通路9の油液の流通が阻止されるので、シリンダ2内の油液が主油液通路6のみを流通して第1の減衰力発生機構7によって比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図3中にCで示すように伸び側はハード特性となり縮み側はソフト特性となる。
【0053】このようにして、第1実施例と同様に、シャッタ33を移動させることにより減衰力特性を3種類の組合わせの中から選択的に切換えることができる。
【0054】なお、上記第3実施例においても、第1実施例の場合と同様に、第2の減衰力発生機構12を省略し、孔29a および30a をオリフィスとすることにより第2の減衰力発生機構としてもよい。
【0055】本発明の第4実施例について説明する。
【0056】図8に示すように、油液が封入されたシリンダ39内に、第1のピストン40と第2のピストン41とが直列に配置され摺動可能に嵌装されており、この第1、第2のピストン40,41で油界画成部材を形成し、シリンダ39内がシリンダ上室39a 、シリンダ中室39b およびシリンダ下室39c の3つに画成されている。第1、第2のピストン40,41には、ピストンロッド42の一端側が貫通されて連結されており、ピストンロッド42の他端はシリンダ39の外部まで延ばされている。また、シリンダ39には、ピストンロッド42がシリンダ39に侵入、退室した分の油液の出入りを補償するリザーバ室(図示せず)が設けられている。
【0057】第1のピストン40には、シリンダ上室39a とシリンダ中室39b とを連通させる油液通路43が設けられており、第1のピストン40の両端面には、油液通路43内の油液の流動を制御して減衰力を発生させるオリフィスおよびディスクバルブからなる第1の減衰力発生機構44が設けられている。また、第2のピストン41には、シリンダ中室39b とシリンダ下室39c とを連通させる油液通路45が設けられており、第2のピストン41の両端面には、油液通路45内の油液の流動を制御して減衰力を発生させるオリフィスおよびディスクバルブからなる第2の減衰力発生機構46が設けられている。そして、油液通路43,45およびシリンダ中室39b により主油液通路を構成している。
【0058】ピストンロッド42には、先端部から軸心に沿って延び、シリンダ上室39a 、シリンダ中室39b およびシリンダ下室39c のそれぞれに連通する開口部47a,47b,47c を有するバイパス通路47が設けられている。そして、バイパス通路47のシリンダ上室39a とシリンダ中室38b との間は第1の減衰力発生機構44をバイパスする第1のバイパス通路を形成し、該バイパス通路47のシリンダ中室39b とシリンダ下室39c との間は第2の減衰力発生機構46をバイパスする第2のバイパス通路を形成している。ピストンロッド42の先端部には、円筒状の通路部材48が取付けられており、通路部材48の開口部には、バイパス通路47の開口部47c からシリンダ下室39c 側への油液の流通を許容し、その反対方向の流通を阻止する逆止弁49が設けられている。
【0059】ピストンロッド42の開口部47を囲んで円筒状の通路部材50が設けられており、通路部材50の開口部にバイパス通路47の開口部47a からシリンダ上室39a 側への油液の流通を許容し、その反対方向の流通を阻止する逆止弁51が設けられている。
【0060】ピストンロッド42のバイパス通路47内に開口部47a に臨んで有底筒状のシャッタ52が回転可能に嵌合されており、また、開口部47c に臨んで有底筒状のシャッタ53が回転可能に嵌合されている。シャッタ52の側壁にはスリット52a が設けられており、シャッタ52を回転させてスリット52a を開口部47a に整合させるか否かにより開口部47a を開閉するようになっている。また、同様に、シャッタ53の側壁にはスリット53a が設けられており、シャッタ53を回転させてスリット53aを開口部47c に整合させるか否かにより開口部47c を開閉するようになっている。
【0061】シャッタ52および53は、ピストンロッド42の軸心に沿って延びる操作ロッド54に共に連結されており、操作ロッド54はピストンロッド42に沿って油圧緩衝器の外部まで延ばされている。そして、油圧緩衝器の外部から操作ロッド54を操作することにより、シャッタ52および53が同時に回転するようになっている。
【0062】図9に示すように、バイパス通路47の開口部47a と47c とは、互いに異なる方向に向かって開口されており、シャッタ52,53が位置aにある場合にはスリット52a と開口部47a とおよびスリット53a と開口部47c とが共に連通され、位置bにある場合にはスリット52a と開口部47a とが遮断されてスリット53a と開口部47c とが連通され、位置cにある場合にはスリット52a と開口部47a とが連通されてスリット53a と開口部47c とが遮断され、位置dにある場合にはスリット52a と開口部47a とおよびスリット53a と開口部47c とが共に遮断されるようになっている。
【0063】以上のように構成した第4実施例の作用について説明する。
【0064】シャッタ52,53が位置aにある場合、バイパス通路47の開口部47a および47cが開いているので、ピストンロッド42の伸び行程時には逆止弁51が閉じシリンダ上室39a の油液は第1のピストン40の油液通路43を通ってシリンダ中室39b へ流れ、シリンダ中室39b の油液は開口部47b 、バイパス通路47および開口部47c を通り逆止弁49を開いてシリンダ下室39c へ流れる。よって、第1のピストン40の第1の減衰力発生機構44のみにより比較的小さな減衰力が発生する。一方、縮み行程時には逆止弁49が閉じシリンダ下室39c の油液は第2のピストン41の油液通路45を通ってシリンダ中室39b へ流れ、シリンダ中室39b の油液は開口部47b 、バイパス通路47および開口部47a を通り逆止弁51を開いてシリンダ上室39a へ流れる。よって、第2のピストン41の第2の減衰力発生機構46のみにより比較的小さな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図10中にaで示すように伸び側、縮み側共にソフト特性となる。
【0065】シャッタ52,53が位置bにある場合、バイパス通路47の開口部47a が閉じ開口部47c が開いているので、ピストンロッド42の伸び行程時には、位置aの場合と同様にシリンダ上室39a の油液は第1のピストン40の油液通路43を通ってシリンダ中室39b へ流れ、シリンダ中室39b の油液は開口部47b 、バイパス通路47および開口部47c を通り逆止弁49を開いてシリンダ下室39c へ流れる。よって、第1のピストン40の第1の減衰力発生機構44のみにより比較的小さな減衰力が発生する。一方、縮み行程時には逆止弁49が閉じてバイパス通路47が閉鎖されるので、油液は第1および第2のピストン40および41の油液通路43,45を流れて直列に配置された第1および第2の減衰力発生機構44,46により比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図10中にbで示すように伸び側はソフト特性となり、縮み側はハード特性となる。
【0066】シャッタ52,53が位置cにある場合、バイパス通路47の開口部47a が開き開口部47c が閉じているので、ピストンロッド42の縮み行程時には、位置aの場合と同様にシリンダ下室39c の油液は第2のピストン41の油液通路45を通ってシリンダ中室39b へ流れ、シリンダ中室39b の油液は開口部47b 、バイパス通路47および開口部47a を通り逆止弁51を開いてシリンダ上室39a へ流れる。よって、第2のピストン41の第2の減衰力発生機構46のみにより比較的小さな減衰力が発生する。一方、伸び行程時には逆止弁51が閉じてバイパス通路47が閉鎖されるので、位置cの場合と同様に、油液は第1および第2のピストン40および41の油液通路43,45を流れて直列に配置された第1および第2の減衰力発生機構44,46により比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図10中にcで示すように縮み側はソフト特性となり、伸び側はハード特性となる。
【0067】シャッタ52,53が位置dにある場合、バイパス通路47の開口部47a および47cが閉じており、バイパス通路47が常時閉鎖されるので、伸び、縮み行程時共に油液は第1および第2のピストン40および41の油液通路43,45を流れ、直列に配置された第1および第2の減衰力発生機構44,46により比較的大きな減衰力が発生する。よって、減衰力特性は、図10中にdで示すように伸び側、縮み側共にハード特性となる。
【0068】このようにして、操作ロッド54によりシャッタ52,53を移動させることによって減衰力特性を第1、第2、第3実施例の3種類に伸び側、縮み側共にハード特性を加えた4種類の組合わせの中から選択的に切換えることができる。
【0069】なお、上記第4実施例では、第1の減衰力発生機構44が設けられた第1のピストン40と、第2の減衰力発生機構46が設けられた第2のピストン41とで油界画成部材を形成した例を示したが、これに限らず、第1のピストン40の下側に油液通路43と開口部47b とが連通する閉塞された室を設け、この室とシリンダ下室39cを連通するところに第2の減衰力発生機構を設けるようにして、油界画成部材を第1のピストン40の1つで構成するようにしてもよい。
【0070】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の減衰力調整式油圧緩衝器によれば、減衰力特性を伸び側と縮み側とで異なる組み合わせで選択的に切換えることができる。その結果、サスペンション制御装置と組合わせて用いた場合には、ストロークの方向が変わる前に次のストロークにおいて望まれる減衰力特性に減衰力特性を事前に切換えることができるので制御装置の応答遅れが少なくなり充分適切な制御を行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の要部の縦断面図である。
【図2】図1の装置のシャッタの位置を示すA−A線およびB−B線による横断面図である。
【図3】図1の装置の減衰力特性を示す図である。
【図4】本発明の第2実施例の要部の縦断面図である。
【図5】図4の装置の減衰力特性を示す図である。
【図6】図1の装置をサスペンション制御装置により制御したときの時間に対するストロークの変化およびシャッタの位置を示す図である。
【図7】本発明の第3実施例の要部の縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施例の要部の縦断面図である。
【図9】図8の装置のシャッタの位置を示すA−A線およびB−B線による横断面図である。
【図10】図8の装置の減衰力特性を示す図である。
【符号の説明】
1 減衰力調整式油圧緩衝器
2 シリンダ
2a シリンダ上室
2b シリンダ下室
3 ピストン
4 ピストンロッド
6 主油液通路
7 第1の減衰力発生機構
9 バイパス通路
12 第2の減衰力発生機構
13 ガイド部材(第1、第2の減衰力調整弁)
14 逆止弁(第1の逆止弁)
15 逆止弁(第2の逆止弁)
20 シャッタ(第1、第2の減衰力調整弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装され前記シリンダ内を2室に画成するピストンと、一端側が前記ピストンに連結され、他端側が前記シリンダの外部まで延ばされたピストンロッドと、前記2室を連通し減衰力発生機構を有する主油液通路と、前記減衰力発生機構をバイパスして前記2室を連通するバイパス通路と、該バイパス通路に直列に設けられ、互いに逆方向の流通を許容する第1の逆止弁と第2の逆止弁と、該第1の逆止弁をバイパスする第1の油液通路と、前記第2の逆止弁をバイパスする第2の油液通路と、前記第1の油液通路の通路面積を可変とする第1の減衰力調整弁と、前記第2の油液通路の通路面積を可変とする第2の減衰力調整弁とを備え前記第1及び第2の減衰力調整弁は、前記第1及び第2の油液通路の通路面積を両方とも開、一方が開で他方が閉または一方が閉で他方が開となるように選択的に調整可能になっていることを特徴とする減衰力調整式油圧緩衝器。
【請求項2】 油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装され該シリンダ内を2室に画成する油界画成部材と、一端側が該油界画成部材に連結され、他端側が前記シリンダの外部まで延ばされたロッドと、前記2室を連通する主油液通路と、該主油液通路中に設けられ減衰力を発生する第1の減衰力発生機構と、前記主油液通路中に前記第1の減衰力発生機構と直列に設けられ減衰力を発生する第2の減衰力発生機構と、前記第1の減衰力発生機構をバイパスする第1のバイパス通路と、前記第2の減衰力発生機構をバイパスする第2のバイパス通路と、前記第1、第2のバイパス通路のそれぞれに設けられ互いに異なる方向の流通を許容する第1、第2の逆止弁と、前記第1のバイパス通路の通路面積を可変とする第1の減衰力調整弁と、前記第2のバイパス通路の通路面積を可変とする第2の減衰力調整弁とを備え前記第1及び第2の減衰力調整弁は、前記第1及び第2の油液通路の通路面積を両方とも開、一方が開で他方が閉または一方が閉で他方が開となるように選択的に調整可能になっていることを特徴とする減衰力調整式油圧緩衝器。

【図2】
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【図10】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【特許番号】特許第3079338号(P3079338)
【登録日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【発行日】平成12年8月21日(2000.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−245861
【出願日】平成4年8月20日(1992.8.20)
【公開番号】特開平5−272570
【公開日】平成5年10月19日(1993.10.19)
【審査請求日】平成10年9月30日(1998.9.30)
【出願人】(000003056)トキコ株式会社 (17)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−139937(JP,A)
【文献】特開 平2−106420(JP,A)
【文献】特開 平1−229128(JP,A)
【文献】実開 昭61−181136(JP,U)
【文献】米国特許4671392(US,A)
【文献】英国特許出願公開2234041(GB,A)