説明

渦電流式検査装置および渦電流式検査方法

【課題】センサの感度を正確に取得することにより、被検体の物理特性を高精度に検出することが可能な渦電流式検査装置および渦電流式検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】渦電流式検査装置1は、渦電流の変化に応じた検出値を出力するセンサ10と、所定の周波数に設定された励磁電流をセンサ10に供給する供給手段31と、工作物2に対してセンサ10を相対移動させる移動手段15と、複数の検出値に基づいてセンサ10の感度を取得する感度取得手段32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流式の検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
渦電流式の検査装置は、磁気センサにより被検体の表層に渦電流を誘導し、その渦電流の変化に基づいて、被検体の物理特性を非破壊で検査するものである。このような渦電流式の検査装置は、例えば、被検体の物理特性から被検体の表層に生じた傷を検出する探傷試験装置などに適用されている。
【0003】
また、特許文献1,2には、被検体とする工作物の物理特性から加工変質層を検出する渦電流式の検査方法が開示されている。研削加工または切削加工を行う場合には、工作物における加工部位の温度が高温になりやすい。そのため、加工条件によっては工作物の表面に加工変質層(一般に「研削焼け」または「切削焼け」と言う場合がある)が生じることがある。この加工変質層は、その変質状態によっては、工作物の機械的強度を低下させる要因となるおそれがある。そこで、特許文献1,2の検査方法によれば、工作物の加工変質層の有無および変質状態を検出できるものとされている。
【0004】
ところで、磁気センサは、経年劣化などに起因して感度が変動することがある。このような磁気センサの劣化は、例えば、磁気センサを被検体に対して接触した状態で検査を行った場合に、磁気センサの先端部が摩耗することなどが考えられる。また、磁気センサは、同型であり未使用のものであっても個体差により初期の感度が異なる場合がある。このような磁気センサの感度の変動や差異は、例えば、特許文献1に記載されているように、複数のマスターワークにおける検出値に基づいて適正なゲイン調整を行うことで対応できることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−206395号公報
【特許文献2】特開2000−180415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、工作物に加工変質層が生じた場合に、加工変質層の深さや範囲などの変質状態の度合いにより機械的強度への影響も変動するものと考えられることから、加工変質層検出装置においては、工作物における加工変質層の有無および変質状態をより高精度に検出することが望ましい。そのため、加工変質層検出装置は、磁気センサの感度が変動した場合においても工作物の変質状態を正確に把握し、微小範囲の加工変質層を確実に検出するために、変動する磁気センサの感度に対して適正なゲイン調整を行う必要がある。これは、渦流式の検査装置を適用した種々の検査装置においても同様である。しかし、特許文献1に記載の感度を取得する方法では、複数のマスターワークの検査をすることから感度の取得に手間や時間を要し、感度の変動に合わせて微調整するには不適である。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、センサの感度を正確に取得することにより、被検体の物理特性を高精度に検出することが可能な渦電流式検査装置および渦電流式検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(渦電流式検査装置)
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、励磁電流により被検体の内部に渦電流を誘導し、渦電流の変化に応じた検出値を出力するセンサと、所定の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給する供給手段と、前記被検体と前記センサの距離が変動するように、前記被検体に対して前記センサを相対移動させる移動手段と、前記距離の異なる複数の検出位置において前記センサにより出力された複数の前記検出値に基づいて、前記センサの感度を取得する感度取得手段と、を備えることである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記供給手段は、異なる複数の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給し、前記センサは、複数の前記検出位置において、設定された各周波数に応じた各前記検出値をそれぞれ出力し、前記感度取得手段は、複数の前記検出位置における各前記検出値に基づいて前記センサの感度を取得することである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2において、前記感度取得手段は、各周波数のうち基準とする基準周波数に応じた各前記検出値に対する他の周波数に応じた各前記検出値の変化の割合に基づいて前記センサの感度を取得することである。
【0010】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1において、前記供給手段は、単数の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給し、前記センサは、複数の前記検出位置において、設定された周波数に応じた前記検出値をそれぞれ出力し、前記感度取得手段は、複数の前記検出位置における前記距離および前記検出値に基づいて前記センサの感度を取得することである。
【0011】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項4において、前記感度取得手段は、複数の前記検出位置における前記距離に対する前記検出値の変化の割合に基づいて前記センサの感度を取得することである。
【0012】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜5の何れか一項において、前記感度取得手段により取得した前記センサの感度と予め設定された基準感度とに基づいて、前記センサの感度を補正する補正手段をさらに備えることである。
【0013】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項1〜6の何れか一項において、前記感度取得手段により取得した前記センサの感度に基づいて、前記工作物と接触する前記センサの先端部の摩耗量を判定する摩耗量判定手段をさらに備えることである。
【0014】
請求項8に係る発明の特徴は、請求項1〜7の何れか一項において、前記センサは、前記被検体である工作物の加工変質層、傷および焼き入れに応じた検出値を出力することである。
【0015】
(渦電流式検査方法)
上記の課題を解決するため、請求項9に係る発明の特徴は、励磁電流により被検体の内部に渦電流を誘導し、渦電流の変化に応じた検出値を出力するセンサと、所定の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給する供給工程と、前記被検体と前記センサの距離が変動するように、前記被検体に対して前記センサを相対移動させる移動工程と、前記距離の異なる複数の検出位置において前記センサにより出力された複数の前記検出値に基づいて、前記センサの感度を取得する感度取得工程と、を備えることである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、渦電流式検査装置の感度取得手段は、距離の異なる複数の検出位置においてセンサにより出力された複数の検出値に基づいて、センサの感度を取得する構成としている。この渦電流式検査装置のセンサは、供給手段から供給される励磁電流により被検体の内部に渦電流を誘導し、渦電流の変化に応じた検出値を出力する磁気センサとしている。ここで、渦電流式検査装置は、移動手段によりセンサを被検体に対して所定距離(接触状態を含む)に移動させ、センサが出力する検出値に基づいて被検体の物理特性を検査している。これにより、被検体における加工変質層や傷の有無およびその状態、被検体の焼き入れ状態などを検出している。
【0017】
このような渦電流式検査装置における磁気を用いたセンサは、移動手段により被検体に対して接近または離反すると、クリアランス(被検体とセンサの距離)に応じて異なる検出値を出力する。また、センサは、供給される励磁電流に設定された周波数によっても異なる検出値を出力する。これは、例えば、被検体の表層から所定距離だけセンサを離間した状態における検出値が所定値となるように、渦電流式検査装置におけるブリッジ回路の平衡バランスを取っていることに起因する。そして、クリアランスまたは励磁電流の周波数に応じて出力される検出値の変化の挙動は、センサの感度によって異なるものである。つまり、感度取得手段は、所定の周波数に設定された励磁電流により異なる複数の検出位置において出力された複数の検出値に基づいて、センサの感度を取得することができる。
【0018】
上述したように、本発明の渦電流式検査装置の感度取得手段は、異なるクリアランスにおいてセンサが出力した複数の検出値に基づいて、センサの感度を取得するものである。そして、渦電流を用いた検査において、センサは、移動手段により被検体に対して接近および離反する。そのため、渦電流式検査装置は、センサが移動の際に出力した検出値を利用することができるため、感度を取得するために被検体をマスターワークなどに交換する必要がない。よって、渦電流式検査装置は、従来と比較して簡易な構成によりセンサの感度を取得できる。また、センサを被検体に対して接近または離反する度にセンサの感度を取得することができるため、センサの劣化などに対応し、感度の変動に合わせてゲイン調整を適宜行うことができる。
【0019】
請求項2に係る発明によると、感度取得手段は、複数の検出位置における各検出値に基づいてセンサの感度を取得する。また、センサは、供給手段により異なる複数の周波数に設定された励磁電流を供給され、複数の検出位置において、各周波数に応じた各検出値をそれぞれ出力する構成としている。このように、渦電流式検査装置におけるセンサは、異なる複数の周波数の励磁電流を同時に、または周波数の設定を変更して複数回に亘り供給される。ここで、励磁電流の周波数は、高く設定されるほど浸透深さが浅くなり、低く設定されるほど浸透深さが深くなる。そこで、一般に、渦電流を用いた検査において励磁電流の周波数は、被検体における検査対象の部位により適宜設定される。
【0020】
そして、上記の構成により出力された各周波数に応じた各検出値について、複数の周波数のうち低周波数側における複数の検出値に対する高周波数側における複数の検出値の変化の挙動は、センサの感度によって異なる。つまり、感度取得手段は、複数の周波数に設定された励磁電流により異なる複数の検出位置においてそれぞれ出力された各検出値に基づいて、センサの感度をより正確に取得することができる。また、励磁電流に対して複数の周波数を設定可能なセンサは、各周波数に応じた各検出値を同時に出力可能である。これに対して、励磁電流に対して単数の周波数のみ設定可能なセンサは、先ず複数の検出位置において周波数に応じた検出値をそれぞれ出力する。そして、周波数を変更した後、複数の検出位置において周波数に応じた検出値をそれぞれ出力する。このような構成においても、複数の周波数が設定された励磁電流を供給される場合と同様の効果を奏する。
【0021】
請求項3に係る発明によると、感度取得手段は、各周波数のうち基準とする基準周波数に応じた各検出値に対する他の周波数に応じた各検出値の変化の割合に基づいてセンサの感度を取得する構成としている。上述したように、複数の周波数のうち低周波数側における複数の検出値に対する高周波数側における複数の検出値の変化の挙動は、センサの感度によって異なる。そこで、例えば、複数の周波数のうち最も低く設定された周波数を基準周波数とする。そして、基準周波数に応じた各検出値に対して、基準周波数を除く他の周波数に応じた各検出値がどのように変化するかを求める。これにより算出される各検出値の変化の割合に基づいて、感度取得手段は、センサの感度をより高精度に取得することができる。また、この変化の割合については、予め設定された所定区間における各検出値に基づいて、最小自乗法などにより近似直線を算出し、その直線の傾きから求められるものとしてもよい。その他には、上記の所定区間において区間両端の検出値を通る直線の傾きとしたり、複数の検出値により算出される曲線上の点における接線の傾きとしたりすることで求めることができる。
【0022】
請求項4に係る発明によると、感度取得手段は、複数の検出位置における距離および検出値に基づいてセンサの感度を取得する。また、センサは、供給手段により単数の周波数に設定された励磁電流を供給され、複数の検出位置において、設定された周波数に応じた検出値をそれぞれ出力する構成としている。センサが供給された励磁電流の周波数に応じて出力した複数の検出値について、被検体に近接側の検出位置における検出値に対する離反側の検出位置における検出値の変化の挙動は、センサの感度によって異なる。つまり、感度取得手段は、複数の検出位置における距離と、その検出位置において出力された検出値とに基づいて、センサの感度をより正確に取得することができる。
【0023】
請求項5に係る発明によると、感度取得手段は、複数の検出位置における距離に対する検出値の変化の割合に基づいてセンサの感度を取得する構成としている。上述したように、被検体に近接側の検出値に対する離反側の検出値の変化の挙動は、センサの感度によって異なる。そこで、例えば、クリアランスに対して、複数の検出値がどのように変化するかを求める。そして、この変化の割合については、予め設定された所定区間における複数の検出値に基づいて、最小自乗法などにより近似直線を算出し、その直線の傾きから求められるものとしてもよい。その他には、上記の所定区間において区間両端の検出値を通る直線の傾きとしたり、複数の検出値により算出される曲線上の点における接線の傾きとしたりすることで求めることができる。このようにして算出された変化の割合に基づいて、感度取得手段は、センサの感度をより高精度に取得することができる。
【0024】
請求項6に係る発明によると、感度取得手段により取得したセンサの感度と予め設定された基準感度とに基づいて、センサの感度を補正する補正手段をさらに備える構成としている。ここで、例えば、センサの経年劣化などによりセンサの先端部が摩耗しセンサの感度が変動した場合に、これに応じて検出値が変化し誤検出するおそれがある。そこで、感度取得手段が取得したセンサの感度と基準感度とに基づいて、適正な感度に調整するための補正量を算出する。これにより、補正手段は、適正なゲイン調整を行うことができるので、より高精度に被検体の物理特性を検査できるので、種々の検査における誤検出を防止することができる。
【0025】
ここで、センサが出力する検出値から高精度に被検体の物理特性を検査するためにはセンサの感度をある程度高める必要があるが、高感度になるに伴い電気的なノイズが増大することになる。そこで、検査対象とする被検体の材質特性を含む物理特性やセンサの特性などに基づいて、渦電流を用いた検査を適正に行うことができる感度にゲイン調整し、この時の感度を「基準感度」としている。
【0026】
請求項7に係る発明によると、感度取得手段により取得したセンサの感度に基づいて、被検体と接触するセンサの先端部の摩耗量を判定する摩耗量判定手段をさらに備える構成としている。上述したように、センサの感度の変動は、検査において被検体に対して接触した先端部が摩耗することが一因と考えられる。そして、先端部の摩耗量が大きくなると、適正な検査を行うために、センサまたはセンサの先端部の交換が必要となる。そこで、上記構成とすることで、検査におけるセンサの先端部がどの程度摩耗しているかを判定し、センサなどの交換時期を得られる。これにより、渦電流式検査装置として、適正な検査状態を維持することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によると、センサは、被検体である工作物の加工変質層、傷および焼き入れに応じた検出値を出力する構成としている。つまり、渦電流式検査装置は、工作物の加工変質層の有無およびその変質状態を検査する加工変質層検出装置、または工作物に生じた傷を検出する探傷試験装置などに適用した構成としている。例えば、工作物の高品質化を図るために微小な加工変質層、傷などの検出を要することがある。このような場合に、センサの感度の変動に伴い検出値が変動すると、この検出値の変動幅と微小な加工変質層を検出するために設定された閾値との関係から誤検出となるおそれがある。
【0028】
そこで、上記の構成とすることで、例えば、センサの感度の変動に合わせてゲイン調整を適宜行うことができる。これにより、センサの感度に応じて適正な被検体の物理特性を検出することができるので、より高精度な渦電流式の検査が可能となる。このように、工作物の高品質化を図るため工作物の微小な加工変質層や傷、または工作物の焼き入れ状態などを詳細に把握する必要がある場合に、本発明の渦電流式検査装置を適用した加工変質層検出装置などは特に有用である。
【0029】
請求項9に係る発明によると、渦電流式検査方法は、感度取得工程において、距離の異なる複数の検出位置においてセンサにより出力された複数の検出値に基づいて、センサの感度を取得する構成としている。この渦電流式検査方法のセンサは、供給工程から供給される励磁電流により被検体の内部に渦電流を誘導し、渦電流の変化に応じた検出値を出力する磁気センサとしている。ここで、渦電流式検査方法は、移動工程によりセンサを被検体に対して所定距離(接触状態を含む)に移動させ、センサが出力する検出値に基づいて被検体の物理特性を検査している。これにより、被検体における加工変質層や傷の有無および変質状態、被検体の焼き入れ状態などを検出している。
【0030】
このような構成により、渦電流式検査方法は、センサが移動の際に出力した検出値を利用することができるため、感度を取得するために被検体をマスターワークなどに交換する必要がない。よって、渦電流式検査方法は、従来と比較して簡易な構成によりセンサの感度を取得できる。また、センサを被検体に対して接近または離反する度にセンサの感度を取得することができるため、センサの劣化などに対応し、感度の変動に合わせてゲイン調整を適宜行うことができる。
また、本発明の渦電流式検査装置としての他の特徴部分について、本発明の渦電流式検査方法に同様に適用可能である。そして、この場合における効果についても、上記渦電流式検査装置としての効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第一実施形態:加工変質層検出装置1の外観を示す概略図である。
【図2】加工変質層検出装置1の磁気センサ10の内部を透視して示す側面図である。
【図3】磁気センサのブリッジ回路を示す回路図である。
【図4】渦電流を誘導された工作物2の疑似回路を示す回路図である。
【図5】加工変質層の検査における位相と検出値を示すグラフである。
【図6】クリアランスと検出値の関係を示すグラフである。
【図7】基準周波数の検出値に対する他の周波数の検出値を示すグラフである。
【図8】クリアランスに対するインピーダンスの変化を示す概念図である。
【図9】検出値の変化の割合と結合係数の対応表である。
【図10】結合係数とインピーダンスから推定される材質特性の対応表である。
【図11】第二実施形態:加工変質層検出装置101を示す側面図である。
【図12】クリアランスと検出の関係を示すグラフである。
【図13】検出値の変化量と結合係数の対応表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の渦電流式検査装置および渦電流式検査方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態においては、渦電流式検査装置および渦電流式検査方法を適用した加工変質層検出装置を例示する。
【0033】
<第一実施形態>
(加工変質層検出装置1の構成)
本発明の加工変質層検出装置1について、図1,2を参照して説明する。加工変質層検出装置1は、図1,2に示すように、磁気センサ10(本発明の「センサ」に相当する)と、回転支持部20と、制御装置30を主体として構成される。工作物2は、磁性材料からなり、筒状または柱状、板状、自由曲面状などの形状を含む被加工部材である。この工作物2は、加工変質層検出装置1による検査対象の被検体であり、工作物2の検査表面における加工変質層の有無および変質状態を検査される。本実施形態において、工作物2は、周面を検査表面とする円筒状部材であるものとして説明する。また、工作機械3は、円筒状または円柱状の工作物2の外周面を研削加工する研削盤としている。なお、本発明の加工変質層検出装置および加工変質層検出方法は、工作機械3として、研削盤の他に、旋盤およびマシニングセンタなどの切削加工機を適用することもできる。
【0034】
また、加工変質層検出装置1は、渦電流式の磁気を用いた磁気方式の非破壊検査により、被検体(工作物2)の加工変質層に応じた信号を出力するものである。ここで、渦電流式による加工変質層の検査について説明する。一般に、渦電流式は、一次コイルにより被検体に磁場を印加し、励磁電流を流すことで渦電流を誘導する。そして、磁場を印加する一次コイルと被検体とを相対的に移動させ、この移動によって変化する渦電流の誘導起電力を二次コイルによって検知する。渦電流式の検査は、検知される誘導起電力が加工変質層の変質状態に伴って変化することから、渦電流の変化による誘導起電力の値や変化量などに基づいて加工変質層の検出を図るものである。
【0035】
磁気センサ10は、センサ本体11と、センサヘッド12と、測定装置13と、タッチセンサ14と、センサ送り機構15を有している。センサ本体11は、後述する制御装置30の供給部31より低周波側の第一周波数および高周波側の第二周波数を設定された励磁電流を供給される。そして、センサ本体11は、センサヘッド12が工作物2に磁場を印加するように上記励磁電流をセンサヘッド12に供給する。センサヘッド12は、供給された励磁電流により工作物2に磁場を印加して、工作物2の内部に渦電流を誘導する。これにより、センサヘッド12は、第一周波数および第二周波数を設定した励磁電流の周波数に応じたそれぞれの浸透深さにおいて、工作物2の変質状態に伴って変化する誘導起電力を信号としてそれぞれ検出している。
【0036】
測定装置13は、図2に示すように、センサヘッド12が検出した信号をセンサ本体11から信号線を介して受信している。そして、測定装置13は、この出力信号の値を磁気センサ10の検出値として、後述する制御装置30へ出力している。タッチセンサ14は、センサ本体11の内部において、センサヘッド12の基端部に設けられた接触式のセンサである。このタッチセンサ14は、センサヘッド12を工作物2に所定の付勢力(押圧力)によって付勢するばね14aを有する。ばね14aにより、本実施形態において、センサヘッド12は、加工変質層を検出する検査において、工作物2と常に接触した状態となっている。そして、タッチセンサ14は、ばね14aの伸縮状態に基づいて、センサヘッド12が工作物2に対して接触または非接触の何れの状態にあるかを検出する。タッチセンサ14は、検出したセンサヘッド12の先端部の接触情報を制御装置30へ出力している。
【0037】
センサ送り機構15は、センサ本体11の後方部(工作物2と反対側)に設けられ、センサ本体11を工作物2の軸方向および径方向に移動可能に保持する機構である。センサ送り機構15は、ボールねじとサーボモータ、または、油圧機構などにより構成される。また、センサ送り機構15は、工作物2とセンサ本体11の距離を変動させるように、工作物2に対してセンサ本体11を相対移動させる移動手段である。そして、センサ送り機構15は、センサ本体11を保持する保持部の移動方向位置(工作物2における径方向位置)を図示しないサーボモータから検出する。センサ送り機構15は、検出したセンサ本体11の位置情報を制御装置30へ出力している。これにより、制御装置30は、タッチセンサ14によるセンサヘッド12の接触情報と、センサ送り機構15によるセンサ本体11の位置情報と、に基づいてセンサヘッド12の検査表面に対する離間距離(クリアランス)を検知している。
【0038】
回転支持部20は、図2に示すように、駆動輪21と、調整車22を有し、工作物2を回転可能に支持している。駆動輪21は、工作物2の周面と接触し、図示しないモータにより回転駆動することで工作物2を回転させている。また、駆動輪21は、当該モータの回転位置を検出するエンコーダ21aを有する。エンコーダ21aは、検出したモータの回転位置情報を制御装置30へ出力している。これにより、制御装置30は、初期情報である工作物2の直径や周長などを含む形状情報と、モータの回転位置情報と、に基づいてセンサヘッド12の工作物2に対する周方向位相を検知している。調整車22は、駆動輪21と共に工作物2を支持し、工作物2の周面との摩擦力により従動回転している。
【0039】
制御装置30は、供給部31と、感度取得部32と、補正部33と、摩耗量判定部34を有している。供給部31は、第一周波数および第二周波数を設定した励磁電流を磁気センサ10のセンサ本体11に供給する磁気センサ10の供給手段である。この供給部31は、測定装置13を介してセンサ本体11と連結され、第一周波数および第二周波数を設定した励磁電流をセンサ本体11に同時に供給している。つまり、センサ本体11は、供給部31により同時に複数の周波数の励磁電流を供給されることになる。これにより、磁気センサ10は、同時に複数の浸透深さにおける加工変質層の有無および変質状態を検査している。第一周波数および第二周波数は、本発明の「所定の周波数」に相当する。
【0040】
感度取得部32は、磁気センサ10により出力された検出値に基づいて、磁気センサ10の感度を取得する感度取得手段である。また、感度取得部32は、制御装置30に入力されたセンサヘッド12の接触情報およびセンサ本体11の位置情報からクリアランスを算出する。そして、当該クリアランスとなる位置を磁気センサ10による検出値が検出された検出位置として関連付けている。補正部33は、ゲイン調整することにより磁気センサ10の感度を補正する補正手段である。この補正部33は、感度取得部32により取得した磁気センサ10の感度と、制御装置30に記憶されている予め設定されている基準感度とに基づいて、適正な感度に調整するための補正量を算出する。そして、補正部33は、この補正量により磁気センサ10のゲイン調整を行う。
【0041】
ここで、磁気センサ10が出力する検出値から加工変質層の有無および変質状態を検出するには磁気センサ10の感度をある程度高める必要があるが、高感度になるに伴い電気的なノイズが増大することになる。そこで、検査対象とする被検体の材質特性を含む物理特性や磁気センサ10の特性などに基づいて、加工変質層を検出する検査を適正に行うことができる感度にゲイン調整している。本実施形態において、調整された磁気センサ10の感度を「基準感度」としている。
【0042】
摩耗量判定部34は、磁気センサ10におけるセンサヘッド12の先端部の摩耗量を判定する摩耗量判定手段である。本実施形態における磁気センサ10は、加工変質層の検査において、センサヘッド12を工作物2に接触させた状態となっている。そのため、繰り返しの検査により、センサヘッド12の先端部が工作物2との摩擦により摩耗する。また、センサヘッド12が摩耗すると、センサヘッド12に埋設されているコイルと工作物2との距離が変化することから、センサヘッド12の感度が変動する。そこで、摩耗量判定部34は、感度取得部32により取得した磁気センサ10の感度に基づいて、センサヘッド12の摩耗量がどの程度であるかを判定する。磁気センサ10の感度の取得、補正および摩耗量の判定の詳細については後述する。
【0043】
(加工変質層検出装置1による検査)
加工変質層検出装置1による検査について、図3〜図5を参照して説明する。加工変質層検出装置1は、まず供給工程として、供給部31により第一周波数および第二周波数に設定された励磁電流を磁気センサ10に供給する。これにより、磁気センサ10は、被検体に対して磁場を印加可能な状態となる。次に、移動工程として、磁気センサ10に励磁電流が供給された状態で、センサ送り機構15によりセンサ本体11を工作物2に等速で接近させる。そして、工作物2とセンサヘッド12の距離であるクリアランスが徐々に小さくなり、センサヘッド12の先端部が工作物2の周面に接触する。
【0044】
この時、磁気センサ10のタッチセンサ14は、センサヘッド12の基端部に配置されたばね14aが収縮し始めた際に、工作物2とセンサヘッド12が接触状態となったものとして、制御装置30にその接触情報を出力する。これにより、制御装置30は、センサ送り機構15によるセンサ本体11の工作物2への接近を停止する。
【0045】
ここで、磁気センサ10は、図3に示すように、内部にブリッジ回路が構成されている。本実施形態における磁気センサ10は、被検体に磁場を印加する励磁コイル(一次コイル)と、誘導起電力を検出する検出コイル(二次コイル)とが一体の励磁兼検出コイルとしている。そして、磁気センサ10は、この励磁兼検出コイルの他に、キャリブレーションコイルおよび複数の可変抵抗からブリッジ回路を構成し、当該ブリッジ回路におけるそれぞれのインピーダンスをZ1〜Z4として示している。
【0046】
次に、磁気センサ10は、加工変質層が生じていないマスターワークにセンサヘッド12の先端部が接触している状態で、励磁電流を供給される。そして、磁気センサ10は、センサヘッド12の先端部が被検体やマスターワークと十分離間した状態で、増幅回路を設定することでゲイン調整される。また、可変抵抗の抵抗値を調整することにより、ブリッジ回路の平衡バランスを取り、増幅回路に電流が流れない状態とする。このようなブリッジ回路により、出力される検出値Vは、[数1]に示すように、各インピーダンスZ1〜Z4との相関関係がある。
【0047】
[数1]
V=E{Z1/(Z2+Z1)−Z4/(Z3+Z4)}
V:検出値
E:交流電源の実効値
Z1〜Z4:インピーダンス
【0048】
また、上記の励磁兼検出コイルのインピーダンスZ1は、図4に示すように、磁場を印加された被検体を疑似回路とみなすことにより、[Z1=V1/I1]から算出することができる。この時、V1は電圧値、I1は電流値としている。これにより、例えば、検査対象とする工作物2の表層に加工変質層が生じていると、その部位の透磁率が低いことから工作物2の抵抗値R2が大きくなり、励磁兼検出コイルのインピーダンスZ1が変動する。そうすると、磁気センサ10のブリッジ回路のバランスが崩れ、増幅回路に電流が流れ検出値が出力される。
【0049】
このような疑似回路において、各コイルの相互誘導係数Mは、[数2]に示すように、各コイルのインダクタンスL0,L2との相関関係がある。また、結合係数Kは、被検体とセンサヘッド12の距離(クリアランス)などにより決まる定数である。つまり、結合係数Kは、インピーダンスZ1と相関関係があることから、インピーダンスZ1の変動により出力される検出値と相関関係がある。よって、複数の検出値から結合係数Kを求めることにより、その検出値を出力した磁気センサ10の感度がどの程度であるかを取得することができる。
【0050】
[数2]
M=K√(L0・L2)
M:相互誘導係数(相互インダクタンス)
K:結合係数
L0:センサ側コイルのインダクタンス
L2:工作物側疑似コイルのインダクタンス
【0051】
続いて、センサヘッド12が工作物2に接触している状態で、回転支持部20により工作物2を回転させるとともに、センサ送り機構15によりセンサ本体11を工作物2の軸方向に適宜移動させる。この時、回転支持部20のエンコーダ21aにより検出された駆動輪21モータの回転位置情報を制御装置30へ出力している。これにより、第一周波数および第二周波数の浸透深さにおける加工変質層の有無および変質状態に応じた検出値が出力される。そして、制御装置30は、図5に示すように、所定の軸方向位置における研削焼けが生じた加工変質層の検査結果を取得する。本実施形態において制御装置30は、閾値Tが予め設定され、検出値がこの閾値Tを超えた工作物2の位相に加工変質層が生じているものと判定する。
【0052】
加工変質層検出装置1は、検査対象の工作物2について、全周に亘って加工変質層の検査を終了すると、移動工程として、磁気センサ10に励磁電流が供給された状態で、センサ送り機構15によりセンサ本体11を工作物2に等速で離反させる。そうすると、タッチセンサ14のばね14aにより工作物2にセンサヘッド12を付勢していた付勢力が徐々に小さくなり、センサヘッド12の先端部が工作物2の周面から離脱する。
【0053】
この時、磁気センサ10のタッチセンサ14は、センサヘッド12の基端部に配置されたばね14aの伸張し終えた際に、工作物2とセンサヘッド12が非接触状態となったものとして、制御装置30にその接触情報を出力する。これにより、制御装置30は、センサ本体11が工作物2に対して十分に離反した後に、センサ送り機構15によるセンサ本体11の工作物2からの離反を停止する。このようにして、加工変質層検出装置1は、加工変質層の有無または変質状態の検査を行う。
【0054】
(磁気センサ10の感度の取得)
本実施形態における磁気センサ10の感度の取得について、図6〜図10を参照して説明する。先ず、加工変質層検出装置1は、感度取得工程として、加工変質層を検出した後に工作物2からセンサ本体11を離反させる移動工程において、クリアランスの異なる複数の検出位置で出力された複数の検出値を取得する。各検出位置では、第一周波数および第二周波数に設定された励磁電流によりそれぞれに対応した各検出値が出力される。
【0055】
ここで、第一周波数と比較して高い周波数である第二周波数は検査対象の部位が被検体の表層側となるため、クリアランスの増大に伴う検出値の変化量も大きい。このように高周波数側および低周波数側の検出値を通る曲線は、設定された周波数によって異なるが、周波数の相違に加えて磁気センサ10の感度によっても異なることが分かった。具体的には、図6に示すように、磁気センサ10の感度が高い場合に、高周波数側および低周波数側の検出値は、クリアランスの増大に伴う変化量が大きい。特に低周波数側の変化量の増分が大きいため、それぞれの検出値による曲線Ch1,Ch2も近づくことになる。一方で、磁気センサ10の感度が低い場合に、高周波数側および低周波数側の検出値は、クリアランスの増大に伴う変化量が小さい。よって、それぞれの検出値による曲線Cl1,Cl2は、感度が高い場合と比較して離間している。
【0056】
このように、異なる複数の検出位置において出力された第一周波数および第二周波数の検出値の変化の挙動は、磁気センサ10の感度によって異なる。そこで、本実施形態において感度取得部32は、第一周波数を基準周波数とし、基準周波数(第一周波数)に応じた検出値に対する他の周波数(第二周波数)に応じた検出値の変化の割合αを算出している。より具体的には、図7に示すように、基準周波数に応じた検出値Vs1,Vs2の変化量ΔVsと、他の周波数に応じた検出値Ve1,Ve2の変化量ΔVeと、に基づいて変化の割合α=ΔVe/ΔVsを算出している。
【0057】
ここで、上述したように、加工変質層検出装置1の構成におけるインピーダンスZ1は、工作物2と磁気センサ10の距離により変動する。このインピーダンスZ1は、図8に示すように、コイル抵抗成分(実軸)とリアクタンス成分(虚軸)からなり、クリアランスなどにより決まる定数である結合係数Kと相関関係にある。この結合係数Kの取り得る範囲は、0以上1以下である。例えば、結合係数Kが1の場合に、インピーダンスZ1の取り得る値の軌跡Lo1は、図8における最も外側の曲線を描く。また、結合係数Kが1よりも小さくなると、インピーダンスZ1の取り得る値の軌跡Lo2,Lo3は、図8における、内側に縮小したような曲線を描く。
【0058】
ここで、被検体である工作物2の周面とセンサヘッド12の先端部の距離が大きく離れているとき、すなわちクリアランスが十分に大きいとき、結合係数Kは0となる。これに対して、クリアランスが小さくなっていくと結合係数Kは0から大きくなっていき、被検体である工作物2の周面とセンサヘッド12の先端部が接触した被検体接触時(クリアランスが0)に結合係数Kは最大となる。そして、この被検体接触時における結合係数Kの最大値は、そのセンサの感度によって異なる。そこで、被検体接触時の結合係数をKとおくと、結合係数Kが小さいセンサは感度が低く、結合係数Kが大きい(1または1に近い)センサは感度が高いものと判断することができる。すなわち、被検体接触時の結合係数Kはそのセンサの感度を示すパラメータといえる。
【0059】
また、図8において、インピーダンスZ1の軌跡Lo1〜Lo3と交差する曲線Cr1,Cr2は、励磁電流に設定された周波数および検査対象である被検体の材質特性により決まる曲線である。この材質特性は、被検体の透磁率および比抵抗などの特性であり、加工変質層が生じていない部位であれば被検体毎に一定とみなすことができる。よって、被検体の材質特性をθとおくことにする。第一周波数および第二周波数に応じたそれぞれの曲線Cr1,Cr2と、インピーダンスZ1の軌跡Lo1〜Lo3との交点がその周波数に設定された励磁電流により検査した際のインピーダンスZ1の値である。
【0060】
このように、結合係数Kと磁気センサ10による検出値には相関関係があることから、実験および有限要素法による磁場解析により、検出値の変化の割合αと被検体接触時の結合係数Kの関係と、被検体接触時の結合係数KおよびインピーダンスZ1と被検体の材質特性θの関係と、を予め取得することができる。そこで、本実施形態では、上記の実験および解析に基づいて、図9,10に示すように、それぞれの関係を示す対応表を予め作成し、磁気センサ10の感度を取得する構成としている。
【0061】
感度取得工程において、制御装置30の感度取得部32は、基準周波数(第一周波数)に応じた各検出値に対する他の周波数(第二周波数)に応じた各検出値の変化の割合αを算出する(図7を参照)。そして、算出した変化の割合αと、図9の対応表とに基づいて、被検体接触時の結合係数Kを導出する。このように、導出された被検体接触時の結合係数Kにより、各周波数に応じた各検出値を出力した磁気センサ10の感度がどの程度であるかを取得することができる。
【0062】
次に、基準周波数に応じた検出値Vを[数1]に代入し、インピーダンスZ1を算出する。そして、算出したインピーダンスZ1および被検体接触時の結合係数Kと、図10の対応表とに基づいて、材質特性θを導出する。ここで、予め設定された基準結合係数Kstdおよび導出した材質特性θと、図10の対応表に基づいて、基準インピーダンスZstdを導出する。この基準結合係数Kstdは、結合係数の基準値として設定された値であって、基準感度に対応する結合係数である。また、基準インピーダンスZstdは、導出された材質特性θにおいて、基準感度(または基準結合係数Kstd)に対応するインピーダンスである。
【0063】
導出した基準インピーダンスZstdを[数1]に代入し、基準出力値Vstdを算出する。この基準出力値Vstdは、本来、この材質特性θとする被検体の場合に出力されるべき検出値である。よって、加工変質層検出装置1は、補正工程として、検出値Vが基準出力値Vstdと等しくなるように補正量を算出しゲイン調整を行う。制御装置30の補正部33は、導出した被検体接触時の結合係数Kに基づいて取得された磁気センサ10の感度と予め設定された基準感度とに基づいて、磁気センサ10の感度を補正する。本実施形態において、補正部33は、より具体的にそれぞれの感度における検出値V,Vstdが等しくなるようにゲイン調整することで、磁気センサ10の感度の補正としている。
【0064】
また、加工変質層検出装置1は、摩耗量判定工程として、磁気センサ10が出力した検出値Vのこれまでに変動に基づいて、センサヘッド12の先端部が初期状態からの摩耗量を判定する。制御装置30の摩耗量判定部34は、導出した被検体接触時の結合係数Kに基づいて取得された磁気センサ10の感度と予め設定された基準感度とに基づいて、磁気センサ10におけるセンサヘッド12の先端部の摩耗量がどの程度であるかを判定する。本実施形態において、摩耗量判定部34は、より具体的にそれぞれの感度における検出値V,Vstdの変化量に基づいて、当該摩耗量を判定している。そして、制御装置30は、摩耗量が所定以上になった場合に、センサまたはセンサヘッド12の交換時期と判断し、作業者へ交換を促すように表示などを適宜行う。
【0065】
(加工変質層検出装置1による効果)
上述した加工変質層検出装置1によれば、加工変質層検出装置1の感度取得部32は、距離の異なる複数の検出位置において磁気センサ10により出力された複数の検出値に基づいて、磁気センサ10の感度を取得する構成としている。また、加工変質層を検出する検査において、磁気センサ10は、センサ送り機構15により被検体である工作物2に対して接近および離反する。そのため、加工変質層検出装置1は、磁気センサ10が移動の際に出力した検出値を利用することができるため、感度を取得するために工作物2をマスターワークなどに交換する必要がない。よって、加工変質層検出装置1は、従来と比較して簡易な構成により磁気センサ10の感度を取得できる。また、磁気センサ10を工作物2に対して接近または離反する度に磁気センサ10の感度を取得することができるため、磁気センサ10の劣化などに対応し、感度の変動に合わせてゲイン調整を適宜行うことができる。
【0066】
制御装置30の感度取得部32は、複数の検出位置における各検出値に基づいて磁気センサ10の感度を取得する。また、磁気センサ10は、供給部31により異なる複数の周波数に設定された励磁電流を供給され、複数の検出位置において、各周波数に応じた各検出値をそれぞれ出力する構成としている。そして、この構成により出力された各周波数に応じた各検出値について、複数の周波数のうち低周波数側における複数の検出値に対する高周波数側における複数の検出値の変化の挙動は、磁気センサ10の感度によって異なる。つまり、感度取得部32は、複数の周波数に設定された励磁電流により異なる複数の検出位置においてそれぞれ出力された各検出値に基づいて、磁気センサ10の感度をより正確に取得することができる。
【0067】
制御装置30の感度取得部32は、基準周波数(第一周波数)に応じた各検出値に対する他の周波数(第二周波数)に応じた各検出値の変化の割合αに基づいて磁気センサ10の感度を取得する構成としている。加工変質層検出装置1は、基準周波数に応じた各検出値に対して、基準周波数を除く他の周波数に応じた各検出値がどのように変化するかを求める。これにより算出される各検出値の変化の割合αに基づいて、感度取得部32は、磁気センサ10の感度をより高精度に取得することができる。また、この変化の割合αについては、予め設定された所定区間における各検出値に基づいて、最小自乗法などにより近似直線を算出し、その直線の傾きから求められるものとしてもよい。その他には、上記の所定区間において区間両端の検出値を通る直線の傾きとしたり、複数の検出値により算出される曲線上の点における接線の傾きとしたりすることで求めることができる。
【0068】
加工変質層検出装置1は、感度取得部32により取得した磁気センサ10の感度と予め設定された基準感度とに基づいて、磁気センサ10の感度を補正する補正部33をさらに備える構成としている。ここで、例えば、磁気センサ10の経年劣化などにより磁気センサ10の先端部が摩耗し磁気センサ10の感度が変動した場合に、これに応じて検出値が変化し誤検出するおそれがある。そこで、感度取得部32が取得した磁気センサ10の感度と基準感度とに基づいて、適正な感度に調整するための補正量を算出する。これにより、補正部33は、適正なゲイン調整を行うことができるので、より高精度に加工変質層の変質状態を検出できるので、当該検査における誤検出を防止することができる。
【0069】
加工変質層検出装置1は、感度取得部32により取得した磁気センサ10の感度に基づいて、工作物2と接触する磁気センサ10の先端部の摩耗量を判定する摩耗量判定部34をさらに備える構成としている。上述したように、磁気センサ10の感度の変動は、検査において工作物2に対して接触した先端部が摩耗することが一因と考えられる。そして、先端部の摩耗量が大きくなると、適正な検査を行うために、磁気センサ10または磁気センサ10の先端部の交換が必要となる。そこで、上記構成とすることで、検査における磁気センサ10の先端部がどの程度摩耗しているかを判定し、磁気センサ10などの交換時期を得られる。これにより、加工変質層検出装置1として、適正な検査状態を維持することができる。
【0070】
本実施形態において、加工変質層検出装置1は、本発明の渦電流式検査装置を適用したものとし、磁気センサ10が被検体である工作物2の加工変質層に応じた検出値を出力する構成としている。そして、上記のように適正な検査状態を維持することにより、より高精度な渦電流式の検査が可能となる。このように、工作物2の高品質化を図るため工作物2の微小な加工変質層の有無および変質状態を詳細に把握する必要がある場合に、本発明の渦電流式検査装置を適用した加工変質層検出装置などは特に有用である。
【0071】
<第一実施形態の変形態様>
本実施形態において、制御装置30の感度取得部32は、第一周波数を基準周波数とし、基準周波数(第一周波数)に応じた検出値に対する他の周波数(第二周波数)に応じた検出値の変化の割合αを算出した。より具体的には、基準周波数に応じた検出値Vs1,Vs2の変化量ΔVsと、他の周波数に応じた検出値Ve1,Ve2の変化量ΔVeと、に基づいて変化の割合α=ΔVe/ΔVsを算出するものとした。これに対して、第一周波数および第二周波数のうち第二周波数を基準周波数とするものとしてもよい。
【0072】
また、基準周波数に応じた検出値Vs1,Vs2となる区間を設定するものとした。この区間は、感度を取得するのに複数の周波数に応じた検出値の間で感度の差に影響されやすいなどの理由から適宜設定されるものとしてよい。さらに、多数の検出値を取得し、最小自乗法により近似直線を算出し、その傾きを変化の割合αとしてもよい。同様に、多数の検出値に対して、所定区間における平均、または特定のクリアランスにおける接線を上記の近似直線として算出し、その傾きを変化の割合αとしてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
【0073】
その他に、本実施形態では、説明を簡易にするために、第一、第二周波数の二種の周波数による場合について説明した。これに対して、三種以上の周波数により出力された検出値から磁気センサ10の感度を取得してもよい。このような場合も同様に、三種以上の周波数のうちから基準周波数を設定するものとし、また、選択的に二種の周波数から本実施形態のように感度を取得しても良い。このような構成においても同様の効果を奏する。また、上述したように、本実施形態では複数の周波数により出力された検出値から変化の割合αを算出するものとしたが、この検出値が出力された際におけるクリアランスを位置情報として加えてもよい。これにより、より多面的に検出値の変化の挙動を評価し、磁気センサ10の感度をより高精度に取得することができる。
【0074】
<第二実施形態>
第二実施形態の構成について、図10〜図13を参照して説明する。ここで、第一実施形態の加工変質層検出装置1は、異なる複数の周波数に設定された励磁電流を磁気センサ10に供給し、磁気センサ10の感度を取得するものとした。これに対して、第二実施形態の加工変質層検出装置101は、単数の周波数に設定された励磁電流を磁気センサ10に供給し、磁気センサ10の感度を取得する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0075】
(加工変質層検出装置101の構成)
本発明の加工変質層検出装置101について、図11を参照して説明する。加工変質層検出装置101は、図11に示すように、磁気センサ10(本発明の「センサ」に相当する)と、回転支持部20と、制御装置130を主体として構成される。本実施形態において、磁気センサ10のセンサ本体11は、制御装置130の供給部131より第三周波数を設定された励磁電流を供給される。そして、センサ本体11は、センサヘッド12が工作物2に磁場を印加するように上記励磁電流をセンサヘッド12に供給する。センサヘッド12は、供給された励磁電流により工作物2に磁場を印加して、工作物2の内部に渦電流を誘導する。これにより、センサヘッド12は、励磁電流に設定された第三周波数に応じたそれぞれの浸透深さにおいて、工作物2の変質状態に伴って変化する誘導起電力を信号として検出している。
【0076】
制御装置130は、供給部131と、感度取得部132と、補正部33と、摩耗量判定部34を有している。供給部131は、第一実施形態の供給部31が励磁電流に複数の周波数を設定したのに対して、励磁電流に単数の周波数を設定する。つまり、供給部131は、第三周波数を設定した励磁電流を磁気センサ10のセンサ本体11に供給する。第三周波数は、本発明の「所定の周波数」に相当する。
【0077】
感度取得部132は、磁気センサ10により出力された検出値に基づいて、磁気センサ10の感度を取得する。また、感度取得部132は、タッチセンサ14から制御装置130に入力されたセンサヘッド12の接触情報と、センサ送り機構15から制御装置130に入力されたセンサ本体11の位置情報と、に基づいてクリアランスを算出する。そして、当該クリアランスとなる位置を磁気センサ10による検出値が検出された検出位置として関連付けている。
【0078】
(加工変質層検出装置101による検査)
加工変質層検出装置101による検査について説明する。加工変質層検出装置101は、まず供給工程として、供給部131により第三周波数に設定された励磁電流を磁気センサ10に供給する。これにより、磁気センサ10は、被検体に対して磁場を印加可能な状態となる。次に、移動工程として、磁気センサ10に励磁電流が供給された状態で、センサ送り機構15によりセンサ本体11を工作物2に等速で接近させる。そして、工作物2とセンサヘッド12の距離であるクリアランスが徐々に小さくなり、センサヘッド12の先端部が工作物2の周面に接触する。
【0079】
この時、磁気センサ10のタッチセンサ14は、センサヘッド12の基端部に配置されたばね14aが収縮し始めた際に、工作物2とセンサヘッド12が接触状態となったものとして、制御装置130にその接触情報を出力する。これにより、制御装置130は、センサ送り機構15によるセンサ本体11の工作物2への接近を停止する。続いて、センサヘッド12が工作物2に接触している状態で、回転支持部20により工作物2を回転させるとともに、センサ送り機構15によりセンサ本体11を工作物2の軸方向に適宜移動させる。これにより、第三周波数の浸透深さにおける加工変質層の有無および変質状態に応じた検出値が出力される。
【0080】
加工変質層検出装置101は、検査対象の工作物2について、全周に亘って加工変質層の検査を終了すると、移動工程として、磁気センサ10に励磁電流が供給された状態で、センサ送り機構15によりセンサ本体11を工作物2に等速で離反させる。そうすると、タッチセンサ14のばね14aにより工作物2にセンサヘッド12を付勢していた付勢力が徐々に小さくなり、センサヘッド12の先端部が工作物2の周面から離脱する。
【0081】
この時、磁気センサ10のタッチセンサ14は、センサヘッド12の基端部に配置されたばね14aの伸張し終えた際に、工作物2とセンサヘッド12が非接触状態となったものとして、制御装置130にその接触情報を出力する。これにより、制御装置130は、センサ本体11が工作物2に対して十分に離反した後に、センサ送り機構15によるセンサ本体11の工作物2からの離反を停止する。このようにして、加工変質層検出装置101は、加工変質層の有無または変質状態の検査を行う。
【0082】
(磁気センサ10の感度の取得)
本実施形態における磁気センサ10の感度の取得について、図10,12,13を参照して説明する。先ず、加工変質層検出装置101は、感度取得工程として、加工変質層を検出した後に工作物2からセンサ本体11を離反させる移動工程において、クリアランスの異なる複数の検出位置で出力された複数の検出値を取得する。各検出位置では、第三周波数に設定された励磁電流によりそれぞれに対応した各検出値が出力される。
【0083】
ここで、図12に示すように、クリアランスの増大に伴い磁気センサ10により出力される検出値も増大する。検出値の変化量については、設定された周波数によって異なるが、周波数の相違に加えて磁気センサ10の感度によっても異なることが分かった。具体的には、図12に示すように、磁気センサ10の感度が高い場合に、検出値は、クリアランスの増大に伴う変化量が大きい。一方で、磁気センサ10の感度が低い場合に、検出値は、クリアランスの増大に伴う変化量が小さい。
【0084】
このように、異なる複数の検出位置において出力された第三周波数の検出値の変化の挙動は、磁気センサ10の感度によって異なる。そこで、本実施形態において感度取得部132は、複数の検出位置における距離(クリアランス)に対する検出値の変化の割合βを算出している。より具体的には、図11,12に示すように、所定のクリアランスXa,Xb(図11においては、ΔXa,ΔXbとして示す)と、このクリアランスXa,Xbにおける検出値の変化量ΔVと、に基づいて変化の割合β=ΔV/(Xb−Xa)を算出している。
【0085】
ここで、上述したように、加工変質層検出装置101の構成におけるインピーダンスZ1は、工作物2と磁気センサ10の距離により変動する。さらに、結合係数Kと磁気センサ10による検出値には相関関係があることから、実験および有限要素法による磁場解析により、検出値の変化の割合βと被検体接触時の結合係数Kの関係と、被検体接触時の結合係数KおよびインピーダンスZ1と被検体の材質特性θの関係を予め取得することができる。そこで、本実施形態では、上記の実験および解析に基づいて、図13,10に示すように、それぞれの関係を示す対応表を予め作成し、磁気センサ10の感度を取得する構成としている。また、図13は、所定のクリアランスの変化量(Xb−Xa)に対する検出値の変化量ΔVと被検体接触時の結合係数Kの関係を示す対応表としている。
【0086】
感度取得工程において、制御装置130の感度取得部132は、第一の検出位置Xaにおける第三周波数に応じた検出値に対する第二の検出位置Xbにおける第三周波数に応じた検出値の変化量ΔVを算出する(図12を参照)。そして、算出した変化量ΔVと、図13の対応表とに基づいて、被検体接触時の結合係数Kを導出する。このように、導出された結合係数Kにより、第三周波数に応じた複数の検出値を出力した磁気センサ10の感度がどの程度であるかを取得することができる。
【0087】
次に、第三周波数に応じた検出値Vを[数1]に代入し、インピーダンスZ1を算出する。そして、算出したインピーダンスZ1および被検体接触時の結合係数Kと、図10の対応表とに基づいて、材質特性θを導出する。ここで、予め設定された基準結合係数Kstdおよび導出した材質特性θと、図10の対応表に基づいて、基準インピーダンスZstdを導出する。さらに、導出した基準インピーダンスZstdを[数1]に代入し、基準出力値Vstdを算出する。そして、加工変質層検出装置101は、補正工程として、検出値Vが基準出力値Vstdと等しくなるように補正量を算出しゲイン調整を行う。ここで、制御装置130の補正部33によるゲイン調整、および摩耗量判定部34による判定については、第一実施形態と同様なので詳細な説明を省略する。
【0088】
(加工変質層検出装置101による効果)
このような構成においても第一実施形態と同様の効果を奏する。また、制御装置130の感度取得部132は、複数の検出位置Xa,Xbにおける距離(クリアランス)および検出値に基づいて磁気センサ10の感度を取得する。そして、磁気センサ10は、供給部131により単数からなる第三周波数に設定された励磁電流を供給され、複数の検出位置において、設定された周波数に応じた検出値をそれぞれ出力する構成としている。磁気センサ10が供給された励磁電流の第三周波数に応じて出力した複数の検出値について、工作物2に近接側の検出位置における検出値に対する離反側の検出位置における検出値の変化の挙動は、磁気センサ10の感度によって異なる。つまり、感度取得部32は、複数の検出位置における距離と、その検出位置において出力された検出値とに基づいて、磁気センサ10の感度をより正確に取得することができる。
【0089】
また、制御装置130感度取得部132は、複数の検出位置における距離に対する検出値の変化の割合βに基づいて磁気センサ10の感度を取得する構成としている。上述したように、工作物2に近接側の検出値に対する離反側の検出値の変化の挙動は、磁気センサ10の感度によって異なる。そこで、上記構成とすることにより、感度取得部32は、変化の割合βに基づいて磁気センサ10の感度をより高精度に取得することができる。
【0090】
<第二実施形態の変形態様>
本実施形態において、制御装置130の感度取得部132は、異なる複数の検出位置における距離(クリアランス)に対する検出値の変化の割合βを算出した。より具体的には、所定のクリアランスXa,Xbと、このクリアランスXa,Xbにおける検出値の変化量ΔVと、に基づいて変化の割合β=ΔV/(Xb−Xa)を算出している。
【0091】
このように、感度取得部132では、第一、第二の検出位置Xa,Xb(クリアランスΔXa,ΔXb)となる区間を設定するものとした。この区間は、感度を取得するのに複数の検出値の間で感度の差に影響されやすいなどの理由から適宜設定されるものとしてよい。さらに、多数の検出値を取得し、最小自乗法により近似直線を算出し、その傾きを変化の割合βとしてもよい。同様に、多数の検出値に対して、所定区間における平均、または特定のクリアランスにおける接線を上記の近似直線として算出し、その傾きを変化の割合βとしてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。
【0092】
<その他>
第一、第二実施形態において、磁気センサ10の感度を取得する感度取得工程では、加工変質層を検出した後に工作物2からセンサ本体11を離反させる移動工程で出力された複数の検出値に基づいて、磁気センサ10の感度を取得するものとした。これに対して、感度取得工程は、加工変質層を検出する前に工作物2へセンサ本体11を接近させる移動工程で出力された複数の検出値に基づいて、磁気センサ10の感度を取得するものとしてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。また、上記の接近および離反させる両移動工程において、出力された複数の検出値を対象としてもよい。これにより、加工変質層を検出する一回の検査による感度の変動量を算出できるとともに、センサヘッド12の摩耗量などを判定することができる。
【0093】
また、第一、第二実施形態において、本発明の渦電流式検査装置および渦電流式検査方法を適用した加工変質層検出装置を例示して説明した。これに対して、本発明の渦電流式検査装置および渦電流式検査方法は、その他に、探傷試験装置など渦電流を用いた各種検査装置に適用することができる。このような構成においても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0094】
1,101:加工変質層検出装置、 2:工作物(被検体)、 3:工作機械
10:磁気センサ(センサ)、 11:センサ本体、 12:センサヘッド
13:測定装置、 14:タッチセンサ、 14a:ばね
15:センサ送り機構(移動手段)
20:回転支持部、 21:駆動輪、 21a:エンコーダ、 22:調整車
30,130:制御装置、 31,131:供給部(供給手段)
32,132:感度取得部(感度取得手段)、 33:補正部(補正手段)
34:摩耗量判定部(摩耗量判定手段)
T:閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁電流により検出体の内部に渦電流を誘導し、渦電流の変化に応じた検出値を出力するセンサと、
所定の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給する供給手段と、
前記被検体と前記センサの距離が変動するように、前記被検体に対して前記センサを相対移動させる移動手段と、
前記距離の異なる複数の検出位置において前記センサにより出力された複数の前記検出値に基づいて、前記センサの感度を取得する感度取得手段と、
を備えることを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記供給手段は、異なる複数の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給し、
前記センサは、複数の前記検出位置において、設定された各周波数に応じた各前記検出値をそれぞれ出力し、
前記感度取得手段は、複数の前記検出位置における各前記検出値に基づいて前記センサの感度を取得することを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記感度取得手段は、各周波数のうち基準とする基準周波数に応じた各前記検出値に対する他の周波数に応じた各前記検出値の変化の割合に基づいて前記センサの感度を取得することを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記供給手段は、単数の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給し、
前記センサは、複数の前記検出位置において、設定された周波数に応じた前記検出値をそれぞれ出力し、
前記感度取得手段は、複数の前記検出位置における前記距離および前記検出値に基づいて前記センサの感度を取得することを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記感度取得手段は、複数の前記検出位置における前記距離に対する前記検出値の変化の割合に基づいて前記センサの感度を取得することを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記感度取得手段により取得した前記センサの感度と予め設定された基準感度とに基づいて、前記センサの感度を補正する補正手段をさらに備えることを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項において、
前記感度取得手段により取得した前記センサの感度に基づいて、前記工作物と接触する前記センサの先端部の摩耗量を判定する摩耗量判定手段をさらに備えることを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項において、
前記センサは、前記被検体である工作物の加工変質層、傷および焼き入れに応じた検出値を出力することを特徴とする渦電流式検査装置。
【請求項9】
励磁電流により被検体の内部に渦電流を誘導し、渦電流の変化に応じた検出値を出力するセンサと、
所定の周波数に設定された前記励磁電流を前記センサに供給する供給工程と、
前記被検体と前記センサの距離が変動するように、前記被検体に対して前記センサを相対移動させる移動工程と、
前記距離の異なる複数の検出位置において前記センサにより出力された複数の前記検出値に基づいて、前記センサの感度を取得する感度取得工程と、
を備えることを特徴とする渦電流式検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−252877(P2011−252877A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128520(P2010−128520)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】