説明

温室用カーテン装置

【課題】簡易な構成で、温室の妻面側に生じる隙間を小さくすることができ、温室内の密閉性、保温性等をより高める。
【解決手段】第1及び第2の先導パイプ21,22の各端部21c,22cに軸支され、その支点21d,22dを挟んだ下端側41b,42bが前記第1及び第2のカーテン部材31,32の各妻面被覆部31b,32bの先端縁31c,32cにそれぞれ連結されて配設される第1及び第2の棒状部材41,42と、第1及び第2の棒状部材41,42を回動させる回動制御部材43とを備えている。閉鎖方向動作時において、第1及び第2の棒状部材41,42の支点41d,42dよりも上端側41a,42aが回動制御部材43に当接すると下端側41b,42bが閉鎖方向前方にそれぞれ回動し、各妻面被覆部31b,32b同士が重ね合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室内において所定高さに配置されるカーテン部材を開閉することにより、温室内上方空間を仕切り、保温効果、遮光効果などを高める機能を果たす温室用カーテン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラスチックフィルム等からなる保温用、遮光用のカーテン部材を、温室内の上方空間に配置し、これを開閉することにより、室内温度等を調整する温室用カーテン装置が開示されている。特許文献1には種々のタイプのものが開示されているが、このうち、特許文献1の図1〜図3に示されているように、妻面側から見た屋根部の形状が山形の温室において、温室の一方の側面付近(連棟式の場合には一方の側面付近に限らず一方の谷部付近となる場合もある)に一方のカーテン部材の基端縁を固定し、先導パイプに先端縁を連結し、先導パイプが該一方の側面付近(又は一方の谷部付近)と温室の頂部付近との間で移動することで該一方のカーテン部材が開閉し、同様に、温室の他方の側面付近(連棟式の場合には他方の側面付近に限らず他方の谷部付近となる場合もある)に他方のカーテン部材の基端縁を固定し、先導パイプに先端縁を連結し、先導パイプが該他方の側面付近(又は他方の谷部付近)と上記した温室の頂部付近との間で移動することで該他方のカーテン部材が開閉するようにしたものがある。
【0003】
各先導パイプは、駆動ワイヤに連結されて移動する。駆動ワイヤは、温室の頂部付近に配設される頂部滑車部材と、温室の側面(連棟式の場合は谷部)に配置されるサイド滑車部材(いずれかのサイド滑車部材は方向転換用となる)と、いずれかのサイド滑車部材の近くに配設される駆動ドラムとを備えている。駆動ワイヤは、一端が駆動ドラムに巻き付けられ、一方のサイド滑車部材、頂部滑車部材、他方のサイド滑車部材(方向転換用の滑車部材)の順に巻き掛けられ、反転されて、再び頂部滑車部材及び一方のサイド滑車部材に巻き掛けられて、他端が駆動ドラムに巻き付けられている。
【0004】
これにより、駆動ワイヤには、駆動ドラムの回転方向に従って順方向に走行する順方向走行部と、これとは逆に、反方向に走行する反方向走行部とができ、そのうちのいずれかに、例えば順方向走行部に上記した一方のカーテン部材の先端縁が連結された先導パイプが連結され、反方向走行部に他方のカーテン部材の先端縁が連結された先導パイプが連結される。従って、一方及び他方のカーテン部材の先導パイプが温室の頂部付近に向かって移動していくと、各カーテン部材が展張されていくため温室の上部空間を仕切って閉鎖する閉鎖方向動作となり、逆方向に移動していくと、各カーテン部材が各側面側(連棟式の場合には少なくとも一方は谷部側)に寄せ集められていき、上部空間を開放する開放方向動作となる。
【特許文献1】特開2008−29314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された温室用カーテン装置は、温室の頂部付近に各カーテン部材の先端縁が向かうと閉鎖し、逆方向に向かうと開放するいわゆる2枚張りタイプのものである。なお、特許文献1の図1〜図3では、一方のカーテン部材及び他方のカーテン部材のいずれも2層式になっているが、2枚張りタイプの基本的動作は1層式のものでも全く同様である。このタイプの場合、温室の頂部付近には、天井奥行きパイプが温室の長手方向に沿って配設されているため、全閉時において2つの先導パイプ間(2枚のカーテン部材の先端縁間)には必ず隙間が生じる。この隙間を閉鎖するために、頂部付近に設けられる天井奥行きパイプの上方には、所定幅のフィルム(固定張り)を固定配置し、各先導パイプが該固定張りの下方に至るまで移動すれば、全閉状態となるようにして対応している。
【0006】
一方、各カーテン部材は、温室の幅方向に張設される棚線に支持されているが、各カーテン部材は温室の天井面側の上部空間を仕切るだけでなく、妻面側は棚線から下方に垂れ下げられている。つまり、各カーテン部材は、温室の天井面側に位置する天井面被覆部と妻面側に垂れ下げられた妻面被覆部とを備えている。
【0007】
従って、全閉位置において、各カーテン部材の先端縁間に隙間が生じるのは、天井面被覆部間だけでなく妻面被覆部間でも同様であり、従来、天井奥行きパイプの上方だけでなく、妻面側にも固定張りが設けられている。この場合、妻面側に垂れ下げる固定張りが先導パイプの端部に接すると、先導パイプの動作が妨げられる。このため、妻面側の固定張りは、先導パイプから所定距離離れた位置に垂れ下げられる。従って、妻面側に垂れ下げた固定張りと、各カーテン部材の妻面被覆部との間に所定の隙間が存在し、密閉性の点で課題があった。また、天井面被覆用の固定張りだけでなく、妻面被覆用の固定張りも設けなければならない点で、それだけ多く部材を設ける必要がありコスト的にも課題があった。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、カーテン部材を2枚張りで設ける場合において、カーテン部材による密閉性を高めることができると共に、固定張りを簡素化し、コストの低減を図ることができる温室用カーテン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明の温室用カーテン装置は、温室の長手方向に沿って配置された天井奥行きパイプからその両側に所定間隔離れた一方の基端配置部と他方の基端配置部との間に掛け渡される駆動ワイヤと、前記一方の基端配置部と前記天井奥行きパイプ付近との間で移動可能に前記駆動ワイヤに連結される第1の先導パイプと、前記他方の基端配置部と前記天井奥行きパイプ付近との間で移動可能に前記駆動ワイヤに連結される第2の先導パイプと、基端縁が前記一方の基端配置部に固定され、先端縁が前記第1の先導パイプに連結されていると共に、温室の天井面側に位置する天井面被覆部と妻面側に垂れ下げられる妻面被覆部とを備えた第1のカーテン部材と、基端縁が前記他方の基端配置部に固定され、先端縁が前記第2の先導パイプに連結されていると共に、温室の天井面側に位置する天井面被覆部と妻面側に垂れ下げられる妻面被覆部とを備えた第2のカーテン部材と、前記第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時の少なくとも終点において、前記第1及び第2のカーテン部材の各妻面被覆部の先端縁同士が重ね合わさるように制御する妻面被覆部動作制御部材とを有することを特徴とする。
【0010】
また、前記妻面被覆部動作制御部材は、前記第1及び第2の先導パイプの各端部に軸支され、その支点を挟んだ下端側が前記第1及び第2のカーテン部材の各妻面被覆部の先端縁にそれぞれ連結されて配設される第1及び第2の棒状部材と、前記第1及び第2の棒状部材を回動させて前記各妻面被覆部の先端縁同士を重ね合わせる回動制御部材とを備えてなることが好ましい。
【0011】
前記回動制御部材は、温室の妻面側に、一方の基端配置部方向及び他方の基端配置部方向にそれぞれ突出するように設けられ、前記第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時において、前記第1及び第2の棒状部材の支点よりも上端側が前記回動制御部材に当接すると下端側が閉鎖方向前方にそれぞれ回動し、前記各妻面被覆部の先端縁同士が重ね合わせられる構成であることが好ましい。
【0012】
また、前記第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時の終点において、前記第1及び第2のカーテン部材の各天井面被覆部間の隙間を閉塞する天井隙間被覆材が設けられていることが好ましい。さらに、前記天井隙間被覆材が、前記天井奥行きパイプに支持されていることが好ましい。さらに、前記天井隙間被覆材は、所定幅の板状部材からなり、前記第1及び第2の先導パイプが該天井隙間被覆材上を移動可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の温室用カーテン装置は、第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時の少なくとも終点において、第1及び第2のカーテン部材の各妻面被覆部の先端縁同士が重ね合わさるように制御する妻面被覆部動作制御部材を有している。従って、従来のように妻面被覆用の固定張りを設ける必要がなく、固定張りを簡素化でき、設置作業の容易化を図ることができる。特に、妻面被覆部動作制御部材として、第1及び第2の先導パイプの各端部に軸支した第1及び第2の棒状部材と、この第1及び第2の棒状部材を回動させる回動制御部材とを有する構成とすれば、第1及び第2の棒状部材を簡易な構成で回動させることができ、低コストで実現できる。
【0014】
そして、妻面被覆部動作制御部材を設けることにより、第1及び第2のカーテン部材の各妻面被覆部同士が重ね合わせられることになるため、妻面用の固定張りを別途設ける場合と比較して、妻面側の隙間を極めて小さくでき、密閉性が高まり、その結果、カーテン部材に求められる保温性等の機能を高めることができる。
【0015】
また、従来のように妻面被覆用の固定張りを備えたものは必要でなくなるため、固定張りの機能としては、第1及び第2のカーテン部材の各天井面被覆部間の隙間を閉塞できるものであればよく、コストを低減できる。
【0016】
また、天井面被覆用の固定張り(本発明では「天井隙間被覆材」)は、天井奥行きパイプに直接支持させる構成とすることが好ましい。それにより、第1及び第2のカーテン部材と天井隙間被覆材との上下方向の隙間を極めて小さくすることができ、保温性が向上する。また、天井隙間被覆材として所定の剛性のある板状部材を天井奥行きパイプに支持させると、フィルムを張って設ける作業と比較して設置作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る温室用カーテン装置を単棟式温室に適用した場合の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、上記実施形態に係る温室用カーテン装置の要部を上方から見た図である。
【図3】図3は、上記実施形態に係る温室用カーテン装置の要部を妻面側から見た図である。
【図4】図4は、上記実施形態に係る温室用カーテン装置の第1及び第2の先導パイプ、天井隙間被覆材等の配置関係を示した図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、上記実施形態に係る温室用カーテン装置の妻面被覆部動作制御部材の動作を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る温室用カーテン装置を連棟式温室に適用した場合の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1〜図5は、本発明の一の実施形態に係る温室用カーテン装置1を説明するための図であり、この実施形態では、温室用カーテン装置1を単棟式の温室に適用している。図1〜図5に示すように、温室用カーテン装置1は、駆動ワイヤ10、第1の先導パイプ21、第2の先導パイプ22、第1のカーテン部材31、第2のカーテン部材32、妻面被覆部動作制御部材40、天井隙間被覆材50、駆動ドラム61等から構成されている。
【0019】
駆動ワイヤ10は、後述の第1のカーテン部材31及び第2のカーテン部材32を開閉移動させるために走行する部材であって、図1に示すように、一端が温室内の上方に配置された駆動ドラム61に巻き付けられ、温室の一方の側面付近に配置される2連のサイド滑車部材62a,62cのうちの一方のサイド滑車部材62aに巻き掛けられた後、温室の頂部長手方向に配設される天井奥行きパイプ110(天井奥行きパイプに頂部滑車部材を設ける場合は頂部滑車部材)を経由し、温室の他方の側面付近のサイド滑車部材62bに巻き掛けられて反転され、再度、天井奥行きパイプ110(又は頂部滑車部材)を経て、温室の一方の側面付近にあって一方のサイド滑車部材62aの隣りに並設される他方のサイド滑車部材62cに巻き掛けられて駆動ドラム61に他端が連結される。駆動ワイヤ10は、このようにして温室内の所定の高さに設けられるため、駆動ドラム10の回転方向に従って順方向に走行する順方向走行部11と、サイド滑車部材62bにより反転されて反方向に走行する反方向走行部12とを含む構成となる。なお、頂部滑車部材を設けずに、駆動ワイヤ10を天井奥行きパイプ110上を通過させる構成とする場合、駆動ワイヤ10としては摩擦抵抗の小さいものを用いることが好ましい。
【0020】
第1の先導パイプ21及び第2の先導パイプ22は、駆動ワイヤ10に、各々クリップ部材23を介して係止され(第1の先導パイプ21は順方向走行部11に係止され、第2の先導パイプ22は反方向走行部12に係止されている。)、駆動ワイヤ10の走行に従って、温室内の所定高さにおける該温室の側面付近から天井奥行きパイプ110付近の間を往復移動する。また、第1及び第2の先導パイプ21,22は、後述する第1及び第2のカーテン部材31,32の先端縁31c,32cと連結されている(第1の先導パイプ21に第1のカーテン部材31の先端縁31cが連結され、第2の先導パイプ22に第2のカーテン部材32の先端縁32cが連結される。)。それにより、第1及び第2の先導パイプ21,22が、駆動ワイヤ10の走行に従って移動すると、連結された先端縁31c,32cを介して、第1及び第2のカーテン部材31,32が移動する。なお、第1及び第2の先導パイプ21,22は、閉鎖状態にある前記カーテン部材31,32を開放状態にする際に、該カーテン部材31,32を温室の側部付近に寄せ集めるためのカーテン押さえ部材24を備えていてもよい。
【0021】
第1のカーテン部材31は、温室の幅方向に張設される棚線120に支持されて温室の天井面側の上部空間を仕切る天井面被覆部31aと、妻面側に位置する棚線120から下方に垂れ下げられて妻面側を被覆する妻面被覆部31bとを含む構成である。また、上述のように第1のカーテン部材31の天井面被覆部31a側の先端縁31cが上記第1の先導パイプ21に連結され、天井面被覆部31a側の基端縁31dが温室の一方の側面付近の所定の高さに位置する基端配置部130に固定されている。同様に、第2のカーテン部材32も、棚線120に支持されて天井面側の上部空間を仕切る天井面被覆部32aと、妻面側に位置する棚線120から下方に垂れ下げられて妻面側を被覆する妻面被覆部32bとを含む構成で、第2のカーテン部材32の天井面被覆部32a側の先端縁32cが上記第2の先導パイプ22に連結され、天井面被覆部32a側の基端縁32dが温室の他方の側面付近の所定の高さに位置する基端配置部140に固定されている。なお、基端配置部130,140は、各カーテン部材31,32の基端縁31d,32dを固定できるものであればよく、例えば、温室の側面の長手方向に沿って張設したワイヤやパイプ材等から構成される。
【0022】
妻面被覆部動作制御部材40は、図2及び図3に示すように、第1の先導パイプ21の端部21cに軸支され、第1のカーテン部材31の妻面被覆部31b側の先端縁31cと連結される第1の棒状部材41と、第2の先導パイプ22の端部22cに軸支され、第2のカーテン部材32の妻面被覆部32b側の先端縁32cと連結される第2の棒状部材42と、天井奥行きパイプ110の端部110aに設けられ、上記第1及び第2の棒状部材41,42の各々を回動させる回動制御部材43とを備えた構成である。第1及び第2の棒状部材41,42は中実の棒部材で構成してもよいし、中空のパイプ材から構成してもよい。回動制御部材43は、Uボルト44により天井奥行きパイプ110に固定されるブラケット45に支持される2枚のL字状板部材431,432から構成される。そして、一方のL字状板部材431の端縁431aが、第1のカーテン部材31の基端縁31dが固定される一方の基端配置部130方向に突出し、他方のL字状板部材432の端縁432aが、第2のカーテン部材32の基端縁32dが固定される他方の基端配置部140方向に突出するようにブラケット45に固定される。また、各L字状板部材431,432の端縁431a,432aは、ブラケット45を介して固定されることで、第1及び第2の棒状部材41,42が接近してくると、それらの上端側41a,42aが当接する高さに調整されている。
【0023】
従って、図5(b)に示すように、第1及び第2の先導パイプ21,22の移動に従って天井奥行きパイプ110に第1及び第2の棒状部材41,42が接近してくると、それらの上端側41a,42aが各L字状板部材431,432の端縁431a,432aに当接する。その結果、第1及び第2の先導パイプ21,22の端部21c,22cに連結される支点21d,22dを挟んだ下端側41b,42bがカーテンの閉鎖方向前方(矢印a方向)に回動する構成となる。この第1及び第2の棒状部材41,42の矢印a方向への回動によって、図5(c)に示すように、第1及び第2のカーテン部材31,32の全閉状態において、第1及び第2の棒状部材41,42が温室の妻面側から見て交差する状態となり、それに連結される第1のカーテン部材31の妻面被覆部31b側の先端縁31cと第2のカーテン部材32の妻面被覆部32b側の先端縁32c同士が重ね合わさる状態となる。この重なり合った妻面被覆部31b,32bにより、温室の妻面側に生じていた第1及び第2のカーテン部材31,32間の隙間を防止することができ、温室内の密閉性及び保温性を高めることができる。また、従来のように、妻面側に垂れ下げた固定張り等の部材を別途設ける必要がないため、コスト低減に寄与する。
【0024】
天井隙間被覆材50は、第1及び第2のカーテン部材31,32の全閉状態において、各天井面被覆部31a,32a間に生じる隙間を閉塞するためのものであり、図1〜図4に示すように、温室の幅方向中央付近(頂部付近)に長手方向に沿って設けられている。天井隙間被覆材50の幅は任意であるが、第1及び第2のカーテン部材31,32がカーテンの閉鎖方向(矢印A方向)に動作し、両者の先端縁31c,32cが最も近接した位置(閉鎖方向動作時の終点)に至った際に、先端縁31c,32cが天井隙間被覆材50に重なるような幅となっている。
【0025】
ここで、従来のように天井奥行きパイプ110の上方に頂部滑車部材を設け、この頂部滑車部材に駆動ワイヤを掛け回した構成とすると、天井隙間被覆材を、頂部滑車部材の上方に設けなければならず、天井隙間被覆材と第1及び第2のカーテン部材31,32の各天井面被覆部31a,32aとの間で上下方向に所定の隙間が生じる。本発明は、第1及び第2のカーテン部材31,32の妻面側を、固定張りを設けずに閉鎖可能であれば、頂部滑車部材の上方に天井隙間被覆材を設けた態様を必ずしも排除するものではないが、図3及び図4に示すように、天井奥行きパイプ110の上方に頂部滑車部材を設けずに、駆動ワイヤ10を天井奥行きパイプ110上を通過させる構成とし、天井隙間被覆材50を天井奥行きパイプ110に直接支持させる構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、第1及び第2のカーテン部材31,32の全閉状態において、天井隙間被覆材50と、第1及び第2のカーテン部材31,32の天井面被覆部31a,32a側の先端縁31c,32cとの間の上下方向の隙間を小さくすることができ、密閉性及び保温性を高めることができる。
【0026】
なお、天井隙間被覆材50の天井奥行きパイプ110への支持の仕方については特に限定されるものではないが、本実施形態では、図3及び図4に示すように、天井隙間被覆材50の幅方向中央付近を上方に向けて断面略半円状に湾曲させ、そこに形成される略管状空間に天井奥行きパイプ110を挿入して支持させる構成としている。また、天井隙間被覆材50として、所定幅を有し、所定の剛性のある板状部材とすれば、天井隙間被覆材50がフィルムである場合に比べて、その設置作業を容易にすることができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る温室用カーテン装置1の作用について説明する。まず、第1及び第2のカーテン部材31,32の全開状態において、駆動ドラム61を駆動させて駆動ワイヤ10を走行させる。駆動ワイヤ10が走行すると、駆動ワイヤ10の順方向走行部11に連結された第1の先導パイプ21がカーテン部材の閉鎖方向(矢印A方向)に向かって移動する。それに伴い、第1の先導パイプ21に連結される第1のカーテン部材31の先端縁31cが矢印A方向に向かって、すなわち天井奥行きパイプ110方向に向かって移動して展張されていく(図5(a)参照)。同様に、駆動ワイヤ10の反方向走行部12に連結された第2の先導パイプ22が移動し、第2のカーテン部材32の先端縁32cが矢印A方向に向かって、すなわち天井奥行きパイプ110方向に向かって移動して展張されていく(図5(a)参照)。
【0028】
そして、図5(a)のように、第1及び第2の先導パイプ21、22が、天井隙間被覆材50の測端縁付近に至った後、さらに、図5(b)のように、第1及び第2の先導パイプ21,22が天井隙間被覆材50の上面に位置するまで移動する。次に、回動制御部材43であるL字状板部材431,432の端縁431a,432aに、各先導パイプ21,22の端部21c,22cに軸支される第1及び第2の棒状部材41,42の上端側41a,42aが当接すると、その下端側41b,42bが矢印a方向(閉鎖方向前方)に回動し始め、第1及び第2の先導パイプ21,22の移動が停止するまで回動する。最終的には、第1及び第2の棒状部材41,42は、図4(c)のように、温室の妻面側から見て両者が所定の角度で交差した状態となり、各々の棒状部材41,42に連結される第1及び第2のカーテン部材31,32の妻面被覆部31b,32bが互いに重なり合う状態となる。これにより、妻面側の固定張りを設けなくても、妻面側を閉鎖することができる。このとき、妻面被覆部31b,32b同士が直接重なり合うため、両者間にほとんど隙間が生じない。
【0029】
一方、第1及び第2のカーテン部材31,32の開放動作では、第1及び第2のカーテン部材31,32の全閉状態から、開放方向(図2の矢印B方向)に走行する駆動ワイヤ10に従って、各カーテン部材31,32の先端縁31c,32cが基端配置部130,140付近に至るまでそれぞれ移動する。これにより、各カーテン部材31,32が開放状態となる。なお、第1及び第2の先導パイプ21,22がカーテン押さえ部材24を備えている場合には、該カーテン押さえ部材24により、各カーテン部材31,32が基端配置部130,140方向に寄せ集められる。
【0030】
なお、上述の実施形態では、カーテン部材31,32を一層で設ける構成としているが、棚線120の上方又は下方に、他の棚線を設け、そこに別のカーテン部材を支持させて、二層以上のカーテン部材としてもよい。この場合、別のカーテン部材の基端縁を基端配置部130,140に固定し、先端縁を上記した先導パイプ21,22に連結するようにすれば、該カーテン部材を牽引するための機構を上記したカーテン部材31,32と兼用できるため、コスト低減の観点から好ましい。また、上述の実施形態では、妻面側から見て屋根部が山形の温室に適用する場合について説明を行ったが、屋根部が略水平の平屋根の温室に適用できることはもちろんである。
【0031】
なお、上記した実施形態では、本発明の温室用カーテン装置1を単棟の温室に適用しているが、連棟式の温室に適用する場合には、例えば、図6に示したように構成する。すなわち、例えば、温室のA棟側の上方に駆動ドラム61を配置する場合には、A棟の一方の側面付近の所定高さに図1と同様に2連のサイド滑車部材62a(図5では一方のサイド滑車部材62aのみを表示)を設ける。A棟の他方の側面とB棟の一方の側面との間の谷部200付近に2連の谷滑車部材63(図5では一方の谷滑車部材63のみを表示)を設ける。そして、B棟の他方の側面の所定高さに方向転換用のサイド滑車部材62bを設ける。駆動ワイヤ10は、駆動ドラム61から引き出され、A棟の一方の側面に配置した一方のサイド滑車部材62a、一方の谷滑車部材63に巻き掛けられ、B棟の他方の側面に配置した方向転換用のサイド滑車部材62bで反転され、他方の谷滑車部材及びA棟の一方の側面に配置した他方のサイド滑車部材の順で巻き掛けられた後、駆動ワイヤ10に巻き付けられる。そして、A棟及びB棟内の各々に、第1及び第2の先導パイプ21,22、第1及び第2のカーテン部材31,32等の温室用カーテン装置1を設ける。
【0032】
すなわち、連棟式の場合には、駆動ワイヤ10を谷滑車部材63を介して複数の棟に跨るように配置し、それぞれの棟において、駆動ワイヤ10の順方向走行部に第1の先導パイプ21、反方向走行部に第2の先導パイプ22を連結し、第1及び第2のカーテン部材31,32の開閉を行うようにするものであり、その他の構成、作用は上記した単棟式の場合と全く同様である。
【0033】
また、上記実施形態では、妻面被覆部動作制御部材40として、回動可能な第1及び第2の棒状部材41,42、回動制御部材43からなるものを用いているが、各妻面被覆部31b,32bの先端縁を少なくとも閉鎖方向動作時の終点において重ね合わせることができるものであれば、これに限定されるものではない。また、回動制御部材43も、2枚のL字状板部材431,432から構成しているが、第1及び第2の棒状部材41,42を回動させることができる限り、T字状等であってもよいし、また、1枚の板部材から構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 温室用カーテン装置
10 駆動ワイヤ
11 順方向走行部
12 反方向走行部
21 第1の先導パイプ
22 第2の先導パイプ
31 第1のカーテン部材
31a 天井面被覆部
31b 妻面被覆部
32 第2のカーテン部材
32a 天井面被覆部
32b 妻面被覆部
40 妻面被覆部動作制御部材
41 第1の棒状部材
42 第2の棒状部材
43 回動制御部材
431,432 L字状部材
50 天井隙間被覆材
61 駆動ドラム
62a,62b,62c サイド滑車部材
63 谷滑車部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室の長手方向に沿って配置された天井奥行きパイプからその両側に所定間隔離れた一方の基端配置部と他方の基端配置部との間に掛け渡される駆動ワイヤと、
前記一方の基端配置部と前記天井奥行きパイプ付近との間で移動可能に前記駆動ワイヤに連結される第1の先導パイプと、
前記他方の基端配置部と前記天井奥行きパイプ付近との間で移動可能に前記駆動ワイヤに連結される第2の先導パイプと、
基端縁が前記一方の基端配置部に固定され、先端縁が前記第1の先導パイプに連結されていると共に、温室の天井面側に位置する天井面被覆部と妻面側に垂れ下げられる妻面被覆部とを備えた第1のカーテン部材と、
基端縁が前記他方の基端配置部に固定され、先端縁が前記第2の先導パイプに連結されていると共に、温室の天井面側に位置する天井面被覆部と妻面側に垂れ下げられる妻面被覆部とを備えた第2のカーテン部材と、
前記第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時の少なくとも終点において、前記第1及び第2のカーテン部材の各妻面被覆部の先端縁同士が重ね合わさるように制御する妻面被覆部動作制御部材と
を有することを特徴とする温室用カーテン装置。
【請求項2】
前記妻面被覆部動作制御部材は、
前記第1及び第2の先導パイプの各端部に軸支され、その支点を挟んだ下端側が前記第1及び第2のカーテン部材の各妻面被覆部の先端縁にそれぞれ連結されて配設される第1及び第2の棒状部材と、
前記第1及び第2の棒状部材を回動させて前記各妻面被覆部の先端縁同士を重ね合わせる回動制御部材と
を備えてなる請求項1記載の温室用カーテン装置。
【請求項3】
前記回動制御部材は、温室の妻面側に、一方の基端配置部方向及び他方の基端配置部方向にそれぞれ突出するように設けられ、前記第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時において、前記第1及び第2の棒状部材の支点よりも上端側が前記回動制御部材に当接すると下端側が閉鎖方向前方にそれぞれ回動し、前記各妻面被覆部の先端縁同士が重ね合わせられる構成である請求項2記載の温室用カーテン装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のカーテン部材の先端縁同士が互いに近接する閉鎖方向動作時の終点において、前記第1及び第2のカーテン部材の各天井面被覆部間の隙間を閉塞する天井隙間被覆材が設けられている請求項1〜3のいずれかに1記載の温室用カーテン装置。
【請求項5】
前記天井隙間被覆材が、前記天井奥行きパイプに支持されている請求項4記載の温室用カーテン装置。
【請求項6】
前記天井隙間被覆材は、所定幅の板状部材からなり、前記第1及び第2の先導パイプが該天井隙間被覆材上を移動可能である請求項5記載の温室用カーテン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−205910(P2011−205910A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73918(P2010−73918)
【出願日】平成22年3月27日(2010.3.27)
【出願人】(390010814)株式会社誠和 (31)
【Fターム(参考)】